説明

コンベアベルト及びコンベアベルトのリキャップ方法

【課題】使用後のカバーゴムをリキャップする際に、本体ベルトの表面を凸凹にしたりスチールコードを露出させたりすることなく効率よくカバーゴムを剥すことが可能なコンベアベルト及びリキャップ方法を提供する。
【解決手段】このコンベアベルト1は、補強芯体としてスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、該本体ベルト5の少なくとも搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には、少なくとも2層の繊維層11a、11bと、少なくとも1層のゴム層13とが交互に積層配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、補強芯体としてスチールコードが埋設された本体ベルトと、該本体ベルトの少なくとも搬送面側に配置されたカバーゴムとを備えるコンベアベルトに関するものである。また、この発明は、補強芯体としてスチールコードが埋設された本体ベルトと、該本体ベルトの少なくとも搬送面側に配置されたカバーゴムとを備えるコンベアベルトのリキャップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、省資源化の観点から製品の使用寿命の長期化が強く求められている。コンベアベルトに関しても例外ではなく、コンベアベルトは、その各部位ごとに使用寿命が異なることから、補強芯体を有する本体ベルト等の他の部位に比べて使用寿命の短いカバーゴムをリキャップすることにより使用寿命の長期化が図られている。このカバーゴムのリキャップは、摩耗や損傷したカバーゴムのみを除去した後に新しい未加硫カバーゴムを貼りなおし加硫することによって行われる。
【0003】
ところで、カバーベルトをリキャップするためには、摩耗等したカバーゴムを取り除く作業が必要であるが、従来、カバーゴムの除去は、バフ処理によって行うのが主流であった。このバフ処理は、カバーゴムの摩耗や損傷状態に応じて手作業で行なわれるため、多大な時間と労力を必要とし、また補強芯体を傷つけずに除去面を平滑に仕上げるために熟練した作業を必要とする。
【0004】
これに対し、特許文献1には、図10(a)に示すように、カバーゴム部109とスチールコード103を有するベルト本体部105との境界に帆布101を配設することによりこれらのカバーゴム部109とベルト本体部105との間の結合力を弱化させ、カバーゴム部109の容易な引き剥がしを可能とする技術が開示されている。
【特許文献1】実開平2−64508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたコンベアベルトでは、図示のように、使用後のカバーゴム部109の厚さが摩耗等によって不均一となっていることに起因して、帆布101をベルト本体部105に残留させるようにしてカバーゴム部109を剥いだ場合、薄くなった部分でカバーゴム部109が千切れてしまい、効率よく剥ぐことができないという問題がある。また、カバーゴム部109を剥いだ際に、帆布101上に十分な量のゴムを残留させることができず、新しいカバーゴム部109との接着性が不十分となったり不均一となったりするおそれがある。
【0006】
また、このような千切れの問題を回避すべく、カバーゴム部109を帆布101とともに剥いだ場合、図10(b)に示すように、ベルト本体部105の表面が凸凹となり、新しいカバーゴム部109を貼り付けるのに先立ちかかる表面を平滑にバフ処理しなければならないという問題がある。さらに、カバーゴム部109を剥いだ際にスチールコード103が露出する場合があり、この場合バフ処理でスチールコード103を傷めるおそれがある。
【0007】
それゆえこの発明は、これらの問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、使用後のカバーゴムをリキャップする際に、本体ベルトの表面を凸凹にしたりスチールコードを露出させたりすることなく効率よくカバーゴムを剥すことが可能なコンベアベルト及びリキャップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、この発明は、補強芯体としてスチールコードが埋設された本体ベルトと、該本体ベルトの少なくとも搬送面側に配置されたカバーゴムとを備えるコンベアベルトにおいて、前記カバーゴム内に少なくとも2層の繊維層と少なくとも1層のゴム層とを交互に積層配置したことを特徴とするコンベアベルトである。
【0009】
かかるコンベアベルトにあっては、カバーゴム内に配置された少なくとも2層の繊維層の間にゴム層が形成されていることから、スチールコードに近い方の繊維層を残しつつカバーゴムを搬送面側の繊維層とともに剥ぐことでゴム層が引き裂け、カバーゴムは除去される。
【0010】
従って、この発明のコンベアベルトによれば、カバーゴムを繊維層とともに一気に剥ぐことができるので、バフ処理によりカバーゴムを除去した場合に比べ大幅に時間と労力を節約することができ、また熟練を要する作業も必要とならない。また、繊維層とともにカバーゴムを剥ぐことから途中でカバーゴムが千切れることがなく効率よく剥ぐことができる。さらに、2層の繊維層間のゴム層を引き裂いてカバーゴムを除去することから、繊維層上に十分な量のゴムを残留させて新しいカバーゴムとの十分かつ均一な接着性を確保することができ、また、補修が必要となるほど引裂面が凸凹になることがなく、スチールコードが露出するおそれもない。
【0011】
ところで、この発明のコンベアベルトにおいて、繊維層は、帆布で構成することが好ましい。ここで「帆布」とは、繊維と繊維とを織ってなる織物を指すものとする。
【0012】
また、この発明のコンベアベルトにおいて、少なくとも2層の繊維層のうち少なくとも最も搬送面側に位置する繊維層は、コンベアベルトの長手方向に複数に分割されていることが好ましい。
【0013】
さらに、この発明のコンベアベルトにおいて、少なくとも2層の繊維層のうち少なくとも最も搬送面側に位置する繊維層は、コンベアベルトの幅方向に複数に分割されていることが好ましい。
【0014】
さらに、この発明のコンベアベルトにおいて、少なくとも2層の繊維層のうち少なくとも最も搬送面側に位置する繊維層は、コンベアベルトの全幅に延びることが好ましい。
【0015】
さらに、この発明のコンベアベルトにおいて、カバーゴム内に少なくとも3層の繊維層と少なくとも2層のゴム層とが交互に積層配置され、該ゴム層の引裂強度は、搬送面側程低く設定されることが好ましい。
【0016】
また、この発明のコンベアベルトにおいて、ゴム層は、繊維層に隣接して配置された比較的引裂強度が高い2つの高引裂ゴム部材と、これら高引裂ゴム部材間に配置された該高引裂ゴム部材よりも引裂強度が低い低引裂ゴム部材とから構成することが好ましい。
【0017】
また、前記の目的を達成するため、この発明は、補強芯体としてスチールコードが埋設された本体ベルトと、該本体ベルトの少なくとも搬送面側に配置されたカバーゴムと、該カバーゴム内に配置された少なくとも2層の繊維層によってこれら繊維層間に形成されたゴム層とを備えるコンベアベルトのカバーゴムをリキャップするにあたり、前記2層の繊維層間のゴム層を引き裂き、該繊維層のうち前記スチールコードに近い一方の繊維層をコンベアベルトに残留させつつ他方の繊維層を前記カバーゴムの少なくとも一部とともに剥ぎ取る工程と、前記カバーゴムの少なくとも一部が剥ぎ取られて前記コンベアベルトに残留したコンベアベルトの残余部分に、リキャップ用のカバーゴムを貼り合わせる工程と、を含むことを特徴とするコンベアベルトのリキャップ方法である。
【0018】
そして、この発明のコンベアベルトのリキャップ方法においては、コンベアベルトの残余部分に残った繊維層との間にゴム層を再度形成する繊維層を配設する工程を含むことが好ましい。
【0019】
また、この発明のコンベアベルトのリキャップ方法において、コンベアベルトの残余部分にリキャップ用のカバーゴムを貼り合わせるにあたり、該残余部分に残った繊維層との間にゴム層を再度形成する繊維層を少なくとも1層有するリキャップ用のカバーゴムを貼り合わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、使用後のカバーゴムをリキャップする際に、本体ベルトの表面が凸凹となったりスチールコードが露出したりすることなく効率よくカバーゴムを剥すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明に従う実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の一実施形態のコンベアベルトの断面図であり、図2は、図1に示すコンベアベルトのカバーゴムのリキャップ方法を説明する、図1と同様の断面図である。
【0022】
図1に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9は、搬送面7側のみならず搬送面7とは反対側にも設けても良い。
【0023】
また、カバーゴム9内には第1及び第2の2層の繊維層11a、11b(ここでは、搬送面7側の繊維層を第1の繊維層11aとし、スチールコード側の繊維層を第2の繊維層11bとする。)とゴム層13とが交互に積層配置され、よってこれらの繊維層11a、11b間にはゴム層13が形成されている。第1及び第2の繊維層11a、11bは、例えば、繊維を織った織物(帆布)や、編物、不織布等で構成することができ、繊維素材としては、綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。ただし、コンベアベルト1は補強芯体としてのスチールコード3を中立軸としてコンベア機体のプーリ(図示省略)で屈曲を受けるため、伸縮性のある繊維層とすることが好ましい。よって、繊維層11a、11bを織物や編物から構成する場合には、伸縮性を高めるためにナイロンを使用したり、製織構造や縦糸・横糸密度を工夫したり、コンベアベルト1の長手方向に繊維を傾斜させたバイアス構造にしたりすることができる。なお、繊維層11aを帆布で構成した場合は、後述するようにウインチ等でカバーゴム9の一部を第1の繊維層11aとともに引き剥がす際に、その柔軟性により剥し易くなり、また破断強さが安定しているので途中で繊維層11aが千切れるおそれがない。
【0024】
また、第1及び第2の繊維層11a、11bは同一材料でも良いし異材料でも良い。異材料とする例として、コンベアベルト1がコンベア機体を一周回る間のプーリでの屈曲は、スチールコード3が内周側、繊維層11a、11bが外周側となる場合がその逆の場合よりも多いので、スチールコード3から離れた繊維層程伸縮による疲労に対して強い材料にすることができる。
【0025】
次に、摩耗したカバーゴム9のリキャップ方法について説明する。先ず、図2(a)に示すように、第1及び第2の繊維層11a、11b間に形成されたゴム層13まで達する切込みXを例えばコンベアベルト1の長手方向に沿って入れる。そして、カバーゴム9の切込みXに挟まれた部分15を第1の繊維層11aとともに例えばウインチ等を使用して剥離する。このとき、繊維層11a、11bによって補強されていないゴム層13が引き裂け、図2(b)に示すようにスチールコード3に近い第2の繊維層11bはコンベアベルト1に残留する。次いで、図2(c)に示すようにカバーゴム9の少なくとも一部が剥ぎ取られて残ったコンベアベルト1の残余部分17(凹み部)に、リキャップ用の未加硫のカバーゴム19を貼りなおし加硫する。
【0026】
これによれば、カバーゴム9の一部を第1の繊維層11aとともに一気に剥ぐことができるので、バフ処理によりカバーゴム9を除去した場合に比べ大幅に時間と労力を節約することができ、また熟練を要する作業も必要とならない。また、第1の繊維層11aとともにカバーゴム9を剥ぐことから途中でカバーゴム9が千切れることがなく効率よく剥ぐことができる。さらに、2層の繊維層11a、11b間のゴム層13を引き裂いてカバーゴム9を除去することから、残った繊維層11bの表面上に十分な量のゴムを残留させて新しいカバーゴム9との十分かつ均一な接着性を確保することができ、また、補修が必要となるほど引裂面が凸凹になることがなく、スチールコード3が露出するおそれもない。
【0027】
以下、この発明の好適な種々の実施形態のコンベアベルトについて説明する。なお、先の図1及び2で示した実施形態のコンベアベルトと同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
先ず、図3はこの発明の他の実施形態のコンベアベルトの長手方向に沿う断面図である。この図に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には搬送面7側から第1及び第2の2層の繊維層11a、11bが埋設され、これらの繊維層11a、11b間にはゴム層13が形成されている。そして、第1の繊維層11aはコンベアベルト1の長手方向(図3の左右方向)に複数に分割されている。
【0029】
この実施形態のコンベアベルト1によれば、カバーゴム9に局所的な損傷d(図3(a)参照)等が生じた際に、図3(b)に示すように必要に応じて部分的にカバーゴム9を剥ぐことができるので、リキャップのさらなる効率化を図ることができる。
【0030】
図4は、この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトの幅方向に沿う断面図である。この図に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には搬送面7側から第1及び第2の2層の繊維層11a、11bが埋設され、これらの繊維層11a、11b間にはゴム層13が形成されている。そして、第1の繊維層11aはコンベアベルト1の幅方向(図4の左右方向)に複数に分割されている。
【0031】
この実施形態のコンベアベルト1によれば、カバーゴム9に局所的な損傷d(図4(a)参照)等が生じた際に、図4(b)に示すように必要に応じて部分的にカバーゴム9を剥ぐことができるので、リキャップのさらなる効率化を図ることができる。なお、第1の繊維層11aを長手方向にも幅方向にも複数に分割することでさらなるリキャップの効率化が図り得ることは言うまでもない。
【0032】
図5は、この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトの幅方向に沿う断面図である。この図に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には搬送面7側から第1及び第2の2層の繊維層11a、11bが埋設され、これらの繊維層11a、11b間にはゴム層13が形成されている。そして、第1及び第2の繊維層11a、11bはコンベアベルト1の全幅に延びる。
【0033】
この実施形態のコンベアベルト1によれば、カバーゴム9の一部を第1の繊維層11aとともに剥ぐにあたり、予めカバーゴム9にゴム層13まで達する切込みX(図2(a)参照)を入れる必要がないので、さらなるリキャップの効率化を図ることができる。
【0034】
図6は、この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルト1の幅方向に沿う断面図である。この図に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には搬送面7側から第1及び第2の繊維層11a、11bの他に第3の繊維層11cが埋設され、これらの繊維層11a、11b及び11c間には2層のゴム層13a、13bが形成されている。
【0035】
この実施形態のコンベアベルト1によれば、カバーゴム9の一部を第1の繊維層11aとともに剥ぎ、カバーゴム9のリキャップを行っても第2及び第3の繊維層11b、11cをカバーゴム9内に残留させることができるので、リキャップを2回にわたって行うことができる。なお、ゴム層を形成する繊維層を増やせば増やすほどリキャップを行い得る回数は増加するので、4層以上の繊維層と3層以上のゴム層とを交互に積層配置すればさらなるリキャップ可能回数の増加を図ることができる。また、この実施形態のコンベアベルト1では、繊維層11a、11b、11c間に形成されたゴム層13a、13bの引裂強度を搬送面7側程低く設定することが好ましい。このようにすれば、複数回に亘ってリキャップを行う際に、搬送面7側に近い方のゴム層13aを確実に(優先的に)引き裂くことができ、誤ってスチールコード3寄りの他のゴム層13bを引き裂くおそれがない。
【0036】
図7(a)は、この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトの幅方向に沿う断面図であり、図7(b)は、図7(a)のコンベアベルトの拡大断面図である。この図に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には搬送面7側から第1及び第2の2層の繊維層11a、11bが埋設され、これらの繊維層11a、11b間にはゴム層13が形成されている。そして、かかるゴム層13は、第1及び第2の繊維層11a、11bに隣接して配置された比較的引裂強度が高い、つまり引き裂け難い高引裂ゴム部材21、21と、これら2層の高引裂ゴム部材21、21間に配置された、高引裂ゴム部材21、21より引裂強度が低い、つまり引き裂け易い低引裂ゴム部材23とを有する。JIS K6301B形に準じて計測した高引裂ゴム部材21、21と低引裂ゴム部材23との引裂強度の差は、コンベアベルト1の耐久性能を考慮すると30N/mm以下とすることが好ましく、後述するような低引裂ゴム部材23の優先的な引裂けを確実に生じさせるという観点からは、5N/mm以上であることが好ましい。高引裂ゴム部材21、21と低引裂ゴム部材23との間に引裂強度の差を生じさせるにあたっては、高引裂ゴム部材21、21の引裂強度を増大させても良いし、低引裂ゴム部材23の引裂力を低下させても良く、例えば、ゴム部材の引裂力を低下させるにあたっては、ゴム部材に炭酸カルシウム等の無機充填物を配合したり、NR/SBRブレント配合の場合には、SBR比率を上げたりすることができる。
【0037】
この実施形態のコンベアベルト1によれば、カバーゴム9の一部を第1の繊維層11aとともに剥ぐに際し、低引裂ゴム部材23に優先的に引裂けを生じさせ、カバーベルト9に残った第2の繊維層11bの表面上に、リキャップ用の新たなカバーゴム19との優良な接合をもたらすゴム材料(高引裂ゴム部材21)を確実に残留させることができ、リキャップ用のカバーゴム19と繊維層11bとの間に高い接着力を確保することができる。また、低引裂ゴム部材23を優先して引き裂くことができるので、引裂面を平滑にすることができ、この観点からいえば、低引裂ゴム部材23の厚さを高引裂ゴム部材21、21の厚さに比べ小さくすれば、引裂けによって生じる引裂面の凸凹をより小さなものとすることができる。
【0038】
次に、この発明に従うコンベアベルトを複数回に亘ってリキャップ可能とする方法について説明する。ここで、図8は、この発明に従うコンベアベルトのリキャップ方法を示す、コンベアベルトの幅方向断面図である。
【0039】
この図8(a)に示すように、この実施形態のコンベアベルト1は、補強芯体としてのスチールコード3が埋設された本体ベルト5と、この本体ベルト5の搬送面7側に配置されたカバーゴム9とを備える。カバーゴム9内には搬送面7側から第1及び第2の2層の繊維層11a、11bが埋設され、これらの繊維層11a、11b間にはゴム層13が形成されている。
【0040】
図8(b)では、使用により摩耗等したカバーゴム9の一部が第1の繊維層11aとともに剥ぎ取られている。上述した例では、コンベアベルト1の残余部分17にリキャップ用のカバーゴム19を貼り合わせることでリキャップを行っていたが、この例では、リキャップ用のカバーゴム19を貼り合わせる前に、図8(c)に示すように、コンベアベルト1の残余部分17に残った第2の繊維層11bとの間にゴム層13を再度形成する新たな繊維層11dを配設することを特徴とする。カバーゴム19は、図8(c)に示すように単体としての繊維層11dをコンベアベルト1の残余部分17に配設した後に貼り付けることができる。上記新たな繊維層11dを配設するにあたっては、図9に示すリキャップ用のカバーゴム19のように、カバーゴム19内に新たな繊維層11dを予め配設しておき、カバーゴム19の貼り付けと同時に繊維層11bとの間に新たにゴム層13を形成する構成とすることもできる。
【0041】
これによれば、複数回のリキャップを可能にするに際して、図6で示した実施形態のコンベアベルト1のように予め多数の繊維層11a、11b、11cをカバーゴム9内に配設しておく必要がないことから、リキャップ前後におけるコンベアベルト1の剛性を一定に保つことができる。
【0042】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、交互に積備配置された少なくとも2層の繊維層と少なくとも1層のゴム層とを有するカバーゴムは、搬送面とは反対側の面にも設けることができる。また、図3及び4の例では、最も搬送面に近い繊維層を分割構造としたが、これよりもスチールコード側の繊維層をも分割構造とすることができる。特にこれは、3層以上の繊維層と2層以上のゴム層とを交互に積層配置し、2回以上のリキャップを可能とする場合に有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
かくしてこの発明のコンベアベルト及びコンベアベルトのリキャップ方法によれば、使用後のカバーゴムをリキャップする際に、本体ベルトの表面が凸凹となったりスチールコードが露出したりすることなく効率よくカバーゴムを剥すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の一実施形態のコンベアベルトの幅方向断面図である。
【図2】図1に示すコンベアベルトのカバーゴムのリキャップ方法を説明する、図1と同様の断面図である。
【図3】この発明の他の実施形態のコンベアベルトの長手方向に沿う断面図である。
【図4】この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトの幅方向に沿う断面図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトの幅方向に沿う断面図である。
【図6】この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトの幅方向に沿う断面図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態のコンベアベルトを示す図であり、(a)は、幅方向に沿う断面図であり、(b)は、幅方向に沿う拡大断面図である。
【図8】この発明に従うコンベアベルトのリキャップ方法を示す、コンベアベルトの幅方向断面図である。
【図9】この発明に好適に適用可能なリキャップ用のカバーゴムの幅方向断面図である。
【図10】(a)、(b)はそれぞれ、従来技術に従うコンベアベルトの幅方向に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 コンベアベルト
3 スチールコード
5 本体ベルト
7 搬送面
9 カバーゴム
11a、11b、11c、11d 繊維層
13、13a、13b ゴム層
17 コンベアベルトの残余部分
19 新たなカバーゴム
21 高引裂ゴム部材
23 低引裂ゴム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強芯体としてスチールコードが埋設された本体ベルトと、該本体ベルトの少なくとも搬送面側に配置されたカバーゴムとを備えるコンベアベルトにおいて、
前記カバーゴム内に少なくとも2層の繊維層と少なくとも1層のゴム層とを交互に積層配置したことを特徴とするコンベアベルト。
【請求項2】
前記繊維層は、帆布で構成される、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項3】
前記少なくとも2層の繊維層のうち少なくとも最も前記搬送面側に位置する繊維層は、コンベアベルトの長手方向に複数に分割されている、請求項1又は2に記載のコンベアベルト。
【請求項4】
前記少なくとも2層の繊維層のうち少なくとも最も前記搬送面側に位置する繊維層は、コンベアベルトの幅方向に複数に分割されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のコンベアベルト。
【請求項5】
前記少なくとも2層の繊維層のうち少なくとも最も前記搬送面側に位置する繊維層は、コンベアベルトの全幅に延びる、請求項1〜4の何れか一項に記載のコンベアベルト。
【請求項6】
前記カバーゴム内に少なくとも3層の繊維層と少なくとも2層のゴム層とが交互に積層配置され、該ゴム層の引裂強度は、搬送面側程低い、請求項1〜5の何れか一項に記載のコンベアベルト。
【請求項7】
前記ゴム層は、前記繊維層に隣接して配置された比較的引裂強度が高い2つの高引裂ゴム部材と、これら高引裂ゴム部材間に配置された該高引裂ゴム部材よりも引裂強度が低い低引裂ゴム部材とから構成される、請求項1〜6の何れか一項に記載のコンベアベルト。
【請求項8】
補強芯体としてスチールコードが埋設された本体ベルトと、該本体ベルトの少なくとも搬送面側に配置されたカバーゴムと、該カバーゴム内に配置された少なくとも2層の繊維層によってこれら繊維層間に形成されたゴム層とを備えるコンベアベルトのカバーゴムをリキャップするにあたり、
前記2層の繊維層間のゴム層を引き裂き、該繊維層のうち前記スチールコードに近い一方の繊維層をコンベアベルトに残留させつつ他方の繊維層を前記カバーゴムの少なくとも一部とともに剥ぎ取る工程と、
前記カバーゴムの少なくとも一部が剥ぎ取られて前記コンベアベルトに残留したコンベアベルトの残余部分に、リキャップ用のカバーゴムを貼り合わせる工程と、を含むことを特徴とするコンベアベルトのリキャップ方法。
【請求項9】
前記コンベアベルトの残余部分に残った繊維層との間に前記ゴム層を再度形成する繊維層を配設する工程を含む、請求項8に記載のコンベアベルトのリキャップ方法。
【請求項10】
前記コンベアベルトの残余部分に、リキャップ用のカバーゴムを貼り合わせるにあたり、該残余部分に残った繊維層との間に前記ゴム層を再度形成する繊維層を少なくとも1層有するリキャップ用のカバーゴムを貼り合わせる、請求項に8又は9に記載のコンベアベルトのリキャップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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