説明

コールドテーブル型冷却装置

【課題】天板や冷却パイプの損傷を防止するとともに、冷却状態を均一にし、双方のメンテナンス性を大幅に改善するコールドテーブル型冷却装置を提供する。
【解決手段】蓄冷性の天板1と、冷凍機8からの冷媒を流通させる冷却パイプ2が金属板3の板面に取り付けられて構成された冷却ユニット18とを備え、上記天板1と冷却ユニット18は、上記天板1の下面に上記金属板3の他面を対面させて天板1に冷熱を伝達可能な状態のセパレート状態で配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面の天板を冷却して調理台とすることができるコールドテーブル型冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、保冷を必要とする食品を陳列したり調理したりするために、天板を冷却できるようにした装置が使用されている(例えば下記の特許文献1および2)。
【特許文献1】実公昭63−12738号公報
【特許文献2】特開平11−63804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の装置は、図6に示すように、チーズやケーキのように保冷を必要とする食品を陳列するための保冷ワゴンに関するもので、大理石のように蓄熱性のある材料で形成された陳列台40の下部空間にダクト41を設け、上記ダクト41に冷気吹出口42から吹出した冷気を通過させることにより陳列台40を冷却するものである。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、陳列台40に冷気を当てて冷却しているため、陳列台40が所定の低温まで冷却されるのに時間がかかるという問題がある。また、陳列台40に冷気が均一に当たらないときは部分的な温度むらが生じ、収容される食品の鮮度を低下させる恐れもある。また、冷気の循環によって温度が変動し易く、冷却部分の温度を一定に保つことが難しいという問題もある。
【0005】
一方、上記特許文献2の装置は、図7に示すように、断熱板47の上に大理石からなる石板45を積層し、上記石板45の下面に冷凍機(図では隠れて見えない)からの冷却パイプ46を直接這わせて直接石板45を冷却しようとするものである。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の装置では、冷却パイプ46を大理石の石板45の下面に直接這わせるため、石板と冷却パイプ46は理論的に完全に接触したとしても線接触でしかなく、現実には冷却パイプ46および石板45の歪みにより接触面積が理論値よりも大幅に小さくなるため、冷熱の伝達効率が非常に悪いという問題がある。このため、冷却パイプ46と石板45の接触面積を得ようとして、石板45に冷却パイプ46を接着剤等で固着してしまうと、冷却パイプ46や石板45に損傷が生じたときのメンテナンスが極めて困難になる。また、冷却パイプ46と石板45の接触面性が小さいことから、石板45の冷却状態が不均一になりやすい。そのうえ、石板45上での作業の衝撃力が石板45を通じて直接冷却パイプに加わることから、石板45や冷却パイプ46の損傷も避け難く、現実問題としてこの方法は採用できないのが実情である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、天板や冷却パイプの損傷を防止するとともに、冷却状態を均一にし、双方のメンテナンス性を大幅に改善するコールドテーブル型冷却装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のコールドテーブル型冷却装置は、蓄冷性の天板と、冷凍機からの冷媒を流通させる冷却パイプが金属板の板面に取り付けられて構成された冷却ユニットとを備え、上記天板と冷却ユニットは、上記天板の下面に上記金属板の他面を対面させて天板に冷熱を伝達可能な状態のセパレート状態で配置されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコールドテーブル型冷却装置によれば、天板と冷却ユニットを、天板に冷熱を伝達可能な状態のセパレート状態で配置していることから、天板上での作業の衝撃が冷却ユニットに伝達される際に金属板等の存在により緩和されることから、冷却パイプの損傷を軽減できる。また、金属板の板面に冷却パイプを取り付けて冷却ユニットを構成していることから、冷却パイプと金属板は例えばロウ付けやハンダ付け等の手法により、接触面積が大きく熱伝達が良好な状態で固着することが可能なため、熱伝達効率が格段に向上する。また、冷却パイプで均一に冷却された金属板と天板を対面させることにより天板に冷熱を伝達することから、天板を金属板との面接触で冷却することになり、天板自体の冷却効率も飛躍的に向上するうえ、天板の冷却状態がほぼ完全に均一になる。しかも、天板と冷却ユニットがセパレート状態で配置されていることから、天板が損傷すれば天板だけを交換すればよく、冷却パイプが損傷すれば冷却ユニットを交換すればよいので、冷却パイプと天板双方のメンテナンス性が大幅に改善される。
【0010】
本発明において、上記冷却ユニットの金属板と天板との間に、放熱用コンパウンドを介在させている場合には、金属板と天板のひずみからくる微小な隙間が放熱用コンパウンドで埋められて金属板と天板が完全に面接触することから、冷熱の伝達効率がさらに向上し、天板の冷却状態もより均一化する。
【0011】
本発明において、上記蓄冷性の天板は石材から形成されたものである場合には、天板の蓄冷性を確保できるうえ、硬くて脆い石材と冷却パイプは損傷特性が異なる部材でありいずれか一方が損傷することが多いことから、天板と冷却パイプをそれぞれメンテナンスできる本発明の作用が顕著で効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のコールドテーブル型冷却装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のコールドテーブル型冷却装置の正面図、図2は平面図、図3は側面図である。この実施形態では、本発明のコールドテーブル型冷却装置を、0℃〜−30℃に冷やした天板の上で、フルーツやナッツなどの食材とアイスクリーム、さらに豆乳・牛乳・ヨーグルト・コーラなどのドリンクを混ぜあわせて、その場で作りあげるアイス菓子製造作業台に適用した例を示している。
【0014】
この装置は、フレーム9に冷凍機8が搭載され、上面には蓄冷性に優れた大理石等の石材から形成された天板1と、上記冷凍機8からの冷媒を流通させる冷却パイプ2が金属板3の板面に取り付けられて構成された冷却ユニット18が載置されている。また、上記天板1の奥側には、アイス菓子の原料となるフルーツやドリンクを収容する収容ケースとしてのホテルパン10が、この例では5つ横並びに配置されている。図において、20は上記天板1の片側辺に沿って設けられ、天板1上を洗い流した廃液を受けるシンク20であり、19は廃液の排出口19、11は排水コック11である。また、21は天板1の温度調節を行うためのコントロールパネル21である。
【0015】
図4は、上記天板1と冷却ユニット18について詳しく説明する図である。
【0016】
上記天板1と金属板3は、略同じ大きさ形状でこの例では長方形状に形成されている。上記金属板3は、この例では熱伝導効率の良い銅板が採用されている。そして、上記金属板3の板面(この例では下面)に、銅管から形成された冷却パイプ2が這わせてある。上記冷却パイプ2は、金属板3の1つの角部近傍から長辺に沿って角部近傍に向かって延び、3回のUターンを繰り返しながら同様に長辺に沿って延び、最初の角部から短辺を挟んで向かい合う角部近傍まで延びている。
【0017】
この状態で、冷却パイプ2は、金属板3の下面に低温可溶金属であるはんだ5により固着されている。はんだ5は、蛇行する冷却パイプ2に沿って金属板3との接触部分のほぼ全長にわたって融着されている。
【0018】
この状態で冷却パイプ2と金属板3からなる冷却ユニット18は、断熱材6の上面に冷却パイプ2を下側にした状態で載置される。このとき、上記冷却パイプ2は、断熱材6の上面に、上記冷却パイプ2と対応するように蛇行して設けられ溝7内に収容される。これにより、冷却パイプ2に不要な力を加えて冷却パイプ2を歪めたりはんだ5による固着を外してしまったりすることによる冷却ユニット18の損傷を防止する。
【0019】
そして、上記冷却ユニット18の金属板3の上に天板1が積層状に載置されている。この状態で、上記天板1と冷却ユニット18は、上記天板1の下面に上記金属板3の他面(すなわち冷却パイプ2が固着されていない上面)を対面させて天板1に冷熱を伝達可能な状態のセパレート状態で配置されている。
【0020】
さらに、上記冷却ユニット18の金属板3と天板1との間には、放熱用コンパウンド4が介在されている。上記放熱用コンパウンド4は、この例では、シリコーンオイルを基油とし、例えばアルミナ等の熱伝導性の良好な金属酸化物粉末を配合したグリース状の放熱用シリコーンコンパウンドである。
【0021】
図5は、本実施形態における冷凍機8の冷却回路を示し、コンプレッサ12、コンデンサ14、蒸発器15および冷却パイプ2を配管13で接続して冷却回路を形成しており、コンデンサ14と蒸発器15の間には冷媒に混入するゴミや水分を除去するディハイドレータ16と、コンデンサ14で凝縮された高圧液冷媒の温度と沸点を下げるキャピラリチューブ17が配管13を介して接続されている。
【0022】
つぎに、本実施形態の動作を説明する。図示しない操作パネルを操作して装置をONにすると、コンプレッサ12の運転が開始され、配管13を介して高圧気体の冷媒(以下、高圧ガス冷媒という)がコンデンサ14に供給される。この高圧液冷媒は、コンデンサ14を通過する空気と熱交換を行うことにより凝縮して高圧液体の冷媒(以下、高圧液冷媒という)となる。
【0023】
高圧液冷媒は、配管13を介してディハイドレータ16に挿通されることによってゴミや水分を除去された後、配管13に接続されたキャピラリチューブ17を通過する際に温度と沸点を下げられた低圧液冷媒となる。この低圧液冷媒は蒸発器15に供給され、空気の温度差に基づいて蒸発する。この蒸発時に気化熱を奪うことによって冷気を発生させる。
【0024】
蒸発器15を通過した低圧液冷媒は、配管13を介して冷却パイプ2に供給され、冷却パイプ2に低圧液冷媒が流通すると、冷媒の冷熱が冷却パイプ2およびはんだ5等を介して金属板3に伝達される。冷却パイプ2、金属板3、固着部材としてのはんだ5ともに熱伝導性の良好な金属材料から形成されているため、冷媒の冷熱はすばやく金属板3全体に伝達される。
【0025】
そして、金属板3と天板1とは、放熱用コンパウンド4を介して密着していることから、天板1は金属板3の全面から冷熱の伝達を受け、ほとんど冷却むらのない状態で急速に冷却される。そして、大理石等の石材の蓄冷効果でむらのない冷却状態を維持することができる。
【0026】
また、上記天板1の温度調節は、コントロールパネル21において所望の温度設定を行い、温度センサ(図示せず)により金属板3の温度を測定して設定温度を維持するよう、コンプレッサ12の運転をオンオフしたりコンデンサ14での熱交換を調節したりして冷凍機8の運転制御を行い温度制御を行う。このように、蓄冷性の天板1ではなく、温度変化しやすい金属板3の温度を測定して温度制御を行うため、金属板3の温度を的確に設定温度に維持し、天板1を所望の温度に維持することができるのである。
【0027】
本実施形態の装置では、つぎのような作用効果を奏する。
【0028】
すなわち、天板1と冷却ユニット18を、天板1に冷熱を伝達可能な状態のセパレート状態で配置していることから、天板1上での作業の衝撃が冷却ユニット18に伝達される際に金属板3や放熱用コンパウンド4等の存在により緩和されることから、冷却パイプ2の損傷を軽減できる。また、金属板3の板面に冷却パイプ2を取り付けて冷却ユニット18を構成していることから、冷却パイプ2と金属板3は例えばロウ付けやハンダ付け等の手法により、接触面積が大きく熱伝達が良好な状態で固着することが可能なため、熱伝達効率が格段に向上する。また、冷却パイプ2で均一に冷却された金属板3と天板1を対面させることにより天板1に冷熱を伝達することから、天板1を金属板3との面接触で冷却することになり、天板1自体の冷却効率も飛躍的に向上するうえ、天板1の冷却状態がほぼ完全に均一になる。しかも、天板1と冷却ユニット18がセパレート状態で配置されていることから、天板1が損傷すれば天板1だけを交換すればよく、冷却パイプ2が損傷すれば冷却ユニット18を交換すればよいので、冷却パイプ2と天板1双方のメンテナンス性が大幅に改善される。
【0029】
また、上記冷却ユニット18の金属板3と天板1との間に、放熱用コンパウンド4を介在させているため、金属板3と天板1のひずみからくる微小な隙間が放熱用コンパウンド4で埋められて金属板3と天板1が完全に面接触することから、冷熱の伝達効率がさらに向上し、天板1の冷却状態もより均一化する。
【0030】
また、上記蓄冷性の天板1は石材から形成されたものであるため、天板1の蓄冷性を確保できるうえ、硬くて脆い石材からなる天板1と冷却パイプ2は損傷特性が異なる部材でありいずれか一方が損傷することが多いことから、天板1と冷却パイプ2をそれぞれメンテナンスできる本発明の作用が顕著で効果的である。
【0031】
本実施形態では、蓄冷性の材料として大理石の天板1を用いたが、他の石材を利用することもできる。また、石材以外の蓄冷性に優れる材料を使用することもできる。また、金属板3に布設される冷却パイプ2の布設パターンも、要求される温度条件等に基づいて適切なパターンを選択することができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、本発明をアイス菓子製造作業台に適用した例を示したが、これに限定するものではなく、コールドテーブル型冷却装置であれば、陳列台、天板1が調理台になった冷蔵庫、天板1上にシンクを設けた冷蔵庫等、各種の装置に適用できる趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のコールドテーブル型冷却装置を示す正面図である。
【図2】上記コールドテーブル型冷却装置を示す平面図である。
【図3】上記コールドテーブル型冷却装置を示す側面図である。
【図4】上記コールドテーブル型冷却装置の要部を示す断面図である。
【図5】上記コールドテーブル型冷却装置の冷却回路を示す図である。
【図6】従来例を示す一部破断正面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 天板
2 冷却パイプ
3 金属板
4 放熱用コンパウンド
5 はんだ
6 断熱材
7 溝
8 冷凍機
9 フレーム
10 ホテルパン
11 排水コック
12 コンプレッサ
13 配管
14 コンデンサ
15 蒸発器
16 ディハイドレータ
17 キャピラリチューブ
18 冷却ユニット
19 排出口
20 シンク
21 コントロールパネル
40 陳列台
41 ダクト
42 冷気吹出口
45 石板
46 冷却パイプ
47 断熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄冷性の天板と、
冷凍機からの冷媒を流通させる冷却パイプが金属板の板面に取り付けられて構成された冷却ユニットとを備え、
上記天板と冷却ユニットは、上記天板の下面に上記金属板の他面を対面させて天板に冷熱を伝達可能な状態のセパレート状態で配置されていることを特徴とするコールドテーブル型冷蔵庫。
【請求項2】
上記冷却ユニットの金属板と天板との間に、放熱用コンパウンドを介在させている請求項1記載のコールドテーブル型冷蔵庫。
【請求項3】
上記蓄冷性の天板は石材から形成されたものである請求項1または2記載のコールドテーブル型冷蔵庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−285540(P2007−285540A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110474(P2006−110474)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(506125627)株式会社エターナル (1)
【Fターム(参考)】