説明

コンベヤベルト

【課題】コスト増大を抑えつつ、プーリのまわりで屈曲する際に最内周側および最外周側の帆布層の縦糸の負担を軽減して耐久性を向上させたコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】平織構造の帆布層3の横糸5の配列ピッチPと、配列ピッチP間における縦糸4の長さLとの比を示す縦糸クリンプ率Cを算出し、帆布層3のうち、上下方向で最も中央に位置する基準帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Caとし、他の帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、基準帆布層よりも下側の帆布層については、最下側の帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超にして縦糸4の湾曲具合を最も大きくし、基準帆布層よりも上側の帆布層については、最上側の帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超にして縦糸4の湾曲具合を最も大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、コストの増大を抑えつつ、プーリ等のまわりで屈曲する際に、最内周側および最外周側になる帆布層の縦糸の負担を軽減して耐久性を向上させることができるコンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトは、一般的にゴム層の間に平織構造の帆布層やスチールコード層からなる心材を挟んで構成されている。心材は、コンベヤベルトに対する要求性能により複数の帆布層を積層して構成することがある。このような複数の帆布層が積層されたコンベヤベルトでは、稼動中にプーリまわりを通過して屈曲する際に中立面よりも内周側の帆布層には、屈曲する度に圧縮応力が発生する。この繰り返し発生する圧縮応力により、特に最内周側の帆布層を構成する縦糸が挫屈して破断に至ることがある。縦糸が挫屈したままコンベヤベルトを稼動し続けると、帆布層の大きな損傷に発展してコンベヤベルトが稼動できなくなるという問題が発生する。
【0003】
このような挫屈対策のため、複数の帆布層を積層したコンベヤベルトでは、帆布層をシームレスの織布で構成して特殊な補強層を積層するなど、帆布層の材質や構成が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これら従来の提案では縦糸の挫屈を十分に防ぐことができなかった。また、特殊な補強層を用いるとコスト増大を抑えることが難しくなるという問題があった。
【0004】
一方、プーリまわりを通過して屈曲する際に中立面よりも外周側の帆布層には、屈曲する度に引張応力が発生する。この繰り返し発生する引張応力により、特に最外周側の帆布層を構成する縦糸は疲労するので、ある程度の伸びを確保して引張応力を緩和することが好ましい。また、コンベヤベルトの途中に追加のプーリを設けて、屈曲させて架け回す場合には、コンベヤベルトの表面および裏面の両面が、プーリまわりで屈曲内周側になる。そのため、中立面から最も離れた位置にある帆布層については、縦糸の挫屈対策が必要であった。
【特許文献1】特開平8−81029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コストの増大を抑えつつ、プーリ等のまわりで屈曲する際に、最内周側および最外周側になる帆布層の縦糸の負担を軽減して耐久性を向上させることができるコンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトは、平織構造の帆布層を上下に3層以上積層したコンベヤベルトにおいて、コンベヤベルトの成型および加硫後の前記帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで下記(1)式により縦糸クリンプ率Cを算出し、前記3層以上の帆布層のうち、上下方向で最も中央に位置する基準帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Caとし、他の帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、前記基準帆布層よりも下側に積層した帆布層については、最も下側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超とし、前記基準帆布層よりも上側に積層した帆布層については、最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超としたことを特徴とするものである。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
【0007】
ここで、前記最も下側に位置する帆布層および最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを、例えば、前記基準クリンプ率Caの1.5倍以上6.0倍以下に設定する。また、前記基準クリンプ率Caを、例えば、1.5%以上4.0%以下、前記最も下側に位置する帆布層および最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを、例えば、3.5%以上6.0%以下に設定する。また、前記基準帆布層に対して上下に対称の位置にあるそれぞれの帆布層の縦糸クリンプ率Cを、同じに設定することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帆布層を3層以上積層したコンベヤベルトによれば、コンベヤベルトの成型および加硫後の帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで上記(1)式により縦糸クリンプ率Cを算出し、3層以上の帆布層のうち、上下方向で最も中央に位置する基準帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Caとし、他の帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、基準帆布層よりも下側に積層した帆布層については、最下側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最大、かつ基準クリンプ率Ca超としたので、コンベヤベルトが屈曲する際に最大の圧縮応力が生じる最内周側に積層される帆布層については、圧縮応力が生じる帆布層の中で、縦糸の湾曲具合が最大になり、屈曲によって生じる圧縮応力が分散し易くなっている。
【0009】
また、基準帆布層よりも上側に積層した帆布層については、最上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最大、かつ基準クリンプ率Ca超としたので、コンベヤベルトが屈曲する際に最大の引張応力が生じる最外周側に積層される帆布層については、引張応力が生じる帆布層の中で、縦糸の湾曲具合が最大になり、屈曲によって生じる引張応力が分散し易くなっている。
【0010】
これにより、最内周側に積層される帆布層の縦糸の座屈を防止し、また、最外周側に積層される帆布層の縦糸の伸びを確保することができる。そのため、最内周側および最外周側になる帆布層の縦糸の負担を軽減して耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、縦糸クリンプ率Cを大きくしようとして、横糸の配列ピッチPを小さくしようとすれば、帆布層のコストが増大するが、本発明では、すべての帆布層の縦糸クリンプ率Cを大きくするのではなく、耐久性向上に大きな効果がある帆布層の縦糸クリンプ率Cを大きくするので、コストの増大を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のコンベヤベルトを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1に例示するように、本発明のコンベヤベルト1は、下ゴム層2aと上ゴム層2bとで、5層の帆布層3(3a、3b、3c、3d、3e)を上下に挟んでいる。それぞれの帆布層3は平織構造になっている。帆布層3の積層数はコンベヤベルト1に対する要求性能(剛性、伸び等)により決定され、5層に限定されず3層以上であればよい。
【0014】
このコンベヤベルト1は、駆動プーリと従動プーリとの間に張架され、駆動プーリが回転駆動することにより、図2に例示するようにプーリ6まわりを通過する度に屈曲される。プーリ6まわりを回転移動するコンベヤベルト1には、中立面Nを境にして中立面Nの外周側の範囲には引張応力が発生し、内周側の範囲には圧縮応力が発生する。
【0015】
中立面Nの位置は、コンベヤベルト1の厚さ、帆布層3の数や位置等により変化するが、3層以上の帆布層3を積層したコンベヤベルト1では、上下方向で最も中央に位置する帆布層3が、凡そ中立面Nの位置になる。図1、2のコンベヤベルト1では、帆布層3cが、ほぼ中立面Nに位置する。したがって、帆布層3c(中立面N)よりも下側に積層した帆布層3a、3bには、プーリ6まわりを通過する度に圧縮応力が繰り返し発生し、帆布層3c(中立面N)よりも上側に積層した帆布層3d、3eには、引張応力が繰り返し発生する。
【0016】
それぞれの帆布層3は、図3に例示するように縦糸4と横糸5とが、1本ごとに浮き沈みして交錯する織構造になっている。縦糸4は、横糸5の配列ピッチP間で上下に湾曲し、横糸5も縦糸4の配列ピッチ間で上下に湾曲している。この実施形態では、それぞれの帆布層3の縦糸4の材質はポリエステル、横糸5の材質はナイロンになっている。縦糸4および横糸5の材質としては、ポリエステル、アラミド、ビニロン、ナイロンなどを例示することができる。
【0017】
横糸5はコンベヤベルト1の幅方向に延設されているため、コンベヤベルト1がプーリ6まわりで屈曲しても、引張応力や圧縮応力がほとんど発生しない。一方、縦糸4は、コンベヤベルト1の長手方向に延設されているため、帆布層3cよりも下側に積層した帆布層3a、3bを構成する縦糸4には圧縮応力が発生し、帆布層3cよりも上側に積層した帆布層3d、3eを構成する縦糸4には引張応力が発生する。
【0018】
帆布層3を構成する縦糸4や横糸5は、引張応力に対してはある程度剛性を有しているが、圧縮応力に対しては剛性が極めて低い。そのため、縦糸4の挫屈を防止する対策は特に重要になる。
【0019】
縦糸4の織構造の湾曲具合は、屈曲による挫屈の発生に大きく影響し、湾曲具合が小さくて横糸5と直線的に交錯していると、容易に変形することができず、ある点に圧縮応力が集中して折れ曲がって挫屈が発生する。一方、縦糸4が上下に大きく湾曲している織構造であれば、広範囲にわたり容易に変形することができるので圧縮応力が分散して挫屈する危険性が小さくなる。また、縦糸4が上下に大きく湾曲している織構造であれば、縦糸4に引張応力が生じた際の伸びも確保し易くなる。
【0020】
そこで、本発明では、図3に示すように、コンベヤベルト1の成型および加硫後の帆布層3の横糸5の配列ピッチPと、この配列ピッチP間における縦糸4の長さLとの比を示す下記(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cを用いて、縦糸4の湾曲具合を考慮するようにしている。図3および(1)式では、コンベヤベルト1の成型および加硫後の帆布層3のゲージ厚をH、縦糸4のゲージ厚をhとしている。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
【0021】
横糸5の配列ピッチP間における縦糸4の長さLは、厳密には図3に二点鎖線で示した直線ではなく、縦糸4の湾曲形状に沿った曲線となるが、(1)式では図示した二点鎖線の直線として近似している。縦糸クリンプ率Cの値が大きい程、縦糸4が大きく湾曲していて挫屈し難い構造といえる。
【0022】
この実施形態では、5層の帆布層3のうち、上下方向で最も中央に位置する帆布層3cを基準帆布層とし、この帆布層3cの縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Caとする。そして、他の帆布層3a、3b、3d、3eの縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、基準帆布層3cよりも上側に積層した帆布層3d、3eについては、最も上側に位置する帆布層3eの縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超としている。また、基準帆布層3cよりも下側に積層した帆布層3a、3bについては、最も下側に位置する帆布層3aの縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超としている。
【0023】
これにより、コンベヤベルト1がプーリ等のまわりを通過する度に、繰り返し圧縮応力が生じる帆布層3a、3bの中では、最大の圧縮応力が生じる帆布層3aの縦糸4の湾曲具合を最大にして、屈曲によって生じる圧縮応力を分散させ易くして、縦糸4の挫屈を防止している。また、コンベヤベルト1がプーリ等のまわりを通過する度に、繰り返し引張応力が生じる帆布層3d、3eの中では、最大の引張応力が生じる帆布層3eの縦糸4の湾曲具合を最大にして、屈曲によって生じる引張応力を分散させ易くして、縦糸4の引張応力を緩和している。
【0024】
このようにして、最内周側になる帆布層3aおよび最外周側になる帆布層3eの縦糸4の負担を十分に軽減することが可能になり、コンベヤベルト1の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0025】
また、圧縮応力が生じるもう1層の帆布層3bについては、縦糸クリンプ率Cが基準クリンプ率Ca以上であるので、その縦糸4の上下の湾曲具合が基準帆布層3cの縦糸4と同等以上になり、過大な圧縮応力が生じることがない。帆布層3bの縦糸クリンプ率Cは、基準クリンプ率Caと同じにすることも、基準クリンプ率Ca超にすることもできる。同様に引張応力が生じるもう1層の帆布層3dについては、縦糸クリンプ率Cが基準クリンプ率Ca以上であるので、過大な引張応力が生じることがない。帆布層3dの縦糸クリンプ率Cは、基準クリンプ率Caと同じにすることも、基準クリンプ率Ca超にすることもできる。
【0026】
尚、帆布層3a、3bの縦糸クリンプ率Cを同じにしてもよい。この場合も基準帆布層3cよりも下側に積層した帆布層3a、3bについては、最も下側に位置する帆布層3aの縦糸クリンプ率Cが、帆布層3bとは同じであるが、最も大きいと言える。また、帆布層3d、3eの縦糸クリンプ率Cを同じにしてもよい。この場合も基準帆布層3cよりも上側に積層した帆布層3d、3eについては、最も上側に位置する帆布層3eの縦糸クリンプ率Cが、帆布層3dとは同じであるが、最も大きいと言える。
【0027】
縦糸クリンプ率Cを大きくするには、横糸5の配列ピッチPを小さくすればよい。しかしながら、横糸5の配列ピッチPを小さくすれば、単位長さ当たりの横糸5の打込み数が増えて、帆布層3のコストが増大する。そこで、本発明では、すべての帆布層3の縦糸クリンプ率Cを大きくするのではなく、耐久性向上に効果が大きい帆布層3a、3eの縦糸クリンプ率Cを大きくすることにより、コスト増大の抑制を可能にしている。
【0028】
本発明では、最も下側に位置する帆布層3aおよび最も上側に位置する帆布層3eの縦糸クリンプ率Cを、例えば、基準クリンプ率Caの1.5倍以上6.0倍以下にする。帆布層3a、3eの縦糸クリンプ率Cが、基準クリンプ率Caの1.5倍未満であると、帆布層3a、3eの縦糸4の負担を十分に軽減することが難しくなる。一方、帆布層3a、3eの縦糸クリンプ率Cが、基準クリンプ率Caの6.0倍超であると、横糸5の配列ピッチPをかなり小さくする必要があり、コストの増大を抑制することが困難になる。
【0029】
また、本発明では、基準クリンプ率Caを1.5%以上4.0%以下、最も下側に位置する帆布層3aおよび最も上側に位置する帆布層3eの縦糸クリンプ率Cを3.5%以上6.0%以下にすることが好ましい。基準クリンプ率Caおよび帆布層3a、3eの縦糸クリンプ率Cを、この範囲に設定することにより、それぞれの帆布層3の縦糸4の耐久性の向上と、コストの増大の抑制とをバランスよく両立させることができる。このように、それぞれの帆布層3の縦糸クリンプ率Cを適切な範囲に設定することで、縦糸4の材質を、剛性が高く挫屈し易いポリエステルにした場合であっても、耐挫屈性の大幅な向上が期待できる。
【0030】
縦糸4は、引張りよりも圧縮に弱いので、最も下側の帆布層3aの縦糸クリンプ率Cを、最も上側の帆布層3eの縦糸クリンプ率Cよりも大きくしてもよい。また、基準帆布層3cに対して、上下に対称の位置にあるそれぞれの帆布層3の縦糸クリンプ率Cを同じに設定することもできる。即ち、帆布層3bと3dの縦糸クリンプ率Cを同じに、帆布層3aと3eの縦糸クリンプ率Cを同じに設定することもできる。
【0031】
図5に例示するように、駆動プーリ6aと従動プーリ6bとの間に張架されたコンベヤベルト1に、追加のプーリ(ベンドプーリ6c、テークアッププーリ6d)を設けて、途中を屈曲させて架け回す場合には、コンベヤベルト1の表面および裏面が、いずれかのプーリ6a、6b、6c、6dまわりで屈曲内周側になる。図1のコンベヤベルト1では、帆布層3a、3bだけでなく、帆布層3d、3eにも繰り返し圧縮応力が生じることになる。このような場合であっても、基準帆布層3cに対して、上下に対称の位置にあるそれぞれの帆布層3の縦糸クリンプ率Cを同じに設定し、かつ、帆布層3a、3eの縦糸クリンプ率Cを最大にしておけば、中立面Nから最も遠い位置にある帆布層3a、3eの縦糸4の挫屈を防止することができる。
【0032】
また、基準帆布層3cよりも下側に積層した帆布層3a、3bについては、下側に位置する程、縦糸クリンプ率Cを大きくすることもできる。基準帆布層3cよりも上側に積層した帆布層3d、3eについては、上側に位置する程、縦糸クリンプ率Cを大きくすることもできる。
【0033】
図4に例示する実施形態は、図1の実施形態に対して帆布層3の積層数のみ変更したもので、6層の帆布層3(3a、3b、3c、3d、3e、3f)を積層している。この実施形態では、6層の帆布層3のうち、上下方向で最も中央に位置する帆布層3c、3dが基準帆布層となり、帆布層3c、3dの縦糸クリンプ率Cが基準クリンプ率Caとなる。帆布層3c、3dの間が凡そ中立面Nの位置となる。
【0034】
そして、他の帆布層3a、3b、3e、3fの縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、基準帆布層3c、3dよりも下側に積層した帆布層3a、3bについては、最も下側に位置する帆布層3aの縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超としている。また、基準帆布層3c、3dよりも上側に積層した帆布層3e、3fについては、最も上側に位置する帆布層3fの縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超としている。
【0035】
この実施形態においても、図1の実施形態について説明した内容を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0036】
縦糸をポリエステル、横糸をナイロンとした平織構造の帆布層を用いて、上ゴム層3mm、下ゴム層2mmにしたことを共通条件として、帆布層の積層数および上記した(1)式により算出される帆布層の縦糸クリンプ率Cを変化させて、表1に示すコンベヤベルトのサンプルを9種類(実施例6種類、比較例3種類)を作製し、耐挫屈性の評価を行なった。例えば、実施例1−1のサンプルでは、積層した4層の帆布層のうち、上下方向中央の2層の帆布層の縦糸クリンプ率Cが1.5%、最上側および最下側のそれぞれ1層の帆布層の縦糸クリンプ率Cが3.6%であることを示している。耐挫屈性の評価結果を表1に示す。
【0037】
耐挫屈性の評価方法は、各サンプルを、直径の大きいプーリから徐々に直径の小さいプーリに180°巻き付けてゆき、その際に最内周側の帆布層がプーリの周面に沿って追従せずに波打って、その帆布層の縦糸が挫屈し易い状態になった場合のプーリ直径を、挫屈発生径として示している。即ち、挫屈発生径の値が小さいほど、耐挫屈性に優れていることを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果より、本発明で規定したように、上下方向で最も中央に位置する基準帆布層の縦糸クリンプ率C(基準クリンプ率Ca)を1.5%とし、他の帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、基準帆布層よりも上側に積層した帆布層については、最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超の3.6%とし、基準帆布層よりも下側に積層した帆布層については、最も下側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超の3.6%とした実施例1−1、或いは、基準帆布層よりも上側に積層した帆布層については、最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超の4.5%とし、基準帆布層よりも下側に積層した帆布層については、最も下側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超の4.5%とした実施例1−2は、比較例1に比べて、耐挫屈性が優れていることが確認できた。
【0040】
また、帆布層を5層積層した場合、6層積層した場合も同様に、実施例2−1、2−2は、比較例2より耐挫屈性に優れ、実施例3−1、3−2は比較例3よりも耐挫屈性に優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のコンベヤベルトの内部構造を例示するベルト幅方向断面図である。
【図2】図1のコンベヤベルトをプーリに巻付け、屈曲させた状態を例示する側面図である。
【図3】図1の帆布層を構成する縦糸と横糸の織構造を例示する拡大図である。
【図4】本発明の別のコンベヤベルトの内部構造を例示するベルト幅方向断面図である。
【図5】コンベヤベルトを途中で屈曲させて架け回した状態を例示する側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コンベヤベルト
2a 上ゴム層
2b 下ゴム層
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f 帆布層
4 縦糸
5 横糸
6 プーリ
6a 駆動プーリ
6b 従動プーリ
6c ベンドプーリ
6d テークアッププーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平織構造の帆布層を上下に3層以上積層したコンベヤベルトにおいて、コンベヤベルトの成型および加硫後の前記帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで下記(1)式により縦糸クリンプ率Cを算出し、前記3層以上の帆布層のうち、上下方向で最も中央に位置する基準帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Caとし、他の帆布層の縦糸クリンプ率Cを基準クリンプ率Ca以上にするとともに、前記基準帆布層よりも下側に積層した帆布層については、最も下側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超とし、前記基準帆布層よりも上側に積層した帆布層については、最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを最も大きく、かつ基準クリンプ率Ca超としたコンベヤベルト。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
【請求項2】
前記最も下側に位置する帆布層および最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを、前記基準クリンプ率Caの1.5倍以上6.0倍以下にした請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記基準クリンプ率Caを1.5%以上4.0%以下、前記最も下側に位置する帆布層および最も上側に位置する帆布層の縦糸クリンプ率Cを3.5%以上6.0%以下にした請求項1または2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記基準帆布層に対して上下に対称の位置にあるそれぞれの帆布層の縦糸クリンプ率Cを、同じに設定にした請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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