説明

コンバイン

【課題】コンバインの伝動構造を簡素化し、組立を容易化する。
【解決手段】脱穀装置(3)の前側に設けた刈取脱穀伝動ケース(4)と、走行ミッション装置(5)に設けた走行用HST(6)との少なくとも二系統の伝動経路(7,8)に回転動力を分岐して出力する構成とし、刈取脱穀伝動ケース(4)は、その内部において、脱穀装置(3)へ出力する伝動経路(9)を伝動上手側に形成し、伝動下手側には刈取用HST(10)を接続して伝動可能に構成し、該刈取用HST(10)と走行用HST(6)とを変速制御可能に構成し、刈取用HST(10)は、油圧モータ(10a)側から出力した動力を、刈取入力軸(11)とフィードチェン(12)の搬送始端部に接近させて設けた引継ぎチェン(13)とに分配して伝動する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの伝動機構に関し、エンジンは、その出力を走行ミッション装置、脱穀装置、刈取装置のそれぞれに分配して伝動する構成がとられ、その伝動機構は、複雑な構成となっている。例えば、特開2009−77663号公開特許公報(特許文献1参照)には、コンバインの伝動機構における変速制御装置が記載されている。
【0003】
該公報の伝動機構における変速制御装置は、エンジンから出力される回転動力が、走行ミッションケースに接続した走行変速装置と、刈取装置に接続された刈取変速装置と、脱穀装置との三系統に分配してそれぞれベルトテンションクラッチ装置を備えたベルト伝動機構によって伝動する構成となっている。そして、前記走行ミッションケースに接続した走行変速装置と、刈取装置に接続された刈取変速装置とは、油圧ポンプと油圧モータとから構成された油圧式の無段変速装置が利用され、制御手段によって連繋状態に接続して走行連繋変速処理、及び非連繋変速処理ができる関係に構成されている。
【0004】
前記公開特許公報の刈取装置は、上記構成によって、走行装置が停止、及び後進するときには停止し、前進走行中において、刈取装置の駆動速度を、走行速度が高速になるほど高速にする設定関係速度になるように制御する作用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−77663号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、コンバインにおける伝動機構の構成は、エンジンの回転動力が脱穀装置と、刈取装置と、走行装置との三系統に分配し、一例として、それぞれにベルトテンションクラッチ装置を装備した伝動機構を設けて伝動する構成としている。そして、各伝動機構は、限られた狭いスペースの範囲内に配置して構成するから、必然的に構造が複雑となって、工場における組立工程でも作業が煩雑で効率が悪くなる課題があった。
【0007】
この発明は、コンバインの伝動構成を大幅にシンプルにして、エンジンから出力する動力の取出し経路を二系統に統一して簡略化を図り、狭い取付けスペースでも取付けが可能となるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、走行フレーム(1)上に設けたエンジン(2)から、脱穀装置(3)の前側に設けた刈取脱穀伝動ケース(4)と、走行ミッション装置(5)に設けた走行用HST(6)との少なくとも二系統の伝動経路(7,8)に回転動力を分岐して出力する構成とし、前記刈取脱穀伝動ケース(4)は、その内部において、前記脱穀装置(3)へ出力する伝動経路(9)を伝動上手側に形成し、伝動下手側には刈取用HST(10)を接続して伝動可能に構成し、該刈取用HST(10)と前記走行用HST(6)とを変速制御可能に構成し、前記刈取用HST(10)は、油圧モータ(10a)側から出力した動力を、刈取入力軸(11)とフィードチェン(12)の搬送始端部に接近させて設けた引継ぎチェン(13)とに分配して伝動する構成としたことを特徴とするコンバインとした。
【0009】
エンジン(2)から出力される動力の伝動経路(7,8)を、走行ミッション装置(5)と刈取・脱穀を統一して入力する刈取脱穀伝動ケース(4)との二系統にした構成であり、構成の簡略化に加えて、狭い取付けスペースに対応できるものであって、更に、組立が容易になる構成としたものである。
【0010】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記刈取脱穀伝動ケース(4)は、脱穀装置(3)の前側下部において走行フレーム(1)上の取付台(14)に固定して設置し、該刈取脱穀伝動ケース(4)の上下中間部位の後部から脱穀装置(3)側に向けて設けた補強用連結部材(15)を、前記脱穀装置(3)の前側板(16)に固着したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0011】
前記刈取脱穀伝動ケース(4)が、脱穀装置(3)を構成する前側板(16)のすぐ前側に設置されているから、その前側板(16)を利用して補強用連結部材(15)により固着・連結して保持し、ケースの強度を高めながら安定した装置を確保している。
【0012】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記刈取脱穀伝動ケース(4)の左外側面に、回転動力を脱穀装置(3)の選別装置(18)、引継ぎチェン(13)、刈取入力軸(11)にそれぞれ伝動する脱穀出力プーリ(19)と、刈取出力プーリ(20)と、スプロケット(21)とを軸架して設け、前記引継ぎチェン(13)に伝動するスプロケット(21)は、前記刈取脱穀伝動ケース(4)の高い位置から外方に延長した伝動軸(22)に軸架し、前記脱穀出力プーリ(19)と刈取出力プーリ(20)とは、略同レベルの高さにおいて前後に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0013】
刈取脱穀伝動ケース(4)は、高い位置に設ける引継ぎチェン(13)を駆動するスプロケット(21)をケース(4)の最も高い位置に軸架して直接チェン(13)に噛合できる位置とし、脱穀出力プーリ(19)と刈取出力プーリ(20)とは、同一高さ位置で前と後とに分けて軸架し、伝動する対象物との関係位置を近くして伝動上のロスを少なくし、伝動ベルトの着脱等のメンテナンスが容易にできるものとした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によると、エンジン(2)から出力される動力の伝動経路(7,8)を、走行ミッション装置(5)と刈取装置と脱穀装置(3)への伝動を統一して入力する刈取脱穀伝動ケース(4)との二系統にすることで、伝動機構の大幅な簡略化に加えて、狭い取付けスペースに対応できるものとし、それに加えて、組立を容易に行うことができる。
【0015】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、刈取脱穀伝動ケース(4)が、脱穀装置(3)を構成する前側板(16)のすぐ前側に設置されているから、その前側板(16)を利用して補強用連結部材(15)によって固着・連結して保持し、刈取脱穀伝動ケース(4)の強度を高めて伝動状態を安定させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、各装置の配置されている位置に対して、上下、前後等を配慮して、短い伝動経路によって合理的に伝動できる。そして、刈取脱穀伝動ケース(4)は、脱穀装置(3)のフィードチェン(12)と同等の高さにある引継ぎチェン(13)を駆動するスプロケット(21)を、刈取脱穀伝動ケース(4)の最も高い位置に軸架してチェン(13)に直接噛合できる位置として効率的に駆動することができる。そして、脱穀出力プーリ(19)と刈取出力プーリ(20)とを、同一高さ位置で前と後とに分けて軸架し、伝動する刈取入力軸(11)及び圧風唐箕や排塵ファンとの側に軸架して伝動上のロスを極力少なくし、伝動ベルトの着脱等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの伝動機構図
【図2】刈取脱穀伝動ケースを展開して示す断面図
【図3】刈取脱穀伝動ケースの左側面図
【図4】刈取脱穀伝動ケースの左側面と脱穀装置の内部の側面図
【図5】脱穀装置の前に配置した刈取脱穀伝動ケースと右前のエンジンを示した説明用の正面図
【図6】脱穀装置の内部の平面図
【図7】コンバインの左側面図
【図8】脱穀チェンレールの取付構造の平面図
【図9】脱穀チェンレールの取付構造の側面図
【図10】脱穀チェンレールの取付構造の背面図
【図11】実施例の挟扼杆の説明用側面図
【図12】移動螺旋の一部を断面した側面図
【図13】移動螺旋の正面図
【図14】前部固定螺旋の側面図
【図15】前部固定螺旋の筒部の端部、角筒部の切断側面図
【図16】グレンタンクの側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図7に示すように、左右一対のクローラ25,25を装備した走行フレーム1上に、穀稈供給口26を前側に配置した脱穀装置3を搭載し、その前方に刈取搬送装置27を設けて構成している。そして、該刈取搬送装置27は、基部を走行フレーム1の懸架台に取付・支持した刈取後フレーム28と、その先端部に横向きに連結した刈取伝動ケース29とによって、取付用の主枠となる刈取フレーム30を構成し、前部に分草杆31、穀稈引起し装置32、下部に刈取装置33、該刈取装置33から後方の前記脱穀装置3へ刈取穀稈を搬送する穀稈搬送装置34を取付けて支持し、これら各装置を伝動する構成としている。
【0019】
そして、エンジン2は、図5に示すように、走行フレーム1上の右側前部で、運転席36の下側空間部を利用して搭載し、図1に示した伝動機構図から解るように、走行用HST6と刈取脱穀伝動ケース4との二系統に分岐して出力する構成としている。そして、刈取脱穀伝動ケース4は、図2、乃至図5に示すように、脱穀装置3と、刈取装置(刈取入力軸11に入力された動力は、前記刈取搬送装置27全体を伝動する構成としている。)33と、引継ぎチェン13とにそれぞれ動力を分配して伝動できるように構成している。なお、実施例の場合、エンジン2は、図面に示すように、上記の二系統の他に、グレンタンク側の排出螺旋39や穀粒排出オーガー40を伝動する構成としている。
【0020】
そして、実施例の場合、刈取脱穀伝動ケース4は、図4、及び図5に示すように、前記脱穀装置3の前側で下側において、走行フレーム1上に設けた取付台14上に固定して設置し、前記穀稈供給口26の高さ近くまで上方に延長した伝動ケースに構成している。そして、該刈取脱穀伝動ケース4は、上下中間部位の後部側に、補強用連結部材15を固着し、後の脱穀装置3側に向けて伸ばし、前記脱穀装置3の前側板16に取付ねじ38によって固着した構成としている。なお、前記補強用連結部材15は、図3に接合面(取付面)を図示したように、先端を平面視L型に折り曲げて平らな接合面(前側板16に接合する取付面)を形成し、前側板16に接着して取り付ける構成としている。
【0021】
このように、実施例は、刈取脱穀伝動ケース4が、脱穀装置3を構成する前側板16のすぐ前側に設置されているから、その前側板16を利用して補強用連結部材15によって固着・連結して保持し、ケース4自体を強くして安定した装置としている。
【0022】
つぎに、前記刈取脱穀伝動ケース4は、図面に示すように、入力プーリ41、入力軸42を経由して伝動される回転動力を、中間伝動軸43によって、左右に分岐して一方側に、前記脱穀装置3へ出力する伝動経路9を形成し、他方側に脱穀装置3の選別装置18に伝動する取出軸44を経て下手側の刈取用HST10に伝動する構成としている。そして、前記取出軸44は、伝動機構図に示すように、脱穀出力プーリ19を介して一番,ニ番の移送螺旋46,47、排塵ファン48、フィードチェン12をそれぞれ伝動する構成としている。
【0023】
そして、刈取用HST10は、図1に示すように、前記中間伝動軸43の他方側から取出軸44を経由してそれぞれの軸に設けた歯車伝動によって油圧ポンプ10bに入力される構成としている。そして、刈取用HST10は、実施例の場合、前記走行用HST6の変速制御値を基準にして、関連して変速制御ができる構成となっている。すなわち、実施例の刈取用HST10は、前記走行用HST6を低速の走行速度(例えば、倒伏穀稈の刈取りで、高速走行が出来ない圃場等)に切替えた場合でも、設定速度以下には減速されることはなく、適確に引起し、刈取、搬送ができる速度を保持し、走行用HST6が高速走行に変速されると、それに対応して、高速側に連繋した変速制御ができる構成としている。
【0024】
そして、刈取用HST10は、油圧モータ10a側のHST出力軸50から刈取伝動軸51に伝動し、刈取出力プーリ20から刈取入力軸11にベルト伝動する構成としている。一方、引継ぎチェン13は、図1に示すように、前記HST出力軸50からギヤを介して伝動下手側の引継ぎチェン出力軸52に伝動し、更に、伝動軸22、スプロケット21を経て駆動する構成としている。この場合、引継ぎチェン13は、図1の伝動機構図から解るように、刈取入力軸11とシンクロされて伝動され、特に、穀稈搬送装置34と連動状態で変速され、円滑な穀稈の引継ぎができる構成としている。
【0025】
そして、引継ぎチェン13は、図4、及び図6に示すように、脱穀装置3の穀稈供給口26の前方位置で、フィードチェン12の搬送始端部に平行状態に設けた構成としている。したがって、引継ぎチェン13は、刈取搬送装置27の穀稈搬送装置34と同調して変速されるから、該穀稈搬送装置34の終端部分から搬送穀稈を乱れなく整然と受け継いでフィードチェン12の搬送始端部に引き継、供給することができる。
【0026】
そして、前記刈取脱穀伝動ケース4は、伝動上手側から脱穀装置3の扱胴55や処理胴(ニ番処理胴、排塵処理胴等)56を伝動するために取出した伝動経路9を除き、ケース4の左外側面に動力取出軸44を延長して取出す構成としている。そして、実施例は、既に述べたように、脱穀装置3の選別装置18や、引継ぎチェン13や、刈取入力軸11にそれぞれ伝動する脱穀出力プーリ19と、刈取出力プーリ20と、スプロケット21を軸架して設けている。そして、前記引継ぎチェン13を伝動する前記スプロケット21は、前記ケース4の高い位置から外方に延長した伝動軸22に軸架して設け、前記脱穀出力プーリ19と前記刈取出力プーリ20とは、略同レベルの高さにおいて、前側と後側とに軸架した構成としている。
【0027】
このように、実施例は、各装置が配置されている位置に対して、上下、前後等を配慮して、できる限り短い伝動経路によって合理的に伝動ができるようにして伝動上のロスを減らして効率的な伝動を行うものとしている。そして、実施例の場合、刈取脱穀伝動ケース4は、脱穀装置3のフィードチェン12と同等の高さにある引継ぎチェン13に噛合って駆動するスプロケット21を、ケース4の最も高い位置に軸架して直接チェン13に噛合できる位置として効率的に駆動するものとした。そして、実施例は、前記脱穀出力プーリ19と前記刈取出力プーリ20とを、同一高さ位置で前と後とに分けて軸架し、伝動する刈取入力軸11、及び一番・ニ番の移送螺旋46,47等に近い位置を選ん構成したから、前後両側から伝動ベルトで引き合う力関係となってバランスが取れて安定し、伝動上のロスを極力少なくし、伝動ベルトの着脱等メンテナンスが容易にできるものとしている。
【0028】
そして、前記刈取入力軸11は、刈取後フレーム28の基部に設けた刈取入力伝動ケースに軸架され、刈取伝動ケース29に伝動して刈取搬送装置27の各装置を伝動する構成としている。
【0029】
そして、走行ミッション装置5は、図1の伝動機構図に示すように、走行用HST6の伝動下手側に接続し、変速された動力が入力され、出力側に軸架した駆動スプロケット57によってクローラ25,25を伝動する構成としている。
【0030】
以上述べたように、エンジン2から出力される動力の伝動経路7,8は、走行ミッション装置5側を一つの伝動系とし、刈取搬送装置27と脱穀装置3とに伝動する経路を統一して一つの伝動系とする刈取脱穀伝動ケース4との二系統に構成したことを特徴とし、伝動機構を簡潔にまとめた構成とした。このように、刈取脱穀伝動ケース4は、刈・脱の伝動経路をまとめて伝動機構を簡略化したから、狭い取付けスペースに対応できるものとなり、それに加えて、工場における製作時にも組立が容易にできるものとし、製造効率を高めたものである。
【0031】
つぎに、図8、乃至図10に基づき、脱穀装置3のフィードチェン12を案内する脱穀チェンレール60について、実施例を説明する。
近年、コンバインは、作業能率の向上を目的として、高速化が進み脱穀装置3のフィードチェン12も、脱穀能率を高めるために、チェンスピードを大幅に速くする構成の製品化が進んでいる。そして、フィードチェン12を案内する脱穀チェンレール60は、チェンスピードが高速になると、後端部分、特に、フィードチェン12を駆動する駆動スプロケット61の近傍、すなわち、レール後端部分62にチェンの大きな圧接作用が働いて、その部分の磨耗が激しくなる傾向がある。
【0032】
そこで、以下に説明する実施例は、駆動スプロケット61の近傍で磨耗が激しい部分(レール後端部分62)の交換を容易にして、脱穀チェンレール60の全体を交換するのではなく、磨耗し易い部分のみの部品交換が楽にでき、経済的な装置を提供するものである。
【0033】
まず、脱穀チェンレール60は、図面に示すように、角チューブからなる支持部材63の上面に形成され、搬送終端部には、レール後端部分62を継ぎ足して接続し、単一のレール状にしてフィードチェン12を下側から支持して案内する構成となっている。この場合、レール後端部分62は、フィードチェン12の搬送終端にあたり、下側に向けて側面視、円弧形状に形成している。そして、取付部材65は、前記支持部材63の後端面から前記角チューブ内に挿し込んで固着する部位の外側端面に、背面視(図10参照)で前記レール後端部分62とによってT字型となる取付板66を形成し、該取付板66に連結した駆動スプロケット61の取付用ステー67を下側に延長して固着している。
【0034】
そして、駆動スプロケット61は、上記取付用ステー67にねじ止めして固着した支持板68に軸受け支持し、フィードチェン12を巻き掛けて係合し、機体(脱穀装置)側から伝動する構成としている。そして、巻付防止板69,69は、前記レール後端部分62より前方位置から後方のコナー部分まで延長し、駆動スプロケット61の上側の位置まで設け、フィードチェン12の搬送終端部分の両側にスクレパー状に設けて穀稈の巻き付きを防止する構成としている。70は巻付防止杆を示している。
【0035】
以上のように、レール後端部分62は、取付部材65を角チューブの支持部材63の後端開口部から、挿脱操作することによって、比較的簡単に着脱操作ができるから、磨耗し易い後部のレールのみを比較的簡単に着脱することができる利点がある。
【0036】
特に、実施例は、磨耗の激しいレール後端部分62を交換することによって、脱穀チェンレール60の全体を取替える必要がなく、損失を極力低減して合理的にメンテナンスができる特徴がある。
【0037】
つぎに、図11に示した実施例を説明する。
この実施例は、脱穀フィードチェン12の上側に沿わせて設けた挟扼杆73に関し、フィードチェン12の搬送始端部分における穀稈の挟持作用が円滑となり、搬送始端部における穀稈の搬送詰まりや停滞を少なくすることを目的とする。
【0038】
まず、挟扼杆73は、搬送始端部側から第一挟扼杆73a,第二挟扼杆73b,第三挟扼杆73cの順に単体の各挟扼杆73a,73b,73cを、上下揺動自在に連結して一本の挟扼杆73を構成している。そして、各挟扼杆73a,73b,73cは、単体で上側の支持杆74に上下揺動ロット75で上下自在に連結して支持し、張圧ばね76によってフィードチェン12側に張圧して穀稈挟持ができる構成としている。そして、実施例は、図面に示すように、第一挟扼杆73aの中間部に連結した連杆78を上方に延長し、第二挟扼杆73bの始端部に連結した連動杆79を上方に延長して係合孔84を設け、前記連杆78を折り曲げて先端を前記係合孔84に挿し込んで連結し、第一挟扼杆73aが上動すると、連動されて第二挟扼杆73bの始端部が持ち上げられるように構成している。
【0039】
この場合、第二挟扼杆73bは、連杆78と連動杆79の係合孔84との関係で、上下動が一体となるように連結され、第一挟扼杆73aが上昇するとその分、連動して持ち上げられる。
【0040】
このように、実施例は、第一挟扼杆73aがフィードチェン12の搬送始端部に供給された穀稈量が多く、上方に押し上げられると、連杆78が一体となって上方に押し上げられ、係合孔84を介して連動杆79を上方に押し上げて第二挟扼杆73bを吊り上げる。すると、搬送穀稈は、フィードチェン12によって搬送されながら第二挟扼杆73bの始端部に達するが、そのとき、上述のように作用して、第二挟扼杆73bの始端部が持ち上げられているから、穀稈が入り易く、詰まることなく円滑に第二挟扼杆73bに挟持される位置に達し、障害となることなくスムースに搬送される。
【0041】
従来の構成は、図11に仮想線で示すように、一度に多量の穀稈が供給されると、第一挟扼杆Aが張圧ばねに抗して単体で押し上げられるが、第二挟扼杆が上がらないために穀稈が第二挟扼杆の前に詰まり、停滞する課題があった。
【0042】
それに対して、実施例は、フィードチェン12の搬送始端部に一度に多量の穀稈が供給されたとき、第一挟扼杆73aが押し上げられて上がり、これに連動して第二挟扼杆73bの始端部も上昇して、フィードチェン12から上方に上がり、穀稈通路を広くして穀稈が前側から順次適確に送り込まれて、詰まらず、停滞もない状態で円滑に搬送ができる効果がある。
【0043】
つぎに、穀粒搬送螺旋の構成について実施例を説明する。
従来から、コンバインにおいて、穀粒排出オーガーは、排出筒を筒の方向に伸縮自在に構成して、コンバイン車体位置から排出位置までの長さを調節する「ズームオーガー」が知られている。この伸縮式穀粒排出オーガーは、図12、乃至図15に示すように、螺旋を駆動する角軸(実施例の場合、六角軸)80に角筒(実施例は六角筒)81を挿通して、軸上を摺動する複数個の移動螺旋82や、角軸80の軸端部でその角軸81に固定する前部、及び後部の固定螺旋83から構成している。
【0044】
従来、各螺旋82、83は、その中心の角筒81の製作にあたり、厚肉鋼管の切削加工によって削り出して製作するのが一般的であったが、これらの加工法によると、各軸装部(角筒81)は、加工に長時間を要する上に、加工精度が悪く、正確な寸法精度が得られない課題があった。
【0045】
実施例は、鋼管の両端部をスウエージング加工によって整形し、六角軸80に合わせ六角筒を構成する。図12に示した実施例は、角筒81の両端部分を前記スウエージング加工によって六角に形成して六角軸80に挿入して軸方向に摺動可能に構成している。
【0046】
図14に示した固定螺旋の場合も、同様に、角筒81の一方の端部をスウエージング加工によって角軸80に嵌合できる形状に構成する。
以上のように、移動螺旋82は、角筒81の両端部分をスウエージング加工をすることによって、大幅な加工時間の短縮が出来た。この場合、角筒81は、その両端部分を同時に加工できるから、前後で位相差をなくし高精度の製作ができる特徴がある。そして、角筒81は、薄肉鋼管の使用ができるから軽量化が可能となり、充分な強度が確保できるものとなった。
【0047】
つぎに、図16に示したグレンタンク85に関する実施例を説明する。
従来、グレンタンク85は、すでに周知の通り、満タンセンサが設けられ、満タン時に警報する手段の他に、コンバイン作業中に内部の籾の溜まり量を外から視認するための窓86が上部に一つ設けられていた。この実施例は、その下側の中段にもう一個の覗き窓87を設けて補助作業者が作業中に確認できる構成としたものである。
【0048】
実施例は、以上のように構成することによって、オペレータ以外の補助作業者が作業中に、グレンタンク85の内部を確認できる特徴がある。したがって、補助作業者は、コンバイン作業の途中において、グレンタンク85内の籾量を外側から覗いて確認し、おおよその満タン時間を推定してそれまでの時間を他の補助作業に有効に利用することができる利点がある。
【符号の説明】
【0049】
1 走行フレーム
2 エンジン
3 脱穀装置
4 刈取脱穀伝動ケース
5 走行ミッション装置
6 走行用HST
7 伝動経路(刈・脱側)
8 伝動経路(走行用HST側)
9 伝動経路
10 刈取用HST
10a 油圧モータ
11 刈取入力軸
12 フィードチェン
13 引継ぎチェン
14 取付台
15 補強用連結部材
16 前側板
18 選別装置
19 脱穀出力プーリ
20 刈取出力プーリ
21 スプロケット
22 伝動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行フレーム(1)上に設けたエンジン(2)から、脱穀装置(3)の前側に設けた刈取脱穀伝動ケース(4)と、走行ミッション装置(5)に設けた走行用HST(6)との少なくとも二系統の伝動経路(7,8)に回転動力を分岐して出力する構成とし、前記刈取脱穀伝動ケース(4)は、その内部において、前記脱穀装置(3)へ出力する伝動経路(9)を伝動上手側に形成し、伝動下手側には刈取用HST(10)を接続して伝動可能に構成し、該刈取用HST(10)と前記走行用HST(6)とを変速制御可能に構成し、前記刈取用HST(10)は、油圧モータ(10a)側から出力した動力を、刈取入力軸(11)とフィードチェン(12)の搬送始端部に接近させて設けた引継ぎチェン(13)とに分配して伝動する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記刈取脱穀伝動ケース(4)は、脱穀装置(3)の前側下部において走行フレーム(1)上の取付台(14)に固定して設置し、該刈取脱穀伝動ケース(4)の上下中間部位の後部から脱穀装置(3)側に向けて設けた補強用連結部材(15)を、前記脱穀装置(3)の前側板(16)に固着したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取脱穀伝動ケース(4)の左外側面に、回転動力を脱穀装置(3)の選別装置(18)、引継ぎチェン(13)、刈取入力軸(11)にそれぞれ伝動する脱穀出力プーリ(19)と、刈取出力プーリ(20)と、スプロケット(21)とを軸架して設け、前記引継ぎチェン(13)に伝動するスプロケット(21)は、前記刈取脱穀伝動ケース(4)の高い位置から外方に延長した伝動軸(22)に軸架し、前記脱穀出力プーリ(19)と刈取出力プーリ(20)とは、略同レベルの高さにおいて前後に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−24523(P2011−24523A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175522(P2009−175522)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】