説明

コーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システム

【課題】 本発明は、安定した測定が行える、コーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システムを提供するものである。
【解決手段】 室内吸気部2により、外気を、コーンカロリメータ1に向けて供給する。コーンカロリメータ1においては、試料の燃焼が、従来と同様にして行われる。
燃焼により生成された燃焼ガスは、室外排気部3を介して外部に排出される。
このシステムによれば、外気を、コーンカロリメータ1に送り込んでいるので、室内空気における条件変動があっても、この条件変動に影響されずに、安定した燃焼熱量測定を行うことができる。これにより、得られる測定データの精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンカロリメータを用いて、試験体の燃焼熱量を測定するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーンカロリメータとは、酸素消費法を用いて、試料の発熱速度や発熱量を求める装置である。試料の燃焼による発熱量と、燃焼の過程で消費される酸素量との関係は、試料に依らずに一定(酸素1kgあたり13.1MJ)であることが知られている。コーンカロリメータは、この法則に基づき、燃焼による消費酸素量を利用して、試料の発熱量を求めている。ここで、基準となる酸素濃度は大気酸素濃度となっている。発熱速度は、以下の計算式によって求められる。

【0003】
ところで、燃焼しにくい試料や燃焼量の少ない試料の発熱量等をコーンカロリメータで測定すると、測定誤差が非常に大きくなるという現象を生じる。本発明者がその原因を調査したところ、次のような知見を得た。
【0004】
すなわち、低発熱量の試料においては、消費される酸素量が非常に少ない。一方、室内空気の酸素濃度は、燃焼部分近傍の生命活動や燃焼自体の影響等により、若干ではあるが変動する。このために、低発熱量の試料においては、得られた酸素消費データのSN比が著しく劣化しているという知見を得た。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の知見に基づいてなされたものである。本発明の目的は、安定した測定が行える、コーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の、コーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システムは、コーンカロリメータと、室内吸気部とを備えている。前記コーンカロリメータは、実質的に閉鎖された室内に配置されている。前記室内吸気部は、外気を前記室内に導入するものである。
【0007】
請求項2に記載の燃焼熱量測定システムは、前記請求項1に記載のものにおいて、さらに室外排気部を備えている。前記室外排気部は、前記室内の空気を室外に排出するものである。
【0008】
請求項3に記載の燃焼熱量測定システムは、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記コーンカロリメータが、空気取り入れ部を備えているものである。前記室内吸気部は、前記コーンカロリメータの空気取り入れ部の近傍に向けて、前記外気を導入するものとなっている。
【0009】
請求項4に記載の燃焼熱量測定システムは、請求項3に記載のものにおいて、前記室内吸気部が、前記コーンカロリメータの空気取り入れ部に導入される外気の流速を低くするためのダウンフロー形成部をさらに備えているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定した測定が行える、コーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る、コーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システムを、添付図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態のシステムは、コーンカロリメータ1と、室内吸気部2と、室外排気部3とと主要な構成要素として備えている。
【0013】
コーンカロリメータ1は、実質的に閉鎖された部屋(室)4の内部に配置されている。ここで、「実質的に閉鎖された」とは、通常の測定装置類を配置する部屋のように、外気の導入量が少ないか、ほぼ完全に遮断されている状態を言う。
【0014】
コーンカロリメータ1は、空気取り入れ部11と、加熱炉12と、本体13と、集煙フード14と、排気ダクト15と、収集・排気ブロア16とを主要な要素として備えている。
【0015】
空気取り入れ部11は、加熱炉12の下部に形成されており、加熱炉12に必要な空気を取り入れる部分である。
【0016】
加熱炉12は、試料ホルダや燃焼部を備えており、試料を加熱することができるようになっている。
【0017】
本体13は、排気ダクト15の内部を流れる燃焼ガスの性状を測定するための流量測定部や酸素分析計(図示せず)を備えている。本体13は、試料の燃焼により消費された酸素量に基づいて、試料の発熱量や発熱速度を算出することができるようになっている。算出されたデータは、適宜な出力装置(図示せず)に出力される。
【0018】
集煙フード14は、加熱炉12の上方に配置されており、加熱炉12において生成された燃焼ガスを収集するものである。
【0019】
排気ダクト15は、集煙フードで収集された燃焼ガスを搬送し、収集・排気ブロア16を介して上方に排出するようになっている。
【0020】
コーンカロリメータ1の構成は従来と同様なので、これ以上詳細な説明は省略する。
【0021】
室内吸気部2は、吸気路21と、吸気用ブロア22と、ダウンフロー形成部23とを備えている。
【0022】
吸気路21は、室4の内部から室外に延長されており、室外から外気を室内に取り入れることができるようになっている。
【0023】
吸気用ブロア22は、吸気路21の中間に取り付けられている。吸気用ブロア22は、吸気路21に外気を導入して、この外気をダウンフロー形成部23に送るようになっている。
【0024】
ダウンフロー形成部23は、室4の内部に配置されており、かつ、吸気路21の終端に接続されている。また、ダウンフロー形成部23の下面は、ほぼ全面にわたって開口されている。ダウンフロー形成部23は、流路の横断面積を吸気路21の終端よりも大きくすることで、導入された外気の流速を減少させることができるようになっている。さらに、ダウンフロー形成部23の下面は、コーンカロリメータ1の加熱炉12に隣接する位置に配置されている。これにより、室内吸気部2は、コーンカロリメータ1の空気取り入れ部11の近傍に、安定して外気を導入するものとなっている。
【0025】
室外排気部3は、回収フード31と、排気路32と、排気用ブロア33とを備えている。
【0026】
回収フード31は、コーンカロリメータ1の排気ダクト15の出口近傍に配置されており、このダクト15からの排気を回収するようになっている。
【0027】
排気用ブロア33は、排気路32の中間に取り付けられている。
【0028】
排気路32は、回収フード31で回収された排気を、排気用ブロア33を介して室外に送り出すことができるように、室外まで延長されている。
【0029】
以上の構成により、室外排気部3は、室内の空気を室外に排出することができるようになっている。
【0030】
次に、前記のように構成された燃焼熱量測定システムの動作を説明する。
【0031】
まず、室内吸気部2の吸気用ブロア22を動作させて、吸気路21及びダウンフロー形成部23を経由して、外気を、コーンカロリメータ1の空気取り入れ部11の近傍に向けて送り出す。
【0032】
コーンカロリメータ1においては、加熱炉12に配置された試料の燃焼試験が、従来と同様にして行われる。
【0033】
燃焼により生成された燃焼ガスは、排気ダクト15を介して、室外排気部3の回収フード31に送られ、さらに、排気路32及び排気用ブロア33を介して外部に排出される。
【0034】
コーンカロリメータ1を室外に配置した場合には、燃焼のための炎が風の影響で揺らぎ、燃焼状態が変化するため、燃焼熱量の測定精度が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、コーンカロリメータ1を室内に配置したので、安定した燃焼が可能であり、測定精度の向上が図れる。
【0035】
また、本実施形態のシステムによれば、外気を、コーンカロリメータ1に送り込んでいるので、室内に配置されたコーンカロリメータ1から生じる燃焼排気による、室内空気における条件変動を抑えることができる。また、室内空気における条件変動があっても、この条件変動に影響されずに、比較的安定した燃焼熱量測定を行うことができる。これにより、得られた測定データの精度が向上するという利点がある。
【0036】
また、本実施形態のシステムによれば、コーンカロリメータ1の空気取り入れ部11の近傍に向けて外気を送り込んでいるので、単に室内に外気を導入する場合に比較して、一層安定した燃焼熱量測定を行うことができ、測定データの精度をさらに向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態のシステムによれば、ダウンフロー形成部23を介して、外気を、比較的に低速で空気取り入れ部11に供給しているので、供給される外気の流れによる燃焼試験への影響を低減させることができる。したがって、この点でも、測定データの精度向上を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態のシステムによれば、室外排気部3により、コーンカロリメータ1からの排気を室外に排出することができる。したがって、このシステムでは、室内への外気導入を一層円滑に行うことができる。すると、室内における空気の条件を、外気に一層近付けることができ、測定データの精度をさらに向上させることが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態のシステムでは、室外排気部3により、排気を室外に排出しているので、室内に供給される燃焼排気の量を低減させることができる。したがって、室内における燃焼条件の変動を抑えることができ、測定データの精度向上をさらに図ることができる。
【0040】
なお、本発明のコーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システムは、前記実施形態に限定されるものではない。このシステムは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃焼熱量測定システムの概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コーンカロリメータ
11 空気取り入れ部
12 加熱炉
13 本体
14 集煙フード
15 排気ダクト
16 収集・排気ブロア
2 室内吸気部
21 吸気路
22 吸気用ブロア
23 ダウンフロー形成部
3 室外排気部
31 回収フード
32 排気路
33 排気用ブロア
4 部屋(室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンカロリメータと、室内吸気部とを備え、
前記コーンカロリメータは、実質的に閉鎖された室内に配置されており、
前記室内吸気部は、外気を前記室内に導入するものである、
ことを特徴とするコーンカロリメータを用いた燃焼熱量測定システム。
【請求項2】
さらに室外排気部を備え、
前記室外排気部は、前記室内の空気を室外に排出するものである
ことを特徴とする、前記請求項1に記載の燃焼熱量測定システム。
【請求項3】
前記コーンカロリメータは、空気取り入れ部を備えており、
前記室内吸気部は、前記コーンカロリメータの空気取り入れ部の近傍に向けて、前記外気を導入するものである
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃焼熱量測定システム。
【請求項4】
前記室内吸気部は、前記コーンカロリメータの空気取り入れ部に導入される外気の流速を低くするためのダウンフロー形成部をさらに備えていることを特徴とする、
請求項3に記載の燃焼熱量測定システム。

【図1】
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