説明

コンベヤベルトおよびコンベヤベルトの補強方法

【課題】ベースベルトの搬送面に立設した横桟と耳桟とを連結する連結部材の破損を防止可能としたコンベヤベルトおよびこのような連結部材による補強を、連結位置に制約されることなく汎用的に行なえるようにしたコンベヤベルトの補強方法を提供する。
【解決手段】コンベヤベルトが稼動して、連結ボルト6により連結されている横桟3と耳桟4との間の相対位置にずれを生じさせようとする外力が作用すると、連結ボルト6の端部6aを埋設している固定ベース部5の充填ゴム10が弾性変形し、その相対ずれに応じるように連結ボルト6が揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトおよびコンベヤベルトの補強方法に関し、さらに詳しくは、ベースベルトの搬送面に立設した横桟と耳桟とを連結する連結部材の破損を防止可能としたコンベヤベルトおよびこのような連結部材による補強を、連結位置に制約されることなく汎用的に行なえるようにしたコンベヤベルトの補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭、土砂、セメント等を急勾配で下方位置から上方位置まで搬送するためのコンベヤベルトには、ベースベルトの搬送面に多数の横桟を長手方向に一定間隔で立設し、これら横桟を挟むように搬送面の両端部に耳桟を立設するようにしたコンベヤベルトが使用されている。
【0003】
このようなコンベヤベルトでは、耳桟がベルト幅方向外側に倒れることによる被搬送物の脱落や耳桟の外側に配置されているローラとの接触を防止するため、耳桟を横桟の端部に連結するようになっている。その連結部材として、タッピングネジ等を耳桟の外側から貫通させ、横桟の端面に螺入させることにより、横桟と耳桟とを連結するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このような連結構造であると、被搬送物の投入、搬送、排出により横桟が負荷を受ける度に、横桟と耳桟との間に相対位置にずれを生じさせようとする外力が作用するので、横桟と耳桟とを連結しているタッピングネジに曲げ応力が発生する。また、コンベヤベルトがプーリやローラ回りで屈曲する際にも、横桟と耳桟との間に相対位置のずれを生じさせる力が作用するので、タッピングネジに曲げ応力が発生する。
【0005】
横桟は、被搬送物による衝撃や摩耗等に耐えるように高剛性のゴムで形成されているため、上記のようにタッピングネジに相対位置のずれを生じさせようとする外力が作用すると、タッピングネジに過大な曲げ応力が発生することにより破断や曲げが生じ易いという問題があった。
【0006】
また、タッピングネジが破断して、その一部が横桟に埋まった状態になると除去することが難しく、再び同じ位置およびその周辺にタッピングネジを螺入させることが不可能になる。そのため、新たに連結することができる位置が著しく制限され、補強する場合にも汎用性に欠ける方法であった。
【特許文献1】特開2001−2216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、横桟と耳桟とを連結する連結部材の破損を防止可能としたコンベヤベルトを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、横桟と耳桟との連結を連結位置に制約されることなく汎用的に行なうことができるコンベヤベルトの補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトは、ベースベルトの搬送面に多数の横桟を長手方向に所定間隔で立設するとともに、該搬送面の両端部にそれぞれ耳桟を立設し、該耳桟と前記横桟の両端部とを連結部材で連結したコンベヤベルトにおいて、前記横桟の両端部にそれぞれゴム製の固定ベース部を設けるとともに、該固定ベース部のゴム部に前記連結部材の一方の端部を埋設し、該連結部材の他方の端部を前記耳桟に貫通させて固定したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のコンベヤベルトの補強方法は、ベースベルトの搬送面に多数の横桟を長手方向に所定間隔で立設するとともに、該搬送面の両端部にそれぞれ耳桟を立設し、該耳桟と前記横桟の両端部とを連結部材で連結するコンベヤベルトの補強方法において、前記連結部材の一方の端部をゴムを介して埋設したゴム製の固定ベース部を前記横桟の端部に固定し、該固定ベース部から突出する連結部材の他方の端部を前記耳桟に貫通させて固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンベヤベルトによれば、横桟の端部に耳桟を連結するための連結部材を、その一方の端部を横桟側に取付けたゴム製の固定ベース部のゴム部に埋設したので、横桟と耳桟との間に相対位置ずれを生ずる外力が作用しても、ゴム部の弾性変形により連結部材が揺動することにより曲げ応力の発生を抑制し、破損を防止することができる。
【0012】
本発明のコンベヤベルトの補強方法によれば、上記の効果に加え、連結部材の一方の端部を埋設したゴム製の固定ベース部を予め用意して、これを横桟の端部の任意の位置に固定すればよいので、既に別の連結部材が横桟に残存しているか否かに関わらず、連結位置に制約されることなく新たな連結をすることができるため、汎用性のある連結を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のコンベヤベルトおよびその補強方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1に例示するように、本発明のコンベヤベルト1は、ベースベルト2の搬送面の長手方向に所定の等間隔で多数の横桟3を立設し、さらにベースベルト2の搬送面の両端部に、これら横桟3を挟むように波板状の耳桟4を長手方向に沿って立設している。ベースベルト2はゴム材に芯体を埋設して構成され、必要に応じて補強層が積層される。横桟3および耳桟4は、ゴム材或いはゴム材と補強材等との複合体により構成されている。横桟3は被搬送物による衝撃、摩耗等に耐えるために高剛性のゴムで形成され、耳桟4は波板状のゴムで形成されることにより、図4に示すように、駆動プーリ14やテールプーリ15等の周りを屈曲しながら移動するとき、扇状に開閉して円滑に通過するようになっている。
【0015】
図1、図2に例示するように、ベースベルト2の搬送面の左右両端部に立設する耳桟4、4は、それぞれ、横桟3の両端部に連結されている。この連結のため、横桟3の背面(コンベヤベルト1の搬送方向後側の面)の両端部に、横桟3と独立別個に形成されたゴム製の固定ベース部5、5を突出して固定する。固定ベース部5は、金属やFRPなどの剛性材で形成された筒状の固定フレーム9を有し、その固定フレーム9の空洞内部に充填された充填ゴム10に、連結ボルト6の一方の端部6aが埋設されている。
【0016】
固定フレーム9は、連結ボルト6と直交する方向に貫通するボルト穴5aを有し、このボルト穴5aと横桟3に設けた取付け穴3aとに固定ボルト12を連通し、その端部にナット12aを螺合する。この固定ボルト12とナット12aを用いて締結することにより、横桟3に固定ベース部5が固定される。
【0017】
横桟3に固定ベース部5を更に安定して固定するために、固定ボルト12による締結に加え、固定ベース部5と横桟3との当接面に自然加硫ゴムを介挿し、自然加硫ゴムによって横桟3に固定ベース部5を接合することが好ましい。
【0018】
この補強は、新品のコンベヤベルト1だけでなく、既設のコンベヤベルト1に対しても行なうことができる。既設のコンベヤベルト1の横桟3に固定ベース部5を自然加硫ゴムにより接合する際には、横桟3の接合面を十分に研削して汚れを除去しておく。
【0019】
この固定ベース部5は固定フレーム9を埋設し、連結ボルト6の端部6aとこの端部6aのまわりの充填ゴム10を固定フレーム9により囲む構造となっているので、被搬送物Cに接触することによる充填ゴム10の損傷、摩耗等を防止することができる。また、この固定フレーム9は固定ボルト12の締結により容易に変形しない金属やFRPなどの剛性材で形成することができるので、固定ベース部5を安定して横桟3に固定することができる。
【0020】
固定フレーム9は外表面が露出するようになっていてもよいが、好ましくは固定フレーム9の表面に被覆ゴム11を設ける構造にするのがよい。このように被覆ゴム11で被覆することにより、固定フレーム9を被搬送物Cとの接触による損傷、摩耗等から保護することができる。
【0021】
充填ゴム10としては、屈曲耐久性に優れたゴムが良く、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。これらのゴムの中でも、耐疲労性、加工性等のバランスが良い点からNR系が好ましい。ゴム硬度は、例えばJIS A硬度で25〜60度とし、好ましくは30〜55度とする。
【0022】
被覆ゴム11としては耐摩耗性に優れ、且つ、被搬送物の性状、例えば、被搬送物による摩耗性、油脂含有量、温度に適応したゴムが良く、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。ゴム硬度は、例えばJIS A硬度で50〜85度とし、好ましくは55〜75度とする。
【0023】
充填ゴム10と被覆ゴム11とは、上記のように要求特性に応じて異種のゴムを使用することが好ましいが、同種のゴムを使用することもできる。
【0024】
固定ベース部5に埋設した連結ボルト6の突出端は、耳桟4に設けた貫通孔4aを貫通させ、耳桟4の屈曲部に嵌合する長方形の押え板8を介在させて、その端部にナット7を螺合する。このナット7を螺合することにより、耳桟4を押え板8と固定ベース部5とにより挟み込み、連結ボルト6と耳桟4とを固定する。
【0025】
以上のように、横桟3と耳桟4とを連結ボルト6により連結する構造が、横桟3の表面に横桟3とは別部品の独立した固定ベース部5を固定するようになっているので、横桟3に別の連結ボルト等が既に螺入、埋設されていたり、或いは破損した連結ボルトの一部が横桟3に埋まっている状態であっても、これらを避けた位置に固定ベース部5を固定することにより、これらに影響されることなく、横桟3と耳桟4とを連結ボルト6により連結することができ、汎用性のある補強を行なうことができる。
【0026】
以上のように補強されたコンベヤベルト1は、図4、5に例示するように上方位置の駆動プーリ14と下方位置のテールプーリ15との間に架け渡され、搬送面の下面に図示しない支持ローラが配置されるほか、中途に経路変更の箇所にディスクローラ16a、16bが配置される。駆動プーリ14およびテールプーリ15の転動面は、ベースベルト2の裏面側となり、ディスクローラ16a、16bの転動面は、ベースベルト2の表面側(搬送面側)の耳桟4、4の外側位置となる。
【0027】
コンベヤベルト1が稼動すると、テールプーリ15側の下方位置で、それぞれの横桟3の間に被搬送物Cを投入し、駆動プーリ14側の上方位置に搬送する。横桟3と耳桟4とは連結ボルト6により連結されているので、耳桟4がコンベヤベルト1の幅方向に倒れることが抑制され、被搬送物Cを落下させることなく搬送することができ、また、耳桟4がディスクローラ16a、16bに接触するトラブルを防止することができる。
【0028】
横桟3は、被搬送物Cの投入、搬送、排出の繰返しによる繰返しの荷重により、耳桟4に対して相対位置にずれを生じようとする。また、駆動プーリ14、テールプーリ15、ディスクローラ16a、16bの周りでコンベヤベルト1が屈曲する際に、耳桟4が扇状に開閉するため、横桟3が耳桟4に対して相対位置にずれを生じようとする。
【0029】
連結ボルト6は、一方の端部6aを、横桟3の表面に突設した固定ベース部5の充填ゴム10に埋設しているので、上記のような連結ボルト6の相対位置ずれを充填ゴム10が弾性変形することで吸収することができる。これにより、連結ボルト6に生じる曲げ応力が低減され、連結ボルト6の破断や曲がりなどの破損を防止することができる。そのため、交換する連結ボルト6の数、交換頻度を低減して、コンベヤベルト1のメンテナンス作業を軽減することができる。
【0030】
図3に固定ベース部5の変形例を示す。固定ベース部5は、固定フレーム9を使用することなくゴムだけで成形され、このゴム製の固定ベース部5は、連結ボルト6の端部が埋設された6a周辺位置の表面に波状の屈曲溝13を有している。この屈曲溝13は横桟3の立設方向(上下方向)と平行に延長するように設けられる。屈曲溝13の形状は、特に限定されるものではなく、横桟3と耳桟4との相対位置にずれが生じようとする際に、連結ボルト6の揺動に対する抵抗を緩和するものであればよい。このような屈曲溝13を設けることにより、連結ボルト6に生ずる応力を一層低減することができる。この固定ベース部5は、構造が簡素なので低コストで容易に製造することができる。
【0031】
横桟3と耳桟4との連結手段は、連結ボルト6に限定されず、金属等からなる棒状体などの連結部材を用いることができる。また、固定ベース部5は、上述した実施形態に示したように横桟3と独立して設け、横桟3に後付けするだけでなく、横桟3を製造する際に一体的に設けるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のコンベヤベルトの一部切欠き斜視図である。
【図2】図1のコンベヤベルトの横桟と耳桟との連結構造を例示する断面図である。
【図3】図2の固定ベース部の変形例を示す断面図である。
【図4】図1のコンベヤベルトの全体概要を例示する側面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 コンベヤベルト
2 ベースベルト
3 横桟 3a 取付け穴
4 耳桟 4a 貫通孔
5 固定ベース部 5a ボルト穴
6 連結ボルト 6a 埋設端部
7 ナット
8 押え板
9 固定フレーム
10 充填ゴム
11 被覆ゴム
12 固定ボルト 12a ナット
13 屈曲溝
14 駆動プーリ
15 テールプーリ
16a、16b ディスクローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースベルトの搬送面に多数の横桟を長手方向に所定間隔で立設するとともに、該搬送面の両端部にそれぞれ耳桟を立設し、該耳桟と前記横桟の両端部とを連結部材で連結したコンベヤベルトにおいて、前記横桟の両端部にそれぞれゴム製の固定ベース部を設けるとともに、該固定ベース部のゴム部に前記連結部材の一方の端部を埋設し、該連結部材の他方の端部を前記耳桟に貫通させて固定したコンベヤベルト。
【請求項2】
前記固定ベース部をゴムで一体成形し、その成形面に前記横桟の立設方向に平行な屈曲溝を設けた請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記固定ベース部を剛性材からなる筒状の固定フレームにゴム材を充填して構成し、該充填ゴム材に前記連結部材の端部を埋設した請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
ベースベルトの搬送面に多数の横桟を長手方向に所定間隔で立設するとともに、該搬送面の両端部にそれぞれ耳桟を立設し、該耳桟と前記横桟の両端部とを連結部材で連結するコンベヤベルトの補強方法において、前記連結部材の一方の端部をゴムを介して埋設したゴム製の固定ベース部を前記横桟の端部に固定し、該固定ベース部から突出する連結部材の他方の端部を前記耳桟に貫通させて固定するコンベヤベルトの補強方法。
【請求項5】
前記固定ベース部がゴムで一体成形され、その成形面に屈曲溝を有する請求項4に記載のコンベヤベルトの補強方法。
【請求項6】
前記固定ベース部が剛性材からなる筒状の固定フレームにゴム材を充填して構成され、該充填ゴム材に前記連結部材の端部を埋設した構成からなる請求項4に記載のコンベヤベルトの補強方法。
【請求項7】
前記固定ベース部を前記横桟に固定する際に、該固定ベース部と横桟との間に自然加硫ゴムを介在させて接合する請求項4〜6のいずれかに記載のコンベヤベルトの補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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