説明

コンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムおよび評価方法

【課題】試験サンプルを現場での使用状況に近い条件に設定して、耐衝撃性を精度よく評価できるコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムおよび評価方法を提供する。
【解決手段】試験サンプルCVからベルト長手方向に露出させた心体Cを張設して固定手段4で固定するとともに、試験サンプルCVの下面を2つの支持体3で支持して試験サンプルCVをセッティングし、この試験サンプルCV上の落下位置Pに、錘8を自由落下させて衝突した際の落下衝撃力Fを検知した衝撃力センサ13の検知データと、張力センサ12が検知した心体Cに作用する張力Tの検知データと、錘8を自由落下させた際に試験サンプルCVに接触する錘8の下端部の接触面積Sと、錘8を自由落下させた後の試験サンプルCVから取り出した心体Cの最大引張り応力Mとに基づいて、演算装置14を用いて耐衝撃性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムおよび評価方法に関し、さらに詳しくは、試験サンプルを現場での使用状況に近い条件に設定することができ、耐衝撃性を精度よく評価できるコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムおよび評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトは、一般に駆動プーリと従動プーリとの間に掛け回わされて使用され、長手方向一端側で投下された被搬送物をベルト上に積載して他端側まで搬送する。被搬送物をベルト上に投下した場合には、投下された被搬送物による衝撃力がコンベヤベルトに作用する。そのため、被搬送物の投下が繰り返されることにより、コンベヤベルトを構成する心体(帆布やスチールコード等)やカバーゴムには損傷が生じる。被搬送物の重量が大きな場合や投下高さが大きな場合など、投下する被搬送物の位置エネルギーが大きな場合には、心体が切断することもある。
【0003】
このような不具合を想定して、コンベヤベルトの耐衝撃性の評価試験が行なわれている。従来の評価試験では、例えば、受け台に載置したコンベヤベルトの試験サンプルの上に、錘を繰り返し自由落下させた後、試験サンプルの心体の残留引張り強度等を測定して、耐衝撃性を評価している。しかしながら、心体を正確な位置に固定して適切なテンションを負荷できない等の問題があった。また、コンベヤベルトを評価対象物とするものではないが、評価対象物を自由落下させて着地面に衝突させることによって耐衝撃性を評価する方法も提案されている(特許文献1参照)。このような従来の耐衝撃性の評価方法では、コンベヤベルトの現場での使用状況に近い条件で評価を行なうことができないため、実使用と整合した評価をすることが難しかった。それ故、コンベヤベルトの耐衝撃性の評価を精度よく行なうことができる手段が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−200911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、試験サンプルを現場での使用状況に近い条件に設定することができ、耐衝撃性を精度よく評価できるコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムおよび評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムは、コンベヤベルトの試験サンプルからベルト長手方向に露出させた心体をベルト長手方向に張設して固定する固定手段と、この試験サンプルの下面を支持するベルト長手方向に間隔をあけて配置された2つの支持体と、この試験サンプル上に設定した落下位置に自由落下させる錘と、この錘に取り付けられて落下衝撃力を検知する衝撃力センサと、前記張設した心体に作用する張力を検知する張力センサと、前記衝撃力センサおよび張力センサの検知データが入力される演算装置とを備え、前記錘を自由落下させた際に試験サンプルに接触する錘の下端部の接触面積と、前記錘を自由落下させた後の試験サンプルから取り出した心体の最大引張り応力とが前記演算装置に入力されて、前記衝撃力センサおよび張力センサの検知データと、前記接触面積と、前記最大引張り応力とに基づいて、耐衝撃性の評価を行なう構成にしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価方法は、コンベヤベルトの試験サンプルから心体をベルト長手方向に露出させて、予め設定された張力でベルト長手方向に張設して固定した状態にするとともに、この試験サンプルの下面を、ベルト長手方向に予め設定された間隔をあけて配置された2つの支持体により支持して試験サンプルをセッティングし、前記セッティングした試験サンプル上に設定した落下位置に、予め設定された高さから錘を自由落下させ、落下させた錘が試験サンプルに衝突した際の落下衝撃力を錘に設けた衝撃力センサにより検知し、前記張設した心体に作用する張力を張力センサにより検知して、前記衝撃力センサおよび張力センサによる検知データを演算装置に入力するともに、前記錘を自由落下させた際に試験サンプルに接触する錘の下端部の接触面積と、前記錘を自由落下させた後の試験サンプルから取り出した心体の最大引張り応力とを前記演算装置に入力して、前記衝撃力センサおよび張力センサの検知データと、前記接触面積と、前記最大引張り応力とに基づいて、耐衝撃性の評価を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンベヤベルトの試験サンプルから心体をベルト長手方向に露出させて、予め設定された張力でベルト長手方向に張設して固定した状態にするとともに、この試験サンプルの下面を、ベルト長手方向に予め設定された間隔をあけて配置された2つの支持体により支持して試験サンプルをセッティングし、セッティングした試験サンプル上に設定した落下位置に、予め設定された高さから錘を自由落下させることで、試験サンプルを、コンベヤベルトの実際の使用条件と同様の張力およびローラ支持状態にして、被搬送物が投下される状況に近い条件に設定することができる。そして、錘に設けた衝撃力センサが検知する落下衝撃力の検知データと、張力センサが検知する張設した心体に作用する張力の検知データと、錘を自由落下させた際に試験サンプルに接触する錘の下端部の接触面積と、錘を自由落下させた後の試験サンプルから取り出した心体の最大引張り応力とに基づいて、演算装置により耐衝撃性の評価を行なうので、コンベヤベルトの耐衝撃性について、実使用と整合する精度のよい評価をすることができる。
【0009】
ここで、本発明の評価システムにおいて、前記支持体の間隔を可変に構成するとともに、前記錘の下端部に着脱可能な下端形状の異なる複数種類の先端部材を有し、これら複数種類の先端部材から選択した1つの先端部材を前記錘の下端部に装着する構成にすることもできる。この構成にした場合、コンベヤベルトの実際の被搬送物の形状に最も近い下端形状の先端部材を装着することで、より実使用と整合した耐衝撃性の評価をすることが可能になる。
【0010】
本発明の評価システムにおいて、水平に対して角度を可変に傾動して、設定した傾斜角度で固定される傾動板を設け、この傾動板の上に、前記心体がベルト長手方向に張設された試験サンプルと、前記2つの支持体と、前記固定手段とを設置した構成にすることもできる。
【0011】
また、本発明の評価方法において、前記セッティングした試験サンプルを、水平に対して角度を可変に傾動する傾動板の上に設置し、傾動板を予め設定された傾斜角度で固定した状態にして、前記錘を前記落下位置に自由落下させることもできる。
【0012】
上記の傾動板を有する構成にした場合や上記の傾動板を用いた方法の場合、傾動板を用いて試験サンプルを実使用のコンベヤベルトの回転走行速度に対応する傾斜角度に固定した状態にして、錘を落下位置に自由落下させることができる。それ故、耐衝撃性について、コンベヤベルトの回転走行速度を考慮した精度のよい評価を行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システムの全体概要図である。
【図2】固定手段の周辺を示す平面図である。
【図3】試験サンプル上に錘を落下させた状態を例示する評価システムの全体概要図である。
【図4】評価システムの別の実施形態を例示する全体概要図である。
【図5】傾動板を傾斜させた状態を例示する評価システムの全体概要図である。
【図6】錘の下端部の先端角度Aと、落下衝撃力Fとの関係を示すグラフ図である。
【図7】錘の下端部の先端角度Fと、衝撃圧縮応力CPとの関係を示すグラフ図である。
【図8】錘の落下回数Nと、錘の落下試験後の試験サンプルから取り出した心体の最大引張り応力Mとの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を参照しながら説明する。
【0015】
図1に例示するように、本発明のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システム1(以下、評価システム1という)は、平板状のベース2の上に、コンベヤベルトの試験サンプルCVから露出させた心体Cを張設して固定する一対の固定手段4と、ベルト長手方向(図1では左右方向)に間隔Lをあけて配置された2つの支持体3と、自由落下させる錘8と、この錘8に取り付けられて落下衝撃力Fを検知する衝撃力センサ13と、張設した心体Cに作用する張力Tを検知する張力センサ12と、衝撃力センサ13および張力センサ12の検知データが入力される演算装置14とを備えている。
【0016】
試験サンプルCVは、ベルト幅方向に並置された複数の心体Cと、心体Cの上下を挟むように設けられたカバーゴムRとを有している。コンベヤベルトの仕様によっては、その他に補強部材等がカバーゴムRに埋設される。心体Cは、スチールコードや各種繊維コードである。
【0017】
2つの支持体3は、円弧状の上面を有する同じ仕様になっている。それぞれの支持体3は、ベース2に形成された溝部2aに沿って移動可能であり、互いの間隔Lを任意の間隔に変更できるようになっている。
【0018】
固定手段4は、それぞれの支持体3のベルト長手方向外側に配置されている。図2に例示するように固定手段4は、心体Cを巻取る巻取り軸4bと、巻取り軸4bを支持する支持フレーム4aと、巻取り軸4bに接続されたテンション付与ボルト5とを有している。円柱状の巻取り軸4bには軸心に直交するように貫通穴4cが設けられている。
【0019】
試験サンプルCVから露出させた心体Cは貫通穴4cを貫通して保持される。そして、テンション付与ボルト5を締め付けて、心体Cを巻取り軸4bの外周面に巻き付けるようにして心体Cを所定の張力Tで張設して固定する。テンション付与ボルト5の締め付け具合を調整することにより、心体Cに付与する張力Tを調整する。
【0020】
巻取り軸4bは、例えば、円柱体を軸方向に2分割した半円柱状の分割体を組付けて構成する。分割体どうしの合わせ面に溝を設けることで貫通穴4cを形成することができ、このような分割体にすることで、心体Cを巻取り軸4bに取り付け易くできる。固定手段4は実施形態に例示した構造に限らず、試験サンプルCVからベルト長手方向に露出させた心体Cを、ベルト長手方向に張設して固定できるものを用いることができる。
【0021】
一方の固定手段4の外側には張力センサ12が設けられている。張力センサ12は、通信線で演算装置14に接続されている。張力センサ12としてはロードセル等を用いることができる。張力センサ12の検知データは演算装置14に入力されてモニタ15に表示されるので、モニタ15の表示を見て心体Cを張設している張力Tを確認することができる。
【0022】
ベース2の上に立設された櫓状の本体フレーム6の上部からは、チェーンやワイヤ等の吊下げ部材10が吊下げられている。錘8は、落下機構11を介して吊下げ部材10によって吊られている。落下機構11を操作して錘8の保持を解除すると錘8は自由落下する。吊られている錘8は、本体フレーム6に固定されたガイド筒9に挿通するようになっている。錘8の落下高さHは任意の高さに設定することができる。
【0023】
錘8の下端部は、着脱自在の先端部材8aになっている。評価システム1には、この先端部材8aだけでなく、下端形状の異なる(先端角度Aが異なる)複数種類の先端部材8b〜8eが備わっている。そして、下端形状の異なる複数種類の先端部材8a〜8eから選択した1つが、錘8の下端部に装着される構成になっている。
【0024】
衝撃力センサ13は、錘8の長手方向中途に設けられている。衝撃力センサ13は、通信線で演算装置14に接続されている。衝撃力センサ13としてはロードセル等を用いることができる。
【0025】
演算装置14にはパーソナルコンピュータ等を使用し、錘8を試験サンプルCVの上の落下位置Pに自由落下させた際に試験サンプルCVに接触する錘8の下端部の接触面積Sが入力される。さらに、演算装置14には、錘8を落下位置Pに自由落下させた後の試験サンプルCVから取り出した心体Cの最大引張り応力M(破断引張り応力)が入力される。
【0026】
本発明の評価システム1では、演算装置14によって、衝撃力センサ12および張力センサ13の検知データと、接触面積Sと、最大引張り応力Mとに基づいて、耐衝撃性の評価を行なう構成になっている。
【0027】
次に、この評価システム1を用いたコンベヤベルトの耐衝撃性の評価方法を説明する。
【0028】
まず、試験サンプルCVから心体CVをベルト長手方向に露出させて、予め設定された張力Tでベルト長手方向に張設して固定手段4に固定した状態にするとともに、試験サンプルCVの下面を2つの支持体3で支持して試験サンプルCVをセッティングする。心体Cの張力Tは、現場での使用条件と同じ張力に設定し、2つの支持体3の間隔Lは現場での支持ローラの間隔と同じ間隔に設定する。支持体3の上面の円弧状の半径は、現場での支持ローラの半径と同じにすることが好ましい。
【0029】
試験サンプルCVをセッティングした際に心体CVに作用する張力Tは、張力センサ12によって検知されて、演算装置14に入力される。セッティングした際の張力Tは、コンベヤベルトの耐衝撃性に大きく影響するので、設定された張力Tに正確に調整することが必要である。
【0030】
このセッティングした試験サンプルCVの上に、予め設定された落下高さHから錘8を自由落下させる。落下高さHは、現場で被搬送物がコンベヤベルトに投入される投入高さと同じに設定することが好ましい。
【0031】
錘8の落下位置Pは、2つの支持体3の間で任意に設定することができ、現場での使用条件に合わせるとよい。例えば、図1に示すように2つの支持体3の中間位置を落下位置Pにしたり、支持体3が試験サンプルCVの下面に接する位置を落下位置Pにする。錘8の下端部には、コンベヤベルトの実際の被搬送物の形状に最も近い下端形状の先端部材8a〜8eを装着するとよい。
【0032】
このように、この評価システム1によれば、試験サンプルCVを、コンベヤベルトの実際の使用条件と同様の張力およびローラ支持状態にして、実際に被搬送物が投下される状況に近い条件に設定することができる。
【0033】
次いで、図3に例示するように落下機構11を操作して錘8を自由落下させる。錘8が試験サンプルCVに衝突した際の落下衝撃力F(最大衝撃力)は衝撃力センサ13により検知される。この衝突の際に心体Cに作用する張力Tは、張力センサ12により検知される。これらの衝撃力センサ13および張力センサ12による検知データは演算装置14に入力される。必要に応じて、1つの試験サンプルCVに対して複数種類の先端部材8a〜8eを順次適用して試験を行なう。
【0034】
演算装置14には、さらに、錘8を自由落下させた際に試験サンプルCVに接触する錘8の下端部の接触面積Sと、錘8を自由落下させた後の試験サンプルCVから取り出した心体Cの最大引張り応力Mが入力される。接触面積Sは、先端部材8a〜8eの先端角度Aに応じて大きく変化し、錘8の質量、落下高さH(錘8の下端から試験サンプルCVの表面までの距離)、カバーゴムRの仕様等によっても変化するので、様々な条件について接触面積Sを把握しておく。
【0035】
ここで、心体Cの損傷には、被搬送物の落下によってコンベヤベルトに作用する衝撃圧縮応力CPが大きく影響することが分かってきた。そこで、演算装置14に入力された落下衝撃力Fと接触面積Sとを用いて、衝撃圧縮応力CP(=F/S)が算出される。
【0036】
最大引張り応力Mを測定するには、錘8を予め設定された回数Nだけ落下させた後に、試験サンプルCVを、心体Cに沿って心体Cの延設方向に切断して心体Cを取り出す。取出した心体Cの両端部をチャックして、引張り試験機で引張り試験を行なうことにより、最大引張り応力Mを取得する。この取得した最大引張り応力Mのデータが演算装置14に入力される。錘8の衝撃を受けていないオリジナルの心体Cの最大引張り応力Moが演算装置14に入力されていて、取得した最大引張り応力Mとオリジナルの最大引張り応力Moとの比較によって、オリジナルの最大引張り応力Moに対する最大引張り応力Mの低下率Dが算出される。
【0037】
心体Cの最大引張り応力Mが低下するのは、心体Cに損傷が生じていることを意味するので、最大引張り応力Mの低下率Dによって心体Cの損傷具合を把握することができる。したがって、コンベヤベルトの使用条件と同じ衝撃圧縮応力CPに設定して、試験サンプルCVを用いて試験を行なって、例えば、取得した最大引張り応力Mがオリジナルと同じ値(Mo)である場合、或いは、低下率Dが予め設定された許容範囲である場合には、心体C(その仕様のコンベヤベルト)についての耐衝撃性に問題がないと判断する。
【0038】
このように本発明では、試験サンプルCVを現場での使用状況に近い条件に設定し、衝撃力センサ13および張力センサ12の検知データと、接触面積Sと、最大引張り応力Mとに基づいて耐衝撃性の評価を行なう。そして、錘8の自由落下による衝撃圧縮応力CPと、心体Cの最大引張り応力Mの低下率Dとに注目して評価するので、コンベヤベルトの実使用と整合する精度のよい評価をすることができる。
【0039】
また、錘8を自由落下させて試験サンプルCVに衝突した際に心体Cに作用する張力Tを張力センサ12により把握することができる。したがって、その際に検知した張力Tが、心体Cの保証強力に対してどの程度であるかを把握できる。そこで、例えば、検知した張力Tが心体Cの保証強力に対して、予め設定された許容範囲内であれば、耐衝撃性に問題がないと判断することができる。
【0040】
図4、5に評価システム1の別の実施形態を例示する。この実施形態は、傾動板7を備えていることが先の実施形態と大きく異なる。傾動板7の一端部には、ベース2に固定された回転軸7aが設けられ、他端部にはベース2に固定された円弧状の傾動板保持フレーム7bが設けられている。傾動板7は回転軸7aを中心にして、傾動板7の他端部に設けられたガイド突起を、傾動板保持フレーム7bに形成されたガイド孔7cにガイドさせて、水平に対して角度Ahを可変に傾動する。そして、傾動板7は任意の設定された傾斜角度Ahで固定されるように構成されている。
【0041】
傾動板7の上には、心体Cがベルト長手方向に張設された試験サンプルCVと、2つの支持体3と、固定手段4とが設置されている。したがって、心体Cを所定の張力Tで張設して2つの支持体3の上にセッティングされた試験サンプルCVが、任意の設定された傾斜角度Ahでベース2上に固定できるようになっている。その他の構成は、先の実施形態と同じである。この実施形態では、鉛直に自由落下する錘8に対して、試験サンプルCVの表面の角度を任意に設定することができる。
【0042】
コンベヤベルトの使用現場では、コンベヤベルトが回転走行中に被運搬物がベルト上に投下される。したがって、被搬送物は、コンベヤベルトの回転走行方向と反対方向で、コンベヤベルトの回転走行速度と同じ速度成分を有しながら、試験サンプルCVの上に自由落下する。この実施形態では、図5に例示するように傾動板7を用いて試験サンプルCVを実使用のコンベヤベルトの回転走行速度に対応する傾斜角度Ahに固定した状態にして、錘8を落下位置Pに自由落下させることができる。それ故、耐衝撃性について、コンベヤベルトの回転走行速度を考慮した精度のよい評価を行なうことが可能になる。
【実施例】
【0043】
図1に例示する試験システムを用いて、同一仕様の試験サンプルCVに対して、錘8の先端角度Aのみを6通り(サンプル1〜6)に変化させて、錘8を自由落下させて錘8が試験サンプルCVに衝突した際の落下衝撃力Fを衝撃力センサ13により検知し、その結果を図6に示す。試験サンプルCVは、スチールコード(オリジナルの最大引張り応力Moが1300MPa)の心体Cを3本有し、上下のカバーゴムRの厚さがそれぞれ4mm、ベルト長さ750mm、ベルト幅30mmであった。支持体3の間隔は300mm、支持体3の中間位置を落下位置Pにして、心体Cを2.7kNの張力で張設し、重さ5kgの錘8を落下高さH500mmで自由落下させた。図6の結果から、錘8の先端角度Aの違いによって落下衝撃力Fにほとんど違いが生じないことが分かる。
【0044】
ここで、それぞれの先端角度Aにおいて、錘8を自由落下させた際に試験サンプルCVに接触する錘8の下端部の接触面積Sを用いて、錘8が試験サンプルCVに衝突した際の衝撃圧縮応力CP(=F/S)を演算装置14により算出し、その結果を図7に示す。図7の結果から、錘8の先端角度Aが小さい程、接触面積Sが小さくなるため衝撃圧縮応力CPが大きくなることが分かる。
【0045】
次に、錘8を予め設定された回数Nだけ自由落下させた後の試験サンプルCVから取り出した心体Cの最大引張り応力Mを測定して、オリジナルの最大引張り応力Moに対する最大引張り応力Mの状態を図8に示す。
【0046】
図8の結果から、先端角度A(接触面積S)が小さいサンプル1および2では、最大引張り応力Mの低下が大きく、低下率D(=(Mo−M)/Mo)が大きくなっていることが分かる。落下回数Nが50では、サンプル1、2の低下率Dは、それぞれ60%、50%程度になる。即ち、錘8の自由落下による衝撃圧縮力CPが大きい程、心体Cが損傷し易くなることが分かる。一方で、先端角度Aがある程度大きくなると、心体Cの損傷を効果的に抑えられることが分かる。
【符号の説明】
【0047】
1 評価システム
2 ベース
2a 溝部
3 支持体
4 固定手段
4a 支持フレーム
4b 巻取り軸
4c 貫通穴
5 テンション付与ボルト
6 本体フレーム
7 傾動板
7a 回転軸
7b 傾動板保持フレーム
7c ガイド孔
8 錘
8a〜8e 先端部材
9 ガイド筒
10 吊下げ部材
11 落下機構
12 張力センサ(ロードセル)
13 衝撃力センサ(ロードセル)
14 演算装置
15 モニタ
CV 試験サンプル
C 心体
R カバーゴム
A 先端角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトの試験サンプルからベルト長手方向に露出させた心体をベルト長手方向に張設して固定する固定手段と、この試験サンプルの下面を支持するベルト長手方向に間隔をあけて配置された2つの支持体と、この試験サンプル上に設定した落下位置に自由落下させる錘と、この錘に取り付けられて落下衝撃力を検知する衝撃力センサと、前記張設した心体に作用する張力を検知する張力センサと、前記衝撃力センサおよび張力センサの検知データが入力される演算装置とを備え、前記錘を自由落下させた際に試験サンプルに接触する錘の下端部の接触面積と、前記錘を自由落下させた後の試験サンプルから取り出した心体の最大引張り応力とが前記演算装置に入力されて、前記衝撃力センサおよび張力センサの検知データと、前記接触面積と、前記最大引張り応力とに基づいて、耐衝撃性の評価を行なう構成にしたことを特徴とするコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システム。
【請求項2】
前記支持体の間隔を可変に構成するとともに、前記錘の下端部に着脱可能な下端形状の異なる複数種類の先端部材を有し、これら複数種類の先端部材から選択した1つの先端部材を前記錘の下端部に装着する構成にした請求項1に記載のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システム。
【請求項3】
水平に対して角度を可変に傾動して、設定した傾斜角度で固定される傾動板を設け、この傾動板の上に、前記心体がベルト長手方向に張設された試験サンプルと、前記2つの支持体と、前記固定手段とを設置した請求項1または2に記載のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価システム。
【請求項4】
コンベヤベルトの試験サンプルから心体をベルト長手方向に露出させて、予め設定された張力でベルト長手方向に張設して固定した状態にするとともに、この試験サンプルの下面を、ベルト長手方向に予め設定された間隔をあけて配置された2つの支持体により支持して試験サンプルをセッティングし、前記セッティングした試験サンプル上に設定した落下位置に、予め設定された高さから錘を自由落下させ、落下させた錘が試験サンプルに衝突した際の落下衝撃力を錘に設けた衝撃力センサにより検知し、前記張設した心体に作用する張力を張力センサにより検知して、前記衝撃力センサおよび張力センサによる検知データを演算装置に入力するともに、前記錘を自由落下させた際に試験サンプルに接触する錘の下端部の接触面積と、前記錘を自由落下させた後の試験サンプルから取り出した心体の最大引張り応力とを前記演算装置に入力して、前記衝撃力センサおよび張力センサの検知データと、前記接触面積と、前記最大引張り応力とに基づいて、耐衝撃性の評価を行なうことを特徴とするコンベヤベルトの耐衝撃性の評価方法。
【請求項5】
前記セッティングした試験サンプルを、水平に対して角度を可変に傾動する傾動板の上に設置し、傾動板を予め設定された傾斜角度で固定した状態にして、前記錘を前記落下位置に自由落下させる請求項4に記載のコンベヤベルトの耐衝撃性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−257187(P2011−257187A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130224(P2010−130224)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月15日 社団法人 日本機械学会関西支部発行の「関西学生会 学生員卒業研究発表講演会 講演前刷集」に発表
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】