説明

コンピュータシステム及びそのシステムにおけるブート制御方法

【課題】
コンピュータに接続される複数のブートデバイスから任意のデバイス、及び当該デバイスからOSをブートする回数を指定して、システムBIOSによる当該OSのブートを限定的に制御可能とする。
【解決手段】
管理装置により設定された、複数の該デバイスから選択された所定のOSを格納するデバイスの識別情報と、所定のOSのブート回数情報を保持するセットアッププログラムをコンピュータへ送信する。コンピュータは、受信したデバイスの識別情報およびブート回数情報を補助記憶装置に記憶する。システムBIOSのブートローダは、補助記憶装置に記憶されたデバイスの識別情報及びブート回数情報を参照して、所定の処理ごとにブート回数情報を減じ、ブート回数情報が所定値になった場合、このデバイス識別情報及びブート回数情報を補助記憶装置から削除する。一方、所定値にならない場合には、デバイスに記憶された所定のOSをブートして実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステム及びそのシステムにおけるブート制御方法に係り、特に複数のデバイスを含むコンピュータシステムにおけるOS(Operating System)のブートの制限制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータを用いたコンピュータシステムにおいては、OSが予め記憶されているブート可能な複数のデバイスの中から、用途に合わせてブートデバイスを選択してそのOSをブートすることができる(特許文献1)。ブートデバイスの選択は、メンテナンスなどの非定常作業時に行われる。ブートデバイスの選択に関しては、現状、不揮発性メモリに記憶された情報を元に選択する方法と、ユーザーインターフェースに表示された情報を基に使用者が選択する方法が知られている。
【0003】
然るに、人手を介さない作業が求められるときには、状況に合わせてブートデバイスの変更を必要とする場合があるが、従来では柔軟に対応できないという欠点があった。その改善策として、例えば、特許文献2に開示されるように、自動的にブートデバイスを変更するブート不良検出システムが知られている。これにより、状況にあわせて次々とブートデバイスを変更して作業することが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開平3−42751公報
【特許文献2】特開平11−53214公報(特許第3,001,470公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のコンピュータの管理において、いずれかもしくは全てのコンピュータに対しメンテナンスを実施する必要がある場合、管理者は対象のコンピュータに対して、メンテナンスプログラムを配信し、メンテナンスを実施する。このとき、誤操作によるメンテナンスの失敗を防止するため、メンテナンスプログラムは人手を介さずに実行できる形式で提供されることが望ましい。
【0006】
その場合、メンテナンスを施す部位によっては、定常作業で使用するOSとは別のものが必要になることがあるが、従来技術による不揮発性メモリの情報を元にしてブートデバイスを選択する方法や、人手を必要とする選択方法では、メンテナンスプログラムを実行するのが困難という欠点があった。
【0007】
また、一時的に不揮発性メモリの情報を変更してメンテナンス作業を実施し、その作業終了後に不揮発性メモリの情報を元に戻す処理を実行した場合、何らかの要因でメンテナンス作業が中断して不揮発性メモリの情報を元に戻すことが実施できない場合、人手を介して状況の修復を図らねばならないという問題点がある。
【0008】
さらに上記の方法では、一時的に不揮発性メモリの情報を変更するプログラムと、メンテナンス作業終了後に不揮発性メモリの情報を元に戻すプログラムは別個であるため、変更前の不揮発性メモリの情報を何らかの方法によって共有する手段を講じなければならないという問題点もある。
【0009】
本発明の目的は、複数のデバイスから選択されたデバイス及び当該デバイスからOSをブートする回数を制限してOSのブートを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコンピュータシステムは、好ましくは、管理装置に接続されるコンピュータを含むコンピュータシステムにおいて、該コンピュータは;
OS及びアプリケーションプログラムを記憶することができ、ブートの対象となる複数のデバイスと、該複数のデバイスに保持されたOSをブートするブートローダを備えたシステムBIOSと、該システムBIOSにより記憶、参照される補助記憶装置と、を有し、
該管理装置は、複数の該デバイスから選択された、所定のOSを格納するデバイスの識別情報と、該所定のOSのブート回数情報を保持するセットアッププログラムを該コンピュータへ送信し、該コンピュータにおける該補助記憶装置は、該送信された該デバイスの識別情報および該ブート回数情報を記憶し、
該ブートローダは、該補助記憶装置に記憶された該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報を参照して、所定ごとに該ブート回数情報を減じ、かつ該ブート回数情報が所定値になったことを確認して、該デバイス識別情報及びブート回数情報を該補助記憶装置から削除し、所定値にならない場合には、該デバイスに記憶された所定のOSをブートするように制御することを特徴とするコンピュータシステムとして構成される。
【0011】
また、好ましい例では、前記デバイスのうち特定のデバイスは、定常作業用のOSを記憶しており、前記ブートローダは、前記補助記憶装置が該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報に記憶されていないことを確認して、該定常作業用のOSをブートする。
【0012】
本発明に係るブート制御方法は、好ましくは、OS及びアプリケーションプログラムを記憶することができ、ブートの対象となる複数のデバイスと、該複数のデバイスに保持されたOSをブートするブートローダを備えたシステムBIOSと、該システムBIOSにより記憶、参照される補助記憶装置と、を有するコンピュータにおけるブート制御方法であって、
該コンピュータに接続される管理装置で、複数の該デバイスから選択された、所定のOSを格納するデバイスの識別情報と、該所定のOSのブート回数情報を保持するセットアッププログラムを該コンピュータへ送信するステップと、該コンピュータにおいて、該送信された該デバイスの識別情報および該ブート回数情報を受信して、該補助記憶装置に記憶するステップと、該ブートローダにより、該補助記憶装置に記憶された該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報を参照して、該ブート回数情報を減じるステップと、該ブートローダにより、該ブート回数情報が所定値になったか否かを確認して、該ブート回数情報が所定値になった場合、該デバイス識別情報及びブート回数情報を該補助記憶装置から削除するステップと、該確認の結果、該ブート回数情報が所定値にならない場合には、該デバイスに記憶された所定のOSをブートするように制御するステップと、を有することを特徴とするブート制御方法として構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、システムBIOSにより、一時的に指定されたデバイスから所定の回数だけOSのブートを行うことができ、所定の回数のブートが終わると、以後、所定のOS例えば定常作業用のOSのブート処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を使用して本発明の一実施例について説明する。
図1は一実施例によるコンピュータシステムを示す。
このコンピュータシステムにおいて、例えば会社の個人が使用するコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ(PC))10は、ネットワークを介して管理者PC7(管理者装置)に接続されている。実際には、多数の利用者PC1が管理者PC7に接続されるが、図示の例では、1台の利用者PC1が示されている。
【0015】
コンピュータ10は、共通バスに接続される各構成要素について、システムBIOS1、補助記憶装置2、フレキシブルディスク(FD)3、コンパクトディスク(CD)4、ハードディスク(HD)5、及びネットワーク経由で接続されるネットワークデバイス6を有する。3〜6はシステムBIOS1によりブートデバイスとして利用可能なデバイスであり、いずれのデバイス3〜6もブート可能なOSが記憶される。補助記憶装置2は、ブートする対象となるブートデバイスの識別情報と、当該デバイスからブートする回数の情報を記憶する。
【0016】
管理者PC7は、管理者の操作によりネットワークを介して各コンピュータ10に対して、プログラムを配信することができる。管理者は、各デバイス3〜6に持たせるべきOSやアプリケーションプログラムを任意に設定することができる。とりわけ、メンテナンス作業用OSをセットするデバイスを指定し、かつそのOSのブート回数を制限することができる。そのために、セットアッププログラム52内に、ブート対象となるデバイスの識別情報及び制限すべきブート回数を設定できる。
【0017】
図2はシステムBIOS1の構成を示す。
システムBIOS1は、各デバイスからOSをブートするブートローダ11と、ブートデバイスの識別情報及びブート回数をセットアッププログラム52から受け取るためのセットアップインターフェース(I/F)12と、補助記憶装置2に記憶するブートデバイスの識別情報及びブート回数を転送する補助記憶装置I/F13を有している。このブートデバイス及びブート回数の設定は、必要となる度に、管理者PC7からセットアップログラムを用いて行うことができ、当該補助記憶装置I/F13を介して補助記憶装置2へ転送される。
【0018】
本実施例において、デバイス3〜6の中で、とりわけハードディスク5は、定常作業用のOSとアプリケーションプログラムを記憶する。他のデバイス3,4,6は、アプリケーションプログラムは記憶するが、定常作業用のOSは記憶せず、代わってメンテナンス作業用のOSを記憶することができる。
利用者PC10の起動により、ハードディスク5からは定常作業用のOS及びアプリケーションプログラムブートされ得る。また、デバイス3,4,6からは、メンテナンス作業用OSがブートされ得る。
【0019】
次に、図3及び図4を参照してデバイスの構成例について説明する。
図3において、ハードディスク5は、ブート対象となる定常作業OS51、ブート対象となるデバイス及びブート回数を設定するセットアッププログラム52、及び種々のアプリケーションプログラム53を記憶する。これらの定常作業OS51や、セットアップログラム52、アプリケーションプログラム53は、管理者の意思に従って管理者PC7から転送され、ハードディスク5に記憶される。
【0020】
他のデバイス3、4、6、例えばコンパクトディスク4は、図4に示すように、メンテナンス作業用のOS41及びアプリケーションプログラム43を記憶することができる。このメンテナンス作業用OS41の格納先となるデバイス及びそのブート回数は、管理者によって、セットアッププログラム52内に設定される。セットアッププログラム52が実行されると、メンテナンス作業対象となるデバイスと当該デバイスからのメンテナンス作業用OS41のブート回数が、セットアップインターフェース(I/F)12を介し、システムBIOS1に設定される。システムBIOS1はセットアッププログラム52から受け取ったブートデバイス及びそのブート回数を、補助記憶装置I/F13を介して補助記憶装置2に記憶する。
なお、デバイス3,6にも図4と同様な構成とすることができる。
【0021】
次に、図5のフローチャートを参照して、ブート制御動作について説明する。
【0022】
まず、管理者はメンテナンス作業を意図してメンテナンス作業対象のデバイスを決めて、メンテナンス作業用OSを格納するデバイスの識別情報と、当該OSのブート回数情報を記憶したセットアッププログラム52を作成する。そして、管理者PC7からメンテナンスの対象となる利用者PC10に対して、セットアッププログラム52を配信する。配信されたセットアッププログラム52は、コンピュータ10のハードディスク5に格納される。本例の場合、FD3を指定して、ブート回数(n回)が設定された、と仮定する。
【0023】
次に、定常業務で動作中のOS51で利用者の操作により、ハードディスク5内に記憶されたセットアッププログラム52が実行される。即ち、セットアッププログラム52は、システムBIOS1のセットアップインターフェース(I/F)12を使用してブートデバイスの識別情報とブート回数の情報をシステムBIOS1に提供される。この時、システムBIOS1は、ブートデバイス識別情報とブート回数情報を、補助記憶装置I/F13を介して補助記憶装置2に記憶する。この後、定常業務の終了によりOS51が終了する。
【0024】
次の機会に利用者がPCを起動した時、システムBIOS1は、ブートローダ11を実行する。ブートローダ11は、補助記憶装置I/F13を参照して、ブートデバイス識別情報とブート回数情報が補助記憶装置2に記憶されているかを確認する(S501)。確認の結果、もしブートデバイス識別情報とブート回数情報が記憶されていない場合には、通常のブート処理を実行する(S502,S503)。即ち、定常作業用のOS51がハードディスク5からブートされ実行される。
【0025】
一方、ブートデバイス識別情報とブート回数情報が記憶されている場合(本例の場合、既にFD3を指定してブート回数(n回)が設定済み)には、補助記憶装置I/F13を介して、補助記憶装置2に記憶されている、当該識別情報に対応するデバイスに対するブート回数を1回分減らす(S504)。そして、ブート回数が「0」になったかを確認する(S505)。確認の結果、もしブート回数が「0」になった場合には、補助記憶装置I/F13を介して、補助記憶装置2に記憶されているブートデバイス識別情報とブート回数情報を削除する(S507)。一方、ブート回数が「0」にならない場合には、補助記憶装置I/F13を介して、ブートデバイス識別情報を取得し、取得したブートデバイス情報に基づきメンテナンス作業用OSをブートする(S508)。
【0026】
利用者PCを起動する度に、ブートローダ11を使用して、FD3に格納されたメンテナンス作業用OSがブートされるとすれば、PCを起動する度にブート回数は1ずつ減じられる。そして、n回目の起動時にブート回数が「0」となると、補助記憶装置2に記憶されていた、当該FD3に対するブート関係情報(即ちブートデバイス識別情報及びブート回数情報)は削除される。
【0027】
このように、本実施例によれば、複数のデバイス3〜6から任意のデバイス及び当該デバイスからのOSのブート回数を指定することで、メンテナンス作業用OSのブートのデバイス及びそのブート回数を制限するように制御することができる。
【0028】
なお、上記実施例では、FD3を指定してそこからのブート回数を制限制御するようにしたが、他の変形例によれば、メンテナンス作業用OSを記憶するデバイスは1つに限らない。この場合、補助記憶装置には、複数のデバイスの識別情報及びそれらデバイスからのブート回数が設定されることになる。この場合、各デバイスからのメンテナンス作業用OSのブート制御は、図5のフローチャートの動作と同様であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施例によるコンピュータシステムを示すブロック図、
【図2】システムBIOS1の構成を示す図、
【図3】ハードディスク5の構成を示す図、
【図4】コンパクトディスク4の構成を示す図、
【図5】一実施例によるブート制御動作を説明するためのフローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0030】
1:システムBIOS、 2:補助記憶装置、 3:FD、 4:CD、 5:HD、 6:ネットワークデバイス、 7:管理者PC、 10:コンピュータ、
11:ブートローダ、 12:セットアップインターフェース、 13:補助記憶装置インターフェース、 51:OS、 52:セットアッププログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理装置に接続されるコンピュータを含むコンピュータシステムにおいて、
該コンピュータは;
OS及びアプリケーションプログラムを記憶することができ、ブートの対象となる複数のデバイスと、該複数のデバイスに保持されたOSをブートするブートローダを備えたシステムBIOSと、該システムBIOSにより記憶、参照される補助記憶装置と、を有し、
該管理装置は、複数の該デバイスから選択された、所定のOSを格納するデバイスの識別情報と、該所定のOSのブート回数情報を保持するセットアッププログラムを該コンピュータへ送信し、
該コンピュータにおける該補助記憶装置は、該送信された該デバイスの識別情報および該ブート回数情報を記憶し、
該ブートローダは、該補助記憶装置に記憶された該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報を参照して、所定の処理ごとに該ブート回数情報を減じ、かつ
該ブート回数情報が所定値になったことを確認して、該デバイス識別情報及びブート回数情報を該補助記憶装置から削除し、所定値にならない場合には、該デバイスに記憶された所定のOSをブートするように制御することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項2】
前記デバイスのうち特定のデバイスは、定常作業用のOSを記憶しており、
前記ブートローダは、前記補助記憶装置が該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報に記憶されていないことを確認して、該定常作業用のOSをブートすることを特徴とする請求項1のコンピュータシステム。
【請求項3】
OS及びアプリケーションプログラムを記憶することができ、ブートの対象となる複数のデバイスと、該複数のデバイスに保持されたOSをブートするブートローダを備えたシステムBIOSと、該システムBIOSにより記憶、参照される補助記憶装置と、を有するコンピュータにおけるブート制御方法であって、
該コンピュータに接続される管理装置で、複数の該デバイスから選択された、所定のOSを格納するデバイスの識別情報と、該所定のOSのブート回数情報を保持するセットアッププログラムを該コンピュータへ送信するステップと、
該コンピュータにおいて、該送信された該デバイスの識別情報および該ブート回数情報を受信して、該補助記憶装置に記憶するステップと、
該ブートローダにより、該補助記憶装置に記憶された該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報を参照して、該ブート回数情報を減じるステップと、
該ブートローダにより、該ブート回数情報が所定値になったか否かを確認して、該ブート回数情報が所定値になった場合、該デバイス識別情報及びブート回数情報を該補助記憶装置から削除するステップと、
該確認の結果、該ブート回数情報が所定値にならない場合には、該デバイスに記憶された所定のOSをブートするように制御するステップと、を有することを特徴とするブート制御方法。
【請求項4】
前記デバイスのうち特定のデバイスは、定常作業用のOSを記憶しており、
前記ブートローダは、前記補助記憶装置が該デバイスの識別情報及び該ブート回数情報に記憶されていないことを確認して、該定常作業用のOSをブートすることを特徴とする請求項3のブート制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−205241(P2009−205241A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44273(P2008−44273)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】