説明

コンバイン

【課題】刈幅の全幅にわたってエアカーテンを形成することで、引起し時に発生する埃の浮上防止効果を高め、衛生的環境のもとでの作業を能率よく行わしめる。
【解決手段】分草後の穀稈を引き起す複数の引起し装置(10)の上部から前方へエアを吹き出して全刈幅にわたるエアカーテン(Ac)を形成するエア噴出ダクト(15)を設ける。また、エア噴出ダクト(15)によって、各引起し装置(10)の引起しケース(10a)の上端部間を連結する。また、エア噴出ダクト(15)を、左右方向の横軸(18)芯周りに回動固定自在な構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立毛穀稈を引き起しながら刈り取り、脱穀部に搬送供給して脱穀処理するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、刈取部の穀稈引起し装置の前側上端部に、刈取前の穀稈に対し熱風を吹き付けて穀稈に付着の露を払い落す噴風ダクトを備えたコンバインにおける露払い装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−80826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成のものは、引起し装置の左右全幅にわたって熱風を吹き付けるものではなく、引起し経路の前方のみ穀稈に直接吹き付けるものであるため、引起し時に発生する塵埃の浮上防止効果は充分に得られず、引起し経路以外の引起しケース前面から上方に舞い上がり、風向きによっては舞い上がった塵埃が運転部のオペレータにふりかかる問題がある。
【0005】
本発明では、引起し装置の左右全幅にわたってエアカーテンを形成することで、上記問題点を解消し、塵埃の浮上防止効果を高め、衛生的環境のもとでの作業を可能とし、作業能率の向上を図るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、分草後の穀稈を引き起す複数の引起し装置(10)の上部から前方へエアを吹き出して全刈幅にわたるエアカーテン(Ac)を形成するエア噴出ダクト(15)を設けたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
引起し装置(10)上部のエア噴出ダクト(15)から噴出されるエアが各引起し装置(10)の上部より前方に向けて噴出される。この噴出されるエアによって刈幅の全体にわたってエアカーテン(Ac)が形成されるので、引起し時に発生する塵埃の舞い上がりが抑制され、運転部でのオペレータに埃を被ることがなくなる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記エア噴出ダクト(15)によって、各引起し装置(10)の引起しケース(10a)の上端部間を連結したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【0009】
各引起しケース(10a)がエア噴出ダクト(15)により連結されるので、ダクト自体が強固に保持され、引起し装置(10)の強度も堅固に確保される。
請求項3記載の発明は、前記エア噴出ダクト(15)を、左右方向の横軸(18)芯周りに回動固定自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【0010】
エア噴出ダクト(15)は横軸(18)芯周りに回動させることができるので、エアの噴出方向を必要に応じて適宜変更することができる。例えば、穀稈が長稈の場合は、その穀稈の穂部より上方を略水平方向前方に向けて送風し、短稈の場合には前方下方に向けて送風する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、エア噴出ダクト(15)から噴出されるエアによって引起し装置(10)の前方部で刈幅の全幅にわたってエアカーテン(Ac)が形成されるので、引起し時に発生する塵埃の舞い上がりが抑制されると共に、オペレータへの防塵効果を高め、衛星的環境のもとに作業を能率よく行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、各引起しケース(10a)の上端部がエア噴出ダクト(15)によって連結保持されるので、エア噴出ダクト(15)自体を強固に保持することができ、且つ、引起し装置(10)自体の強度も堅固に保持することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、エア噴出ダクト(15)が横軸(18)芯周りに回動固定自在であるため、エアの噴出方向を穀稈の長短等によって適宜変更調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンバインの側面図
【図2】同上平面図
【図3】同上正面図
【図4】コンバイン要部の拡大側面図
【図5】コンバインの拡大正面図
【図6】刈取部の要部の側面図
【図7】制御ブロック回路図
【図8】引起しラグの正面図
【図9】同上底面図
【図10】汎用コンバインの側面図
【図11】汎用コンバインの平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1〜図3は、コンバインの構成例を示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)4の前方部に刈取部3を設置し、刈取部の横側部には運転席5や操作ボックス6等からなる運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンク7を装備している。
【0016】
刈取部3は、導入された植立穀稈を左右に分草する分草体9と、分草後の穀稈を下部側から穂先側に作用させて引き起す引起し装置10と、引起し後の穀稈を刈り取る刈取装置11と、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送装置12と、掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送しながら後方の脱穀部4に受け渡し供給する揚上搬送装置13等からなる。
【0017】
引起し装置10は、3条の穀稈を引き起すべく3基の引起し装置によって構成され、引起しケース10aと該ケース内から引起し経路内に突出する引起しラグ10b等からなる。
【0018】
各引起しケース10a,10a,10aの上方部で、各ケースの左右全幅にわたり、機体前方方向に向けてスリット状の噴出口14を開設したエア噴出ダクト15を構成して設け、このダクト15には送風機16を連通して設けると共に、引起し装置の前方に向け噴出口14からエアを噴出させてエアカーテンAcを形成すべく構成している。図4に示すように、噴出口14から噴出されるエアカーテンは、引起し時における穀稈穂先部の上方を前方に向けて通過するようになっている。従って、引起し時に発生する埃は、エアカーテンAcによって遮られることになり、埃が上方に舞い上がって後方の運転部にまで及ぶことがなくなる。
【0019】
前記エア噴出ダクト15は、図5に示す実施例では、各引起しケース10a,10a,10aの上端部に一体的に連結保持させた構成としている。これによれば、ダクトが強固に固定され、引起し装置の強度も充分に確保される。
【0020】
また、図6に示す実施例では、エア噴出ダクト15は、円筒形に構成すると共に、引起し装置の上部を覆う上部カバー17内に内装軸架し、左右方向の横軸18芯周りに回動固定自在に構成している。エア噴出ダクトを横軸18周りに回動させると、噴出口14の向き角度が上下に変化し、噴出方向を穀稈の長短に応じて適宜変更することができるようになっている。その手段は、図6例では、手動操作で制御モータ19を回転駆動することにより、上下アーム20d,20u及びロッド21を介して角度変向調整が容易にできる構成としている。
【0021】
なお、エア噴出ダクトの噴出方向の角度調整は、扱室内への穀稈供給深さを調節する供給調節センサ22(図7)による穀稈の長短検出結果に基づき、自動的に角度変向を行うように構成してもよい。例えば、長稈時は水平方向、短稈時は斜め下方に送風し、常に、穀稈の穂先よりやや上方に向け送風することで、エアカーテンの作用効果を高めることができる。
【0022】
前記送風機16は、刈取部の非作業位置への上昇に連動して停止するように構成しておくと省エネを図ることができる。その手段は、例えば、図7に示すように、刈取上下検出センサ23による刈取上昇検出結果に基づき、制御部24を介してブロアモータ25の駆動をOFFにし、送風機16を停止する。
【0023】
また、引起し時に発生する埃の量を検出する埃検出センサ26を設け、この埃検出センサ26の埃検出結果に基づき、エア噴出ダクト15から自動的にエアを噴出するようブロアモータ26を駆動する構成とすることもできる。
【0024】
更に、引起し時の籾飛散量を検出する籾飛散量検出センサ27を設け、この籾飛散量検出結果に基づき、ブロアモータ25を駆動してエアを自動的に噴出する構成とすることもでき、これにより、エアカーテンの発生で、籾のオペレータへの飛散を未然に防止することができる。
【0025】
車速が設定速度以上になると、車速検出センサ28の検出によりブロアモータの駆動をOFFにし送風機16が自動停止するように構成しておくと、設定車速以上は刈取作業を行わない速度設定であるため、送風機が自動停止することで、省エネを図ることができる。
【0026】
また、副変速を走行レンジに(副変速位置検出センサ29で検出)すると、送風機16が自動停止するように構成することもできる。
図8及び図9に示す実施例は、引起しラグ10bの先端部幅D1を基端部幅D2よりも狭くした構成としている。この構成によると、地面にべったりとタオr多倒伏稈を引き起す場合に有効で、地表面に食い込むように接して確実に掬い上げることができる。
【0027】
次に、汎用コンバインの実施例について説明する。図10及び図11に示す実施例は、掻込リール30a付汎用刈取部30のテーブル下方に設置したキャスター34を利用し、刈取部30と刈取部のフィーダハウス30b及びスレッシャ型の汎用脱穀部31全体を、旋回フレーム32を介して縦軸33回りで機体左側方へ旋回オープンするように構成したものにおいて、走行フレーム35の上に旋回フレーム32を配置し、旋回フレーム32上に汎用脱穀部31を搭載し、走行フレーム35上を旋回フレーム32がスライド移動するように構成することで、安定したスライド移動が円滑に行える。走行フレーム35と旋回フレーム32との間には摩擦係数の小さい転動ローラ36を介在させている。これにより、刈取脱穀部の旋回オープンが軽い操作力で迅速に行える。
【0028】
機体前後方向の中央部にエンジンEを配置した汎用コンバインにおいて、機体後部の左側に設置した縦軸33を回動中心として、刈取脱穀部を一体で機体左側方に旋回オープンする構成とすることで、エンジンE及び各部への動力伝達機構部のメンテナンスが容易に行える。
【0029】
刈取上下シリンダー37は、旋回フレーム32と刈取部のフィーダハウス30b間で支持する構成になっており、刈取上下シリンダを取り外すことなく、刈取脱穀部と一体で旋回オープンすることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 引起し装置
10a 引起しケース
14 噴出口
15 エア噴出ダクト
16 送風機
18 横軸
Ac エアカーテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分草後の穀稈を引き起す複数の引起し装置(10)の上部から前方へエアを吹き出して全刈幅にわたるエアカーテン(Ac)を形成するエア噴出ダクト(15)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記エア噴出ダクト(15)によって、各引起し装置(10)の引起しケース(10a)の上端部間を連結したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記エア噴出ダクト(15)を、左右方向の横軸(18)芯周りに回動固定自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−45310(P2011−45310A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197503(P2009−197503)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】