説明

ゴム栓洗浄方法及びゴム栓洗浄装置

【課題】ゴム栓内部の狭くて奥まった凹部に付着残存する塵等のを十分に除去できるようにしたゴム栓洗浄方法を提供する。
【解決手段】ゴム栓Gを貯留槽1に投入して、その下部の洗浄用配管2に導入し、洗浄用配管2の基端部側に設けた加速用ノズル3より供給される高圧水流によって配管長手方向に移送しながら、洗浄用配管2の複数箇所に設置した、洗浄用配管径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射する複数の洗浄用ノズル4によって洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を発生させて、この乱流16によりゴム栓Gを洗浄し、この洗浄によりゴム栓Gから除去された異物を洗浄用配管2の先端部側に設けた異物排出ポート5より排出させると共に、貯留槽1に設けたオーバーフロー口6から水及び水より軽い異物をオーバーフローさせて排出し、洗浄されたゴム栓Gを水と共に貯留槽1に戻して回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬容器や輸血用容器のゴム製の蓋、あるいは注射器のゴム部分などのゴム製の栓(以下、単にゴム栓と言う)を洗浄するゴム栓洗浄方法及びゴム栓洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるゴム栓洗浄方法として、例えば下記特許文献1に記載されたものがあり、この方法は、貯水部の水を加圧し、ジェットポンプの噴射ノズルから噴射したジェット流によってゴム栓を流送管内を流送するときに、ゴム栓に付着している塵等の異物を勢いの強いジェット流で表面から剥がして除去する方法である。また、ゴム栓を洗浄する従来の洗浄装置として、下記特許文献2に記載された洗浄機があり、これは、ゴム栓を保持搬送装置で一個ずつ搬送路に沿って搬送しながら、そのゴム栓を、洗浄装置の複数のノズルから噴出する洗浄液によって洗浄するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−281060号公報
【特許文献2】特開2004−16990公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のゴム栓洗浄方法において、ジェットポンプは、貯水部の水を吸引して加圧した圧力水を噴射ノズルから空気形成層に噴射し、この噴射されたジェット流で空気層形成管内に形成された負圧により外気吸引口から外気を吸引し、吸引された外気で空気層形成管内のジェット流が混気ジェット流を形成するようにしたものであるから、ゴム栓の表面に付着している異物は効果的に除去される反面、ゴム栓内部の狭くて奥まった凹部にジェット流の空気部分が入り込んで、その凹部に付着残存している塵等の異物を閉じ込める状態となり、それがためにゴム栓内部の異物が十分に除去され得ないという、問題がある。また、上記特許文献2に記載の洗浄機によれば、ゴム栓を一個ずつ洗浄するようになっているため、多数のゴム栓を洗浄するには相当な時間を要し、作業能率上問題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、ゴム栓内部の狭くて奥まった凹部に付着残存する塵等の異物を十分に除去できると共に、多数のゴム栓を短時間で能率良く洗浄できるようにしたゴム栓洗浄方法及びゴム栓洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明のゴム栓洗浄方法は、洗浄すべき多数のゴム栓Gを貯留槽1に投入し、この投入したゴム栓Gを、貯留槽1の下部又は側胴部から延設された洗浄用配管2に導入し、当該配管2の基端部側に設けた加速用ノズル3より供給される高圧水流によって配管長手方向に移送しながら、当該配管2の複数箇所に設置した、当該配管2の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射する複数の洗浄用ノズル4によって洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を発生させ、この渦巻き状乱流16によりゴム栓Gを洗浄し、この洗浄によりゴム栓Gから除去された異物を洗浄用配管2の先端部側に設けた異物排出ポート5より排出させると共に、貯留槽1に設けたオーバーフロー口6から水及び水よりも軽い異物をオーバーフローさせて排出し、洗浄されたゴム栓Gを水と共に貯留槽1に戻して回収するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明のゴム栓洗浄装置は、洗浄すべき多数のゴム栓Gを投入する貯留槽1と、基端部が貯留槽1の下部又は側胴部に連通連結され、先端部が貯留槽1の上部又は側胴部に連通連結された洗浄用配管2と、洗浄用配管2の基端部側に設けられ、洗浄用配管2に高圧水流を供給する加速用ノズル3と、洗浄用配管2の複数箇所に設置されて、洗浄用配管2の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射する複数の洗浄用ノズル4と、洗浄用配管2の先端部側に設けられ、洗浄によりゴム栓から除去された異物を排出する異物排出ポート5と、貯留槽1内の水と水より比重の軽い異物とをオーバーフローさせて排出するオーバーフロー口6とを備え、貯留槽1に投入したゴム栓Gを洗浄用配管2に導入し、加速用ノズル3より供給される高圧水流によって洗浄用ノズル4長手方向に移送しながら、前記複数の洗浄用ノズル4により洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を発生させてゴム栓を洗浄し、この洗浄によりゴム栓Gから除去された異物を洗浄用配管2の先端部側に設けた異物排出ポート5より排出させると共に、貯留槽1に設けたオーバーフロー口6から水及び水よりも軽い異物をオーバーフローさせて排出し、洗浄されたゴム栓Gを水と共に貯留槽に戻して回収するようになっていることを特徴とする
【0008】
請求項3は、請求項2に記載のゴム栓洗浄装置において、各洗浄用ノズル4は、洗浄用配管2の横断面から見てノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の半径方向線Xに対し所要角度α傾斜し且つ洗浄用配管2の縦断面から見て、ノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の中心軸線Yに対し所要角度β傾斜するように洗浄用配管2に設置されると共に、配管2長手方向所要間隔おきに複数の洗浄用ノズル4が周方向一定間隔で周方向に同じ向きに設置されて、配管長手方向に隣り合う洗浄用ノズル4は洗浄用配管2の半径方向線Xに対する傾斜方向が互いに反対向きとなっていることを特徴としている。
【0009】
請求項4は、請求項2又は3に記載のゴム栓洗浄装置において、貯水槽7を設け、この貯水槽7から延出した主給水管にポンプ10を設け、このポンプ10で加圧した加圧水を第1及び第2給水管路11,12を介して夫々加速用ノズル3及び洗浄用ノズル4に給水するようにし、異物排出ポート5及びオーバーフロー口6には貯水槽7との間に夫々戻り管32,33を介設して、洗浄用配管2及び貯留槽1からの異物混入水を貯水槽7に戻すようにすると共に、貯水槽7には、各戻り管32,33により流入した異物混入水の異物を捕捉するフィルターを設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明のゴム栓洗浄方法によれば、洗浄用配管2内に気泡を導入せず、加速用ノズル3による高圧水流も洗浄用ノズル4による高圧水流も、気泡を含まない純然たる水流であって、このように気泡を含まない高圧水流による洗浄であるから、洗浄用配管2内を移送するゴム栓Gが内部の狭くて奥まった凹部を有していても、その凹部に付着残存している塵等の異物を、その気泡を含まない高圧水流により十分且つ有効に除去することができる。そして、洗浄用配管2内では、加速用ノズル3からの水流に、複数の洗浄用ノズル4から当該配管2の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射することにより、渦巻き状の乱流16が発生するから、この渦巻き状乱流16によって、内部及び表面を含むゴム栓Gの全体を有効且つ効果的に洗浄できると共に、多数のゴム栓Gを短時間で洗浄することができる。
【0011】
請求項2に係る発明のゴム栓洗浄装置によれば、貯留槽1に投入したゴム栓Gを洗浄用配管2に導入し、加速用ノズル3より供給される高圧水流によって洗浄用ノズル4長手方向に移送しながら、前記複数の洗浄用ノズル4により洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を発生させてゴム栓を洗浄するようになっているから、この渦巻き状乱流16によってゴム栓Gの全体が有効且つ効果的に洗浄されると共に、多数のゴム栓Gが短時間で洗浄される。特に、この洗浄装置にあっては、洗浄用配管2内には空気、即ち気泡を導入せず、加速用ノズル3による高圧水流も洗浄用ノズル4による高圧水流も、純然たる水流で、気泡を含まない高圧水流による洗浄であるから、洗浄用配管2内を移送するゴム栓Gが内部の狭くて奥まった凹部を有していても、その凹部に付着残存している塵等の異物を、その気泡を含まない高圧水流によって十分且つ有効に除去することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、各洗浄用ノズル4が、洗浄用配管2の横断面から見てノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の半径方向線Xに対し所要角度α傾斜し且つ洗浄用配管2の縦断面から見て、ノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の中心軸線Yに対し所要角度β傾斜するように洗浄用配管2に設置されると共に、配管2長手方向所要間隔おきに複数の洗浄用ノズル4が周方向一定間隔で周方向に同じ向きに設置されており、そして特に配管長手方向に隣り合う洗浄用ノズル4は傾斜方向が互いに反対向きとなっていることによって、洗浄用配管2内には、渦巻き状の乱流というよりも、その渦流が複雑化したサイクロン状の乱流16を発生させることができ、内部及び表面を含むゴム栓Gの全体を一層効果的に洗浄することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、貯水槽7を設け、貯水槽7から延びた主給水管にポンプ10を設け、ポンプ10で加圧した加圧水を第1及び第2給水管路11,12を介して夫々加速用ノズル3及び洗浄用ノズル4に給水するようにし、異物排出ポート5及びオーバーフロー口6には貯水槽7との間に夫々戻り管32,33を介設して、洗浄用配管2及び貯留槽1からの異物混入水を貯水槽7に戻すようにすると共に、貯水槽7には、各戻り管32,33により流入した異物混入水の異物を捕捉するフィルターを設けることにより、貯留槽1の水を貯水槽7へ戻して再利用することができ、水の補給を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るゴム栓洗浄装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】(a) は図1に示すゴム栓洗浄装置の貯留槽の上部側縦断面図、(b) は貯留槽内に配される多孔板の平面図であり、(c) は(a) のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る他の実施形態のゴム栓洗浄装置を示す平面図である。
【図4】本発明に係る更に他の実施形態のゴム栓洗浄装置を示す正面図である。
【図5】図4に示すゴム栓洗浄装置の平面図である。
【図6】(a) は図1〜図5に示すゴム栓洗浄装置の洗浄用配管の一部拡大縦断面図であり、(b) は(a) のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1に示す本発明に係るゴム栓洗浄装置は、洗浄すべき多数のゴム栓Gを投入する貯留槽1と、基端部が貯留槽1の下部に連通連結され、先端部が貯留槽1の上部に連通連結された洗浄用配管2と、洗浄用配管2の基端部側に設けられ、洗浄用配管2内に高圧水流を供給してゴム栓Gを加速流送する加速用ノズル3と、洗浄用配管2の複数箇所に設置されて、洗浄用配管2の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水15を噴射する複数の洗浄用ノズル4と、洗浄用配管2の先端部側に設けられ、洗浄によってゴム栓Gから除去された異物を排出する異物排出ポート5と、貯留槽1内の水と水より比重の軽い異物とをオーバーフローさせて排出するオーバーフロー口6と、水を溜める貯水槽7とを備えている。貯水槽7には、図示しない洗浄水供給源から洗浄用の水が適宜に供給されるようになっている。
【0016】
貯留槽1は、図1に示すように、上端が開口した槽本体部21と、槽本体部21の上端に開閉装置22により開閉可能に載置された上蓋23とからなり、また槽本体部21は、円筒状の側胴部21aと下部側の円錐漏斗部21bとからなるもので、槽本体部21の円錐漏斗部21b下部に下側塞き止め部となるダンパー8が設けられ、このダンパー8は、閉じた状態の時に、洗浄用配管2への水の導入は許すが、ゴム栓Gの導入を阻止し、また開いた状態の時に、洗浄用配管2への水及びゴム栓Gの導入を許するようになっている。そして、このダンパー8の下方に位置する槽本体部21の下端には排出口9が設けられ、この排出口9を介して槽本体部21の下部が洗浄用配管2の基端部と連通連結している。上蓋23の周縁には、上蓋23を閉じたときに上蓋23を槽本体部21に密閉するためのグランドボルト24が周方向所定間隔おきに設けてある。
【0017】
また、貯留槽1において、槽本体部21の上端には上側塞き止め部となる多孔板20が配置されている。この多孔板20は、図2の(a) に示すように、上蓋23の裏面に周方向一定間隔おきに設けた固定用リブ25によって上蓋23に固定されている。また多孔板20には、図2の(b) に示すように、その周縁部領域に多数の長孔26が形成されていて、貯留槽1に導入された水をオーバーフローさせる際に、水と水より比重の軽い異物とを通過させ且つゴム栓Gを塞き止めるようになっている。尚、図2の(b) において、20aは後述する回収口19を挿通させるための孔である。また図2の(a) に示すように、水と異物をオーバーフローさせる際の異物の排出効果を高めるために、多孔板20の下面周縁部と槽本体部21の上端と間に、ゴム栓Gが通過しない程度の隙間27が設けられる。
【0018】
洗浄用配管2は、図1に示すように、その基端部が貯留槽1の下部の排出口9に連通連結され、先端部が貯留槽1の槽本体部21上部に連通連結され、そしてこの洗浄用配管2の長手方向中央部側から先端部側にわたる複数箇所に洗浄用ノズル4が配設されている。各洗浄用ノズル4は、図6の(b) に示すように洗浄用配管2の横断面から見てノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の半径方向線Xに対し所要角度α傾斜し且つ図6の(a) に示すように洗浄用配管2の縦断面から見て、ノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の中心軸線Yに対し所要角度β傾斜するように洗浄用配管2に設置されていると共に、配管長手方向所要間隔おきに複数の(この実施形態では4つの)洗浄用ノズル4が配管周方向一定間隔(この実施形態では配管周方向に90°の間隔)で周方向に同じ向きに設置され、そして図示は省略するが、配管長手方向に隣り合う洗浄用ノズル4は洗浄用配管2の半径方向線Xに対する傾斜方向が互いに反対向きとなるように設置されている。
【0019】
上記のように配管長手方向に隣り合う洗浄用ノズル4の洗浄用配管2の半径方向線Xに対する傾斜方向が互いに反対向きとなっていることを、図6の(a) ,(b) を参照して補足説明すると、この図6の(a) には、下部側と上部側とに洗浄用ノズル4が夫々4つずつ配管周方向に90°の間隔で設置されていて、上部側4つの洗浄用ノズル4の配置状態の平面図が図6の(b) である。従って、上部側の各洗浄用ノズル4は、図6の(b) に示すようにノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の半径方向線Xに対し時計回りにα度傾転した状態にあるものとすれば、図6(a) の下部側にある各洗浄用ノズル4は、上部側の各洗浄用ノズル4とはその傾斜方向が反対向きとなっている。つまり、下部側の各洗浄用ノズル4は、ノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の半径方向線Xに対し反時計回りにα度傾転した状態となっている。尚、各洗浄用ノズル4には、後述する第2給水管12から分岐した分岐管13が接続されている。図6の(a) ,(b) において、28は洗浄用配管2を貫通した洗浄用ノズル4に洗浄水を供給する前記分岐管13を洗浄用配管2に固定する固定部材で、洗浄用ノズル4の配管貫通部分をシールする機能も有する。
【0020】
また図1に示すように、貯水槽7は、貯留槽1と同様に、槽本体部29とこれに開閉可能に載置された上蓋30とからなるもので、図示しない給水源より適宜に清浄な水が供給されるようになっている。この貯水槽7の槽本体部29下部から主給水管10が延出され、この主給水管10にはポンプ14が設けてあって、このポンプ14によって加圧した加圧水が第1給水管11とこれから分岐した第2給水管12とに供給され、第1給水管11からの水は、洗浄用配管2の基端部に設けられた加速用ノズル3で高圧水流にされて浄用配管2に供給される。第1給水管11から分岐した第2給水管12は、洗浄用配管2に沿うように配管されていて、この第2給水管12から分岐した複数の分岐管13に給水されるようになっている。
【0021】
加速用ノズル3は、上記のように貯留槽1の排出口9近傍に位置する洗浄用配管2内の基端部に突入するように設置されたもので、ノズル先端の内径が15mm以下で、0.1〜0.5MPa程度の圧力の水がポンプ14により加圧供給されることで高圧水流を形成し、貯留槽1の排出口9から水と共に排出されて洗浄用配管2に導入されるゴム栓Gを、洗浄用配管2内で詰まらせないように連続的にスムーズに洗浄用配管2内を流動させるようになっている。
【0022】
洗浄用配管2でのゴム栓Gの洗浄は、洗浄用配管2の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射する複数の洗浄用ノズル4により洗浄用配管2内に発生される渦巻き状の水流によって行なわれる。具体的に説明すれば、各洗浄用ノズル4は、図6の(b) に示すように洗浄用配管2の横断面から見てノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の半径方向線Xに対し所要角度α、例えば45°傾斜し且つ図6の(a) に示すように洗浄用配管2の縦断面から見て、ノズル中心軸線Oが洗浄用配管2の中心軸線Yに対し所要角度β、例えば45°傾斜するように洗浄用配管2に設置されていると共に、配管長手方向所要間隔おきに複数の洗浄用ノズル4が配管周方向一定間隔で周方向に同じ向きに設置され、そして特に配管長手方向の前後に隣り合う洗浄用ノズル4の、洗浄用配管2の半径方向線Xに対する傾斜方向が互いに反対向きとなるように設置されていることによって、これら複数の洗浄用ノズル4から夫々の高圧水流15によって、洗浄用配管2内には、渦巻き状の乱流というよりも、その渦流が複雑化したサイクロン状の乱流16を発生させることができ、内部及び表面を含むゴム栓Gの全体を一層効果的に洗浄することができる。
【0023】
各洗浄用ノズル4は、ノズル先端の内径が2〜5mm程度で、ポンプ14から0.1〜0.5MPa程度の圧力の水を供給することにより、洗浄用配管2内の流水に高圧噴射水を噴射するようになっている。図6の(b) に示される各洗浄用ノズル4の設置角度α(洗浄用配管2の半径方向線Xに対するノズル中心軸線Oの傾斜角度)は、30°〜60°が好ましい。そして各洗浄用ノズル4の設置角度β(洗浄用配管2の中心軸線Yに対するノズル中心軸線Oの傾斜角度)も、30°〜60°が好ましい。設置角度αが30°以下となり、設置角度βが60°以上になると、ゴム栓Gの流れを大きく妨げ、また設置角度αが60°以上となり、設置角度βが30°以下になると、洗浄用配管2内の水流が渦巻き状になり難くなる。
【0024】
この発明に係るゴム栓洗浄方法の特徴は、上記のように洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を発生させることであるが、これと共に重要な点は、洗浄用配管2内に気泡を導入せず、加速用ノズル3による高圧水流も洗浄用ノズル4による高圧水流も、気泡を含まない純然たる水流であることである。このように気泡を含まない高圧水流による洗浄であるから、図6の(a) に示すように洗浄用配管2内を移送するゴム栓Gが内部の狭くて奥まった凹部を有していても、その凹部に付着残存している塵等の異物が、その気泡を含まない高圧水流によって十分且つ有効に除去される。そして、洗浄用配管2内では、加速用ノズル3からの水流に、前記のような配置関係で設置された複数の洗浄用ノズル4からの高圧水流15が噴射されることで、渦巻き状の乱流16が発生するから、この渦巻き状あるいはサイクロン状の乱流16によって、内部及び表面を含むゴム栓Gの全体が有効且つ効果的に洗浄されると共に、多数のゴム栓Gが短時間で能率良く洗浄される。
【0025】
上記洗浄用配管2の先端部側には、図1に示すように、流路切換バルブ17、異物排出用仕切板18及び異物排出ポート5が設けられ、この洗浄用配管2の先端部は、回収口19を介して貯留槽1の槽本体部21内に連通連結されている。流路切換バルブ17は、洗浄用配管2の流路を、貯留槽1の槽本体部21に通じる管路2aと、洗浄済みゴム栓送給路31とに切り換えるもので、洗浄中は管路2a側の流路に切り換えられている。異物排出用仕切板18は、流路を横断するように設けられた多孔状又はメッシュ状の円板からなるもので、洗浄用配管2内での洗浄によりゴム栓Gから除去された異物を水と共に異物排出ポート5側へ通過させ、ゴム栓Gを水と共に管路2aから貯留槽1側へ送るようになっている。
【0026】
上記異物排出ポート5と貯水槽7の上蓋30との間には、ゴム栓Gを流すための水の一部を異物と共に貯水槽7へ戻す戻し管32が介設されていて、この戻し管32により貯水槽7へ戻された異物を含む水は、貯水槽7の例えば上蓋30内に設けられた異物捕捉フィルター(図示省略)によって、数十μm以上の異物が捕捉され、その水は再利用される。また、貯留槽1のオーバーフロー口6と貯水槽7の上蓋30との間には、貯留槽1のオーバーフロー口6から溢出した水を異物と一緒に貯水槽7へ戻す戻し管33が介設されている。この戻し管33によって貯水槽7へ戻された異物を含む水も、上記捕捉フィルターによって、異物のみが捕捉され、水は再利用されることになる。即ち、貯水槽7へ戻されて異物を除去された水は、主給水管10に導入されて、ポンプ14により第1給水管11及び第2給水管12に供給される。
【0027】
また、洗浄用配管2の先端側管路2aに接続された貯留槽1側の回収口19は、図2の(a) に示すように、上蓋23及び多孔板20を貫通して槽本体部21内に接続されており、この回収口19から、洗浄用配管2内での洗浄を終えたゴム栓Gが、ゴム栓Gを洗浄した水及び異物排出ポート5より排出し得なかった異物と共に槽本体部21に回収される。このように、ゴム栓Gから除去された異物の一部は、ゴム栓Gと共に槽本体部21に戻るが、水が戻れば、槽本体部21内の水嵩が増え、この増えた水と異物は、オーバーフロー口6から戻り管33によって貯水槽7の槽本体部21に戻される。
【0028】
上記のように洗浄用配管2内での洗浄を終えて水と共に貯留槽1に回収されたゴム栓Gは、槽本体部21内の下部で閉じた状態にあるダンパー8によって塞き止められ、水はダンパー8を通過して排出口9から洗浄用配管2に排出される。従って、ゴム栓Gを貯留槽1に回収したタイミングで、洗浄用配管2の先端部側に設置してある流路切換バルブ17を、貯留槽1側流路から洗浄済みゴム栓送給路31側へ切り換えることによって、洗浄済みゴム栓Gを次工程へ自動的に迅速に送給することができる。尚、ダンパー8は、閉状態から開状態とすることにより、ゴム栓Gの通過も許して、ゴム栓Gを排出口9から洗浄用配管2に排出する。
【0029】
上述した図1に示すようなゴム栓洗浄装置の使用にあたっては、貯留槽1の上蓋23を開けて複数のゴム栓Gを槽本体部21内に投入した後に、洗浄水供給源から貯留槽1と貯水槽7とに水を夫々満水となるまで供給する。それから、ポンプ14を起動し、貯水槽7の水を主給水管10から第1給水管11と第2給水管12とに供給して、加速用ノズル3により高圧水流を洗浄用配管2の基端部側に供給すると共に、図6に示すように配置した洗浄用ノズル4により洗浄用配管2の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧水流15を噴射して、洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を発生させる。
【0030】
上記のように加速用ノズル3で洗浄用配管2内に高圧水流15を供給しながら、貯留槽1下部のダンパー8を開くと、その下部の排出口9からゴム栓Gが水と共に洗浄用配管2内にその基端部側より導入され、洗浄用配管2内において加速用ノズル3からの水流に複数の洗浄用ノズル4による高圧水流15が噴射されることにより渦巻き状の乱流16が発生するから、この渦巻き状乱流16によって、ゴム栓Gの全体が有効に且つ効果的に洗浄される共に、多数のゴム栓Gが短時間で能率良く洗浄される。特にこの洗浄にあっては、洗浄用配管2内には空気、即ち気泡を導入せず、加速用ノズル3による高圧水流も洗浄用ノズル4による高圧水流も、純然たる水流であって、気泡を含まない高圧水流による洗浄であるから、洗浄用配管2内を移送するゴム栓Gが内部の狭くて奥まった凹部を有していても、その凹部に付着残存している塵等の異物を、その気泡を含まない高圧水流によって十分且つ有効に除去することができる。
【0031】
洗浄用配管2内に供給された加速用ノズル3及び各洗浄用ノズル4からの水は、異物排出ポート5やオーバーフロー口6から異物と共に排出されて、戻り管32,33を介して貯水槽7に戻され、貯水槽7内の異物捕捉フィルターで捕捉され、再利用される。
【0032】
一定時間連続的に洗浄を行なった後、貯留槽1内のダンパー8を閉じて、洗浄用配管2内のゴム栓Gを貯留槽1内へ回収する。そして、洗浄用配管2の先端部側に設置してある流路切換バルブ17を切り換えることによって、ゴム栓Gを次の工程へ搬送する準備を行なうようにする。
【0033】
図1に示す実施形態のゴム栓洗浄装置では、貯留槽1に投入したゴム栓Gを貯留槽1の下部に設けた排出口9より洗浄用配管2の基端部に導入し、この洗浄用配管2内で洗浄したゴム栓Gを当該ゴム栓Gを流す水と一緒に、貯留槽1の上部側に設けた回収口19より貯留槽1内に回収するような構成となっているが、図3には、洗浄すべきゴム栓Gの排出口9を貯留槽1の側胴部21a側に設け、洗浄したゴム栓Gの回収口19も貯留槽1の側胴部21a側に設けたゴム栓洗浄装置の実施形態を示している。
【0034】
即ち、図3はゴム栓洗浄装置全体の平面図で、この図から分かり難いが、貯留槽1は、円筒状の側胴部21aと底板部(図示省略)とで形成される槽本体部21と、この槽本体部21の上端に開閉可能に装着された上蓋23とからなり、また槽本体部21は、円筒状の側胴部21aと下部側の円錐漏斗部21bとからなるもので、この貯留槽1に投入したゴム栓Gの排出口9は、貯留槽1の側胴部21aに連通連結した排出管34の先端部に設け、また洗浄したゴム栓Gの回収口19は、貯留槽1の側胴部21aの、前記排出管34から半周程度離れた位置に設けている。このゴム栓洗浄装置では、貯留槽1内のゴム栓Gを側胴部21aに設けた排出口9から洗浄用配管2に導入して洗浄し、この洗浄したゴム栓Gを、側胴部21aの他の箇所に設けた回収口19より回収する方法であるから、ダンパー8は無くてもよい。その他の構成については、図1に示すゴム栓洗浄装置と同じである。
【0035】
この図3のゴム栓洗浄装置の使用においては、複数のゴム栓Gを槽本体部21内に投入した後、洗浄水供給源から貯留槽1と貯水槽7とに水を夫々満水となるまで水を供給し、ポンプ14を起動して、貯水槽7の水を主給水管10から第1給水管11と第2給水管12とに供給し、加速用ノズル3により高圧水流を洗浄用配管2の基端部側に供給すると共に、洗浄用ノズル4によりゴム栓G移送方向に対し斜め方向に高圧流水15を噴射して、洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を形成し、この渦巻き状乱流16によってゴム栓Gを洗浄する。洗浄用配管2内に供給された加速用ノズル3及び各洗浄用ノズル4からの水は、異物排出ポート5やオーバーフロー口6から異物と共に排出されて、戻り管32,33を介して貯水槽7に戻され、貯水槽7内の異物捕捉フィルターで捕捉され、再利用される。一定時間連続的に洗浄を行なった後、洗浄用配管2内のゴム栓Gを貯留槽1内へ回収する。
【0036】
図3に示すゴム栓洗浄装置のように、貯留槽1内のゴム栓Gをその側胴部21aの排出口9から排出して洗浄用配管2に導入し、洗浄用配管2内での洗浄後、側胴部21aの回収口19より貯留槽1内に回収する方式では、排出口9と洗浄用配管2と回収口19とを1セットとして、貯留槽1の周方向に間隔をおいて複数セット設けてもよいし、あるいはそのセットを上下複数段に設けることもでき、それによって一度に洗浄するゴム栓Gの量を増大することができ、洗浄能力を高めることができる。
【0037】
図4及び図5は、貯留槽1内に投入したゴム栓Gを、貯留槽1の槽本体部21の側胴部21aに設けた排出管34を介して洗浄用配管2に導入し、洗浄用配管2内での洗浄後に、貯留槽1の上部より回収口19を通じて貯留槽1の槽本体部21内に回収し、この回収した洗浄済みゴム栓Gを貯留槽1の下部から延設した洗浄済みゴム栓送給路35に排出するようにしたゴム栓洗浄装置を示すもので、図4はこの洗浄装置の正面図、図5は平面図である。この図4及び図5に示すゴム栓洗浄装置では、図1に示すゴム栓洗浄装置と同じ機能を有する部材については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
この図4及び図5に示すゴム栓洗浄装置の使用においては、複数のゴム栓Gを槽本体部21内に投入した後、洗浄水供給源から貯留槽1と貯水槽7とに水を夫々満水となるまで水を供給し、ポンプ14を起動して、貯水槽7の水を主給水管10から第1給水管11と第2給水管12とに供給し、加速用ノズル3により高圧水流を洗浄用配管2の基端部側に供給すると共に、洗浄用ノズル4によりゴム栓G移送方向に対し斜め方向に高圧流水15を噴射して、洗浄用配管2内に渦巻き状の乱流16を形成し、この渦巻き状乱流16によってゴム栓Gを洗浄する。洗浄用配管2内に供給された加速用ノズル3及び各洗浄用ノズル4からの水は、異物排出ポート5やオーバーフロー口6から異物と共に排出されて、戻り管32,33を介して貯水槽7に戻され、貯水槽7内の異物捕捉フィルターで捕捉され、再利用される。そして、ゴム栓Gを、槽本体部21の側胴部21aから洗浄用配管2に通してそこで洗浄を行なわせた後、再び槽本体部21内に回収する、という一連の工程を一定時間繰り返した後、槽本体部21下部にあるダンパー8を開放して、洗浄済みゴム栓Gを洗浄済みゴム栓送給路35から排出するようになっている。尚、洗浄済みゴム栓送給路35には開閉弁36が設けてあって、洗浄中は開閉弁36を閉じ、洗浄終了後にダンパー8を開放してゴム栓Gを洗浄済みゴム栓送給路35から排出する時に開閉弁36を開くようになっている。このようなゴム栓洗浄装置では、ゴム栓Gの洗浄後は、その洗浄したゴム栓Gを洗浄済みゴム栓送給路35により迅速容易に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0039】
G ゴム栓
1 貯留槽
2 洗浄用配管
3 加速用ノズル
4 洗浄用ノズル
5 異物排出ポート
6 オーバーフロー口
7 貯水槽
8 ダンパー
9 排出口
16 渦巻き状乱流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄すべき多数のゴム栓を貯留槽に投入し、このゴム栓を、貯留槽の下部又は側胴部から延設された洗浄用配管に導入して、当該配管の基端部側に設けた加速用ノズルより噴射される高圧水流によって配管長手方向に移送しながら、当該配管の複数箇所に設置した、当該配管の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射する複数の洗浄用ノズルによって洗浄用配管内に渦巻き状の乱流を発生させ、この渦巻き状乱流によりゴム栓を洗浄し、この洗浄によりゴム栓から除去された異物を洗浄用配管の先端部側に設けた異物排出ポートより排出させると共に、貯留槽に設けたオーバーフロー口から水及び水よりも軽い異物をオーバーフローさせて排出し、洗浄されたゴム栓を水と共に貯留槽に戻して回収するようにしたゴム栓洗浄方法。
【請求項2】
洗浄すべき多数のゴム栓を投入する貯留槽と、基端部が貯留槽の下部又は側胴部に連通連結され、先端部が貯留槽の上部又は側胴部に連通連結された洗浄用配管と、洗浄用配管の基端部側に設けられ、洗浄用配管に高圧水流を供給する加速用ノズルと、洗浄用配管の複数箇所に設置されて、洗浄用配管の径方向及び軸線方向に対し斜め方向に高圧噴射水を噴射する複数の洗浄用ノズルと、洗浄用配管の先端部側に設けられ、洗浄によりゴム栓から除去された異物を排出する異物排出ポートと、貯留槽内の水と水より比重の軽い異物とをオーバーフローさせて排出するオーバーフロー口とを備え、貯留槽に投入したゴム栓を洗浄用配管に導入し、加速用ノズルより供給される高圧水流によって洗浄用配管長手方向に移送しながら、前記複数の洗浄用ノズルにより洗浄用配管内に渦巻き状の乱流を発生させてゴム栓を洗浄し、この洗浄によりゴム栓から除去された異物を洗浄用配管の先端部側に設けた異物排出ポートより排出させると共に、貯留槽に設けたオーバーフロー口から水及び水よりも軽い異物をオーバーフローさせて排出し、洗浄されたゴム栓を水と共に貯留槽に戻して回収するようになっているゴム栓洗浄装置。
【請求項3】
各洗浄用ノズルは、洗浄用配管の横断面から見てノズル中心軸線が洗浄用配管の半径方向線に対し所要角度傾斜し且つ洗浄用配管の縦断面から見てノズル中心軸線が洗浄用配管の中心軸線に対し所要角度傾斜するように洗浄用配管に設置されると共に、配管長手方向所要間隔おきに複数の洗浄用ノズルが周方向一定間隔で周方向に同じ向きに設置されて、配管長手方向に隣り合う洗浄用ノズルは洗浄用配管の半径方向線に対する傾斜方向が互いに反対向きとなっている請求項2に記載のゴム栓洗浄装置。
【請求項4】
貯水槽を設け、この貯水槽から延出した主給水管にポンプを設け、このポンプで加圧した加圧水を第1及び第2給水管路を介して夫々加速用ノズル及び洗浄用ノズルに給水するようにし、異物排出ポート及びオーバーフロー口には貯水槽との間に夫々戻り管を介設して、洗浄用配管及び貯留槽からの異物混入水を貯水槽に戻すようにすると共に、貯水槽には、各戻り管により流入した異物混入水の異物を捕捉するフィルターを設けてなる請求項2又は3に記載のゴム栓洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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