コンバイン
【課題】本発明は、クラッチ操作レバーを、作業開始時のクラッチ切り操作状態から両クラッチ入り操作状態にするのに、デテント機構を採用しながら中間の脱穀クラッチ入り操作位置を感じることなく操作をすることができるクラッチ操作レバーの操作構造を提供することを目的とする。
【解決手段】クラッチ操作レバー20を保持するデテント機構25を備えるとともに、クラッチ操作レバー20のクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2への操作、及びこれとは逆の操作のうち、少なくとも一方の操作時において、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置すると、デテント機構20の係合部32を被係合部31に係合させないスルー機構45を設けてある。
【解決手段】クラッチ操作レバー20を保持するデテント機構25を備えるとともに、クラッチ操作レバー20のクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2への操作、及びこれとは逆の操作のうち、少なくとも一方の操作時において、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置すると、デテント機構20の係合部32を被係合部31に係合させないスルー機構45を設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一本のクラッチ操作レバーの操作で刈取クラッチの入り切りと脱穀クラッチの入り切りの二種類の操作を行えるように構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一本のクラッチ操作レバーの操作で刈取クラッチの入り切りと脱穀クラッチの入り切りの二種類の操作を行えるように構成してあるコンバインとしては、特許文献1の図10に示されているように、クラッチ操作レバーのレバーガイドとして、脱穀クラッチを入り切りする脱穀クラッチ操作域と、その脱穀クラッチ操作域と直交する方向に設けてある刈取クラッチ操作域とを有し、脱穀クラッチ操作域では、クラッチ操作レバーを機体前後方向に揺動操作し、後端のクラッチ切り操作位置より前方に揺動操作すると前端位置で脱穀クラッチが入る。脱穀クラッチ操作域の前端位置における脱穀クラッチ入り操作位置より右方向にクラッチ操作レバーを揺動操作すると刈取クラッチが入る。
【0003】
上記のクラッチ操作レバーの操作では、刈取クラッチと脱穀クラッチとを両者を入り操作するには、クラッチ操作レバーを前後方向と左右方向との二方向に操作する必要がある。しかるに、通常、作業を始めるときは、刈取クラッチを入れずに脱穀クラッチだけを入り状態にすることは殆どないから、クラッチ操作レバーをL字状に操作するのは、操作上煩わしい。
【0004】
そこで、クラッチ操作レバーを前後操作(直線操作)するだけで、
(1)クラッチ操作レバーを刈取クラッチと脱穀クラッチの両クラッチ切りにする「クラッチ切り操作状態」
(2)刈取クラッチを切り脱穀クラッチだけを入りにする「脱穀クラッチ入り操作状態」
(3)両クラッチを入りにする「両クラッチ入り操作状態」
に操作できるようにすることが考えられる。この場合、クラッチ操作レバーの各操作位置を認識できるようにノッチ(被係合部)にローラやボール等の係合部を嵌合させるデテント機構を採用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−171822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デテント機構を採用してクラッチ操作レバーを直線操作できると格段に操作性がよくなるが、通常、作業開始時には、上記(2)の「脱穀クラッチ入り操作状態」を通過(スルー)させて、前記(1)のレバー位置から(3)のレバー位置に操作する。しかし、(2)のレバー位置を通過するときにその都度、(2)のレバー位置でデテント機構による操作抵抗感が大きく煩わしい。
これを軽減ないし解消するには、ノッチを小さくすることが考えられるが、余り小さくしすぎると、(2)のレバー位置を感じることができなくなるだけでなく、作業中の機体振動や不測にクラッチ操作レバーに触れると直ぐにレバー位置が移動してしまうし、レバー位置が移動したことが直ちに認識できない不都合がある。
【0007】
本発明は、クラッチ操作レバーを直線操作できるものでありながら、作業開始時のクラッチ切り操作状態から両クラッチ入り操作状態にするのに、デテント機構の係合部を係合させる被係合部を小さくしなくても、中間操作位置(脱穀クラッチ入り操作位置)を感じることなく両クラッチ入り操作位置に操作することのできるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、刈取部の駆動系を断続する刈取クラッチと脱穀部の駆動系を断続する脱穀クラッチを備え、一本のクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置に操作すると前記刈取クラッチと前記脱穀クラッチの両クラッチが切り状態となり、脱穀クラッチ入り操作位置に操作すると、前記刈取クラッチが切り状態で前記脱穀クラッチのみが入り状態となり、両クラッチ入り操作位置に操作すると前記脱穀クラッチと前記刈取クラッチの両クラッチが入り状態となるように構成してあるコンバインにおいて、
前記クラッチ切り操作位置と前記脱穀クラッチ入り操作位置と前記両クラッチ入り操作位置とを、一つの直線上に配置し、
前記クラッチ操作レバーが前記クラッチ切り操作位置、脱穀クラッチ入り操作位置及び両クラッチ入り操作位置に位置していると、係合部が被係合部に係合して前記クラッチ操作レバーを保持するデテント機構を備えるとともに、
前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、及び前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、少なくとも一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部を前記被係合部に係合させないスルー機構を設けてある。
【0009】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、クラッチ操作レバーがクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置に向けて操作、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置に向けて操作するときに、クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置を通過するときに係合部を被係合部に係合させないスルー機構を設けたので、クラッチ操作レバーがクラッチ切り操作位置と両クラッチ入り操作位置との間の操作途中で脱穀クラッチ操作位置を通過するときに、デテント機構による位置決めによる操作抵抗(係合部が被係合部に係合することによる操作抵抗)が増大するというようなこともなく操作することができる。
【0010】
第1発明によれば、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へとは逆方向(両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置)に操作した場合、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へとは逆方向(クラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置)に操作した場合、途中の脱穀クラッチ入り操作位置においてスルー機構は作用せずに、デテント機構が作動して係合部が被係合部に係合する。従って、デテント機構の位置決めによる操作抵抗(係合部が被係合部に係合することによる操作抵抗)によって、クラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置に位置したことを認識することができ、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置に保持することができるのであり、刈取クラッチを切り脱穀クラッチだけを入りにする脱穀クラッチ入り操作状態を無理なく得ることができる。
【0011】
〔第1発明の効果〕
従って、第1発明によれば、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置への操作又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置への操作時に、クラッチ操作レバーを直線状に操作できるものでありながら、軽快且つ違和感なく楽に操作をすることができる。
【0012】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記スルー機構は、前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、又は前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、いずれか一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記被係合部に前記係合部が係合しないように前記係合部を前記被係合部に対して退避させるカム部材を備えている。
【0013】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置に位置すると、係合部がカム部材によって被係合部に係合しないようにカム部材で係合部の被係合部への係合を阻止している。これにより、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作する操作方向の途中で、前記係合部がカム部材に案内されることにより、係合部が被係合部に係合することがないので、クラッチ操作レバーの動きがスムーズとなり、一操作感覚でクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作することができる。
【0014】
そして、カム部材を係合部の移動経路から退避させることで脱穀クラッチ入り操作位置で係合部を被係合部に係合させることが可能となる。この場合、クラッチ操作レバーを両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作するときにおいては、主たる実施の形態のように、脱穀クラッチ入り操作位置で係合部を被係合部に係合させるようにしておく。又は、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ操作するときに脱穀クラッチ入り操作位置で係合部を被係合部に係合させるようにする。
【0015】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明又は第2発明の構成において、前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部が前記被係合部に係合せず、前記クラッチ操作レバーの前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置すると、前記係合部が前記被係合部に係合するように、前記スルー機構を構成してある。
【0016】
〔第3発明の作用効果〕
通常、コンバインによる収穫作業では、圃場の全ての植立穀稈を走行しながら刈取って脱穀することはできず、畦際近くや圃場のコーナー部分に刈り残しが生じる。そこでこれらの刈り残した植立穀稈を手刈りして、枕扱きを行う必要がある。従って、この場合のために、刈取クラッチを切りにした状態で脱穀クラッチのみを入り状態にする作業形態が必須となっている。
【0017】
第3発明によれば、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ操作する往路では、前記スルー機構が作用して途中の脱穀クラッチ入り操作位置で、クラッチ操作レバーの動きを止めることなく、クラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ操作することができ、両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作する復路では中間の脱穀クラッチ入り操作位置でデテント機構が作用して、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置で位置決めできるので、スルー機構を別途作用状態と非作用状態とに切り換える必要がなく、クラッチ操作レバーの操作だけで、脱穀クラッチを入り操作することができる。
【0018】
そして、畦際や圃場の角部で刈り残した植立穀稈は、作業補助者がコンバインによる収穫作業中に枕刈りをして準備しておくことにより、一つの圃場のコンバイン走行による収穫作業を終えた後、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置に操作して、引き続いて枕扱ぎを行うことができるので、コンバイン走行による収穫作業と枕扱き作業とを連続して作業することができて、作業性のよいコンバインによる脱穀収穫作業を行うことができるに至った。ここに往路でスルー機構を作用させ、復路でデテント機構を機能させる点に技術的意義がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】刈取部と脱穀部への動力伝達系を示す構成図である。
【図3】刈取クラッチと脱穀クラッチとが切り状態のときの操作構造を示す要部側面図である。
【図4】刈取クラッチが切り状態で脱穀クラッチが入り状態のときの操作構造を示す要部側面図である。
【図5】刈取クラッチと脱穀クラッチとが入り状態のときの操作構造を示す要部側面図である。
【図6】刈取クラッチと脱穀クラッチとが切り状態のときのクラッチ操作レバーの操作構造の要部を示す一部破断側面図である。
【図7】コンバインの運転部を示す部分平面図である。
【図8】クラッチ操作レバーの操作構造の要部を示す一部縦断背面図である。
【図9】クラッチ操作レバーの組み付け分解斜視図である。
【図10】(a)はクラッチ操作レバーが刈取クラッチと脱穀クラッチとが共にクラッチ切り位置に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図、(b)はクラッチ操作レバーがクラッチ切り操作位置と脱穀クラッチのみが入る脱穀クラッチ入り操作位置との間に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図11】(a)はクラッチ操作レバーを両クラッチ入り操作位置方向へ操作して脱穀クラッチのみが入った脱穀クラッチ入り操作位置に位置したときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図、(b)はクラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置と脱穀クラッチ及び刈取クラッチが入る両クラッチ入り操作位置との間に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図12】クラッチ操作レバーが脱穀クラッチと刈取クラッチが入った両クラッチ入り操作位置に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図13】(a)はクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置方向へ操作して刈取クラッチが切れ脱穀クラッチのみが入り状態となる脱穀クラッチ入り操作位置に位置したときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図、(b)はクラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置から脱穀クラッチ及び刈取クラッチが切れたクラッチ切り操作位置の手前まで操作したときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図14】コンバインの制御系の要部を示すブロック図である。
【図15】(a)(b)はスルー機構の別実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図で、1は運転部、2は刈取部、3は脱穀部、4は穀粒タンク、5はクローラ式の走行装置である。6はフィードチェーン、7は刈取部2で刈取った穀稈を合流してフィードチェーン6に送る縦搬送機構である。
【0021】
脱穀部3及び刈取部2への伝動構造について説明する。図2に示すように、ミッションケース9に静油圧式無段変速装置80を設け、静油圧式無段変速装置80の入力軸をミッションケース9の内部に延出している。入力軸10とエンジン11とを伝動ベルト12で連動し、エンジン11と脱穀部3とを伝動ベルト13で伝動可能に構成し、伝動ベルト13に対して脱穀クラッチ14を設けてある。一方、ミッションケース9内には、入力軸10と平行に刈取部2への出力軸16を設け、出力軸16に刈取変速ギヤ機構17を設けてある。出力軸16と刈取部2の入力部とに亘って伝動ベルト18を架設してあり、伝動ベルト18に対して刈取クラッチ19を設けてある。
【0022】
脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19との操作構造について説明する。図3〜図5に示すベルトテンション式の脱穀クラッチ14とベルトテンション式の刈取クラッチ19とを、図6に示すクラッチ操作レバー20による人為操作によって入り切りするように構成してある。
【0023】
脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19は、図3〜図5に示すように、電動モータ21で駆動されるテンション式のクラッチで構成されている。これらのクラッチ14,19は、図7、図8に示すように、操縦ボックス23に形成されたガイド溝24に沿って、横向き軸心P周りで揺動可能なクラッチ操作レバー20による人為操作によって入り切りするように構成してある。
【0024】
図6に示すように、前記クラッチ操作レバー20は、後方位置で脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19のクラッチ切り操作位置OFFになる。このクラッチ切り操作位置OFFより前方に揺動操作すると中間位置で脱穀クラッチ14が入る脱穀クラッチ入り操作位置ON1となり、前端位置で脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19との両クラッチ14,19が入る両クラッチ入り操作位置ON2となる。クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1にあるときは、脱穀クラッチ14だけが入り状態となり、刈取クラッチ19は切り状態にある。
【0025】
クラッチ切り操作位置OFFと脱穀クラッチ入り操作位置ON1と両クラッチ入り操作位置ON2とが、平面視で一つの直線上に位置するように一直線状に配置されている。クラッチ操作レバー20におけるクラッチ切り操作位置OFF、脱穀クラッチ入り操作位置ON1及び両クラッチ入り操作位置ON2の各位置でデテント機構25が作用して、クラッチ操作レバー20の位置決めが可能に構成されている。
【0026】
クラッチ操作レバー20は、機体に取り付けられた支持板26にピン27を介して横向き軸芯P周りに揺動自在に支持されている。即ち、支持板26には、ピン27を挿通する筒ボス28が固設されており、クラッチ操作レバー20に固定したピン27を筒ボス28に挿通してベータピン29で抜け止めを施してある。
【0027】
前記支持板26には、図8、図9に示すように、デテント機構25を構成する扇型孔30を形成してあり、扇型孔30の上部に位置決め用のノッチ31(被係合部に相当)を3つ形成してある。
前記クラッチ操作レバー20に、前記ノッチ31に係合する係合筒32(係合部に相当)を備えた係合部材37を取り付けてある。クラッチ操作レバー20に上下に長い長孔33を形成してある。前記係合筒32に鍔付きピン34を挿通し、ベータピン35で鍔付きピン34の抜け止めを施してある。
【0028】
前記係合筒32は鍔付きピン34により側面視略半円形で正面視U字状の部材36に回転自在に支持してあり、これにより係合部材37を形成してある。係合部材37の下部に、鍔付きピン34の振れ止め用の平面視コ字状の部材38と、支持杆40を固定してある。クラッチ操作レバー20に支持杆40を上下動自在に保持する底板付きの保持筒41を取り付けてあり、保持筒41に内装されたコイルスプリング39により支持杆40が上方に付勢されている。
【0029】
これにより、クラッチ操作レバー20を操作すると、クラッチ切り操作位置OFF、脱穀クラッチ入り操作位置ON1及び両クラッチ位置操作位置ON2の各位置で、係合部材37がコイルスプリング39に押圧されてノッチ31に係合筒32が係合されることで、クラッチ操作レバー20が位置決めされる。
【0030】
クラッチ操作レバー20の横向き軸心Pよりも下方にスイッチ押圧用のカム部42が形成されている。前記支持板26には、脱穀スイッチ43と刈取スイッチ44が取り付けられている。クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFに位置しているときは脱穀スイッチ43と刈取スイッチ44はともに切り状態にある。クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に操作すると、脱穀スイッチ43のスイッチ片43aが第1カム部42aに押圧されて脱穀スイッチ43が入り状態となる。このとき、刈取スイッチ44は切り状態にある。クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2に操作すると、脱穀スイッチ43は入り状態のままで、刈取スイッチ44のスイッチ片44aが第2カム部42bに押圧されて刈取スイッチ44も入り状態となる。
【0031】
前記支持板26の上部には、スルー機構45が設けられている。このスルー機構45は、カム部材46と、カム部材46の係止片46cに接当する一対の遊端部47a,47bを備えたコイルスプリング47と、支持板26及びカム部材46に挿通され、コイルスプリング47を巻回したカムピン48と、支持板26に固定され、コイルスプリング47の遊端部47a,47bを規制する規制ピン49とからなる。カム部材46には、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に向けて操作したときに係合部材37(係合筒32)に接当してカム部材46を前方に揺動させる第1カム面46aと、クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに向けて操作したときに係合部材37(係合筒32)に接当してカム部材46を後方に揺動させる第2カム面46bと、カム部材46を前方へ揺動又は後方へ揺動させたときにコイルスプリング47の一方の遊端部47a,47bに接当する係止片46cとを備えている。カム部材46が前方(図10の時計回り)に揺動されるとコイルスプリング47の下側の遊端部47aが支持板26に固定された規制ピン49に規制された状態で上側の遊端部47bが係止片46cによって持ち上げられて復元力を蓄え、カム部材46が後方(図10の反時計回り)に揺動されるとコイルスプリング47の上側の遊端部47bが規制ピン49に規制された状態で下側の遊端部47aが係止片46cによって押し下げられて復元力を蓄える。カム部材46が前方に揺動しているときの第1カム面46aは、当該第1カム面46aが脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置する中間のノッチ31を通過するときに、ノッチ31が隠れるようにノッチ31よりも下位に位置する状態で揺動する。
【0032】
図10(a)(b),図11(a)(b),図12に示すように、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2まで操作するとき、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1よりも手前(図10(b)参照)の位置で、係合筒32がスルー機構45のカム部材46の第1カム面46aに接当し、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1(図11(a)参照)を通過するときは、係合筒32はスルー機構45の第1カム面46aでノッチ31よりも下方に押し下げられる。これにより、クラッチ操作レバー20を操作している操縦者はクラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1でのデテント機構25による操作負荷を感じることなくスムーズにクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1を越えて前方の両クラッチ入り操作位置ON2へ向けて操作できる。クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1を越えて、両クラッチ入り操作位置ON2に到達する手前の位置(図11(b)参照)を過ぎると、図12に示すように、カム部材46は係合筒32から離れてカム部材46はコイルスプリング47の復元力で元の位置(規制ピン49によって規制されるコイルスプリング47の復元中央位置)に戻る。クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2まで操作されると、デテント機構25の係合筒32がノッチ31に係合され、クラッチ操作レバー20を動かす操作負荷(操作力)が大きくなるので、操縦者はクラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2に操作されたことを感じることができる。
【0033】
脱穀クラッチ14及び刈取クラッチ19の構造は次のようになっている。図3〜図5に示すように、伝動ベルト13,18に対して作用するテンション輪51,61を軸支したクラッチアーム52,62を設けるとともに、このクラッチアーム52,62を駆動する為の機構として、共通の回転軸59に取り付けられた2つの回転アーム50,60と、各回転アーム50,60に連結された揺動リンク53,63と、回転軸59を回動させる扇型ギヤ54と、扇型ギヤ54と咬合して扇型ギヤ54を駆動するピニオンギヤ55と、ピニオンギヤ55を取り付けたアクチュエータとしての電動モータ21と、各揺動リンク53,63と各クラッチアーム52,62とをそれぞれ連結する連動ロッド56,66及びストローク吸収バネ57,67を設けてある。
【0034】
脱穀クラッチ14を入り切りする操作構造は次のようになっている。図10、図11に示すように、クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に向けて操作する場合、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1(図11(a)参照)を通過するとき、スルー機構45の作用によりデテント機構25は非作用状態となるが、クラッチ操作レバー20の第1カム部42aに脱穀スイッチ43のスイッチ片43aが押圧操作されて脱穀スイッチ43が入り作動する。脱穀スイッチ43が入り作動するとこの検出結果が制御装置58に入力され、制御装置58からの出力により電動モータ21が正転駆動され(図3、図4に示すピニオン55が時計回りに回転する)、クラッチアーム53が引き上げられて脱穀クラッチ14が入る(図4参照)。図4の状態まで回転軸59が回転したことを角度検出器22で検出されると電動モータ21の回転が停止する。
【0035】
クラッチ操作レバー20を引き続いて両クラッチ入り操作位置ON2に操作すると、デテント機構20が作用してクラッチ操作レバー20が位置決めされる。脱穀スイッチ43は脱穀クラッチ入り操作位置ON1から両クラッチ入り操作位置ON2となっても入り状態のままで、クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2になると、クラッチ操作レバー20の第2カム部42bに刈取スイッチ44のスイッチ片44aが押圧操作されて刈取スイッチ44が入り作動する。刈取スイッチ44が入り作動するとこの検出結果が制御装置58に入力され、制御装置58からの出力により電動モータ21が更に正転駆動され、クラッチアーム62が引き上げられて刈取クラッチ19が入る(図5参照)。図5の状態まで回転軸59が回転したことを角度検出器22で検出されると電動モータ21の回転が停止する。これにより刈取脱穀作業が開始可能な状態となる。
【0036】
クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに向けて操作するときは、スルー機構45は非作用となり、中間の脱穀クラッチ入り操作位置ON1ではデテント機構25が作用状態となる。
【0037】
図12、図13(a)(b)に示すように、クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2から、脱穀クラッチ入り操作位置ON1まで操作するときは、カム部材46は中間のノッチ31よりも後方に位置するので、デテント機構25の係合筒32が中間のノッチ31に係合する(図13(a)参照)。これにより、クラッチ操作レバー20を動かすための操作力が大きくなるので、操縦者はクラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1に操作されたことを感じることができる。従って、操縦者は、刈取クラッチ19を切りにした状態で脱穀クラッチ14のみを入り状態に維持させておきたいときは、操縦者はクラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1に操作された状態で、クラッチ操作レバー20から手を離すことで脱穀クラッチ入り操作位置ON1にセットしておくことができる。
【0038】
操縦者は、クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFに位置する作業開始前の状態から、機体の走行及び刈取部2を停止させた状態で、脱穀部3のみ駆動させて行う枕扱ぎを行いたい時には、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから、一旦両クラッチ入り操作位置ON2に操作した後、クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1の位置まで戻す操作を行うことにより、刈取クラッチ19を切り、脱穀クラッチ14のみを入り操作状態とした枕扱ぎ作業を行うことができる。
【0039】
この実施の形態では、両クラッチ入り操作位置ON2にセットされる直前で、スルー機構45のカム部材46が係合筒32から離れ、且つこのときは刈取スイッチ44のスイッチ片44aがクラッチ操作レバー20の第2カム面42bに接当しかけている、又は接当していても刈取クラッチ19は未だ入り状態となっていないので、刈取部2を作動させることなく、脱穀クラッチ14のみを入り状態にすることができる。
【0040】
刈取クラッチ19は、クラッチ操作レバー20とテンション輪61を操作するクラッチアーム62とがリンクやワイヤ等で機械的に連係されている場合は、クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2に操作される直前、又は操作された時点で刈取クラッチ19が入り状態となるように設定せざるを得ないが、この実施の形態では、刈取スイッチ44による検出信号に基づいて電動モータ21を駆動させてピニオンギヤ55で扇型ギヤ54を作動させて連動ロッド66を介してクラッチアーム62が操作されることによって刈取クラッチ19が入るので、クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2にセットされた後、多少のタイムラグ後の刈取クラッチ19が入る。
従って、この実施の形態では、最初から枕扱ぎを行う場合、クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作されたとしても、素早く脱穀クラッチ入り操作位置ON1の操作方向に少し戻すと刈取クラッチ19が入らず、その後引き続いて徐々にクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1にセットすることで、脱穀クラッチ14を入り状態にすることができる。
【0041】
クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1からクラッチ切り操作位置OFFに操作するときは、脱穀クラッチ入り操作位置ON1からクラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFに向けて操作すると、デテント機構25の係合筒32がスルー機構45の第2カム面46bを押圧してカム部材46を揺動させてこれを通過し、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFに戻すことができる。この位置では、ノッチ31に係合筒32が係合してクラッチ操作レバー20の操作力が大きくなるので、操縦者はクラッチ操作レバー20を見なくてもクラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFに位置することを感じることができる。
【0042】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施の形態では、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作する往路でスルー機構45が作用し、クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFへ操作する復路ではスルー機構45が非作用状態となって、復路でデテント機構25が機能するように構成してあるが、スルー機構45を、図15に示すように、脱穀クラッチ入り操作位置ON1に対応する中間のノッチ31を隠すスルー部材45aを設けて、スルー部材45aを図示しない操作具で図15(a)に示す作用姿勢と図15(b)に示す非作用姿勢とに切り換えできるように構成してもよい。このようにすれば、スルー部材45aを作用姿勢に操作することで、クラッチ操作レバー20の往路・復路の両操作でスルー機構45が作用するとともに、スルー部材45aをノッチ31よりも上方に退避させた非作用姿勢に操作することで、クラッチ操作レバー20の往路・復路の両操作において、脱穀クラッチ入り操作位置ON1においてクラッチ操作レバー20をデテント機構25により、位置保持できる。したがって、この場合、枕扱き作業を行うときは、スルー部材45aを非作用姿勢に操作しておくことで、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから一旦両クラッチ入り操作位置ON2に操作することなく、クラッチ切り操作位置OFFから直接脱穀クラッチ入り操作位置NO1に操作して、クラッチ操作レバー20を位置決めすることができる。
【0043】
(2)主たる実施の形態では、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作する往路のときにスルー機構45(カム部材46)が作用し、両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに操作する復路のときにはスルー機構45(カム部材46)が作用せず、脱穀クラッチ入り操作位置ON1でのデテント機構25が機能してクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に確実に操作することができるようにした構成を示したが、図9及び図10においてカム部材46等を紙面で左右を逆に配置してもよい。これにより、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作する往路のときにスルー機構45(カム部材46)が非作用状態となって、途中経路の脱穀クラッチ入り操作位置ON1でデテント機構25が機能してクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置決め操作できる。両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに操作する復路のときにはスルー機構45(カム部材46)が作用して、脱穀クラッチ入り操作位置でデテント機構25が作用せずにクラッチ操作レバー20をスムーズにクラッチきり操作位置OFFに操作することができる。
【0044】
要するに、クラッチ操作レバー20のクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2への操作、及び両クラッチ入り操作位置ON2から前記クラッチ切り操作位置OFFへの操作のうち、少なくとも一方の操作時において、クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置すると、係合部32を被係合部31に係合させないスルー機構45を設けるようにすることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自脱型のコンバインだけでなく、普通型のコンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
2 刈取部
3 脱穀部
14 脱穀クラッチ
19 刈取クラッチ
20 クラッチ操作レバー
25 デテント機構
31 被係合部(ノッチ)
32 係合部(係合筒)
44 刈取スイッチ
45 スルー機構
46 カム部材
47 スプリング
OFF クラッチ切り操作位置
ON1 脱穀クラッチ入り操作位置
ON2 両クラッチ入り操作位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、一本のクラッチ操作レバーの操作で刈取クラッチの入り切りと脱穀クラッチの入り切りの二種類の操作を行えるように構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一本のクラッチ操作レバーの操作で刈取クラッチの入り切りと脱穀クラッチの入り切りの二種類の操作を行えるように構成してあるコンバインとしては、特許文献1の図10に示されているように、クラッチ操作レバーのレバーガイドとして、脱穀クラッチを入り切りする脱穀クラッチ操作域と、その脱穀クラッチ操作域と直交する方向に設けてある刈取クラッチ操作域とを有し、脱穀クラッチ操作域では、クラッチ操作レバーを機体前後方向に揺動操作し、後端のクラッチ切り操作位置より前方に揺動操作すると前端位置で脱穀クラッチが入る。脱穀クラッチ操作域の前端位置における脱穀クラッチ入り操作位置より右方向にクラッチ操作レバーを揺動操作すると刈取クラッチが入る。
【0003】
上記のクラッチ操作レバーの操作では、刈取クラッチと脱穀クラッチとを両者を入り操作するには、クラッチ操作レバーを前後方向と左右方向との二方向に操作する必要がある。しかるに、通常、作業を始めるときは、刈取クラッチを入れずに脱穀クラッチだけを入り状態にすることは殆どないから、クラッチ操作レバーをL字状に操作するのは、操作上煩わしい。
【0004】
そこで、クラッチ操作レバーを前後操作(直線操作)するだけで、
(1)クラッチ操作レバーを刈取クラッチと脱穀クラッチの両クラッチ切りにする「クラッチ切り操作状態」
(2)刈取クラッチを切り脱穀クラッチだけを入りにする「脱穀クラッチ入り操作状態」
(3)両クラッチを入りにする「両クラッチ入り操作状態」
に操作できるようにすることが考えられる。この場合、クラッチ操作レバーの各操作位置を認識できるようにノッチ(被係合部)にローラやボール等の係合部を嵌合させるデテント機構を採用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−171822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デテント機構を採用してクラッチ操作レバーを直線操作できると格段に操作性がよくなるが、通常、作業開始時には、上記(2)の「脱穀クラッチ入り操作状態」を通過(スルー)させて、前記(1)のレバー位置から(3)のレバー位置に操作する。しかし、(2)のレバー位置を通過するときにその都度、(2)のレバー位置でデテント機構による操作抵抗感が大きく煩わしい。
これを軽減ないし解消するには、ノッチを小さくすることが考えられるが、余り小さくしすぎると、(2)のレバー位置を感じることができなくなるだけでなく、作業中の機体振動や不測にクラッチ操作レバーに触れると直ぐにレバー位置が移動してしまうし、レバー位置が移動したことが直ちに認識できない不都合がある。
【0007】
本発明は、クラッチ操作レバーを直線操作できるものでありながら、作業開始時のクラッチ切り操作状態から両クラッチ入り操作状態にするのに、デテント機構の係合部を係合させる被係合部を小さくしなくても、中間操作位置(脱穀クラッチ入り操作位置)を感じることなく両クラッチ入り操作位置に操作することのできるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、刈取部の駆動系を断続する刈取クラッチと脱穀部の駆動系を断続する脱穀クラッチを備え、一本のクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置に操作すると前記刈取クラッチと前記脱穀クラッチの両クラッチが切り状態となり、脱穀クラッチ入り操作位置に操作すると、前記刈取クラッチが切り状態で前記脱穀クラッチのみが入り状態となり、両クラッチ入り操作位置に操作すると前記脱穀クラッチと前記刈取クラッチの両クラッチが入り状態となるように構成してあるコンバインにおいて、
前記クラッチ切り操作位置と前記脱穀クラッチ入り操作位置と前記両クラッチ入り操作位置とを、一つの直線上に配置し、
前記クラッチ操作レバーが前記クラッチ切り操作位置、脱穀クラッチ入り操作位置及び両クラッチ入り操作位置に位置していると、係合部が被係合部に係合して前記クラッチ操作レバーを保持するデテント機構を備えるとともに、
前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、及び前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、少なくとも一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部を前記被係合部に係合させないスルー機構を設けてある。
【0009】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、クラッチ操作レバーがクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置に向けて操作、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置に向けて操作するときに、クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置を通過するときに係合部を被係合部に係合させないスルー機構を設けたので、クラッチ操作レバーがクラッチ切り操作位置と両クラッチ入り操作位置との間の操作途中で脱穀クラッチ操作位置を通過するときに、デテント機構による位置決めによる操作抵抗(係合部が被係合部に係合することによる操作抵抗)が増大するというようなこともなく操作することができる。
【0010】
第1発明によれば、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へとは逆方向(両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置)に操作した場合、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へとは逆方向(クラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置)に操作した場合、途中の脱穀クラッチ入り操作位置においてスルー機構は作用せずに、デテント機構が作動して係合部が被係合部に係合する。従って、デテント機構の位置決めによる操作抵抗(係合部が被係合部に係合することによる操作抵抗)によって、クラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置に位置したことを認識することができ、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置に保持することができるのであり、刈取クラッチを切り脱穀クラッチだけを入りにする脱穀クラッチ入り操作状態を無理なく得ることができる。
【0011】
〔第1発明の効果〕
従って、第1発明によれば、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置への操作又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置への操作時に、クラッチ操作レバーを直線状に操作できるものでありながら、軽快且つ違和感なく楽に操作をすることができる。
【0012】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記スルー機構は、前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、又は前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、いずれか一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記被係合部に前記係合部が係合しないように前記係合部を前記被係合部に対して退避させるカム部材を備えている。
【0013】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置に位置すると、係合部がカム部材によって被係合部に係合しないようにカム部材で係合部の被係合部への係合を阻止している。これにより、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作する操作方向の途中で、前記係合部がカム部材に案内されることにより、係合部が被係合部に係合することがないので、クラッチ操作レバーの動きがスムーズとなり、一操作感覚でクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ、又は両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作することができる。
【0014】
そして、カム部材を係合部の移動経路から退避させることで脱穀クラッチ入り操作位置で係合部を被係合部に係合させることが可能となる。この場合、クラッチ操作レバーを両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作するときにおいては、主たる実施の形態のように、脱穀クラッチ入り操作位置で係合部を被係合部に係合させるようにしておく。又は、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ操作するときに脱穀クラッチ入り操作位置で係合部を被係合部に係合させるようにする。
【0015】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明又は第2発明の構成において、前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部が前記被係合部に係合せず、前記クラッチ操作レバーの前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置すると、前記係合部が前記被係合部に係合するように、前記スルー機構を構成してある。
【0016】
〔第3発明の作用効果〕
通常、コンバインによる収穫作業では、圃場の全ての植立穀稈を走行しながら刈取って脱穀することはできず、畦際近くや圃場のコーナー部分に刈り残しが生じる。そこでこれらの刈り残した植立穀稈を手刈りして、枕扱きを行う必要がある。従って、この場合のために、刈取クラッチを切りにした状態で脱穀クラッチのみを入り状態にする作業形態が必須となっている。
【0017】
第3発明によれば、クラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ操作する往路では、前記スルー機構が作用して途中の脱穀クラッチ入り操作位置で、クラッチ操作レバーの動きを止めることなく、クラッチ切り操作位置から両クラッチ入り操作位置へ操作することができ、両クラッチ入り操作位置からクラッチ切り操作位置へ操作する復路では中間の脱穀クラッチ入り操作位置でデテント機構が作用して、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置で位置決めできるので、スルー機構を別途作用状態と非作用状態とに切り換える必要がなく、クラッチ操作レバーの操作だけで、脱穀クラッチを入り操作することができる。
【0018】
そして、畦際や圃場の角部で刈り残した植立穀稈は、作業補助者がコンバインによる収穫作業中に枕刈りをして準備しておくことにより、一つの圃場のコンバイン走行による収穫作業を終えた後、クラッチ操作レバーを脱穀クラッチ入り操作位置に操作して、引き続いて枕扱ぎを行うことができるので、コンバイン走行による収穫作業と枕扱き作業とを連続して作業することができて、作業性のよいコンバインによる脱穀収穫作業を行うことができるに至った。ここに往路でスルー機構を作用させ、復路でデテント機構を機能させる点に技術的意義がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】刈取部と脱穀部への動力伝達系を示す構成図である。
【図3】刈取クラッチと脱穀クラッチとが切り状態のときの操作構造を示す要部側面図である。
【図4】刈取クラッチが切り状態で脱穀クラッチが入り状態のときの操作構造を示す要部側面図である。
【図5】刈取クラッチと脱穀クラッチとが入り状態のときの操作構造を示す要部側面図である。
【図6】刈取クラッチと脱穀クラッチとが切り状態のときのクラッチ操作レバーの操作構造の要部を示す一部破断側面図である。
【図7】コンバインの運転部を示す部分平面図である。
【図8】クラッチ操作レバーの操作構造の要部を示す一部縦断背面図である。
【図9】クラッチ操作レバーの組み付け分解斜視図である。
【図10】(a)はクラッチ操作レバーが刈取クラッチと脱穀クラッチとが共にクラッチ切り位置に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図、(b)はクラッチ操作レバーがクラッチ切り操作位置と脱穀クラッチのみが入る脱穀クラッチ入り操作位置との間に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図11】(a)はクラッチ操作レバーを両クラッチ入り操作位置方向へ操作して脱穀クラッチのみが入った脱穀クラッチ入り操作位置に位置したときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図、(b)はクラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置と脱穀クラッチ及び刈取クラッチが入る両クラッチ入り操作位置との間に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図12】クラッチ操作レバーが脱穀クラッチと刈取クラッチが入った両クラッチ入り操作位置に位置するときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図13】(a)はクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置方向へ操作して刈取クラッチが切れ脱穀クラッチのみが入り状態となる脱穀クラッチ入り操作位置に位置したときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図、(b)はクラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置から脱穀クラッチ及び刈取クラッチが切れたクラッチ切り操作位置の手前まで操作したときのクラッチ操作レバーとスルー機構との関係を示す側面図である。
【図14】コンバインの制御系の要部を示すブロック図である。
【図15】(a)(b)はスルー機構の別実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図で、1は運転部、2は刈取部、3は脱穀部、4は穀粒タンク、5はクローラ式の走行装置である。6はフィードチェーン、7は刈取部2で刈取った穀稈を合流してフィードチェーン6に送る縦搬送機構である。
【0021】
脱穀部3及び刈取部2への伝動構造について説明する。図2に示すように、ミッションケース9に静油圧式無段変速装置80を設け、静油圧式無段変速装置80の入力軸をミッションケース9の内部に延出している。入力軸10とエンジン11とを伝動ベルト12で連動し、エンジン11と脱穀部3とを伝動ベルト13で伝動可能に構成し、伝動ベルト13に対して脱穀クラッチ14を設けてある。一方、ミッションケース9内には、入力軸10と平行に刈取部2への出力軸16を設け、出力軸16に刈取変速ギヤ機構17を設けてある。出力軸16と刈取部2の入力部とに亘って伝動ベルト18を架設してあり、伝動ベルト18に対して刈取クラッチ19を設けてある。
【0022】
脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19との操作構造について説明する。図3〜図5に示すベルトテンション式の脱穀クラッチ14とベルトテンション式の刈取クラッチ19とを、図6に示すクラッチ操作レバー20による人為操作によって入り切りするように構成してある。
【0023】
脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19は、図3〜図5に示すように、電動モータ21で駆動されるテンション式のクラッチで構成されている。これらのクラッチ14,19は、図7、図8に示すように、操縦ボックス23に形成されたガイド溝24に沿って、横向き軸心P周りで揺動可能なクラッチ操作レバー20による人為操作によって入り切りするように構成してある。
【0024】
図6に示すように、前記クラッチ操作レバー20は、後方位置で脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19のクラッチ切り操作位置OFFになる。このクラッチ切り操作位置OFFより前方に揺動操作すると中間位置で脱穀クラッチ14が入る脱穀クラッチ入り操作位置ON1となり、前端位置で脱穀クラッチ14と刈取クラッチ19との両クラッチ14,19が入る両クラッチ入り操作位置ON2となる。クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1にあるときは、脱穀クラッチ14だけが入り状態となり、刈取クラッチ19は切り状態にある。
【0025】
クラッチ切り操作位置OFFと脱穀クラッチ入り操作位置ON1と両クラッチ入り操作位置ON2とが、平面視で一つの直線上に位置するように一直線状に配置されている。クラッチ操作レバー20におけるクラッチ切り操作位置OFF、脱穀クラッチ入り操作位置ON1及び両クラッチ入り操作位置ON2の各位置でデテント機構25が作用して、クラッチ操作レバー20の位置決めが可能に構成されている。
【0026】
クラッチ操作レバー20は、機体に取り付けられた支持板26にピン27を介して横向き軸芯P周りに揺動自在に支持されている。即ち、支持板26には、ピン27を挿通する筒ボス28が固設されており、クラッチ操作レバー20に固定したピン27を筒ボス28に挿通してベータピン29で抜け止めを施してある。
【0027】
前記支持板26には、図8、図9に示すように、デテント機構25を構成する扇型孔30を形成してあり、扇型孔30の上部に位置決め用のノッチ31(被係合部に相当)を3つ形成してある。
前記クラッチ操作レバー20に、前記ノッチ31に係合する係合筒32(係合部に相当)を備えた係合部材37を取り付けてある。クラッチ操作レバー20に上下に長い長孔33を形成してある。前記係合筒32に鍔付きピン34を挿通し、ベータピン35で鍔付きピン34の抜け止めを施してある。
【0028】
前記係合筒32は鍔付きピン34により側面視略半円形で正面視U字状の部材36に回転自在に支持してあり、これにより係合部材37を形成してある。係合部材37の下部に、鍔付きピン34の振れ止め用の平面視コ字状の部材38と、支持杆40を固定してある。クラッチ操作レバー20に支持杆40を上下動自在に保持する底板付きの保持筒41を取り付けてあり、保持筒41に内装されたコイルスプリング39により支持杆40が上方に付勢されている。
【0029】
これにより、クラッチ操作レバー20を操作すると、クラッチ切り操作位置OFF、脱穀クラッチ入り操作位置ON1及び両クラッチ位置操作位置ON2の各位置で、係合部材37がコイルスプリング39に押圧されてノッチ31に係合筒32が係合されることで、クラッチ操作レバー20が位置決めされる。
【0030】
クラッチ操作レバー20の横向き軸心Pよりも下方にスイッチ押圧用のカム部42が形成されている。前記支持板26には、脱穀スイッチ43と刈取スイッチ44が取り付けられている。クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFに位置しているときは脱穀スイッチ43と刈取スイッチ44はともに切り状態にある。クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に操作すると、脱穀スイッチ43のスイッチ片43aが第1カム部42aに押圧されて脱穀スイッチ43が入り状態となる。このとき、刈取スイッチ44は切り状態にある。クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2に操作すると、脱穀スイッチ43は入り状態のままで、刈取スイッチ44のスイッチ片44aが第2カム部42bに押圧されて刈取スイッチ44も入り状態となる。
【0031】
前記支持板26の上部には、スルー機構45が設けられている。このスルー機構45は、カム部材46と、カム部材46の係止片46cに接当する一対の遊端部47a,47bを備えたコイルスプリング47と、支持板26及びカム部材46に挿通され、コイルスプリング47を巻回したカムピン48と、支持板26に固定され、コイルスプリング47の遊端部47a,47bを規制する規制ピン49とからなる。カム部材46には、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に向けて操作したときに係合部材37(係合筒32)に接当してカム部材46を前方に揺動させる第1カム面46aと、クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに向けて操作したときに係合部材37(係合筒32)に接当してカム部材46を後方に揺動させる第2カム面46bと、カム部材46を前方へ揺動又は後方へ揺動させたときにコイルスプリング47の一方の遊端部47a,47bに接当する係止片46cとを備えている。カム部材46が前方(図10の時計回り)に揺動されるとコイルスプリング47の下側の遊端部47aが支持板26に固定された規制ピン49に規制された状態で上側の遊端部47bが係止片46cによって持ち上げられて復元力を蓄え、カム部材46が後方(図10の反時計回り)に揺動されるとコイルスプリング47の上側の遊端部47bが規制ピン49に規制された状態で下側の遊端部47aが係止片46cによって押し下げられて復元力を蓄える。カム部材46が前方に揺動しているときの第1カム面46aは、当該第1カム面46aが脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置する中間のノッチ31を通過するときに、ノッチ31が隠れるようにノッチ31よりも下位に位置する状態で揺動する。
【0032】
図10(a)(b),図11(a)(b),図12に示すように、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2まで操作するとき、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1よりも手前(図10(b)参照)の位置で、係合筒32がスルー機構45のカム部材46の第1カム面46aに接当し、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1(図11(a)参照)を通過するときは、係合筒32はスルー機構45の第1カム面46aでノッチ31よりも下方に押し下げられる。これにより、クラッチ操作レバー20を操作している操縦者はクラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1でのデテント機構25による操作負荷を感じることなくスムーズにクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1を越えて前方の両クラッチ入り操作位置ON2へ向けて操作できる。クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1を越えて、両クラッチ入り操作位置ON2に到達する手前の位置(図11(b)参照)を過ぎると、図12に示すように、カム部材46は係合筒32から離れてカム部材46はコイルスプリング47の復元力で元の位置(規制ピン49によって規制されるコイルスプリング47の復元中央位置)に戻る。クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2まで操作されると、デテント機構25の係合筒32がノッチ31に係合され、クラッチ操作レバー20を動かす操作負荷(操作力)が大きくなるので、操縦者はクラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2に操作されたことを感じることができる。
【0033】
脱穀クラッチ14及び刈取クラッチ19の構造は次のようになっている。図3〜図5に示すように、伝動ベルト13,18に対して作用するテンション輪51,61を軸支したクラッチアーム52,62を設けるとともに、このクラッチアーム52,62を駆動する為の機構として、共通の回転軸59に取り付けられた2つの回転アーム50,60と、各回転アーム50,60に連結された揺動リンク53,63と、回転軸59を回動させる扇型ギヤ54と、扇型ギヤ54と咬合して扇型ギヤ54を駆動するピニオンギヤ55と、ピニオンギヤ55を取り付けたアクチュエータとしての電動モータ21と、各揺動リンク53,63と各クラッチアーム52,62とをそれぞれ連結する連動ロッド56,66及びストローク吸収バネ57,67を設けてある。
【0034】
脱穀クラッチ14を入り切りする操作構造は次のようになっている。図10、図11に示すように、クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に向けて操作する場合、クラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1(図11(a)参照)を通過するとき、スルー機構45の作用によりデテント機構25は非作用状態となるが、クラッチ操作レバー20の第1カム部42aに脱穀スイッチ43のスイッチ片43aが押圧操作されて脱穀スイッチ43が入り作動する。脱穀スイッチ43が入り作動するとこの検出結果が制御装置58に入力され、制御装置58からの出力により電動モータ21が正転駆動され(図3、図4に示すピニオン55が時計回りに回転する)、クラッチアーム53が引き上げられて脱穀クラッチ14が入る(図4参照)。図4の状態まで回転軸59が回転したことを角度検出器22で検出されると電動モータ21の回転が停止する。
【0035】
クラッチ操作レバー20を引き続いて両クラッチ入り操作位置ON2に操作すると、デテント機構20が作用してクラッチ操作レバー20が位置決めされる。脱穀スイッチ43は脱穀クラッチ入り操作位置ON1から両クラッチ入り操作位置ON2となっても入り状態のままで、クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2になると、クラッチ操作レバー20の第2カム部42bに刈取スイッチ44のスイッチ片44aが押圧操作されて刈取スイッチ44が入り作動する。刈取スイッチ44が入り作動するとこの検出結果が制御装置58に入力され、制御装置58からの出力により電動モータ21が更に正転駆動され、クラッチアーム62が引き上げられて刈取クラッチ19が入る(図5参照)。図5の状態まで回転軸59が回転したことを角度検出器22で検出されると電動モータ21の回転が停止する。これにより刈取脱穀作業が開始可能な状態となる。
【0036】
クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに向けて操作するときは、スルー機構45は非作用となり、中間の脱穀クラッチ入り操作位置ON1ではデテント機構25が作用状態となる。
【0037】
図12、図13(a)(b)に示すように、クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2から、脱穀クラッチ入り操作位置ON1まで操作するときは、カム部材46は中間のノッチ31よりも後方に位置するので、デテント機構25の係合筒32が中間のノッチ31に係合する(図13(a)参照)。これにより、クラッチ操作レバー20を動かすための操作力が大きくなるので、操縦者はクラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1に操作されたことを感じることができる。従って、操縦者は、刈取クラッチ19を切りにした状態で脱穀クラッチ14のみを入り状態に維持させておきたいときは、操縦者はクラッチ操作レバー20が脱穀クラッチ入り操作位置ON1に操作された状態で、クラッチ操作レバー20から手を離すことで脱穀クラッチ入り操作位置ON1にセットしておくことができる。
【0038】
操縦者は、クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFに位置する作業開始前の状態から、機体の走行及び刈取部2を停止させた状態で、脱穀部3のみ駆動させて行う枕扱ぎを行いたい時には、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから、一旦両クラッチ入り操作位置ON2に操作した後、クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1の位置まで戻す操作を行うことにより、刈取クラッチ19を切り、脱穀クラッチ14のみを入り操作状態とした枕扱ぎ作業を行うことができる。
【0039】
この実施の形態では、両クラッチ入り操作位置ON2にセットされる直前で、スルー機構45のカム部材46が係合筒32から離れ、且つこのときは刈取スイッチ44のスイッチ片44aがクラッチ操作レバー20の第2カム面42bに接当しかけている、又は接当していても刈取クラッチ19は未だ入り状態となっていないので、刈取部2を作動させることなく、脱穀クラッチ14のみを入り状態にすることができる。
【0040】
刈取クラッチ19は、クラッチ操作レバー20とテンション輪61を操作するクラッチアーム62とがリンクやワイヤ等で機械的に連係されている場合は、クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2に操作される直前、又は操作された時点で刈取クラッチ19が入り状態となるように設定せざるを得ないが、この実施の形態では、刈取スイッチ44による検出信号に基づいて電動モータ21を駆動させてピニオンギヤ55で扇型ギヤ54を作動させて連動ロッド66を介してクラッチアーム62が操作されることによって刈取クラッチ19が入るので、クラッチ操作レバー20が両クラッチ入り操作位置ON2にセットされた後、多少のタイムラグ後の刈取クラッチ19が入る。
従って、この実施の形態では、最初から枕扱ぎを行う場合、クラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作されたとしても、素早く脱穀クラッチ入り操作位置ON1の操作方向に少し戻すと刈取クラッチ19が入らず、その後引き続いて徐々にクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1にセットすることで、脱穀クラッチ14を入り状態にすることができる。
【0041】
クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1からクラッチ切り操作位置OFFに操作するときは、脱穀クラッチ入り操作位置ON1からクラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFに向けて操作すると、デテント機構25の係合筒32がスルー機構45の第2カム面46bを押圧してカム部材46を揺動させてこれを通過し、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFに戻すことができる。この位置では、ノッチ31に係合筒32が係合してクラッチ操作レバー20の操作力が大きくなるので、操縦者はクラッチ操作レバー20を見なくてもクラッチ操作レバー20がクラッチ切り操作位置OFFに位置することを感じることができる。
【0042】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施の形態では、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作する往路でスルー機構45が作用し、クラッチ操作レバー20を両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFへ操作する復路ではスルー機構45が非作用状態となって、復路でデテント機構25が機能するように構成してあるが、スルー機構45を、図15に示すように、脱穀クラッチ入り操作位置ON1に対応する中間のノッチ31を隠すスルー部材45aを設けて、スルー部材45aを図示しない操作具で図15(a)に示す作用姿勢と図15(b)に示す非作用姿勢とに切り換えできるように構成してもよい。このようにすれば、スルー部材45aを作用姿勢に操作することで、クラッチ操作レバー20の往路・復路の両操作でスルー機構45が作用するとともに、スルー部材45aをノッチ31よりも上方に退避させた非作用姿勢に操作することで、クラッチ操作レバー20の往路・復路の両操作において、脱穀クラッチ入り操作位置ON1においてクラッチ操作レバー20をデテント機構25により、位置保持できる。したがって、この場合、枕扱き作業を行うときは、スルー部材45aを非作用姿勢に操作しておくことで、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから一旦両クラッチ入り操作位置ON2に操作することなく、クラッチ切り操作位置OFFから直接脱穀クラッチ入り操作位置NO1に操作して、クラッチ操作レバー20を位置決めすることができる。
【0043】
(2)主たる実施の形態では、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作する往路のときにスルー機構45(カム部材46)が作用し、両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに操作する復路のときにはスルー機構45(カム部材46)が作用せず、脱穀クラッチ入り操作位置ON1でのデテント機構25が機能してクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に確実に操作することができるようにした構成を示したが、図9及び図10においてカム部材46等を紙面で左右を逆に配置してもよい。これにより、クラッチ操作レバー20をクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2に操作する往路のときにスルー機構45(カム部材46)が非作用状態となって、途中経路の脱穀クラッチ入り操作位置ON1でデテント機構25が機能してクラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置決め操作できる。両クラッチ入り操作位置ON2からクラッチ切り操作位置OFFに操作する復路のときにはスルー機構45(カム部材46)が作用して、脱穀クラッチ入り操作位置でデテント機構25が作用せずにクラッチ操作レバー20をスムーズにクラッチきり操作位置OFFに操作することができる。
【0044】
要するに、クラッチ操作レバー20のクラッチ切り操作位置OFFから両クラッチ入り操作位置ON2への操作、及び両クラッチ入り操作位置ON2から前記クラッチ切り操作位置OFFへの操作のうち、少なくとも一方の操作時において、クラッチ操作レバー20を脱穀クラッチ入り操作位置ON1に位置すると、係合部32を被係合部31に係合させないスルー機構45を設けるようにすることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自脱型のコンバインだけでなく、普通型のコンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
2 刈取部
3 脱穀部
14 脱穀クラッチ
19 刈取クラッチ
20 クラッチ操作レバー
25 デテント機構
31 被係合部(ノッチ)
32 係合部(係合筒)
44 刈取スイッチ
45 スルー機構
46 カム部材
47 スプリング
OFF クラッチ切り操作位置
ON1 脱穀クラッチ入り操作位置
ON2 両クラッチ入り操作位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部の駆動系を断続する刈取クラッチと脱穀部の駆動系を断続する脱穀クラッチを備え、一本のクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置に操作すると前記刈取クラッチと前記脱穀クラッチの両クラッチが切り状態となり、脱穀クラッチ入り操作位置に操作すると、前記刈取クラッチが切り状態で前記脱穀クラッチのみが入り状態となり、両クラッチ入り操作位置に操作すると前記脱穀クラッチと前記刈取クラッチの両クラッチが入り状態となるように構成してあるコンバインにおいて、
前記クラッチ切り操作位置と前記脱穀クラッチ入り操作位置と前記両クラッチ入り操作位置とを、一つの直線上に配置し、
前記クラッチ操作レバーが前記クラッチ切り操作位置、脱穀クラッチ入り操作位置及び両クラッチ入り操作位置に位置していると、係合部が被係合部に係合して前記クラッチ操作レバーを保持するデテント機構を備えるとともに、
前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、及び前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、少なくとも一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部を前記被係合部に係合させないスルー機構を設けてあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記スルー機構は、前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、又は前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、いずれか一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記被係合部に前記係合部が係合しないように前記係合部を前記被係合部に対して退避させるカム部材を備えている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部が前記被係合部に係合せず、前記クラッチ操作レバーの前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置すると、前記係合部が前記被係合部に係合するように、前記スルー機構を構成してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項1】
刈取部の駆動系を断続する刈取クラッチと脱穀部の駆動系を断続する脱穀クラッチを備え、一本のクラッチ操作レバーをクラッチ切り操作位置に操作すると前記刈取クラッチと前記脱穀クラッチの両クラッチが切り状態となり、脱穀クラッチ入り操作位置に操作すると、前記刈取クラッチが切り状態で前記脱穀クラッチのみが入り状態となり、両クラッチ入り操作位置に操作すると前記脱穀クラッチと前記刈取クラッチの両クラッチが入り状態となるように構成してあるコンバインにおいて、
前記クラッチ切り操作位置と前記脱穀クラッチ入り操作位置と前記両クラッチ入り操作位置とを、一つの直線上に配置し、
前記クラッチ操作レバーが前記クラッチ切り操作位置、脱穀クラッチ入り操作位置及び両クラッチ入り操作位置に位置していると、係合部が被係合部に係合して前記クラッチ操作レバーを保持するデテント機構を備えるとともに、
前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、及び前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、少なくとも一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部を前記被係合部に係合させないスルー機構を設けてあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記スルー機構は、前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作、又は前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作のうち、いずれか一方の操作時において、前記クラッチ操作レバーが脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記被係合部に前記係合部が係合しないように前記係合部を前記被係合部に対して退避させるカム部材を備えている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記クラッチ操作レバーの前記クラッチ切り操作位置から前記両クラッチ入り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置しても前記係合部が前記被係合部に係合せず、前記クラッチ操作レバーの前記両クラッチ入り操作位置から前記クラッチ切り操作位置への操作時には、前記クラッチ操作レバーが前記脱穀クラッチ入り操作位置に位置すると、前記係合部が前記被係合部に係合するように、前記スルー機構を構成してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−92093(P2011−92093A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249250(P2009−249250)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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