説明

コーナー部材及びそれを用いた収納庫

【課題】 複数の収納庫を積層可能なコーナー部材及びそれを用いた収納庫を提供すること。
【解決手段】 中空部50を有する矩形状の塊状体からなり、第4〜第6の面127、123、124には、中空部50に通じる第1〜第3の窓部24、23a、23bが設けられ、第4の面127側に第1〜第3のフランジ部25a〜25cが形成されるように、第2の面125と第6の面124との間の第1の角部22c、第3の面126と第5の面123との間の第2の角部22a及び第5の面123と第6の面124との間の第3の角部22bが抉られており、第1〜第3のフランジ部25a〜25cには、他の構造体に接合されるコーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔21a〜21cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば貸し倉庫などに用いられるコーナー部材及びそれを用いた収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
海上用のコンテナは、荷物を収納した状態でトラックにより移送され、クレーンなどによりそのまま船に積み込まれる。最近では、このようなコンテナは陸上で貸し倉庫としても用いられ、収納された荷物を所定の場所で保管する。つまりこの種のコンテナは、荷物の移送と所定の場所での保管の双方を兼用している。
陸上での倉庫としての利用は、土地の効率利用から、積み重ねることが要求される。積み重ねられた複数のコンテナを固定する方法として、例えば貫通孔を有するL字状のベースプレートを上段のコンテナの下部コーナー部と下段のコンテナの上部コーナー部に互いが当接するようにそれぞれ固着し、貫通孔に通したボルトによって当接するベースプレート間を固定する方法がある。
ベースプレートには、ボルト用貫通孔の他に、コンテナをクレーン等で移送する場合にクレーンのフックを引っかけるための孔が設けられている(特許文献1参照)。ベースプレートは、コンテナを平面から見たときにコンテナからはみ出した突起部分を有しており、この突起部分にボルト用貫通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−180072号公報(段落[0043]、[0046]、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなベースプレートを用いた固定方法では、コンテナを積み重ねた場合の上下段の固定強度が十分得られないため、強度を更に強め、通常の建造物と同様の強度にしたいとの要望がある。更に、移送時の作業安全性から、コンテナからはみ出す突起部分をできるだけなくしたいとの要望がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、積み重ねた場合の上下段の収納庫の固定強度をより強くすることができ、しかも突起部分をできるだけなくすことが可能なコーナー部材及びそれを用いた収納庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るコーナー部材は、縦横の各辺に柱梁が配置された矩形状の構造体の各コーナーで互いに交差する各前記柱梁が接合されるコーナー部材であって、中空部を有する矩形状の塊状体からなり、縦方向の前記柱梁が溶接により接合される第1の面と、横方向の前記柱梁が溶接により接合される第2及び第3の面と、前記第1の面と反対側にあり、他の前記構造体に接合される前記コーナー部材と当接することが可能な第4の面と、前記第2及び第3の面とそれぞれ反対側にある第5及び第6の面とを有し、前記第4〜第6の面には、前記中空部に通じる第1〜第3の窓部が設けられ、前記第4の面側に第1〜第3のフランジ部が形成されるように、前記第2の面と前記第6の面との間の第1の角部、前記第3の面と前記第5の面との間の第2の角部及び前記第5の面と前記第6の面との間の第3の角部が抉られており、前記第1〜第3のフランジ部には、他の前記構造体に接合される前記コーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔が設けられている。
【0007】
本発明の他の一形態に係る収納庫は、収納庫本体と、コーナー部材とを具備する。
収納庫本体は、縦横の各辺に柱梁が配置された矩形状のものである。
コーナー部材は、前記収納庫本体の各コーナーで互いに交差する各前記柱梁が接合されるものであり、中空部を有する矩形状の塊状体からなり、縦方向の前記柱梁が溶接により接合される第1の面と、横方向の前記柱梁が溶接により接合される第2及び第3の面と、前記第1の面と反対側にあり、他の前記収納庫本体に接合される前記コーナー部材と当接することが可能な第4の面と、前記第2及び第3の面とそれぞれ反対側にある第5及び第6の面とを有し、前記第4〜第6の面には、前記中空部に通じる第1〜第3の窓部が設けられ、前記第4の面側に第1〜第3のフランジ部が形成されるように、前記第2の面と前記第6の面との間の第1の角部、前記第3の面と前記第5の面との間の第2の角部及び前記第5の面と前記第6の面との間の第3の角部が抉られており、前記第1〜第3のフランジ部には、他の前記収納庫本体に接合される前記コーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔が設けられているコーナー部材と上記構造体は、縦横の各辺に柱梁が配置された略矩形状である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る一実施形態のコンテナの斜視図である。
【図2】図1における円Aで囲まれた領域の、コンテナのコーナー部に設けられているコーナー部材の斜視図である。
【図3】図2のコーナー部材の水平断面図である。
【図4】図2のコーナー部材の線B−B´で切断した縦断面図である。
【図5】図2のコーナー部材を矢印Cの方向からみた図であり、コーナー部材の正面図である。
【図6】図2のコーナー部材を矢印Dの方向からみた図であり、コーナー部材の背面図である。
【図7】図2のコーナー部材を上からみた図であり、コーナー部材の上部平面図である。
【図8】図2のコーナー部材を下から見た図であり、コーナー部材の底面図である。
【図9】図2のコーナー部材を矢印Eの方向からみた図であり、コーナー部材の右側面図である。
【図10】図2のコーナー部材を矢印Fの方向からみた図であり、コーナー部材の左側面図である。
【図11】図1に示すコンテナのコーナー部に設けられる他のコーナー部材の水平断面図である。
【図12】図1の円Aで囲まれた領域の拡大斜視図であり、コンテナ本体の柱梁とコーナー部材とが接合されている状態を示す。
【図13】図12に示すコーナー部材を上から見た上部平面図である。
【図14】図12に示すコーナー部材を下から見た底面図である。
【図15】図12に示すコーナー部材の正面図である。
【図16】図12に示すコーナー部材の背面図である。
【図17】図12に示すコーナー部材の右側面図である。
【図18】図12に示すコーナー部材の左側面図である。
【図19】図1に示すコンテナをボルトによって地面に固定した場合におけるコーナー部材付近の正面図である。
【図20】図1に示すコンテナをボルトによって地面に固定した場合におけるコーナー部材付近の左側面図である。
【図21】図1に示すコンテナを複数積み重ねた場合における隣接して積み重なるコンテナ間をボルトによって固定した状態を示すコーナー部材付近の正面図である。
【図22】図1に示すコンテナを複数積み重ねた場合における隣接して積み重なるコンテナをボルトによって固定した状態を示すコーナー部材付近の左側面図である。
【図23】図1のコンテナをボルトを用いて他のコンテナと結合して固定した場合におけるボルトによって固定した状態を示す図であり、上段に配置されるコンテナのコーナー部材の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一形態に係るコーナー部材は、縦横の各辺に柱梁が配置された矩形状の構造体の各コーナーで互いに交差する各前記柱梁が接合されるコーナー部材である。
このコーナー部材は、中空部を有する矩形状の塊状体(例えば鉄の塊)からなり、縦方向の前記柱梁が溶接により接合される第1の面と、横方向の前記柱梁が溶接により接合される第2及び第3の面と、前記第1の面と反対側にあり、他の前記構造体に接合される前記コーナー部材と当接することが可能な第4の面と、前記第2及び第3の面とそれぞれ反対側にある第5及び第6の面とを有し、前記第4〜第6の面には、前記中空部に通じる第1〜第3の窓部が設けられ、前記第4の面側に第1〜第3のフランジ部が形成されるように、前記第2の面と前記第6の面との間の第1の角部、前記第3の面と前記第5の面との間の第2の角部及び前記第5の面と前記第6の面との間の第3の角部が抉られており、前記第1〜第3のフランジ部には、他の前記構造体に接合される前記コーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔が設けられている。
【0010】
このコーナー部材によれば、貫通孔を設けることにより、コーナー部材を備えた収納庫を複数積み重ねる場合、上下に隣接する2つのコーナー部材間を、それぞれに設けられた貫通孔にボルトを挿入しナットで締めることによって、上下間に積み重ねられる収納庫間を固定することができる。
また、コーナー部材に中空部及び窓部を設けることにより、収納庫の移送時におけるクレーンのフックやトラックや船などの移送手段に設けられる固定具を、中空部に窓部を介して出入することができる。
コーナー部材は塊状体からなり、塊状体から出っ張らせるのではなく、抉ることによって一体的に貫通孔を有するフランジ部が設けられている。これにより、収納庫を出っ張らせて貫通孔を有する部分を設ける場合と比較して、積み重ねた上下の収納庫間の固定強度をより強くすることができる。
更に、コーナー部材を塊状体とし、その3つの面で収納庫の3つの柱梁を溶接接合しているので、コーナー部材と構造体との固定強度が高い。
また、コーナー部材は、塊状体を抉った形状であるので、収納庫の状態で突起する部分をできるだけなくすことが可能である。これにより、移送時に突起部によって何かを傷つけたりすることを極力減らすことができ、移送時の作業安全性を確保することができる。
また、第5の面、第6の面にそれぞれ第2窓部及び第3窓部を設けることにより、中空部に雨水などが浸水しても、第2の窓部及び第3の窓部が水の排出口となって外部に速やかに水を流すことができる。これにより、コーナー部材の水による腐食を防止できる。
【0011】
このコーナー部材は、鋳造法により形成されることが好ましい形態である。
これにより、複雑な形状でありながら強度が十分に確保されたコーナー部材を提供することができる。
コーナー部材は、強度及び経済性の観点から鉄を主材料として用いることが好ましい。
【0012】
このコーナー部材では、中空部の床部と第2及び第3の窓部の底部と、並び中空部の天井部と第2及び第3の窓部の上部とは、面一の高さに設けられていることが好ましい形態である。
このコーナー部材によれば、中空部の底部と第2及び第3の窓部の底部との間及び中空部の天井部と第2及び第3の窓部の上部との間に段差がなくなるため、中空部に水がたまることがなく、コーナー部材の腐食を防止できる。中空部の天井部と第2及び第3の窓部の上部についても面一の高さとしたのは、このコーナー部材が転地逆さまに用いられるからである。
【0013】
本発明の他の一形態に係る収納庫は、収納庫本体と、コーナー部材とを具備する。
収納庫本体は、縦横の各辺に柱梁が配置された矩形状のものである。
コーナー部材は、前記収納庫本体の各コーナーで互いに交差する各前記柱梁が接合されるものであり、中空部を有する矩形状の塊状体からなり、縦方向の前記柱梁が溶接により接合される第1の面と、横方向の前記柱梁が溶接により接合される第2及び第3の面と、前記第1の面と反対側にあり、他の前記収納庫本体に接合される前記コーナー部材と当接することが可能な第4の面と、前記第2及び第3の面とそれぞれ反対側にある第5及び第6の面とを有し、前記第4〜第6の面には、前記中空部に通じる第1〜第3の窓部が設けられ、前記第4の面側に第1〜第3のフランジ部が形成されるように、前記第2の面と前記第6の面との間の第1の角部、前記第3の面と前記第5の面との間の第2の角部及び前記第5の面と前記第6の面との間の第3の角部が抉られており、前記第1〜第3のフランジ部には、他の前記収納庫本体に接合される前記コーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔が設けられているコーナー部材と上記構造体は、縦横の各辺に柱梁が配置された略矩形状である。
【0014】
この収納庫によれば、貫通孔を備えるコーナー部材を具備するので、コーナー部材を備えた収納庫を複数積み重ねる場合、上下に隣接する2つのコーナー部材間を、それぞれに設けられた貫通孔にボルトを挿入しナットで締めることによって、上下間に積み重ねられる収納庫間を固定することができる。
また、中空部及び窓部を備えるコーナー部材を具備するので、収納庫の移送時におけるクレーンのフックやトラックや船などの移送手段に設けられる固定具を、中空部に窓部を介して出入することができる。
コーナー部材は塊状体を有し、塊状体から出っ張らせるのではなく、抉ることによって一体的に貫通孔を有するフランジ部が設けられている。これにより、出っ張らせて貫通孔を有する部分を設ける場合と比較して、積み重ねた上下の収納庫間の固定強度をより強くすることができる。
更に、コーナー部材を塊状体とし、その3つの面で収納庫の3つの柱梁を溶接接合しているので、コーナー部材と収納庫本体との固定強度が高い。
また、コーナー部材は、塊状体を抉った形状であるので、収納庫の状態で突起する部分をできるだけなくすことが可能である。これにより、移送時に突起部によって何かを傷つけたりすることを極力減らすことができ、移送時の作業安全性を確保することができる。
また、第5の面、第6の面にそれぞれ第2窓部及び第3窓部を設けることにより、中空部に雨水などが浸水しても、第2の窓部及び第3の窓部が水の排出口となって外部に速やかに水を流すことができる。これにより、コーナー部材の水による腐食を防止できる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る収納庫としてのコンテナの斜視図である。図2〜図11は、図1に示すコンテナの一部を構成するコーナー部材の図である。図2は、図1における円Aで囲まれた領域のコンテナの下部のコーナー部に設けられているコーナー部材の斜視図である。図3、図4は、それぞれ図2のコーナー部材の水平断面図、縦断面図である。図5、図6は、それぞれ図2のコーナー部材を矢印Cの方向又は矢印Dの方向からみた図であり、コーナー部材の正面図、背面図である。図7、図8は、それぞれ図2のコーナー部材を上又は下からみた図であり、上部平面図、底面図である。図9、図10は、それぞれ図2のコーナー部材を矢印Eの方向又は矢印Fの方向からみた図であり、コーナー部材の右側面図、左側面図である。図11は、図1に示すコンテナのコーナー部に設けられている2種類のコーナー部材のうちもう一方のコーナー部材の水平断面図である。図12〜図18は、図1の円Aで囲まれた領域の拡大図であり、コンテナ本体の柱梁とコーナー部材とが溶接接合されている状態を示す。図12は拡大斜視図、図13は上部平面図、図14は底面図、図15は正面図、図16は背面図、図17は右側面図、図18は左側面図である。
【0017】
図1に示すように、収納庫としてのコンテナ1は、矩形状の構造体であるコンテナ本体10と、コンテナ本体10の8つのコーナー14それぞれに溶接接合されたコーナー部材20、1020とからなる。コンテナ1は、荷物の移送と、貸し倉庫のような固定された場所での荷物の保管の双方に用いることが可能である。コンテナ1は、その縦方向に複数積み重ね可能であり、かつ積み重ねた隣り合う上下のコンテナ1間を、コーナー部材20、1020に設けられている貫通孔にボルトを嵌めナットで締めることにより固定可能となっている。このようにコンテナ1は積層可能に設計されているため、狭いスペースで多くのコンテナを配置することができる。
【0018】
詳細な構造については後述するが、コーナー部材20とコーナー部材1020とは、それぞれに設けられる第1の孔24、第1の孔1024の配置が異なるのみで、それ以外の構成は全く同じである。コーナー部材20及びコーナー部材1020は、それぞれ4つずつ計8つコンテナ本体10の各コーナー14に設けられており、略直方体形状のコンテナ本体10の6つの各面において対角線上に位置するコーナー14に同一の形状のコーナー部材が位置するように配置される。コンテナ本体10の上部の4つのコーナー14に設けられるコーナー部材20、1020は、コンテナ本体10の下部の4つのコーナー14に設けられるコーナー部材20、1020の上面と底面とを逆さまにした状態で配置される。
【0019】
コンテナ本体10は略直方体形状を有しており、縦辺に配置された4本の第1柱梁12と、横辺に配置された4本の第2柱梁13及び4本の第3柱梁11とを備える。
第1柱梁12は、水平面(XY平面)に対して垂直な方向(Z軸方向)に延在する。第2柱梁13は、コンテナ本体10の水平面形状の矩形の長辺側に位置し、X軸方向に延在する。第3柱梁11は、コンテナ本体10の水平面形状の矩形の短辺側に位置し、Y軸方向に延在する。第1柱梁12と、第2柱梁13と、第3柱梁11とは互いに垂直となるように位置する。
コンテナ本体10の8つのコーナー14には、コーナー部材20、1020が嵌めこまれる略立方形状の欠け部が設けられている。コンテナ本体10の内部は空洞となっており、物が収納可能となっている。図12〜図18に示すように、第1柱梁12は外形が四角柱状を有しており、第2柱梁13及び第3柱梁11は断面がI字状の形状を有している。
【0020】
次に、図2〜図10、図12〜図18を用いて、コーナー部材20について説明する。
【0021】
図に示すように、コーナー部材20は中空部50を有する矩形状の塊状体からなる。コーナー部材20は例えば鉄を主成分とする材料からなり、鋳造法により形成された鋳物である。これにより極めて強度の高いものとすることができる。
コーナー部材20は、第1の面121と、第1の面と反対側に位置する第4の面127と、第1の面121と第4の面127との間に設けられた側壁面60とを有する。
【0022】
側壁面60は、第2の面125と、第2の面125の反対側に位置する第5の面123と、第3の面126と、第3の面126と反対側に位置する第6の面124を有する。第4の面127側に第1フランジ部25a、第2フランジ部25b、第3フランジ部25c、第4フランジ部25dが形成されるように、第2の面125と第6の面124との間の第1の角部22c、第3の面126と第5の面123との間の第2の角部22a、第5の面123と第6の面124との間の第3の角部22b、及び、第2の面125と第3の面126との間の第4の角部22dが抉れている。
【0023】
第1の面121には、コンテナ本体10の縦方向に配置される第1柱梁12が溶接接合される。第1の面121の平面形状は十字型、言い換えると、矩形の4つ角部がそれぞれ抉れた形状となっている。
【0024】
第4の面127は、第1の面121と所定の間隙をおいて対向配置される。一のコンテナに配置されるコーナー部材の第4の面は、他のコンテナのコーナー部材と当接可能となっている。第4の面127は、その平面形状において、第1の面121より張出した第1〜第4フランジ部25a〜25dを有する。すなわち、コーナー部材20を上からみたとき、第1の面121は第4の面127の平面内に配置され、矩形の4つの角部が抉れた形状の第1の面121の、抉れた部分に対応する領域が第1〜第4フランジ部25a〜25dとなっている。第4の面127は矩形の平面形状を有し、その矩形の4つの角部に対応する領域がフランジ部25となっている。4つの第1〜第4フランジ部25a〜25dはそれぞれ、矩形の1つの角が欠けた五角形の平面形状を有しており、その矩形の欠けた角部122a、122b、122c、122dは、それぞれ対応する第4の面127の角部と対角線上に位置する。4つの第1〜第4フランジ部25a〜25dのうち3つの第1フランジ部25a、第2フランジ部25b、第3フランジ部25cにはそれぞれ1つずつボルト用の円形状の開口の第1貫通孔21a、第2貫通孔21b、第3貫通孔21cが設けられている。
なお、あえて第4フランジ部25dを設けたのは、できるだけ対称的な形状に近づけることで、全体の強度のバランスをとり、全体としての強度を強めるためである。また、複雑な形状の中での強度計算をできるだけ簡単にするためでもある。
図1に示すように、コンテナ1の下部にコーナー部材20を配置した状態で、第4の面127はコンテナ1の底面側に位置し、第2貫通孔21bはコンテナ1の矩形状の底面の角部に対応して位置し、第1、第3貫通孔21a、21cは第2貫通孔21bが設けられた角部を挟み込むように配置された2辺それぞれにほぼ沿って1つずつ位置する。コンテナ1の上部にコーナー部材20を配置した状態で、第4の面127はコンテナ1の上面側に位置し、第2貫通孔21bはコンテナ1の矩形状の上面の角部に対応して位置し、第1、第3貫通孔21a、21cは第2貫通孔21bが設けられた角部を挟み込むように配置された2辺それぞれにほぼ沿って1つずつ位置する。
【0025】
図3に示すように、第4の面127には、その中央部より第2貫通孔21bにやや近い位置に、中空部50に通じる第1の窓部としての第1の孔24が設けられている。第1の孔24は、略楕円状を有し、一対の対向する辺が互いに平行な直線であり、もう一方の一対の対向する辺がやや湾曲した曲線となっており、一対の互いに平行な直線からなる辺の方が、もう一方の一対の対向する曲線からなる辺よりも長く形成されている。図1に示すように、コンテナ1の状態で、第1の孔24の長手方向は、コンテナ1の奥行き方向である第2柱梁13の延在方向(Y方向)と平行となっている。
【0026】
側壁面60は、第1の面121の周縁部に沿って第1の面121及び第4の面127に対して垂直に設けられている。
【0027】
側壁面60は、互いに対向する第2の面125及び第5の面123と、互いに対向する第3の面126及び第6の面124を有する。
第2の面125、第3の面126、第5の面123及び第6の面124は、矩形状の第4の面127の四辺それぞれに対応して設けられる。第3の面126と第5の面123との間の第2の角部22a、第5の面123と第6の面124との間の第3の角部22b、第6の面124と第2の面125との間の第1の角部22c、第2の面125と第3の面126との間の第4の角部22dは抉れており、このように抉れられた形状とすることによって矩形状の塊状体に第1〜第4フランジ部25a〜25dが形成される。
側壁面60、第1の面121及び第4の面127で囲まれて形成される中空部50は、正八角柱形状を有する。このように、中空部50の水平断面形状を正八角形とすることにより、抉れた第2の角部22a、第3の角部22b、第1の角部22c、第4の角部22d部に対応する側壁面60の厚みを十分確保することができ、強度を保持することができる。また、上述したように、第1〜第4フランジ部25a〜25dは矩形の1つの角が欠けた五角形の平面形状を有しており、そのような欠けた角部122a、122b、122c、122dを設けることにより、抉れた第2の角部22a、第3の角部22b、第1の角部22c、第4の角部22d部に対応する側壁面60の厚みを十分確保することができる。中空部50の正八角形状の水平断面において、1つおきに位置する4つの辺は、五角形状の第1〜第4フランジ部25a〜25dの欠けた角部122a、122b、122c、122dに対応する辺と平行となっており、残りの1つおきに位置する4つの辺は、矩形状の第4の面127と平行となっている。
【0028】
第2の面125は横方向に位置する第2柱梁13に溶接接合され、第3の面126は横方向に位置する第3柱梁11に溶接接合される。
【0029】
第5の面123には、Z軸方向に長手方向を有する、中空部50に通じる第2の窓部としての略楕円形状の第2の孔23aが設けられている。同様に、第6の面124にも、Z軸方向に長手方向を有する、中空部50に通じる第3の窓部としての略楕円形状の第3の孔23bが設けられている。このように第2の孔23a及び第3の孔23bを設けることにより、コーナー部材20内の中空部50に雨水等が浸水しても、第2の孔23a及び第3の孔23bが水の排出口となって外部に速やかに水を流すことができる。これにより、コーナー部材20の水による腐食を防止できる。
【0030】
中空部50の床部の高さと第2の孔23a及び第3の孔23bの底部の高さは、可能な限り段差ができずに面一となるように形成されている。中空部50の天井部の高さと第2の孔23a及び第3の孔23bの上部の高さも、同様に可能な限り段差ができずに面一となるように形成されている。
これにより、第1の面121及び第4の面127のどちらを底面側にしてコーナー部材20をコンテナ本体10に接合しても、段差の存在によって中空部50に水がたまるということがなく、コーナー部材20の水による腐食を防止できる。
【0031】
また、上述したように、中空部50の水平断面形状は正八角形となっており、例えば矩形と比較して、角部に水がたまりにくく、腐食しにくい。
【0032】
中空部50の床部及び天井部に、第2の孔23a及び第3の孔23bに近づくにつれ高さが低くなるように傾斜を設けてもよい。これにより、水の排水がより速やかに行われる。
【0033】
中空部50は、コンテナ1をクレーン等を用いて運ぶ際のクレーンのフックやロープなどの挿入箇所となっており、第1の孔24、第2の孔23a及び第3の孔23bよりフックやロープ等が出入される。
また、中空部50は、コンテナ1を船やトラック等の移動手段で移送する際の移動手段に設けられている固定具の挿入箇所となり、例えば第4の面127に設けられている第1の孔24に固定具を挿入してコンテナ1を固定可能となっている。これにより、移送時による揺れによってコンテナ1が移動しないよう固定することができる。
【0034】
上述したように、本実施形態におけるコンテナ1において、第4の面127に設けられる第1の孔24、1024の配置のみが異なる2種類のコーナー部材20、1020が用いられる。図11に、コーナー部材1020の水平断面図を示す。尚、コーナー部材20と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図11に示すように、コーナー部材1020においては、第4の面127の中央部より第2貫通孔21bにやや近い位置に中空部50に通じる窓部としての略楕円形の第1の孔1024が設けられている。
第1の孔1024は、一対の対向する辺が互いに平行な直線であり、もう一方の一対の対向する辺がやや湾曲した曲線となっており、一対の互いに平行な直線からなる辺の方が、もう一方の一対の対向する曲線からなる辺よりも長く形成されている。
図1に示すように、コンテナ1の状態で、第1の孔1024の長手方向は、コンテナ1の奥行き方向である第2柱梁13の延在方向(Y方向)と平行となっている。
【0036】
図19及び図20は、それぞれ、コンテナ1を陸上で固定配置した状態の正面図、左側面図であり、図1の円Aで囲まれた領域に対応する。尚、ここでは、コーナー部材20を例に挙げて説明するが、コーナー部材1020も同様に固定される。
【0037】
図19及び図20に示すように、陸上でコンテナ1を固定配置する場合、アンカーボルト70が埋め込まれた基礎40上に床板41を介してコンテナ1のコーナー部材20を配置する。そして、床板41及びコーナー部材20の第4の面127に設けられた3つの貫通孔21a〜21cにアンカーボルト70を貫通させ、座金71を嵌め、2つのナット42で締め(ダブルナット構造)ることにより、基礎40にコンテナ1が固定配置される。
なお、3つの貫通孔21a〜21cにアンカーボルト70を貫通させて固定するのではなく、3つの貫通孔21a〜21cのうちいずれか2つの貫通孔にアンカーボルト70を貫通させて固定するようにしてももちろん構わない。
【0038】
図21及び図22は、それぞれ、複数のコンテナ1を積み重ねた際の隣り合う上下のコンテナ1間を結合固定した場合におけるコーナー部材の正面図、左側面図であり、図1の円Aで囲まれた領域に対応する。尚、ここでは、下段のコンテナ1のコーナー部材1020とそれに対応して配置される上段のコンテナのコーナー部材20との固定状態を例にあげて説明するが、下段のコンテナ1のコーナー部材20とそれに対応して配置される上段のコンテナのコーナー部材1020との固定方法は同様である。
図23は、コンテナ1を、ボルトを用いて他のコンテナ1と結合して固定した場合、上段に配置されるコンテナ1のコーナー部材20の平面図である。
【0039】
図21〜図23に示すように、複数のコンテナ1を上下方向に積み重ねし、隣り合う上下のコンテナ1間を結合固定する場合、下段のコンテナ1のコーナー部材1020に設けられた貫通孔21a〜21cと上段のコンテナ1のコーナー部材20に設けられた貫通孔21a〜21cとを対応させ、下段のコンテナ1のコーナー部材1020に設けられた貫通孔21a〜21cから、座金171を嵌めたボルト170を通す。その後、上段のコンテナ1のコーナー部材20に設けられた貫通孔21a〜21cから突出したボルト170に座金171を嵌め、ナット142で締める。隣り合う上下のコンテナ1間で対応して重なり合う4か所のコーナー部材それぞれで3つずつボルト170を締めることにより、上下に配置されるコンテナ1間を結合固定する。
なお、3つの貫通孔21a〜21cにボルト170を通して3箇所で固定しているが、3つの貫通孔21a〜21cのうちいずれか2つの貫通孔にボルト170を通して2箇所で固定するようにしてももちろん構わない。
【0040】
以上のように、本実施形態のコンテナに用いられるコーナー部材は、コンテナの移送時におけるクレーンのフックや移送手段に設けられる固定具が出入される中空部及び孔を有し、移送機能を有する。
更に、コーナー部材は、移送時におけるコンテナの固定の他、陸上での固定した場所での荷物保管時のコンテナの固定に用いられる貫通孔を有し、固定機能を有する。
本実施形態においては、コーナー部材を、移送機能をもたせるための中空部及び孔を有する塊状体とし、出っ張らせるのではなく、抉って一体的に貫通孔を有するフランジ部を設けている。これにより、出っ張らせて貫通孔を有する部分を設ける場合と比較して、積層した上下のコンテナ間の固定強度をより強くすることができる。
更に、コーナー部材を塊状体とし、コンテナの3つの柱梁に溶接接合しているため、コーナー部材とコンテナ本体との固定強度が高い。また、コーナー部材は、塊状体を抉った形状であるので、コンテナの状態で突起する部分をできるだけなくすことが可能である。これにより、移送時に突起部によって何かを傷つけたりすることを極力減らすことができ、移送時の作業安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…コンテナ
10…コンテナ本体
11…第3柱梁
12…第1柱梁
13…第2柱梁
14…コーナー部
20、1020…コーナー部材
21a…第1貫通孔
21b…第2貫通孔
21c…第3貫通孔
22a…第2の角部
22b…第3の角部
22c…第1の角部
23a…第2の孔
23b…第3の孔
24…第1の孔
25a…第1フランジ部
25b…第2フランジ部
25c…第3フランジ部
50…中空部
121…第1の面
123…第5の面
124…第6の面
125…第2の面
126…第3の面
127…第4の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横の各辺に柱梁が配置された矩形状の構造体の各コーナーで互いに交差する各前記柱梁が接合されるコーナー部材であって、
中空部を有する矩形状の塊状体からなり、
縦方向の前記柱梁が溶接により接合される第1の面と、横方向の前記柱梁が溶接により接合される第2及び第3の面と、前記第1の面と反対側にあり、他の前記構造体に接合される前記コーナー部材と当接することが可能な第4の面と、前記第2及び第3の面とそれぞれ反対側にある第5及び第6の面とを有し、
前記第4〜第6の面には、前記中空部に通じる第1〜第3の窓部が設けられ、
前記第4の面側に第1〜第3のフランジ部が形成されるように、前記第2の面と前記第6の面との間の第1の角部、前記第3の面と前記第5の面との間の第2の角部及び前記第5の面と前記第6の面との間の第3の角部が抉られており、
前記第1〜第3のフランジ部には、他の前記構造体に接合される前記コーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔が設けられている
コーナー部材。
【請求項2】
請求項1記載のコーナー部材であって、
鋳造法により形成されている
コーナー部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコーナー部材であって、
前記中空部の床部と前記第2及び第3の窓部の底部と、並び前記中空部の天井部と前記第2及び第3の窓部の上部とは、それぞれ面一の高さに設けられている
コーナー部材。
【請求項4】
縦横の各辺に柱梁が配置された矩形状の収納庫本体と、
前記収納庫本体の各コーナーで互いに交差する各前記柱梁が接合されるコーナー部材であって、中空部を有する矩形状の塊状体からなり、縦方向の前記柱梁が溶接により接合される第1の面と、横方向の前記柱梁が溶接により接合される第2及び第3の面と、前記第1の面と反対側にあり、他の前記収納庫本体に接合される前記コーナー部材と当接することが可能な第4の面と、前記第2及び第3の面とそれぞれ反対側にある第5及び第6の面とを有し、前記第4〜第6の面には、前記中空部に通じる第1〜第3の窓部が設けられ、前記第4の面側に第1〜第3のフランジ部が形成されるように、前記第2の面と前記第6の面との間の第1の角部、前記第3の面と前記第5の面との間の第2の角部及び前記第5の面と前記第6の面との間の第3の角部が抉られており、前記第1〜第3のフランジ部には、他の前記収納庫本体に接合される前記コーナー部材と固定するためのボルトを貫通することが可能な貫通孔が設けられているコーナー部材と
を具備する収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−47231(P2011−47231A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198031(P2009−198031)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(707002514)株式会社加瀬倉庫 (2)
【Fターム(参考)】