説明

コンポジット映像信号の映像信号処理装置

【課題】歪みのあるコンポジット映像信号が入力されても色歪みのない映像を出力する映像信号処理装置を提供する。
【解決手段】1ドット遅延器62により、1ライン分の輝度信号において、表示画面の水平方向の各画素に対応する信号を生成する。単一色検出器64により、各1ドット遅延回路62の1つおきの出力信号がY(n+1)=Y(n−1)=Y(n−3)のとき単一色である旨を示す選択信号”1”を出力する。歪み検出器66により、各1ドット遅延器62の1つおきの入力信号がY(n)≠Y(n+2)=Y(n−2)のとき歪みがある旨を示す選択信号”1”を出力する。AND回路68は、単一色検出器64の出力と歪み検出器66の出力とを入力として、その論理積を選択信号として出力する。この選択信号が”1”のとき、色復調信号回路を切り替えて色信号の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポジット映像信号による出力画像の質を高めるための映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すようにコンポジット映像信号を処理し、映像を表示するための処理として、輝度信号と色信号を分離するY/C分離と呼ばれる処理が行われている。
このY/C分離においては、コンポジット映像信号の伝送経路における信号歪みの影響を受け、輝度信号と色信号との分離を完全に行うことが難しく、輝度信号と色信号とが互いの信号に重畳するノイズが発生する。
【0003】
信号歪みの影響は、フラットなカラー映像に対して顕著に現れ、縦縞模様のようないわゆる色歪みとなり、ユーザに違和感を与えることになる。例えば、アニメなどは、フラットな映像が多く、また、DVDディスクを装着していない状態のDVDデッキは、青色のフラットな映像を出力する機種が存在し、縦縞が発生しやすい。
【0004】
この信号歪みの影響を低減するために、サンプリング点を遅延させて、Y/C分離の性能を向上させるという技術やサンプリングクロックの補正、ライン間の補正、フレーム間の補正を実施して、Y/C分離の性能を向上させるという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−57508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの技術は、そもそも入力されるコンポジット映像信号に歪みがないことを前提になされている。したがって、これらの技術を適用したとしても、入力されるコンポジット映像信号に歪みがある場合には、出力される映像信号の色歪みを完全になくすことは不可能であった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、歪みのあるコンポジット映像信号が入力されても色歪みのない映像を出力する映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる問題を解決するためになされた請求項1に記載のコンポジット映像信号処理装置によれば、Y/C分離手段によってコンポジット映像信号から輝度信号と色信号とが分離される。
【0008】
また、単一色検出手段によって、輝度信号のレベルに基づいてコンポジット映像信号が単一色であることが検出され、歪み検出手段によって、輝度信号の歪みが検出される。
そして、輝度信号によりコンポジット映像信号が単一色であり、かつ、歪みがある場合には、色信号補正手段により、その輝度信号の歪みに基づき色信号が補正される。
【0009】
このようなコンポジット映像処理信号によると、コンポジット映像信号が単一色の場合に表示される映像の色むらをなくすことができる。
すなわち、コンポジット映像信号が単一色(以下、「単一色であこと」を「フラット」とも呼ぶ。)であるか否かは、輝度信号のレベルが一定値であるか否かによって判定できる。一方、出力映像信号をどの色にするかは、色信号によって決定される。また、色信号に歪みがあると色むらなどの色歪みが発生する。
【0010】
また、コンポジット映像信号から映像出力信号を生成するためには、コンポジット映像信号から輝度信号と色信号とを分離(以下、Y/C分離とも呼ぶ。)する必要があるが、その際、輝度信号と色信号とを完全に分離することは困難であるので、色信号に歪みがあれば、その歪みが輝度信号にも発生する。
【0011】
そこで、請求項1に記載のコンポジット映像信号処理装置のようにすると、単一色検出手段及び歪み検出手段によって、例えば、輝度信号のレベルが一定値であることを検出すれば、コンポジット映像信号がフラットであることを検出でき、かつ、輝度信号の歪みを検出できる。
【0012】
そして、コンポジット映像信号がフラットであり、かつ、輝度信号に歪みがあれば、色信号に色むらを発生させる歪みがあることが分かる。
そこで、例えば、輝度信号のレベルが一定値であるときに、輝度信号の歪みに基づいて色信号の歪みを補正すれば、コンポジット映像信号がフラットであるときのコンポジット映像信号の色歪みを補正することができる。そして、フラットであるときのコンポジット映像信号の色歪みを補正することができれば、出力映像信号の色歪みをなくすことができる。
【0013】
ところで、色信号の歪みを補正する方法としては、輝度信号と色信号とを同じタイミングでサンプリングし、そのサンプリングした輝度信号のレベルが一定でない場合に、その一定でない輝度信号をサンプリングした点と時間的に同じ点の色信号の値と、その点と時間的に前後してサンプリングした色信号の値とを平均化する等が考えられるが、より簡単な色信号の補正方法として請求項2に記載のようにするとよい。
【0014】
すなわち、歪み検出手段によって輝度信号の歪みの有無と歪みの位置とを検出し、輝度信号の歪みが検出された場合に、その輝度信号の歪みの位置と同じ位置の色信号を歪みの位置と異なる位置の色信号に置き替えることによって色補正を行うようにするのである。
【0015】
ここで、「歪みの位置と異なる位置の色信号に置き替える」とは、最終的に表示される映像で許容される色むらから得られる許容値の範囲で、歪みが発生した位置の色信号を他の位置の色信号に置き替えるということを意味している。例えば、歪みが発生した位置の直近の色信号に置き替えたり、歪みが発生した位置の2つ以上前後のサンプリング位置の色信号に置き替えるということである。
【0016】
また、「歪みの位置」とは、輝度信号に歪みがある場合、その歪みを特定できる物理量をいい、例えば、その歪みの発生した時間などである。したがって、「輝度信号の歪みの位置と同じ位置」とは、輝度信号に歪みが発生した時間と同じ時間を意味する。また、「歪みの位置と異なる位置」とは、輝度信号に歪みが発生した時間とは異なる時間のことをいう。
【0017】
このようにすれば、コンポジット映像信号がフラットなときは、色信号の変化が少ないので、輝度信号に歪みが発生した位置の色信号、つまり、歪みがある色信号に代えて歪みがない色信号を用いるという簡単な処理で色信号の補正ができる。
【0018】
さらに、色信号の補正の精度を高めるためには、請求項3に記載のように単一色検出手段によって、輝度信号を映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数でサンプリングするとよい。
【0019】
このようにすると、サンプリング周波数と同じ周波数でサンプリングするよりも一定時間の間により多くのサンプリングを行うことができるので、輝度信号のレベルが一定値であることをより的確に捉えることができる。つまり、輝度信号に歪みがあった場合には、その歪みをより的確に捉えることができるのである。
【0020】
そして、サンプリングした輝度信号のうち所定の数の輝度信号を比較して、それらの値がすべて等しければ、輝度信号のレベルが一定値であると判定できるので、コンポジット映像信号が単一色であることをより的確に検出したとすることができる。
【0021】
ここで、「映像信号出力に必要なサンプリング周波数」とは、映像信号出力のためのサンプリングを行う際の周波数であり、「映像信号出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数」とは、映像出力信号の質をより高めるための処理に必要となるサンプリング周波数であり、例えば、映像信号出力に必要なサンプリング周波数の2倍(いわゆるナイキスト周波数)の周波数などである。
【0022】
また、「所定の数」とは、映像出力が単一色であると判定できる十分なサンプリングの数を意味しており、輝度信号の特性や輝度信号の歪みの特性によって決まる値である。
また、「一定値」とは、完全に一定の値ではなく、最終的に表示される映像で許容される色むらから得られる許容値を含む値である。
【0023】
ところで、前述したように、Y/C分離手段によって分離された輝度信号に歪みがある場合には、色信号にもそれと同じ箇所に歪みが発生する。したがって、色信号の補正の精度を高めるためには、色信号の歪みの位置、つまり、輝度信号の歪みの位置を正確に検出できる。
【0024】
そこで、請求項4に記載のように、歪み検出手段によって、請求項3と同様に、映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数で輝度信号をサンプリングすると、サンプリング周波数と同じ周波数でサンプリングするよりも一定時間の間により多くのサンプリングを行うことができるので、輝度信号の歪みをより的確に捉えることができる。
【0025】
そして、コンポジット映像信号がフラットなときは、色信号の変化が少ないので、サンプリングした点の何れかの1点において、その1点の輝度信号の値とそれを挟んで時間的に隣接する2点の輝度信号の値とが何れも等しくない場合に、その点において輝度信号の歪みを検出したこと、つまり、その点が歪みの位置であることを検出することができる。
【0026】
ここで、「等しくない場合」とは、完全に等しい値のみを排除するという意味ではなく、最終的に表示される映像で許容される色むらから得られる許容値を外れた場合のことをいう。
【0027】
ところで、コンポジット映像信号がフラットな場合には、輝度信号や色信号の変化が少ないので、輝度信号の単一色の検出と輝度信号の歪みの有無及び位置の検出とがある程度ずれていてもよい場合がある。つまり、表示される映像に縦縞のような周期的な色むらが発生する場合には、輝度信号にも等しいレベルの歪みが周期的に発生する。
【0028】
したがって、このようなコンポジット映像信号の特性に応じて、コンポジット映像信号処理装置での処理を行うようにすれば、より容易な処理とすることができる。例えば、請求項5に記載のように、輝度信号を映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数でサンプリングし、単一色検出手段においては、そのサンプリングした輝度信号のうち時間的に1つおきに所定の数の輝度信号を比較して、それらがすべて等しいときにコンポジット映像信号が単一色であることを検出し、歪み検出手段においては、単一色検出手段により比較しなかった点、つまり、時間的に1つおきの輝度信号のうち何れか1つの点において、その1点の輝度信号の値とそれを挟んで時間的に隣接する1つおきの2点の輝度信号の値とが何れも等しくない場合にその1点において輝度信号の歪みを検出したとするのである。
【0029】
このようにすれば、サンプリングした輝度信号を順番に処理していくことで、輝度信号の単一色の検出と歪みの有無及び位置とを検出することができるので、処理が容易になる。したがって、このような処理を電子回路で構成した場合には、回路構成が簡易になる。
【0030】
ところで、色信号を補正する方法としては、前述したように輝度信号の歪みの位置と同じ位置の色信号を歪みの位置と異なる位置の色信号に置き替えることが考えられるが、その場合、請求項6に記載のように、歪みを検出した点においてサンプリングした点の色信号に代えて時間的に隣接する何れかの色信号を用いることによって色信号を補正するようにするとよい。
【0031】
このようにすると、歪みがある部分の色信号を隣接する色信号に代えるという簡単な処理で、容易に補正することができる。しかも、色信号の歪みの特性に応じて、サンプリング周波数を設定すれば、補正の精度を容易に向上させることができる。
【0032】
つまり、例えば、色信号の歪みの変化が遅いものであれば、歪み部分の輝度信号の変化が緩やかであるので、サンプリング周波数が低くても歪みを検出した点と隣接する点との輝度信号の差が少ない。したがって、精度の高い色信号の補正ができる。
【0033】
逆に、色信号の歪みの変化が速いものであれば、サンプリング周波数を高くすれば、サンプリングした輝度信号のうち隣接する輝度信号の差が少なくなるので、精度の高い色信号の補正ができる。
【0034】
このとき、サンプリング周波数の高低は、前述したような色信号の特性、つまり、表示される映像が単一色であり、その単一色の出力映像に色むら、特に縦縞のような周期的な色むらがなく、単一色がきれいに表示されればよいというような特性から決定してもよいし、別途設けた色信号の歪みの変化率を検出する手段により求めた色信号の変化率に適応するように変化させてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0036】
[第1実施形態]
(全体構成の説明)
図1は、映像信号処理装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、映像信号処理装置1は、入力バッファ5、Y/C分離回路10、第1色復調回路20、第2色復調回路30、信号選択器40、映像信号出力用のフリップ・フロップ回路50、選択指令回路60等を備えている。
【0037】
なお、本映像信号処理装置1の映像出力信号は図示しない発振器により13.5MHzのクロック周波数(以下、出力映像処理周波数とも呼ぶ。)で処理される。
(各構成要素の説明)
入力バッファ5は、コンポジット映像信号を入力するためのものであり、コンポジット映像信号を出力する受信回路等とのインピーダンスを整合させるためのバッファである。
【0038】
Y/C分離回路10は、入力バッファ5を介して入力されたコンポジット映像信号から輝度信号と色信号とを分離するためのものであり、本実施形態では、一般的な3ライン相関くし型フィルタを用いたY/C分離回路であり、出力映像処理周波数の2倍の27MHzのクロック周波数で作動する。
【0039】
このY/C分離回路10、つまり、3ライン相関くし型フィルタは、2つの1走査線遅延器11,12、入力される2つの信号を減算する減算器13,14,15、入力される2つの信号を加算する加算器16、入力される信号を1/2にする乗算器17等から構成される。
【0040】
1走査線遅延器11,12は、入力されるコンポジット映像信号に対して1走査線(以下、走査線をラインとも呼ぶ。)分の遅延を発生させるものである。つまり、1走査線遅延器11,12の出力信号は、入力されたコンポジット映像信号の1ライン分後のコンポジット映像信号となる。
【0041】
減算器13は、入力されたコンポジット映像信号から1走査線遅延器11によって得られた1ライン後のコンポジット映像信号(これを、現在のコンポジット映像信号と呼ぶ。)を減算するものである。
【0042】
減算器14は、減算器13の出力である現在のコンポジット映像信号から更に1ライン後のコンポジット映像信号を減算するものである。また、減算器15は、現在のコンポジット映像信号から乗算器17の出力信号を減算するものである。
【0043】
加算器16は、減算器13の出力信号と減算器14の出力信号とを加算するものであり、乗算器17は、加算器16の出力を1/2にするものである。この、乗算器17の出力が色信号となる。
【0044】
減算器15は、乗算器17の出力から1走査線遅延器11の出力、つまり現在のコンポジット映像信号を減算するものであり、この減算器15の出力が輝度信号となる。
第1色復調回路20は、2つのフリップ・フロップ(以下、F/Fとも呼ぶ。)回路22,24、色復調回路26等から構成され、第2色復調回路30も同様に2つのF/F回路32,34、色復調回路36等から構成され、出力映像処理周波数である13.5MHzのクロック周波数で作動する。
【0045】
色復調回路26,36は、入力される輝度信号と色信号とからRGB出力信号を生成するものである。色復調回路26,36は、一般的な3軸復調による色復調回路であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
以上のように構成された第1色復調回路20及び第2色復調回路30の特徴は、各々2つのF/F回路22,24とF/F回路32,34を備えていることである。
すなわち、第1色復調回路20では、減算器15から出力された輝度信号Y1715,・・・,Y3,Y2,Y1,Y0のうち偶数番目のみをF/F回路22で取出し、乗算器17から出力された色信号C1715,・・・C3,C2,C1,C0のうち偶数番目のみをF/F回路24で取出す。そして、F/F回路22,24で取り出した偶数番目の輝度信号と色信号とを色復調回路26に入力し、RGB出力信号を生成して出力するのである。
【0047】
同様に、第2色復調回路30も27MHzのクロック周波数で作動し、F/F回路32で取出した奇数番目の輝度信号とF/F回路34取出した奇数番目の色信号とによって色復調回路36においてRGB出力信号を生成し出力する。
【0048】
信号選択器40は、後述する選択指令回路60からの選択信号により、第1色復調回路20及び第2色復調回路30から出力されるRGB出力信号のうち何れかを選択する。
すなわち、選択指令回路60から入力される選択信号が論理信号の”0”(以下、単に”0”とも呼ぶ。)の場合、第1色復調回路20から出力されるRGB出力信号を選択して映像信号出力用F/F回路50へ出力し、選択信号が論理信号の”1”(以下、単に”1”とも呼ぶ。)の場合には、第2色復調回路30から出力されるRGB出力信号を選択して一般的な3ライン相関くし型フィルタへ出力する。
【0049】
映像信号出力用F/F回路50は、出力映像処理周波数である13.5MHzのクロック周波数に同期させるための回路である。
次に、図2に基づき選択指令回路60について説明する。図2は、選択指令回路60の構成を示すブロック図である。選択指令回路60は、図2に示すように、1ドット遅延器62、単一色検出器64、歪み検出器66、AND回路68等から構成されており、27MHzのクロック周波数で作動する。
【0050】
1ドット遅延器62は、Y/C分離回路10の減算器15から出力される輝度信号を入力し、入力された1ライン分の輝度信号において、表示画面の水平方向の各画素に対応する信号を生成するものである。
【0051】
単一色検出器64は、輝度信号のレベルに基づいて入力されたコンポジット映像信号がフラットであることを検出するものであり、各1ドット遅延回路62の出力を1つおき、つまり、図2中のY(n+1),Y(n−1),Y(n−3)を入力し、Y(n+1)=Y(n−1)=Y(n−3)のときフラットである旨を示す選択信号”1”を出力する。
【0052】
歪み検出器66は、輝度信号の歪みを検出するためのものであり、各1ドット遅延器62の入力を1つおき、つまり、図2中のY(n+2),Y(n),Y(n−2)を入力し、Y(n)≠Y(n+2)=Y(n−2)のとき歪みがある旨を示す選択信号”1”を出力する。
【0053】
AND回路68は、単一色検出器64の出力と歪み検出器66の出力とを入力として、その論理積を選択信号として出力する回路である。
(映像信号処理装置1の作動)
次に、以上のように構成された映像信号処理装置1の作動について説明する。
【0054】
コンポジット映像信号が入力バッファ5を介してY/C分離回路10に入力されると、前述したように、コンポジット映像信号が輝度信号と色信号とに分離される。分離された輝度信号は、第1色復調回路20及び第2色復調回路30に入力されるとともに選択指令回路60にも入力される。
【0055】
選択指令回路60では、前述したように輝度信号がフラットであり、かつ、輝度信号に歪みがあるときに選択信号”1”を出力する。逆に、輝度信号がフラットでないか、又は、輝度信号に歪みがない場合には、選択指令回路60は選択信号”0”を出力する。
【0056】
選択指令回路60から選択信号”0”が出力された場合、つまり、輝度信号がフラットでないか、又は、輝度信号に歪みがない場合は、第1色復調回路20から出力されるRGB出力信号が信号選択器40で選択され、映像信号出力用F/F回路50を介して出力される。
【0057】
一方、選択指令回路60から選択信号”1”が出力された場合、つまり、輝度信号がフラットで、かつ、輝度信号に歪みがある場合には、第2色復調回路30から出力されるRGB出力信号が信号選択器40で選択されて、映像信号出力用F/F回路50を介して出力される。
【0058】
つまり、輝度信号がフラットであるか否か及び輝度信号に歪みがあるか否かによって、27.5MHzのクロック周波数でサンプリングされた色信号のうち、偶数番目の信号を用いて色復調を行う第1色復調回路20と偶数番目の信号を用いて色復調を行う第2色復調回路30とを切り替えて色信号の補正の補正を行う。
【0059】
(映像信号処理装置1の特徴)
以上のような、映像信号処理装置1によれば、単一色検出器64において、コンポジット映像信号がフラットであることを検出でき、また、歪み検出器66により、コンポジット映像信号の歪みの有無及び歪みが発生している位置、つまり、どのサンプリング点において歪みが発生しているかを検出することができる。
【0060】
そして、コンポジット映像信号がフラットであり、かつ、コンポジット映像信号に歪みがあれば、単一色検出器64と歪み検出器66とを内蔵した選択指令回路60から選択信号”1”が信号選択器40へ出力される。
【0061】
すると、信号選択器40は、歪みが発生している輝度信号と色信号とからRGB出力信号を生成する第1色復調回路20から歪みが発生していない輝度信号と色信号とによってRGB出力信号を生成する第2色復調回路30と入力先を切り替えて映像信号出力用F/F回路50へRGB出力信号を出力する。
【0062】
このような処理において、単一色検出器64、歪み検出器66、第1色復調回路20、第2色復調回路30は、出力映像処理周波数である13.5MHzのクロック周波数で作動している。
【0063】
したがって、図3(b)に示すように、コンポジット映像信号に歪みがあった場合には、その歪み部分を隣接データに置き替えて色信号を補正をするので、図3(a)に示すような歪みの影響を受けることなく色信号の歪みが補正される。したがって、映像信号処理装置1からは歪みのないRGB出力信号が出力される。
【0064】
また、歪みがある部分の色信号を隣接する色信号に代えるという簡単な処理で、容易に補正することができる。さらに、色信号の歪みの特性に応じて、クロック周波数を設定してサンプリングすれば、補正の精度を容易に向上させることができる。
【0065】
さらに、選択指令回路60において、歪み検出器66とは、サンプリングした点の何れかの1点において、その1点の輝度信号の値とそれを挟んで時間的に隣接する1つおきのサンプリング点である2点の輝度信号の値とが何れも等しくない場合に、その1点において輝度信号の歪みを検出したこと、つまり、その点が歪みの位置であることを検出している。
【0066】
このように、サンプリングした輝度信号を順番に処理していくことで、輝度信号の単一色の検出と歪みの有無及び位置とを検出することができるので、処理が容易になる。したがって、このような処理を電子回路で構成した場合には、回路構成が簡易になる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、映像信号処理装置1において、映像信号処理周波数13.5MHzは同じで、第1色復調回路20,第2色復調回路30、信号選択器40、選択指令回路60(以下、第1色復調回路20、第2色復調回路30、信号選択器40、選択指令回路60を第1色復調回路20等とも呼ぶ。)におけるクロック周波数を更に高くした第2実施形態について説明する。
【0068】
第1実施形態では、第1色復調回路20等のクロック周波数は13.5MHzであり、映像信号処理周波数と同じであった。これは、選択指令回路60における歪みの検出や色の単一性の検出といった処理をY/C分離回路10でサンプリングした輝度信号や色信号を1つおきに用いていたため、サンプリング周波数としては13.5MHzと等しくなるのである。
【0069】
そこで、第2実施形態では、Y/C分離回路10のクロック周波数を映像信号処理周波数13.5MHzの4倍の54MHzとし、第1色復調装置20等におけるクロック周波数を映像信号処理周波数13.5MHzの2倍である27MHzにする。
【0070】
すると、単一色の検出処理及び歪みの検出処理が各々サンプリングした輝度信号を1つおきに用いてなされても、何れも27.5MHZ、つまり映像信号処理周波数13.5MHzの2倍のクロック周波数で処理されることになる。
【0071】
つまり、一定時間の間により多くのサンプリングを行うことができるので、単一色の検出や歪みの検出がより的確に実行できる。
[その他]
なお、実施形態1及び実施形態2では、映像信号処理周波数を13.5MHzとしているが、表示画像の大きさに応じて変化させてもよい。また、第1色復調回路20等のクロック周波数も映像信号処置周波数の2倍や4倍である必要はなく、それよりも多い周波数であってもよい。
【0072】
また、Y/C分離回路10は、3ライン相関くし型フィルタを用いたがバンドパスフィルタ型とも呼ばれるトラップ型YC分離回路を用いてもよい。トラップ型YC分離回路は一般的にライン相関くし形フィルタを用いたYC分離回路よりも輝度信号を色信号との分離性能が劣るため、歪みが発生しやすいため、本発明に係るコンポジット映像信号処理装置による色信号の補正効果がより得られる。
【0073】
さらに、上記何れの実施形態においてもクロック周波数を一定の値にしているが、輝度信号や歪みの変化の遅速等の性質に応じて可変にしてもよい。すなわち、一定時間高い周波数でサンプリングを行い、輝度信号や歪みの変化が遅ければ、クロック周波数を低下させるのである。このようにすれば、映像信号処理装置1の消費電力を下げることができる。
【0074】
なお、以上説明した各実施形態において、入力バッファ5が入力手段に、Y/C分離回路10がY/C分離手段に、単一色検出器64が単一色検出手段に、歪み検出器66が歪み検出手段に各々相当し、また、第2色復調回路30、信号選択器40及び選択指令回路60が色信号補正手段に、映像信号出力用F/F回路50が出力手段に各々相当する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】映像信号処理装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】選択指令回路60の構成を示すブロック図である。
【図3】映像信号処理装置1における歪み補正の原理図である。
【図4】従来のコンポジット映像信号の処理方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
1…映像信号処理装置、5…入力バッファ、10…Y/C分離回路、11,12…1走査線遅延器、13,14,15…減算器、16…加算器、17…乗算器、20…第1色復調回路、22,24,32,34…F/F回路、26…色復調回路、30…第2色復調回路、36…色復調回路、40…信号選択器、50…映像信号出力用F/F回路、60…選択指令回路、62…ドット遅延器、64…単一色検出器、66…歪み検出器、68…AND回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジット映像信号を入力する入力手段と、
前記入力手段を介して入力されたコンポジット映像信号から輝度信号と色信号とを分離するY/C分離手段と、
前記Y/C分離手段により分離された輝度信号のレベルに基づいて、前記入力されたコンポジット映像信号が単一色であることを検出する単一色検出手段と、
前記輝度信号の歪みを検出する歪み検出手段と、
前記単一色検出手段により前記入力されたコンポジット映像信号が単一色であると検出された場合に、前記歪み検出手段により検出された前記輝度信号の歪みに基づき、前記Y/C分離手段により分離された前記色信号を補正する色信号補正手段と、
前記色信号補正手段により補正された色信号に基づき映像出力信号を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とするコンポジット映像信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンポジット映像信号処理装置において、
前記歪み検出手段は、前記輝度信号の歪みの有無と歪みの位置とを検出し、
前記色信号補正手段は、前記歪み検出手段によって前記輝度信号の歪みが検出された場合に、前記歪み検出手段で検出された位置の色信号をその位置と異なる位置の色信号に置き替えることによって色信号を補正することを特徴とするコンポジット映像信号処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンポジット映像信号処理装置において、
前記単一色検出手段は、
前記Y/C分離手段により分離された前記輝度信号を、映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数でサンプリングし、そのサンプリングした輝度信号のうち所定の数の輝度信号を比較して、それらの輝度信号の値がすべて等しいときに前記コンポジット映像信号が単一色であることを検出したとすることを特徴とするコンポジット映像信号処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のコンポジット映像信号処理装置において、
前記歪み検出手段は、
前記Y/C分離手段により分離された前記輝度信号を、映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数で所定の数の輝度信号をサンプリングし、そのサンプリングした点の何れかの1点において、その1点の輝度信号の値とそれを挟んで時間的に隣接する2点の輝度信号の値とが何れも等しくない場合に、その1点において輝度信号の歪みを検出したとすることを特徴とするコンポジット映像信号処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のコンポジット映像信号処理装置において、
前記単一色検出手段は、
前記Y/C分離手段により分離された前記輝度信号を映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数でサンプリングし、そのサンプリングした輝度信号のうち時間的に1つおきに所定の数の輝度信号を比較して、それらがすべて等しいときに前記コンポジット映像信号が単一色であることを検出し、
前記歪み検出手段は、
前記単一色検出手段によりサンプリングした輝度信号のうち、単一色検出手段により比較しなかった、時間的に1つおきの輝度信号のうち何れか1つの点において、その1点の輝度信号の値とそれを挟んで時間的に隣接する1つおきの2点の輝度信号の値とが何れも等しくない場合にその1点において輝度信号の歪みを検出したとすることを特徴とするコンポジット映像信号処理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載のコンポジット映像信号処理装置において、
前記色信号補正手段は、
前記Y/C分離手段により分離した色信号を映像出力に必要なサンプリング周波数よりも高い周波数でサンプリングし、単一色検出手段によりコンポジット映像信号が単一色であることが検出され、かつ、歪み検出手段により輝度信号に歪みが検出された場合、歪み検出手段により歪みを検出した点においてサンプリングした点の色信号に代えて時間的に隣接する何れかの色信号を用いることによって色信号を補正することを特徴とするコンポジット映像信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214987(P2007−214987A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33881(P2006−33881)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】