説明

コンビナトリアルドラッグについての薬物の候補物質を同定および選択する方法

新規なコンビナトリアルドラッグの開発における機能的作用に起因する化学的存在を同定かつ選択する方法が提供される。2またはそれ以上の化合物のコンビネーションは相乗作用を示す。該化合物は、例えば、抗体、抗生物質、抗腫瘍剤、抗AIDS剤、抗成長因子、抗ウイルス剤、可溶性受容体、サイトカイン、RNAi、ワクチンおよびその混合物であり得る。該方法は、a)各々が化学的存在を含むn個のサンプルを準備し、b)n個のサンプルの2またはそれ以上を可能なすべてのコンビネーションにて混合し、c)この混合物を機能性アッセイに供し、該機能的作用に起因する存在を同定することを含む。工程a−cは機能的作用に起因する工程cからの化学的存在に対して繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能的作用を有する、あるいはその作用に起因する化学的存在を同定および選択する方法に関する。この同定および選択は、2種またはそれ以上の化合物を一緒に組み合わせることが相乗作用、例えば疾患の治療または予防の改善をもたらしうる化学的存在の組み合わせを同定することについて相乗作用を示す、新規なコンビナトリアルドラッグの創薬および開発において有用である。本発明はまた、最適な効能および薬効を示すコンビナトリアルドラッグを得るために、化学的存在の間の最適な化学量論的割合を同定および選択する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト抗体応答は天然のポリクローナルによるものである。これまで開発され、市販されてきた組換え抗体産物のほとんど大部分はモノクローナル抗体であり、近年においては、新規な一連のポリクローナル抗体産物もまた開発されている。これらは2種またはそれ以上の異なる抗体を含む組換え抗体組成物であり、その各々が工業的に生産されている、組換えモノクローナル抗体の「カクテル」として、あるいは単一のバッチにて生産される組換えポリクローナル抗体として、産生され得る。後者の方法はWibergら、Biotechnol. Bioeng. 94: 396-405 (2006) に記載されている。Logtenberg(Tends in Biotechnology, 25 (9): 390-394, 2007)は抗体コンビネーションまたはカクテルの関する文献を報告しており、ウイルス、トキシンまたは成長因子などの可溶性分子、ならびにHER−2などの細胞結合分子および癌関連の細胞表面分子を含む、多くの標的に対する抗体カクテルの相乗作用または相加作用の例を記載する。Logtenbergは相乗的な抗体のコンビネーションの設計の仕方についていかなる指針も提供していない。
【0003】
Bregenholt & Haurum(Expert Opin Biol Ther. 2004 Mar; 4 (3): 387-96)は、ウイルスおよび細菌などの大集団における生物兵器である物質に対する幅広い保護を提供するためには、微生物が認識されているエピトープでの変異を介して中和抗体から逃れることを防止するため、病原体特異的ポリクローナル抗体は所定の表現型に対する広範囲の反応性に及ぶことが理想的であると教示している。
【0004】
Bregenholtら(Curr Pharm Des. 2006; 12 (16): 2007-2015)はウイルス特異的ポリクローナル抗体薬の設計に関する指針を記載する。彼らは、抗体レパートリーは、できる限り中和ヒト免疫応答の酷似する抗体組成物を維持しながらも、できるだけ広い一連の中和エピトープを含むように選択されるべきであると結論付けている。
【0005】
WO2007/101441は組換えポリクローナル抗RSV抗体を開示する。特に、GおよびFの両方の蛋白上の複数のエピトープを対象とする、抗RSV組換えポリクローナル抗体(rpAb)を開示する。保存されている群に属し、サブタイプ特異的群および株特異的群にも属する可能性のあるG蛋白エピトープは抗RSVrpAbでカバーされることが好ましい。
【0006】
WO2006/007850はモノクローナル抗RhD抗体よりも利点のある可能性のある組換えポリクローナル抗RhesusD抗体を開示する。1種より多くの抗体があらゆる可能性のあるRDエピトープをカバーすることで、抗RhDrpAb組成物はRhD(−)およびRhD(+)サブタイプに関わりなくRhD(+)の子供を有するRhDVIの両方の女性の予防的処置に用いることができる。
【0007】
WO2007/065433は組換えポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体を開示する。ポリクローナル抗体は、複数のIMVおよび/またはEEV粒子の蛋白を、好ましくはまた、個々のIMV/EEV蛋白上の複数のエピトープを対象とする別個の抗体を含むのが有利であると記載されている。さらには、抗オルトポックスウイルスrpAbの所望の成分としての、オルトポックスウイルス関連の補体活性化のレギュレータ(RCA)に対する反応性を有する抗体も記載されている。
【0008】
Devauxら(Mol. Cell. Chem. 74: 117-128(1987)は、2種の異なる抗体のコンビネーションに対して、共同作用の可能性について試験するアッセイの実施を含め、スタフィロコッカス・アウレウス・ヌクレアーゼを阻害するのにモノクローナル抗体の使用を開示する。
【0009】
モノクローナル抗体は、次第に、例えば細胞増殖抑制剤、化学療法剤、チロシンキナーゼ阻害剤および他の抗体(例えば、Avastin(登録商標)と一緒に用いられるHerceptin(登録商標))とのコンビネーション療法にて用いられる。これらの治療方法では、その最適なコンビネーションが選択されることを確実にするためにコンビネーション療法を合理的に設計する必要がある。
【0010】
臨床的に組み合わせて用いられる他の化合物として、抗生物質、抗癌剤、抗AIDS剤、抗成長因子、抗ウイルス剤、可溶性受容体、RNAiおよびワクチンが挙げられる。
【0011】
コンビナトリアルドラッグを設計する場合、2種の異なる目標に狙いを定めることができる。コンビナトリアルドラッグの一の型において、化合物は同じ機能を有するか、または同じ機能に起因するかもしれないが、組み合わせて一緒に投与されると、相乗作用を示す。コンビナトリアルドラッグのもう一つ別の型において、化合物は異なる機能を示し、そのために複数の医学的症状を治療することのできる一の薬物を開発することができる。
【0012】
膨大な数の可能性のある薬物の候補体が混合して含まれている場合、最適なドラッグ設計は最初から明らかでないが、経験的に確立されているに違いない場合を含め、相乗作用が得られることを確実にするであろう合理的なドラッグの設計に対する要求がある。例えば、抗体を小分子ドラッグと混合してコンビネーション治療を提供する、より複雑な場合でも、合理的なドラッグの設計に対する要求がある。
【0013】
異なるドラッグ候補体の最適な混合物を同定するチャレンジは特にポリクローナル抗体組成物と関連するものであり、その目的は特定の標的抗原と特異的に結合する異なるモノクローナル抗体の混合物を提供することであり、それによりヒトおよびヒト以外の動物に存在するような自然の抗体応答をできるだけ広い範囲まで模倣するものである。一のチャレンジは、正に、個々のポリクローナル抗体組成物にある異なる抗体の「最適な」数を決定することであり、例えば、2または3種の抗体が、5または10種の抗体によって得られる作用と略同様に良好な治療作用を提供するかどうかを決定することである。仮に、例えば、生成費用を考慮して、組成物中の異なる抗体の概数が予め決定されるとしても、最適なコンビネーションを同定する作業は決して取るに足らないものではない。例えば、その目的が5種の抗体を含むポリクローナル抗体を提供することであり、30種の候補体の抗体があり、その中から選択すべき場合には、5種の抗体の独特なコンビネーションの数は142506通りであり、6種の抗体を含むポリクローナル抗体が36種の候補体の抗体より選択する場合には、その独特なコンビネーションの数は二百万近くになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、所望の機能的作用を有する混合物を同定するために、複数の化学的存在から、典型的には10種より多くの存在から、2種またはそれ以上の存在の混合物を評価する合理的方法を提供することである。この方法により同定された混合物は一の特異的機能性パラメータについて相乗作用を示すか、あるいは該混合物は異なる機能的作用を有する異なる化学的存在が同じドラッグ中に一緒に存在するということから2種またはそれ以上の機能的作用を示す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、第一の態様において、本発明は、所望の機能的作用を示す少なくとも2種の化学的存在を含む混合物を提供するために、機能的作用を有する、または該作用に起因する化学的存在を同定かつ選択する方法であって、
a)各々が試験されるべき化学的存在を含む、n個のサンプルを準備し;
b)2種またはそれ以上の当該n個のサンプルを可能なすべてのコンビネーションで混合し、第一の試験されるべき混合物のセットを得;
c)該第一の混合物のセットを機能性パラメータの測定能を有する機能性アッセイに付し、その機能的作用に起因している化学的存在を同定し;
d)各々が工程c)において機能的作用に起因している化学的存在を含むm個のサンプルを選択し、ここでmはnよりも小さく;
e)該m個のサンプルを可能なすべてのコンビネーションにて混合し、第二の試験されるべき混合物のセットを得;
f)該第二の混合物のセットを機能性パラメータの測定能を有する機能性アッセイに付し、その機能的作用に起因している化学的存在を同定し;および
g)所望の機能的作用を有する混合物を選択する
工程を含む、方法に関する。
【0016】
上記した方法は、合理的手段にて、試験されるべきn個のサンプルの可能なすべての混合物についての情報を提供する点で独特なものである。可能なすべての混合物を機能的作用について調査し、最適な機能的作用を示す混合物を同定し、また他の化合物の機能を強化する化合物を選択することも可能となる。
【0017】
多種のサンプルが試験されるべき状況では、上記した本発明の基本的な方法は、付加的な工程を含めることでさらに合理化されてもよい。第一に、n個のサンプルをサブグループに分け、その後で各サブグループ中のサンプルを工程a)、b)およびc)に供し、所望によりまた工程d)、e)およびf)に供してもよい。各グループにおいて、ついで、工程c)、および所望により工程f)において得られた結果に基づいて、例えば効能または薬効基準に基づいて、サンプルを選択し、ついでこれらの最も効能のある化学的存在だけを含む新しい混合物を混合して試験する。このように、混合物を調製し、機能性アッセイを行うことで行われるべき仕事の量は最低に維持される。別の状況で、かなりの数の化学的存在を含む混合物が目標とされてもよく、かかる場合には、小数の化学的存在を含む最も効能がある混合物を最初に同定して選択し、その後でこれらの選択された混合物を混合して分析される。このように、本発明の方法は、最低の時間および労力で最も効能があり、効果的な混合物を同定する系統的かつ合理的な方法を提供するように修飾される。
本発明の方法のこの系統的かつ合理的な操作方法によれば、本発明の方法は、自動操作に、例えばロボットによる操作に十分に適合される。
【0018】
もう一つ別の態様において、本発明は、少なくとも2種の化学的存在を含む混合物中で、化学的存在の間の最適な化学量論的割合を同定かつ選択する方法であって、該混合物が所望の機能的作用を示し、
aa)各々が一の化学的存在を混合物中にあるように含むp個のサンプルを準備し;
bb)該p個のサンプルの各々をq倍に希釈し、p個の一連のサンプルを得、その各々が同じ化学的存在を異なる濃度で含み、
cc)工程aa)およびbb)にて得られたサンプルの2種またはそれ以上を可能なすべてのコンビネーションで混合して、試験されるべき混合物を得、
dd)該混合物を機能的作用の測定能を有する機能性アッセイに供して、測定される機能的作用と混合物中の化学的存在の濃度との関係を同定し、および
ee)所望の機能的作用を有する混合物を選択する
ことを含む、方法に関する。
【0019】
この操作により、混合物中に存在する化学的存在の間の最適な化学量論的割合が系統的かつ合理的な方法にて同定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一群のドラッグの最も効能のあるコンビネーションを同定するのに、本発明の選択的方法を行うための一の方法の斜視図を示す。
【図2】8種のドラッグ候補体の第一、第二および第三層を96ウェルプレートに添加した後のレシーバープレートのレイアウトの斜視図を示す。A)層1、B)層1+2、およびC)層1+2+3。8種のドラッグ候補体は異なるグレーの色合いで示される。
【図3】種々の抗体を含有する混合物についてのA431NS細胞成長の%MAC(%代謝活性細胞)の散布図を示す。各ドットは6つの試験ウェルの平均を示す。個々の抗生物質を含有するすべての混合物の中央%MACも示す。点線はA431NS細胞成長に対して効果のないレベルを示す。
【図4】上図は、最も高い薬効を有する20種の抗体の混合物の平均%MACをSEMと共に示す棒グラフであり、下図にて最終グループにて個々の抗体を含有するすべての混合物についてのA431NS細胞増殖の%MACの散布図を示す。各ドットは6つの試験ウェルの平均を示す。すべての抗体の混合物の中央%MACも示す。点線はA431NS細胞成長に対して効果のないレベルを示す。
【図5】上図は、最も高い薬効を有する20種の抗体の混合物の平均%MACをSEMと共に示す棒グラフである。下図にて、最終グループにてすべての2−ミックス含有の抗体についてのA431NS細胞増殖の%MACの散布図を示す。各ドットは6つの試験ウェルの平均を示す。すべての抗体の混合物の中央%MACも示す。点線はA431NS細胞成長に対して効果のないレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書中で使用される「化学的存在」なる語は、化合物または2種またはそれ以上の化合物のコンビネーションを意味し、そのコンビネーションにて2種またはそれ以上の化合物の間の化学量論的割合は一定値で固定される。
【0022】
本明細書中で使用される「n個のサンプルの2種またはそれ以上を可能なすべてのコンビネーションで混合する」なる記載は、各混合物にて所定の数の化学的存在を有する、n個のサンプルの可能なすべてのコンビネーションを生成することをいう。例えば、3つのサンプル(すなわち、3種の異なる化学的存在)を可能なすべてのコンビネーションで混合する場合では、n個のサンプルのいずれかのうち3種の異なる部分を含む可能なすべての混合物が生成される。これは3種の異なるサンプルの各々の一部を含む混合物(すなわち、3種の異なる化学的存在を含有する混合物)ならびに一のサンプルの二部(一の化学的存在)と異なるサンプルの一部(異なる化学的存在)とを一緒に含む混合物、および単一のサンプルの三部(すなわち、単一の化学的存在を含有する)を含む混合物を包含する。数学的には、コンビネーションの数は:
【数1】


[式中、nは試験されるべきサンプルの数であり、kは各混合物中にて混合されるサンプルの数である]
として記載することができる。
【0023】
かくして、混合物の数は、試験されるべきサンプルの数および各混合物中にて一緒に混合されるサンプルの数に依存する。例えば、4種のサンプルを3種のサンプルを含む混合物にて試験する場合には、その場合のコンビネーションの数は:
【数2】


に等しく、20のコンビネーションに相当する。
【0024】
4種のサンプルA、B、CおよびDを指定した場合、次の20のコンビネーションが得られる:
【表1】

【0025】
本明細書において使用する「ポリクローナル蛋白」または「多クローン性」は、異なるが相同な蛋白分子を含む蛋白組成物をいい、好ましくは、免疫グロブリンスーパーファミリーから選択される。かくして、各蛋白分子は、組成物の他の分子に相同であるが、また、ポリクローナル蛋白の個々のメンバー間のアミノ酸配列の差異によって特徴付けられる、可変ポリペプチド配列の1つもしくはそれ以上のストレッチを含有する。そのようなポリクローナル蛋白の既知の例として、抗体または免疫グロブリン分子、T細胞受容体およびB細胞受容体が挙げられる。ポリクローナル蛋白は、蛋白分子の所定のサブセットよりなっていてもよく、所望の標的に対する結合活性の共有などの共通の特性により定義される、所定のサブセットの蛋白分子、例えば、所望の標的抗原に対して結合特異性を示すポリクローナル抗体からなっていてもよい。
【0026】
「抗体」なる語は、血清の機能的成分をいい、分子のコレクション(抗体もしくは免疫グロブリン、フラグメントなど)または1つの分子(抗体分子もしくは免疫グロブリン分子)のいずれかをいうことが多い。抗体分子は、特異的抗原決定基(抗原もしくは抗原エピトープ)に結合するか、または反応することが可能であり、次いで、免疫学的エフェクター機構の誘導をもたらし得る。個々の抗体分子は、通常、単一特異性として認識され、抗体分子の組成物は、モノクローナル(即ち、同一の抗体分子よりなる)であってもよく、あるいはポリクローナル(即ち、同じ抗原または別々の異なる抗原上の同じもしくは異なるエピトープと反応する異なる抗体分子よりなる)であってもよい。ポリクローナル抗体を構成する別々の異なる抗体分子は「メンバー」と称することもできる。各抗体分子は、それが、その対応する抗原に特異的に結合することを可能にする独特な構造を有し、すべての天然の抗体分子は、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖の全体的に同じ基本構造を有する。抗体はまた、包括的に免疫グロブリンとしても公知である。本明細書において使用する抗体なる語は、広い意味で用いられ、無傷の抗体、キメラ、ヒト化、完全なヒトおよび一本鎖抗体、ならびにFab、Fab‘、(Fab’)2,FvフラグメントまたはscFvフラグメント、ならびに二量体IgA分子または五価IgMのような多量体形態を含む。
【0027】
「ポリクローナル抗体」なる語は、同じもしくは異なる抗原上のいくつかの異なる特異的抗原決定基に結合または反応することが可能な異なる(種々の)抗体分子の組成物をいう。通常、ポリクローナル抗体の可変性は、ポリクローナル抗体のいわゆる可変領域、特にCDR領域に局在する。ポリクローナル抗体のメンバーが抗原に結合すると言われる場合、このことは100nMより低い、好ましくは10nMより低い、さらに好ましくは1nMより低い結合定数を有する結合をいう。
【0028】
本明細書にて使用される「2−ミックス」または「3−ミックス」は、各々、2または3の異なる化学的存在、例えば2または3の異なる抗体を含有する混合物をいう。
【0029】
「免疫グロブリン」なる語は、一般に、血液または血清において見られる抗体の混合物の総称として使用されるが、他の供給源に由来する抗体の混合物を示すために使用されてもよく、あるいは「抗体」なる語で同意語として用いられてもよい。ヒト抗体分子の種類は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMである。各種類のメンバーは同じアイソタイプのものであるようである。IgAおよびIgGアイソタイプはさらにサブタイプに細分類される。IgAおよびIgGのサブタイプは、通常、各々、IgA1およびIgA2、およびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4をいう。
【0030】
「同族VおよびVをコードするペア」または「VおよびV配列の同族ペア」なる語は、同じ細胞内に含まれる、または同じ細胞から誘導されるVおよびVをコードする配列のもともとのペアをいう。かくして、同族VおよびVペアは、そのような細胞が誘導されるドナーに元々存在するVおよびVペア形成を表す。「VおよびVをコードするペアから発現される抗体」なる語は、抗体または抗体フラグメントが、ベクター、プラスミド、もしくはVおよびVをコードする配列を含有する類似物から産生されることを示す。同族VおよびVをコードするペアが完全抗体またはその安定なフラグメントのいずれかとして発現される場合、それらは、それらが誘導される細胞から元々発現される抗体の結合アフィニティーおよび特異性を保持する。同族ペアの組成物はまた、同族ペアのレパートリーとも呼ばれ、そして個々に維持されてもよく、またはプールされてもよい。
【0031】
「エピトープ」なる語は、一般に、抗体が結合するであろう抗原上の部位をいう。抗原は免疫応答を刺激する物質、例えば、トキシン、ウイルス、細菌、蛋白またはDNAである。抗原は、それが極めて小さくない限り、1つを超えるエピトープを有することも多い。同じ抗原上の異なるエピトープに結合する抗体は、エピトープの局在に依存して、その結合する抗原の活性に様々な作用を有しうる。抗原の活性部位のエピトープに結合する抗体は、抗原の機能を完全に遮断し得るが、一方、異なるエピトープに結合する別の抗体は、抗原の活性に全くもしくはほとんど作用しないかもしれない。しかし、そのような抗体は、それでも補体または他のエフェクター機構を活性化し、それによって抗原の排除をもたらすかもしれない。
【0032】
「受容体」は細胞の原形質膜または細胞質のいずれかに組み込まれている蛋白分子であり、それに可動性シグナル化(または「シグナル」)分子が結合してもよい。受容体に結合する分子は「リガンド」と称され、蛋白、ペプチド、神経伝達物質、ホルモン、医療用ドラッグまたはトキシンであってもよい。かかる結合が起こると、受容体は構造変化を受け、それは、通常、細胞応答を開始させる。しかしながら、あるリガンドは、いずれの応答も誘発することなく、単に受容体を遮断するにすぎない(例えば、アンタゴニスト)。受容体でのリガンド誘発の変化は、リガンドの生物学的活性を構成する生理学的変化をもたらす。「可溶性受容体」は膜貫通領域のない受容体である。可溶性受容体は、シグナルを発することはできないが、膜結合受容体と同様にそのリガンドに結合しうる。
【0033】
「相乗」とは、一の系の最終結果がそれぞれの部分の合計よりも大きい状況をいうのに用いられる語である。相乗の反対が拮抗であり、2種の試薬を組み合わせて、その個々の作用から推定される作用よりも小さい全体としての作用を有する現象である。相乗はまた:a)全体の作用がその個々の作用の合計よりも大きいところの相互に有利な結合;b)結合した作用が個々の要素の作用の合計よりも好まれるところの劇的な状況;c)部分が別々に行動することで予測できない全体の系の行動;または2種またはそれ以上の刺激またはドラッグの共同作用を意味する。本明細書においては、「相乗」は、一般に、後者の定義をいい、すなわち、2種またはそれ以上のドラッグ、例えば2種またはそれ以上の抗体のコンビネーションの、所定の条件での全体の作用が、個々の作用の合計よりも大きいことをいう。
【0034】
詳細な記載
本発明は、化合物を試験するのに用いることのできる機能性アッセイの型、および本発明の方法にて用いることのできる化学的存在の型を含め、該方法を如何に実施するかについてより詳細に記載されるであろう。
【0035】
発明の方法の記載
本発明の方法は、所望の機能的作用を有する少なくとも2種の化学的存在を含む混合物を得るのに、機能的作用に起因する化学的存在および/または機能的作用を有する化学的存在を同定かつ選択するように設計される。該方法は、一のドラッグ中に2、3またはそれ以上の化合物が合わされた場合に存在しうる相乗的またはコンビナトリアル作用を同定することができるため、該方法は、特に新規なコンビナトリアルドラッグ、とりわけ組換えポリクローナル抗体を同定するのに適している。しかしながら、該方法はまた、例えば農薬または化粧品の場合における所望の相乗作用または2種の異なる機能的作用のいずれかを示す、少なくとも2種の活性な化合物を含む、他の製品の開発における使用を見出すことができる。
【0036】
本発明の方法は、少なくとも7つの工程、すなわち、上記した工程a)ないしg)からなる。工程a)においては、複数のサンプル(n個のサンプル)を準備する。そのサンプルの各々は試験されるべき一の化学的存在を含む。工程b)にて、そのn個のサンプルのうち少なくとも2個を可能な全てのコンビネーションにて混合し、第一のセットの試験されるべき混合物を得る。このようにして、複数の混合物を系統的に得、可能な全ての混合物の検査を確保する。工程c)にて、第一のセットの混合物の各々を、機能性パラメータの測定を可能とする機能性アッセイに供し、その機能的作用に起因する化学的存在を同定する。工程d)にて、機能性アッセイからの情報を用いて、その各々が所望の機能的作用に起因する化学的存在を含む複数のサンプルを選択する。この工程で選択されるサンプルの数(m)はサンプルの最初の数(n)より小さい。本発明の基本的な方法は、4つの付加的な工程e)−g)を含む。工程e)にて,m個のサンプルの2またはそれ以上を可能なすべてのコンビネーションにて混合し、第二のセットの試験されるべき混合物を得る。工程f)にて、第二のセットの混合物を機能性パラメータの測定を可能とする機能性アッセイに供し、その機能的作用に起因する化学的存在を同定する。ついで、この機能性アッセイからの情報を用い、工程g)にて所望の機能的作用を有する混合物を選択する。工程f)にて行われる機能性アッセイは、典型的には、工程c)で行われる機能性アッセイと同じであろう。しかしながら、これら2つの工程にて、2種の異なる機能性アッセイを行うことも可能である。もう一つ別の方法は、例えば、工程c)およびf)にて同じ機能性アッセイを行うことであるが、混合、アッセイおよび選択の1または複数のさらなるラウンドでは異なる機能性アッセイを行うことである。もちろん、所定のいずれの工程においても、2またはそれ以上の異なる機能性アッセイを行うことも、単一のアッセイでよりも2またはそれ以上のアッセイでの選択を基礎とすることも可能である。
【0037】
上記した方法において、n個の異なるサンプルを機能的作用について試験する。これらのn個のサンプルは試験されるべきサンプルの総数に等しいか、またはn個のサンプルは、該サンプルを混合し、基本的な工程a)−g)に供される前に、複数のサブグループに分割される、多数のサンプルを出発点とするサブグループを構成してもよい。
【0038】
さらに具体的には、試験すべきサンプルの数が一の限定された数にすぎない場合、試験すべき混合物の数が十分に限定され、そのすべてを、不当に負担することなく、機能性アッセイに供することができるため、上記した7つの工程、すなわち工程a)ないしg)だけを含む方法が行われる。しかしながら、多数のサンプルを試験する必要がある場合、その場合、試験すべき混合物の可能なすべてのコンビネーションの数もまた大きく、その機能的作用を測定するには過度の労力が必要とされる。かかるケースにおいて、本発明の方法を合理的なものとするのに、もう一つ別の系統的方法を用いて目的とする化学的存在を選択してもよい。
【0039】
かくして、多数のサンプルを試験しなければならない、および/または各混合物において多数のサンプルがある場合には、最初に、試験されるべきサンプルの数を、各々がn個のサンプルを含む、より小さなサブグループに分け、その後で各サブグループの2またはそれ以上のn個のサンプルを工程b)において可能なすべてのコンビネーションにて混合し、該混合物を工程c)にて機能性アッセイに供するのが都合がよい可能性がある。
【0040】
しかしながら、各サブグループにあるサンプルが可能なすべてのコンビネーションにて混合されるにすぎず、この時点で試験されるべきサンプルの可能なすべての混合物が混合され、機能性アッセイに供されているわけではないから、この方法では最適な混合物が試験されない可能性がある。第一のラウンド(工程a)−d))にて試験されていないコンビネーションについてのさらなる情報は、典型的には、工程e)−g)に示されるような、混合、機能性アッセイによる試験および選択という新たなラウンドにより得られるであろう。このケースでは、選択されるm個のサンプルを異なるサブグループより開始し、新たな混合物を形成することが好ましい。サンプルを選択するための種々の方法が後記されるであろう。
【0041】
m個のサンプルを選択した後、該m個のサンプルのうち少なくとも2個を工程(e)nite可能なすべてのコンビネーションにて混合することで新たな混合物を形成する。このようにして、新たな混合物を得、それをその後で工程(f)の機能性アッセイに供し、そこで機能性パラメータを測定して、機能的作用を有するか、その作用に起因する化学的存在を同定する。
【0042】
工程a)にて準備されたサンプルの数(n個のサンプル)が非常に大きい場合で、複数の工程で試験されるべきサンプルの数を選択することが有益である場合において、その機能性アッセイを行う必要のある混合物の数は、最も合理的であるように、限定される。このことは、最も適切には、工程d)、e)およびf)を繰り返すことでなされる。このようにして、工程c)にて選択されるサンプルはサブプールに分けられ、その各々はm個のサンプルを含み、それに対して工程d)、e)およびf)を実施する。各繰り返しにおいて、選択されるサンプルの数は減少する。当業者であれば、異なるプールからのサンプルに対して実施される工程が並行してまたは連続して行われうることが分かるであろう。
【0043】
本発明の方法は、2個のサンプルを含有する混合物を試験することを包含する。しかしながら、該方法は、工程b)のn個のサンプルのうち3個、または所望により3個より多くを可能なすべてのコンビネーションにて混合することでなされることが好ましい。また、工程e)のm個のサンプルのうち3個、または所望により3個より多くを混合することが好ましい。当業者は3個より多くのサンプル、例えば、4、5、6または7個のサンプルを、さらには8、9、10またはそれ以上のサンプルを混合することで得られる混合物もまた本発明の方法の範囲内にあることを認識するであろう。
【0044】
あるケースでは、その目標は比較的多くの異なる化学的存在を含む混合物を同定することかもしれない。そのような混合物の一例が、例えば5−15種の異なる個々の抗体を含有するように設計された組換えポリクローナル抗体である。そのようなケースにおいて、その過程は、最初に、例えば、3種の異なる抗体または他の化学的存在を試験する、少数の異なる化学的存在だけを含む混合物を試験し、ついでその後で2個またはそれ以上の選択された混合物を混合し、ついでその新たな混合物を機能性アッセイに供することで、工程e)−g)にて、試験のための新たな混合物を形成し、選択することで、合理化されてもよい。かくして、混合、試験および選択の第二ラウンドでは、例えば最初の機能性アッセイ(工程c))に基づく、3種の異なる化学的存在の混合物は、工程e)にて混合される「サンプル」であると考えることができ、その結果、工程f)の機能性アッセイに供されるサンプルは、工程c)にてアッセイされた最初の混合物よりも、多数の異なる化学的存在を含有するであろう。本発明の基礎となる方法の変形は、工程c)の後に行う以下の工程により規定されてもよい:
d1)所望の機能的作用を有するm1個の混合物を選択し;
e1)工程d1)より選択されるm1個の混合物のうち2、3、4または5個を可能なすべてのコンビネーションにて混合し;
f1)工程e1)の混合物を、機能性パラメータを測定することのできる機能性アッセイに供し、機能的作用に起因する混合物を同定し;および
g1)工程e1)の混合物より、所望の機能的作用を有する第二の混合物を選択する。
【0045】
工程a)−g)に示される本発明の基礎となる方法は、必要であれば、例えば、試験されるべきサンプルの総数(n)および最終混合物中にある所望の異なる化学的存在の数に応じて、変形することができる。基礎となる方法は、混合、アッセイおよび選択の少なくとも2つのラウンド、すなわち工程b)、c)およびd)からなる一のラウンドと、工程e)、f)およびg)からなるもう一つ別のラウンドを含む。しかしながら、状況に応じて、これらのラウンドの一方または両方は1回またはそれ以上の回数繰り返されてもよい。
【0046】
非常に多くの化学的存在、例えば約25種までの異なる個々の抗体を含有する組換えポリクローナル抗体を含む混合物を意図とする場合、その時には該方法は3以上の工程、すなわち工程h)、i)およびj)を含んでもよい。工程h)においては、工程g1)で得られた混合物から選択された2、3、4または5個を混合し、その後の工程i)にて該混合物を機能性パラメータを測定することのできる機能性アッセイに供し、機能的作用を有する混合物を同定する。最終工程である工程j)において、所望の機能的作用を有する第三の混合物を選択する。
【0047】
上記した型の基礎となる操作にさらなる工程またはさらなるラウンドを含ませることで該発明を拡張することも当業者の範囲内であろう。
【0048】
機能的作用を有する、または該作用に起因する化学的存在を含むサンプルの適当な同定を行うためには、検査される化学的存在が一度だけ出現する、サンプルだけを比較ことが好ましい。例えば、抗体3−ミックスのケースにおいて、3種の異なる抗体を含有するサンプル(すなわち、一の抗体の二つの部分および別の抗体の一の部分、または単一の抗体の三つの部分を含有するサンプルを除く)だけを比較することが望ましい。後記されるように、本発明はまた、化学的存在の間の最適な化学量論的割合が同定され得る方法を提供し、そのために、異なる濃度で存在する化学的存在による機能的作用に対する起因を排除するのに、異なる化学的存在の濃度が同定される混合物だけを比較することが望ましい。この方法を用いる場合、各々、工程e1)および工程h)にて調製される混合物中に化学的存在が1回だけ現れることが好ましい。
【0049】
機能的作用を有する、または該作用に起因する化学的存在を含むサンプルを選択する場合には、多くの異なる方法を用いることができる。一の方法にて、化学的存在Aが機能的作用を有るか、該作用に起因するかどうかについての同定は、化学的存在Aを含む混合物の機能的作用を、化学的存在Aを含まない少なくとも一つの混合物の機能的作用と比較することでなされる。例えば、3つの機能的存在を含有する混合物のケースでは、化学的存在Aが機能的作用を有するか、またはそれに起因するかどうかについての同定は、化学的存在Aおよび/または化学的存在Bを含む3つのサンプルを可能なすべてのコンビネーションで混合し、例えば化学的存在Aの一の部分および化学的存在Bの二の部分、および化学的存在Aの二の部分および化学的存在Bの一の部分を含む混合物の機能的作用を、化学的存在Bの三の部分を含む混合物の機能的作用と比較することでなされる。
【0050】
もう一つ別の方法において、化学的存在Aが機能的作用を有するか、またはその作用に起因するかどうかについての同定は、化学的存在Aと他の化学的存在を一緒に含む混合物の機能的作用を、化学的存在Aを含むだけの混合物の機能的作用と比較することでなされる。
【0051】
さらにもう一つ別の方法において、化学的存在Aが機能的作用を有するかどうかについての同定は、化学的存在Aを含む混合物の機能的作用を、標準値と比較することでなされる。この標準値は所定の値であることが好ましい。化学的存在Aを含む混合物の同定された機能的作用は、化学的存在Aについて機能的作用を有するか、またはそれに起因すると定められた次元において、所定の値よりも高いか、等しいか、または低いかのいずれかでなければならない。あるケースにおいては、標準値は、化学的存在Aを含む混合物の機能的作用の同定が、化学的存在Aについて機能的作用を有するか、またはそれに起因すると定められた次元になければならない範囲内の区間にあってもよい。他のケースにおいて、標準値は分析アッセイを行うことで測定されるパラメータの平均値、例えば、混合物を機能性アッセイに供した場合に測定されるすべての値の平均値であってもよい。
【0052】
機能的作用を有するか、または該作用に起因する化学的存在を同定するための一の好ましい方法は、その機能的作用を有する混合物中で最も頻繁に出現する化学的存在を同定することである。最も薬効および効能がある混合物の化学組成を確立し、どの化学的存在がそれらの混合物中に最も頻繁に出現するかを同定することで、特定の化学的存在がその機能的作用に起因しているか、時にどのように起因しているかについての良好な指標を得ることができる。この方法は以下の実施例3に用いられており、その機能性アッセイの結果は抗体992が上位20の有効な混合物のうちの19の混合物で認められ(図4を参照のこと)、かくしてこの抗体が他の抗−EGFR抗体とのコンビネーションにおいて非常によく活動していると結論付けることができる。
【0053】
試験されるべきサンプルの数は、検査されるべき化学的存在が同じ型(例えば、抗体)であるかどうか、あるいは化学的存在が異なる型(例えば、小分子ドラッグと合した抗体)であるかどうかについて、調査されるコンビナトリアルドラッグの型に応じて著しく変化しうる。nは3またはそれ以上の整数であり、例えば3と1440の間、好ましくは3と360、例えば3と120の間、あるいはさらに好ましくは3と24、例えば3と12の間の整数である。
【0054】
開始時のサンプルの数に応じて、工程d)の選択されるサンプルの数(m個のサンプル)もまた著しく変化しうる。しかしながら、mは3またはそれ以上の数値、例えば3と720の間、好ましくは3と360、例えば3と120の間、あるいはさらに好ましくは3と24、例えば3と12の間の整数である。
【0055】
本発明においては、ある化学的存在の不在下でのパラメータと比較した場合に、その化学的存在があることで変化しうる機能性パラメータを測定することで、化学的存在または化学的存在の混合物の機能的作用が機能性アッセイにおいて同定される。測定されるべき機能性パラメータは、例えば、以下のいずれかである:
・物理的作用の発揮−これは、例えば蛍光発光、または吸光度または他の電磁気照射であり得る;
・リガンドまたは抗原との結合−典型例が受容体分子または抗体の結合である;
・触媒活性、例えば酵素活性の発揮;
・触媒活性、例えば酵素活性に対する多感性;
・試薬の生物膜を通過する改変された輸送の促進;
・試薬の細胞内コンパートメントにおける改変された転位の促進;
・真核生物細胞の集団中の少なくとも1つの遺伝子の発現に対する影響−すなわち、化合物の発現調節剤としての機能(例えば、転写レベルに対する)がアッセイされ得る;
・真核生物細胞の集団の成長または代謝作用に対する影響−成長調節剤の変異バージョンをコードするライブラリーをスクリーニングする場合において都合がよい;
・標的細胞に対する影響−例えば、増殖、抗増殖、分化、アポトーシス、代謝作用またはドラッグ感受性に対する化合物の作用について試験することが可能であり、そのいずれも、例えば抗癌剤として機能しうる生成物の発現についてスクリーニングした場合に関連するものであってもよい;
・病原体に対する影響−ウイルス中和、ウイルスとの結合または殺ウイルスについてアッセイすることが可能であり、同様に細菌との結合、殺菌、食作用、ADCC、CDC等についてアッセイすることも可能である;
・二次免疫作用に対する影響;
・化合物の発現、製造または処方能に対する影響;
・安定性に対する影響。
【0056】
「所望の機能的作用」なる語は機能性パラメータの所望の変更をいう。その機能性パラメータの望ましい変更は、アッセイされる化学的存在の特性およびインビトロおよびインビボでの意図される作用に依存するのは明らかである。典型的には、所望の機能的作用は問題の化学的存在が特定の条件で医薬の改善を提供する能力を有することを示唆する作用である。例えば、試験されるべき化学的存在が抗AIDS剤として用いられる物である場合、その所望の機能的作用はHIVとの結合またはHIVの中和を強化することができ、あるいはHIV感染細胞の不活化を向上させることができる。
【0057】
新しいドラッグおよびドラッグコンビネーションを開発する場合、相乗作用を有する新規な製剤が、あるいは一より多くの機能的作用を有する新規な製剤が求められる。例えば、一方で癌を治療するドラッグを開発することにとって興味深く、他方では化学療法の副作用を減少させることにとって興味深い。もう一つ別の例として、1種より多くのウイルスを同時に根絶するインフルエンザワクチンは興味深いワクチンである。
【0058】
かかる場合には、本発明の方法は、治療されるべき混合物を2またはそれ以上の機能性アッセイに供するように、各機能性アッセイが機能性パラメータを測定することができ、各混合物の2またはそれ以上の機能性パラメータを独立して測定するために、改変されてもよい。これらのアッセイは並行してまたは連続して行われてもよい。試験されるべき機能性パラメータは、例えば、真核生物細胞の集団の成長または代謝作用に対する影響であってもよく、あるいは標的細胞に対する影響であってもよい。
【0059】
本発明の方法を実施するいずれのモードも使用することができる。しかしながら、製造される混合物の数および実施される機能性アッセイの数を考えれば、操作モードはある種の自動操作を含むことが好ましい。したがって、一の操作モードにおいて、該方法はマルチウェルプレートで行われる。これらのプレートは実験室では標準的な装置であり、当業者はかかるプレートを用いて実験をどのように行うかが分かっている。検査されるべき混合物を調製するのに行う必要のある労力が抑えられるため、該混合物は自動液体処理装置を用いて混合されることが好ましい。機能性アッセイもまた、ロボットを用いる装置および当該分野にて既知の方法によって実施されてもよい。
【0060】
本発明のもう一つ別の態様は、少なくとも2つの化学的存在を含む混合物中での化学的存在の間の最適な化学量論的割合を同定かつ選択し、所望の機能的作用を得る方法を提供することである。当該方法はコンビナトリアルドラッグの最適濃度を見つける助けともなる。例えば、2またはそれ以上の抗体が同じ混合物中に存在する場合、特異的な標的に結合するために競合が生じる可能性があることは周知である。この競合は、一部、混合物中に存在する異なる抗体の濃度に依存し、その結果、特異的抗体の濃度が高ければ高いほど、抗体が競合して標的に結合する可能性が高くなるようである。かくして、コンビナトリアルドラッグの最適な相乗作用を達成するために、化学的存在の各々の濃度ならびに異なる化学的存在の間の化学量論的割合は最適化されることが好ましい。
【0061】
混合物中の化学的存在の間の最適な化学量論的割合を同定かつ選択する本発明の方法は、少なくとも5つの工程を含む。第一の工程、工程aa)において、各々、混合物中に一つの化学的存在が存在して含む、p個のサンプルが提供される。次に、工程bb)において、該p個のサンプルは各々、q倍に希釈され、各々、同じ化学的存在を含むが、その濃度が異なる、p個の一連のサンプルを得る。その後、工程cc)において、工程aa)およびbb)にて得られて2またはそれ以上のサンプルを可能なすべてコンビネーションにて混合し、試験されるべき混合物を得、ついで工程dd)にて工程cc)にて得られた混合物を機能的作用を測定することのできる機能性アッセイに供して、測定される機能的作用と混合物中の化学的存在の濃度の間の関係を同定する。最終工程、工程ee)にて、所望の機能的作用を有する混合物を選択する。
【0062】
工程aa)にて準備されるサンプルの数は検査されるべき混合物中に存在する異なる化学的存在の数に対応している。かくして、3つの異なる化学的存在を含むコンビナトリアルドラッグを意図とする場合、pは3に等しい。しかしながら、好ましくは、pは2またはそれ以上の値を有する整数であり、より好ましくは2と24の間の値、さらにより好ましくは2と12の間の値を有する。
【0063】
主に、工程bb)においては、サンプルは当該分野にて知られている適当な倍率に希釈され得る。しかしながら、サンプルは2、5、10、20、50または100倍に希釈されることが好ましい。いずれのサンプルも数倍に希釈され、各サンプルが異なる濃度を有する、一連のサンプルを得ることができる。好ましい方法はサンプルが1、2、3、4または5倍に希釈されているものである。
【0064】
本発明のもう一つ別の態様において、本発明の方法により最適であると同定される混合物は、医薬として、あるいは医薬の製造のために用いることができる。しかしながら、上記したように、本発明の方法により選択かつ同定される混合物はドラッグに適するだけでなく、2またはそれ以上の化合物を含む他の生成物、例えば農薬または化粧品にも適している。
【0065】
本発明に従って選択されうる化合物の例
一般に、ヒトおよび動物に投与された場合に、効果的な作用のあることが知られている化合物は、本発明の方法にて試験する対象であろう。しかしながら、効果的な作用、例えば、医薬としての作用を有することが分かっていない化合物もまた、不明な作用または1または複数の他の化合物と組み合わせて試験されると、明らかになるかもしれない、おそらくは相乗作用を見出すために試験されてもよい。
【0066】
本発明の方法において、試験されるべき化学的存在に含まれる化合物は、医学的症状の治療または予防用の化合物であってもよく、あるいは医学的症状の緩和用、あるいはヒトまたは動物の健康用の化合物であってもよい。しかしながら、本発明の方法にて試験されるべき化合物は、抗体、抗生物質、抗がん剤、抗AIDS剤、抗成長因子、抗ウイルス剤、生物製剤(例えば、可溶性受容体、サイトカインおよび他の蛋白を包含する)、RNAi、ワクチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0067】
試験されるべき化学的存在に含まれる化合物が抗体である場合には、機能性アッセイに供される混合物は、2または複数の抗体のコンビネーション、あるいは少なくとも一つの抗体が、例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗がん剤、抗自己免疫疾患剤、およびRNAiからなる群より選択される1または複数の他の化合物と合されるコンビネーションであってもよい。試験されるべき化学的存在に含まれる化合物は抗体であることが好ましく、試験されるべき化学的存在に含まれる化合物はモノクローナル抗体であることがより好ましい。本発明は、組換えポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のカクテルとして産生され得るモノクローナル抗体の最適なコンビネーションを同定するために、モノクローナル抗体の多数のコンビネーションを試験するのに特に適している。
【0068】
抗体
本発明の方法に用いることができる化合物の一群は、エピトープを特異的に認識し、かつ結合する抗体またはその機能性等価物を包含する。
【0069】
抗体またはその機能性等価物は、当該分野にて公知の抗体、例えば哺乳動物より誘導されるモノクローナル抗体または合成抗体、例えば一本鎖抗体または抗体フラグメントを含むハイブリッドであってもよい。加えて、抗体の機能性等価物は抗体フラグメント、特にエピトープ結合フラグメントであってもよい。さらには、抗体またはその機能性等価物は抗体を模倣する小分子であってもよい。天然の抗体は、重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンである。本発明の好ましい実施態様において、個々の抗体はモノクローナル抗体であり、該発明は組換え抗体「カクテル」または組換えポリクローナル抗体にて用いるのに適するモノクローナル抗体の混合物を同定するのに用いられる。
【0070】
本発明の抗体はまた、二特異的抗体、すなわち2種の異なるエピトープを特異的に認識する抗体であってもよい。二特異的抗体は、一般に、モノクローナル抗体から始まって調製されてもよく、あるいは組換え技法を用いて調製されてもよい。本発明の抗体はまた、三特異的抗体であってもよい。
【0071】
抗体の機能性等価物は、一の好ましい実施態様において、抗体のフラグメント、好ましくは抗原結合フラグメントまたは可変領域であってもよい。本発明で有用な抗体フラグメントの例として、Fab、Fab‘、F(ab’)、およびFvフラグメントが挙げられる。抗体のパパイン消化は、Fabフラグメントと称される、2つの同一の抗原結合フラグメントを産生し、各々は、単一の抗原結合部位および残りの「Fc」フラグメントを有する。ペプシン処理で、抗原との交差連結能を有する2つの抗原結合フラグメント、および残りの他のフラグメント(pFc’と称される)を有するF(ab‘)フラグメントが得られる。かかるフラグメントはまた、重鎖および軽鎖コーディング領域の関連する部分を発現ベクターに挿入することにより、組換え技法で産生されてもよい。付加的なフラグメントは、ジアボデー(diabodies)、線形抗体、一本鎖抗体分子および抗体フラグメントより形成される多特異的抗体を包含しうる。本明細書にて用いられる、抗体と関連する「機能性フラグメント」は、Fv、F(ab)およびF(ab’)フラグメントをいう。好ましい抗体フラグメントは、抗体のその抗原との選択的結合性をいくらかまたは本質的にすべて保持する。
【0072】
一の実施態様において、該抗体は、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有し、遺伝子融合した一本鎖分子としての適当なポリペプチドリンカーにより連結されている、遺伝子操作により作製された分子として定義される一本鎖抗体である。かかる一本鎖抗体はまた、「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントとも称される。一般に、Fvポリペプチドは、VおよびVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それでscFvが抗原結合のための望ましい構造を形成できるようにする。適当なリンカーを用いて、一本鎖Fabフラグメントも調製できる。
【0073】
可変重鎖および可変軽鎖をコードするペアの単離および選択
抗体は、通常のモノクローナル抗体法、例えば、KohlerおよびMilstein, Nature 256: 495 (1975) の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、種々の方法により産生され得る。モノクローナル抗体を産生するための他の技は、例えば、B−リンパ球のウイルスまたは発癌性形質転換あるいはヒト抗体遺伝子のライブラリーを用いるファージ提示技術が用いられうる。モノクローナルまたはポリクローナル抗体としての産生に適する完全なヒト抗体を単離する一の好ましい方法が、SymplexTM技術(Meijerら、J Mol Biol. 2006 5月5日; 358 (3): 764-72; およびWO2005/042774)であり、元々の重鎖および軽鎖のペアリングを維持し、ハイブリドーマ技術を必要とする細胞培養工程を回避する一方で、高い複雑性および多様性を有する抗体レパートリーを生成することができる。
【0074】
抗体を産生する方法は、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)をコードする配列を適当な供給源から単離し、それによりVおよびVをコードするペアのレパートリーを生成することを含む。一般に、VおよびVをコードする配列を含有する適当な供給源は、適当な免疫応答と関連する標的に対して反応した1または複数の個体から由来の血液、脾臓または骨髄サンプルなどのリンパ球含有の細胞フラクションである。好ましくは、リンパ球含有のフラクションは、関連する標的と反応した、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するヒトまたはトランスジェニック動物より集める。集めたリンパ球含有の細胞フラクションをさらに豊富にし、特定のリンパ球集団、例えばBリンパ球を得た。豊富化は、例えばB細胞および/または形質細胞の場合、結合特異性細胞表面マーカー蛋白の利点を考慮して、電磁ビーズ細胞ソーティング(MACS)および/または蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いて行うことが好ましい。リンパ球含有の細胞フラクションをB細胞および形質細胞について豊富化させることが好ましい。ましてやなおさら、高CD19およびCD38発現および中間CD45発現の細胞を血液より単離することが好ましい。これらの細胞は、時に、循環形質細胞、初期形質細胞またはプラズマブラスト(plasma blast)と称され、本願においては簡単にアスプラズマ(asplasma)細胞という。
【0075】
一般に、VおよびVをコードする配列の単離は、VおよびVをコードする配列をベクターにて合わせ、VおよびVをコードする配列のペアのライブラリーを生成する方法にて行うことができる。典型的な方法にて、VおよびVをコードする配列を無作為にベクターにて合わせ、VおよびVをコードする配列のペアのコンビナトリアルライブラリーを生成する。VおよびVをコードする配列の単離は、例えば、トランスジェニック動物の使用(さらには後記を参照)を含む、ファージ提示およびハイブリドーマ技術により行われ得る。
【0076】
本発明においては、重鎖および軽鎖の元々のペアリングを維持し、ヒトであれ、動物であれ、ドナーにおける天然の免疫応答により生成される抗体のポテンシーおよびアフィニティーを維持することが好ましい。このことは、ドナーにて元々存在するVおよびVのペアリングの維持を含み、それにより配列ペアのレパートリーを生成し、その各々のペアが、配列を単離するドナーにより産生される抗体に元々存在するVおよびVペアに相当する、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)をコードする。これはまた、VおよびVをコードする配列の同族ペアと称され、抗体は同族抗体とも称される。一の好ましい実施態様において、コンビナトリアルまたは同族の、本発明のVおよびVをコードするペアをヒトドナーより得、したがって該配列は完全にヒト配列である。また、VおよびVをコードするペアは、例えば、HuMAb-Mouse (登録商標)技術 (Medarex) またはXenoMouse(登録商標)技術 (Abgenix/Amgen) を用いて、ヒト抗体の産生能を有するトランスジェニック動物より得ることができる。
【0077】
およびVをコードする配列の同族ペアの生成についてはいくつかの異なる方法がある。一の方法はリンパ球含有の細胞フラクションと区別される単一細胞からのVおよびVをコードする配列を増殖および単離することを含む。VおよびVをコードする配列を別々に増殖して第2工程にてペアを形成させるか、または増殖の間にペアを形成させてもよい(Coronellaら、2000 Nucleic Acids Res. 28: E85; Babcookら、1996 PNAS 93: 7843-7848)。別の方法は、インセル(in-cell)増殖およびVおよびVをコードする配列のペア形成を含む(Embletonら、1992. Nucleic Acids Res. 20: 3831-3837; Chapalら、1997 Bio Techniques 23: 518-524)。
【0078】
ドナーにおけるVおよびV配列の多様性と似ているVおよびVをコードする配列ペアのレパートリーを得るために、例えば、Meijerら(J Mol Biol. 2006 5月5日; 358 (3): 764-72)およびWO2005/042774(出店明示により本明細書の一部とする)に記載されるように、出来るだけVおよびVのペアのスクランブリング(ランダムコンビネーション)を少なくした、ハイスループット法が好ましい。
【0079】
好ましくは、メンバーペアが標的とのチャレンジに対する体液性免疫応答に関与する遺伝子ペアを映す、VおよびVをコードするペアのレパートリーは、以下の工程を含む方法に従って製造される:i)関連する標的に対して結合する1または複数のドナーからのリンパ球含有の細胞フラクションを準備する工程;ii)該細胞フラクションからのB細胞または形質細胞を所望により豊富化させてもよい工程;iii)該細胞フラクションからの細胞を個々に複数の容器に分解することで単離された単一細胞の集団を得る工程;iv)該単離された単一細胞から誘導されるテンプレートを用いてマルチプレットオーバーラップエクステンションRT−PCR操作にてVおよびVをコードするペアを増殖させ、かつ結合させる工程;およびv)結合したVおよびVをコードするペアをネスト化されたPCRを所望により実施してもよい工程。本発明の方法を実施する前に、単離された同族VおよびVをコードするペアは上記したようにスクリーニング操作に供されることが好ましい。
【0080】
該VおよびV配列ペアが生成されると、VおよびVペアをコードする配列を関連する標的に対する結合反応性で同定するスクリーニング操作を行う。標的に対する結合剤についてのスクリーニングは、一般に、FACS、ELISA、FLISAおよび/またはイムノドットアッセイなどの免疫検出アッセイを用いて実施される。
【0081】
スクリーニングで選択されるVおよびVペアをコードする配列は、一般に、配列決定に供され、可変領域の多様性について分析される。特に、CDR領域の多様性にとって興味深いが、VおよびVファミリの提示にとっても興味深い。これらの分析に基づいて、1または複数のドナーより単離される剤結合抗体の多様性全体を提示するVおよびVペアをコードする配列を選択する。好ましくは、CDR領域全体で異なる配列(CDRH1,CDRH2,CDRH3およびCDRL1、CDRL2およびCDRL3)が選択される。異なるVおよびVファミリに属する1または複数の同一または極めて類似するCDR領域を有する配列があれば、これらも選択される。VおよびV配列ペアの選択も、可変重鎖のCDR3領域の多様性に基づいて行われ得る。配列のプライミングおよび増殖の間に、可変領域のフレームワーク領域にて変異が生じてもよい。配列をドナーの配列と完全に対応させるため、例えば、配列が可変領域のフレームワーク領域などのすべての保存領域にて完全にヒトであるように、そのようなエラーは訂正されることが好ましい。
【0082】
およびVペアをコードする選択された配列のコレクションの多様性全体が、異なる標的とのチャレンジに対する体液応答にて遺伝子レベルで見られる多様性を高度に代表することが確認される場合、選択されるVおよびVをコードするペアのコレクションより発現される抗体の特異性全体もまた、チャレンジされたドナーにて産生される抗体の特異性に関して代表すると考えられる。
【0083】
トランスジェニック動物およびハイブリドーマを用いて産生される抗体
一の実施態様において、モノクローナル抗体は、マウス系よりもヒト免疫系の部分を有するトランスジェニックまたはトランス染色体動物を用いて産生され得る。これらは、HuMab(登録商標)マウス、XenoMouse(登録商標)およびKMマウスなどのトランスジェニックおよびトランス染色体マウスを包含し、本明細書では包括的に「トランスジェニックマウス」という。
【0084】
HuMAb-Mouse(登録商標)は、再配列されていないヒト重鎖(μおよびΥ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリンのミニ遺伝子を内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活化する標的とされる変異と一緒に含有する(Lonberg, N.ら、(1994) Nature 368 (6474): 856-859)。したがって、マウスは免疫化に対する応答においてマウスIgMまたはκの発現の減少を示し、導入されたヒト重鎖および軽鎖のトランス遺伝子はクラススイッチおよび体細胞変異を経験し、高アフィニティヒトIgG、κモノクローナル抗体を産生する(Lonberg, N.ら、(1994), 前掲;lonberg, N.ら、(1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113: 49-101; Lonverg, N. およびHuszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. Vol. 13: 65-93 およびHarding, F.およびLonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci 764: 536-546)。HuMab(登録商標)マウスの調製は、Taylor, L.ら、(1992) Nucleic Acids Research 20: 6287-6295; Chen, J.ら、(1993) International Immunology 5: 647-656; Tuaillonら、(1994) J. Immunol. 152: 2912-2920; Lonberg ら、(1994) Nature 368 (6474): 856-859; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Taylor, L. ら (1994) International Immunology 6:579-591; Lonberg, N. およびHuszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. Vol. 13:65-93; Harding, F. およびLonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci 764:536-546; Fishwild, D.ら. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に詳細に記載されている)。さらには、US Nos. 5,545,806; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; 5,789,650; 5,877,397; 5,661,016; 5,814,318; 5,874,299; and 5,770,429; すべてLonberg およびKay対するものである, ならびにUS 5,545,807 Suraniらに対する; WO 98/24884, WO 94/25585, WO 93/1227, WO 92/22645, WO 92/03918 およびWO 01/09187を参照のこと。
【0085】
KMマウスはヒト重鎖トランス染色体およびヒトカッパ軽鎖トランス遺伝子を含有する。マウスの免疫化がマウス免疫グロブリンよりもヒト免疫グロブリンの産生をもたらすように、KMマウスにおける内因性マウス重鎖および軽鎖遺伝子もまた中断されている。KMマウスの構造およびヒト免疫グロブリンを産生するその使用がWO02/43478に詳細に記載されている。
【0086】
ヒトモノクローナル抗体を産生するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックまたはトランス染色体マウス(例えば、HCO12、HCO7またはKMマウス)が、例えば、Lonbergら、(1994)、前掲;Fishwildら、(1996)、前掲;およびWO98/24884によって記載されるように、抗原および/または抗原を発現する細胞に富む調製物で免疫化され得る。別法として、マウスは該抗原をコードするDNAで免疫化され得る。好ましくは、マウスは、最初の注入の際に6−16週齢であろう。例えば、抗原に富む調製物(5−50μg)を用いてHuMAb(登録商標)マウスを腹腔内にて免疫化することができる。純粋なまたは抗原に富む調製物を用いての免疫化が抗体を産生しない場合には、マウスを抗原を発現する細胞、例えば細胞株で免疫化し、免疫応答を促進することもできる。
【0087】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するには、免疫化したマウスから脾臓細胞およびリンパ節細胞を単離し、それをマウス骨髄腫細胞株のような適当な免疫化細胞株に融合させ得る。ついで、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生のためにスクリーンに付すことができる。例えば、免疫化したマウスからの脾臓リンパ球の単一細胞の50%PEG(w/v)との懸濁液を、SP2/0の非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL1581)に融合させ得る。細胞を約1x10/ウェルで平底マイクロタイタープレートに置き、つづいて2週間、通常の試薬の他に、10%ウシクローン血清、5−10%オリゲンハイブリドーマクローン因子(IGEN)および1xHAT(シグマ)を含有する選択的培地でインキュベートさせることができる。約2週間後、HATがHTと置き換えられている培地で細胞を培養させることができる。ついで、個々のウェルをELISAによりヒトカッパ−軽鎖含有の抗体についてスクリーンに付し、FACS分析に付すこともできる。広範囲に及ぶハイブリドーマ増殖が培地にて起こり、それは、通常、10−14日後に観察され得る。抗体を分泌するハイブリドーマを再びプレートに置き、再びスクリーンに付し、ヒトIgGについてなおも陽性であるならば、限定希釈に付すことでモノクローナル抗体を少なくとも2回サブクローンすることができる。ついで、安定したサブクローンをインビトロにて培養し、特徴化のために組織培地にて抗体を生成することができる。
【0088】
本発明のヒト抗体はまた、例えば、当該分野にて周知であるような、組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法を用いて宿主細胞トランスフェクトーマにて産生され得る。例えば、Morrison, S. (1985) Science 229: 1202を参照のこと。
【0089】
特定の実施態様において、a)1または複数のモノクローナル抗体、好ましくは少なくとも2つのモノクローナル抗体と、b)a)の1または複数の抗体とのコンビネーションにて相乗的またはその他の有利な機能的作用を提供する少なくとも1の付加的な治療剤との有利なコンビネーションを同定するために、本発明の方法を用いることが興味深いかもしれない。例えば、抗体が細菌感染を予防または治療するためのものである場合、2またはそれ以上のモノクローナル抗体と、少なくとも1つの非抗体の抗菌剤(例えば、後記する抗生物質を参照のこと)との最適なコンビネーションを同定することが有利でありうる。同様に、抗体が癌または腫瘍増殖を予防または治療するためのものである場合、2またはそれ以上の抗癌モノクローナル抗体と、少なくとも1の非抗体の抗癌剤(後記する抗癌剤を参照のこと)との最適なコンビネーションを同定することが有利でありうる。同じことが、抗体がAIDSまたはもう一つ別のウイルス疾患の予防または治療を対象とする場合で、2またはそれ以上のかかる抗HIVまたは他の抗ウイルスモノクローナル抗体と、各々、少なくとも1の非抗体の抗HIV剤または抗ウイルス剤(後記する抗HIVおよび他の抗ウイルス剤を参照のこと)との最適なコンビネーションを同定することが有利である場合において、当てはまる。この同じ方法が、すなわち1または複数のモノクローナル抗体、好ましくは少なくとも2つのモノクローナル抗体の、その抗体と同じ症状(あるいは関連する症状を対象とするものであってもよい)を予防または治療することを対象とする少なくとも1の非抗体剤とのコンビネーションが、例えば、自己免疫疾患を対象とするモノクローナル抗体と、同じ自己免疫疾患を対象とする既知または新規な非抗体とのコンビネーションと同様に、他の適応症に用いられてもよい。
【0090】
抗生物質
抗生物質は、細菌および真菌を含む、微生物を殺し、またはその増殖を止める分子として定義されてもよい。細菌を殺す抗生物質はまた殺菌剤とも言われ、細菌の増殖を止める抗生物質は静菌剤とも称される。
【0091】
コンビナトリアルドラッグにおいて配合される場合のその機能的作用について試験することが興味深いとされ得る抗生物質は、β−ラクタム抗生物質、例えばペニシリン類(例えば、アモキシシリン)、セファロスポリン類、カルバペネム類、モノバクタム類等、テトラサイクリン類、例えばテトラサイクリン、マクロライド抗生物質、例えばエリスロマイシン、アミノグリコシド類、例えばゲンタミシン、トバラマイシンおよびアミカシン、キノロン類、例えばチプロフロキサシン、環状ペプチド、例えばバンコマイシン、ストレプトグラミン類およびポリミキシン類、リンコサミド類、例えばクリンダマイシン、オキサゾリジノン類、例えばリネゾリド、およびサルファ系抗生物質、例えばサルフィスオキサゾールを包含する。
【0092】
抗癌剤
抗癌剤(化学療法薬とも知られる)は、有糸分裂(細胞分裂)を損傷し、急速に分裂する細胞を効果的に標的とするドラッグとして定義され得る。これらのドラッグは細胞に対する損傷を引き起こすため、該ドラッグはまた細胞傷害性とも称される。これらのドラッグのいくつかは細胞にアポトーシス、いわゆる「プログラムされた細胞死」を経験させる。
【0093】
その必要なヒトの治療に用いられる場合、これらのドラッグが頻繁に他の癌治療、例えば放射線療法または手術と組み合わせて用いられることはよく知られている。別法として、患者は同時にいくつかの異なるドラッグで治療されてもよい。ドラッグはその機構および副作用において異なるが、コンビナトリアル投与の最も大きな利点は、一の該抗癌剤に対する耐性が進化する機会が最小となることである。かくして、コンビナトリアルドラッグとして用いた場合の相乗作用について抗癌剤を試験することは、上記した1または複数のモノクローナル抗体と一緒にそのような1または複数の剤を試験することと極めて関連することである。
【0094】
抗癌剤の大部分はアルキル化剤、抗代謝産物、抗腫瘍抗生物質、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤および他の抗腫瘍剤に分類され得る。これらのドラッグはすべて細胞分裂またはDNAの合成および機能にある程度まで影響を及ぼす。加えて、DNAに直接干渉しない剤も開発された。これらはモノクローナル抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤、例えばイマチニブメシラートを包含し、それは特定の型の癌(慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍)における分子異常性を直接標的とする。加えて、これらの細胞に直接攻撃することなく、腫瘍細胞の動きを調節するドラッグもまた、抗癌剤と称される。ホルモンもこのカテゴリーに入る。
【0095】
アルキル基を条件下で多くの電気陰性基に添加することのできるアルキル化剤が細胞中にある。シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンがアルキル化剤の例である。この群に属する他の基としてメクロレタミン、シクロホスファミドおよびクロラムブシルが挙げられ、細胞DNAを化学的に修飾する働きをする。
【0096】
抗代謝産物はプリン(アゾチオプリン、メルカプトプリン)またはピリミジンになりすまし、細胞サイクルの「S」期の間にこれら物質のDNAへの組み込みを妨げ、正常な発達および分割を停止させる。それらはまた、RNA合成に影響を与える。
【0097】
抗腫瘍抗生物質(抗新生物剤および細胞傷害性抗生物質としても知られている)は、腫瘍の発達を阻害および根絶するドラッグである。この群に属するアントラサイクリンはまた、抗生物質としても作用する抗癌剤のファミリーである。アントラサイクリンはDNAの構造を崩壊させ、その機能を終了させることで細胞分裂を防止させるように機能する。DNAマイナー・グルーブの塩基対中に挿入すること、またはDNAのリボースのフリーラジカルの損傷させることのいずれかがその機能である。アントラサイクリンの一例として、ダウノルビシン、ソキソルビシン、エピルビシンおよびイダルビシンに言及することができる。抗腫瘍抗生物質の群に属するドラッグの他の例として、アンチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびミトマイシンが挙げられる。
【0098】
植物アルカロイドは植物より誘導され、微小管機能を防止することで細胞分裂を遮断する。微小管は細胞分裂に不可欠であり、それが無ければ、細胞分裂は起こり得ない。植物アルカロイドの主たる例として、ビンカ・アルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシン、ならびにタキサン、例えばパクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。
【0099】
トポイソメラーゼ阻害剤はDNAのトポロジーを維持する必須酵素である。トポイソメラーゼI型およびII型の阻害は、適当なDNA超らせん形成を壊すことにより、DNAの転写および複製の両方を妨げる。トポイソメラーゼI型阻害剤の例として、カンプトテシン、例えばイリノテカンおよびトポテカンが挙げられ、それに対してトポイソメラーゼII型阻害剤の例として、アムサクリン、エトポシドホスファートおよびテニポシドが挙げられる。
【0100】
抗AIDS剤
抗レトロウイルス剤としても知られる、抗AIDSまたは抗HIV剤は、レトロウイルス、主にHIVの感染の治療のために設計される。数種のかかるドラッグ(典型的には3または4種)がコンビネーションで使用される場合、その方法は極めて活性な抗レトロウイルス療法またはHAARTとして知られている。かくして、コンビナトリアルドラッグ療法はHIVおよびAIDSの治療における周知の方法である。したがって、この種の剤は、それを単独でまたは上記したような1または複数のモノクローナル抗体とのコンビネーションにて、本発明の方法にて試験されることと深く関連している。
【0101】
抗AIDS剤は該ドラッグが阻害するレトロウイルスの生活環の期により広く分類される。抗AIDS剤の一のクラスがヌクレオシドおよびヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)であり、新たに合成されるウイルスDNAに挿入され、そのさらなる伸長を防止することで逆転写を防止する。ジドブジン、ラミブジン、エントリシタビン、アバカビル、テノホビル、ジソプロキシル・フマラートおよびスタブジンが、この群に属する剤の例である。
【0102】
抗AIDS剤のもう一つ別のクラスが、酵素と結合することで逆転写酵素を直接阻害し、その機能を阻害する、非ヌクレオシド逆転写阻害剤(nNRTI)である。エトラビリン、デラビルジンおよびエファビレンズネビラピンが、この群における剤の例である。
【0103】
プロテアーゼ阻害剤(PIs)は、ウイルス集合を標的とし、新しいバイロンの最終の集合についての新生蛋白を切断するのに、HIVによって使用される酵素である、プロテアーゼの活性を阻害する、抗AIDS剤のさらにもう一つ別のクラスである。アンプレナビル、チプラナビル、インジナビル、サクイナビル、ホサムプレナビル、ニトナビル、ダルナビル、アタザナビルおよびネルフィナビルがこの群に属する剤の例である。
【0104】
もう一つ別のクラスがインテグラーゼ阻害剤であり、ウイルスDNAの感染細胞のDNAへの融合に関与する、インテグラーゼ酵素を阻害する。最近では臨床試験にて数種のインテグラーゼ阻害剤がある。ラルテグラビルが2007年10月にFDAの承認を受けた最初のこのような剤であった。
【0105】
もう一つ別のクラスの抗AIDS剤がエントリー阻害剤(または融合阻害剤)である。これらの剤は、いくつかの標的の一つを遮断することで、HIV−1の宿主細胞への結合、融合およびエントリーを妨げる。マラビロックおよびエンフビルチドがこのクラスで最近になって利用可能な2種の剤である。
【0106】
もう一つ別のクラスが成熟阻害剤である。このクラスの剤は、ウイルスカプシドポリ蛋白を切断し、それによってポリ蛋白の成熟カプシド蛋白への変換を遮断することで、gagプロセシングの最終工程を阻害する(24頁)。これらのウイルス粒子は不完全なコアを有し、放出されるバイロンは主に非感染性粒子のみからなる。ベビリマットおよびビベコンがこの群の剤に属する。
【0107】
この技術分野において、相乗作用のエンハンサーのあることもよく知られている。相乗作用のエンハンサーは、単独では抗レトロウイルス特性を有しないし、単独療法には不適当または非実践的であるが、該エンハンサーが抗ウイルス剤と一緒に服用されると、(時に抗レトロウイルスの代謝作用を改変することで)1または複数のそれらのドラッグの作用を強化する。かくして、「抗AIDS剤」なる語が用いられる場合、これらの相乗作用のエンハンサーも含まれるものと理解すべきである。
【0108】
腫瘍によって分泌される成長因子を標的とする剤は血管形成を根絶し、かくして腫瘍の増殖を軽減させることができる。かかる剤の一例がベバシズマブ(Avastin)であり、血管内皮増殖因子(VEGF)を対象とするシグナル遮断血管形成阻害剤として入手可能である。腫瘍血管形成に関与する他の成長因子は線維芽細胞増殖因子(FGF)および表皮増殖因子(EGF)を包含する。
【0109】
抗ウイルス剤
抗ウイルス剤はウイルスに対して細胞防御を刺激する能力を有する物質として定義される。抗ウイルス剤は、例えば、細胞のDNA合成を軽減させ、それで細胞をウイルス遺伝子に対してより耐性とし、細胞の免疫応答を強化するか、またはウイルス複製を抑制する。抗ウイルス剤は2または3のウイルス疾患だけを治療するのに用いることができる。というのも、ウイルス複製は治療される身体における細胞と密接に関連付けられ、ウイルス複製を顕著に防止するドラッグは治療される身体にも毒であると考えられるからである。
【0110】
抗ウイルス剤は2つの群:ヌクレオシドアナログおよびインターフェロンに分類することができる。抗AIDS剤は別に上記されている。
【0111】
ヌクレオシドアナログはヌクレオシドと似た合成化合物であるが、不完全または異常なオキシ−リボースまたはリボース基を有する。これらの化合物は感染細胞内で三リン酸塩の形態にリン酸化される。このようにして、ドラッグはウイルスDNAまたはRNA中への組み込みについて正常なヌクレオチドと競合する。増殖する核酸鎖への組み込みはウイルスポリメラーゼとの不可逆な結合および連鎖停止をもたらす。ヌクレオシドアナログの例はアシクロビル、ガンシクロビル、イドクリジン、リバビリン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジンおよびジゾブジンである。
【0112】
インターフェロンは3つのクラス、すなわち、アルファ−、ベータ−およびガンマ−インターフェロンに分類することができる。アルファ−およびベータ−インターフェロンはウイルス感染した細胞によって分泌される。それらは隣接する細胞の特異的な受容体に結合し、細胞をウイルスによる感染から保護する。それらはウイルスによる侵入に対して中間的な保護宿主応答の一部を形成する。これらの直接的な抗ウイルス作用に加えて、アルファ−およびベータ−インターフェロンもまた、感染した細胞の表面でのクラスIおよびクラスIIMHC分子の発現を強化し、かくしてウイルス抗原の特異的免疫細胞への提示を亢進する。組換えアルファ−およびベータ−インターフェロンが入手可能であり、慢性B型およびC型肝炎ウイルス感染の治療に用いることができる。ガンマ−インターフェロン(免疫インターフェロンとしても知られる)はTH1 CD4細胞により分泌されるサイトカインである。その機能は特異的T細胞媒介免疫応答を強化することである。
【0113】
可溶性受容体
「受容体」なる語は、本願明細書において、受容体−リガンド結合との関連でその語の通常の意味に従って用いられるが、抗体を含むものとして解釈されるべきではない。「可溶性」なる語は、サイトカイン受容体の分野にて理解されるように、細胞膜結合のカウンターパートから受容体を区別される。可溶性受容体は細胞外(リガンド結合)ドメインを含むが、受容体を細胞表面上で保持させる、膜貫通領域を欠く。同様に、可溶性受容体は、一般に、細胞内(細胞質)ドメインを欠く。
【0114】
特定の受容体の天然の可溶性形態が存在することが分かっている。例えば、可溶性受容体が種々のホルモン;例えば、インスリン受容体、IL−2受容体、インスリン様成長因子(IGF−II)受容体、EGF受容体、血小板誘発の成長因子(PDGF)受容体、およびFc受容体について天然に存在することが知られている。これらの可溶性または末端切断された受容体はその膜結合カウンターパートの結合特性と同様の特性を有するようである。可溶性受容体は組換え発現を介して他のポリペプチド、例えばFc受容体、およびリガンドにライゲートされ得る。
【0115】
活性化の不足(例えば、リガンドの欠如)または活性化の過剰(例えば、リガンドの過剰)の形態の、シグナルトランスダクション経路の異常性は、関節炎、癌、AIDSおよび糖尿病などの病態および疾患の根本原因である。これらの衰弱化させる疾患を治療するための現在の治療法の一つが、受容体デコイ、例えば細胞外リガンド結合ドメインのみからなる可溶性受容体を用い、リガンドを封じ、そうして受容体の活性化過剰を克服することを含むものである。この方法の一例は、Immunex/Amgenにより、Enbrel(登録商標)、ダイマー可溶性TNF−アルファ受容体イムノグロブリン(IgG)融合蛋白をクリエートすることである。TNFファミリーのサイトカインは、感染または組織損傷に対する応答において身体により産生される主たるプロ炎症性シグナルの一つである。しかしながら、例えば、感染または組織損傷のない状態での、これらのサイトカインの異常な産生は、関節炎および乾癬などの疾患の根本原因の一つである。したがって、ジスルフィド結合を介して同時2量体化を可能とする、可溶性TNF−アルファ受容体とイムノグロブリンG1のFc領域との融合は、ダイマー可溶性TNF−アルファ受容体の分泌を可能とする。モノマー可溶性受容体との比較において、ダイマーTNF−アルファ受容体II−Fc融合はホモトリマーリガンドへのアフィニティを著しく増加させた。このことは、構造的に高いTNF−アルファが重要な因果的役割を果たしている、関節リウマチ(RA)、自己免疫疾患の治療における臨床的使用ための分子基準を提供する。
【0116】
多くの疾患の発病におけるその基本的な関与のため、サイトカインは生物療法の方法についての標的のもう一つ別のクラスを構成する。サイトカイン受容体の可溶性形態がサイトカイン活性の内因性調節に関与するとの知見は、免疫治療剤としてのその潜在的用途にて実質的な興味を惹起する。
【0117】
RNAi’s
RNA干渉(RNAi)は、翻訳段階での、または特定の遺伝子の転写を妨害することによる、遺伝子発現を阻害するメカニズムである。RNAiターゲットは、ウイルスおよびトランスポゾン由来のRNAを含み(いくつかの形態の固有の免疫応答に重要である)、また、これらは発育の調節およびゲノム維持に役割を果たす。RNAiパスウェイは、ダイサー(dicer)酵素により開始され、長鎖dsRNA分子を20〜25塩基対の短鎖フラグメントに切断する。ついで、ガイドストランドとして知られている各々のフラグメントの2本鎖の1つを、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に導入し、相補配列とペアを為す。この認識事象の最もよく知られた研究結果は、転写後遺伝子サイレンシングである。これは、ガイドストランドが、特異的に、mRNA分子と対をなし、RISC複合体の触媒成分であるアルゴノート(argonaute)による切断を誘発するときに生じる。他の結果は、遺伝子が転写する程度に影響を与える遺伝子−ヒストン修飾およびDNAメチル化−へのエピジェネティックな変化である。
【0118】
RNA干渉は、特に、トランスポゾンにより自己増殖を阻害することができる植物において、ウイルスおよび他の外来遺伝物質への免疫応答に必要不可欠である。一般的に、動物は、植物よりもダイサー酵素の変異体の発現が少ない。いくらかの動物におけるRNAiは、抗ウイルス応答を与えることが示されている。
【0119】
RNA干渉パスウェイは、実験生物学において、細胞培養およびインビボでモデル生物において、遺伝子の機能を研究するために利用される。二本鎖RNAを、興味ある遺伝子に相補的な配列で合成し、細胞または生物に導入し、そこで、外来遺伝子物質として認識させ、RNAiパスウェイを活性化する。この機構を用いて、研究者らは、標的遺伝子の発現を劇的に減少させることができる。この減少効果の研究は、遺伝子産物の生理学的役割を示し得る。RNAiは、総合的には、遺伝子の発現を無効にすることができないので、この技術は「ノックダウン」とも称され、遺伝子発現を完全に排除する「ノックアウト」法とは区別される。
【0120】
治療においてRNA干渉を利用することができる。長鎖dsRNAストランドを動物細胞に導入することは、インターフェロン応答のために困難であるが、短鎖干渉RNAミミックの使用は、より成功し易い。臨床試験に到達した最初の適用は、黄斑変性および呼吸器合胞体ウイルスの治療であり、RNAiはまた、マウスモデルで、誘発した肝不全を好転させるのに有効であることが示された。
【0121】
他の提案された臨床用途は、癌細胞での遺伝子発現の阻害、HIVに対するホスト受容体およびコレセプターのノックダウン、A型肝炎およびB型肝炎遺伝子のサイレンシング、インフルエンザ遺伝子発現のサイレンシング、および麻疹ウイルスの複写の阻害を含む、抗ウイルス療法に関する。神経変性疾患の有効な治療もまた提案されており、特にポリグルタミン疾患、例えばハンチントン病が注目されている。RNA干渉はまた、腫瘍細胞で差異的にアップレギュレートされる遺伝子または細胞分裂に関連する遺伝子のサイレンシングにより癌を治療する可能性ある方法と考えられている。臨床での適用のためのRNAiの使用における主要な研究は、安全なデリバリー方法の開発であり、これまでは、遺伝子療法に関して提案されるものと同様のウイルスベクターシステムに主に関与していた。
【0122】
ワクチン
ワクチンは、特定の疾患に対する免疫を確立するまたは改善するために用いられる生物学的調製物である。ワクチンは、予防的(例えば、自然または「野生」の病原体による将来の感染の影響を防止または改善するため)または治療的(例えば、例えば癌のような病状の治療に用いるためのワクチン)であり得る。ワクチンは、死滅または不活化生物またはそれらかの精製産物から製造され得る。慣用的なワクチンは4つのタイプがある。
【0123】
一のタイプは、死滅微生物を含有するワクチンである。これらは、前もって化学的または熱的に死滅させた毒性の微生物である。例えば、インフルエンザ、コレラ、腺ペストおよびA型肝炎に対するワクチンがある。
【0124】
別のタイプは、弱毒生ウイルス・微生物を含有するワクチンである。これらは、その毒性に望ましい条件下で培養された生きた微生物、または、危険な微生物に密接に関連するが、それ自体危険性が少ない生きた微生物であり、広範囲の免疫応答を生じさせる。これらは、典型的には、持続的な免疫応答を惹起し、健康な成人にはより好ましいタイプである。例としては、黄熱病、麻疹、風疹およびおたふく風邪がある。生ツベルクリンワクチンは、感染性株ではないが、「BCG」と称される関連株である。これは、米国において頻繁に用いられている。
【0125】
第三のタイプのワクチンは、トキソイドである。トキソイドは、毒性が化学的(ホルマリン)または熱処理により弱化または抑制されているが、他の特性、典型的には免疫原性が維持されたバクテリア毒素(通常、外毒素)である。トキソイドは、オリジナルの毒素への免疫応答を惹起し、または他の抗原への応答を増加させるので、ワクチンとして有用である。例えば、破傷風トキソイドは、破傷風を引き起こす破傷風菌(Clostridium tetani)により産生されたテタノスパスミンから誘導される。破傷風トキソイドは、プラズマリッチワクチンの開発に用いられる。
【0126】
第四のタイプのワクチンは、サブユニットと称される。不活化または弱毒化微生物(「ホールエージェント(whole−agent)」ワクチンを構成するもの)を免疫系に誘導するというよりも、そのフラグメントが免疫応答を与えることができる。例としては、ウイルスの表面タンパク質(酵母で酸性される)からのみ構成されるHBVに対するサブユニットワクチン、およびヒトパローマウイルス(HPV)に対するウイルスの主要なカプシド蛋白で構成されるウイルス様粒子(VLP)が挙げられる。
【0127】
多くの革新的なワクチンがまた、開発され、使用されている。これらは、コンジュゲート、組み換えベクターおよびDNAワクチン接種を含む。コンジュゲート法は、ある種の細菌が、免疫原性に乏しい莢膜多糖類を有する事実の利用を可能にする。これらの莢膜をタンパク質(例えば、毒素)に結合させることにより、免疫系は、多糖類を蛋白抗原として認識することができる。このアプローチは、ヘモフィリス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)Bワクチンに用いられている。組み換えベクター法においては、一の微生物および他のDNAの生理学を組み合わせ、それにより、複雑な感染プロセスを有する疾患に対して免疫を与える。DNAワクチン接種は、感染性病原体のDNAから作られる新しいタイプのワクチンである。これは、ヒトまたは動物細胞へのウイルスまたは細菌DNAの挿入(および発現、免疫認識機構を作動させる)により為される。発現されたタンパク質を認識する免疫系の細胞は、それらタンパク質およびそれらを発現する細胞に対する攻撃を増加させるだろう。これらの細胞は長期間生存するので、正常にこれらのタンパク質を発現する病原体と後に遭遇した場合、これら病原体はすぐに免疫系により攻撃されるだろう。DNAワクチンの一の利点は、非常に容易に生産し、貯蔵できることである。
【0128】
実施例
実施例1
高い効能および薬効を有するコンビナトリアルドラッグを選択することができるように、ハイスループット方法にて極めて多くのコンビネーションをスクリーンすることができる必要がある。かかる作業はささいなことではなく、40種の候補ドラッグは10のコンビネーションにおいて800万通り以上で組み合わせることができる。最も興味深い混合物が「独特なコンビネーション」と称されるもので、候補ドラッグを重複して含まない混合物である。nの数の候補ドラッグのrの候補ドラッグの混合物における独特なコンビネーション(UC)の数は、次式:
【数3】


より計算できる。
【0129】
この関数は放物曲線を記載する。極めて多くのコンビネーションを試験することの一の解決手段が候補ドラッグを群に分割し、より小さな混合物でそのコンビネーションを試験することである。これらのより小さな混合物の最適なコンビネーションが同定されれば、それらを組み合わせてより大きなコンビネーションを作製し、ついでそれを試験してもよい。その選択過程の概略は図1に見ることができる。
【0130】
方法
単一ドラッグとしての既知の活性を有する一連の候補ドラッグを32までの群に分け、ついで、これら候補ドラッグの可能なすべての3−ミックスを1、2またはそれ以上の機能性アッセイにて活性について試験する。各群において、その多くが該混合物の活性に起因する候補ドラッグを選択し、必要ならば1または複数の群に分け、再び可能なすべての3−ミックスにて試験する(図1)。この過程を選択される候補ドラッグの数が12またはそれ以下になるまで繰り返す。ついで、12の候補ドラッグを可能なすべての2−および3−ミックスで試験し、これらコンビネーションの薬効が上位20について滴定を行う。ついで、最も効能のある2−および3−ミックスをリード候補として選択する。ついで、最も効能のある独特な2−および3−ミックス(重複する候補ドラッグを含まない)を選択し、単一のドラッグとして処理する。ついで、これらの所定のドラッグコンビネーションの可能なすべての2−および3−ミックスを試験し、これらの混合物のコンビネーションの効能が上位20について滴定を行う。滴定終了後、候補ドラッグの最も効能のある4、5、6、7、8または9のミックスをリード候補として選択することができる。最後に、リード候補を一連のアッセイにて比較し、最適なドラッグコンビネーションを決定することができる。
【0131】
実施例2
実施例2は32までの候補ドラッグをハイスループット法にて2、3、4および5のミックスを生成する方法を記載する。
【0132】
方法
候補ドラッグの選択される数は、96ウェルプレートで8までの群に、384ウェルプレートで16までの群に、そして1536ウェルプレートで32までの群に分けられる。ついで、候補ドラッグを適当な濃度に希釈し、ソースプレート(フィーダープレート)に移し、その第一のソースプレートは各ウェルにて一の候補ドラッグの列を含有する。第2のソースプレートは各ウェルにて一の候補ドラッグの列を含有する。Biomek(登録商標)3000ラボラトリーオートメーションワークステーション(beckman Coulter)などの自動ピペットシステムを用いて特定容量の候補ドラッグをソースプレートの第一の列から896ウェルプレート、16384ウェルプレートまたは321536ウェルプレートの全ての列に移す。同様の容量の候補ドラッグを第二のソースプレートの列からレシーバープレート(デスティネーションプレート)上の対応する列に移すことで、候補ドラッグの次の層を加える。
【0133】
第三の層は、第二のソースプレートの第一の列の同様の容量の内容物を第一のレシーバープレートのすべての列に移し、ついで第二のソースプレートの第二の列の内容物を第二のレシーバープレートのすべての列に移すことで添加される。8候補ドラッグを第一、第二および第三の層の96ウェルプレートに添加終了した後のレシーバープレートのレイアウトの略図を図2に示す。A)層1、B)層1+2、およびC)層1+2+3。8候補ドラッグを異なるグレーの色合いで示す。
【0134】
候補ドラッグの第四または第五の層は、4つの層では候補ドラッグの数だけレシーバープレートの数を増やし、5つの層では再び候補ドラッグの数だけレシーバープレートの数を増やす、最終過程を繰り返すことで添加され得る。8候補ドラッグで96ウェルプレートの場合には、これで4つの層で64プレートおよび5つの層で512プレートを提供する。
【0135】
結果
この型のマトリックス様フォーマットでは、候補ドラッグの混合物を生成するのに明らかに有利な点がいくつかある。一の有利な点は、すべての独特な混合物がレシーバープレート上の異なる部位に配置されている複数のウェル(図2の場合には6ウェル)で生成されることである(図2)。これは、プレート間およびプレート内の変化、ならびに可能性のある生物学的変化を等しくするような、候補ドラッグの機能性試験には最適である。一の候補ドラッグの2/3を、別の候補ドラッグの1/3を含有する混合物もまた生成される。これらをまた異なるプレートに置き、トリプリケートにて観察する。傾斜(skewed)混合物と称される、これらの混合物は、個々の候補ドラッグのコンビネーションへの分布について有用な情報を提供しうる。
【0136】
実施例3
この実施例は、23の抗体を12抗体の群に分け、ついで384ウェルフォーマットにて標準的な生存アッセイにて3つの抗体をすべてのコンビネーションにて試験することで、実施例1および2に記載される方法を説明する。23のうち12の最も効能のある抗体を選択し、3つの抗体の可能なすべてのコンビネーションにて再び試験する。
【0137】
方法
992、1024、1030、1183、1194,1211、1214、1242、1254、1255、1257、1260、1261、1277、1284、1305、1308、1317、1320、1449、1564、1565および1566と番号を付した、ヒトEGF受容体(FGFR)への結合が確認されている23の抗体をスクリーニングするのに選択した。各抗体を1xPBS中にて40μg/mlの濃度に希釈し、96−ウェルのソースプレートに加えた。各群において、Biomek(登録商標)3000ラボラトリーオートメーションワークステーション(beckman Coulter)を用い、A行が2μlの第一の抗体を含有し、B行が2μlの第二の抗体を含有し、12すべてのプレート上の12の行が抗体を含有するようになるまで同様に、2μlの12抗体を30μlの培地を含有する12384ウェルプレートのウェルに加えた。ついで、次の層の抗体を加えた;この時点で第一の抗体は列1に加えられており、第二の抗体は列2に加えられており、12のすべてのプレート上のすべてのウェルが2つの抗体を含有するまで同様に加えられた。ついで、第三の層を、2μlの抗体1をプレート1上のすべてのウェルに、2μlの抗体2をプレート2のすべてのウェルに、すべてのウェルが3つの抗体を6μlの容量で含有するまで同様に、ピペットを用いて添加することで加えた。各ウェルでの最終の抗体濃度は4μg/mlであった。
【0138】
ついで、500A431NS細胞を含有する30μlの培地を、抗体含有のすべてのウェル、ならびに陰性対照として用いられる抗体を含まない2つの行に加えた。ついで、該プレートを37℃で加湿されたインキュベータ中で3日間インキュベートし、その後で1xPBS中に1:1で希釈された8μlの細胞増殖試薬WST−1をすべてのプレート上のウェルに添加した。その後で、該プレートを37℃で1時間インキュベートした。ついで、該プレートをオービタルシェーカーに移し、さらに1時間インキュベートした。吸光度をELISAリーダー上で450および620nm(標準波長)で測定した。代謝活性な細胞(MAC)の量を以下のようにして非処理対照のパーセントとして計算した。
【数4】


代謝活性は生存細胞の数と相関関係にあるとみなした。
【0139】
結果
23の抗体を2つの12の無作為な群に分け、群1は抗体992、1024、1030、1211、1214、1254、1255、1260、1261、1277、1284および1320を含有し、その一方で群2は抗体1183、1194、1242、1255、1257、1305、1308、1317、1449、1564、1565および1566を含有した。奇数であるため、抗体1255が両方の群に含まれている。各群にある抗体の可能なすべての3−ミックスを上記したように生成し、細胞増殖に対する作用について試験した。%MACを12のモノクローナル抗体、220の独特な抗体の混合物、および132の傾斜混合物について計算した。ついで、該混合物を細胞培養に対するその作用に関してランク付けした。その多くが該混合物の効能に起因する抗体を選択することができるために、特定の抗体を含有する混合物について%MACを該抗体に対してプロットし、中央%MACを計算した。群1および群2にて抗体を含有する混合物についての%MACの散布図を図3に示すことができる。群1の抗体992、1024、1030、1254、1261および1320が混合物の中で最も効能があり、それに対して抗体1257、1308、1449、1564、1565および1566が群2の混合物の中で最も効果があることは明らかである。群1の抗体はまた、群2の抗体の混合物と比べてより効能があることも明らかであるが、それらは異なる実験の結果であるため、該群を直接比較することはできない。最終群のために各群からの6の抗体を選択した。これらは、992、1024、1030、1257、1261、1284、1308、1320、1449、1564、1565および1566であった。20の最も効能のある混合物の%MACおよびスクリーニングの第2ラウンドの結果の散布図を図4に示す。最も高い効能を有する2つの混合物は、992+1308+1566および992+1308+1320であった。実際に、最も高い効能を有する混合物のうち19は抗体992を含有し、このことはこの抗体が他の抗EGFR抗体とのコンビネーションにて十分な働きをすることを示す。抗体992はそれ単独で相当高い効能を有するが、他の抗体により増大することが見出された。
【0140】
実施例4
この実施例は実施例3にて選択された12の抗体の可能なすべての2−ミックスを同様の生存アッセイにて試験した結果を記載する。
【0141】
方法
その多くが3−ミックスの効能に起因することが判明した12の抗体、すなわち、992、1024、1030、1257、1261、1284、1308、1320、1449、1564、1565および1566を可能なすべての2−ミックスにて試験した。各抗体を1xPBS中にて40μg/mlの濃度に希釈し、96−ウェルのソースプレートに加えた。各群において、Biomek(登録商標)3000ラボラトリーオートメーションワークステーション(beckman Coulter)を用い、A行が3μlの第一の抗体を含有し、B行が3μlの第二の抗体を含有し、12のすべてが抗体を含有するまで同様に、3μlの12抗体を30μlの培地を含有する384ウェルプレートの1のウェルに加えた。ついで、次の層の抗体を加えた;この時点で第一の抗体は列1に加えられており、第二の抗体は列2に加えられており、12のすべてのプレート上のすべてのウェルが2つの抗体を6μlの総容量にて含有するまで同様に加えられた。各ウェルでの最終の抗体濃度は4μg/mlであった。
【0142】
ついで、500A431NS細胞を含有する30μlの培地を、抗体含有のすべてのウェル、ならびに陰性対照として用いられる抗体を含まない2つの行に加えた。ついで、該プレートを37℃で加湿されたインキュベータ中で3日間インキュベートし、その後で1xPBS中に1:1で希釈された8μlの細胞増殖試薬WST−1をすべてのプレート上のウェルに添加した。その後で、該プレートを37℃で1時間インキュベートした。ついで、該プレートをオービタルシェーカーに移し、さらに1時間インキュベートした。吸光度をELISAリーダー上で450および620nm(標準波長)で測定した。代謝活性な細胞(MAC)の量を上記したようにして計算した。
【0143】
結果
%MACを12のモノクローナル抗体および66の独特な抗体の混合物について計算した。ついで、該混合物をその細胞増殖に対する作用についてランク付けし、最も高い効能を有する20の混合物を図5(上図)に示した。抗体992と1024のコンビネーションが最も高い効能を有する。該混合物について%MACの散布図を図5(下図)に示すことができる。ここでも、抗体992が他の抗体とのコンビネーションにおいて優れた作用を示すことは明らかである。
【0144】
本願明細書にて引用されている特許および非特許文献はすべて、その内容を出典明示により本発明の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の機能的作用を示す少なくとも2種の化学的存在を含む混合物を提供するために、機能的作用を有する、または該作用に起因する化学的存在を同定かつ選択する方法であって、
a)各々が試験されるべき1の化学的存在を含む、n個のサンプルを準備し;
b)2またはそれ以上の当該n個のサンプルを可能なすべてのコンビネーションで混合し、第一の試験されるべき混合物のセットを得;
c)該第一の混合物のセットを機能性パラメータの測定能を有する機能性アッセイに付し、その機能的作用に起因している化学的存在を同定し;
d)各々が工程c)において機能的作用に起因している化学的存在を含むm個のサンプルを選択し、ここでmはnよりも小さく;
e)該m個のサンプルを可能なすべてのコンビネーションにて混合し、第二の試験されるべき混合物のセットを得;
f)該第二の混合物のセットを機能性パラメータの測定能を有する機能性アッセイに付し、その機能的作用に起因している化学的存在を同定し;および
g)所望の機能的作用を有する混合物を選択する
工程を含む、方法。
【請求項2】
工程d)、e)およびf)が、各々がm個の選択されたサンプルを含む、別個のサブプールにて繰り返される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程d)、e)およびf)が、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回繰り返され、該工程が並行してまたは同時に繰り返される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
3つの化学的存在を含む混合物が、工程b)にてn個のサンプルのうち3個を混合することで、同定かつ選択される、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
3つの化学的存在を含む混合物が、工程b)にてn個のサンプルのうち3個を混合し、工程e)にてm個のサンプルのうち3個を混合することで、同定かつ選択される、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
d1)所望の機能的作用を有するm1個の混合物を選択し;
e1)工程d1)より選択されるm1個の混合物のうち2、3、4または5個を可能なすべてのコンビネーションにて混合し;
f1)工程e1)の混合物を、機能性パラメータを測定することのできる機能性アッセイに供し、機能的作用に起因する混合物を同定し;および
g1)工程e1)の混合物より、所望の機能的作用を有する第二の混合物を選択する
工程を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
h)工程g1)で得られた混合物から選択される2、3、4または5個を混合し;
i)該混合物を機能性パラメータを測定することのできる機能性アッセイに供し、機能的作用に起因する混合物を同定し;および
j)所望の機能的作用を有する第三の混合物を選択する
工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
化学的存在が工程e1)にて混合されたいずれかの混合物にて一度だけ出現する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
化学的存在が工程h)にて混合されたいずれかの混合物にて一度だけ出現する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
特定の化学的存在が機能的作用に起因するかどうかの同定が、該化学的存在を含む混合物の機能的作用を、該化学的存在を含まない1または複数の混合物の機能的作用と比較することでなされる、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
特定の化学的存在が機能的作用に起因するかどうかの同定が、該化学的存在および他の化学的存在を含む混合物の機能的作用を、該化学的存在を含むだけの混合物の機能的作用と比較することでなされる、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
特定の化学的存在が機能的作用に起因するかどうかの同定が、該化学的存在を含む混合物の機能的作用を、標準値と比較することでなされる、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
標準値が所定の値であり、化学的存在を含む混合物の同定された機能的作用が、化学的存在について機能的作用に起因するとの次元において、所定の値よりも高いか、等しいか、または低いかのいずれかでなければならず、あるいは標準値が、化学的存在を含む混合物の機能的作用の同定が、化学的存在について機能的作用に起因するとの次元になければならない範囲内の区間にあってもよい、請求項12記載の方法。
【請求項14】
機能的作用に起因する化学的存在の同定が、その機能的作用を有する混合物中で最も頻繁に現れる化学的存在を同定することでなされる、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
nが3またはそれ以上の数、好ましくは3と1440の間、より好ましくは3と360の間、さらにより好ましくは3と120の間、さらにより好ましくは3と24の間、特に好ましくは3と12の間の数を有する整数である、請求項1ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
nが3またはそれ以上の数、好ましくは3と720の間、より好ましくは3と360の間、さらにより好ましくは3と120の間、さらにより好ましくは3と24の間、特に好ましくは3と12の間の数を有する整数である、請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
試験されるべき化学的存在のいずれかに含まれる化合物が、抗体、抗生物質、抗癌剤、抗AIDS剤、抗成長因子、抗ウイルス剤、可溶性受容体、サイトカイン、RNAi、ワクチンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項1ないし16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
試験されるべき化学的存在に含まれる化合物が2またはそれ以上の抗体のコンビネーションであるか;または少なくとも1の非抗体化合物とのコンビネーションの1または複数の抗体であり、例えば、非抗体化合物が、抗生物質、抗ウイルス剤、抗癌剤、抗自己免疫疾患剤、およびRNAiからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
試験されるべき化学的存在に含まれる化合物がモノクローナル抗体である、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
試験されるべき化学的存在に含まれる化合物が、a)1または複数のモノクローナル抗体、およびb)a)の1または複数の抗体とのコンビネーションにて所望の機能的作用を提供する少なくとも1の付加的な治療剤を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
測定されるべき機能性パラメータが、
物理的作用の発揮、リガンドとの結合、触媒活性の発揮、触媒活性に対する多感性、剤の生物膜を通過する改変された輸送の促進、剤の細胞内コンパートメントにおける改変された転位の促進、真核生物細胞の集団中の少なくとも1つの遺伝子の発現に対する影響、真核生物細胞の集団の成長または代謝作用に対する影響、標的細胞に対する影響、病原体に対する影響、二次免疫作用に対する影響、化合物の発現、製造または処方能に対する影響、および安定性に対する影響からなる群より選択される、請求項1ないし20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
試験されるべき混合物が機能性パラメータの測定能を有する2またはそれ以上の機能性アッセイに供され、各混合物の2またはそれ以上の機能性パラメータを独立して測定する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
機能性パラメータが、真核生物細胞の集団の成長または代謝作用に対する影響、標的細胞に対する影響、または標的細胞に対する化合物の影響である、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
マルチウェルプレートにおいて、および/または自動ピペットを使用し、および/またはロボットを使用して行われる、請求項1ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2の化学的存在を含む混合物中で、化学的存在の間の最適な化学量論的割合を同定かつ選択する方法であって、該混合物が所望の機能的作用を示し、
aa)各々が一の化学的存在を混合物中にあるように含むp個のサンプルを準備し、
bb)該p個のサンプルの各々をq倍に希釈し、p個の一連のサンプルを得、その各々が同じ化学的存在を異なる濃度で含み、
cc)工程aa)およびbb)にて得られた2またはそれ以上のサンプルを可能なすべてのコンビネーションで混合して、試験されるべき混合物を得、
dd)該混合物を機能的作用の測定能を有する機能性アッセイに供して、測定される機能的作用と混合物中の化学的存在の濃度との関係を同定し、および
ee)所望の機能的作用を有する混合物を選択する
ことを含む、方法。
【請求項26】
サンプルが、工程bb)にて、2、5、10、20、50または100倍に希釈される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
pが2またはそれ以上の整数であり、より好ましくは2と24の間の、さらにより好ましくは2と12の間の整数である、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
qが1、2、3、4または5の数値の整数である、請求項25ないし27のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504770(P2012−504770A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530366(P2011−530366)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050264
【国際公開番号】WO2010/040356
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505257682)シムフォゲン・アクティーゼルスカブ (24)
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
【Fターム(参考)】