説明

ゴムロール製造機およびゴムロールの製造方法

【課題】ゴムロールの肉厚ムラを抑制するようにしたゴムロール製造機を提供する。
【解決手段】円筒状を呈する外側ダイ12と、外側ダイ12との間に環状を呈する環状流路14が形成されるように外側ダイ12の内側に配置され、環状流路14を形成する部分において外側ダイ12の内周面12aよりもゴム材18に対する摩擦係数が大きい外周面16aを有し、さらに導電性軸体20を挿通させるための挿通孔16bが中心部に形成される内側ダイ16と、環状流路14から流れてくるゴム材18を挿通孔16bから出てくる導電性軸体20に接触させ、ゴム材18および導電性軸体20を一体化して外部に排出するための排出部22と、を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムロール製造機およびゴムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸部材の外周上にゴム材を被覆するゴムロール製造機において、ダイの内壁に設けられた出口方向に向かうらせん溝(1)に沿って該ゴム材が押出されるように構成することで、ゴム材がヘッド内で会合する際発生するウェルドラインをゴム材の処方によらず防止し、電気特性の周方向ムラが少ないゴムロールを製造することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、クロスヘッドダイを使用したゴムロール製造機において、ゴム材が経由する環状流路の表面に形成された樹脂層の水の接触角が100度以上であり、かつ、該樹脂層を構成する樹脂は、ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂、又は該樹脂とフッ素樹脂との複合樹脂とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−94050号公報
【特許文献2】特開2009−96110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に比べて、ゴムロールの肉厚ムラを抑制するようにしたゴムロール製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のゴムロール製造機は、円筒状を呈する外側部材と、前記外側部材との間に環状を呈する環状流路が形成されるように前記外側部材の内側に配置され、前記環状流路を形成する部分において前記外側部材の内周面よりもゴム材に対する摩擦係数が大きい外周面を有し、さらに軸部材を挿通させる挿通孔が中心部に形成される内側部材と、前記環状流路から流れてくるゴム材を前記挿通孔から出てくる軸部材に接触させ、前記ゴム材および前記軸部材を一体化して外部に排出するための排出部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載のゴムロールの製造方法は、請求項1に記載のゴムロール製造機を用い、前記環状流路にゴム材を流すと共に前記挿通孔に軸部材を挿通し、前記環状流路から流れてくるゴム材を前記挿通孔から出てくる軸部材に接触させ、前記ゴム材および前記軸部材を一体化して外部に排出することでゴムロールを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載のゴムロール製造機によれば、環状流路を形成する部分において内側部材の外周面のゴム材に対する摩擦係数と外側部材の内周面のゴム材に対する摩擦係数とを同じとする場合に比べて、製造されるゴムロールの肉厚ムラを抑制することができる。
【0009】
本発明の請求項1に記載のゴムロールの製造方法によれば、請求項1に記載のゴムロール製造機を用いないでゴムロールを製造する場合に比べて、製造されるゴムロールの肉厚ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るゴムロール製造機の縦断面を示す図である。
【図2】図1のL2−L2線におけるゴムロール製造機の横断面を示す図である。
【図3】本実施形態のゴムロール製造機に対する比較例としてのゴムロール製造機について、環状流路を流れるゴム材の速度分布、排出部を流れるゴム材の速度分布および排出口から排出されるゴムロールの肉厚ムラについて説明する図である。
【図4】外側ダイの内周面および内側ダイの外周面に様々な組み合わせの表面処理を施した場合のゴムロールの軸方向における肉厚ムラについての実験結果を表として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るゴムロール製造機およびゴムロールの製造方法の実施形態の一例について、添付の図面を用いて説明する。
【0012】
本発明に係るゴムロール製造機およびゴムロールの製造方法によって製造されるゴムロール(ゴム皮膜軸体)は、例えば画像形成装置の感光体ドラムに接触して回転し感光体ドラムの外周面を帯電する帯電ロールとして用いられる。感光体ドラムの外周面に密着して外周面全体をムラ無く帯電するためには、肉厚ムラの小さいゴムロールが必要とされる。研磨や表面処理などの二次工程を施すことで肉厚ムラを抑えられるが、工程数が増える分、製造コストが増加する。そのため、研磨や表面処理などの二次工程を施すことなく、肉厚ムラの小さいゴムロールを成形可能なゴムロール製造機が望まれている。
【0013】
図1は、本発明に係るゴムロール製造機の縦断面を示している。図2は、図1のL2−L2線におけるゴムロール製造機の横断面を示している。
【0014】
本発明に係るゴムロール製造機10は、いわゆるクロスヘッドダイを備える押出成形機として構成される。このゴムロール製造機10は、大略円筒状を呈する外側部材の一例としての外側ダイ12と、外側ダイ12との間に横断面において環状を呈する環状流路14が形成されるように外側ダイ12の内側に配置される内側部材の一例としての内側ダイ16とを備えている。
【0015】
内側ダイ16および外側ダイ12は上方側が嵌め合い形状とされており、内側ダイ16は上方側で外側ダイ12に嵌合され固定されている。内側ダイ16の外側ダイ12に嵌合固定される部位よりも下方側においては、内側ダイ16と外側ダイ12とによって環状流路14が形成されている。即ち、内側ダイ16の外周面16aの一部が環状流路14の内壁を形成し、外側ダイ12の内周面12aの一部が環状流路14の外壁を形成している。この環状流路14には、流動性を有する未加硫のゴム材18が流される。
【0016】
内側ダイ16および外側ダイ12は例えば鋼材といった同じ材料から構成されているが、少なくとも環状流路14を形成する部分において内側ダイ16の外周面16aと外側ダイ12の内周面12aとには後述するように互いに異なる表面処理が施されている。それにより、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数は、外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも大きいものとされている。
【0017】
外側ダイ12の周壁の上方側には、ゴム材18を導入するための導入口12bが形成されている。ゴム材18は、押出機(図示省略)によって導入口12bから導入される。導入口12bから導入されたゴム材18は、環状流路14を通って下方側へと流れる。
【0018】
内側ダイ16の中心部には、軸部材の一例としての導電性軸体20を挿通させるための挿通孔16bが軸方向に沿って貫通形成されている。導電性軸体20は、搬送機(図示省略)によって挿通孔16bの上方側から送り込まれ、下方側から排出されるようになっている。
【0019】
外側ダイ12の内径は下方側ほど縮径されており、外側ダイ12の下面の中央部には外部に通じる円形の排出口12cが形成されている。内側ダイ16も下方側ほど縮径されており、特にその下端部16cは円錐状を呈し、頂部が挿通孔16bの出口とされ、環状流路14を流れるゴム材18を挿通孔16bから排出される導電性軸体20へと案内するような形状とされている。
【0020】
内側ダイ16の下端部16cよりも下方側は、排出部22となっている。排出部22では、環状流路14から排出されてくるゴム材18が挿通孔16bから排出されてくる導電性軸体20に接触(合流)する。即ち、ゴム材18が導電性軸体20を皮膜する形で、ゴム材18および導電性軸体20が一体化される。そして、一体化されたゴム材18および導電性軸体20が外側ダイ12の下面の排出口12cから外部へと排出される。それにより、ゴムロール(ゴム皮膜軸体)24が成形されるようになっている。なお、導電性軸体20の外周面には予めプライマー層が塗布されており、排出部22において導電性軸体20とゴム材18とが接触することで両者が接着されるようになっている。
【0021】
このゴムロール製造機10を用いてゴムロール24を製造するには、押出機(図示省略)により一定流量でゴム材18を導入口12bから導入する。それにより、一定流量のゴム材18が環状流路14を経て排出部22へと流れる。これと同時に、導電性軸体20を挿通孔16bに導入し、排出部22において一定速度で挿通孔16bから排出されるように下方側へと送り出す。そうすると、排出部22においてゴム材18および導電性軸体20が一体化され、排出口12cから概ね一定の肉厚(外径)を有するゴムロール24が排出される。なお、本実施の形態ではゴム材18の流量や導電性軸体20を送り出す速度を一定とし、概ね一定の肉厚を有するゴムロール24を排出したが、送り出す速度を予め定められた速度に変更することによりゴムロールの肉厚を変更することができ、いわゆるクラウン状や鼓状のゴムロールを排出することも可能である。
【0022】
なお、排出されたゴムロール24は適宜な処理炉を用いて加硫され、所望の長さに切断されると共に、両端側において導電性軸体20が一定の長さ露出するように加工される。それにより、例えば画像形成装置の帯電ロールとして使用可能となる。
【0023】
次に、ゴムロール24の肉厚ムラを抑制するために発明者達が得た知見について説明する。
【0024】
図3は、本実施形態のゴムロール製造機10に対する比較例としてのゴムロール製造機100について、環状流路14を流れるゴム材18の速度分布、排出部22を流れるゴム材18の速度分布および排出口12cから排出されるゴムロール24の肉厚ムラについて説明する図である。
【0025】
比較例としてのゴムロール製造機100はゴムロール製造機10と同じ構造であるが、ゴムロール製造機100の内側ダイ16の外周面16aおよび外側ダイ12の内周面12aには例えば硬質クロムメッキといった同じ表面処理が施されている。従って、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数および外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数は同じとされている。
【0026】
先ず、環状流路14を流れるゴム材18の速度分布について説明すると、図3に模式的に示すように、環状流路14の外壁(外側ダイ12の内周面12a)および環状流路14の内壁(内側ダイ16の外周面16a)から離れた中央部を流れるゴム材18の速度は大きく、環状流路14の外壁側を流れるゴム材18ほど速度が小さく、また環状流路14の内壁側を流れるゴム材18ほど速度が小さくなる。これは、環状流路14の外壁および内壁における摩擦抵抗により、環状流路14の外壁側および内壁側ほどゴム材18の流動抵抗が大きくなるためである。
【0027】
また、環状流路14の外壁側を流れるゴム材18の速度は、環状流路14の内壁側を流れるゴム材18の速度に比べて小さい。これは、環状流路14の外壁の表面積が内壁の表面積よりも大きく、環状流路14の外壁側を流れるゴム材18の方が環状流路14の内壁側を流れるゴム材18よりも表面摩擦による流動抵抗を大きく受けるためである。
【0028】
従って、比較例としてのゴムロール製造機100においては、環状流路14を流れるゴム材18は全体的に外壁側で遅く、内壁側で速いといった速度分布を有することとなる。そして、この環状流路14における外壁側と内壁側とでのゴム材18の速度差は、ゴム材18に歪みを生じさせる。それは、環状流路14の外壁側を流れるゴム材18には速度が遅いが故に引張応力が生じる一方、環状流路14の内壁側を流れるゴム材18には速度が速いが故に圧縮応力が生じるからである。
【0029】
次いで、排出部22を流れるゴム材18の速度分布について説明すると、排出部22においては、導電性軸体20に接触する側でゴム材18の速度が速く外壁側ほど速度が遅くなる。これは、環状流路14の内壁側を流れてきたゴム材18が同方向に移動する導電性軸体20に接触し、導電性軸体20に接触する側で流動抵抗が小さくなることによる。それにより、排出部22においては、環状流路14の外壁側を流れてきたゴム材18と環状流路14の内壁側を流れてきたゴム材18との速度差が増大する。即ち、環状流路14の外壁側を流れてきたゴム材18にはより強い引張応力が生じると共に、環状流路14の内壁側を流れてきたゴム材18にはより強い圧縮応力が生じることで、ゴム材18に生じている歪みが増大することとなる。
【0030】
次いで、排出口12cから排出されるゴムロール24の肉厚ムラについて説明すると、導電性軸体20とゴム材18が一体化されゴムロール24として排出口12cから排出されると、ゴムロール24のゴム材18の内部に生じている歪みが解放されることから、変形が生じる。具体的には、ゴムロール24の外周側のゴム材18は引張応力が解放されることから収縮し、ゴムロール24の内周側のゴム材18は圧縮応力が解放されることから膨張する。即ち、歪み解放時のゴム材18の変形がゴムロール24に軸方向における肉厚ムラを生じさせる要因となっている。
【0031】
比較例としてのゴムロール製造機100における以上の事象から、発明者達は、ゴムロール24に軸方向における肉厚ムラを抑制するには、ゴム材18に生じる歪みの抑制すること、そのためには環状流路14を流れるゴム材18の速度差を是正(小さく)することが必要であるとの知見を得た。
【0032】
そこで、本実施形態のゴムロール製造機10においては、環状流路14を形成する部分において、内側ダイ16の外周面16a(環状流路の内壁)および外側ダイ12の内周面12a(環状流路の外壁)に互いに異なる表面処理を施し、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数を外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも大きくすることで、環状流路14を流れるゴム材18の速度差を是正するようにした。即ち、環状流路14を形成する部分に関し、内側ダイ16の外周面16aは外側ダイ12の内周面12aよりも表面積が小さいが、その分摩擦係数を大きくすることで、環状流路14を流れるゴム材18の速度差を是正するようにした。それにより、排出口12cから排出されるゴムロール24においてゴム材18に生じる歪みが抑制され、ゴムロール24に軸方向における肉厚ムラが抑制される。
【0033】
以下、ゴムロール24の軸方向における肉厚ムラについての実験結果を説明する。
【0034】
図4は、外側ダイ12の内周面12aおよび内側ダイ16の外周面16aに様々な組み合わせの表面処理を施した場合のゴムロール24の軸方向における肉厚ムラについての実験結果を表として示している。
【0035】
実施例1では、外側ダイ12の内周面12aにカニフロン皮膜処理(商品名:カニフロンS、日本カニゼン(株))を施す一方、内側ダイ16の外周面16aに硬質クロムメッキを施したゴムロール製造機を用いてゴムロールを製造した。
【0036】
実施例2では、外側ダイ12の内周面12aにカニフロン皮膜処理(商品名:カニフロンS、日本カニゼン(株))を施す一方、内側ダイ16の外周面16aに無電解ニッケルメッキを施したゴムロール製造機を用いてゴムロールを製造した。
【0037】
実施例3では、外側ダイ12の内周面12aに硬質クロムメッキを施す一方、内側ダイ16の外周面16aに無電解ニッケルメッキを施したゴムロール製造機を用いてゴムロールを製造した。
【0038】
比較例1では、外側ダイ12の内周面12aおよび内側ダイ16の外周面16aに硬質クロムメッキを施したゴムロール製造機を用いてゴムロールを製造した。
【0039】
比較例2では、外側ダイ12の内周面12aに硬質クロムメッキを施す一方、内側ダイ16の外周面16aにカニフロン皮膜処理(商品名:カニフロンS、日本カニゼン(株))を施したゴムロール製造機を用いてゴムロールを製造した。
【0040】
図4の表中のカッコ内で示す数値は、カニフロン皮膜処理、硬質クロムメッキおよび無電解ニッケルメッキの摩擦係数である。これら摩擦係数は、SS400(JIS規格)の板材に各種の表面処理を施した試験片を製作し、これら試験片について往復式摩擦試験機(測定機名:HEIDON−14D、新東科学(株))を用いて測定した測定値であり、ゴム材18に対する摩擦係数として推定される。
【0041】
図示の如く、実施例1〜3のゴムロール製造機では、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数が外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも大きくされている。従って、実施例1〜3のゴムロール製造機は本実施形態に含まれるゴムロール製造機である。一方、比較例1のゴムロール製造機では、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数と外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数とが同じとされる。また、比較例2のゴムロール製造機では、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数が外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも小さくされている。従って、比較例1、2のゴムロール製造機は本実施形態に含まれないゴムロール製造機である。
【0042】
なお、実施例1〜3および比較例1、2のゴムロール製造機でゴムロールを製造する際のその他の条件は同じである。
【0043】
具体的には、導電性軸体20としては、引き抜き加工にて直径8mm、長さ330mmの鋼材に厚み8μmの無電解ニッケルメッキを施したものを用いた。
【0044】
また、ゴム材18としては、エピクロロヒドリンゴム(商品名:ゼクロンG−3106、日本ゼオン(株))95質量部、液状NBR(JSR N280)5質量部、酸化亜鉛(商品名:酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株))5質量部、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸S、花王(株))1質量部、カーボンブラック(商品名:3030B、三菱化学(株))20質量部、炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSSB、 白石工業(株))40質量部、イオン導電剤(4級アンモニウム塩)(商品名:KS−555、花王(株))2質量部、ジベンゾチアジルサルファイド(商品名:ノクセラーDM、大内新興化学(株))1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名:ノクセラーTS、大内新興化学(株))1質量部および硫黄(商品名:サルファックス200S、鶴見化学(株))1質量部を密閉型混合機およびオープンロールを用いて混練したものを用いた。
【0045】
また、ゴム材18を1軸式の押出機を用いて一定流量でゴムロール製造機に導入すると共に、導電性軸体20を挿通孔16bから一定速度で送り出すことで、長さ330mmの導電性軸体20にわたって概ね直径12mmのゴム材18が皮膜されるようにゴムロール24を製造した。また、ゴムロール製造機の温度設定を80℃とし、外側ダイ12および内側ダイ16を該温度に加温した。
【0046】
また、ゴムロール24の軸方向における肉厚ムラの測定には、レーザ外径測定機(測定機名:ROLL2000、アサカ理研工業(株))を用いた。具体的には、このレーザ外径測定機を用い、先ずゴムロール24の両端部それぞれから15mmの位置の外径を測定し、次いでそれら2箇所における外径を結ぶ仮想直線を設定し、次いでゴムロールの300mmにわたる中央部において例えば1mm毎の各位置で外径を測定し、各位置における外径と仮想直線との距離(乖離長)の最大値を肉厚ムラとした。
【0047】
図4の表に示す如く、実施例1〜3の本実施形態に含まれるゴムロール製造機で製造されたゴムロール24の肉厚ムラは、比較例1、2の本実施形態に含まれないゴムロール製造機で製造されたゴムロール24の肉厚ムラに比べて小さい。これは、上述したように、環状流路14を形成する部分に関し、内側ダイ16の外周面16aおよび外側ダイ12の内周面12aにそれぞれ異なる表面処理を施し、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数を外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも大きくすることで、環状流路14を流れるゴム材18の速度差が是正され、排出口12cから排出されるゴムロール24においてゴム材18に生じる歪みが抑制されたためと考えられる。
【0048】
以上の如く、本実施形態に係るゴムロール製造機10にあっては、円筒状を呈する外側ダイ12と、外側ダイ12との間に環状を呈する環状流路14が形成されるように外側ダイ12の内側に配置され、環状流路14を形成する部分において外側ダイ12の内周面12aよりも摩擦係数が大きい外周面16aを有し、さらに導電性軸体20を挿通させるための挿通孔16bが中心部に形成される内側ダイ16と、環状流路14から流れてくるゴム材18を挿通孔16bから出てくる導電性軸体20に接触させ、ゴム材18および導電性軸体20を一体化して外部に排出するための排出部22と、を有するように構成した。
【0049】
また、本実施形態に係るゴムロール24の製造方法にあっては、このゴムロール製造機10を用い、環状流路14にゴム材18を流すと共に挿通孔16bに導電性軸体20を挿通し、環状流路14から流れてくるゴム材18を挿通孔16bから出てくる導電性軸体20に接触させ、ゴム材18および導電性軸体20を一体化して外部に排出することでゴムロール24を製造するように構成した。
【0050】
これにより、製造されるゴムロール24の肉厚ムラが抑制される。
【0051】
なお、上記のゴムロール製造機10にあっては、内側ダイ16の外周面16aおよび外側ダイ12の内周面12aにそれぞれ異なる表面処理を施すことで、内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数を外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも大きくしたが、例えばサンブラストにより両者の表面粗さを変えることで内側ダイ16の外周面16aのゴム材18に対する摩擦係数を外側ダイ12の内周面12aのゴム材18に対する摩擦係数よりも大きくしてもよい。また、内側ダイ16の外周面16aによりマクロ的な抵抗部材を設けるように構成してもよい。
【0052】
また、上記のゴムロール製造機10では、外側ダイ12および内側ダイ16をそれぞれ1部材から構成したが、外側ダイ12および内側ダイ16をそれぞれ複数部材から構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 ゴムロール製造機
12 外側ダイ(外側部材の一例)
12a 内周面
12b 導入口
12c 排出口
14 環状流路
16 内側ダイ(内側部材の一例)
16a 外周面
16b 挿通孔
16c 下端部
18 ゴム材
20 導電性軸体(軸部材の一例)
22 排出部
24 ゴムロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状を呈する外側部材と、
前記外側部材との間に環状を呈する環状流路が形成されるように前記外側部材の内側に配置され、前記環状流路を形成する部分において前記外側部材の内周面よりもゴム材に対する摩擦係数が大きい外周面を有し、さらに軸部材を挿通させる挿通孔が中心部に形成される内側部材と、
前記環状流路から流れてくるゴム材を前記挿通孔から出てくる軸部材に接触させ、前記ゴム材および前記軸部材を一体化して外部に排出するための排出部と、
を有するゴムロール製造機。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムロール製造機を用い、前記環状流路にゴム材を流すと共に前記挿通孔に軸部材を挿通し、前記環状流路から流れてくるゴム材を前記挿通孔から出てくる軸部材に接触させ、前記ゴム材および前記軸部材を一体化して外部に排出することでゴムロールを製造するゴムロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59897(P2013−59897A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199203(P2011−199203)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【特許番号】特許第4968403号(P4968403)
【特許公報発行日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】