説明

コードリール

【課題】長いコードの出力側端部において電源電圧の低下を簡易に調整することが可能なコードリールを提供する。
【解決手段】コードリール10は、両端がそれぞれ左及び右側板13,14で封止された中空の筒状リール11を有する。軸部材の左軸部17が左側板13に固定され右軸部18が右側板14に固定される。左及び右軸部17,18の内端に固定された固定部材21,22に挟まれて変圧器24が支持されている。右側板14を貫通した右軸部18は台に回転自在に支持されている。左及び右軸部17,18及び固定部材21,22は非磁性材料であるステンレス製であるため、変圧器24と筒状リール11間が磁気的に遮断されており、変圧器24が外部磁界の影響を受けることがなく、コード37による電源電圧降下分を適正に是正できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転自在の筒状リールにコードを巻き取ったり、引き延ばして延長コードとして使用したりするコードリールに係り、特に安定した電圧を供給可能なコードリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコードリールは、例えば特許文献1に示すように、両端がそれぞれ側板で封止された中空の筒状リールと、筒状リールの軸心を貫通して側板に固定された筒軸と、筒軸端部を回転自在に支持する台とを設け、筒状リール外周にコードが巻き付けられて一端のソケットにて電源コンセントに接続されると共に筒状リール内の延びた他端が側板に設けたコンセントにつなげられたものが知られている。しかし、従来のコードリールにおいては、コードの長さが長くなるに従ってコードによる電圧降下が生じるため、コードの長さが数10mから100m以上に及ぶような長いものでは取り出し側の電圧が電源電圧に比べて著しく低くなるという問題がある。このような電源電圧降下の影響を避けるためには、コードの長さが20m程度までに制限されるため、コードリールの使用範囲が限られていた。一方、コードを20m以上の長さにする場合は、使用現場におけるコードの末端において変圧器や安定化電源装置により電圧を電源電圧まで高めて使用するような方法が採られているが、使用現場で別途変圧器等を用意する必要があるため、コードリールの取り扱いが非常に煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであり、長いコードの出力側端部において電源電圧の低下を簡易に調整することが可能なコードリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の特徴は、両端がそれぞれ側板で封止された中空の筒状リールと、筒状リールの軸心を貫通して両側板に固定された軸部材と、筒状リールを軸心を中心として回転自在に支持する台とを設け、筒状リールの外周面にコードが一端にて固定されて他端に設けたコンセントにより交流電源に接続可能にされると共に、コードが筒状リール内に延びて先端が側板に設けた出力側コンセントに接続されてなるコードリールにおいて、軸部材が非磁性材料で形成されると共に、軸方向中間で一端側部と他端側部に分離されており、筒状リールの空間内の中央に変圧器が配設されて、変圧器の鉄心部分の両側が軸部材の一端側部と他端側部に挟まれてその内端間に固定されており、変圧器が一次端子と二次端子にて筒状リール内に延びたコードに介装されていることにある。
【0006】
本発明においては、軸部材が非磁性材料で形成され、その軸方向中間で分離された一端側部と他端側部の間で変圧器が支持されているため、変圧器と筒状リール間が磁気的に遮断されており、変圧器の特性が筒状リールの空間内において外部の磁界に妨害されることなく適正に発揮される。そのため、電源電圧のコードにより生じた電圧降下分については、予め変圧器の一次巻線と二次巻線の巻線比を調整しておくことにより、変圧器で昇圧されて出力側コンセントを通して電源電圧に合わせた適正な出力電圧が給電される。その結果、本発明においては、電源から数10m以上離れた作業現場においても電源電圧に近似した適正な電圧を利用でき、作業現場で別途変圧器等を用意する必要なく簡易かつ安定した作業が可能になる。また、本発明においては、変圧器が軸部材の中間に固定され筒状リールの回転中心に配置されているため、コードを巻き取ったり引き延ばして使用する際に、重い変圧器を内蔵した筒状リールでもその回転がスムーズに行われ、コードの取り扱い作業の負担が軽減される。
【0007】
本発明において、筒状リールの温度を検知する温度センサと、温度センサが予め定められた上限温度以上の温度を検知したとき、これに応じてコードの通電状態を非通電状態に切り替える保護スイッチとを設けることができる。筒状リールにコードの一部が巻き付けられた状態でコードリールが使用されるような場合に、通電によってコードが過熱状態になるが、本発明によれば、筒状リールに取り付けられた温度センサが予め定めた上限温度以上を検知すると、保護スイッチによりコードが非通電状態にされる。そのため、コードの過熱状態が未然に防止され、コードリールの安全が確保される。また、温度センサが上限温度以上の温度を検知した後に、予め定められた下限温度以下の温度を検知したとき、これに応じて保護スイッチによりコードが非通電状態から通電状態に戻されるようにしてもよい。これにより、上限温度以上に過熱されたコードが、その後予め定めた下限温度以下になると、非通電状態から自動的に通電状態に戻されるため、コードの使用状態が簡易に確保される。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、変圧器の特性が筒状リールの空間内において外部の磁界に妨害されることなく適正に発揮され、変圧器の作用により出力側コンセントを通して電源電圧に合わせた適正な出力電圧がもたらされるため、電源から数10m以上離れた作業現場においても電源電圧に近似した良好な電圧を簡易に利用できる。また、本発明においては、変圧器が軸部材の中間に配置され筒状リールの回転中心に配置されているため、コードを巻き取ったり引き延ばして使用する際の筒状リールの回転がスムーズに行われるため、重い変圧器を内蔵したコードリールの操作も簡易に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例であるコードリールの概略構成を示す正面図である。
【図2】コードリールを示す左側面図である。
【図3】コードリールを示す右側面図である。
【図4】コードリールを示す図3のIV−IV線方向の断面図である。
【図5】コードリールを示す図1のV−V線方向の断面図である。
【図6】筒状リールを示す図4のVI−VI線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1から図6は、一実施例である変圧器内蔵型のコードリールの概略構成を正面図、左及び右側面図、IV−IV線方向断面図、V−V線方向断面図及びVI−VI線方向の断面図により示したものである。コードリール10は、両端がそれぞれ左及び右側板13,14で封止された中空の筒状リール11と、筒状リール11の軸心を貫通して左及び右側板13,14に固定された軸部材16と、軸部材16の中間に固定された変圧器24と、軸部材16を回転自在に支持する台27とを設けている。コードリール10の左右については、図1の左右に合わせるものとする。
【0011】
筒状リール11は、鉄製の円筒形容器形状の本体12を有し、本体12両端には本体12より大径の鉄製円板である左及び右側板13,14がボルト止め固定されて本体12内部を封止している。左及び右側板13,14の中心孔13a,14aには、軸部材16が軸方向に貫通して取り付けられている。軸部材16は、ステンレス製の棒であり、軸方向中間で分離された左軸部17と右軸部18により構成されている。左軸部17の右端及び右軸部18の左端には、ステンレス製のU字状の金具である左右の固定部材21,22が取り付けられている。固定部材21,22は、ステンレス薄板の曲げ加工により形成されており、対向する各一対の側板部21a,22aとその一端縁を繋ぐ平板部21b,22bとを有し、側板部21a,22aを軸方向に平行にして平板部21b,22b外面側中央にて左及び右軸部17,18に溶接により垂直に固定されている。
【0012】
筒状リール11の空間内の中央には、外鉄型変圧器24が配設されている。変圧器24は、立体枠形状で内側中央が中心部で仕切られた鉄心25と、鉄心25の中心部に巻きつけられた一次及び二次巻き線26とにより構成され、鉄心25を軸方向に向けて配置されている。一次,二次巻線26の巻線比は、予め後述するコード37による電圧降下分を昇圧できる値に設定されている。鉄心25の左右両側に、上記固定部材21,22が嵌め合わされて、ボルト止めにより鉄心25が固定されている。左軸部17の外端は左側板13の中心孔13aに固定されており、右軸部18は右側板14の中心孔14aを貫通して固定されて外方に突出している。これにより、変圧器24は、左及び右軸部17,18によって、筒状リール11に支持される。また、右軸部18あるいは左軸部17の端部にはハンドル(図示しない)が取り付け可能になっており、ハンドルを操作することにより、筒状リール11を回転させてコードの引き出しや巻取りがスムーズに行われるようになっている。
【0013】
台27は、2本の鉄棒の曲げ加工により形成された一対の脚部材28と、両脚部材28を連結する連結板材29とを設けている。両脚部材28は、互いに対称に対向して配置されており、互いに平行な垂直部28aと、その一端(図示上端)で対向方向に略40°に曲げられた先端で互いに接触する上傾斜部28bと、垂直部28aの他端(図示下端)で両垂直部28aと同一平面内に配置されるように略40°の角度で折り曲げられて互いに広がるように傾斜した下傾斜部28cと、上傾斜部28bの内端で直角に曲げられると共に互いに重ね合わされた把持部28dと、下傾斜部28c先端で把持部28dに平行に曲げられた支持辺部28eとからなる。互いに対向する垂直部28aの下傾斜部28c近傍位置には、それぞれ一対のブラケット28fが固定されて対向方向に突出している。各一対のブラケット28fには、連結板材29が挟まれてネジ止めにより固定されて、一対の脚部材28を繋げている。
【0014】
連結板材29の中心孔29aには、ベアリング31が板面を貫通して固定されている。ベアリング31の中心孔には、上記軸部材16の右軸部18が挿通されて、回転可能にかつ軸方向へ移動不能に取り付けられている。これにより、筒状リール11が台27に回転自在に片持ち支持される。なお、台については、実施例の構造に限るものではなく、種々の形態が可能である。
【0015】
左側板13には、2つの出力端を有する出力側コンセント33が取り付けられている。また、左側板13には、変圧器24を通さず直接コード37につなげられるコンセント34が取り付けられており、出力側コンセント33と選択可能になっている。また、左側板13には、過電流の際に電源を遮断する漏電ブレーカ35が取り付けられている。
【0016】
本体12外周面には、長さ100m程度のコード37が一端にて固定具37aにより固定されて本体12に巻き付け可能にされると共に、他端側のソケット37bにより電源コンセント(図示しない)に接続可能なようになっている。コード37の一端から筒状リール11内に延びたコード38aは、変圧器24の一次巻き線端子26に接続され、さらに変圧器24の二次巻き線端子26に固定されたコード38bは、本体12内壁に固定された保護スイッチである保護リレー41を介して出力側コンセント33に接続される。また、本体12内壁には温度センサ43が固定されており、温度センサ43は保護リレー41の制御端子に接続されている。保護リレー41は常閉接点であり、温度センサ43からの上限温度以上の信号を受けて開放状態にされるようになっており、また温度センサ43からの下限温度以上の信号を受けて開放状態から閉鎖状態に戻されるようになっている。コードリール10は、台27の把持部28dを手等で持って作業現場に搬送され、ソケット37bが電源コンセントに差し込まれる。出力側コンセント33に作業現場で使用される電気機器等のコードに設けたソケットを差し込むことにより、変圧器24を通して電源電圧に近似した電圧が電気機器等に給電される。
【0017】
上記構成の実施例においては、軸部材16の分離された左軸部17と右軸部18及びこれに取り付けられた固定部材21,22が非磁性材料のステンレスで形成されており、これらにより変圧器24が支持されているため、変圧器24の特性が筒状リール11の空間内において外部の磁界に妨害されることなく適正に発揮される。そのため、コード37において生じる電源電圧の電圧降下分については、変圧器24において予め定められた変圧比で昇圧することにより適正に補償され、出力側コンセント33を通して電源電圧に合わせた適正な出力電圧が給電される。その結果、本実施例においては、電源から数10mから100m以上離れた作業現場においても、コードリール10により電源電圧に近似した適正な電圧を供給できるため、作業現場で別途変圧器等を用意する必要なく簡易な作業が可能になる。また、本実施例においては、変圧器24が軸部材16の中間で支持されて筒状リール11の回転中心に対称に配置されているため、コード37を巻き取ったり引き延ばして使用する際に、重い変圧器24を内蔵した筒状リール11でも回転がスムーズに行われ、コード37の取り扱い作業が簡易に行われる。
【0018】
また、本実施例においては、筒状リール11にコード37の一部が巻き付けられた状態でコードリール10が使用されるような場合に、通電によってコード37が過熱状態になるが、その際には、筒状リール11に取り付けられた温度センサ43が予め定めた上限温度以上を検知すると、保護リレー41によりコード37が非通電状態に切り替えられる。そのため、コード37の過熱状態が未然に防止され、コードリール10の安全が確保される。その後、筒状リール11の温度が低下して温度センサ43が予め定めた下限温度以下を検知すると、保護リレー41が再度通電され、コード37が通電状態に戻され使用状態が簡易に確保される。なお、保護リレー41の再通電については、温度センサ43からの入力に代えて、手動スイッチの操作により行うようにすることも可能である。
【0019】
なお、上記実施例においては、外鉄型変圧器が用いられているが、これに代えて内鉄型変圧器を用いることも可能である。また、上記実施例においては、筒状リールは左及び右軸部の端部のいずれかで片持ち支持されているが、両端で支持する構造でもよい。さらに、上記実施例においては、筒状リールが軸部材によって台に支持されているが、これに代えて筒状リールの左右側板によって台に支持される構造にすることも可能である。その他、上記実施例に示したものは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0020】
10…コードリール、11…筒状リール、12…本体、13,14…左及び右側板、16…軸部材、17,18…左及び右軸部、21,22…固定部材、24…変圧器、25…鉄心、26…一次,二次巻線、27…台、31…ベアリング、33…出力側コンセント、37…コード、41…保護リレー、43…温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端がそれぞれ側板で封止された中空の筒状リールと、該筒状リールの軸心を貫通して両側板に固定された軸部材と、前記筒状リールを軸心を中心として回転自在に支持する台とを設け、該筒状リールの外周面にコードが一端にて固定されて他端に設けたコンセントにより交流電源に接続可能にされると共に、該コードが前記筒状リール内に延びて先端が前記側板に設けた出力側コンセントに接続されてなるコードリールにおいて、
前記軸部材が非磁性材料で形成されると共に、軸方向中間で一端側部と他端側部に分離されており、
前記筒状リールの空間内の中央に変圧器が配設されて、該変圧器の鉄心部分の両側が前記軸部材の一端側部と他端側部に挟まれてその内端間に固定されており、
前記変圧器が一次端子と二次端子にて前記筒状リール内に延びた前記コードに介装されていることを特徴とするコードリール。
【請求項2】
前記筒状リールの温度を検知する温度センサと、該温度センサが予め定められた上限温度以上の温度を検知したとき、これに応じて前記コードの通電状態を非通電状態に切り替える保護スイッチとを設けたことを特徴とする請求項1に記載のコードリール。
【請求項3】
前記温度センサが前記上限温度以上の温度を検知した後に、予め定められた下限温度以下の温度を検知したとき、これに応じて前記保護スイッチにより前記コードが非通電状態から通電状態に戻されることを特徴とする請求項2に記載のコードリール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−1545(P2013−1545A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136522(P2011−136522)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(508362310)八和エレック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】