説明

コーティング装置および印刷機

【課題】 ニスコーティング品質の安定化を図ることができるコーティング装置および印刷機を提供する。
【解決手段】 塗布液を貯留する貯留部23と、貯留部23に貯留された塗布液を、搬送するとともに紙に塗布する塗布手段25と、塗布液が貯留部23に流入する流入部35と、貯留部23から塗布液が流出する流出部37と、を有し、流入部35と流出部37との間に、塗布手段25が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング装置および印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷された紙の汚損を防止したり美観を向上させたりするために、紙にニスによるコーティングを施すコーティング装置が知られている。
上述のコーティング装置においては、ニスが貯留されるニス舟や、ニス舟に貯留されたニスを搬送・塗布する複数のローラなどが設けられている(例えば、特許文献1から3参照。)。
【特許文献1】特開平10−296953号公報
【特許文献2】特開2003−190857号公報
【特許文献3】特開平03−244544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1から3においては、ニス舟に貯留されたニスを、少なくとも1つ以上のローラで搬送し、紙に塗布するコーティング装置の構成が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたコーティング装置においては、ニス舟に貯留されたニスを循環させる装置が設けられていなかった。一方、特許文献2に記載されたコーティング装置においては、ニス舟にニスを供給する構成およびニス舟からこぼれたニスを回収する構成は開示されているが、積極的にニスを循環させる構成は開示されていなかった。
【0004】
ニス舟内のニスが循環されない場合、ニスに含まれる溶媒が時間の経過につれて蒸発するため、ニスの濃度が高くなり粘度が高くなる恐れがある。ニスの粘度が高くなるとニスを一定の膜厚で紙に塗布することが困難となり、ニスコーティング品質が低下するという問題があった。
【0005】
一方、特許文献3には、ニス舟にニスを循環する構成を設けた構成が開示されている。しかしながら、特許文献3に開示されているようにニス舟の底面からニスを供給、回収する構成では、ニス舟内にニスが滞留する領域が形成されやすく、当該滞留領域においてニスの濃度および粘度が高くなりニスコーティング品質が低下するという問題があった。
【0006】
また、コーティング後の光沢が出るニスや、乾燥性の高いニスは粘度が高くなる傾向にあるため、より品質の高いコーティングを行う場合には、上述の問題がより顕著になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ニスコーティング品質の安定化を図ることができるコーティング装置および印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のコーティング装置は、塗布液を貯留する貯留部と、該貯留部に貯留された塗布液を、搬送するとともに紙に塗布する塗布手段と、前記塗布液が前記貯留部に流入する流入部と、前記貯留部から前記塗布液が流出する流出部と、を有し、前記流入部と前記流出部との間に、前記塗布手段が配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、流入部と流出部との間に塗布手段が配置されているため、塗布手段は、貯留部内を流入部から流出部に向けて流れる塗布液の一部を取り出し、紙に塗布することができる。そのため、紙に塗布される塗布液の濃度や粘度等を一定に保つことができ、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0010】
上記発明においては、前記流出部が、前記貯留部の端部に配置されていることが望ましい。
本発明によれば、流出部が貯留部の端部に配置されているため、塗布液がスムーズに流出部に流入して、貯留部内に塗布液が滞留しにくくすることができる。そのため、紙に塗布される塗布液の濃度や粘度等を一定に保つことができ、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0011】
上記発明においては、前記塗布手段と前記流出部との間には、前記貯留部内における塗布液液面の位置を調整する調整手段が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、調整手段により塗布液液面の位置(高さ)が調整されるため、塗布手段により搬送され、紙に塗布される塗布液の膜厚を一定に調整することができる。そのため、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0012】
上記発明においては、前記調整手段が、前記流入部から前記流出部へ向かう前記塗布液の流れを遮る板部材であり、該板部材が、交換可能に配置されていることが望ましい。
本発明によれば、調整手段が、流入部から流出部に向かって流れる塗布液を遮る板部材であるので、板部材により塗布液の流れを堰き止めて塗布液液面の位置を調整することができる。
板部材は交換可能であるため、大きさの異なる板部材を使い分けることにより、塗布液液面の位置を調整することができる。
【0013】
上記発明においては、前記板部材が、鉛直方向上方に向かって前記流出部側へ傾斜するように配置されていることが望ましい。
本発明によれば、板部材が、鉛直方向上方に向かって流出部側へ傾斜して配置されているため、板部材により堰き止められた塗布液が局所的なよどみ部を形成することなく流出部に流れる。局所的なよどみ部が形成されないため、塗布液の濃度、粘度が高くなる領域が形成されず、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0014】
上記発明においては、前記貯留部の下方に、前記貯留部から落下した前記塗布液を受ける回収部がもうけられていることが望ましい。
本発明によれば、回収部により貯留部から落下した塗布液を受け止めることができるため、塗布液の付着によるコーティング装置へのダメージの発生を防止できる。
【0015】
本発明の印刷機は、紙に所定画像を印刷する印刷機であって、上記本発明のコーティング装置が備えられていることを特徴とする。
本発明によれば、所定画像が印刷された紙に品質の安定したコーティングを施すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコーティング装置および印刷機によれば、流入部と流出部との間に塗布手段が配置されているため、塗布手段は、貯留部内を流入部から流出部に向けて流れる塗布液の一部を取り出し、紙に塗布することができる。そのため、紙に塗布される塗布液の濃度や粘度等を一定に保つことができ、コーティング品質の安定化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る印刷機ついて図1から図6を参照して説明する。
図1には、枚葉両面印刷機(以下、単に「印刷機」という。)1が示されている。
印刷機1は、図1に示すように、被印刷物である枚葉紙が供給される上流側から下流側に向けて、給紙装置3と、複数の印刷ユニット5と、コーティングユニット(コーティング装置)21と、排紙装置7とを備えている。
給紙装置3は、積層されたシート状の被印刷物を一枚ずつ供給する装置である。
排紙装置7は、印刷後の被印刷物を回収して積層する装置である。
【0018】
印刷ユニット5は複数設けられており、印刷する色ごとに設けられている。本実施形態では、C(シアン),M(マゼンダ),Y(イエロー)及びBL(ブラック)からなる4色の色によって印刷する4色機が示されており、被印刷物の表裏両面に印刷するので合計で8つの印刷ユニット5が設けられている。
【0019】
各印刷ユニット5は、インキを供給するインキ装置9と、インキ装置9に対向配置される版胴13と、この版胴13に対向配置されたゴム胴15と、このゴム胴15に対向配置された圧胴17と、各印刷ユニット5の圧胴17間に配置される中間胴18とを備えている。
【0020】
版胴13は、印刷用画像が形成された刷版が外周に巻回された円筒状とされている。刷版は、印刷すべき画像毎に作成され、交換される。版胴13は、外周の一部の角度範囲が軸線方向に切り欠かれた状態となっており、この位置に、刷版の上流端である版頭および刷版の下流端である版尻を掴んで固定する版締め装置(図示せず)が設けられている。
【0021】
ゴム胴15の外周には、ブランケットとしてゴムが巻回されている。ゴム胴15は、外周の一部の角度範囲が軸線方向に切り欠かれた状態となっており、この位置に、ゴムの上流端および下流端を掴んで固定するゴム締め装置(図示せず)が設けられている。
ゴム胴15は、印刷を行わない非印刷時等には、版胴13から離間させる(胴抜き)ことができるようになっている。
【0022】
圧胴17は、ゴム胴15に対向配置され、円筒状とされている。圧胴17は、印刷時にゴム胴15に接触し、ゴム胴15との間に供給される被印刷物を所望の圧力で押圧する。
【0023】
中間胴18は、各印刷ユニット5の圧胴17間に設けられ、円筒状とされている。中間胴18によって、上流側の圧胴17から下流側の圧胴17へと被印刷物が送られる。
【0024】
コーティングユニット21は、C(シアン),M(マゼンダ),Y(イエロー)及びBL(ブラック)に対応する印刷ユニット5の下流に配置されている。本実施形態においては、被印刷物の表面を印刷する4つの印刷ユニット5の下流と、裏面を印刷する4つの印刷ユニット5の下流とに配置されている。
【0025】
図2は、図1のコーティング装置の概略構成を説明する断面図である。図3は、図2のコーティング装置の概略構成を説明する図である。
コーティングユニット21は、図2および図3に示すように、ニスが一時的に貯留されるニス舟(貯留部)23と、貯留されたニスを枚葉紙に塗布する塗布部(塗布手段)25と、ニス舟23に貯留されるニスを循環させる循環部27と、から概略構成されている。
【0026】
塗布部25は、ニス舟23からニスを搬送するニス元ローラ(以後、CMローラと表記する。)29、ニス付けローラ(以後、CFローラと表記する)31と、搬送されたニスを枚葉紙に塗布するブランケット胴33と、から概略構成されている。
循環部27は、ニス舟23にニスを供給するニス供給部(流入部)35と、ニス舟23からニスを回収するニス戻り部(流出部)37と、ニス舟23からニスが戻されるとともに再びニス舟23にニスを供給するニスタンク(図示せず)と、から概略構成されている。
【0027】
ニス舟23は上面が開口した容器からなり、ニス舟23には、ニス供給部35と、ニス戻り部37と、ニスの液面高さを調整する堰き止め部(液面調整手段)39と、ニス舟23から落下したニスを受け止めるパン(回収部)41と、が設けられている。
【0028】
ニス供給部35はニス舟23の側壁に配置され、ニス戻り部37は当該側壁と対向する回収側壁43近傍の底面に配置されている。CMローラ29は、ニスのニス供給部35からニス戻り部37へ向かう流れの途中に配置されている。堰き止め部39は、CMローラ29とニス戻り部37との間に配置されている。
【0029】
パン41は、ニス舟23の下方であって、ニス戻り部37が配置されている側(図2において右側)に延びるように配置されている。また、パン41の右側の端部領域は、右側に向かって、上方へ傾斜するように形成されている。
【0030】
図4は、図2の堰き止め部の構成を説明する部分斜視図である。
堰き止め部39は、図2および図4に示すように、ニスを堰き止める板部材45と、板部材45が差し込まれるスリット部47とから構成されている。
スリット部47は、L形の部材を所定間隔だけ離して配置されたものであり、L形部材の間に板部材45が差し込み、取り外し可能に配置される。
【0031】
次に、上記の構成からなる印刷機1における作用について説明する。
まず、図1に示すように、給紙装置3から枚葉紙が1枚ずつ送り出される。枚葉紙は、最初の4つの印刷ユニット5およびコーティングユニット21を通過する際に、裏面に4色の印刷およびニスコーティングが施される。その後、裏面に印刷が施された枚葉紙は、下流側に位置する4つの印刷ユニット5およびコーティングユニット21を通過する際に、表面に4色の印刷およびニスコーティングが施される。このように両面印刷が施された枚葉紙は、排紙装置7へと送られる。
【0032】
次に、本実施形態における特徴部であるコーティングユニット21における作用について説明する。
コーティングユニット21において、図1および図2に示すように、ニス舟23に貯留されたニスは、回転するCMローラ29およびCFローラにより、ブランケット胴33に搬送される。ブランケット胴33に搬送されたニスは、4つの印刷ユニット5により印刷が施された枚葉紙に塗布される。
【0033】
図5は、図2のニス舟23におけるニスの流れを説明する図である。
ニス舟23には、図2および図5に示すように、ニスタンクからニス供給部35を介してニスが供給される。供給されたニスはCMローラ29に向かって流れ、堰き止め部39を越えてニス戻り部37に流入し、ニスタンクに回収される
堰き止め部39の板部材45は、上方に向かってニス戻り部37側に傾斜して配置されているため、ニスが板部材45を越える際に流れが循環するよどみ部を形成しにくく、乱流を形成しにくい。
【0034】
また、堰き止め部39は、図5に示すように、板部材45をサイズの異なるものに交換することで、ニス供給部35から堰き止め部39までの間のニスの液面高さを調整することができる。
CMローラ29によりCFローラ31へ搬送されるニスの一部は、図2に示すように、CMローラ29の円筒面から離れ、下方に落下する。落下したニスの一部はニス舟23の回収側壁43に衝突し、ニス戻り部37により回収される。落下したニスの残りは回収側壁43を越えて、パン41の上に落下する。
【0035】
上記の構成によれば、ニス供給部35とニス戻り部37との間に塗布部25が配置されているため、塗布部25は、ニス舟23内をニス供給部35からニス戻り部37に向けて流れるニスの一部を取り出し、枚葉紙に塗布することができる。そのため、枚葉紙に塗布されるニスの濃度や粘度等を一定に保つことができ、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0036】
ニス戻り部37がニス舟23の端部に配置されているため、ニスがスムーズにニス戻り部37に流入して、ニス舟23内にニスが滞留しにくくすることができる。そのため、枚葉紙に塗布されるニスの濃度や粘度等を一定に保つことができ、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0037】
堰き止め部39によりニス液面の位置(高さ)が調整されるため、塗布部25により搬送され、枚葉紙に塗布されるニスの膜厚を一定に調整することができる。そのため、コーティング品質の安定化を図ることができる。
板部材45は交換可能であるため、大きさの異なる板部材45を使い分けることにより、ニス液面の位置を調整することができる。
【0038】
板部材45が、鉛直方向上方に向かってニス戻り部37側へ傾斜して配置されているため、板部材45により堰き止められたニスが局所的なよどみ部を形成することなくニス戻り部37に流れる。局所的なよどみ部が形成されないため、ニスの濃度、粘度が高くなる領域が形成されず、コーティング品質の安定化を図ることができる。
【0039】
パン41によりニス舟23から落下したニスを受け止めることができるため、ニスの付着によるコーティングユニット21や印刷機1へのダメージの発生を防止できる。
【0040】
なお、堰き止め部39の板部材45を、図5に示すように、上方に向かってニス戻り部37側に傾斜させて配置してもよいし、図6に示すように、板部材45を鉛直方向に対して略平行に配置してもよく、特に限定するものではない。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、この発明を枚葉紙の両面に印刷できる印刷機に適用して説明したが、両面印刷の印刷機に限られることなく、片面印刷の印刷機など、その他各種の印刷機に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷機の概略構成を説明する図である。
【図2】図1のコーティング装置の概略構成を説明する断面図である。
【図3】図2のコーティング装置の概略構成を説明する図である。
【図4】図2の堰き止め部の構成を説明する部分斜視図である。
【図5】図2のコーティング装置におけるニスの流れを説明する図である。
【図6】図2のコーティング装置の他の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
1 印刷機
21 コーティングユニット(コーティング装置)
23 ニス舟(貯留部)
25 塗布部(塗布手段)
35 ニス供給部(流入部)
37 ニス戻り部(流出部)
39 堰き止め部(液面調整手段)
41 パン(回収部)
45 板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を貯留する貯留部と、
該貯留部に貯留された塗布液を、搬送するとともに紙に塗布する塗布手段と、
前記塗布液が前記貯留部に流入する流入部と、
前記貯留部から前記塗布液が流出する流出部と、を有し、
前記流入部と前記流出部との間に、前記塗布手段が配置されていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記流出部が、前記貯留部の端部に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記塗布手段と前記流出部との間には、前記貯留部内における塗布液液面の位置を調整する調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記調整手段が、前記流入部から前記流出部へ向かう前記塗布液の流れを遮る板部材であり、
該板部材が、交換可能に配置されていることを特徴とする請求項3記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記板部材が、鉛直方向上方に向かって前記流出部側へ傾斜するように配置されていることを特徴とする請求項4記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記貯留部の下方に、前記貯留部から落下した前記塗布液を受ける回収部がもうけられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のコーティング装置。
【請求項7】
紙に所定画像を印刷する印刷機であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載のコーティング装置が備えられていることを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−14922(P2007−14922A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201549(P2005−201549)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】