説明

コート種子を収納する包装体

【課題】コート種子を収納する包装体において、粒数が少ない場合であっても、被覆層が割れることなく、また簡単な包装形態でコート種子を輸送・保管等できるようにする。
【解決手段】基台本体11に形成した穴12にコート種子Sをそれぞれ収納し、コート種子Sが穴12からこぼれ落ちないように穴12の開口を包装用外袋2で覆うようにする。ここで、コート種子Sの被覆層の割れを一層抑える観点から、凹部の深さ方向を一つの座標軸方向とする三次元直交座標系において、凹部の内壁及びカバー部材によって、少なくとも一つの座標軸方向の、凹部内でのコート種子Sの移動を規制するようにするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子の外周面を粉体材料で被覆したコート種子を収納する包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種子の外周面を粉体材料で被覆したコート種子は、機械による播種が可能で、また間引き労力を大幅に軽減できること等から、主として農家向けにこれまで販売され、広く使用されていた。通常、これらのコート種子は数千粒が瓶詰めされて輸送・販売等されていた。一方、家庭向けには、必要とする種子粒が少ないこともあって依然として、ハガキサイズの袋に数十粒の裸種子が入れられて輸送・販売等されていた。
【0003】
しかし、家庭用とはいえ、袋詰めされた裸種子を一粒ずつ袋内から取り出すのは困難であり、家庭向けにもコート種子の販売が強く望まれていた。
【0004】
ところが、コート種子では、発芽遅延や発芽率低下、微細な根系の傷み等を防止するため、種子の膨張や土中の水分吸収によって被覆層が容易に崩壊するように構成されている。このため、従来のように袋詰めしてコート種子を輸送等すると、被覆層が容易に割れるおそれがある。他方、コート種子を瓶詰めにすれば被覆層の割れは抑えられるものの、数十粒程度のコート種子をそれぞれ瓶詰めし輸送等するのは効率が悪く高い費用がかかる。
【特許文献1】特開平8−56424公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、粒数が少ない場合であっても、被覆層が割れることなく、また簡単な包装形態でコート種子を輸送・保管等できる包装体を提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、種子の外周面を粉体材料で被覆したコート種子を収納する包装体であって、コート種子を収納する複数の凹部が形成された基台と、コート種子が凹部からこぼれ落ちないように凹部の開口を覆うカバー部材とを有することを特徴とするコート種子を収納する包装体が提供される。
【0007】
ここで、コート種子の被覆層の割れを一層抑える観点から、前記凹部の深さ方向を一つの座標軸方向とする三次元直交座標系において、前記凹部の内壁及び前記カバー部材によって、少なくとも一つの座標軸方向の、前記凹部内でのコート種子の移動を規制するようにするのが好ましい。
【0008】
前記凹部としては、その深さが前記コート種子の直径と略同じであるものであってもよい。即ち、複数個のコート種子を1段平面状に収納するようにしてもよい。
【0009】
また、前記凹部としては、コート種子の外径よりもわずかに大きい内径を有する穴であってもよい。このとき穴の深さは前記コート種子の直径と略同じ、即ち1つの穴に1粒のコート種子を収納するのが好ましい。
【0010】
またさらに、前記凹部としては、コート種子の外径よりもわずかに大きい幅を有する長細い溝でもよい。このとき細長い溝の深さは前記コート種子の直径と略同じ、即ち細長い溝にコート種子を数珠状に一列に収納するのが好ましい。
【0011】
播種する分だけ切り取って使用できるようにする観点から、複数の凹部が形成された基台が、凹部と凹部との間で分断可能であるのが好ましい。
【0012】
コート種子が凹部からこぼれ落ちないように凹部の開口を覆うカバー部材は、基台を包み込む包装用外袋であってもよい。
【0013】
またカバー部材としてシート部材を用い、シート部材を前記基台に貼着し、前記凹部の開口を封止するようにしてもよい。このとき、前記基台として可撓性を有するものを用い、前記凹部の底面の外側から凹部の開口方向に向かって力を加えることによって、前記凹部に収納されているコート種子で前記シート部材を押し破りコート種子を外に取り出すようにしてもよい。
【0014】
さらにはカバー部材として蓋部材を用い、蓋部材を、前記凹部の開口面と平行な面内でスライド自在として、蓋部材を少しずつずらしてコート種子を所定粒数ずつ基台から取り出せるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る包装体では、基台に形成した凹部にコート種子を収納し、コート種子が凹部からこぼれ落ちないように凹部の開口をカバー部材で覆うようにしたので、包装する種子の粒数が少ない場合であっても、輸送や保管中等におけるコート種子の被覆層の割れが効果的に防止される。しかも瓶詰めした場合に比べて格段に高い輸送・保管効率が得られ低コスト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る包装体についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る包装体の一実施形態を図1及び図2に示す。図1は包装体の斜視図であり、図2は垂直断面図である。図1から理解されるように、この図の包装体は、複数の有底の穴12が縦と横に所定間隔で配列された基台1と、基台1を包み込む包装用外袋(カバー部材)2とを備える。図2に示すように、基台1は、複数の貫通孔121が形成された基台本体11と、基台本体11の一方面側に貼着されたシール材122とを有する。基台本体11に形成された貫通孔121の一方の開口をシール材122で封止することによって有底の穴12が形成される。もちろん、基台本体11の厚みよりも浅い穴を形成して、シール材122を用いないようにしても構わない。包装用外袋2は、基台1と略相似形で、基台1よりも一回り大きい平面形状の袋であって、包装用外袋2の出入開口24の一方の辺からフラップ22が外方へ延出し、その先端部に貼着剤23が帯状に塗布されている。
【0018】
図2に示すように、基台1に形成した穴12の内径は、コート種子Sの外径よりもわずかに大きく設定されている。また穴12の深さは、コート種子Sの外径よりもわずかに深く設定されている。これにより、穴12の内周壁とわずかな隙間を介してコート種子Sは穴12に完全に収納される。基台1に形成されたそれぞれの穴12へコート種子Sを入れるには、例えば、基台1上に穴の数と同じかそれ以上のコート種子Sを供給し、基台1を振動等させることによってコート種子Sを穴12に入れればよい。
【0019】
すべての穴12にコート種子Sを収納した後、包装用外袋2の出入開口24から基台1を袋内に差し入れ、フラップ22を折り曲げて粘着剤23によって包装用外袋2の外側にフラップ22を貼り付けて、包装用外袋2の出入開口24を閉止する。これにより、穴12の開口の外方が包装用外袋2で覆われ、コート種子Sが穴12からこぼれ落ちるのが防止される。なお、このとき包装用外袋2と穴12の開口との隙間が、コート種子Sの直径未満、より好ましくはコート種子Sの半径未満となるように包装用外袋2の形状を調整しておく必要がある。
【0020】
以上のようにして基台1に収納されたコート種子Sは、輸送や保管中などに外部から加わる衝撃から基台1によって保護され、また、穴12の内壁及び包装用外袋2によってコート種子Sの移動が規制される、換言すれば他のコート種子Sと衝突したり、擦れ合ったりすることが防止されるので、コート種子Sの被覆層の割れが効果的に抑えられるようになる。この実施形態に係る包装体を、穴12の深さ方向を一つの座標軸方向とする三次元直交座標系で見た場合(図1に示すx-y-z座標系)、穴12の内壁及び包装用外袋2によって、三つの座標軸方向すべての、穴内でのコート種子Sの移動が規制されることになる。
【0021】
基台1に形成された穴12には、コート種子Sの収納の妨げとならない範囲において、種子の生育に必要な肥料や農薬等を収納しておいてもよい。これにより肥料や農薬等を別途施用する作業を省くことができる。肥料等は、コート種子Sと同じ穴に収納してもよいし、コート種子Sとは別の穴に肥料等を単独で収納してもよい。なお、植物によっては、発芽した後、ある程度成長した後に肥料を施用するのが望ましいものがあり、このような場合は、コート種子Sと共に穴に収納する肥料としては被覆肥料を用いるのが好ましい。
【0022】
本発明で使用する基台1の材質としては、コート種子Sを外力から保護できるものであれば特に限定はなく、段ボールや各種プラスチック、木材など従来公知ものが使用できる。また例えば不織布や板状に成形したピートモス、水溶性紙などの材料で基台1を成形すると、基台1を育苗床としても利用できる。即ち、コート種子Sを収納した基台1を包装用外袋2から取り出しそのまま水に浸すと育苗床となる。このとき、水分やpHなどの状態を示す指標剤を、基台1の外から見える部分に取り付けておいてもよい。これにより、植物の生育管理が容易に行えるようになる。水分の指標剤としては例えば塩化コバルト等が使用できる。pHの指標剤としてはリトマス紙やBTB等が使用できる。またコート種子Sは湿度の影響を受けやすので、水分の指標剤を基台1に取り付けておくことによって、保管・輸送等における包装体の湿度管理にも利用できる。
【0023】
本発明の包装体に収納するコート種子Sとしては、種子表面を粉体材料で被覆したものであれば特に限定はない。例えば、粉体材料と水溶性バインダーとを用いて種子の表面の被覆したものが挙げられる。この場合、コーティング装置に種子を入れ、コーティング装置を回転させながらバインダー水溶液を種子の表面にスプレー法などによって塗布し、次に、粉体材料を投入して粉体と種子とを結合させることによって、種子表面に被覆層を形成できる。この操作を繰り返すことによって被覆層の層厚を調整できる。コート種子の粒径としては通常1〜5mm程度であり、裸種子の大きさや形状等から粒径及び被覆層厚を適宜決定すればよい。
【0024】
粉体材料としては、例えば、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、シリカ、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、イライト、ハロサイト、ミクロサイト、バーミキュライト、ピートモス、砂、クレーなどが挙げられる。また水溶性バインダーとしては、例えば、デンプン、PVA、CMC、MC、HPC、ゼラチンなどが挙げられる。
【0025】
本発明において対象となる種子に特に限定はなく、農園芸で一般に使用される野菜種子、草花種子、緑化・飼料用種子などに適用できる。例えば、キュウリ、メロン、カボチャ等のウリ科、ナス、トマト、ペチュニア等のナス科、エンドウ、インゲン、アルファルファ、クローバー等のマメ科、タマネギ、ネギ等のユリ科、ダイコン、カブ、ハクサイ、キャベツ、ハナヤサイ、ハボタン、ストック、アリッサム等のアブラナ科、ニンジン、セルリー等のセリ科、ゴボウ、レタス、シンギク、アスター、ジニア、ヒマワリ等のキク科、シソ、サルビア等のシソ科、ホウレンソウ等のアカザ科、ロベリア等のキキョウ科、デルフィニウム等のキンポウゲ科、キンギョソウ等のゴマノハグサ科、プリムラ等のサクラソウ科、ベゴニア等のシュウカイドウ科、ビオラ、パンジー等のスミレ科、ユーストマ等のリンドウ科、デントコーン、シバ類、ソルゴー類等のイネ科の種子などが挙げられる。
【0026】
図3に、前記の実施形態に係る包装体の変形例を示す。図3の包装体は、基台1に形成された穴12の深さが、コート種子Sの直径の略整数倍である点が図1及び図2の包装体と異なる。すなわち、図3の包装体では、1つの穴12に複数個のコート種子Sが収納できる(図3では3粒)。これを前記の三次元直交座標系で見た場合(図1に示すx-y-z座標系)、穴12の内壁によって、3つの座標軸方向のうちx軸方向とy軸方向のコート種子の移動が規制される一方、z軸方向のコート種子の移動については規制されない。ただし、1つの穴に収納可能最大粒数(図3では3粒)のコート種子を収納した場合は、積み重なったコート種子によって、z軸方向のコート種子の移動も制限され、コート種子の被覆層の割れや剥がれが一層防止される。
【0027】
図4に、前記の実施形態に係る包装体の他の変形例を示す。図4の包装体は、基台1の表面全体にシート部材(カバー部材)3を貼着して、穴12の開口を封止したものである。この構成によれば、図1の包装体で用いていた包装用外袋2は特に必要ではなくなる。勿論、図4の包装体をさらに包装用外袋2で包み込んでも構わない。また、基台1からコート種子Sを取り出す場合、必要とする粒数に対応する穴12のシート部材3を剥がし、穴12の開口を重力方向に向けれることにより、必要な数のコート種子Sだけを基台1から取り出せるようになる。
【0028】
図5に示す包装体は、図4の包装体のさらに変形例である。図5の包装体は、基台1に形成された穴12の開口のそれぞれに、小さなシート部材4を個別に貼着して封止したものである。この構成によれば、図4の包装体のような利用者がシート部材の剥がし方を工夫するまでもなく、必要な粒数に対応する穴12のシート部材4を剥がし取ることによって必要な数のコート種子Sを基台1から取り出せるようになる。
【0029】
図6に示す包装体は、穴12と穴12の間に複数の切り込み14が所定間隔で直線状に形成され、少なくとも1つの穴12を有する基台片を基台1から分断可能としたものである。このような包装体では、必要な粒数に対応する穴12を有する基台片を基台1から切り離し、切り離した基台片からシート部材3を剥がし取りコート種子Sを取り出せばよい。基台1を分断する手段としては、切り込みの他、分断部分の基台の厚みを薄くするなど従来公知の手段を用いることができる。
【0030】
本発明で使用するシート部材としては従来公知のものが使用でき、例えばポリエチレンやポリプロピレン、アクリル、ウレタン、ポリエステル等の樹脂フィルム;織布や不織布、紙などシート;アルミニウムなどの金属製シート等が使用できる。
【0031】
図7に示す包装体は、カバー部材として蓋部材5を用いたものである。すわなち、基台1の表面に、穴12の開口面と平行な面内でスライド可能に蓋部材5を取り付けたものである。具体的には、蓋部材5は、平面形状が基台1のそれと同一形状の板状の天板51と、天板51の向かい合う2辺から垂下した一対の側板52a,52bと、側板52a,52bの下端から側板に対して垂直に且つ互いに向き合うように形成された一対の爪部53a,53bとを備える。一方、基台1の向かい合う側壁には、長手方向に溝部15a,15bが形成されている。基台1の溝部15a,15bに蓋部材5の一対の爪部53a,53bを係入することによって、蓋部材5はスライド自在に基台1に取り付けられている。
【0032】
基台1からコート種子Sを取り出す場合は、蓋部材5をスライドさせて、所定列の穴12の封止を解除する。そして、穴12の開口が重力方向に向くようにすれば、解除された所定列の穴12からだけコート種子Sがこぼれ落ち、他の穴は蓋部材5で封止されたままであるのでこぼれ落ちない。
【0033】
以上説明した実施形態において、カバー部材の外側面に、使用説明文や絵柄、宣伝広告などを印字しておいてもよい。例えば、植物の品種や開花図、あるいは発芽した苗の図柄を印刷しておいてもよい。また、基台本体に形成する穴を、文字や絵柄等になるように配列してもよい。
【0034】
図8に、本発明に係る包装体の他の実施形態を示す。図8の包装体が、図1に示した包装体と異なる点は、基台1の表面に、コート種子Sの直径よりわずかに大きい幅の細長い溝(凹部)16が平行に複数個形成されている点にある。以下、この異なる点を中心に説明する。図9に示すように、基台1に形成された溝16は、基台本体11に形成された長孔161の一方の開口をシール材162で封止することによって形成されている。もちろん、基台本体11の厚みよりも浅い穴を形成して、シール材を用いないようにしても構わない。また溝16の深さは、コート種子Sの外径よりもわずかに深く設定されている。これによりコート種子Sは溝16内に1段に列状に収納される。
【0035】
前述のように、従来公知の方法によってすべての溝16にコート種子Sが収納されると、包装用外袋2(図1に図示)、シート部材(図4,5に図示)、蓋部材(図7に図示)などのカバー部材によって溝16の開口が覆われ、輸送・保管中などにコート種子Sが基台1の溝16からこぼれ落ちるのが防止される。
【0036】
以上のようにして包装体に収納されたコート種子Sは、外部衝撃からは基台1によって保護される。また、溝16の深さ方向を一つの座標軸方向とする三次元直交座標系で見た場合(図8に示すx-y-z座標系)、溝16の内壁及びカバー部材によって、z方向及びy方向のコート種子の移動が規制され、他のコート種子と衝突したり、擦れ合ったりすることが防止される。一方、x軸方向のコート種子の移動については規制されないが、溝16の長手方向に、収納可能最大粒数のコート種子Sを収納すれば、隣り合うコート種子によってx軸方向のコート種子の移動も制限され、コート種子の被覆層の割れが一層抑えられる。
【0037】
また、図8に示すように、基台本体11に形成された溝16の端部を切り取り可能とし(図の波線で示す位置)、溝16の端部に開口を設けられるようにすれば、基台を傾けることにより、カバー部材を取り去ることなく、溝16の端部の開口から、複数個のコート種子Sを連続して播くことができるようになる。
【0038】
図10に、図8に示す実施形態に係る包装体の変形例を示す。図10の包装体は、基台1に形成された穴12の深さが、コート種子Sの直径の略整数倍である点が図8及び図9の包装体と異なる。すなわち、図10の包装体では、溝16の深さ方向に数段にコート種子Sを収納できる(図10では3段)。この場合、前記の三次元直交座標系で見た場合(図8に示すx-y-z座標系)、溝16の内壁によって、3つの座標軸方向のうちy軸方向の移動が規制される一方、x軸方向とz軸方向のコート種子の移動は規制されない。ただし、x軸方向とz軸方向のコート種子の移動については、溝16内に、収納可能最大粒数のコート種子を収納した場合は、隣り合うコート種子によってx軸方向とz軸方向のコート種子の移動も制限され、コート種子の被覆層の割れが一層抑えられる。
【0039】
図11に、本発明に係る包装体の他の実施形態を示す。図11の包装体が、図1に示した包装体と異なる点は、基台1の表面に、深さが、コート種子Sの直径よりわずかに深い凹部17が複数個形成されている点にある。これによりコート種子Sは凹部17内に平面状に1段に収納される。前記の三次元直交座標系で見た場合(図11に示すx-y-z座標系)、凹部17の内壁とカバー部材とによって、3つの座標軸方向のうちz軸方向のコート種子の移動が規制される一方、x軸方向とy軸方向のコート種子の移動は規制されない。ただし、x軸方向とy軸方向のコート種子の移動については、凹部17内に、収納可能最大粒数のコート種子を収納した場合は、隣り合うコート種子によってx軸方向とy軸方向のコート種子の移動も制限され、コート種子の被覆層の割れが一層抑えられる。
【0040】
図12に、本発明に係る包装体のさらに他の実施形態を示す。図12の包装体では、コート種子Sが1粒収納可能な複数の凹部18が基台本体11と一体に成形されている。そして基台1の表面にシート部材3が貼着され、凹部18の開口が封止されている。基台1は、例えばプラスチックなど変形可能な材料で成形され、シート部材3は、例えばアルミニウム箔など比較的弱い力で破断可能な材料で形成されている。
【0041】
このような構成によれば、前記の三次元直交座標系で見た場合、凹部18の内壁及びシート部材3によって、3つの座標軸方向すべての、凹部18内でのコート種子Sの移動が規制され、コート種子Sの被覆層の割れが確実に抑えられる。また、凹部18からコート種子Sを取り出す場合は、図12に示すように、凹部18の底面外側から凹部18の開口方向に力を加え、凹部18に収納されているコート種子Sによって、開口を封止しているシート部材3を破って外に取り出せばよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0043】
実施例1
ハクサイ種子500gに対して、粉体材料として平均粒径5μmの珪藻土3500g、バインダーとしてCMC(セロゲン6A・第一工業製薬)の2重量%水溶液1500mlを使用してコーティングを行い、平均粒径が3.0mmのコート種子を作製した。このコート種子100粒を、図1に示す構造の基台(段ボールシート製・長辺140mm、短辺100mm、厚さ4mm、種子収納穴径3.5mm)に収納した。この基台を、プラスチックフィルム製の包装用外袋(縦145mm、横105mm)に入れて封をし包装体とした。次に、事務用机上(天板はメラミン樹脂製の水平面)に包装体を置き、輸送・保管時の上積みによる圧迫を想定して、重し(底面:長辺150mm、短辺120mmの長方形、重量5kg)を包装体上に載せた。10秒後に包装体を取り出して、損傷(被覆層の割れや欠け)を受けたコート種子の数を調べた。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
アルミ蒸着フィルム袋(長辺80mm、短辺60mm)に、実施例1と同じハクサイ種子のコート種子100粒を収納した。このアルミ蒸着フィルム袋を種子用絵袋(紙製・長辺140mm、短辺100mm)に入れ封をして包装体とした。この包装体に対して、実施例1と同じ圧迫処理を行い、損傷を受けたコート種子の数を調べた。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、実施例1の包装体では、軽微な損傷を受けたコート種子が1個あっただけで、残りの99個に損傷はなかった。これに対して、比較例1の包装体では、重大な損傷を受けたコート種子が33個、軽微な損傷を受けたコート種子が7個と、全体の4割ものコート種子が何らかの損傷を受けた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の包装体によれば、輸送や保管中などにおける外部衝撃からコート種子を効果的に保護でき、コート種子の被覆層の割れ等が確実に抑えられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る包装体の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の包装体の縦断面図である。
【図3】図1の包装体の変形例を示す縦断面図である。
【図4】図1の包装体の他の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1の包装体の他の変形例を示す斜視図である。
【図6】図1の包装体の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】図1の包装体の他の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る包装体の他の例を示す斜視図である。
【図9】図9の包装体の縦断面図である。
【図10】図9の包装体の変形例を示す縦断面図である。
【図11】本発明に係る包装体の他の例を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る包装体の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 基台
2 包装用外袋
3 シート部材
4 シート部材
S コート種子
12 穴(凹部)
16 溝(凹部)
17 凹部
18 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子の外周面を粉体材料で被覆したコート種子を収納する包装体であって、
コート種子を収納する複数の凹部が形成された基台と、コート種子が凹部からこぼれ落ちないように前記凹部の開口を覆うカバー部材とを有することを特徴とするコート種子を収納する包装体。
【請求項2】
前記凹部の深さ方向を一つの座標軸方向とする三次元直交座標系において、前記凹部の内壁及び前記カバー部材によって、少なくとも一つの座標軸方向の、前記凹部内でのコート種子の移動を規制する請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記凹部の深さが前記コート種子の直径と略同じである請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記凹部が、コート種子の外径よりもわずかに大きい内径を有する穴である請求項1又は2記載の包装体。
【請求項5】
前記穴の深さが前記コート種子の直径と略同じである請求項4記載の包装体。
【請求項6】
前記凹部が、コート種子の外径よりもわずかに大きい幅を有する長細い溝である請求項1又は2記載の包装体。
【請求項7】
前記細長い溝の深さが前記コート種子の直径と略同じである請求項6記載の包装体。
【請求項8】
前記基台に複数の凹部が形成され、凹部と凹部との間で分断可能とされた請求項1〜7のいずれかの請求項に記載の包装体。
【請求項9】
前記カバー部材が、前記基台を包み込む包装用外袋である請求項1〜8のいずれかの請求項に記載の包装体。
【請求項10】
前記カバー部材が、前記基台に貼着され、前記凹部の開口を封止するシート部材である請求項1〜8のいずれかの請求項に記載の包装体。
【請求項11】
前記基台が可撓性を有し、前記凹部の底面の外側から凹部の開口方向に向かって力を加えることによって、前記凹部に収納されているコート種子で前記シート部材を破りコート種子を外に取り出す請求項10記載の包装体。
【請求項12】
前記カバー部材が、前記基台の表面で、前記凹部の開口面と平行な面内でスライド自在に設けられた蓋部材である請求項1〜8のいずれかの請求項に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−302943(P2008−302943A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149869(P2007−149869)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(596005964)住化農業資材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】