説明

ゴムの消臭方法及び浄化空気の製造方法

【課題】ゴム臭に対するより優れた消臭効果を発揮し、特にアルデヒド類に対する消臭効果に効果的なゴムの消臭方法及び浄化空気の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のゴムの消臭方法及び浄化空気の製造方法は、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物を組み合わせて反応する工程を含むことによって、優れた効果を発揮するゴムの消臭方法及び浄化空気の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の製品を取り扱う製造工程では、人に対して不快感を与えるような臭気が発生する場合があり、なかでも天然ゴムの素練り工程等においては、不快なゴム臭が発生する可能性が高い。かかるゴム臭は、屋内環境を悪化させるおそれがあるだけでなく、排気ダクトを通じて屋外にも排出される場合があり、周辺の環境に配慮する上でも可能な限り低減されるのが望ましい。
【0003】
こうした中、例えば、ゴムを取り出す際の温度を特定値に制御する方法(特許文献1参照)や特定の押出機と不活性ガスを用いた方法が開示されており(特許文献2)、また悪臭物質と反応し得る特定の化合物を用いた消臭剤や消臭方法(特許文献3〜5参照)も開示されている。さらに、特定の脱臭器を具えた脱臭装置も開示されており(特許文献6)、あらゆる観点から原臭であるゴム臭を低減する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−257237号公報
【特許文献2】特開平09−76324号公報
【特許文献3】特開平08−302069号公報
【特許文献4】特公平06−78436号公報
【特許文献5】特開2005−144272号公報
【特許文献6】特開平11−140222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなゴム臭は揮発性の脂肪酸のほか、アルデヒド類や窒素環状化合物、アンモニア等の複数の悪臭成分から構成されており、各成分に対して有効な消臭作用を及ぼすのは非常に困難であるため、上記のような消臭剤や消臭方法であっても必ずしも充分な消臭効果を発揮するとはいえない。特に、より詳細な臭気分析によれば、こうしたゴム臭への影響が最も大きいと考えられるアルデヒド類に対する除去効果に関しては、依然として改善の余地が残されている。
【0006】
そこで、本発明は、ゴム臭に対するより優れた消臭効果を発揮し、特にアルデヒド類に対する消臭効果に効果的なゴムの消臭方法及び浄化空気の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ゴムの臭気成分を特定の化合物と反応させる工程を含むゴムの消臭方法、並びにゴム臭が低減された浄化空気の製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のゴムの消臭方法は、
ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とする。
また、本発明のゴム臭が低減された浄化空気の製造方法は、
ゴムの臭気成分を含む空気を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0009】
上記ゴムの消臭方法及びゴム臭が低減された浄化空気の製造方法は、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)と反応させた後、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含んでもよい。
【0010】
さらに、前記両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)は、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド三元共重合体であるのが望ましい。
また、前記ゴムの消臭方法は、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させた後、臭気強度2.0以下の低濃度臭気、または外気を用いて混合希釈する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴムの消臭方法によれば、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)及び特定の両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を用いて、ゴムの臭気成分と反応させるので、これらの相乗効果によりゴム臭が不快に感じられない程度に低減され、特にゴム臭の主要臭気成分であるアルデヒド類に対する消臭効果に優れ、非常に有効にゴム臭の消臭効果を発揮することができる。
【0012】
また、これら同様の化合物を用いる本発明の浄化空気の製造方法によれば、非常に有効にゴム臭が低減された浄化空気を得ることが可能となり、周囲の環境改善にも大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一態様である消臭方法を実施するための消臭装置の断面図である。
【図2】図1に示す消臭装置の一部に用いられる2流体ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、必要に応じて図面を参照しつつ具体的に説明する。
本発明のゴムの消臭方法は、
ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0015】
[ゴムの臭気成分]
ゴムの臭気成分、いわゆるゴム臭とは、ゴムから発生するか、ゴムを加工する際に発生する臭気である。環境中、特に空気中に放出される臭気成分からなる。温度等の影響によって発生する揮発成分も包含される。例えば、ゴムの臭気成分は、低級脂肪酸、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びイソバレルアルデヒド等のアルデヒド類、メチルイソブチルケトン、トリメチルアミン、アルキルベンゼン類、これらの誘導体、或いはこれら又は他の物質との反応生成物等である。なかでもアルデヒド類は、ゴムの臭気成分の主要臭気成分であり、本発明の方法によれば、特にこのアルデヒド類を効果的に低減させることが可能となる。
【0016】
[ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)]
ベタイン関連化合物とは、ベタイン化合物とその誘導体を包含する化合物である。ベタイン化合物は、下記式(I)で表され、その誘導体とともに臭気成分の化学的中和剤として作用する。
【0017】
【化1】


式中、R1〜R3は、同一であっても異なっていてもよいアルキル基を示す。かかるベタイン関連化合物としては、具体的には、例えば、トリメチルグリシン(グリシンベタイン)が好適なものとして挙げられる。
【0018】
ベタイン関連化合物の消臭機構は、化学反応によって臭気成分を無臭物質とする化学的中和であるため、その消臭作用は速攻的で長期間持続する。例えば、低級脂肪酸、アルデヒド類、ケトン類等が消臭対象となる。
【0019】
本発明では、このベタイン関連化合物にスルホン酸塩を添加した混合物(A)を用いる。かかるスルホン酸塩は、ゴムの臭気成分の主要臭気成分であるアルデヒド類に対して特異的な化学的中和剤として作用するので、これらの成分に極めて効果的な消臭作用を発揮することができる。また、一部のスルホン酸塩が乖離して、上記式(I)で表される一部のベタイン関連化合物においてR1〜R3の少なくとも1つがスルホン酸塩から誘導されるスルホン酸基に置換された化合物となり、これがさらにアルデヒド類に対する消臭作用を発揮するものと考えられる。かかるスルホン酸塩とは、−SO3M基(Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム又はアミンを示す)を有する塩であり、具体的には、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩が挙げられる。
【0020】
ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)は、例えば、上記ベタイン関連化合物に上記スルホン酸塩を添加し、常温にて混合、攪拌することによって得ることができる。このベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)は、さらに水を加えた水溶液の状態で用いてもよく、例えば、上市のものとして、HPBS−07(エポリオン社製)を好適に用いることができる。
【0021】
好ましくは、臭気成分又はそれを含有する空気は、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)を噴霧して十分に反応(中和)させる。噴霧は、特に制限されることなく、種々の手段により行うことができる。
【0022】
特に好ましくは、エアー等の気体放出ノズルを備える2流体ノズルを用いる。ベタイン関連化合物に圧力をかけて噴霧するのみ(1流体ノズル)では、ミスト径がφ60μm程度にしか微細化できないが、気体放出ノズルによってミスト径をφ10μm程度に最微細化することができる。ミスト径がφ60μmからφ10μmになると、臭気成分との接触面積が6倍になり、より効果的な気液接触が可能となる。
【0023】
[両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)]
両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)とは、アニオン基及びカチオン基の両性反応基を有する両性高分子化合物であり、代表的には、分子量が約2000万の、線状の物質で、両性の電荷をもった水溶性の高分子化合物である。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド−三元ポリマー、すなわち、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドとジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミドとからなる三元(共)重合体が好適なものとして挙げられる。
【0024】
両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)の消臭機構は、この物質が、分子線を複雑に絡め、固体化した状態で存在し、臭気成分を非常に絡め取り易い構造をしており、臭気成分に対して圧倒的に大きなサイズを有することや、臭気成分を分子間引力によって引き寄せることや、その多孔構造から、吸着性能に著しく優れていることに基づく。臭気成分が吸着された後、アニオン基及びカチオン基という両性の反応基がその臭気成分に応じて化学反応を起こして結合し、後になって臭気を放出することがない。また、かかる両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)は、上記ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)によって中和された物質に対しても、吸着及び化学反応を引き起こし、さらに消臭効果を発揮することができる。
【0025】
この両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)も、水を加えた水溶液の状態で用いることができる。他に、希釈剤として、エタノールのようなアルコール等の有機化合物を配合することができる。アルコール等は抗菌作用も発揮する。推進剤(又は噴射剤)として、ジメチルエーテルのようなエーテル等の有機化合物を配合することができる。例えば、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を主成分とするS−EB/10(西華産業(株)製、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド−三元共重合体)を用いることができる。
【0026】
好ましくは、臭気成分又はこれを含有する空気は、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)を反応(中和)させた後、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を反応(中和)させる。ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)との反応に先立って両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を反応させると、臭気成分の消臭が十分でなくなるおそれがあり、却って不快臭が発生することがある。
【0027】
好ましくは、臭気成分又はそれを含有する空気は、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を噴霧して十分に反応(中和)させる。噴霧は、特に制限されることなく、種々の手段により行うことができる。
【0028】
特に好ましくは、エアー等の気体放出ノズルを備える2流体ノズルを用いる。両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)に圧力をかけて噴霧する1流体ノズルでは、ミスト径がφ60μm程度にしか微細化できないが、気体放出ノズルによってミスト径をφ10μm程度に最微細化することができる。最微細化により、より一層効果的な気液接触が可能となる。
【0029】
両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)は、乾燥すると水不溶性のゲル状物質となるが、乾燥していても絶えず環境中の水分を吸収し、水分子が鞠状の成分内を循環しながら表面から内側へと常に臭気成分を取り込んでいくことができる。
【0030】
[ゴムの消臭方法及びゴム臭が低減された浄化空気の製造方法]
本発明に係るゴムの消臭方法には、ゴムから発生するゴム臭を低減させる方法、及びゴムから発生したゴム臭を低減させる方法が含まれる。ゴムから発生するゴム臭を低減させるには、ゴム中やゴム表面からのゴム臭の発生を抑えるのが有効である。
【0031】
本発明に係るゴムの消臭方法は、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含む。かかる工程は、具体的には、ゴム中に、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を同時に又は別々に添加するか、又はゴム表面に、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)を同時に又は別々に噴霧や塗布等する工程であり、これら(A)及び(B)をゴムの臭気成分と反応させると、ゴムからの臭気成分の発生自体が抑えられ、ゴム臭を著しく低減することができる。特には、まず、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)を噴霧等することにより反応させた後、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むのが望ましい。これにより、臭気成分がベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)によって化学的に分解され、次いでこの分解された臭気成分がさらに両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)に吸着されて消臭反応が進行するので、より効果的にゴム臭を低減することが可能となり、特にアルデヒド類に対する消臭作用が顕著に向上することとなる。
【0032】
さらには、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させた後、臭気強度2.0以下、好ましくは500以下の低濃度臭気、或いは外気を用いて混合希釈する工程を含むゴムの消臭方法であるのが望ましい。
【0033】
なお、本発明のゴム臭が低減された浄化空気の製造方法は、上記ゴムの消臭方法と同様に、ゴムの臭気成分を含む空気を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことにより、また好適には、ゴムの臭気成分を含む空気を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)と反応させた後、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことにより、ゴム臭が低減された浄化空気、特にはアルデヒド類が顕著に低減された浄化空気を製造することが可能となる。
【0034】
本発明に係るゴムの消臭方法及びゴム臭が低減された浄化空気の製造方法を実施するための消臭装置の一例について、以下図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0035】
図1はその一例である消臭装置の断面図である。図2は図1に示す消臭装置の一部に用いられる2流体ノズルの断面図である。図1の消臭装置1は管路2と噴霧機3、4とを備える。噴霧機3、4には、消臭剤を蓄えるサイフォンタンク5及び消臭剤の流量を検知する検知機6が備えられ、エアー7がコンプレッサーによって供給される。
【0036】
ゴムの臭気成分を含有するガスは、管路2内を通路にして、A方向に流れる。ゴムの臭気成分を含有するガスは、まず、噴霧機3によって、第1の消臭剤としてベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)が噴霧され、管路2内をA方向に流れる間に十分に反応する。消臭剤の噴霧方向はガスの流れと同方向にするのがよい。反応後のガスは、その後、噴霧機4によって、第2の消臭剤として両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)が噴霧され、これらが反応することによって臭気が除去される。
【0037】
噴霧機3、4では、図2に示すような2流体ノズル11が用いられる。2流体ノズル11は消臭剤の通路12とエアー7の通路13とを備える。通路12から放出される消臭剤は通路13からのエアーによってミスト径を小さくすることができる。
【0038】
図1に示すような消臭装置において、臭気成分は、上流において、例えば、噴霧機3により放出されるベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)と反応し、下流において、例えば、臭気成分の流速にもよるが、噴霧機3から2〜5m以上離れた下流の噴霧機4により放出される両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる。このような消臭装置は、例えば、ダクト内に配置することができ、ダクト内で消臭反応を行うことができる。
【0039】
このような消臭装置は、ゴムの消臭方法を実施するためのものである。特に、上述した消臭装置は、ゴム臭が低減された浄化空気の製造方法を実施するための装置としても用いることができる。浄化空気を製造する場合、ゴム臭に汚染された原料空気は、屋内の空気や排気、屋外の空気でよい。また、製造された浄化空気は、屋内で再循環させるか、又は屋外に排気として放出することができる。浄化空気は、ゴム臭が著しく低減されるので、屋内で用いても、屋外に放出されても、ゴム臭に起因する不快が低減され、かかる不快に基づく苦情が発生しない。
【0040】
他の消臭装置としては、臭気成分を消臭剤の溶液中に通して反応させるための洗浄びん等の洗浄漕を用いることができる。また、ゴム中、又はゴムの表面で、臭気成分と、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)の双方とを同時に又は別々に反応させる装置、例えば、混練機又は塗布機等を用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1〜3]
ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)として、上述のHPBS−07(エポリオン社製、以下「E液」という)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(B)として、上述のS−EB/10(西華産業(株)製、以下「K液」という)を用いた。
まず、無臭空気の入った臭い袋に、原臭として表1に示す各アルデヒドを5μL注入し、1分間手で振った後、10分間静置した。かかる臭気を別の臭い袋に移し替えた。そこにE液1.5mLを注入し、30秒間手で振った後、5分間室温で静置した。次いで、静置後の臭気を新しい臭い袋に移し替え、そこにK液1.5mLを注入して30秒間手で振った後、5分間室温で静置した。得られた静置後の臭気について、以下に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
《臭気強度(鼻)》
以下の基準に従って、臭気の不快度を鼻で官能評価した。
5.0 :強烈な臭い
4.0 :強い臭い
3.0 :楽に感知できる臭い
2.0 :何の臭いであるかを認識できる程度の弱い臭い
1.0 :辛うじて感知できる臭い
0.0 :無臭
【0044】
《臭気強度(ニオイセンサー)》
ニオイセンサー(XP−329III、新コスモス電機製)を用い、臭気強度を測定した。値が大きいほど臭気強度が高いことを示す。
【0045】
《アルデヒド除去率》
検知管(ガステック製、ホルムアルデヒド91L・アセトアルデヒド92L、測定単位:ppm)を用いて、残存する各アルデヒド量を測定し、その除去率を算出した。
【0046】
[比較例1〜3]
上記ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)の代わりに、ベタイン関連化合物(ALBS−106、エポリオン社製)を用いた以外、実施例1〜3に従って同様にして消臭処理を施した。得られた静置後の臭気について、上記と同様にして各評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
[対照例1〜3]
対照例として、上記で用いた原臭を未処理のまま、上記と同様にして各評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例4〜6]
実施例1〜3と同じベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)(E液)及び両性高分子ポリアクリルアミド(B)(K液)を用いた。
【0050】
まず、原臭として表1に示す各天然ゴムブロックを約1cmにカットし、オイルバス(150℃)に加熱したトラップ装置内に入れた。次いで15分間加熱した後、かかるトラップ内の臭気3Lを臭い袋に採取した。そこにE液1.5mLを注入し、30秒間手で振った後、5分間室温で静置した。静置後の臭気を新しい臭い袋に移し替え、そこにK液1.5mLを注入して30秒間手で振った後、5分間室温で静置した。得られた静置後の臭気について、以下に従って各評価を行った。結果を表2に示す。
【0051】
《臭気強度(鼻)》
上記と同様して、臭気の強さを鼻で官能評価した。
【0052】
《臭気濃度》
3点比較式臭袋法によって算出した。得られた値は無臭化に必要な希釈倍数を表し、値が小さいほど消臭効果に優れることを示す。
【0053】
《臭気測定器による臭気評価》
臭気測定器(e−nose、双葉エレクトロニクス製)を用い、重質、軽質、香質、強度、アンモニア系、硫化系の各項目について測定し、臭気の強度や質を評価した。
【0054】
[比較例4〜6]
上記ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)の代わりに、ベタイン関連化合物(ALBS−106、エポリオン社製)を用いた以外、実施例1〜3に従って同様にして消臭処理を施した。得られた静置後の臭気について、上記と同様にして各評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
[対照例4〜6]
対照例として、上記で用いた原臭を未処理のまま、上記と同様にして各評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
※1:ラボ素練り技術的格付けゴムタイプ1
※2:ラボ素練りリブド・スモーク・シートタイプ
※3:ラボ素練り恒粘度化剤配合NRタイプ
【0058】
[比較例7]
混合混練り機(ミクストロンBB−2、神戸製鋼社製)のアンダーミキサーから排出された素練りシートを用いて高濃度臭気(X)を採取し、BOF(バッチオフ、ゴムシート乾燥用排気)の素練りシートから低濃度臭気(Y)を採取した。得られた高濃度臭気(X)2Lに低濃度臭気(Y)8Lを混合し、臭気Pを得た。得られた臭気について、以下に従って各評価を行った。結果を表3に示す。
【0059】
[実施例7]
実施例1〜3と同じベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)(E液)及び両性高分子ポリアクリルアミド(B)(K液)を用いた。
まず、比較例7で採取した高濃度臭気(X)2LにE液1.5mLを注入し、30秒間手で振った後、5分間静置した。次いで、静置後の臭気を新しい臭い袋に移し替え、そこにK液1.5mLを注入して30秒間手で振った後、5分間室温で静置した。得られた臭気を比較例7で採取した低濃度臭気(Y)8Lと混合し、臭気Qを得た。得られた臭気について、以下に従って各評価を行った。結果を表3に示す。
【0060】
[比較例8]
比較例7で採取した高濃度臭気(X)2Lを、外気である室内空気8Lと混合し、臭気Rを得た。得られた臭気について、以下に従って各評価を行った。結果を表4に示す。
【0061】
[実施例8]
実施例1〜3と同じベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)(E液)及び両性高分子ポリアクリルアミド(B)(K液)を用いた。
まず、比較例7で採取した高濃度臭気(X)2LにE液1.5mLを注入し、30秒間手で振った後、5分間静置した。次いで、静置後の臭気を新しい臭い袋に移し替え、そこにK液1.5mLを注入して30秒間手で振った後、5分間室温で静置した。得られた臭気を外気である室内空気8Lと混合し、臭気Sを得た。得られた臭気について、以下に従って各評価を行った。結果を表4に示す。
【0062】
《臭気強度(鼻)》
上記と同様して、臭気の強さを鼻で官能評価した。
【0063】
《臭気強度(ニオイセンサー)》
上記と同様して、ニオイセンサー(XP−329III、新コスモス電機製)を用い、臭気強度を測定した。
【0064】
《快・不快度》
以下の基準に従って、臭気の不快度を官能評価した。値が小さいほど消臭効果に優れることを示す。
+4.0:極端に快
+3.0:非常に快
+2.0:快
+1.0:やや快
0 :快でも不快でもなし
−1.0:やや不快
−2.0:不快
−3.0:非常に不快
−4.0:極端に不快
【0065】
《臭気の質》
以下の基準に従って、臭気の質を「甘い焦げ臭」、「薄い焦げ臭」及び「薄いゴム臭」のいずれかであるかを官能評価した。
なお、「薄い焦げ臭」は、「甘い焦げ臭」よりも上質である(不快でない)。また、「薄いゴム臭」は、「甘い焦げ臭」や「薄い焦げ臭」よりも不快でなく、最も好適な質である。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
表1〜2の結果より、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)と両性高分子ポリアクリルアミド(B)とを用いた実施例1〜6は、比較例1〜6に比べ、種々のアルデヒドに対する低減率が非常に高く、ゴム臭を有効に低減できるとともに、残存する臭気評価も高く、極めて有効に空気が浄化されることがわかる。
【0069】
また、表3〜4の結果より、ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させた後に低濃度臭気(Y)または外気と混合した実施例7〜8は、比較例7〜8に比べ、ゴム臭をより有効に低減できることがわかる。
【符号の説明】
【0070】
1:消臭装置
2:管路
3,4:噴霧機
5:サイフォンタンク
6:検知機
7:エアー
11:2流体ノズル
12,13:通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とするゴムの消臭方法。
【請求項2】
ゴムの臭気成分を含む空気を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とするゴム臭が低減された浄化空気の製造方法。
【請求項3】
ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)と反応させた後、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のゴムの消臭方法。
【請求項4】
ゴムの臭気成分を含む空気を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)と反応させた後、両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させる工程を含むことを特徴とする請求項2に記載のゴム臭が低減された浄化空気の製造方法。
【請求項5】
前記両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)が、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド三元共重合体であることを特徴とする請求項1または3に記載のゴムの消臭方法。
【請求項6】
前記両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)が、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリルアミド−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド三元共重合体であることを特徴とする請求項2または4に記載のゴム臭が低減された浄化空気の製造方法。
【請求項7】
ゴムの臭気成分を、ベタイン関連化合物とスルホン酸塩との混合物(A)、及び両性高分子ポリアクリルアミド(共)重合体(B)と反応させた後、臭気強度2.0以下の低濃度臭気、または外気を用いて混合希釈する工程を含むことを特徴とする請求項1、3または5に記載のゴムの消臭方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−180420(P2012−180420A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43078(P2011−43078)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】