説明

コンベヤベルト

【課題】高い縦引裂き抵抗力を有し、損傷の発生および損傷の拡大を抑制することができるコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】高接着性ゴムからなる中間ゴム層4を介して芯体2と補強層3とを対向して積層し、外部から棒状体が突き刺さると補強層3が貫通を防止し、この棒状体がコンベヤベルト1に縦裂き力を作用させる場合には、補強層3が縦裂き力に抵抗しつつ、補強層3を構成するコンベヤベルト幅方向に対するコード角度を15°としたアラミド繊維コードが縦裂き力を分散させるとともに、高接着性ゴム4が芯体2と補強層3と強固に接着することによって両者のはく離を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、高い縦裂き抵抗力を有し、損傷防止および損傷の拡大を抑制することができるコンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベアベルトに要求される重要な性能として、鋭利な突部を有する物体の衝突による損傷や重量物の落下による衝撃に対する耐久性がある。これらの問題に対処するために、コンベアベルトの内部に補強層が積層されており、様々な補強層が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
コンベアベルトに外部から物体が突き刺さった場合は、補強層が貫通を防止して芯体の損傷を防止することができる。一方、この突き刺さった物体が何かに引っ掛かる等によって、固定状態となると回転稼動するコンベヤベルトには、長手方向に縦裂き力が作用して、損傷がコンベヤベルトの回転によって、徐々に拡大する。この際に、従来のように補強層を強力にしていると、補強層自体は縦裂き力に対抗することはできるが、芯体と補強層との間で、はく離が発生して損傷の拡大を防止できないという問題があった。
【特許文献1】実開平5−64112号公報
【特許文献2】特開平2−261711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い縦裂き抵抗力を有し、損傷の防止および損傷の拡大を抑制することができるコンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトは、芯体と、該芯体と中間ゴム層を介して積層される少なくとも1層の補強層とを備えたコンベヤベルトにおいて、前記補強層が有機繊維コードまたはスチールコードで構成され、前記中間ゴム層が所定の接着力を有する高接着性ゴムからなることを特徴とするものである。
【0006】
ここで、所定の接着力を有するとはJIS K 6322に基づく、はく離試験において5.0N/mm以上のはく離強度を有することを意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芯体と、この芯体と中間ゴム層を介して積層される少なくとも1層の補強層とを備えたコンベヤベルトにおいて、補強層が有機繊維コードまたはスチールコードで構成され、中間ゴム層が所定の接着強度を有する高接着性ゴムからなる構成にしたので、外部からの損傷を補強層で防止し、コンベヤベルトに縦裂き力が作用した場合には、補強層が縦裂き力に抵抗するとともに、高接着性ゴムが芯体と補強層と強固に接着しているので、両者のはく離が発生しにくくなり、損傷の拡大を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のコンベヤベルトを図に示した実施形態に基づいて説明する。図1に実施形態のコンベヤベルト1の内部構造を幅方向断面で示し、図2に補強層3の構造を明確にするために図1のコンベヤベルト1の一部を透視して平面で示す。
【0009】
各種繊維コードの帆布、織物等から構成される3層の芯体2が、コンベヤベルト1の長さ方向に沿って埋設され、芯体2に対向するように、中間ゴム層4を介して2層の補強層3がコンベヤベルト1の長さ方向に沿って埋設されている。芯体2および補強層3の外側にはカバーゴム層5が積層されている。
【0010】
補強層3は、有機繊維コードまたはスチールコードから構成され、補強層3を構成するコード3aは、図2に示すようにコンベヤベルト幅方向に対して所定のコード角度Aで埋設されている。
【0011】
中間ゴム層4は、接着力に優れた高接着性ゴムからなり、芯体2と補強層3とを強固に接着している。この高接着性ゴムは、JIS K 6322に基づく、はく離試験において5.0N/mm以上のはく離強度を有するものである。
【0012】
コンベヤベルト1に外部から棒状体等が突き刺さった場合には、補強層3が棒状体の貫通を防止して芯体2の損傷を防止する。突き刺さった棒状体が、何かに引っ掛かる等によって固定されると、回転稼動しているコンベヤベルト1には、長手方向に縦裂き力が作用するが、補強層3が縦裂き力に抵抗して損傷の拡大を抑制する。
【0013】
補強層3を構成するコード3aのコード角度Aを15°以下にすると、コンベヤベルト1の回転屈曲性を悪化させることなく、適度に縦裂き力を分散させて損傷の拡大を抑えることができる。補強層3を構成する有機繊維コードの素材としては、例えばアラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、PBO(ポリパラフェニン・ベンゾビス・オキサゾール)繊維などを挙げることができ、軽量化を図りつつ優れた損傷防止および損傷拡大効果を得るには、アラミド繊維コードを用いることが好ましい。
【0014】
補強層3による損傷防止および損傷拡大効果に加えて、補強層3と芯体2とが高接着性ゴムで強固に接着されていることによって、芯体2と補強層3とが、はく離しにくくなり損傷の拡大をさらに抑えることが可能になる。
【0015】
高接着性ゴムからなる中間ゴム層4の厚みは、大きくする程、接着力を増すことができるが厚みが増すとコンベヤベルト1の回転屈曲性に影響が生じるので、0.1mm以上3.0mm以下の範囲にすることが好ましい。
【0016】
この実施形態では、芯体2が3層、補強層3が2層となっているが、ベルトコンベア1に対する要求性能に応じて適切な積層数を採用することができる。また、芯体2にスチールコードを用いることもできる。
【実施例】
【0017】
図1に示した内部構造の試験サンプルSを用いて縦裂き抵抗力測定試験を実施した。
試験サンプルSは、サイズを縦400mm、横150mm、厚さはベルト全厚とし、表1に示し(厚さの違いは補強層と中間ゴム層厚さによるが、この厚さの違いによる縦裂き抵抗力への影響はほとんどない)、ナイロン繊維から構成される芯体を3層積層し、補強層をアラミド繊維コードからなるすだれ織物で構成して2層積層し、ゴム種を同一にすることを共通条件として、芯体を構成するナイロン繊維の引張り強度、補強層コード角度A、中間ゴム層の厚みを表1に示すように変えた4種類(実施例1〜4)、比較用として実施例1の試験サンプルSから補強層のみを除いた1種類(比較例)の合計5種類とした。
【0018】
中間ゴム層には高接着性ゴムとして、JIS K 6322に基づく、はく離試験において5.0N/mm以上のはく離強度を有するものを使用した。
【0019】
縦裂き抵抗力測定試験は図3に示すように、縦裂き部を設けた試験サンプルSに先端部6aを4Rの形状とした試験治具6を用いて、先端部6aと縦裂き部を係合させた状態で、試験サンプルSおよび試験治具6を反対方向に引張って縦裂き力を作用させ、試験サンプルSに故障が生じるまでの縦裂き抵抗力を測定した。その結果を表1に示す。尚、表中の芯体引張り強度は、芯体の幅1mm、1層(1ply)当りの引張り強度を表している。
【0020】
【表1】

【0021】
この結果から実施例1〜4の試験サンプルSは、補強層を構成するコードの材質、補強層コード角度A、中間ゴム層の接着力および厚みを本発明で特定した範囲にしたことにより、比較例の試験サンプルSに比べて、縦裂き抵抗力が2倍以上優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のコンベヤベルトの内部構造を示す幅方向断面図である。
【図2】図1の一部透視平面図である。
【図3】試験サンプルを用いた縦裂き抵抗力測定試験の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 コンベヤベルト
2 芯体
3 補強層 3a 補強層を構成するコード
4 中間ゴム層(高接着性ゴム)
5 カバーゴム層
6 試験治具 6a 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体と、該芯体と中間ゴム層を介して積層される少なくとも1層の補強層とを備えたコンベヤベルトにおいて、前記補強層が有機繊維コードまたはスチールコードで構成され、前記中間ゴム層が所定の接着力を有する高接着性ゴムからなることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記中間ゴム層の厚みが0.1mm以上3.0mm以下である請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記補強層を構成するコードのコンベヤベルト幅方向に対するコード角度が15°以下である請求項1または2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記補強層がアラミド繊維コードで構成される請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−273495(P2006−273495A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94449(P2005−94449)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】