説明

コーティング組成物

【課題】耐擦傷性、防汚性及び耐アルカリ性に優れた低屈折率層を形成するためのコーティング組成物を提供する。
【解決手段】中空シリカ微粒子20〜50重量部、炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマー5〜40重量部、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマー5〜40重量部、及び(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー30〜70重量部を含有するコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング組成物に関するものである。さらに詳細には、本発明は液晶表示装置等の表示画面の反射を防止するために適用されるコーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置等の表示装置は外部からの光が入射する環境に置かれる。入射した光は表示画面で反射する。その反射像が表示画像と混ざり視認性を低下させる。そのために、上記のような表示装置の表示画面には反射防止機能が通常付与されている。
【0003】
反射防止機能を付与するものとして、透明プラスティックからなるフィルム基材の表面に、ハードコート層を介して金属酸化物等からなる高屈折率層と低屈折率層との積層構造を有する反射防止層を形成したもの;透明プラスティックからなるフィルム基材の表面に、珪素酸化物や有機フッ素化合物等の低屈折率層からなる単層の反射防止層を形成したものが挙げられる。また透明プラスティックからなるフィルム基材の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凸凹状の表面で外光を乱反射させることにより、反射防止効果と同様の効果を得られるものが知られている。
【0004】
さらに、汚れ防止機能を付与するために、該低屈折率層の上に防汚層を形成することが知られている。また、低屈折率層にフッ素樹脂等を含有させ、低屈折率層に防汚性を付与することが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、反射防止層の最上層に撥水・撥油性を有する防汚層を形成することが記載されている。高い撥水性と撥油性とを示す好ましい形成材料として、フルオロカーボンやパーフルオロシランなどのフッ素含有有機高分子化合物が挙げられている。
また、特許文献2には、パーフルオロ基、アルキル基、トリメチルシリル基、ジメチルシリレン基、フェニル基、ポリジメチルシロキサンセグメント等を含む疎水性化合物をシリカ微粒子表面に結合させ、該シリカ微粒子を低屈折率層に含有させることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−258405号公報
【特許文献2】特開2006−106507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1や特許文献2に記載されているコーティング組成物で形成される低屈折率層は、摩擦によって傷が付きやすく、またアルカリ性洗剤等によってシミが生じる(耐アルカリ性が低い)ことがわかった。
本発明の目的は、耐擦傷性、防汚性及び耐アルカリ性に優れた低屈折率層を形成するためのコーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部、炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマー10〜60重量部、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマー15〜60重量部、中空シリカ微粒子80〜330重量部及び光重合開始剤1〜10重量部を含有する組成物を、透明プラスティックからなるフィルム基材の表面に、塗布し、硬化させると、耐擦傷性、防汚性及び耐アルカリ性に優れた低屈折率層が形成され、フィルム基材表面に反射防止機能を付与できることを見いだした。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を進め、完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のものを含むものである。
〔1〕 (メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部、炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマー10〜60重量部、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマー15〜60重量部、中空シリカ微粒子80〜330重量部及び光重合開始剤1〜10重量部を含有するコーティング組成物。
〔2〕 中空シリカ微粒子は屈折率が1.4以下である〔1〕に記載のコーティング組成物。
〔3〕 架橋性の官能基が、加水分解性シリル基、カルボキシル基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、ヒドロキシル基、イソシアノ基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基である〔1〕に記載のコーティング組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング組成物は、低屈折率で、耐汚染性(防汚性)、反射防止性、表面硬度に優れた塗膜を得ることができるので、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイの反射防止フィルム、耐汚染性フィルム等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコーティング組成物は、(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー、炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマー、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマー、中空シリカ微粒子及び重合開始剤を含有するものである。
【0012】
本発明に用いられる中空シリカ微粒子は、外殻によって仕切られた空洞(中空)を粒子内部に有する粒子状のシリカである。外殻は、外部と中空部とを連通する細孔を有するものであってもよいが、外部と中空部とが連通しない密実のものであるほうが好ましい。
中空シリカ微粒子は、(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部に対して、80〜330重量部含有している。80重量部未満では低屈性率が実現できない。逆に330重量部を超えると他成分との密着性が悪くなり、耐擦傷性が低くなる。
本発明に用いられる中空シリカ微粒子の屈折率は、1.4以下が好ましく、1.20〜1.35がより好ましく、1.20〜1.30が特に好ましい。中空シリカ微粒子の屈折率は特開2002−79616号公報に記載の方法で算出することができる。
【0013】
中空シリカ微粒子の数平均粒子径は、通常100nm以下、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは15〜90nmである。中空シリカ微粒子の数平均粒子径が100nmを超えると、塗工厚みより中空シリカ微粒子の粒子径が大きくなり塗工しづらくなる。また、中空シリカ微粒子の粒径分布は、狭くて、単分散であることが好ましいが、多分散粒子でもよい。従って、中空シリカ微粒子は、平均粒子径の異なるものを2種以上併用して用いることができる。また、所定の粒径を満たすならば凝集した粒子でも構わない。中空シリカ微粒子は、球状のものが最も好ましいが、不定形のものであってもよい。
なお、中空シリカ微粒子の粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
中空シリカ微粒子の外殻(シェル)を形成するシリカは、結晶性のものであっても、非晶性のものであってもよい。
本発明に用いられる中空シリカ微粒子は、例えば、特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている方法により得ることができる。
【0014】
本発明に用いられる炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマーは、化1で示される構造を有する化合物である。
【0015】
【化1】

【0016】
但し、R1:(メタ)アクリロイル基;R2:水素、メチル基、又は(メタ)アクリロイル基;R:アルキル基、フェニル基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる官能基;nは1〜500の整数である。
【0017】
炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマーは(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部に対して、10〜60重量部である。10重量部未満では、撥水、撥油、耐アルカリが発現せず、60重量部をこえると、はじきや基材との密着性が悪くなる。
【0018】
コーティング組成物に含有させる第三成分は、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマーである。架橋性の官能基は、加水分解性シリル基、カルボキシル基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、ヒドロキシル基、イソシアノ基、およびエポキシ基から選ばれるものが好ましい。
【0019】
炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマーは(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部に対して、15〜60重量部含有する。15重量部未満では結合力が発現せず、60重量部を超えると、他モノマー量が少なくなり、組成物本来の特性がでない。
【0020】
加水分解性シリル基を有するモノマーとしては、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシシラン、(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシアルキルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
【0021】
カルボキシル基を有するモノマーとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0022】
イソシアノ基を有するモノマーとしては(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどの他に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレートに、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、コロネートLなどのポリイシアネートを反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0023】
エポキシ基を有するモノマーとしてはグリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3−ブタジエンモノエポキサイド、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのジアクリレート若しくはジメタクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジアクリレート若しくはジメタクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジアクリレート若しくはジメタクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAのジアクリレート若しくはジメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。
【0024】
N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有するモノマーとしては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド;トリメチロールプロパンジアクリレート若しくはジメタクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジアクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのポリメチロール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0026】
本発明の(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマーは、前述した架橋性官能基を有さず、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたはオリゴマーである。その具体例としては、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、アクリロニトリル等の単官能アクリレート若しくはメタクリレート類;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート若しくはメタクリレート類;ポリエステルアロニックスM−6400(東亞合成社製ポリエステルアクリレート)等のポリエステルアクリレート;アロニックスM−1200(東亞合成社製)、UV−1700B(日本合成化学社製)等のウレタンアクリレート;環状ヒンダートアミン構造を有する2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
光重合開始剤としては、アリールケトン系光重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類など);含硫黄系光重合開始剤(例えば、スルフィド類、チオキサントン類など);アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤などが挙げられる。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用することができる。
光重合開始剤の量は、(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部に対して1〜10重量部である。
【0028】
本発明のコーティング組成物には、上記以外の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、溶剤、シランカップリング剤、分散剤、増粘剤などが挙げられる。
【0029】
溶剤としては、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン等が挙げられる。溶剤の量は、使用する塗工機の塗工条件(例えば、適正粘度、適正膜厚)により適宜調整すればよい。
【0030】
本発明のコーティング組成物は、(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部に対して、炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマー10〜60重量部、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマー15〜60重量部、及び中空シリカ微粒子80〜330重量部及び光重合開始剤1〜10重量部を、さらにその他の成分を混合させることによって得られる。各成分を混合させる順序は特に限定されない。
【0031】
本発明のコーティング組成物は、反射防止性能、表面層の物理的強度、耐防汚染性に優れた低屈折率層を形成できるので、フラットパネルの反射防止フィルム用コーティング剤として有用である。より具体的には、携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル(登録商標)、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示パネルやエレクトロルミネッス表示素子あるいはタッチパネル等の反射防止フィルム用コーティング液として有用である。
【実施例】
【0032】
本発明を、実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
(1)耐擦傷性(スチールウール試験)
スチールウール#0000に荷重0.025MPaをかけた状態で、コーティング組成物の塗膜が形成されている面を10回往復させ擦った。その後、表面状態を目視で観察した。
○:傷が認められない。
×:傷が認められる。
【0033】
(2)鉛筆硬度
コーティング組成物の塗膜が形成されている面について、JIS K5600−5−4に準じて、500g荷重で測定した。
【0034】
(3)屈折率
プリズムカプラー(メトリコン社製、MODEL2010)波長632nmにて屈折率を測定した。この値が1.45を超えると反射防止膜として機能しない。
【0035】
(4)耐汚染性
油性マジックでコーティング組成物の塗膜が形成されている面に10cmの線を描き、布でふきとり目視で観察し、以下の4段階で評価した。
◎:はじく(ふきとれる)
○:はじかないがふきとれる
△:若干ふきとれない
×:ふきとれない
【0036】
(5)耐アルカリ性
水酸化ナトリウム1重量%水溶液2mLをコーティング組成物の塗膜が形成されている面に滴下し、30分間放置した。次いで水を含ませた布でふき取り、表面状態を目視で観察することにより、表面が侵されているかどうか判定した。
○:跡なし
△:輪郭のみ確認できる
×:全体的な跡がみえる
【0037】
(実施例1)
アクリロイル基を含有するオリゴマー(日本合成化学工業社製、UV−1700B)100重量部、中空シリカ微粒子(数平均粒子径30nm、屈折率1.29)100重量部、メタクリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物(信越化学工業社製、X−22−164A)20重量部、トリエトキシビニルシラン(東京化成工業社製)20重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IRGACURE184)5重量部を混合し、攪拌機にて2000rpmで20分間攪拌することにより、コーティング組成物1を得た。
【0038】
厚み70μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東洋紡績社製 A4300)の透明基材上にコーティング組成物1をバーコーターで硬化後の塗膜の厚みが2μmになるように塗布した。次いで紫外線照射機を用いて積算光量が300mJ/cm2となるまで紫外線照射を行い硬化させた。評価結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
中空シリカ微粒子(数平均粒子径30nm、屈折率1.29)の量を350重量部に変更した以外は、実施例1と同様に、コーティング組成物2を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0040】
(比較例2)
メタクリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物(信越化学工業社製、X−22−164A)の量を5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物3を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0041】
(比較例3)
メタクリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物(信越化学工業社製、X−22−164A)の量を70重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物4を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0042】
(比較例4)
トリエトキシビニルシラン(東京化成工業社製)の量を10重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物5を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0043】
(比較例5)
トリエトキシビニルシラン(東京化成工業社製)の量を70重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物6を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0044】
(比較例6)
光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IRGACURE184)の量を0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物7を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
(比較例7)
光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IRGACURE184)の量を15重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物8を得、それを用いて実施例1と同様にして塗膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から以下のことがわかる。
実施例1に示すように本発明のコーティング組成物は表面強度(耐擦傷性および鉛筆硬度)に優れているため十分な物理的強度を有するとともに耐汚染性、耐アルカリ性も優れ、かつ屈折率が良好なものが得られることがわかる。これに対して、中空シリカ微粒子の量が過剰な比較例1は表面強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)、耐アルカリ性が不十分であり、耐汚染性にも劣る。また炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖とを有するモノマーの量が不足している比較例2では、耐汚染性、耐アルカリ性に劣ることが判る。炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖とを有するモノマーの量が過剰である比較例3では耐擦傷性が不十分である。炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基とを有するモノマーの量が不足している比較例4では表面強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)、耐アルカリ性に劣ることが判る。また過剰である比較例5では、耐汚染性、耐アルカリ性が不十分である。開始剤量が不足している比較例6では、表面強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)、耐アルカリ性、耐汚染性に劣ることが判る耐擦傷性に劣ることが判る。また、過剰である比較例7では耐汚染性、耐アルカリ性が不足していることが判る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を含み、架橋性の官能基を有しないモノマーまたはオリゴマー100重量部、炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有するモノマー10〜60重量部、炭素−炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有するモノマー15〜60重量部、中空シリカ微粒子80〜330重量部及び光重合開始剤1〜10重量部を含有するコーティング組成物。
【請求項2】
中空シリカ微粒子は屈折率が1.4以下である請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
架橋性の官能基が、加水分解性シリル基、カルボキシル基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、ヒドロキシル基、イソシアノ基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基である請求項1記載のコーティング組成物。

【公開番号】特開2008−50384(P2008−50384A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225017(P2006−225017)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】