説明

コーティングシステム

コンクリート、コンクリート類似品、鉱物、セラミックの基材用として、少なくとも部分的に無機リン酸塩バインダーからなるバインダーと、フィラーとからなるコーティングシステムにおいて、前記フィラーは、平均粒径d50の値が300nm未満であるナノサイズ粒子からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティングシステムに関し、特に、無機燐酸バインダーをベースとしたバインダーシステムとフィラーから構成されて、煉瓦や外装のコーティングに使用されるコーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコーティングシステムに関し、例えば、従来技術である特許文献WO01/87798A2は、モノ燐酸アルミニウム(Al(H3PO43)を使用した化学結合によって製造された耐水性の化合物保護層を開示している。この製造プロセスでは、水酸化物セラミックスを準備するとともに、その水酸化物セラミックスを燐酸塩処理して、温度200°C〜1200°Cの熱処理によって硬化、焼結を行う。
【0003】
モノ燐酸アルミニウムの添加によって強化されたセラミック材料と金属材料との間の接触層の例が、特許文献WO85/05352に開示されている。温度1000°C〜1250°Cによる焼結プロセスによって硬化が行われる。
【0004】
基材によって、腐食作用に対して保護される炭素成分用の可溶性アルミニウム保護層が、特許文献DE60002364T2に開示されている。この場合、その保護層は酸化金属粒子、或いは、特にモノ燐酸アルミニウムを含有する乾燥コロイド担体の部分酸化金属を含む。セラミック層は溶融アルミニウムに接触することによって硬化する。
【0005】
また、無機溶媒中に存在する燐酸アルミニウムバインダーによって、保護層に結合されるアルカリ土類金属フッ化物の混合物が、特許文献US3775318に記載されている。対応する保護層が施された後、環境大気中にて、100°C以上の温度範囲で数時間に渡って硬化が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の従来技術において、バインダー相として使用される無機燐酸塩は、熱反応によって交差結合される。このとき、寸法安定性を持たせて保護層を硬化させるには、往々にして数時間に渡る熱処理が必要になる。
【0007】
本発明は、バインダー相に使用され、より低い温度又はより短時間に、或いはその両方を満たして硬化する無機燐酸塩バインダーに基づいたコーティングシステムを提供することを目的とする。本発明の更なる目的は、従来技術と比べて、例えば、粘着強度に優れ、耐食性に優れ、又は耐候性に優れた特性を有する保護膜の製造を可能にし、バインダー相に使用される無機燐酸塩バインダーをベースにしたコーティングシステムを提供することである。上記目的は、請求項1記載の特徴を有するコーティングシステムによって実現される。本発明の最良の実施形態とその付加的形態は従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、少なくとも部分的に燐酸塩のバインダーと、フィラーとによって構成される。この場合、本発明に係わるバインダーは、顔料またはフィラーを含まないコーティング材の不揮発性部分であって、既存の柔軟剤と乾燥剤と他の不揮発性助剤を含むものである。このバインダーはフィラーと顔料粒子とをそれぞれ結合させるとともに、基礎部(基材)とも結合させる。
【0009】
本発明において、「コーティングシステム」という用語は、コーティング(用途に対する処方)の製造のスタート剤と、硬化層から構成される。すなわち、本発明のコーティングシステムは、対応する層の製造に適する水性または粉末状の材料と、その材料が塗布されて硬化した後の対応する層から構成される。
【0010】
本発明において、フィラーは、例えば容積を増加させる(コスト削減)ため、保護層の技術的効果と特性を向上させるため又はプロセス上の特性に影響を与えさせるため、或いはその両方を行わせるために使用される、実質的には塗布媒体に不溶の物質(大半が粉末状)である。本発明によれば、フィラーは少なくとも部分的に、300nm以下の平均粒径d50のナノサイズ粒子から構成されている。
【0011】
本発明の発明者は、ナノサイズ粒子を加えることによって、燐酸塩のバインダー相の硬化が実質的に加速されることを発見した。このように、室温であっても硬化するコーティングシステムが提供できる。
【0012】
好ましくは、平均粒径d50のナノサイズ粒子のサイズは250nm以下である。更に好ましくは、平均粒径d50のナノサイズ粒子のサイズ範囲は200nm未満である。特に好ましい結果は、平均粒径d50のナノサイズ粒子のサイズ範囲が100nm未満の場合に得ることができる。非常に良好な結果は、平均粒径d50のナノサイズ粒子のサイズ範囲が60nm未満の場合に得ることができ、最適な結果は、20nm未満の範囲のナノサイズ粒子が使用される場合に得ることができる。
【0013】
関連技術において、粒子サイズを特徴付けるために通常使用されるd50の特性値は、確率論によって定義され、それによると、計測された粒子の50%は対応する計測値よりも小さいことになる。これは、様々な粒子サイズの分散系における粒子のサイズ分布の一般統計的記述に基づくものである。以下は、その参考文献。「Practice Guide Particle Size Characterization」、A.Jillavenkatesa、S.J.Dapkunas、Lin−Sein H.Lum、National Institute of Standards and Technology、Special Publication 960−1、2001年1月、129〜133頁。
【0014】
実際には、様々な方法、とりわけISO13320−1、Edition1999−11に基づくレーザ回折や、DIN ISO13321、Edition2004−10の光子相関分光法による粒子サイズ分析や、ISO14887、Edition2000−09による液体中の粉体の分散法を使用した粒子サイズ分析や、BS ISO14887、Edition2001−03−15による液体中の粉体の分散法を使用した粒子サイズ分析によって、d50の値を測定することが可能である。対応する方法の標準化によって、異なる方法を使用しても同じ測定値を得ることができる。
【0015】
この様に選択したナノサイズ粒子を添加することによって、燐酸塩のバインダーをベースにした本発明に係わるバインダーシステムは、30秒〜60分の乾燥時間で乾燥した粉塵状になり、室温による乾燥時間8時間以下で硬化が終了する。通常、ナノサイズ粒子を添加すると、不要な凝結プロセスの熱活性化が生じてしまう。確認はしていないが、ナノサイズ粒子の表面特異性は燐酸塩の凝結反応を起こしやすく、ひいては、それに触媒作用を及ぼしてしまうこともある。
【0016】
この点に関して、本発明の発明者は、最小限のナノサイズ粒子の添加であれば、組成に重大な影響を与えず、固相ベースで0.2〜0.5重量パーセントの低いナノサイズ粒子成分を有する組成の場合であっても発明の効果を得ることができることを発見した。
【0017】
本発明によれば、燐酸塩のバインダーは、アルカリ金属ポリ燐酸塩、アルカリ金属燐酸塩ポリマー、ケイ燐酸塩、モノ燐酸アルミニウム、燐酸ホウ素、マグネシウムナトリウムリン酸塩、アルカリ金属ケイ燐酸塩、燐酸塩ガラス、燐酸亜鉛、燐酸マグネシウム、燐酸カルシウム、燐酸チタン、燐酸クロム、燐酸鉄、燐酸マンガンのうち、少なくとも1つの燐酸塩からなる。
【0018】
バインダーに関しては、90%のモノ燐酸アルミニウムが特に良好な効果を上げるため、それを使用することが好ましい。また、モノ燐酸アルミニウム(MAP)50〜60%の水溶液を使用すると有利である。
【0019】
ナノサイズ粒子としては、アルミニウム、チタニウム、亜鉛、錫、ジルコニウム、シリコン、セリウム、マグネシウムからなるグループの中の酸化物、または水酸化物、或いはその両方の化合物、又はそれらの混合物を使用することが望ましい。
【0020】
更に、ナノサイズ粒子は、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、又はこれらに対応する窒化物からなるグループの中の1つ又は複数物の化合物であってもよい。
【0021】
最適化を図るために、バインダーシステムは酸によって保護された安定化シリカゾル、アルミニウムゾル、ジルコニウムゾル、二酸化チタンゾル、ビスマスゾル、酸化錫ゾルのいずれかのゾルが補助的に添加された水溶液の形態であってもよい。
【0022】
しかし、使用するナノサイズ粒子の種類と組合せは、上記の化合物に限定されるものではなく、ゾルゲル法などの通常の方法によって製造された、当業者に既知の他のナノサイズ粒子を使用することもできる。
【0023】
その他の使用されるフィラーの組合せは、所望する用途に依存し、既に確立されたものがある。ナノサイズ粒子以外の添加する固形材料は、例えば、水晶、クリストバライト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタンの1つ以上の酸化物からなるものであってもよい。これらの化合物のd50の値が500nm〜500(mの範囲、好適には500nm〜10(mの範囲であれば良好な結果を得ることができる。
【0024】
着色剤、顔料、ダスティング相などの好適なフィラーを添加することによって、本発明に係わるコーティングシステムは広い範囲で機能する。機能フィラー(効果的材料)の更なる例として、光触媒活性で、疎水性または疎油性または放射によって表面の微生物汚染を抑制する特性、或いはこれらの複数の特性を有するフィラーを使用することもできる。また、これらのフィラーは断熱性または防音性、或いは両方の特性を有するものでも良い。
【0025】
上記以外に、非酸化化合物もフィラーとして使用できる。例えば、炭化珪素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステン、これらの混合炭化物などがある。非酸化物の好ましいd50の値は、700nm〜60μmの範囲である。非酸化物フィラーでd50の値が1μm〜12μmの範囲のもので、特によい結果を得ることができる。
【0026】
この他に、ナノサイズ粒子以外として、例えば、粘土、カオリン、ローム土のグループのシリカ質原料で、d50の値が70μm未満のものもフィラーとして使用できる。特に、d50の値が4μm〜45μmの範囲のシリカ質原料を使用すると、良好な結果を得ることができる。他のガラス系やガラス質材料または金属、或いはそのいずれも使用しても良い。
【0027】
ほとんどの場合、ナノサイズ粒子はバインダマトリックス中に均一に分散した状態になっている。コストの関係で、追加するフィラーの表面部分のナノサイズ粒子の濃度を上げることによって、バインダマトリックス中にナノサイズ粒子を不均一に分散させることも一考に値する。バインダー相が追加される前に、例えば、他のフィラーをナノサイズ粒子で指向性コーティングすることによって実現できる。その過程で、ナノサイズ粒子は化学結合や他の物理的結合によって他のフィラーの表面に付着する。例えば、乳酸によってナノサイズ粒子とフィラーの表面に化学結合を起こさせることができる。
【0028】
本発明のコーティングシステムの水溶性組成物の水成分は、好適には15〜35重量パーセントの範囲である。水の成分比が高すぎると、反応のバランスを変化させて所望する反応が得られないこともある。水の成分比が低すぎると、反応が早く起こりすぎ、相応して可使期間が短くなってしまう。
【発明の効果】
【0029】
用途に応じて適用される本発明の組成は、硬化の促進に加えて、凍結融解サイクル安定性、化学安定性、粘着強度、耐候安定性に関して効果をあげることができる。
【0030】
更に、本発明に係わるコーティングシステムは、従来の組成と比べると、例えば、水蒸気や腐食性化合物に対する拡散バリア(防食)として、明らかに優れた効果を提供する保護層の製造を可能にする。この理由によって、硬化構造の反応速度のみならず燐酸塩のバインダー相をベースにした最終的な層の微細構造を、本発明に基づくナノサイズ粒子を添加することによって実質的に向上させることが出来る。
【0031】
本発明のコーティングシステムは、大幅に向上された粘着性によって、コンクリートと鉱物性基材それぞれに対して優れた効果を発揮する。用途にもよるが、この効果は、ナノサイズ粒子と燐酸塩のバインダーとの相互作用がカルシウム・シリケート水和物(CSH)のような基材成分と組み合わさったお陰である。その結果としての保護層は、既知のシステムに比して、粘着強度と耐候性が大幅に向上したものになる。
【0032】
基本的に、本発明のコーティングシステムは、どのような基体(基材)にも適しているが、特に、コンクリート、コンクリート類似品、鉱物、セラミックの基材のコーティングとして適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明に係わるコーティングシステムの好ましい形態と変形例を、図面を参照して以下に説明する。
【0034】
図1は、第1の実施形態の組成で使用される粒子サイズと固形化の相関を示す図である。
【0035】
実施形態の全てケースにおいて、本発明のコーティングシステムはコンクリートに塗布される。この塗布はスプレー(ノズル径0.8mm、圧力1.8バール)で行うのが好ましい。乾燥後の層厚は40〜60μmに設定されるが、その幅を広げてもよい。また、その他の塗布方法として、刷毛延ばし法、ローラコート法、スピンコート法、フラッディング法、ディッピング法、ベル塗装法で同様に行うこともできる。
【0036】
第1の実施形態は、以下の組成(重量パーセント)を有している。
30.0%: モノ燐酸アルミニウム
1.6%: 酢酸アンモニウム
15.0%: シリカゾル(8〜10nm)
3.4%: 酢酸リチウム
15.0%: 酸化アルミニウム(15nm)
20.0%: ドロマイト
10.0%: 硫酸バリウム
5.0%: 硫酸チタニル
【0037】
上記組成で、d50の値が8〜10nmのシリカゾルと、d50の値が15nmの酸化アルミニウムがナノサイズ粒子として混合されている。
【0038】
上記の酸組成は可使期間が長く(6ヶ月以上)、産業分野で非常に良好な成果をあげることができる。塗布後、乾燥した粉塵状になる時間は10〜60秒である。また、乾燥後の層は、DIN EN ISO10545のパート7に基づくPEIが4の摩耗安定性を示す。
【0039】
本実施形態では、ISO16151に基づく耐食性テストを300サイクル以上行った。
【0040】
図1に、固形化がパーセントで示され、100%の固形化とは塗装されたペンキやラッカーが液状から固体状態に完全に遷移した特性を表す。Lackformulierungen und Lackrezeptur、 B.Muller、 U.Poth、Vincentz−Verlag、2003、23頁参照。図によると、ナノサイズ粒子のサイズがd50の値で350〜1000nmの範囲における最高固形化は20%であり、非常に低い状態である。
【0041】
粒径のサイズが350nm未満に下がると、固形化の程度は、粒子サイズの減少とともに大きく上昇する。粒径のサイズが300nmでは、固形化は50%の数値に達し、200nmでは、25%増えて75%となる。固形化の数値80%、85%、90%は粒径のサイズがそれぞれ160nm、100nm、50nmのときに達成される。コーティングの完全な固形化である100%は、粒子のサイズが15nmのときに達成される。図1に示す固形化の数値は、8時間の定常時間経過後に測定されたものである。
【0042】
本実施形態に示されるように、特にナノサイズの酸化アルミニウムをモノ燐酸アルミニウムと組み合わせてバインダー相として使用する。その場合、任意のコーティング組成で同じ組成の場合、ナノサイズの材料が無いときには有る時の特性値を得ることができないため、特に効果がある。
【0043】
第2の実施形態は、以下の組成(重量パーセント)を有している。
25.0%: リチウム水ガラス
10.0%: モノエタノールアミン
22.0%: 基本的に安定化しているMAP(モノ燐酸アルミニウム)
10.0%: 酢酸
28.0%: n−SiO2
5.0%: 燐酸亜鉛
【0044】
この組成において、非晶質SiO2がナノサイズの材料として使用されており、そのd50の値は8nmである。この基本的組成によって、孔の径が小さいため、ガスや水蒸気は通すが液体(例えば水滴)は通さない、やや多孔質の層(約6%の多孔率)が形成される。
【0045】
表1は、第3の実施形態を示し、互いにナノサイズの材料の量が違う5つの異なる組成を示す。具体的には、0.5〜15.02重量パーセントの量のナノサイズの酸化アルミニウム(d50の値が12nm)が使用される。その他のフィラーとして、タルカム、ベントナイトカルシウム、ホウ酸アルミニウム、ブラックスピネル、SiC、マイカが追加フィラーとして添加されるが、これらはナノサイズの材料ではない。これらのフィラーの粒子サイズは、タルカムが12μm(d50)、ベントナイトカルシウムが5μm(d50)、ホウ酸アルミニウムが30μm(d50)、ブラックスピネルが4〜10μm、SiCが10μm(d50)である。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示す本発明の組成番号1〜組成番号5において、ナノサイズ粒子の量に依存するGT/TTの特性値と、固形化率はそれぞれ表2と表3に示されている。比較例は、これらの組成に対応する組成であってナノサイズの粒子を含まないものであり、N−Al23の代わりにd50の値が10μmを有する酸化アルミニウムが使用される。
【0048】
碁盤目試験(GT特性値)はDIN53151規格に基づいて判定される。GT=0は、コーティングのマス目に欠けがない完全にスムーズなマス目を表し、GT=1は、マス目の交差部分でコーティングに僅かな裂け目が有り、その裂け目のある表面は全マス目の約5%に相当する。GT=2は、マス目に沿ってかなりの量のコーティングが欠け落ちているか、または全マス目表面の約15%に相当するマス目が欠け落ちているか、或いはその両方である。GT=3は、マス目に沿ってコーティングが欠け落ち、かつ全表面の約33%に相当するマス目表面が欠け落ちていることを示す。
【0049】
いわゆる「テープテスト」では、粘着テープを、マス目を覆うように貼付し、それを引っ張り剥がす。TT=0の評価結果は、コーティングに剥がれが無い状態に相当する。TT=1は、マス目に沿って僅かに剥がれが有り、TT=9では、仮に被試験試料がGTテストを欠け落ちが無い状態でパスしていても、ここでは完全に剥がれる状態をいう。
【0050】
表2に示すGT/TT特性値は、ナノサイズの粒子を0.5%添加すれば、GT特性値が4から1に、同様にTT特性値が7から2に大幅に向上することを証明している。いずれの場合も、コーティングの剥がれやすさが明らかに低くなっている。組成番号1から得られるGT=1、TT=2の特性値は、対応する層への現実的な適用に向いている。
【0051】
【表2】

【0052】
表3に示す、ナノサイズの粒子の量に依存する固形化率も、ナノサイズ粒子としてのAl23を5重量パーセント添加すると、固形化率100%に必要な室温での定常時間を、24時間以上から16時間に33%低くすることができる、ナノサイズ材料の量を増加させると、必要な固形化時間は更に減少する。ナノサイズ粒子を15.02重量パーセント含ませると、固形化を僅か1〜2時間で行うことが可能になる。
【0053】
【表3】

【0054】
表1〜表3に示す結果から、0.5重量パーセント程度のナノサイズ粒子の僅かな比率で、第3の実施形態で新たに分かる保護層の粘着強度の改善が得られることが分かる。
【0055】
また、更なる実験によると、大半の用途において0.1〜0.2重量パーセントの量で粘着強度を上げることが可能になる。
【0056】
これらの結果から、ナノサイズ粒子を添加すると、硬化が実質的に向上することのみならず、更に粘着強度が明らかに向上するコーティングを本発明は提供することになる。
【0057】
本発明は上記の組成に限定されず、燐酸塩の凝固を熱によって活性化させる必要性を無くし、交差結合を大幅に短い時間で行わせるように、燐酸塩のバインダー相をナノサイズ粒子と組み合わせて利用する如何なる構成であってもよい。また、ナノサイズ粒子を添加することによって、保護層の微細構造が変化し、粘着強度、耐食性、化学安定性、耐凍性、紫外線安定性において明らかな向上が図れる。
【0058】
表4の例は、第2の実施形態の組成と、ナノサイズ粒子を含まない平均粒子サイズ5μmのSiO2を有する比較例に対して、DIN52104規格による凍結融解サイクル安定性と、DIN EN ISO10545規格による化学安定性、DIN EN ISO10545による耐凍性、紫外線安定性、DIN53151規格の碁盤目/テープ試験による粘着強度の比較結果を示すものである。
【0059】
【表4】

*印は碁盤目/テープ試験
【産業上の利用可能性】
【0060】
得られた結果は、ナノサイズ粒子を添加すると、凍結融解サイクル安定性、化学安定性、耐凍性、紫外線安定性の向上が図れることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態の組成で使用される粒子サイズと固形化の相関を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート、コンクリート類似品、鉱物、セラミックの基材用として、少なくとも部分的に無機リン酸塩バインダーからなるバインダーと、フィラーとからなるコーティングシステムにおいて、
前記フィラーは、平均粒径d50の値が300nm未満であるナノサイズ粒子からなることを特徴とするコーティングシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子の平均粒径d50の値が100nm未満であることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコーティングシステムにおいて、
前記リン酸塩バインダーは、アルカリ金属ポリ燐酸塩、アルカリ金属燐酸塩ポリマー、ケイ燐酸塩、モノ燐酸アルミニウム、燐酸ホウ素、マグネシウムナトリウムリン酸塩、アルカリ金属ケイ燐酸塩、燐酸塩ガラス、燐酸亜鉛、燐酸マグネシウム、燐酸カルシウム、燐酸チタン、燐酸クロム、燐酸鉄、燐酸マンガンからなるグループの中の少なくとも1つの燐酸塩からなることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記リン酸塩バインダーは、実質的に、燐酸アルミニウムからなることを特徴とする。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子は、アルミニウム、チタニウム、亜鉛、錫、ジルコニウム、シリコン、セリウム、マグネシウムからなるグループの中の少なくとも1つの物質の酸化物または水酸化物、或いはその両方の化合物からなることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子は、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステンからなるグループの中の少なくとも1つの化合物からなることを特徴とする。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子は、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タングステンの中の少なくとも1つの化合物からことを特徴とする。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記バインダーであって、無機質系のバインダーは、90重量パーセントを超えるモノ燐酸アルミニウムからなることを特徴とする。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記バインダーであって、有機質系のバインダーは、実質的に、モノ燐酸アルミニウム(MAP)50〜60%の水溶液からなることを特徴とする。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記コーティングシステムは、水溶液からなり、更に、酸によって保護された安定化シリカゾル、アルミニウムゾル、ジルコニウムゾル、二酸化チタンゾル、ビスマスゾル、酸化錫ゾルからなるグループの中の少なくとも1つゾルを含むことを特徴とする。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記フィラーは、前記ナノサイズ粒子以外の追加固形材料として、d50の値が500nm〜500μmの範囲の、水晶、クリストバライト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタンからなるグループの中の少なくとも1つの酸化物から成ることを特徴とする。
【請求項12】
請求項11に記載のコーティングシステムにおいて、
前記酸化物のd50の値は、500nm〜10μmであることを特徴とする。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記フィラーは、前記ナノサイズ粒子以外の追加固形材料として、d50の値が500nm〜60μmの範囲の、炭化珪素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステン、これらの混合炭化物またはこれらの混合窒化物或いはこれらの窒化炭化物からなるグループの中の少なくとも1つの非酸化物からなることを特徴とする。
【請求項14】
請求項12に記載のコーティングシステムにおいて、
前記非酸化物のd50の値は、500nm〜12μmであることを特徴とする。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記フィラーは、前記ナノサイズ粒子以外の構成材料として、d50の値が70μm未満の、粘土、カオリン、ローム土からなるグループの中の少なくとも1つのシリカ質原料を含むことを特徴とする。
【請求項16】
請求項15に記載のコーティングシステムにおいて、
前記シリカ質原料のd50の値は、8μm〜45μmであることを特徴とする。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子は、バインダマトリックス中に均一に分散していることを特徴とする。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子は、バインダマトリックス中に不均一に分散し、前記ナノサイズ粒子の濃度が、他のフィラーの表面部分において高いことを特徴とする。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
前記ナノサイズ粒子は、他のフィラーの表面に化学力または物理力或いはその両方の力によって付着することを特徴とする。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19のいずれかに記載のコーティングシステムにおいて、
塗布前の前記コーティングシステムの含水量は、45重量パーセント未満であることを特徴とする。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526658(P2008−526658A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548836(P2007−548836)
【出願日】平成18年1月2日(2006.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000006
【国際公開番号】WO2006/070021
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507214485)バイキング アドバンスト マテリアルス ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】VIKING ADVANCED MATERIALSGMBH
【住所又は居所原語表記】Universitatsklinik, Geb. 7, 66421 Homburg/Saar,Germany
【Fターム(参考)】