説明

コンピュータネットワークの使用方法

本発明は、ストリーム送受信用ポートをそれぞれ有する複数のスイッチ(18、20)を有するコンピュータネットワーク(10)の使用方法を提供し、該方法において、ルータ(14)から、ストリームに関心を示すスイッチ(18、20)の前記ポートを介して、少なくとも1つのレシーバ(24、26)にストリームが送信され、接続障害の場合に、前記少なくとも1つのレシーバ(24、26)の少なくとも1つはメッセージを前記ルータ(14)に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータネットワークの使用方法、コンピュータネットワークおよび該方法を実施するためのコンピュータプログラムに関する。
【0002】
イーサネット(登録商標)ネットワークは、ローカルエリアネットワークのためのフレームベースのコンピュータネットワークである。マルチキャストデータストリームを伴うスイッチドイーサネット(登録商標)において利用可能帯域をより効率的に用いるため、メッセージをスヌーピング(のぞき見)する、いわゆるIGMP(インターネットグループマネジメントプロトコル)スヌーピングが用いられている。
【0003】
インターネットグループマネジメントプロトコル(IGMP)は、インターネットプロトコルマルチキャストグループのメンバー構成管理に用いられる通信プロトコルである。したがって、IGMPはIPホストおよび近隣のマルチキャストルータによって用いられて、マルチキャストのメンバー構成を確立する。IGMPスヌーピングは、IGMPトラフィックをリスニングする処理であり、スイッチは、マルチキャストネットワークに送信されたレイヤ3のIGMPパケットを処理することにより、ホストとルータとの間のIGMPにおける会話をリッスンすることができる。
【0004】
IGMPスヌーピングを用いないスイッチドイーサネット(登録商標)ネットワークでは、すべてのマルチキャストトラフィックはイーサネット(登録商標)スイッチのすべてのポートにブロードキャストされる。これは、スイッチドネットワークにおける実際のブロードキャストとマルチキャストトラフィックとの間に差がないことを意味している。したがって、マルチキャスト機能は、ネットワークのルーティングされたレベルにおいてのみ存在する。IGMPスヌーピングを用いることにより、スイッチはマルチキャストストリームを、マルチキャストストリームに関心を示すスイッチポートにのみ送る。スイッチの他のポートにおいては、マルチキャストストリームのために帯域幅は使用されない。しかし、IGMPクエリアはこのメカニズムのために機能することを要求される。通常、IGMPクエリアはイーサネット(登録商標)ルータに設けられている。しかし、IGMPクエリアは(ルート)スイッチであってもよい。多くのマルチキャストストリームを含むネットワークにおいてIGMPスヌーピングは不可欠である。
【0005】
スイッチドイーサネット(登録商標)ネットワークに関して冗長なネットワーク経路を形成する方法は複数ある。これは、スパニングツリープロトコル(STP、IEEE802.1d)およびラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP、IEEE802.1w)のような標準化プロトコルにより扱われる。イーサネット(登録商標)ネットワークにおいてループは許されないため、これらのプロトコルによってネットワーク内のループは検出され、自動的にループは解消される。通信経路がいずれかの場所で遮断された場合(たとえばケーブルの障害)、この障害は検出され、ループが意図的に解消された場所が修復される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IGMPスヌーピングを(R)STPと組み合わせたとき、複数の通信経路の1つが遮断された場合に問題が生じる。これはマルチキャストストリームが代替経路に存在しないため、ネットワークの下方にこのストリームが分配されないことである。ホストがマルチキャストストリームを(依然として)要求していれば、IGMPクエリアは定期的な間隔でマルチキャストメッセージをネットワーク内のすべてのホストに送信する。このメッセージがバックアップ経路を介してホストに到達したときに、ホストは応答する。その時点から、ホストはマルチキャストストリームを受信することとなる。
【0007】
IGMPクエリアの送信間隔は、商用オフザシェルフ(COTS)設備において125秒であるので、ホストはマルチキャストストリームを、最大125秒間受信できない。多くの用途において、これはあまりに長い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ストリーム送受信用ポートをそれぞれ有する複数のスイッチを備えたコンピュータネットワークの使用方法は、ルータから、ストリームに関心を示すスイッチのポートを介して、少なくとも1つにストリームが送信され、接続障害の場合に、少なくとも1つのレシーバの少なくとも1つはメッセージをルータに送信する。
【0009】
一実施形態では、接続障害の場合に、障害を検出するレシーバまたはレシーバ上で動作するアプリケーションは、ルータから少なくとも1つのレシーバへのストリームのための経路を定義するルータに、メッセージを送信する。
【0010】
一実施形態では、接続障害の場合に、ネットワーク内のスイッチはSTPメッセージまたはRSTPメッセージをブロードキャストして、すべてのレシーバによる自動的なメッセージの送信をトリガする。
【0011】
ネットワークは、たとえば、スパニングツリープロトコル(STP)またはラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP)のような標準化プロトコルにより扱われる、冗長イーサネット(登録商標)ネットワークである。
【0012】
ルータと、少なくとも1つのレシーバに接続されるメッセージを送受信するためのポートをそれぞれ備えた複数のスイッチとを有するコンピュータネットワークは、ルータから、ストリームに関心を示すスイッチのポートを介して、少なくとも1つのレシーバにメッセージを送信し、接続障害の場合に、少なくとも1つのレシーバの少なくとも1つはメッセージをルータに送信する。
【0013】
一実施形態では、接続障害の場合に、障害を検出するレシーバまたはレシーバ上で動作するアプリケーションは、ルータから少なくとも1つのレシーバへのストリームのための経路を定義するルータに、メッセージを送信する。
【0014】
一実施形態では、新たなスパニングツリーを確立するために、ネットワーク内のスイッチはSTPメッセージまたはRSTPメッセージをブロードキャストする。クエリアとして動作するデバイスがさらなるクエリを発すると、それがこのメッセージを検出したとき、すべてのマルチキャストレシーバは自動的にメッセージを送信する。
【0015】
一実施形態では、コンピュータネットワークは、冗長イーサネット(登録商標)ネットワークである。
【0016】
一実施形態では、インターネットグループマネジメントプロトコル(IGMP)を用いることができる。さらに、IGMPスヌーピングを(R)STPと組み合わせて用いることができる。
【0017】
コンピュータプログラムは、コンピュータまたは対応するコンピュータユニット上で動作する、上記処理のすべてのステップを実行するためのコード手段を備える。
【0018】
コンピュータプログラムは、コンピュータまたは対応するコンピュータユニット上で動作する、上記処理のすべてのステップを実行するための、読み取り可能なデータ保持手段に保存されたプログラムコード手段を備える。
【0019】
本発明を用いることにより、ストリームのロスは極めて短期間に制限される。実際の期間はマルチキャストストリームのパケット受信速度に依存する。低レイテンシのオーディオストリームについてはたとえば0.1秒未満である。これはマルチキャストストリームを受信する必要のあるアプリケーションを変更するだけで実現可能である。スイッチおよびルータは変える必要はなく、全く標準に従うままでよい。これはCOTSとして有利であり、スイッチおよびルータはこのアプリケーションにより使用される。たとえば、本発明は、IPベースのオーディオシステムに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】障害のない冗長イーサネット(登録商標)ネットワークを示す図である。
【図2】接続障害発生直後の冗長イーサネット(登録商標)ネットワークを示す図である。
【図3】接続障害発生から125秒後の冗長イーサネット(登録商標)ネットワークを示す図である。
【図4】IGMPメッセージの経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述の特徴および以下に記載する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、特定された組み合わせにおいてだけでなく他の組み合わせまたは単独で用いることができる。
【0022】
本発明は、例示を目的とした実施形態により図面に示し、以下、図面を参照して詳細に説明する。この説明が、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の実施例に過ぎないことは理解されるところである。
【0023】
図1は、障害のないイーサネット(登録商標)ネットワークにおけるデータストリームを示す。参照番号10は、他の(スイッチド)ネットワークを示している。マルチキャストストリームXの開始時、TCP IPプロトコルスタックは、ステップ12において、IGMPクエリアを有するルータ14にIGMPリクエストメッセージを送信する。ステップ16において、ルータ14はマルチキャストストリームの送信に応答する。スイッチドネットワークはIGMPメッセージをスヌーピングしているので、該ネットワークはその送信先を知る。参照番号18はIGMPスヌーピングおよびRSTP機能を持つスイッチAを示している。参照番号20はIGMPスヌーピングおよびRSTP機能を持つスイッチBを示している。参照番号22はIGMPスヌーピングおよびRSTP機能を持つスイッチCを示している。参照番号24はマルチキャストレシーバ1を示し、参照番号26はマルチキャストレシーバ2を示している。マルチキャストストリームはスイッチA18のポート2と、スイッチB20のポート2および3と、スイッチCのポート3とに送信される。
【0024】
図2は、ネットワーク接続がスイッチB20とスイッチC22との間で遮断(参照番号30)された場合のデータストリームを示す。(R)STPにより、スイッチA18のポート3とスイッチC22のポート1とを介したスイッチC22への接続が回復される。しかし、このポートではマルチストリームは利用できない。したがって、マルチキャストレシーバ2(参照番号26)はストリームXを受信できず、これは、レシーバ2(参照番号26)がストリームX(参照番号34)をロスすることを意味する。このことはTCP IPスタックによって検出されない。TCP IPスタックはストリームの伝送速度について何も知らず、また、ストリームXの次のパケットをいつ予測するのかを知らないからである。このため、TCP IPプロトコルスタックは、IGMPクエリアのメッセージを待って、IGMPメッセージを送信する。これには125秒間かかる場合がある。そして、レシーバ2(参照番号26)は、ストリームX(図3中、参照番号36)を再び受信する。
【0025】
しかし、レシーバ2(参照番号26)上で動作し、ストリームを受信するアプリケーションは、この情報を有している。アプリケーションはストリームが突然止まったことに気づく。アプリケーションがTCP IPスタックに対してストリームに関する新たなリクエストを発すると、TCP IPスタックはルータにIGMPメッセージを送信する。このメッセージは、図4に示されているような代替ネットワーク経路を通る。ルータ14はストリームXを既に送信していたとき、何もしない。しかし、スイッチA18は、IGMPメッセージをスヌーピングし、ポート3にもストリームXを送信し始める(ステップ38)。ポート1でメッセージを受信しているスイッチC22はIGMPメッセージをスヌーピングし、これによってスイッチC22はポート3に対してのみメッセージを送信すべきであることを知る。アプリケーションは再びストリームXを受信し始める。これには、ストリームに参加するのに本来要する時間(通常は100ms未満)を要する。
【0026】
代替的な実施形態では、遮断された接続が検出されたとき、ネットワーク内のスイッチは、新たなスパニングツリーを確立するため、STPメッセージまたはRSTPメッセージをブロードキャストする。IGMPクエリアとして働くデバイスがさらなるクエリを発信すると、それがこのようなメッセージを検出する場合、すべてのマルチキャストレシーバは自動的にIGMPメッセージを送信し、レシーバへのマルチキャストのルートが再び確立される。このようにして、図3に示す状況は、接続の障害後、素早く修復される。
【0027】
この解決法によれば、マルチキャストルーティングツリーのルートがスパニングツリーの変化に確実に対応できる一方で、マルチキャストルーティングツリーのリーフ(複数のレシーバが影響される場合には複数のリーフ)がスパニングツリーに確実に対応できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ネットワーク、 14 ルータ、 18 スイッチA、 20 スイッチB、 22 スイッチC、 24 マルチキャストレシーバ1、 26 マルチキャストレシーバ2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリーム送受信用ポートをそれぞれ有する複数のスイッチ(18、20)を備えたコンピュータネットワーク(10)の使用方法であって、
ルータ(14)から、ストリームに関心を示すスイッチ(18、20)の前記ポートを介して、少なくとも1つのレシーバ(24、26)にストリームが送信され、
接続障害の場合に、前記少なくとも1つのレシーバ(24、26)の少なくとも1つはメッセージを前記ルータ(14)に送信する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
接続障害の場合に、障害を検出する前記レシーバ(24、26)は、前記ルータ(14)から前記少なくとも1つのレシーバ(24、26)へのストリームのための経路を定義する前記ルータ(14)に、メッセージを送信する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
接続障害の場合に、ネットワーク(10)内の前記スイッチ(18、20)はSTPメッセージまたはRSTPメッセージをブロードキャストして、すべての前記レシーバ(24、26)による自動的なメッセージの送信をトリガする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ネットワーク(10)は、冗長イーサネット(登録商標)ネットワーク(10)である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ルータ(14)と、少なくとも1つのレシーバ(24、26)に接続されるメッセージを送受信するためのポートをそれぞれ有する複数のスイッチ(18、20)とを備えたコンピュータネットワーク(10)であって、
前記コンピュータネットワーク(10)は、前記ルータ(14)から、ストリームに関心を示す前記スイッチ(18、20)のポートを介して、少なくとも1つのレシーバ(24、26)にメッセージを送信し、
接続障害の場合に、前記少なくとも1つのレシーバ(24、26)の少なくとも1つはメッセージを前記ルータ(14)に送信する、
ことを特徴とするコンピュータネットワーク。
【請求項6】
前記コンピュータネットワーク(10)は、冗長イーサネット(登録商標)ネットワーク(10)である、請求項5記載のコンピュータネットワーク。
【請求項7】
インターネットグループマネジメントプロトコル(IGMP)が用いられている、請求項5または6記載のコンピュータネットワーク。
【請求項8】
コンピュータまたは対応するコンピュータユニット上で動作する、請求項1乃至4のいずれか1項記載の処理のすべてのステップを実行するためのコード手段を備えるコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータまたは対応するコンピュータユニット上で動作する、請求項1乃至4のいずれか1項記載の処理のすべてのステップを実行するための、読み取り可能なデータ保持手段に保存されたプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−517166(P2012−517166A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548541(P2011−548541)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051426
【国際公開番号】WO2010/088965
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】