説明

コーティングステーションの振動を減衰する方法及び装置

【課題】 抄紙機若しくは板紙抄紙機又はそれらの後処理装置のビーム構造の振動を減衰する方法の提供。
【解決手段】 抄紙機若しくは板紙抄紙機又はそれらの後処理装置の静的ビーム構造(1)の振動を減衰する方法では、ビーム(1)はマスダンパ(3)が設けられる。マスダンパ及びビームにより形成される系の状態は、ビーム(1)の共振を表す量が測定されるように調整され、ダンパ(3)におけるマス(5)の位置が最適な減衰が少なくとも1つのインパルスに対して生成されるように変化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機若しくは板紙抄紙機又はそれらの後処理装置の静的ビーム構造におけるビーム構造の振動を減衰する方法に関する。
【0002】
本発明は、また、本方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
紙及び板紙の生産において、コーティング層は、基板材料の表面上に付与される。異なる態様で働く多数のコーティング装置が存在し、それらは、それぞれの特徴及び制限を有し、これに従って、最も適切な処理方法が異なる用途に対して選択される。コーティング方法は、ざっと表面グルーイングとコーティングに分けられる。表面グルーイングでは、基板材料の強度は、材料の繊維マトリックス内へとプレスされることができ若しくは紙又は板紙の表面上に単に含浸されることができるスターチ含有の処理剤を基板材料に含浸させることにより増加される。表面グルーイングでは、平滑化、即ちかき取りは、塗布後に通常使用されない。他方、コーティングの目的は、特に印刷能力である表面の特性を改善するために基板材料を被覆する表面層を形成することである。固体及びプラスティックのような種々のポリマー混合物を含む顔料コーティングは、コーティング混合物の例といえる。平滑なコーティング面を生成するのが望ましい場合、塗布されたコーティング混合物は、ドクタブレード若しくはロッドかき取り具(scraper)により平滑にかき取られその厚さが一定にされる。
【0004】
基板材料の表面に残る層の厚さは、小さく、ウェブの全てのポイントにおいてできるだけ均一であるべきであるので、かき取り具のかき取りエッジとカウンタロールにより支持される基板ウェブの間の距離は、設定位置にて正確に留まること重要である。現代のコーティング機は極めて広幅であるので、かき取りブレード若しくはロッドの位置を制御することは挑戦に値する。1つ考えられる誤差の原因は、コーティングステーションの基盤を介してコータに導かれる振動である。工場のホールは、多くのインパルス源を含む。これは、現代の抄紙機及び板紙抄紙機は、例えば抄紙機の乾燥部やカレンダにおいて大量の回転する大質量のロールを含むためである。生産速度も高く、インパルスの周波数の増加に寄与し、これにより、インパルスの周波数が従前よりも頻繁に種々の装置の公称周波数と一致して、例えばかき取り具のブレードビームにおけるカウンタロールとブレードの間の距離のずれを引き起こす共振を起こし、コーティングの不均一を生む。
【0005】
振動により生ずる問題を低減する第1の解決策は、当然ながら、可動中の共振周波数を避けること及びインパルスをもたらす構成部品を正確に平衡させることである。コーティングステーションの近傍の振動の衝撃は、振動源のロールの径を、それらの回転周波数がコーティングステーションの有害な公称周波数と一致しないように、選択することによって低減することができる。振動の伝達性は、適切な位置で機械のビームを切断することによって避けることができる。振動の伝播を阻止し若しくは振動をアクティブに減衰し且つ公称周波数を変化させる種々のアクティブ及びパッシブダンパの使用は、走行速度及びマシーン幅が増加し生産品質の要求が厳しくなるにつれて増加している。これらの行動は、振動源として機能する機械及び装置にターゲットを置く。種々のダンパ解決策が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/084955
【特許文献2】DE40 06 744
【特許文献3】US2004/0212132
【特許文献4】US2004/0261333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
正確な平衡化を行い、大径のロールを使用し、機械のビームを切断することは、回避が望ましいコストを生ずる。
【0008】
本発明の目的は、紙及び板紙産業の、特にコーティングステーションの静的ビーム構造において振動外乱を低減することができる方法及び装置を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、多数の周波数に生ずるインパルスを低減することを可能とする方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、また、マスダンパは、減衰されるべきビームに取り付けられ、ビームの位置が移動可能であり、マスの位置が少なくとも1つのインパルス周波数に従うために移動されるという事実に基づく。
【0011】
一実施例によれば、マスダンパは、多数のインパルス周波数の範囲内で機能するように寸法化される。
【0012】
一実施例によれば、ダンパの可動マスの位置は、少なくとも1つのインパルス周波数に基づいて最適位置へと位置づけられる。
【0013】
より詳細には、本発明による構成及び方法は、独立形式の特許クレームの特徴部に開示されるものにより特徴付けられる。
【0014】
本発明の好ましい実施例は、従属クレームにより詳細に定義される。
【0015】
顕著な効果が本発明により達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、振動の問題が少なくとも従来技術よりも大きな度合いで無視できるので、コーティングステーション及びロールシステムの設計が従前よりも自由となる。機械のビームを切断することや過大なロールを使用するような、高価な解決策を回避することができる。マスダンパのマスは、ダンパが最適な周波数に一定に調整されるので適正なままであることができ、これにより、その減衰能力が最も良好である。本発明は、振動の無いコーティングステーションを設計することを可能とし、振動により生ずる品質問題が低減される。本発明は、振動の共振スパイクの効果的な削除を可能とする。ダンパは、多数のインパルス周波数に関して機能することができ、そのマスの位置は、ビームの振動レベルが可能な限り低くなるように計算することによって最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による一の構成を示す図。
【図2】本発明による構成の動作原理の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明が詳細に開示される。
【0019】
パッシブマスダンパは、長年、振動の減衰のために使用されてきた。ダイナミックマスダンパでは、共振時に振動する補助系(ここでは、可動マスに基づくダンパ)は、取り付けポイントにおいて構造(一次系、ここではビーム)の振動に対抗する力を生ずる。
【0020】
通常、マスダンパは、一定周波数の連続的な振動を減衰するように調整される。マスダンパは、また、広帯域の振動を減衰し、例えば過渡インパルスの場合、自由振動の減衰を強化する。しかしながら、マスダンパは、過渡の“初期スパイク”を減衰しない。効率的な減衰は、比較的大きい補助マス若しくは正確な機械的な調整(小さい減衰係数)を必要とする。固定的に取り付けられたマスダンパ若しくは手動で調整可能なマスダンパであっても、特に構造のホールの環境下で、共振周波数への正確な手動の調整は困難である。これは、インパルス周波数は、一定に変化しまた生産機械の状態が変化するのに応じて可変するためである。最も重要な変数は、インパルスの周波数を決める走行速度である。
【0021】
最適に寸法化されたマスダンパでさえ常に十分良好には働かず、補助マスが比較的非常に小さい特に大きな構造下では、十分良好には働かない。従って、機械的な調整における小さい変動でさえもダンパの性能に顕著な低減を引き起こすので、正確な周波数に補助マスを調整することは現実的には非常に困難である。
【0022】
ブレードビーム1の一部が図1に示される。ブレードビームに取り付けられるボス2は、シャフトに取り付くマス5及び振動体のスプリング部分を形成するシャフト4を含むマスダンパ3を備える。本発明によれば、マスは、シャフトにより支持されて移動されることができ、この移動は、本発明マスを移動させる油圧若しくは空気圧シリンダにより、ネジバー及び電気モータ若しくはボールネジ駆動により、実現されることができる。例えば、円筒形アクチュエータを使用するとき、シリンダのピストンのロッドは、マスダンパ3のシャフト4を形成でき、シリンダ部分は、シャフトにより支持される可動マスを形成することができる。ダンパは、追加の重りにより調整されることができる。アクチュエータは、シャフトにより支持される別のマスを移動するように構成されてもよい。ダンパは、ブレードビームや振動を受けやすい他のビーム上に、例えばコーティングステーションの中間ビームに、原理上どこでも配置されることができる。しかし、ビームのシャフトは、中央で最も大きいので、ダンパをビームの中央若しくはその近傍に配置することが望ましく、これにより、それは最も効率的となる。
【0023】
実際、8−25Hzの範囲は、振動インパルス及び電子ビームの共振周波数に関して問題となる周波数範囲であることが分かっている。従って、ダンパは、この範囲で機能すべきである。ダンパを制御するため、周波数/位相−応答曲線が生産中に実際に測定され若しくは数学的に算出され、ダンパは、この曲線に基づいて制御される。従って、目的は、減衰を応答曲線に従わせることである。応答曲線及び測定値は、ダンパの可動マスを最適な減衰の位置に制御する調整システムを測定し構築することを可能とする。従って、マスは、測定量に基づいて作動中に連続的に若しくは周期的に移動される。即ち、ダンパは、作動中にインパルス状態に応じて連続的に調整される。
【0024】
図2は、可動ダンパの動作原理を明瞭化する。連続線の曲線で示される曲線は、インパルス周波数と公称周波数を関数として振動の振幅(静的なシャフトへの動的な移動の関係)を示す。周波数間の1の関係では、共振が形成され、動的な移動が強く増加することが知られており、これは、図中の明確なスパイクで見ることができる。ダイナミックダンパが正確にこの周波数に調整される場合、振動レベルは、略ゼロに低減することができる(破線)。ここで、しかしながら、問題は、ダンパを正確に共振位置に調整することが困難であり、工場の条件下では略不可能である。これは、インパルス周波数が変化し、多数存在するためである。図2から分かるように、元の共振位置に非常に近い対称の側方の共振位置は、元の共振位置の両側に形成される。これらの側方の共振は、極めて強く、ある場合には、実際の共振と略同様の大きさとなる。ダンパが十分正確に調整されていない場合、側方の共振を形成する危険がある。これは、ダンパのマスを増加し且つダンパへの内部減衰を形成することによって回避することができる。これにより、共振はメインの共振から遠くへ離れ、低くなるが、同時に、メインの共振での減衰も低減される。従って、最も良好な減衰結果を達成するために、ダンパは、正しい周波数に対して正確に寸法化されるべきであり、その内部減衰はできるだけ小さくあるべきである。しかし、かかるダンパの動作範囲は極めて狭く、これにより、固定的に調整されるマスダンパは、工場及び生産条件におけるダンパの動作範囲内にはほとんど無いであろう。本発明によれば、これは、ダンパのマスの位置を変化させることによって解決され、これにより、ダンパは、その最適な減衰位置に連続的に調整される。従って、ダンパは、ある周波数に対して非常に感度が高くなるように形成することができ、その減衰効率が良好である。これは、ダンパが最適な周波数範囲で常に動作するためである。
【0025】
マスを最適な位置に移動させることによってダンパを調整することができるようにするために、系の状態に関する測定データが必要とされる。最も必然的には、このデータは、減衰されるべきビームの移動状態を直接測定することによって得られうるが、例えばビームの移動の振幅の、直接的な測定は困難である。インパルス周波数に従うようにマスダンパを設定することによってダンパを制御することがより容易である。実際、インパルスは、ワイヤガイドロール、紙ガイドロール若しくは他の知られたロール若しくは回転手段により生成される。マスの位置を調整することにより図2に示すような最適位置にダンパを維持することによって、インパルスにより生ずる共振状態は、静的なビームのような構成において略全体的に無くすことができる。可動のマスダンパは、その実効範囲が多数の不都合な共振をカバーするように設計されることができ、これにより、多数のダンパに代えて1つのマスダンパでうまく処理することが可能となる。これにより、全てのインパルスに関する最適な減衰が算出される。これは、2つ以上のインパルスを処理することを可能とする。しかしながら、可動マスを備える多数のダンパを使用することを除外することはない。しかし、単一のダンパのマスを増加し若しくはダンパの数を増加するとき、ダンパ(複数も含む)がビームに応力を与え、曲げの原因となることを留意すべきである。従って、マスは可能な限り小さく維持することが効果的であろう。
ビームの移動状態及びインパルス周波数を測定することに代えて、ビームの振動により生ずる加速度のような、系の共振を指示するその他の量を測定することも可能である。
【0026】
しばしば、不都合なインパルス周波数は、比較的狭い走行速度範囲で生ずる。従って、使用される走行速度の5%の範囲は、しばしば、ダンパの動作範囲として十分である。動作範囲が走行速度範囲の20%である場合、略確実に、全ての不都合なインパルス周波数の範囲で動作することが可能であるだろう。
【0027】
共振に関連する量を測定し、測定データを処理し、マスの位置を制御するために、システムは、必要なセンサと、計算、調整及び保存用のデータ処理システムを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機若しくは板紙抄紙機又はそれらの後処理装置の静的ビーム構造(1)におけるビーム構造の振動を減衰する方法であって、マスダンパ(3)がビーム(1)に取り付けられ、ダンパにおけるマスの位置が励振インパルスに応じて変化する、方法において、
ビーム(1)の振動周波数を表す量が測定され、
ダンパ(3)におけるマス(5)の位置が、最適な減衰が少なくとも1つのインパルスに対して生成されるように変化されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
マスの位置は、最適な減衰が少なくとも2つのインパルスに対して生成されるように算出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共振を表す量は、励振周波数であり、少なくとも1つの励振周波数が測定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
共振を表す量は、ビームの移動状態であり、変位若しくは加速度のような移動状態が測定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのマスダンパ(3)は、ビームの中央領域内に位置する、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抄紙機若しくは板紙抄紙機又はそれらの後処理装置の静的ビーム構造(1)におけるビーム構造の振動を減衰する装置であって、
ビーム(1)と、
ビーム上に配設され、ダンパが可動のマスを備える少なくとも1つのマスダンパとを含み、
マスダンパのマス(3)を移動させる手段と、
共振を表す量を測定する手段と、
測定データに基づいてマスの位置を調整するデータ処理システムとを特徴とする、装置。
【請求項7】
少なくとも1つのマスダンパは、ビームの中央領域内に位置する、請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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