説明

ゴムベルト、ベルト加硫装置及びベルト製造方法

【課題】 ゴムベルトの剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生を抑制することができるゴムベルト、このゴムベルトを成型するベルト加硫装置、及び、ゴムベルトを製造するベルト製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、該載置凹部に載置された生ゴム部材を固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備えるベルト加硫装置を用いて製造されるゴムベルトであって、固定側金型と移動側金型とが合わさった際に接触する金型割位置がベルト厚さ方向の中央に配置されるベルト加硫装置で加硫されることによって、ベルト厚さ方向における中央に芯体帆布9a(補強部材)が設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムベルト、ベルト加硫装置及びベルト製造方法に関し、特に、ベルトコンベアに用いられるゴムベルト、ゴムベルトを成型するベルト加硫装置、及び、ゴムベルトを製造するベルト製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、急傾斜コンベアに用いられる急傾斜用コンベアベルトは、ベルト本体と、ベルト長手方向に沿ってベルト本体に立設される波形状の波桟と、ベルト長手方向に面してベルト本体に立設される平面状の横桟とを備えている。
【0003】
このベルト本体や波桟、横桟(以下、単にゴムベルト)には、ゴムベルトの剛性を向上させることや、端部に発生するクラックを予防すること、該クラックの拡大の阻止すること等の目的で、補強部材(帆布)が設けられているものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この補強部材が設けられたゴムベルトを製造するには、ベルト加硫装置が用いられる。具体的には、図10(a)に示すように、ベルト加硫装置100は、加硫前の状態でありかつゴム材料101aからなる生ゴム部材101を載置する載置凹部103aを有する固定側金型(以下、下側モールド103)と、この凹部に収容された生ゴム部材101を下側モールド103へ向かって覆う移動側金型(以下、上側モールド105)を備えている。
【0005】
そして、図10(b)に示すように、補強部材101bが設けられた生ゴム部材101を載置凹部103aに載置して、下側モールド103と上側モールド105とを合わせて生ゴム部材101を加硫することによって、補強部材101bが設けられたゴムベルトを製造する。
【特許文献1】特開2003−341816号公報(第2頁−第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の製造方法では、図10(a)及び図10(b)に示すように、下側モールド103と上側モールド105とが合わさった際に接触する金型割位置107(すなわち、下側モールド103のフランジ)が上側モールド105側に位置している。
【0007】
このため、生ゴム部材101を加硫している最中(いわゆる、加硫時)に、金型割位置107からはみ出すゴム材料101aと同時に補強部材101bまでもが流れてはみ出そうとして、補強部材101bがゴムベルトの側面(図10(b)では上側)にずれてしまい、ゴムベルトの剛性が低下してしまうという問題や、クラックが発生しやすくなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ゴムベルトの剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生を抑制することができるゴムベルト、このゴムベルトを成型するベルト加硫装置、及び、ゴムベルトを製造するベルト製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴に係る発明は、加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、載置凹部に載置された生ゴム部材を固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備えるベルト加硫装置を用いて製造されるゴムベルトであって、固定側金型と移動側金型とが合わさった際に接触する金型割位置がベルト厚さ方向の中央に配置されるベルト加硫装置で加硫されることによって、ベルト厚さ方向における中央に補強部材が設けられることを要旨とする。
【0010】
かかる特徴によれば、ゴムベルトのベルト厚さ方向における中央に補強部材が設けられることによって、補強部材がゴムベルトの側面(一方の面)にずれているゴムベルトと比べて、ゴムベルトの剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生を抑制することができ、該クラックの拡大の阻止することが可能となる。
【0011】
その他の特徴に係る発明は、急傾斜用コンベアベルトを構成するベルト本体にベルト長手方向に沿って立設される波形状の波桟であることを要旨とする。
【0012】
その他の特徴に係る発明は、補強部材が、ベルト幅方向の少なくとも一方の端部まで延びていることを要旨とする。
【0013】
なお、ベルト幅方向とは、ゴムベルトの長手方向に対する短手方向を示し、例えば、波桟の場合、図3及び図4に示すような方向(波桟立設部分の幅方向)を示す。
【0014】
かかる特徴によれば、補強部材がベルト幅方向の少なくとも一方の端部まで延びていることによって、ゴムベルトにおけるベルト幅方向の少なくとも一方の端部の剛性が向上し、これに伴い、ゴムベルトの剛性をさらに向上させることができるとともに、クラックの発生をさらに抑制することができ、該クラックの拡大の阻止することが可能となる。
【0015】
本発明の第2の特徴に係る発明は、加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、載置凹部に載置された生ゴム部材を固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備え、生ゴム部材を加硫することによってゴムベルトを成型するベルト加硫装置であって、移動側金型と合わさった際に接触する固定側金型における固定側フランジと、固定側金型と合わさった際に接触する移動側金型における移動側フランジとの接触部分である金型割位置が、ベルト厚さ方向の中央に形成されていることを要旨とする。
【0016】
かかる特徴によれば、金型割位置がベルト厚さ方向の中央に形成されていることによって、金型割位置からはみ出すゴム材料と同時に補強部材が流れてはみ出そうとしてもベルト厚さ方向の中央でのみ流されるので、補強部材が設けられるゴムベルトの側面に該補強部材がずれてしまうことをなくすことができる。これにより、ゴムベルトの剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生を抑制することができ、該クラックの拡大の阻止することが可能なゴムベルトを成型することができる。
【0017】
その他の特徴に係る発明は、ゴム部材が、急傾斜用コンベアベルトを構成するベルト本体にベルト長手方向に沿って立設される波形状の波桟であることを要旨とする。
【0018】
本発明の第3の特徴に係る発明は、加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、載置凹部に載置された生ゴム部材を固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備えるベルト加硫装置を用いてゴムベルトを製造するベルト製造方法であって、移動側金型と合わさった際に接触する固定側フランジがベルト厚さ方向の中央に形成される固定側金型の載置凹部に、補強部材が設けられた生ゴム部材を載置する生ゴム部材載置工程と、固定側金型と合わさった際に接触する移動側フランジがベルト厚さ方向の中央に形成される移動側金型を固定側金型と合わせて生ゴム部材を加硫することによって、補強部材がベルト厚さ方向の中央に設けられたゴムベルトを成型するベルト加硫成型工程とを含むことを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、生ゴム部材載置工程と、ベルト加硫成型工程とを少なくとも含むことによって、金型割位置からはみ出すゴム材料と同時に補強部材が流れてはみ出そうとしてもベルト厚さ方向の中央でのみ流されるので、補強部材が設けられるゴムベルトの側面に該補強部材がずれてしまうことをなくすことができる。これにより、ゴムベルトの剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生を抑制することができ、該クラックの拡大の阻止することが可能なゴムベルトを製造することができる。
【0020】
その他の特徴に係る発明は、生ゴム部材載置工程を行う前に、予め補強部材をゴム材料で覆ってプレスすることによって、生ゴム部材を製造する生ゴム部材製造工程をさらに含むことを要旨とする。
【0021】
かかる特徴によれば、生ゴム部材載置工程の前に生ゴム部材製造工程を行うことによって、補強部材をゴム材料で挟む作業や、それぞれ補強部材とゴム材料とを固定側金型の載置凹部に載置する作業などの作業性を向上させることができるため、コストの低減を図ることができるとともに、作業時間を短縮させることが可能となる。
【0022】
その他の特徴に係る発明は、ゴムベルトが、急傾斜用コンベアベルトを構成するベルト本体にベルト長手方向に沿って立設される波形状の波桟であり、ゴム部材載置工程が終了した後に、所定の治具を用いて波形状の載置凹部に、波桟の加硫前の状態である生ゴム部材を密着させる密着工程をさらに含むことを要旨とする。
【0023】
かかる特徴によれば、ゴム部材載置工程が終了した後に密着工程を行うことによって、補強部材が伸張してしまうことがないため、ゴムベルトの剛性をさらに向上させることができるとともに、補強部材を確実にゴムベルトのベルト厚さ方向の中央に配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ゴムベルトの剛性を向上させるできるとともに、クラックの発生を抑制することができるゴムベルト、このゴムベルトを成型するベルト加硫装置、及び、ゴムベルトを製造するベルト製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明に係るゴムベルト、ベルト加硫装置及びベルト製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0026】
(急傾斜コンベアの構成)
まず、本実施形態に係るゴムベルトが用いられる急傾斜コンベアの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る急傾斜コンベアを示す斜視図であり、図2は、本実施の形態に係る急傾斜用コンベアベルトを示す斜視図である。
【0027】
図1に示すように、急傾斜コンベア1は、エンドレス状の急傾斜用コンベアベルト3と、この急傾斜用コンベアベルト3を駆動させるためのプーリやローラ等からなる機械部材5とによって大略構成されている。
【0028】
急傾斜用コンベアベルト3は、図2に示すように、ベルト本体7と、ベルト長手方向に沿ってベルト本体7に立設される波形状の波桟9と、ベルト長手方向に面してベルト本体7に立設される平面状の横桟11とによって構成される。
【0029】
このベルト本体7は、ベルト厚さ方向の中央に設けられる芯体帆布7aと、該芯体帆布を覆う2層の補強帆布7bと、該補強帆布7bをさらに覆う2層のゴム材料7cとが加硫されることにより形成されたものである。
【0030】
ここで、芯体帆布7aや補強帆布7b(後述する芯体帆布9a)には、ポリエステル、ナイロンなどの織布を単独または混合して用いることができる。
【0031】
また、ゴム材料7c(後述するゴム材料9b)には、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、エチレン− プロピレン共重合体、エチレン− プロピレン− ジエン共重合体、アクリロニトリル− ブタジエン共重合体、スチレン− ブタジエン共重合体等の合成ゴム、または、天然ゴムなどを単独または混合して用いることができる。
【0032】
これらゴムには、素練り促進剤、スコーチ防止剤、可塑剤、粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、架橋剤、架橋助剤、加硫もどり防止剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤といった一般的なゴム薬品や、タルク、クレー、シリカ、カーボンブラック、マイカ、バーミキュライト、モンリロナイト、鉱物繊維、ガラス繊維、などの補強材が配合されていてもよい。
【0033】
なお、波桟9の詳細については、後述する。横桟11は、ベルト本体7に立設される横桟立設部分11Aと、ベルト本体7に固定される横桟固定部分11Bとによって構成されている。
【0034】
横桟立設部分11A及び横桟固定部分11Bは、ゴム材料のみで形成されているものとして説明するが、必ずしもゴム材料のみで形成される必要はなく、例えば、ベルト厚さ方向の中央に補強部材(芯体帆布等)が設けられていてもよい。
【0035】
また、横桟11は、図1及び図2において、ベルト長手方向に面してベルト本体7に垂直で立設されているが、必ずしも垂直で立設される必要はなく、所定の角度(例えば、45度や75度)で立設されていてもよい。
【0036】
機械部材5は、ドライブユニット13に連結されて急傾斜用コンベアベルト3を駆動させるヘッドプーリ15と、急傾斜用コンベアベルト3の方向を変える2つのディスクローラ17と、急傾斜用コンベアベルト3を案内する2つのテールプーリ19と、急傾斜用コンベアベルト3を円滑に案内する複数個のキャリアローラ21とによって構成されている。
【0037】
(波桟の構成)
次に、上述した波桟(ゴムベルト)の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る波桟を示す斜視図であり、図4(a)は、本実施の形態に係る波桟を示す側面図であり、図4(b)は、本実施の形態に係る波桟を示す上面図である。
【0038】
なお、波桟9は、加硫前の状態である生ゴム部材25を載置する載置凹部27aを有する固定側金型27と、この載置凹部27aに載置された生ゴム部材25を固定側金型27へ向かって圧縮する圧縮凹部29aを有する移動側金型29とを備えるベルト加硫装置23(図5〜図7参照)を用いて製造される。
【0039】
図3〜図4に示すように、波桟9は、ベルト本体7に立設される波桟立設部分9Aと、ベルト本体7に固定される波桟固定部分9Bとによって構成されている。
【0040】
波桟立設部分9Aは、ベルト厚さ方向の中央に設けられる芯体帆布9a(補強部材)と、該芯体帆布9aを覆う2層のゴム材料9bとが加硫されることにより形成されたものである。
【0041】
すなわち、波桟立設部分9Aは、後述する固定側金型27と移動側金型29とが合わさった際に接触する金型割位置31がベルト厚さ方向の中央に配置されるベルト加硫装置23で加硫されることによって、ベルト厚さ方向における中央に芯体帆布9aが設けられる。
【0042】
ここで、ベルト厚さ方向の中央とは、波桟立設部分9Aにおけるベルト幅方向の一方の端部9c(図面では、波桟固定部分9Bに固定される反対側の端部である先端部)での波桟立設部分9Aの厚さ方向の中央を示し、図4において一方の側面から芯体帆布9aまでの距離αβが同一である(微小な誤差を含む)ものとする。
【0043】
芯体帆布9aは、ベルト幅方向の少なくとも一方の端部9c(すなわち、波桟固定部分9Bに固定される反対側の端部である先端部)まで延びているもの(図8(a)参照)として説明するが、必ずしも一方の端部9cまで延びている必要はない。例えば、芯体帆布9aは、一方の端部9cから突出していてもよく(図8(b)参照)、一方の端部9cまで延びていなくても勿論よい(図8(c)参照)。
【0044】
波桟固定部分9Bは、ゴム材料のみで形成されているものとして説明するが、必ずしもゴム材料のみで形成される必要はなく、例えば、ベルト厚さ方向の中央に補強部材(芯体帆布等)が設けられていてもよい。
【0045】
この波桟固定部分9Bは、ベルト本体7に接着固定しやすくするために、波桟立設部分9Aによって区画される一方の上面9Cが他方の上面9Dよりも広く設定されている(図4(b)参照)。
【0046】
(ベルト加硫装置の構成)
次に、上述した波桟を成型するベルト加硫装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図5及び図6は、本実施の形態に係るベルト加硫装置の斜視図であり、図7(a)は、本実施の形態に係るベルト加硫装置の側面断面図(図5のA−A断面図)であり、図7(b)は、本実施の形態に係るベルト加硫装置の正面断面図(図5のB−B断面図)であり、図8は、本実施の形態に係るベルト加硫装置の一部拡大断面図である。なお、以下において、ベルト加硫装置は、波桟9を製造するものとして説明する。
【0047】
図8〜図7に示すように、ベルト加硫装置23は、生ゴム部材25を加硫することによって、芯体帆布9aがベルト厚さ方向の中央に形成されている波桟立設部分9Aと、ゴム材料からなる波桟固定部分9Bとを備える波桟9(ゴムベルト)を成型するものである。
【0048】
具体的には、ベルト加硫装置23は、基板27Aと側板27Bとを備える固定側金型27と、基板29Aと側板29Bとを備える移動側金型29とによって大略構成されている。
【0049】
固定側金型27には、加硫前の状態である生ゴム部材25を載置する載置凹部27aと、波桟固定部分9Bを構成するゴム材料が挿入される溝部27bとが形成されている。この載置凹部27aは、等間隔で突出する複数の突出部により構成されている。また、上述した固定側金型27を構成する側板27Bは、基板27Aの下面から鉛直方向に立設され、一方の端部(上端部)が側面視で波形状である固定側フランジ27cとなっている(図6(b)参照)。
【0050】
移動側金型29には、載置凹部27aに載置された生ゴム部材25を固定側金型27へ向かって圧縮する圧縮凹部29aが形成されている。この圧縮凹部29aは、等間隔で突出する複数の突出部により構成されている。また、上述した移動側金型29を構成する側板29Bは、基板29Aの下面から鉛直方向に立設され、一方の端部(下端部)が側面視で波形状である移動側フランジ29bとなっている(図6(b)参照)。
【0051】
なお、固定側金型27の載置凹部27aと移動側金型29の圧縮凹部29aとは、波形状が互いに嵌合するように互いの位置関係が逆向きとなっている。また、固定側フランジ27cと移動側フランジ29bとは、波形状が互いに嵌合するように互いの位置関係が逆向きとなっている。
【0052】
ここで、移動側金型29と合わさった際に接触する固定側金型27における固定側フランジ27cと、固定側金型27と合わさった際に接触する移動側金型29における移動側フランジ29bとの接触部分である金型割位置31は、ベルト厚さ方向の中央に形成されている。
【0053】
すなわち、金型割位置31は、波桟9が加硫される際(載置凹部27aに生ゴム部材25が載置され、該生ゴム部材25を圧縮凹部29aで覆った際)に、該波桟9における波桟立設部分9Aの厚さ方向の中央に形成されている。
【0054】
また、ベルト加硫装置23は、図8(a)に示すように、芯体帆布9aがベルト幅方向の少なくとも一方の端部9c(先端部)まで延びている波桟9を成型するものとして説明するが、必ずしも芯体帆布9aが一方の端部9cまで延びている波桟9を成型する必要はない。
【0055】
例えば、ベルト加硫装置23は、図8(b)に示すように、芯体帆布9aが一方の端部9cから突出する波桟9を成型してもよく、図8(c)に示すように、芯体帆布9aが一方の端部9cまで延びていない波桟9を成型するものであっても勿論よい。
【0056】
なお、ベルト加硫装置23は、図8(b)に示すように、芯体帆布9aが一方の端部9cから突出する波桟9を成型する場合、例えば、金型割位置31(固定側フランジ27c及び移動側フランジ29b)で芯体帆布9aを挟むことで芯体帆布9aを位置決めしてもよく、金型割位置31の一部に形成される凹凸部(不図示)で芯体帆布9aを固定することで芯体帆布9aを位置決めしてもよい。
【0057】
また、ベルト加硫装置23では、波桟9を製造するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ベルト本体7や横桟11を製造するものであっても勿論よい。この場合、ベルト本体7や横桟11は、波形状に形成する必要がないため、固定側金型27の載置凹部27aと移動側金型29の圧縮凹部29aとが波形状に形成されていなくてよい。
【0058】
また、ベルト加硫装置23では、波桟立設部分9Aと波桟固定部分9Bとを同時に形成するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、工程を簡略化できる点と、波桟立設部分9Aと波桟固定部分9Bとの間の接着力をより強固なものすることができる点において、同時に形成されることが好ましい。
【0059】
このとき、波桟立設部分9Aと波桟固定部分9Bとが圧接するだけで、波桟立設部分9Aと波桟固定部分9Bとの間に十分な接着力が得られない場合には、接着面にゴム糊などの接着剤を用いて接着しても勿論よい。
【0060】
(ベルト製造方法の工程)
次に、ベルト製造方法について、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施の形態に係るベルト製造方法の工程を示す図である。なお、以下において、ベルト製造方法では、波桟9を製造するものとして説明する。
【0061】
ベルト製造方法は、加硫前の状態である生ゴム部材25を載置する載置凹部27aを有する固定側金型27と、該載置凹部27aに載置された生ゴム部材25を固定側金型27へ向かって圧縮する圧縮凹部29aを有する移動側金型29とを備えるベルト加硫装置23を用いて波桟9を製造する方法である。
【0062】
このベルト製造方法は、(I)生ゴム部材製造工程、(II)生ゴム部材変形工程、(III)生ゴム部材載置工程、(IV)密着工程、(V)ベルト加硫成型工程、(VI)ベルト取外工程を含む。
【0063】
(I)生ゴム部材製造工程
図9(a)に示すように、生ゴム部材製造工程では、生ゴム部材載置工程を行う前に、予め芯体帆布9a(補強部材)を2層のゴム材料9bで覆ってプレスすることによって、生ゴム部材25を製造する。
【0064】
(II)生ゴム部材変形工程
図9(b)に示すように、生ゴム部材変形工程では、生ゴム部材製造工程が終了した後に、ベルト加硫装置23の載置凹部27aに生ゴム部材25を密着させやすくするために、変形装置(不図示)等を用いて該生ゴム部材25を緩やかな波形状に変形させる。
【0065】
(III)生ゴム部材載置工程
図9(c)に示すように、生ゴム部材載置工程では、生ゴム部材変形工程が終了した後に、移動側金型29と合わさった際に接触する固定側フランジ27cがベルト厚さ方向の中央に形成される固定側金型27の載置凹部27aに、芯体帆布9a(補強部材)が設けられた生ゴム部材25を載置する。
【0066】
なお、生ゴム部材25を載置する際に、波桟固定部分9Bを構成するゴム材料を溝部27b(図7(a)参照)に挿入する。このとき、波桟立設部分9Aと波桟固定部分9Bとが圧接するだけで、波桟立設部分9Aと波桟固定部分9Bとの間に十分な接着力が得られない場合には、接着面にゴム糊などの接着剤を塗布しても勿論よい。
【0067】
(IV)密着工程
図9(c)に示すように、密着工程では、ゴム部材載置工程が終了した後に、所定の治具33を用いて波形状の載置凹部27aに、波桟の加硫前の状態である生ゴム部材25を密着させる。
【0068】
(V)ベルト加硫成型工程
図9(d)に示すように、ベルト加硫成型工程では、密着工程が終了した後に、固定側金型27と合わさった際に接触する移動側フランジ29bがベルト厚さ方向の中央に形成される移動側金型29を、該移動側金型29と合わさった際に接触する固定側フランジ27cがベルト厚さ方向の中央に形成される固定側金型27と合わせて生ゴム部材25を加硫することによって、芯体帆布9a(補強部材)がベルト厚さ方向の中央に設けられた波桟9を成型する。
【0069】
(VI)ベルト取外工程
図9(e)に示すように、ベルト取外工程では、ベルト加硫成型工程が終了した後に、ベルト加硫装置23から波桟9を取り外すことにより、芯体帆布9a(補強部材)がベルト厚さ方向の中央に設けられた波桟9を成型することができる。
【0070】
なお、ベルト製造方法では、(I)生ゴム部材製造工程、(II)生ゴム部材変形工程を必ずしも行う必要はなく、例えば、生ゴム部材載置工程の際に、固定側金型27の載置凹部27aに、生ゴム部材25の代わりに芯体帆布9a(補強部材)やゴム材料9bを載置するものであっても勿論よい。
【0071】
また、ベルト製造方法は、波桟9を製造するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ベルト本体7や横桟11を製造するものであっても勿論よい。この場合、ベルト本体7や横桟11は、波形状に形成する必要がないため、上述した(II)生ゴム部材変形工程や、(IV)密着工程を行う必要がなく、(I)生ゴム部材製造工程、(III)生ゴム部材載置工程、(V)ベルト加硫成型工程を少なくとも含んでいればよい。
【0072】
(作用・効果)
以上説明した本実施の形態に係るゴムベルト(以下、波桟9)、ベルト加硫装置23及びベルト製造方法によれば、波桟9のベルト厚さ方向における中央に補強部材(以下、芯体帆布9a)が設けられることによって、芯体帆布9aが波桟9の側面(一方の面)にずれているゴムベルト(波桟)と比べて、波桟9の剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生をさらに抑制することができ、該クラックの拡大の阻止することが可能な波桟9を提供することができる。
【0073】
また、芯体帆布9aがベルト幅方向の少なくとも一方の端部まで延びていることによって、波桟9におけるベルト幅方向の少なくとも一方の端部の剛性が向上し、これに伴い、波桟9の剛性をさらに向上させることができるとともに、クラックの発生をさらに抑制することができ、該クラックの拡大の阻止することが可能な波桟9を提供することができる。
【0074】
ここで、急傾斜コンベア1では、急傾斜用コンベアベルト3がヘッドプーリ15で折り返すと、波桟9の一方の端部9c(図面では、波桟固定部分9Bに固定される反対側の端部である先端部)がディスクローラ17等に接触してしまうことがあり、該端部9cの摩耗による耐久性が懸念されている(図1参照)。しかしながら、芯体帆布9aがベルト幅方向の一方の端部9cまで延びていることによって、耐摩耗性を向上させて耐久性をも向上させることが可能な波桟9を提供することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係るベルト製造方法によれば、(III)生ゴム部材載置工程と、(V)ベルト加硫成型工程とを少なくとも含むことによって、金型割位置31からはみ出すゴム材料9bと同時に芯体帆布9aが流れてはみ出そうとしてもベルト厚さ方向の中央でのみ流されるので、芯体帆布9aが設けられる波桟9の側面に該芯体帆布9aがずれてしまうことをなくすことができる。これにより、波桟9の剛性を向上させることができるとともに、クラックの発生を抑制することができる波桟9を製造することができる。
【0076】
また、生ゴム部材載置工程の前に(I)生ゴム部材製造工程を行うことによって、芯体帆布9aをゴム材料9bで挟む作業や、それぞれ芯体帆布9aとゴム材料9bとを固定側金型の載置凹部に載置する作業などの作業性を向上させることができるため、コストの低減を図ることができるとともに、作業時間を短縮させることが可能となる。
【0077】
さらに、ゴム部材載置工程が終了した後に(IV)密着工程を行うことによって、芯体帆布9aが伸張してしまうことがないため、芯体帆布9aの剛性をさらに向上させることができるとともに、芯体帆布9aを確実に波桟9のベルト厚さ方向の中央に配置することが可能となる。
【0078】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0079】
具体的には、補強部材として、芯体帆布9aであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、アラミド繊維コード(ケブラーなど)やスチールコードなどであっても勿論よい。
【0080】
この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施の形態に係る急傾斜コンベアを示す斜視図である。
【図2】、本実施の形態に係る急傾斜用コンベアベルトを示す斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る波桟を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る波桟を示す側面・上面図である。
【図5】本実施の形態に係るベルト加硫装置の斜視図である(その1)。
【図6】本実施の形態に係るベルト加硫装置の斜視図である(その2)。
【図7】本実施の形態に係るベルト加硫装置の側面・正面断面図である。
【図8】本実施の形態に係るベルト加硫装置の一部拡大断面図である。
【図9】本実施の形態に係るベルト製造方法の工程を示す図である。
【図10】背景技術に係るベルト加硫装置の側面断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…急傾斜コンベア、3…急傾斜用コンベアベルト、5…機械部材、7…ベルト本体、7a…芯体帆布、7b…補強帆布、7c…ゴム材料、9…波桟、9A…波桟立設部分、9B…波桟固定部分、9C,9D…上面、9a…芯体帆布、9b…ゴム材料、9c…端部、11…横桟、11A…横桟立設部分、11B…横桟固定部分、13…ドライブユニット、15…ヘッドプーリ、17…ディスクローラ、19…テールプーリ、21…キャリアローラ、23…ベルト加硫装置、25…生ゴム部材、27…固定側金型、27A…基板、27B…側板、27a…載置凹部、27b…溝部、27c…固定側フランジ、29…移動側金型、29A…基板、29B…側板、29a…圧縮凹部、29b…移動側フランジ、31…金型割位置、33…所定の治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、前記載置凹部に載置された前記生ゴム部材を前記固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備えるベルト加硫装置を用いて製造されるゴムベルトであって、
前記固定側金型と前記移動側金型とが合わさった際に接触する金型割位置がベルト厚さ方向の中央に配置される前記ベルト加硫装置で加硫されることによって、ベルト厚さ方向における中央に補強部材が設けられることを特徴とするゴムベルト。
【請求項2】
急傾斜用コンベアベルトを構成するベルト本体にベルト長手方向に沿って立設される波形状の波桟であることを特徴とする請求項1に記載のゴムベルト。
【請求項3】
前記補強部材は、ベルト幅方向の少なくとも一方の端部まで延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴムベルト。
【請求項4】
加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、前記載置凹部に載置された前記生ゴム部材を前記固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備え、前記生ゴム部材を加硫することによってゴムベルトを成型するベルト加硫装置であって、
前記移動側金型と合わさった際に接触する前記固定側金型における固定側フランジと、前記固定側金型と合わさった際に接触する前記移動側金型における移動側フランジとの接触部分である金型割位置は、ベルト厚さ方向の中央に形成されていることを特徴とするベルト加硫装置。
【請求項5】
前記ゴム部材は、急傾斜用コンベアベルトを構成するベルト本体にベルト長手方向に沿って立設される波形状の波桟であることを特徴とする請求項4に記載のベルト加硫装置。
【請求項6】
加硫前の状態である生ゴム部材を載置する載置凹部を有する固定側金型と、前記載置凹部に載置された前記生ゴム部材を前記固定側金型へ向かって圧縮する圧縮凹部を有する移動側金型とを備えるベルト加硫装置を用いてゴムベルトを製造するベルト製造方法であって、
前記移動側金型と合わさった際に接触する固定側フランジがベルト厚さ方向の中央に形成される前記固定側金型の載置凹部に、補強部材が設けられた前記生ゴム部材を載置する生ゴム部材載置工程と、
前記固定側金型と合わさった際に接触する移動側フランジがベルト厚さ方向の中央に形成される移動側金型を前記固定側金型と合わせて前記生ゴム部材を加硫することによって、前記補強部材がベルト厚さ方向の中央に設けられた前記ゴムベルトを成型するベルト加硫成型工程と
を含むことを特徴とするベルト製造方法。
【請求項7】
前記生ゴム部材載置工程を行う前に、予め前記補強部材を前記ゴム材料で覆ってプレスすることによって、前記生ゴム部材を製造する生ゴム部材製造工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のベルト製造方法。
【請求項8】
前記ゴムベルトは、急傾斜用コンベアベルトを構成するベルト本体にベルト長手方向に沿って立設される波形状の波桟であり、
前記ゴム部材載置工程が終了した後に、所定の治具を用いて波形状の前記載置凹部に、前記波桟の加硫前の状態である前記生ゴム部材を密着させる密着工程をさらに含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のベルト製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−94551(P2008−94551A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278183(P2006−278183)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】