説明

コンベヤベルトの縦裂検出装置

【課題】コンベヤベルトが停止しているときでも、ループコイルの断線を検出してコンベヤベルトの縦裂きを検出することのできるコンベヤベルトの縦裂検出装置を提供する。
【解決手段】運転を休止しているコンベヤベルト50上に、保持部材13と、この保持部材13に取付けられた送信ユニット11と受信ユニット12と走行用のローラーと、上記受信ユニット12に取付けられたLED18とを備えた検出ユニット10Zをセットし、上記検出ユニット10Zを上記コンベヤベルト50の長手方向に走行させてループコイル51の上を通過させるとともに、上記送信ユニット11の送信コイルに発振器14から高周波を供給し、上記受信ユニット12の受信コイル12Cにて上記ループコイル51に流れる誘導電流の有無を検出し、これを上記受信コイル12C上に接続されたLED18の点滅にて表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にベルト幅方向に延びるループコイルを備えた被検出体が埋設されたコンベヤベルトの縦裂を検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中のコンベヤベルトの縦裂を検出する方法としては、図3(a)〜(c)に示すように、コンベヤベルト50の内部に、ベルト幅方向Wに延びるループコイル51(51A,51B,……)を当該コンベヤベルト50の走行方向Cに所定間隔毎に埋設するとともに、上記コンベヤベルト50の近傍下方のサポートフレーム52に、高周波信号を発振する発振器61Aと上記ループコイル51に流れる誘導電流により発生する電磁波を検出する受信器62Aとを備えた検出センサ60Aと、発振器61Bと受信器62Bとを備えた上記検出センサ60Aと同じ構成の検出センサ60Bとを所定距離離隔して固定配置しておき、上記コンベヤベルト50の稼動時に、上記検出センサ60(60A,60B)の上方を通過するループコイル51に上記発振器61A,61Bから高周波を供給し、この高周波により生じる上記ループコイル51の誘導電流の有無を上記受信器62A,62Bにてそれぞれ検知する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記ループコイル51は、長辺がコンベヤベルト50のほぼ全幅にわたるほぼ矩形状のコイルで、コンベヤベルト50の縦裂け時には必ず断線するような、細い鋼線などから構成されている。したがって、上記受信器62Aまたは受信器62Bが上記ループコイル51の誘導電流を検出しなかった場合には、上記ループコイル51の近傍に縦裂が発生していると考えられる。
【0003】
上記例では、縦裂の発生位置を特定するため、コンベヤベルト50を駆動する駆動プーリ53の側面に鉄片54,54を取付けるとともに、上記側面近傍に近接センサ(磁気センサ)55を配置して、上記駆動プーリ53の半回転毎にパルス信号を判定手段56に出力させる。このパルス信号の積算値は上記コンベヤベルト50の移動距離に相当する。
一方、上記受信器62A,62Bはループコイル51が断線していない場合には、上記コンベヤベルト50が所定距離移動する毎に上記ループコイル51に流れる誘導電流を検出するので、上記受信器62A,62Bの出力を上記判定手段56に取り込んで誘導電流の検出毎に検出パルス信号を発生させるようにしておけば、図4(a),(b)に示すように、上記近接センサ55の出力に基づいたパルス信号Aと受信器62A(または、受信器62B)の出力に基づいた検出パルス信号Bとを比較すれば、上記検出パルス信号Bが欠けている場所を縦裂の発生位置として特定することができる。なお、上記例では、外部ノイズによる誤動作をなくすために、検出センサを2個使用したが、センサのシールド性能を高めれば、1個でもよい。
【0004】
また、図5(a)に示すように、コイル71とコンデンサ72とから成る共振回路70をコンベヤベルト50内に埋設するとともに、図5(b)に示すような、発振コイル81とセンスコイル82とが電磁結合するように枠体83に組込んだアンテナ部80を作製し、上記共振回路70が上記アンテナ部80近傍を通過するときに、上記センスコイル82の誘導起電力が低下することを利用して走行中のコンベヤベルト50の縦裂を検出する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−162430号公報
【特許文献2】特開平11−208862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、ベルトユーザは、定期的にメンテナンス期間を設けて、ローラー交換、プーリー交換、電気系トラブル解消などの作業を行う。このときには、コンベヤベルト50を停止させるとともに、上記検出センサ60あるいはアンテナ部80をコンベヤベルト50から取り外してから作業を行うことが多い。
ところで、メンテナンスを行う場合には、コンベヤベルト50を取り外したり移動させたりすることがあるので、作業中にコンベヤベルト50に縦裂が発生する場合がある。
しかしながら、従来の検出方法では、メンテナンス中は、ローラー交換等のためコンベヤベルト50を回すことができないため、縦裂を検出することができないといった問題点があった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、コンベヤベルトが停止しているときでも、ループコイルの断線を検出してコンベヤベルトの縦裂を検出することのできるコンベヤベルトの縦裂検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に記載の発明は、内部にベルト幅方向に延びるループコイルを備えた複数の被検出体が埋設されたコンベヤベルトの縦裂を検出する装置であって、送信コイルと、受信コイルと、上記送信コイルに直流電流または交流電流を供給する駆動回路と、上記送信コイルと受信コイルとを所定の距離離隔して保持する保持部材とを備えるとともに、上記受信コイルに発生する誘導起電力により作動するLEDなどの表示手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンベヤベルトの縦裂検出装置において、上記保持部材に保持された送信コイルと受信コイルと、上記コンベヤベルトとの距離を一定に保持しつつ、上記コンベヤベルトの長手方向に走行させる手段を設けたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンベヤベルトの縦裂検出装置において、上記保持部材を、送信コイルと受信コイルとを連結して支持する支持棒とするとともに、上記走行手段を、上記支持棒の送信コイルと受信コイルとの間に配置される、コンベヤベルト上で転動しながら走行するローラーとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送信コイルと、受信コイルと、上記送信コイルに直流電流または交流電流を供給する駆動回路と、送信コイルと受信コイルとを連結して支持するする支持棒などのような、上記送信コイルと受信コイルとを所定の距離離隔して保持する保持部材と、上記受信コイルに発生する誘導起電力により作動する表示手段とを備えた縦裂検出装置を、内部にベルト幅方向に延びるループコイルを備えた複数の被検出体が埋設されたコンベヤベルト上で上記コンベヤベルトの長手方向に走行させて、上記コンベヤベルトの縦裂を検出するようにしたので、コンベヤベルトが停止しているときでもコンベヤベルトの縦裂の位置を容易に検出することができる。
このとき、上記保持部材の送信コイルと受信コイルとの間にローラなどの走行手段を取付けて、送信コイル及び受信コイルと上記コンベヤベルトとの距離を一定に保持しつつ、上記コンベヤベルトの長手方向に移動させるようにすれば、コンベヤベルトの縦裂の位置を確実に検出することができる。
また、本発明の縦裂検出装置は、信号処理回路を持たず、上記受信コイルに発生する誘導起電力により表示手段を直接作動させてループコイルの断線/非断線を判定するようにしているので、装置を小型・軽量化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の最良の形態に係るコンベヤベルトの縦裂検出装置10の構成を示す図で、図2はこの縦裂検出装置10によるコンベヤベルト50の縦裂検出方法を示す図である。各図において、11はコンベヤベルト50の内部に所定間隔毎に埋設されたベルト幅方向に延びるループコイル51に高周波信号を送信する送信コイル11Cを備えた送信ユニット、12は上記ループコイル51に誘起された誘導電流による電磁波を受信する受信コイル12Cを備えた受信ユニット、13は上記受信ユニット11と受信ユニットとを所定の距離だけ離隔して保持する保持部材、14は発振回路14aと増幅回路14bとを備え、上記送信コイル11Cにケーブル15を介して高周波信号を供給する発振器、16はこの発振器14を駆動させるための内蔵電源、17は上記発振器14と上記内蔵電源16とを収納するケースで、本例では、上記受信ユニット12に、上記受信コイル12Cに発生する誘導起電力により点滅するLED18を取付けるとともに、上記保持部材13に走行用のローラー19を取付けて、上記送信ユニットと受信ユニットとを保持する保持部材13を、コンベヤベルト50との距離を一定に保持しつつ、コンベヤベルト50の長手方向に移動させることができるようにしている。
以下、保持部材13と、この保持部材13に取付けられた送信ユニット11と受信ユニット12と走行用のローラー19と、上記受信ユニット12に取付けられたLED18とを検出ユニット10Zという。
【0010】
上記送信ユニット11は、詳細には、送信コイル11Cをエポキシ樹脂等の樹脂11kにより円筒状にモールドしたもので、これにより、コイルの腐食断線を防ぐことができ、耐候性を向上させることができる。また、上記受信ユニット12についても同様に受信コイル12Cを樹脂12kにより円筒状にモールドする。このとき、上記円筒側面をアルミニウムのような、シールド部材で被覆するようにすれば、送信コイル11C−受信コイル12C間の干渉を防ぎ、装置の小型化を図ることが可能となるとともに、外部ノイズの影響を低減することができる。また、送信コイル11C−受信コイル12C間の距離を短くすることができるので、可搬性が向上する。
なお、上記発振器14を駆動する内蔵電源16としては、外部電源取込み可能な構造のものであってもよい。また、上記送信コイル11Cと発振器14を結ぶケーブル15については、ノイズの影響を防ぐために、シールド線を用いることが望ましい。
【0011】
次に、コンベヤベルト50の縦裂検出方法について説明する。
まず、運転を休止しているコンベヤベルト50上に、送信ユニット11と受信ユニット12とを結ぶ線が上記コンベヤベルト50の長手方向に直交するように、上記検出ユニット10Zをセットする。なお、上記走行用のローラー19は、走行用のローラー19の下端部がコンベヤベルト50上に当接したときには、送信コイル11Cの先端部と受信コイル12Cの先端部が上記コンベヤベルト50の上面から所定の距離になるように、上記保持部材13に取付けられているものとする。このとき、上記送信コイル11Cとケーブル15により繋がれているケース17は発振器14を備えていることから、ノイズの影響を最小限にするため、上記コンベヤベルト50から離れた位置に置いておくようにする。
次に、上記保持部材13を押して上記走行用のローラー19を回転させながら、上記検出ユニット10Zを上記コンベヤベルト50の長手方向に走行させる。上記検出ユニット10Zが上記コンベヤベルト50に埋設されたループコイル51の上を通過すると、上記ループコイル51が断線していない場合には、上記送信コイル11Cから供給された高周波により上記ループコイル51には誘導電流が流れる。受信コイル12Cが上記誘導電流の作る電磁波を検知すると、上記受信コイル12Cの両端には誘導起電力が発生し、この誘導起電力により、LED18が点灯する。
一方、上記ループコイル51が断線している場合には、上記受信コイル12Cの両端には誘導起電力が発生しないので、上記LED18は点灯しない。
上記ループコイル51の埋設されている位置はほぼ分かっているので、上記検出ユニット10Zを上記ループコイル51の位置近傍で往復させてやれば、ループコイル51の断線/非断線を容易に判定することができる。
このように、本例の縦裂検出装置10は、ループコイル51の断線/非断線をその場で判定することができるだけでなく、信号処理回路を用いることなく、ループコイルの断線/非断線を判定するようにしているので、装置を小型・軽量化することが可能である。
【0012】
このように、本最良の形態によれば、運転を休止しているコンベヤベルト50上に、保持部材13と、この保持部材13に取付けられた送信ユニット11と受信ユニット12と走行用のローラー19と、上記受信ユニット12に取付けられたLED18とを備えた検出ユニット10Zをセットし、上記検出ユニット10Zを上記コンベヤベルト50の長手方向に走行させて上記ループコイル51の上を通過させるとともに、上記送信ユニット11の送信コイル11Cに発振器14から高周波を供給し、上記受信ユニット12の受信コイル12Cにて上記ループコイル51に流れる誘導電流の有無を検出し、これを上記受信コイル12C上に接続されたLED18の点滅にて表示するようにしたので、コンベヤベルト50が停止しているときでもコンベヤベルト50の縦裂の位置を容易に検出することができる。
また、上記縦裂検出装置10は、信号処理回路を用いることなく、ループコイル51の断線/非断線を判定することができるので、装置を小型・軽量化することができる。
【0013】
なお、上記最良の形態では、表示手段としてLED18を用いたが、これに限るものではなく、7セグ表示器や液晶パネルのような液晶表示器、ランプ、あるいは、圧電ブザーなどの音声発生手段などのような、受信コイルに発生する誘導起電力により作動するものであれば他の表示手段を用いてもよい。また、LED18などの表示手段は、受信コイル12C上に設けてもよいし、保持部材13に取付けてもよい。
また、上記例では、発振回路14aと増幅回路14bとを備えた発振器14を用いて上記送信コイル11Cに高周波信号を供給する構成としたが、発振器を増幅回路14bのみとし、上記送信コイル11Cに直流信号を供給するようにしてもよい。なお、直流信号を供給する場合には、LED18を点灯させるためには、検出ユニット10Zをある程度の速度で移動させる必要がある。
また、保持部材13の形状としては、図2に示すような、送信ユニット11と受信ユニット12とを把持する構造としてもよいが、支持棒のように、棒状のものを用い、これに、送信ユニット11と受信ユニット12と走行用のローラー19とを取付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
このように、本発明によれば、コンベヤベルトが停止しているときでもコンベヤベルトの縦裂の位置を検出することができる、小型で軽量な縦裂検出装置を得ることができるので、コンベヤベルトの縦裂検出を容易に行うことができるとともに、縦裂を検出した場合には、直ちに埋め替え工事を行うことができるので、メンテナンスの回数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の最良の形態に係るコンベヤベルトの縦裂検出装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の縦裂検出装置によるコンベヤベルトの縦裂検出方法を示す図である。
【図3】従来のコンベヤベルトの縦裂検出装置の一例を示す図である。
【図4】従来のコンベヤベルトの縦裂検出装置における縦裂け位置の検出方法を示す図である。
【図5】従来のコンベヤベルトの縦裂検出装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
10 コンベヤベルトの縦裂検出装置、10Z 検出ユニット、11 送信ユニット、
11C 送信コイル、11k,12k 樹脂、12 受信ユニット、
12C 受信コイル、13 保持部材、14 発振器、14a 発振回路、
14b 増幅回路、15 ケーブル、16 内蔵電源、17 ケース、18 LED、
19 走行用のローラー、50 コンベヤベルト、51 ループコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にベルト幅方向に延びるループコイルを備えた複数の被検出体が埋設されたコンベヤベルトの縦裂を検出する装置であって、送信コイルと、受信コイルと、上記送信コイルに直流電流または交流電流を供給する駆動回路と、上記送信コイルと受信コイルとを所定の距離離隔して保持する保持部材とを備えるとともに、上記受信コイルに発生する誘導起電力により作動する表示手段を設けたことを特徴とするコンベヤベルトの縦裂検出装置。
【請求項2】
上記保持部材に保持された送信コイルと受信コイルと、上記コンベヤベルトとの距離を一定に保持しつつ、上記コンベヤベルトの長手方向に走行させる手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルトの縦裂検出装置。
【請求項3】
上記保持部材を、送信コイルと受信コイルとを連結して支持する支持棒とするとともに、上記走行手段を、上記支持棒の送信コイルと受信コイルとの間に配置される、コンベヤベルト上で転動して走行するローラーとしたことを特徴とする請求項2に記載のコンベヤベルトの縦裂検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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