説明

コーティング設備の洗浄方法

本発明は、コーティング設備の副次面に適用されるべき洗浄法に関する。コーティングの前に、付着防止層(10)が副次面に塗布される。コーティング材料が付着防止層に付いた後、ドライアイス噴射またはCOスノー噴射によって副次面が洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が対象とする技術分野
本発明は、コーティング設備との関連における、特に真空コーティング設備との関連における洗浄方法に関する。コーティングにあたっては、コーティングチャンバの中で、コーティングが望ましくない表面も必然的にコーティングされてしまうのが普通である。このような面は、たとえばチャンバの一部である場合があり、ならびに、コーティングされるべき基板の一部、ならびに保持面やその他の副次面である場合もある。1回または複数回のコーティングの後に、このような面を労力をかけて洗浄しなければならないのが通常である。このことが特に必要となるのは、コーティングの際に望ましくないコーティングをされた部分において、たとえば導電性といった表面特性が問題になるときである。本発明の方法により、このような洗浄が大幅に簡素化される。本発明の出願の枠内では、望ましくないコーティングがなされた面のことを副次面と呼び、それに対して、望ましいコーティングがなされた面のことを目標面と呼ぶ。副次面はバイアス電流、絶縁性、ないしアース接続などさまざまに異なる電位にある。その帰結として、副次面へのコーティングのさまざまに異なる付着強度が生じる。
【背景技術】
【0002】
これまでの従来技術
従来技術では、このような望ましくないコーティングをさまざまな方式で、たとえばサンドブラスト、研削、ブラシ加工、あるいは機械式の後加工や化学的な層除去プロセスなどで取り除くことが知られている。このような方法は、いずれも業界内で広く適用されている普及した実用上の技術である。このような望ましくないコーティングは副次面にしばしば強く付着しているため、その除去はほぼ全般を通じて非常に時間コストがかかる。少なからぬケースにおいて、コーティングプロセスが終わるたびに(ロット)、副次面を洗浄しなくてはならない。たとえば湿式化学による層除去やサンドブラストのようないくつかの洗浄方法は、
そのうえ、あらゆる研磨式の洗浄方法(サンドブラスト、研削など)は、取り扱われるコンポーネントにとって追加の強い材料摩耗を意味している。このことは、追加的に高い維持費用(摩耗したコンポーネントの交換)につながる。
【0003】
さらに、このような材料摩耗はプロセス確実性の低下につながる。その場合、状況によっては、コーティングプロセスにとって重要な機械的公差を守ることができなくなるからである。
【0004】
表面にある不純物やコーティングを除去するためドライアイス噴射を用いた方法が知られている。その場合、固体のCO2氷結晶が噴出媒体として用いられる。ノズル出口での液体CO2の圧力低下によりCO2スノーが生じ、圧縮空気外套噴射を利用してこれが超音速まで加速されて、洗浄されるべき表面へ吹き付けられる。国際公開第02/072313号パンフレットによると、コーティングも除去することができる。しかし、2μmよりも層厚が小さいと問題が生じる。そのような厚みでは、ドライアイス噴射の熱機械現象が全面的に発揮されないからである。PVD(physical vapor deposition物理蒸着)コーティング設備やCVD(chemical vapor deposition化学蒸着)コーティング設備の構成要素の洗浄には、このような方法は相応にこれまで適用されていない。
【0005】
国際公開第08/040819号パンフレットは、洗浄されるべき表面に機能層が設けられ、その上では、洗浄されるべき表面よりも少ない不純物が堆積するようにして、上に掲げたドライアイス噴射洗浄方法を改良することを記載している。機能層として、プラズマポリマー層が提案されている。この関連において不純物としては、全般的に有機材料だけでなく、剥離されるべき非有機性の材料も挙げられている。そこで機能層は、洗浄されるべき物体よりも低い熱伝導性を有しており、汚染物質は、機能層の下にある物体表面よりも低い強度で機能層に付着する。しかしこうした条件では、PVDコーティング設備またはCVDコーティング設備との関連で複数の欠点が現れる:
−コーティングプロセス中に、すなわち真空室の作動時に、汚染物質が表面へ非常に付着してよいことになる。そうしないと剥離の結果として、コーティングされるべき基材そのものが望ましくない仕方で汚染される恐れがあるからである。
−真空室内では真空に基づいて非常に低い温度が生じ、これがコーティングの開始時に急激に著しく上昇する可能性がある。低い熱伝導性でのコーティングは、このような温度変動が起こったときに、それ自体として損傷を受けることがある。
−プラズマポリマー層自体はCVD法の枠内で塗布される。したがって状況によっては、機能層と汚染物質との間で層特性に関して類似性が生じると予想される。
−プラズマポリマー層は非導電性である。しかしコーティングチャンバの構成要素は、コーティング工程の電気的および/または磁気的な条件にマイナスの影響を及ぼさないために、導電性の表面を有しているのが普通である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的な課題設定
したがって、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服する方法が提供されることが望まれる。具体的には、これに加えて大幅に少ない時間コストで実施することができ、洗浄されるべきコンポーネントの材料摩耗につながることがない、副次面のための簡素化された洗浄方法が提供されるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的な解決法ないし解決手段の説明
本発明の基本思想は、コーティングプロセスの前に副次面に前処理を施して、これに続くコーティングプロセスのときに副次面へのコーティング材料の付着が、前処理なしでの付着に比べて大幅に減少するようにすることにある。このようにして、洗浄が大幅に簡素化される。
【0008】
このような本発明の前処理の要諦は、たとえば、副次面に適当な「付着防止層」を塗布することであり得る。付着防止層は副次面への付着が少なくなり、または、付着防止層への汚染物質の付着が少なくなるという特徴がある。「付着防止層」は、本来のコーティング後に、副次面と、コーティングプロセスで塗布された材料との間にあるので、コーティング材料の付着が効果的に防止される。コーティングプロセスの種類に応じて、付着防止層は温度耐性、導電性であり、かつ真空工学的に問題がないのがよい。特に真空工学的に問題がないことは、PVDプロセスにとっての前提条件をなす。付着防止層の塗布は、目標面への本来の層の特性にマイナスの影響を及ぼさないのが好ましい。
【0009】
そして洗浄をするために、上に説明したとおり、ドライアイス噴射の方法を適用することができる。洗浄方法そのものは、たとえば国際公開第08/040819号パンフレットや国際公開第02/072312号パンフレットから当業者に十分に知られており、ここでは詳しく説明する必要をみない。
【0010】
発明の詳細な説明
次に、実施例を参照しながら図面を用いて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による前処理の工程を略示する図である。
【図2】マスキングステンシルを使用する例を略示する図である。
【図3】コーティングプロセス後の容易な洗浄工程を略示する図である。
【図4】付着防止層とコーティングとを備える表面を略示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明はPVDプロセスに限られているが、それによって本発明の範囲をそのようなプロセスに限定しようとするものではない。
【0013】
このようなPVDプロセスにとって重要なのは、付着防止層を真空中で利用できることである。しかしこのことは、付着防止層に、結合剤やこれに類似する補助剤が存在しないことを意味している。
【0014】
発明者らが見出したところでは、このことは本発明の第1の実施形態によると、副次層へ付着防止層を塗布するときに、易揮発性の溶剤中の粉末からなる懸濁液が適当な混合比率で適用されたときに実現することができる。易揮発性の溶剤は、使用する粉末や処理される表面と化学反応を起こしてはならない。懸濁液の担持媒体として易揮発性の溶剤を使用することで、スプレープロセスの直後に溶剤がすでに完全に気化し、付着性の低い粉末層だけが表面に残ることが保証される。溶剤としては、たとえばイソプロパノールが非常に良く適している。
【0015】
さらに発明者らが見出したところでは、純粋なグラファイトが粉末材料として好適である。グラファイト粉末は特に真空中で十分に温度耐性があり、導電性であり、真空中で利用することができ、付着防止特性を満たしており、したがってPVDプロセスで適用することができる。
【0016】
塗布は、たとえばスプレーガンを用いた吹付けによって行われる。このことはガス支援なしに行うことができ、またはガス支援のもとで行うことができる。後者の場合、特に空気、窒素、あるいはCOが適している。スプレー方式で重要となる影響量(たとえば吹付け圧、ノズルやガンのサイズ、懸濁液の混合比率、吹付け距離、吹付け時間)は、多数の用途について均一な層塗布を適切な厚みで保証するために、広い範囲で適合化することができる。用途に応じて、これ以外の塗布方法も可能である(刷毛塗り、浸漬など)。
【0017】
付着防止層は、処理される副次面にPVDプロセス中に塗布されるコーティング材料をPVDプロセス後に、上に説明したとおりドライアイス噴射方式を適用して、実質的に完全に除去できることを保証する。このことは、ペレット噴射またはCO2スノーを用いて行うことができる。さらに別の選択肢の要諦は、DE102006002653に記載されているように、ドライアイス・水混合噴射法を適用することにある。広範な後処理は必要なく、次回の使用のために、新たな付着防止層をただちに副次面へ再び施すことができる。
【0018】
卓越して優れた効率と、適用の簡便性とに基づき、たとえばPVDプロセスの周辺分野で多彩な用途が考えられる:
アーク蒸着との関連では、いわゆる閉じ込めリングがしばしば採用される。これはコーティング材料を有している蒸着源のターゲットを取り囲み、アークがターゲット表面の領域に限定されたまま保たれるように作用する。閉じ込めリングはターゲット材料に近いために、PVDコーティングプロセスのときに激しい材料塗布を受け、その洗浄のために従来、たとえばサンドブラストや切削加工による後処理といった極端に攻撃性の高い方式が必要であった。本発明によるグラファイト粉末の塗布により、必要な導電性が維持される。PVDプロセス中に塗布されるコーティング材料は、グラファイト層の上に位置することになる。皮膜を含めたグラファイト層を、簡単な仕方で閉じ込めリングから除去することができる。
【0019】
コーティングされる基板をコーティングプロセス中に保持する基板ホルダについても、同様のことが当てはまる。基板ホルダも、コーティングされるべき基板に空間的に近いため、著しくコーティングされる。コーティング後に、従来は基板ホルダをサンドブラストにより時間集中的かつそれに伴ってコスト集中的に処理しなくてはならなかった。サンドブラストは高い摩耗につながる。したがって、プロセス確実性が低くなるほか、高価な保持部を頻繁に取り換えなくてはならなかった。基板ホルダが本発明に基づいて付着防止層で前処理されれば、PVDプロセスの後に、これを簡単かつ迅速かつ摩耗なしに洗浄することができる。
【0020】
同様のことは、PVD設備のカルーセルや蒸着防護板についても当てはまる。これに加えて、プラズマ放電を準備するためのアノード、たとえばスパッタ源、低圧アーク放電、エッチング装置などを設備が含んでいれば、これらもコーティングステップの前に、付着防止層の塗布によって前処理するのが好ましい。
【0021】
本発明の別の実施形態では、付着防止層それ自体がコーティング設備で比較的緩やかな層として塗布される。そのために、基板支持体が未装填の状態でコーティング設備に入れられる。このような層は、たとえばバイアス電圧なしでコーティングされるPVD層であってよい。このような層はやはりグラファイト層であってもよい。
【0022】
本発明の別の実施形態では、付着防止層として銅アークコーティングが提案される。プラズマポリマー層とは対照的に、銅は非常に良好に導電性であり、たとえばPVDで塗布された非金属の無機層よりも高い熱伝導性を有している。より一般的に言えば、熱に関する材料特性の点でPVD層特性とは非常に相違している金属の、すなわち熱伝導性の良い層を、付着防止層として適用することができる。銅アークコーティングの層厚は0.1−0.4mmの範囲内であるのが好ましく、汚れの層厚は1−100μmの範囲内にある。
【0023】
別の実施形態では、いわゆるナノシールを表面に施すことが提案される。いわゆるロータス効果として知られるこの効果は、構造化された表面に汚れがとどまりにくくなり、それによって容易に剥離されることをいう。構造サイズを適宜選択すれば、付着力を実質的に調整することができる。特に構造化によって表面の張力が回避されるので、コーティングプロセス中の表面からの剥離が生じる恐れが少ない。
【0024】
次に具体的な実施例として、コーティング設備に設けられたエッチング装置の一部である、コーティングされたアノード面を洗浄するために適用される本発明の方法について説明する。
【0025】
この場合に生じる問題は、PVDプロセスのたびにアノード面が、固定的に付着したコーティング材料で著しく覆われるという点にある。その後のコーティングプロセスで、その上にさらにコーティングがなされると、時間とともに、非常に厚く除去するのが極端に難しい(時間コストのかかる)堆積物が生じてしまう。
【0026】
導電性の低い層または非導電性の層がコーティングされるとき、アノードの上の伝導性の低い堆積物または非導電性の堆積物は、コーティングプロセス後にすでにアノードの機能を保証できなくなるという帰結につながる可能性があるため、そのようなプロセスでは、1つのロットが終わるたびごとにアノードを洗浄することが絶対に必要である。
【0027】
このような洗浄を実施するために、たとえば次のように手順が進められる:
出発点となるのは堆積物や残留物のないアノードであり、すなわち、初回のコーティングの前の、または洗浄処理の後の「汚れていない」アノードである。
【0028】
第1のステップでは、本例では、この場合に本件明細書で定めた定義に基づく副次面となる、付着防止層でコーティングされるべきアノードの表面のすぐ周辺部分が覆われ、および/またはマスキングされる。その際には、たとえば適合化されたくり抜きと適切な幾何学形状とを有する薄板ステンシルが考慮の対象となる。ステンシルは、希望する領域だけに付着防止層が施されることを保証する。
【0029】
第2のステップでは、本例では、付着防止層が吹付け法でスプレーガンにより塗布される。このとき付着防止材料を含む懸濁液が、マスキングされたアノードに吹き付けられる。
【0030】
吹き付けられるべき懸濁液を作成するために、イソプロパノールにグラファイト粉末が投入される。ここで説明している例では、アノードは垂直方向に取り付けられた金属表面である。したがって留意すべきは、表面からの余剰の溶剤の滴下が回避されるように、吹付け距離と塗布量を選択することである。その際には、易揮発性の溶剤がエアロゾルとして、吹付けノズルと処理されるべき表面との間ですでにほぼ気化することができると非常に好ましい。そのようにして、グラファイト粉末による最善の被覆が得られる。ただしそのためには、溶剤とグラファイト粉末の混合比率も重要な役割を演じる。滴下を回避するためには、できるだけ高いグラファイト割合が存在しているのがよい。しかしながら、スプレーガンのノズルが詰まらないようにも留意しなければならない。グラファイト粉末10gに対して50mlから150mlのIPAが適切であることが判明している。100mlのイソプロパノール(IPA)が、10gのグラファイト粉末に対して使用されるのが好ましい。
【0031】
使用されるグラファイト粉末は、結合剤やその他の添加剤の混入がほぼないのがよい。本例では99.9%の純度が適用されている。グラファイト粉末の粒度については、最大サイズとして0.2μmから150μmが好都合であることが判明している。粒が20μmよりも大きくないグラファイト粉末が用いられるのが好ましい。
【0032】
スプレーガンとしては、市販の液体カップ型スプレーガンを使用している。ノズルサイズはたとえば0.3mmから2mmの間であり、好ましくは0.8mmである。
【0033】
吹付け工程を駆動するための媒体としては、圧縮空気が0.2バールから1.0バール、好ましくは0.5バールから0.7バールの間の圧力で適用される。圧縮空気は、懸濁液およびこれに伴って付着防止層に汚れが入らないようにするために、脱脂されてできるだけ粒子を含まないのがよい。ガンの空気圧系統が汚れを導入しないように、特に留意すべきである。
【0034】
使用の前ごとに懸濁液が均質化される。このことは振動、揺動によって、超音波処理によって、または当業者に周知のその他の手法によって行うことができる。
【0035】
50mmから250mmの間、理想的には100mmから200mmの間の吹付け距離が適用される。すでに上で述べたとおり長い吹付け距離は、気化をする可能性がすでに飛行時間中から溶剤に与えられるという意味で好ましい。ただし長すぎる距離は、広すぎる空間的な分散につながる。
【0036】
塗布されるべき付着防止層の層厚は、たとえば0.05mmから2.0mmの間である。本例では、「視覚的に稠密に」という基準が有用であり、その簡便性に基づいて好ましいことが判明している。少なくとも副次面それ自体がグラファイト表面ではないとき、このことは、グラファイト粉末の光学特性に基づいて良好に実施することができる。付着防止層の塗布は、本例では、好ましくは均等に進行する複数回の吹付け工程で行われる。
【0037】
付着防止層を塗布した後、次のことに留意するのが好ましい:粉末層は実質的に粘着力によって表面に付着しているので、吹付け後、コーティングされた副次面への接触はできるだけ避けるほうがよい。したがって、可能な場合には、コンポーネントが完全に組み付けられた状態で処理を行い、もしくは相応に適した装置および/または工具(「ハンドリング補助具」)を利用して、付着防止層の損傷を避けるようにするのが好ましい。
【0038】
第3のステップでは、マスキングをするのに使用した薄板ステンシルが取り外される。ここで再度断っておくと、どの場合にもこのようなマスキングが必要なわけではないが、本例ではこれが適用されている。
【0039】
以上をもって前処理は完了し、本来のPVDコーティングを通常の仕方で実施することができる。すなわちコーティングチャンバに工作物が装填され、チャンバが閉じられて排気され、たとえばアーク蒸着のようなコーティングが実施され、引き続きコーティングチャンバが換気されて開放される。このとき本発明に基づくアノードの前処理は、コーティングに不都合な影響を及ぼすことがない。
【0040】
コーティングチャンバを開いてから、本発明に基づいてドライアイス噴射により副次面を洗浄することができる。CO2スノーが保全的に、乾式に、残留物なしに、かつ真空で利用できるように洗浄を行う。
【0041】
次のコーティングステップの前に、同じくアノードがステップ1から3に準じて前処理される。
【0042】
理想的な場合、この手順がコーティングプロセスの後ごとに実施される。しかしながら、1回のコーティング工程の後のドライアイス噴射による洗浄を省略し、複数回のコーティングサイクルの後でのみ付着防止層を更新することも可能である。
【0043】
PVDコーティング設備、および真空室内に配置されたIETアノード(ITE=Innova etching technology)の前処理を例にとって、本発明について説明してきた。この例では、洗浄コストが従来の20分から数分まで削減することができた。さらに、本発明の方法によってアノードが保全される。本発明に基づく前処理は、これ以外のコーティング方法で、特に、たとえばこれ以外の真空コーティング方法で、好ましく適用することができる。そのとき必要な場合には、付着防止層の材料を適合化することができる。
【0044】
別の利用分野についてもすでに述べたところである。特に、たとえば基板表面の一部だけをコーティングしたいときには、コーティングされるべき基板でも、本発明を好ましく適用することができる。従来、コーティングされるべきでない基板の表面部分は保持部によって遮蔽しなくてはならなかった。それに対して本発明の方法により、コーティングされるべきでない基板表面の部分を付着防止層で覆うことができ、コーティング後にこれをドライアイス噴射法によって簡単な仕方で洗浄することができる。
【0045】
頻繁に繰り返される同種類の付着防止層処理(たとえばカルーセル、基板ホルダ、基板など)については、本発明の1つの発展例では、自動式に作動する吹付け装置を採用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 液体カップ型スプレーガン
2 圧縮空気供給部
3 懸濁液
4 吹付けノズル
5 副次面
6 マスキングステンシル
7 噴霧
8 ドライアイス噴射ノズル
9 析出物で覆われた付着防止層
10 付着防止層
11 PVDプロセスの析出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング設備の副次面のための洗浄方法において、次の各ステップを含んでおり、すなわち、
コーティングチャンバの副次面に付着防止層をコーティングに先行して塗布し、
ドライアイス噴射またはCOスノー噴射洗浄法によって副次面をコーティングに後続して処理する方法。
【請求項2】
前記付着防止層は揮発性溶剤中の粉末からなる懸濁液を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付着防止層はコーティング工程中に塗布される層よりもはるかに厚い金属層を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記付着防止層はその付着防止作用がロータス効果に依拠する層であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518177(P2013−518177A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549264(P2012−549264)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007971
【国際公開番号】WO2011/088884
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(598051691)エリコン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト,トリュープバッハ (44)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Trading AG,Truebbach
【Fターム(参考)】