説明

ゴムロール組成物

【課題】 耐摩耗性が良好であることに加え、耐接着耐久性及び耐圧縮永久歪が良好であり、かつ製造時の加工性に優れた、工業用ゴムロールを製造するための工業用ゴムロール組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の工業用ゴムロール組成物は、結合アクリロニトリル量が30〜48重量%である、カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加させてなり、かつ残存二重結合が4重量%以下である、水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを40重量%以上含有するゴム成分100重量部に対し、アクリル−エステル複合体を3〜17重量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムロール組成物に関する。特には、耐摩耗性、接着耐久性及び耐圧縮永久歪が良好であると共に、製造時の加工性に優れた、工業用ゴムロールを製造するのに好適に用いられるゴムロール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムロールは、鉄芯等の金属製の芯をゴムで接着被覆することによって製造されるロールであり、一般に金属鉄芯にゴムシートを渦巻き状に巻き付けて製造されている。このようなゴムロールは、製紙、製鉄、印刷等の種々の用途に用いられるものである。工業用ゴムロールとは、印刷用及びOA用に用いられるものを除くフィルム用、製鉄用、製紙用等の工業用材料及び製品の製造時に用いられるゴムロールを意味し、従来より、耐油性を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムが耐油性ゴムロールとして用いられてきた。
【0003】
しかしながら、近年においては、ゴムロールの耐久寿命を向上させるという要求が高まってきた。上述のように、従来よりゴムロールを製造するために用いられてきたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(以下、単に汎用NBRともいう)は、用途によっては耐摩耗性が十分でないという課題があるため、耐摩耗性を向上させると供に、耐熱性にも優れる、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムを含有するゴム組成物がゴムロールを製造するために用いられるようになってきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような水素添加アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(以下、単にH−NBRともいう)は、ゴムロールの製造時に鉄芯にゴムを巻き付け成形する際に、ゴム組成物の粘着性や流動性が汎用NBRに比べて劣り、且つ全般的に加工性が悪く、ゴムロールの製造の際に安定生産するためには多くの問題を有するものであった。また、ゴムロール製造時の接着性が不安定であり、製造不良が発生する確率が高い等の問題もあった。更に、製品の使用時に熱や歪の入力を受けると、接着破壊が発生しやすいなど、接着耐久性の面でも問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−87430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、耐摩耗性が良好であることに加え、接着耐久性及び耐圧縮永久歪が良好であり、かつ製造時の加工性に優れた、工業用ゴムロールを製造するための工業用ゴムロール組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有するゴム成分を用いることにより上記目的を達成し得るという知見をはじめて得、本発明を完成させた。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、結合アクリロニトリル量が30〜48重量%である、カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加させてなり、かつ残存二重結合が4重量%以下である水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを40重量%以上含有するゴム成分100重量部に対し、アクリル−エステル複合体を3〜17重量部含有する、過酸化物加硫系の工業用ゴムロール組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記工業用ゴムロール組成物を軸芯材に外装し、加硫してなる工業用ゴムロールを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐摩耗性が良好であることに加え、接着耐久性及び耐圧縮永久歪が良好であると共に、製造時の加工性に優れた、工業用ゴムロールを製造するのに好適に用いられる工業用ゴムロール組成物が提供される。すなわち、従来より工業用ゴルロームを製造するために用いられているアクリロニトリル−ブタジエン共重合体では金属との接着耐久性、耐圧縮永久歪み、加工性等は良いが耐摩耗性は十分なものでなく、この問題を解決するために開発された、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン共重合体では、耐摩耗性は向上するが、一方で、金属との接着性が良好でなく、製造時の加工性にも問題があった。本発明は、この問題を同時に解決するものであり、従来の工業用ゴムロール組成物では得られなかった、耐摩耗性、金属との接着性、圧縮永久歪及び加工性にも優れる工業用ゴムロール組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、先ず本発明の工業用ゴムロール組成物について説明する。
本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物加硫系の工業用ゴムロール組成物であり、結合アクリロニトリル量が30〜48重量%である、カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加させてなり、かつ残存二重結合が4重量%以下である水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを40重量%以上含有するゴム成分100重量部に対し、アクリル−エステル複合体を3〜17重量部含有する、過酸化物加硫系の工業用ゴムロール組成物である。
【0010】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物加硫系の工業用ゴムロール組成物である。
本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物加硫して工業用ゴムロールを製造するための組成物であることを意味する。すなわち、本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物系加硫剤を用いて過酸化物加硫して工業用ゴムロールを製造するための組成物である。
本発明の工業用ゴムロール組成物は、結合アクリロニトリル量が30〜48重量%であるカルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加させてなり、かつ残存二重結合が4重量%以下である、水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを40重量%以上含有するゴム成分、及びアクリル−エステル複合体を3〜17重量部含有する。
【0011】
本発明の工業用ゴムロール組成物に含有されるゴム成分に含まれる水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、結合アクリロニトリル量が30〜48重量%であり、好ましくは35 〜45重量%であるカルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加してなるものである。水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムの結合アクリロニトリル量が30重量%未満であると、得られる工業用ゴムロールの耐油性が低下し、ゴムロールとしての機能が不足する。一方、48重量%を超えると、成形加工性、研磨性等の加工性が劣る。
【0012】
結合アクリロニトリル量が上記範囲のカルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、結合アクリロニトリル量が上記範囲のアクリロニトリルブタジエンゴムをカルボキシル化して得られる。アクリロニトリルブタジエンゴムをカルボキシル化する方法に特に制限はなく、従来公知の方法によって実施することができる。上記水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、カルボキシル化されたアクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加させたものである。また、上記水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムは、残存二重結合が4重量%以下であり、好ましくは0〜2重量%である。残存二重結合が4重量%を超えると、耐熱性や耐オゾン性が低下する。水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムの残存二重結合を上記範囲とする方法に特に制限はない。なお、上記水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムとしては、市販されているものを用いてもよく、例えば、最近開発されたLANXESS社製のテルバンXT等が使用可能である。
【0013】
本発明の工業用ゴムロール組成物に含まれるゴム成分は、上記水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを40重量%以上含有する。ゴム成分中の水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムの含有量は、好ましくは60重量%以上であり、ゴム成分が全て水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムであってもよい。上記水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムの含有量が40重量%未満であると、耐摩耗性が低下したり、耐熱性、耐オゾン性等が低下する。
上記ゴム成分は、上記水素添加カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを40重量%以上含んでなるが、それ以外の成分は、好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(汎用NBR)及び/又は水素添加アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(H−NBR)である。汎用NBR及びH−NBRは、いずれかを用いてもよく、又は両者を用いてもよい。両者を用いる場合、その混合割合に特に制限はなく、適宜決定することができる。
【0014】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、上記ゴム成分、及びアクリル−エステル複合体を含有する。アクリル−エステル複合体としては、例えば、SARTOMER社製、SARET500やSARET633が使用可能である。
【0015】
本発明の工業用ゴムロール組成物において、アクリル−エステル複合体の含有量は、上記ゴム成分100重量部に対し、3〜17重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。アクリル−エステル複合体の配合量が、上記ゴム成分100重量部に対し、3重量部未満であると、架橋密度を上げる効果が少なくなり、また耐圧縮永久歪を改良する効果がなくなる。一方、15重量部を超えると架橋密度が上昇し、破断伸びが低下する 問題が発生する。
【0016】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、溶解度係数(SP値)が9〜10のテルペン系フェノール樹脂を含有することが好ましい。テルペン系フェノール樹脂とは、(1)環状テルペン化合物とフェノール類とを共重合させて得られる環状テルペン系フェノール樹脂、(2)環状テルペン化合物に、フェノール類を、環状テルペン化合物1分子に対しフェノール類2分子の割合で付加させてなる環状テルペン含有フェノール化合物、(3)(1)の環状テルペン系フェノール樹脂と(2)の環状テルペン含有フェノール化合物とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂、(4)環状テルペン化合物1分子に対し、フェノール類1分子を付加させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール化合物と、アルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂等が挙げられる。このようなテルペン系フェノール樹脂を含有させることにより、工業用ゴムロール組成物の未加硫生地の粘着性(タッキネス)を向上させ、また、ゴムの流動性が向上するので、ロール成形時の加工性がより向上する。
【0017】
テルペン系フェノール樹脂の含有量は、上記ゴム成分100重量部に対し、好ましくは3〜12重量部であり、更に好ましくは5〜10重量部である。テルペン系フェノール樹脂の含有量が3重量部未満であると、上記効果が発揮されない場合があり、一方12重量部を超えて配合させると、逆に粘着性が上昇しすぎて加工上の問題が発生し、耐圧縮永久歪性が低下する。また、テルペン系フェノール樹脂のSP値は9〜10のものを配合することが好ましい。SP値が上記範囲外のテルペン系フェノール樹脂を配合した場合、加硫後のブリード性が問題となる。
【0018】
本発明の工業用ゴムロール組成物には、吸油量が40〜60ml/gであり、平均粒子径が2〜5μmであり、比表面積が10〜14m/gである、シランカップリング剤で表面処理された無機フィラーを含有させることが好ましい。このような無機フィラーを含有させることにより、工業用ゴムロール組成物の未加硫生地の収縮性や混練時の密着防止効果がより向上し、生地の肌を改善することによって、より安定した製造品質を確保することができる。吸油量は好ましくは45〜55ml/gであり、平均粒子径は好ましくは2〜4μmであり、比表面積は好ましくは11〜13m/gである。
吸油量、平均粒子径及び比表面積が上記範囲の無機フィラーを用いることにより、工業用ゴムロール組成物に未加硫生地の収縮性や混練時の密着防止が改善され、更に生地の肌の改善も可能となり、安定した製造品質を確保することが可能となる。
【0019】
上記無機フィラーとして好ましいものは、微粒子球状クォーツと板状カオリナイトとからなる無水ケイ酸アルミニウム系縮合物が好ましく用いられる。本発明の工業用ゴムロール組成物に好ましく含まれる無機フィラーは、シランカップリング剤で表面処理したものである。無機フィラーをシランカップリング剤で表面処理する方法に特に制限はなく、従来公知の方法で実施することができる。無機フィラーをシランカップリング剤で表面処理する方法としては、例えば、未処理の無機フィラーを撹拌しながら、シランカップリング剤を滴下又は噴霧する方法、シランカップリング剤を有機溶媒に溶解して、このシランカップリング剤を溶解させた有機溶媒を撹拌しながら、無機フィラーを添加し、両者を混合した後、乾燥する方法等が挙げられる。
【0020】
無機フィラーの含有量は、上記ゴム成分100重量部に対し、5〜18重量部であり、好ましくは7〜15重量部である。
無機フィラーの含有量が、上記ゴム成分100重量部に対し、5重量部未満であると、上述の効果が得られない場合があり、一方18重量部をを超えると、耐摩耗性が低下する場合がある。
【0021】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、カチオン・ノニオン複合体を含有してもよい。カチオン・ノニオン複合体としては、 新日本理化(株)製「プラスタットC500」、SANKEN CHEMICAL(株)製「us−70」等が挙げられる。
【0022】
近年においては、工業用ゴムロールにおいても帯電防止性能を付与することが要求されている。上記カチオン・ノニオン複合体を、本発明の工業用ゴムロール組成物に含有させることにより、工業用ゴムロール組成物の導電抵抗値が低下し、帯電防止を達成することが可能となる。帯電防止を達成するためには、他の成分を含有させてもよいが、本発明の工業用ゴムロール組成物に含有されるゴム成分と相溶性が良好なものとして、カチオン・ノニオン複合体を用いることが好ましい。カチオン・ノニオン複合体の含有量は、上記ゴム成分100重量部に対し、好ましくは5〜18重量部である。カチオン・ノニオン複合体の含有量が多いほど電気抵抗性(表面電気抵抗値)は低下するが、含有量を多くした場合、一方で耐摩耗性や補強性が低下するため、含有量は、これらの性能の低下防止を考慮し、上記ゴム成分100重量部に対し、18重量部以下であることが好ましく、12重量部以下であることが更に好ましい。また、5重量部未満であると、帯電防止効果が発揮しない場合がある。
【0023】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物加硫させたときの表面電気抵抗値が10Ωcm以下であることが好ましく、10Ωcm以下であることが更に好ましい。過酸化物加硫させたときの表面電気抵抗値を上記範囲とすることにより、上述したような帯電防止効果が発揮される。なお、過酸化物加硫させたときの表面電気抵抗値を上記範囲とするには、工業用ゴムロール組成物に、上述した、カチオン・ノニオン複合体を含有させることにより実施することができる。過酸化物加硫の方法については後述する。
【0024】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物加硫したときのJIS硬度Aが好ましくは55〜95度であり、ロールの使用目的により、硬度を自由に設定するものである。JIS硬度Aの好ましい範囲が55〜95度であるのは、工業用ゴムロールは一般にこの領域の用途が多いためである。
なお、JIS硬度Aとは、JIS K6253に従い、測定した値を意味する。
【0025】
また、本発明の工業用ゴムロール材料は、下記式で表される特性値Mが好ましくは3.3〜5.4であり、更に好ましくは4〜5である。
M=(Hd−50)/100%Mod
上記式において、HdはJIS硬度Aの値を表し、100%Modは100%伸長時の弾性率(MPa)を表わす。
上記特性値Mを上記範囲とすることにより、耐圧縮永久歪みが向上し、また耐熱性の良好な架橋構造及び高弾性率を有する架橋構造のゴムロール材料となる。
なお、上記特性値Mが5.5を超えると、高温時における耐圧縮永久歪が低下する場合があり、一方、Mが3.3未満であると、耐引裂性やゴムの破壊特性が低下する場合がある。
【0026】
本発明の工業用ゴムロール組成物を加硫させたときのJIS硬度A及び上記特性値Mを上記範囲とするには、上述した本発明の工業用ゴムロール組成物を過酸化物加硫することによって実施することができる。なお、過酸化物加硫は過酸化物加硫剤を用いて実施するが、その際の過酸化物加硫剤の使用量は、工業用ゴムロール組成物100重量部に対して、4〜18重量部程度であり、配合設定硬度により適用最適量は異なる。
【0027】
本発明の工業用ゴムロール組成物は、後述するように、工業用ゴムロールを製造するために用いられる。具体的には、本発明の工業用ゴムロール組成物は、過酸化物加硫して工業用ゴムロールを製造するために用いられる。工業用ゴムロール組成物を過酸化物加硫するための過酸化物加硫剤としては特に制限はなく、従来公知の過酸化物加硫剤を用いることができる。過酸化物加硫剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(Dicumylperoxide)や1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1,1−Di−t−butyl peroxy−3,3,5−trimethyl cyclohexane)等が挙げられる。
【0028】
本発明の工業用ゴムロール組成物を得るには、例えば、通常のミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー等を用いて、上述した材料を混練りして得ることができるが、これらに限定されない。
本発明の工業用ゴムロール組成物は、工業用ゴムロール、すなわち、印刷用及びOA用に用いられるものを除くフィルム用、製鉄用、製紙用等の工業用材料及び製品用に用いられるゴムロールや、又はフリクションロールを製造するための材料として用いることができる。
【0029】
次に、本発明の工業用ゴムロールについて説明する。
本発明の工業用ゴムロールは、上述した本発明の工業用ゴムロール組成物を軸芯材に外装し、加硫してなる。
本発明のゴムロールは、上述した本発明の工業用ゴムロール組成物を材料とし、通常のバンバリーミキサーやニーダー等によって混練し、未加硫のゴムシート又は押出し機でリボン状ゴムを押出し、これを金属製の芯材に渦巻き状に巻き付けて成形し、引き続き、加硫装置で加硫を行うことによって製造することができる。用いられる金属製の芯材としては、例えば、一般には鉄、アルミニウム、ステンレス等からなるものが挙げられる。
【0030】
本発明の工業用ゴムロールは、例えば、印刷用及びOA用に用いられるものを除くフィルム用、製鉄用、製紙用等の工業用材料及び製品用に用いられるゴムロールや、又はフリクションロール等として好適に用いられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0032】
本実施例では、以下の方法で、ゴムロール組成物の評価を行った。
(1)硬度
硬度とは、配合組成物の加硫品の硬さを意味し、硬度は、JIS K6253に従い、JIS A型硬度計を用いて測定した。
【0033】
(2)強度
強度とは、配合組成物の加硫品の引張り時の破断強度を意味し、測定はJIS K6251に準じて行った。
【0034】
(3)伸び
伸びとは、配合組成物の加硫品の引張り時の破断伸びを意味し、測定は、JIS K6251に準じて行った。
【0035】
(4)100%伸長時の弾性率
100%伸長時の弾性率とは、配合組成物の加硫品の100%伸張時の応力(MPa)を意味し、測定は、JIS K6251に準じて行った。
【0036】
(5)タック(粘着性)
2mm厚のゴムロールシートの生地を台の上に固定し、そのシートに金属ローラ(30Φ×巾2mm)に、2mmの厚みのシート生地を巻き付けた後、ローラを一定荷(160g/cm)で5秒間圧着した後、ローラを引き離す時の力を測定した。測定は、明和ゴム工業社製、粘着力測定機を用いて行った。この測定値が大きいほどタック性(粘着性)が良好であると判断される。また、タック性(粘着性)が良好であるものは、成形時のゴム/ゴム間の密着が良好であり、エアー入り等も少なくなり、品質が安定し、加工性が良好であると判断される。
【0037】
(6)収縮性
ロールにてゴムロールシート生地を2mm圧にシーティングした後、生地幅15cm、長さ25cmの長方形に切断し、次いで、台上に自然放置して、5分後の長さ方向の収縮量を測定した。5分後の長さ方向の収縮率(%)を用いて評価を行った。この測定値が小さい方が、成形時のシートの収縮が少なく、安定な成形ができるため、加工性が良好であると判断される。
【0038】
(7)研磨性
ゴムロール組成物を加硫した後、施盤上で砥石研磨する場合の研磨状態を観察した。ゴムの粘り発生等が発生せずに表面がきれいに仕上がるか否かを肉眼で外観評価した。評価は以下の評価基準に従って行った。
○:ゴムがねばつかず、研磨面が均一できれいに仕上がる。
△:ゴムのねばりがややあり、研磨面がやや不良である。
×:ゴムがねばりつき、研磨面にバラツキが発生し、研磨面が不良である。
研磨性が良好であると判定される場合、表面がきれいに仕上がる。研磨性が劣ると、ゴムがねばついて、研磨時間がかかり、かつ研磨面の品質も劣る。
【0039】
(8)耐摩耗性
アクロン型摩耗試験機(上島製作所(株)製)にて回転砥石に回転ゴムサンプルを、回転砥石の回転方向に対して15度の角度になるように取り付け、ゴムサンプルが1000回転した後のゴムの摩耗減量(体積換算)を測定した。この数値が小さい方が、耐摩耗性が良好であると評価できる。
【0040】
(9)接着性
長さ30cm、外径38mmΦの鉄芯に接着剤(タイプライBN又はケムロック205/220)を塗布した後、シート状ゴムを渦巻き状に形成し(ゴム厚15mm)加硫してゴムロールとした。加硫した後、ゴムロールの1断面を長さ方向に鉄芯に沿って鉄芯の界面まで部分研磨した。研磨後、ゴムと鉄芯との界面の接着剥がれ量を肉眼にて外観評価(ゴム付き状態の観察)した。界面の剥がれがない場合は接着が良好であると評価した。
接着性は以下の3段階で評価を行った。
A:長さ方向の剥がれがない(ゴム付き状態が100%である)。
B:長さ方向の剥がれが部分的である(ゴム付き状態が50%以上100%未満である)。
C:名朝方向の剥がれが全面的である(ゴム付き状態が50%未満である)。
【0041】
(10)圧縮永久歪
2mm厚みの加硫サンプルを短冊状(幅1.5cm×長さ12cm)に切断し、サンプルを長さ方向の中心で重なるように折り曲げ(角度0)、折り曲げた中心部を一定荷重(0.6kg/cm)で圧着した。圧着した状態で、サンプルを120℃のオーブンに12時間入れて加熱した。12時間経過した後、サンプルを取り出し、同時に圧着力を開放して自然冷却させた。冷却した後、短冊状サンプルの中心部におけるセット量(圧着永久歪)角度を測定した。荷重を取り除いた後のセット角度が大きいほど、圧縮永久歪が良好であるといえ、180度の場合は圧着永久歪は0となる。従って、耐圧縮永久歪み性=(180−セット角度)/180で計算して評価を行った。この値(指数)が小さいほど、良好であると判断する。
【0042】
(11)導電性
HIOK社製「3453 DIGITAL MΩ HITESTER」を用いて、250V時の表面電気抵抗度(Ωm)を測定した。この電気抵抗度抵抗度が小さいほど、導電性が良好であると評価できる。
【0043】
(12)耐熱老化性
3mm厚みの加硫サンプルをオーブンに入れて、110℃で72時間加熱を行い、空気酸化劣化させた。空気酸化劣化させた後のゴムの破壊伸びを、東洋精器(株)製、STROGRAPH−R2を用いて測定し、加熱前後の破壊伸びを対比し、その変化率を求めた。この変化率が小さいほど、耐熱老化性は良好であると評価できる。なお、表中において、∞は、上記測定器では電気抵抗が大きすぎて測定できない(非導電性)ことを意味する。
(13)ブリード性
配合組成物を加硫した後(厚さ2mmのシート状に)、台上に室温(約25℃)で7日間放置した後、ゴム表面を観察し、表面に配合組成物中の可塑剤(オイル分)が移行してべたつきがあるか否かを観察した。べつぎがある場合、ブリード性ありと判断した。
【0044】
実施例1〜4、比較例1〜2
表1に示す配合の工業用ゴムローム組成物を、バンバリーミキサーにて混練りして製造した。なお、以下の実施例において、表中の数字は、全て重量部を表す。得られたゴムロール組成物について、上述した評価を行った。結果を表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1において、テルバンXTとしては、LANXES社製のカルボキシル変性・水添化ニトリルゴム(結合アクリロニトリル量:33重量%、残存二重結合:3.5重量%)を、ZETPOL2020としては、日本ゼオン(株)製の水添ニトリルゴム(H-NBR)を、NS30SLとしては、JSR(株)製のアクリロニトリル・ブタジエンゴム(汎用ニトリルゴム(NBR))を、ニプシルERとしては、日本シリカ製のものを、AKTISILとしては、AKTISIL PF216(HOFFMANN社製:無機フィラで微粒子球状クオーツと板状カオリナイトからなる無水ケイ酸アルミニウム系縮合物でシラン系カップリング剤で表面処理したもの、平均粒子径:2.6μm、比表面積:11.6m/g)を、プラスタットC500としては、新日本理化(株)製のカチオン・ノニオン複合体を主成分とした帯電防止剤)を、DOPとしてはジェイプラス製のものを、YP90Lとしてはヤスハラケミカル(株)製のテルペン系・フェノール樹脂(溶解度係数:9.1)を、Si69としては、デグッサ製のものを、DEGとしては、大日本インキ(株)製のものを、Saret SR500としては、SAROMER社製のアクリル酸エステル複合体の加硫助剤を、ナウガード445としては、白石カルシウム(株)製のものを、ペロキシモンF40としては、日本油脂(株)製の過酸化物加硫剤を、レノグランS80としては、ライン・ケミ社製のものを、CZとしては、川口化学(株)製のものを、それぞれ用いた。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から、実施例1〜4の工業用ゴムロールは、比較例1及び2の工業用ゴムロールと比較し、加工性に優れると同時に、接着性等の性能にも優れるものであることがわかる。
【0049】
実施例5〜8、比較例3〜4
表3に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、工業用ゴムロール組成物を得た。なお、表3に示す成分は、実施例1と同様のものを用いた。得られた工業用ゴムロール組成物について、上述した評価を行った。結果を表4に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
表4から、実施例5〜8の工業用ゴムロールは、比較例3及び4の工業用ゴムロールと比較し、圧縮永久歪等の性能に優れることがわかる。比較例3の工業用ゴムロールは圧縮永久歪が劣り、また、比較例4の工業用ゴムロールは圧縮永久歪は良好であるが、ゴムの破断伸びが著しく低下し、実用上問題がある。
【0053】
実施例9〜13、比較例5〜6
表5(実施例9〜13)、表6(比較例5〜6)に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、工業用ゴムロール組成物を得た。なお、表5、表6に示す成分は、実施例1と同様のものを用いた。得られた工業用ゴムロール組成物について、上述した評価を行った。結果を表7(実施例9〜13)、表8(比較例5〜6)に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
表7及び表8から、実施例9〜13の工業用ゴムロールは、比較例5及び6の工業用ゴムロールと比較し、加工性及び耐摩耗性のいずれにも優れるものであることがわかる。比較例5の工業用ゴムロールは収縮性が劣るものであり、比較例6の工業用ゴムロールは耐摩耗性が劣る。
【0059】
実施例14〜16、比較例7〜8
表9に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、工業用ゴムロール組成物を得た。なお、表9に示す成分は、実施例1と同様のものを用いた。得られた工業用ゴムロール組成物について、上述した評価を行った。結果を表10に示す。
【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
表9から、比較例7においては、タックの値が小さく、粘着不足であり、比較例8においては、逆に粘着過多であると言える。すなわち、比較例7及び8の工業用ゴムロールは、加工性に劣ることがわかる。
【0063】
実施例17〜19、比較例9〜11
表11(実施例17〜19)及び表12(比較例9〜11)に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、工業用ゴムロール組成物を得た。なお、表13、表14に示す成分は、実施例1と同様のものを用いた。得られた工業用ゴムロール組成物について、上述した評価を行った。結果を表13(実施例17〜19)及び表14(比較例9〜11)に示す。
【0064】
【表11】

【0065】
【表12】

【0066】
【表13】

【0067】
【表14】

【0068】
表13及び14から、比較例11の工業用ゴムロールは、ブリードが発生したり、研磨性に劣るものであり、比較例9の工業用ゴムロールは電気抵抗が大きすぎて電気が通らないものであり、すなわち非導電性ゴムであり、比較例10の工業用ゴムロールは電気を通すが、導電性の値が大きすぎて、目標とする10〜10Ωmの範囲に入らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合アクリロニトリル量が30〜48重量%である、カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを更に水素添加させてなり、かつ残存二重結合が4重量%以下である水素添加カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを40重量%以上含有するゴム成分100重量部に対し、アクリル−エステル複合体を3〜17重量部含有する、過酸化物加硫系の工業用ゴムロール組成物。
【請求項2】
上記ゴム成分が、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム及び/又は水素添加アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムを含有する、請求項1に記載の工業用ゴムロール組成物。
【請求項3】
上記ゴム成分100重量部に対し、溶解度係数(SP値)が9〜10のテルペン系フェノール樹脂を3〜12重量部含有する、請求項1又は2に記載の工業用ゴムロール組成物。
【請求項4】
上記ゴム成分100重量部に対し、
吸油量が40〜60ml/gであり、平均粒子径が2〜5μmであり、比表面積が10〜14m/gである、シランカップリング剤で表面処理された無機フィラーを、5〜18重量部含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の工業用ゴムロール組成物。
【請求項5】
上記ゴム成分100重量部に対し、カチオン・ノニオン複合体を8〜15重量部含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の工業用ゴムロール組成物。
【請求項6】
過酸化物加硫させたときの表面電気抵抗値が10Ωcm以下である、請求項5に記載の工業用ゴムロール組成物。
【請求項7】
過酸化物加硫させたときのJIS硬度Aが55〜95度であり、下記式で表される特性値Mが3.3〜5.4である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の工業用ゴムロール組成物。
M=(Hd−50)/100%Mod
(上記式において、HdはJIS硬度Aの値を表し、100%Modは100%伸長時の弾性率(MPa)を表わす。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の工業用ゴムロール組成物を軸芯材に外装し、加硫してなる工業用ゴムロール。

【公開番号】特開2007−161870(P2007−161870A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359771(P2005−359771)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(390015152)明和ゴム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】