説明

ゴム発泡成形体の製造方法及びこの方法により製造されるゴム発泡成形体

【課題】 内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体を短時間で製造することができるゴムの発泡成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 1mm角以下の大きさに成形された未加硫のゴム組成物片4を成形用金型2のキャビティ21に充填し、ゴム組成物片4の加硫温度領域まで加熱し、超臨界流体をキャビティ21内に導入し、5分以上90%加硫点の加硫時間内、未加硫のゴム組成物片を超臨界状態にある流体に晒して含浸させ、その後、超臨界状態にある流体を気化させてゴム組成物片の内部を発泡させ、しかる後に架橋させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム発泡成形体の製造方法及びこの方法により製造されるゴム発泡成形体に関し、さらに詳しくは、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を原料のゴム組成物の内部に含浸させ、その後減圧して含浸させた流体を気化させ、原料のゴム組成物の内部に微細な気泡を形成する工程を備えるゴム発泡成形体の製造方法及びこの方法により製造されるゴム発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムの発泡成形体を製造する方法としては、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を原料のゴム組成物の内部に含浸させ、その後、含浸させた超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を気化させて、ゴム組成物の内部に多数の微細な気泡を形成する方法が知られている。
【0003】
そして、上記方法を応用し、超微細構造の気孔や気泡が均一に分散したゴムの発泡成形体を製造する構成が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の構成は、未加硫ゴムの混練工程や加硫工程中に、当該未加硫ゴムに超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を含浸させ、その後減圧するものである。この構成は、原料の未加硫ゴムの内部に含浸させた流体が減圧によって気化する際に、未加硫ゴムの表面や内部に気孔や気泡が形成されるという原理を応用したものである。
【0004】
この特許文献1に記載される構成によれば、製造されるゴムの発泡成形体の表層部は、均一かつ微細に発泡しているものと考えられるが、深層部は発泡していないか、発泡したとしても均一な発泡状態にはならないと考えられる。特に特許文献1中に、「少なくともタイヤ表層ゴムを発泡させたタイヤが提供される」と記載されていることからも、深層部まで発泡させたゴムの発泡成形体を製造するのに適した構成ではないものと考えられる。
【0005】
内部全体に亘って発泡したゴムの発泡成形体を製造するためには、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を、ゴム組成物の内部全体に含浸させる必要がある。そしてこのためには、低温で長時間かけて流体を含浸させることが好ましい。しかしながら、流体を含浸させる工程においてゴム組成物が低温であると、その後の架橋工程でゴムの組成物を加熱する工程において、表層部は短時間で温度上昇するが、深層部は表層部に比較して温度上昇に長時間を要する。このため、表層部は短時間で架橋が進行し、表層部に発生した気泡は均一かつ微細に発泡した状態で固定される。一方、深層部は、減圧によって均一かつ微細に発泡したとしても、架橋が完了するまでの間に気泡同士が結合するなどして巨大化しやすくなる。この結果、表層部と深層部とで気泡の泡径が不均一となり、製造されるゴムの物理的な特性などが悪化するという問題が生じ得る。
【0006】
一方、ゴム組成物内部の温度分布が不均一となることを抑制するために、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体の含浸工程において、ゴム組成物を高温に維持すると、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を気化させる前に架橋が進行しうる。このため、ゴム組成物の発泡状態が悪化するおそれがある。
【0007】
前記構成を応用したこの他の構成として、気泡の微細化によって製造されるゴムの発泡成形体の比強度を向上させ、これにより強度を低下させることなく軽量化を図る構成が提案されている(特許文献2参照)。この構成は、前記構成の減圧の工程において、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体が、エンタルピー−圧力線図中の気液混合相若しくは亜臨界状態を除く液体領域を通過しない条件を適用するものである。この構成によれば、ゴムの発泡成形体の内部に形成される気泡の泡径が数μm程度となり、微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造することができる。
【0008】
しかしながらこの特許文献2に記載される構成では、原料のゴム組成物の内部に超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体の含浸工程に長時間を要する。具体的に特許文献2に記載される実施例では、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体の含浸工程に2時間を要している。このように、特許文献2に記載される構成は、ゴムの発泡成形体の製造に長時間を要し、生産性が低いと考えられる。
【0009】
上記の通り、従来の超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を用いたゴムの発泡成形体を製造する方法では、短時間で内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造することが困難であった。
【0010】
【特許文献1】特開平11−293022号公報
【特許文献2】特開2002−322308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴム発泡成形体の製造方法及びこの方法により製造されるゴム発泡成形体を提供すること、又は短時間で内部全体に亘って発泡したゴム発泡成形体の製造方法及びこの方法により製造されるゴム発泡成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、細粒化された未加硫ゴム組成物を金型内に充填する工程と、該金型内に充填した未加硫ゴム組成物を架橋温度領域に加熱する工程と、該金型内に超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を加圧注入し、前記未加硫ゴム組成物に含浸させる工程と、該金型内を減圧して前記未加硫ゴムを発泡させる工程と、前記未加硫ゴムを架橋させる工程とを含むことを要旨とするものである。
【0013】
ここで請求項2に記載のように、前記未加硫ゴム組成物の粒径は1mm以下であって、該未加硫ゴム組成物に超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を含浸させる時間を、該未加硫ゴム組成物の架橋の進行が90%を超えない時間とすることが好ましい。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載されたゴム発泡成形体の製造方法により、内部が均一な発泡セルサイズに形成されてなることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、細粒化された未加硫ゴム組成物を用いるから、キャビティに充填したゴム組成物の総体積に対する総表面積の割合が大きくなる。また、超臨界状態にある流体は未加硫ゴム組成物の間にも流入して表面に接触する。このため、未加硫ゴム組成物と超臨界状態にある流体との接触面積が大きくなり、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体が未加硫ゴム組成物の内部に含浸されやすくなる。また、未加硫ゴム組成物が細粒化されているから、超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体の浸透深さも小さくてよい。従って、超臨界状態にある流体の含浸時間を短縮でき、短時間で内部全体に亘って発泡したゴム発泡成形体を製造することができる。
【0016】
また、成形用金型に充填された未加硫ゴム組成物は、あらかじめ架橋温度領域にまで加熱され、その後、その温度に維持される。このため、発泡後の架橋工程において、未加硫ゴム組成物の表層部と深層部とで温度差がなく、架橋が均一に進行する。従って、架橋の進行の不均一に起因する気泡の泡径の不均一などが発生せず、内部全体に亘って均一に発泡したゴムの発泡成形体を製造することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、未加硫ゴム組成物の粒径を1mm程度に成形して用いれば、短時間で超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体の含浸を完了することができ、ゴムの発泡成形体の製造時間を大幅に短縮する事ができる。そして、ゴム組成物の架橋が完結していない状態で発泡させることができるから、良好な発泡状態が得られる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、内部まで均一に発泡しているから、物理的な特性に優れる。例えば、強度を維持しつつ軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係るゴムの発泡成形体の製造方法のことを「本方法」と略して記すことがある。また、「超臨界状態にある流体」を「超臨界流体」と記すことがある。また、以下の実施形態において「超臨界流体」という場合には、亜臨界状態にある流体も含むものとする。
【0020】
図1は、本方法の実施に用いられる設備の構成の例を示した模式図である。以下、本方法の実施に用いられる設備を「本設備」と略して記すことがある。本設備1は、原料のゴム組成物を所定の形状に成形する成形用金型2と、この成形用金型2を収納可能な高圧容器3とを備える。
【0021】
この成形用金型2は、内部に形成されるキャビティ21と外部空間とを連通する流体給排経路22を備える。この成形用金型2は、閉じた状態においても流体給排経路22を通じて流体がキャビティ21に出入り可能に構成される。
【0022】
高圧容器3は、内部空間を高圧(例えば、最大で30MPa程度)に維持可能な容器である。そして流体を外部から内部空間へ給排可能な流体給排経路31が設けられる。この流体給排経路31は、流体供給機構(図示せず)に接続されており、この流体給排経路31を通じて、高圧容器3の内部空間に流体を給排可能である。そして内部空間に導入した流体によって、高圧容器3の内部圧力を所定の値に維持できるように構成される。この流体供給機構は、例えば流体を貯留するボンベと、流体を所定の圧力で送給できるポンプを備える構成などが適用される。
【0023】
本方法が適用されるゴム組成物としては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM、EPM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム及びアクリルゴムなどが挙げられる。
【0024】
そして、所定の寸法形状に成形されたゴム組成物を用いる。具体的には、1mm角以下の寸法形状に形成されることが好ましいが、3mm角以下の大きさであっても良い。以下、所定の寸法形状に成形されたゴム組成物を「ゴム組成物片」と記す。
【0025】
また、本方法に適用される流体の種類は特に限定されるものではないが、超臨界状態にしやすい二酸化炭素や窒素が好適に適用できる。
【0026】
以下に、本設備1を用いた本発明の実施手順を説明する。
【0027】
まず、成形用金型2及び高圧容器3を所定の温度に予熱する。この予熱の温度は、適用するゴム組成物の種類や配合によって異なるが、適用するゴム組成物の架橋温度かその近傍の温度であることが好ましい。例えば、EPDMであれば150℃かその近傍、NRであれば140℃かその近傍、NBRであれば150℃かその近傍とすることが好ましい。
【0028】
次いで原料のゴム組成物片4を成形用金型2のキャビティ21に充填する。キャビティ21に充填するゴム組成物片4の量は、製造する発泡成形体の発泡倍率(ここでは、発泡によるゴム組成物片4の見かけ上の体積増加率をいうものとする。以下同じ。)に応じて決定すればよい。例えば発泡倍率が200%の発泡成形体を製造するには、キャビティ21の容積の2分の1の容積となる量のゴム組成物片を充填すればよく、発泡倍率が400%の発泡倍率の発泡成形体を製造するには、キャビティ21の容積の4分の1の容積となる量のゴム組成物片を充填すればよい。キャビティ21に充填されたゴム組成物片4は、予熱された成形用金型2により、前記所定の温度に加熱され、以降この温度に維持される。
【0029】
なお、ゴム組成物片4同士が融着して一体化し、キャビティ21への充填が困難となる場合などには、ゴム組成物片4の表面にタルクを塗布するなどし、ゴム組成物片4同士の融着を防止すればよい。
【0030】
そして、ゴム組成物片4を充填した成形用金型2を高圧容器3に収納し、流体給排経路31を通じて、高圧容器3の内部空間に超臨界流体を充填する。耐圧容器3の内部空間に充填された超臨界流体は、成形用金型2の流体給排経路22を通じてキャビティ21内に浸入し、キャビティ21内に充填されるゴム組成物片4は、超臨界流体に晒される。このときの超臨界流体の温度は、キャビティ21に充填されたゴム組成物片4の架橋温度かその近傍の温度であることが好ましい。また、超臨界流体の圧力は、7〜30MPaの範囲であることが好ましく、15〜20MPa程度の圧力であることがより好ましい。
【0031】
以降、この状態が維持されると、超臨界流体がゴム組成物片4の内部に浸透する。内部全体に亘って発泡した発泡成形体を製造するためには、キャビティ21に充填したゴム組成物片4の内部全体に亘って超臨界流体を含浸させる必要がある。この必要となる含浸時間は、ゴム組成物片4の種類や寸法形状、架橋の進行状態、あるいは超臨界流体の温度や圧力に依存する。これは、(1)一般に分子中に極性基を有するゴム組成物(ゴム組成物片)は、超臨界流体の浸透性が低くなること、(2)カーボンブラックの添加や架橋の進行などによりゴム組成物片の内部の粘性が高くなると、浸透に対する抵抗が大きくなること、などによる。このため、条件に応じて設定する。
【0032】
本方法においては、90%加硫点の以内の時間であることが好ましい。なお、ここで「90%加硫点」とは、JIS K6300−2:2001に規定されるt(90)をいうものとする。この範囲内であれば、発泡させる段階において、ゴム組成物片の架橋が完結していないことから、ゴム組成物片が融着し、良好な発泡状態が得られる。
【0033】
具体的な含浸時間は、例えば3mm角に形成されたEPDMであれば、8分程度が好ましい。1mm角に形成、あるいは0.5mm径に粉砕されたEPDMであれば5分程度が好ましい。3mm角以下の大きさに形成されたNRであれば5分程度が好ましい。3mm角以下に形成されたNBRであれば10分程度が好ましい。このように、あらかじめ3mm角以下の大きさに成形されたゴム組成物を用いれば、超臨界流体の含浸時間は10分以下でよいから、従来の方法に比較して、含浸時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
前記状態を所定の時間維持した後、高圧容器3の内部圧力を所定の圧力(例えば、大気圧)まで減圧する。高圧容器3の内部を減圧すると、ゴム組成物片4の内部に浸透した超臨界流体が気化し、ゴム組成物片4が発泡する。減圧前と減圧後の圧力差が小さいと、ゴム組成物片4の内部に含浸された超臨界流体の相分離が緩やかに進み、気泡の融合や、充填剤を核として気泡が集合するなどして、気泡が大きくなりやすくなる。一方、減圧前と減圧後の圧力差が大きいと、ゴム組成物片4の内部に含浸された超臨界流体の相分離が急激に進行し、超臨界流体が短時間に一斉に気化して気泡が形成されるため、気泡の泡径が小さくなる。従って、減圧前と減圧後の圧力差の調整により、形成される気泡の泡径を制御できる。
【0035】
超臨界流体が気化してゴム組成物片4の内部に微細な気泡が形成されると、気泡の内圧によりゴム組成物片4は膨張し、見かけ上の体積が増加する。そしてこの見かけ上の体積増加により、キャビティ21は膨張したゴム組成物片4で隙間なく満たされ、ゴム組成物片は、キャビティに沿った形状となる。そして、ゴム組成物片4同士が融着して一体化する。製造される発泡成形体の内部に形成され得る気泡の総体積は、キャビティ21に充填するゴム組成物片4の総量(総容積)に応じて定まるから、ゴム組成物片4の充填量の調整により気泡の泡径を制御できる。すなわち、気泡の泡径を大きくしたい場合には、キャビティ21に充填するゴム組成物片4の総量を少なくし、気泡の泡径を小さくしたい場合には、充填するゴム組成物片4の総量を増やせばよい。
【0036】
その後、所定の時間この温度(すなわち、架橋温度かその近傍の温度)を維持し、一体化したゴム組成物片4の架橋を進行させる。一体化したゴム組成物片4の温度は、内部全体に亘って均一となっていることから、架橋は内部全体に亘って均一に進行する。この結果、架橋進行の速度の不均一に起因する気泡の泡径の不均一や、表層部が先に架橋して深層部の流体が逃げ場を失ったことに起因する気泡の巨大化が発生することがなく、表層部と内部とで気泡の泡径が均一となる。
【0037】
このように、本方法によれば、あらかじめ所定の寸法形状に形成したゴム組成物(ゴム組成物片)を用いることにより、短時間で超臨界流体をゴム組成物の内部全体に亘って含浸させることができる。このため、短時間で内部まで発泡したゴムの発泡成形体を製造することができる。また、ゴム組成物の全体にわたって架橋を均一に進行させることができるから、得られるゴムの発泡成形体の気泡の泡径は、発泡成形体の全体に亘って均一となる。従って、内部まで均一かつ微細に発泡した発泡成形体を短時間で製造することができる。
【0038】
なお、超臨界流体の含浸工程において、ゴム組成物片4が架橋温度かその近傍の温度に加熱されるが、この工程は短時間で完了するため、発泡させる工程においては、架橋は殆ど進行していない。このため、超臨界流体の含浸や、均一かつ微細な発泡の妨げにはならない。
【実施例】
【0039】
次いで、本発明の実施例及び比較例について説明する。次に示す表1は、本発明の実施例と比較例のそれぞれの条件及び評価を示した表である。ここで用いたゴムの種類は、EPDM、NR、NBRの3種類である。そして、成形用金型に充填するゴム組成物の寸法形状及び充填量、超臨界流体の含浸工程及び架橋工程における温度、圧力、各工程の時間を変えてゴムの発泡成形体を製造し、発泡状態を評価した。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、表1に示さない共通条件は次の通りである。評価には、図1に示す構成を有する設備を用いている。成形用金型は、キャビティが形成される本体と、この本体に3カ所でネジ止めされてキャビティを閉鎖する蓋体とを備える。キャビティは、内径が60mm、高さが30mmの円筒形状に形成される。そして、原料のゴム組成物片をキャビティに充填した後、蓋体を本体にネジ止めするに際し、スペーサを用いて本体と蓋体との接合面の間に約0.5mmの隙間が形成されるようにした。この隙間が成形用金型の流体給排経路として機能し、流体がキャビティに出入りできる。高圧容器は、内径が130mm、内部の高さが100mmの円筒形状に形成され、成形用金型2を収納できる。また、ゴム組成物片に含浸させる流体には二酸化炭素を用いた。以下、超臨界状態にある二酸化炭素を「超臨界二酸化炭素」と記す。
【0042】
キャビティに充填する各ゴム組成物片は、カットあるいは冷凍粉砕し、所定の寸法形状に形成される。なお、ゴム組成物片の表面にタルクを少量塗布し、ゴム組成物片をキャビティに充填する際に、ゴム組成物片同士が融着しないようにした。
【0043】
また、表1中の「発泡倍率」は、発泡によるゴム組成物片の見かけ上の体積の増加率を示したものである。本実施例及び比較例は、発泡倍率をあらかじめ設定し、製造される発泡成形体が設定した発泡倍率となるだけの量のゴム組成物片をキャビティに充填した。すなわちゴム組成物片の充填量は、2倍発泡であればキャビティの容積の2分の1の容積、発泡倍率が1.2倍であればキャビティの容積の1.2分の1の容積とした。
【0044】
以下に、各実施例及び比較例の条件及び評価を記す。
【0045】
実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−3は、ゴム組成物としてEPDMを用いている。具体的な配合は、エスプレンが100重量部に対し、酸化亜鉛が5重量部、ステアリン酸が1重量部、FEFカーボンが45重量部、プロセスオイルが10重量部、加硫促進剤CZが1.5重量部、加硫促進剤EZが1.5重量部、加硫促進剤TETが1重量部、硫黄が1.5重量部の割合である。そして、このゴム組成物片の特性のうち、120℃におけるムーニー粘度は45、150℃における90%加硫点は10分30秒である。
【0046】
(実施例1−1)
実施例1−1は、3mm角にカッティングしたゴム組成物片を用いた。発泡倍率は2倍に設定し、このためキャビティには、キャビティ容積の2分の1の容積に相当する量のゴム組成物片を充填した。超臨界二酸化炭素の含浸時間は8分間とし、この際の超臨界二酸化炭素の温度は150℃、圧力は15MPaとした。その後、大気圧まで減圧して発泡させ、大気圧下で15分間、温度を150℃に維持して架橋を進行させた。
【0047】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が30〜60μmの範囲にあり、また、内部全体に亘って均一に発泡していた。従ってこの条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体を製造するのに好適な条件であるといえる。そして、3mm角に成形したゴム組成物片を用いる場合には、超臨界二酸化炭素の含浸時間は8分程度でよいといえる。
【0048】
(実施例1−2)
実施例1−2は、実施例1−1で用いたゴム組成物片よりサイズが小さいゴム組成物片を用い、超臨界二酸化炭素の含浸時間を短縮した実施例である。この実施例1−2では、1mm角にカッティングして成形したゴム組成物片を用いた。そして、超臨界二酸化炭素の含浸時間を5分間とした。それ以外の条件は、実施例1−1と同一とした。
【0049】
このような条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が30〜60μmの範囲にあり、また、内部全体に亘って均一に発泡していた。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体の製造に好適な条件であるといえる。そして1mm角に成形したゴム組成物片を用いる場合には、超臨界二酸化炭素の含浸時間は5分程度でよく、超臨界流体の含浸時間を短縮するためには、ゴム組成物片のサイズを小さくすることが有効であるといえる。
【0050】
(実施例1−3)
実施例1−3は、ゴム組成物片に超臨界二酸化炭素を含浸させた後、減圧前と減圧後の圧力差を調整することによって、ゴムの発泡成形体の内部に形成される気泡の泡径を制御する実施例である。実施例1−2では15MPaから大気圧まで減圧させるのに対し、この実施例は、15MPaから5MPaまで減圧させた。そして、5MPaの圧力下において架橋させた。これ以外の条件は、実施例1−2と同一である。
【0051】
このような条件により製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が60〜90μmの範囲となった。15MPaから大気圧まで減圧した実施例1−1と比較すると、気泡の泡径が全体的に大きくなっている。減圧前と減圧後の圧力差の相違が、形成される気泡の泡径に影響を与える理由は前述の通りである。このように、気泡の泡径を制御する手段として、発泡させる際における減圧幅の調整が有効であるといえる。また、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体を製造するのに適した条件であるといえる。
【0052】
(実施例1−4)
実施例1−4は、実施例1−2より小さいサイズのゴム組成物片を用いる例である。この実施例では、冷凍粉砕して形成された0.5mm径のゴム組成物片を用いた。これ以外の条件は、実施例1−2と同一である。
【0053】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が30〜50μmの範囲内にあり、内部全体に亘って均一に発泡した。従って、この条件及び製造方法は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造するのに適した条件であるといえる。なお、実施例1−2と比較すると、気泡の泡径が全体的に小さくなっているが、これは次のような理由によると考えられる。ゴム組成物は、寸法が小さくなるに従って圧力差の影響を受けやすく、実質的に圧力差が大きくなったのと同様の効果が得られる。前述の通り、減圧前と減圧後の圧力差が大きくなると、形成される気泡の泡径は小さくなるから、サイズの大きいゴム組成物片を用いる実施例1−2に比較して、形成される気泡の泡径が小さくなるものと考えられる。
【0054】
(実施例1−5)
実施例1−5は、発泡倍率の調整により、形成される気泡の泡径を制御する実施例である。この実施例では、発泡倍率が1.2倍発泡となる量のゴム組成物片を成形用金型のキャビティに充填した。これ以外の条件は、実施例1−2と同一である。
【0055】
この条件で製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が20〜50μmの範囲内にあり、内部全体に亘って均一に発泡した。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体の製造に適した条件といえる。そして、実施例1−2と比較すると、形成される気泡の泡径が全体的に小さくなる側にシフトしている。これは、前述の通り、製造される発泡成形体の内部の気泡が占める体積は、キャビティへのゴム組成物片の充填量に依存するから、充填量を多くする(発泡倍率の設定を小さくする)に従って、気泡の泡径も小さくなるものと考えられる。このように、形成される気泡の泡径を制御する手段として、発泡倍率の調整が有効であることが確認された。
【0056】
(実施例1−6)
実施例1−6も、発泡倍率の調整により、形成される気泡の泡径を制御する実施例で、実施例1−4と比較すべき例である。この実施例では、発泡倍率が1.2倍発泡となる量のゴム組成物片を成形用金型のキャビティに充填した。これ以外の条件は、実施例1−4と同一である。
【0057】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が20〜50μmの範囲内にあり、内部全体に亘って均一に発泡していた。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造するのに適した条件であるといえる。そして、実施例1−4と比較すると、形成される気泡の泡径が全体的に小さくなる側にシフトしている。この理由は、前記実施例1−5で示した理由と同一であると考えられる。従って、ゴムの発泡成形体の内部に形成される気泡の泡径を制御する手段として、発泡倍率の調整が有効であることが確認された。
【0058】
(比較例1−1)
比較例1−1は、所定の寸法形状に成形したゴム組成物(ゴム組成物片)ではなく、一体に成形された大型のゴム組成物を用いる従来の方法の例である。この例では、直径が60mm、厚さが15mmの円盤状の形成されたゴム組成物を用いた。これ以外の条件は、実施例1−2あるいは実施例1−4と同一である。
【0059】
この条件を適用して製造された発泡成形体は、表面から1〜2mm程度の深さの範囲においては発泡していたが、この範囲より深い部分においては発泡は観察されなかった。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造するのに不適当である。この理由として、含浸時間が短く、深層部にまで超臨界二酸化炭素が浸透しなかったためと考えられる。従って、実施例1−2あるいは実施例1−4と対比して考慮すると、5分間でゴム組成物片の内部全体に亘って超臨界二酸化炭素を含浸させるには、ゴム組成物辺を1mm角以下に成形して用いることが好ましいといえる。
【0060】
(比較例1−2)
比較例1−2は、比較例1−1で用いた一体に成形されるゴム組成物を適用する場合において、超臨界二酸化炭素の含浸時間を長くして、超臨界二酸化炭素がゴム組成物の内部全体に亘って含浸するようにした例である。具体的には、超臨界二酸化炭素の含浸時間を120分とし、その際の超臨界二酸化炭素の温度を50℃、圧力を15MPaとした。その後、大気圧まで減圧して発泡させ、150℃に加熱し、大気圧下で15分間、150℃の温度に維持して架橋させた。
【0061】
この条件を適用して製造された発泡成形体は、表層部から深層部に向かうに従って形成される気泡の泡径が大きくなり、深層部では気泡の泡径が約1mm程度と大きくなった。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造する条件としては不適当であるといえる。
【0062】
この原因は次に示す理由によると考えられる。超臨界二酸化炭素を低温でゴム組成物に含浸させ、その後架橋工程でゴム組成物を加熱すると、表層部は短時間で温度上昇して架橋も短時間で完了し、発泡により形成された気泡がほぼそのまま固定される。これに対し深層部は、熱伝達に要する時間差により表層部に比較して温度上昇が相対的に遅くなるから、架橋の進行も遅くなり、この間に気泡同士が結合するなどして巨大化する。従って、深層部においては、表層部に比較して気泡の泡径が大きくなる。このように、一体の巨大なゴム組成物を用いる場合には、超臨界二酸化炭素の含浸時間を長時間確保しても、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造することは困難であるといえる。
【0063】
(比較例1−3)
比較例1−3は、3mm角に成形したゴム組成物片を用い、超臨界二酸化炭素の含浸時間を5分間と短くした例である。この「5分間」は、1mm角あるいは0.5mm径のゴム組成物片に好適な時間である。従って、3mm角のゴム組成物片を用いたことを除いては、実施例1−2あるいは実施例1−4と同一の条件が適用される。
【0064】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、内部に未発泡の部分が存在した。これは、時間が短く、ゴム組成物片の内部全体には超臨界二酸化炭素が含浸しなかったためと考えられる。また、形成される気泡の泡径は、30〜200μmのものが混在しており、気泡の泡径のばらつきが大きくなった。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体の製造には不適当である。このように、3mm角に成形されたゴム組成物片を用いる場合には、超臨界二酸化炭素の含浸時間は8分間程度であることが好ましく、5分間では不足するといえる。
【0065】
以上、ゴム組成物としてEPDMを適用する場合においては、超臨界二酸化炭素の含浸時間は、3mm角に成形されたゴム組成物片では8分程度、1mm角以下に成形されるゴム組成物片では5分程度が好ましいといえる。また、形成される気泡の泡径の制御には、減圧前と減圧後の圧力差の調整や、発泡倍率の調整が有効であるといえる。従って、本方法は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を短時間で製造する方法として有効であるといえる。一方、従来のような一体の巨大なゴム組成物を適用する場合においては、超臨界二酸化炭素の含浸時間を短くすると内部全体に亘っては発泡せず、含浸時間を長くして内部全体に亘って含浸させると、気泡の泡径が不均一になる。
【0066】
次に示す実施例2−1、実施例2−2及び比較例2−1は、ゴム組成物としてNRを適用した例である。ゴム組成物の配合は、天然ゴムが100重量部に対して、酸化亜鉛が5重量部、ステアリン酸が1重量部、FEFカーボンブラックが60重量部、プロセスオイルが10重量部、加硫促進剤64が1重量部、硫黄が1.8重量部の割合である。また、このゴム組成物の特性のうち、120℃におけるムーニー粘度は30、150℃における90%加硫点は9分である。
【0067】
(実施例2−1)
実施例2−1は、3mm角にカッティングしたゴム組成物片を用いた。発泡倍率は2倍に設定し、このためキャビティには、キャビティ容積の2分の1の容積に相当する量のゴム組成物片を充填した。超臨界二酸化炭素の含浸時間は5分間とし、この際の超臨界二酸化炭素の圧力を20MPa、温度を140℃とした。その後大気圧まで減圧し、大気圧下において12分間、温度を140℃に維持して架橋させた。
【0068】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が40〜100μmの範囲にあり、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体の製造に好適な条件であるといえる。
【0069】
(実施例2−2)
実施例2−2は、実施例2−1で適用したゴム組成物片より小さいサイズのゴム組成物片を用いた例であり、冷凍粉砕により成形された0.5mm径のゴム組成物片を用いた。なお、ゴム組成物片の寸法及び成形方法を除いては、実施例2−1と同一の条件が適用される。
【0070】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が40〜90μmの範囲にあり、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡していた。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造するのに好適であるといえる。なお、実施例2−1に比較して気泡の泡径が小さくなっているのは、実施例1−4と同様の理由によるものと考えられる。
【0071】
(比較例2−1)
比較例2−1は、所定の寸法形状に成形されたゴム組成物(ゴム組成物片)ではなく、一体に成形された大型のゴム組成物を用いる従来の方法の例である。この例では、直径が60mm、厚さ15mmの円盤形状に形成されたゴム組成物を用いた。これ以外の条件は、実施例2−1あるいは実施例2−2と同一の条件でである。
【0072】
この条件を適用して製造された発泡成形体は、表面から1〜2mmの深さの範囲においては発泡したが、それより深い部分では発泡しなかった。このように、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体の製造には不適当な条件であるといえる。これは、比較例1−1と同様の理由により、ゴム組成物の深層部にまで超臨界二酸化炭素が含浸しなかったためと考えられる。
【0073】
以上、実施例2−1、2−2及び比較例2−1によれば、ゴム組成物にNRを適用する場合には、3mm角以下に成形されたゴム組成物片を用い、超臨界二酸化炭素の含浸時間を5分とすることが好ましいといえる。一方、一体に成形されるゴム組成物を適用する場合には、超臨界二酸化炭素の含浸時間を短くすると内部全体に亘っては発泡せず、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体の製造は困難である。従って、本方法は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を短時間で製造する方法として有効であるといえる。
【0074】
実施例3−1、実施例3−2及び比較例3−1は、NBRを適用した例である。ゴム組成物の配合は、中高ニトリルNBRが100重量部に対して、酸化亜鉛が5重量部、ステアリン酸が1重量部、FEFカーボンが45重量部、プロセスオイルが10重量部、加硫促進剤DMが1.5重量部、加硫促進剤TSが0.5重量部、硫黄が1.2重量部の割合である。このゴム組成物片の特性のうち、120℃におけるムーニー粘度は42、150℃における90%加硫点は13分である。
【0075】
(実施例3−1)
実施例3−1は、3mm角にカッティングしたゴム組成物片を用いた。発泡倍率は2倍とし、このためキャビティには、キャビティ容積の2分の1の容積に相当する量のゴム組成物片を充填した。そして、超臨界二酸化炭素の含浸時間は10分間として、この際の超臨界二酸化炭素の温度は150℃、圧力は15MPaとした。その後、大気圧下において15分間150℃の温度に維持して架橋させた。
【0076】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成された気泡の泡径が30〜100μmの範囲にあり、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡していた。従ってこの条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体の製造に適する条件であるといえる。
【0077】
(実施例3−2)
実施例3−2は、実施例3−1よりサイズが小さいゴム組成物片を適用した例である。この例では、冷凍粉砕により成形された0.5mm径のゴム組成物片を用いた。ゴム組成物片の成形方法及び寸法を除いては、前記実施例3−1と同一の条件を適用した。
【0078】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、形成される気泡の泡径が30〜90μmの範囲にあり、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡していた。従って、この条件は、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体の製造に好適な条件であるといえる。
【0079】
(比較例3−1)
比較例3−1は、3mm角に形成されたゴム組成物片を適用し、超臨界二酸化炭素の含浸時間を8分間と短くした例である。この含浸時間を除いては、実施例3−1と同一の条件が適用される。なお、この「8分間」は、3mm角に成形されたEPDMに対して好適な含浸時間である(実施例1−1参照)。
【0080】
この条件を適用して製造されたゴムの発泡成形体は、ゴム組成物片同士が融着して一体の成形体にはなっていたが、内部には発泡していない部分が存在した。これは、含浸時間が不足し、超臨界二酸化炭素がゴム組成物片の内部全体に亘っては含浸しなかったためと考えられる。従って、この条件は、均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体の製造には不適当な条件であるといえる。
【0081】
以上、実施例3−1、3−2、及び比較例3−1より、ゴム組成物としてNBRを適用する場合、3mm角以下に成形されたゴム組成物片を用いると、超臨界二酸化炭素の含浸時間は10分程度で良く、短時間で内部全体に亘って均一かつ微細に発泡した発泡成形体を製造することができるといえる。なお、3mm角に成形されたゴム組成物片を用いる場合には、超臨界二酸化炭素の含浸時間は10分程度が好ましく、8分では不足するといえる。
【0082】
以上まとめると、超臨界流体の含浸時間は、ゴム組成物片の配合や架橋の進行状況、さらには流体の圧力や温度に依存するが、EPDMの場合には、3mm角で8分程度、1mm角以下で5分程度の含浸時間で良好な発泡状態が得られる。NRでは、3mm角以下で5分程度の含浸時間で良好な発泡状態が得られる。NBRでは、EPDMより含浸時間が長くなるが、3mm角で10分程度含浸させると良好な発泡状態が得られる。このように、架橋の工程に要する時間を含めても、20分程度でゴムの発泡成形体を製造することが可能となる。従って、従来の含浸時間が120分である場合に比較すると、含浸時間を大幅に短縮することが可能となる。そして含浸時間を短縮させつつ、内部全体に亘って均一かつ微細に発泡したゴムの発泡成形体を製造することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態あるいは実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であることはいうまでもない。なお、前記実施形態及び実施例では、超臨界流体(超臨界二酸化炭素)を用いる構成について説明したが、当然、亜臨界状態にある流体を用いることも可能である。
【0084】
また、本方法の実施に適用する設備も、図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、高圧容器を用いず、流体供給機構から直接成形用金型に超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を給排する構成であっても良い。
【0085】
なお、発泡倍率を大きくした場合には、3mm角以上の大きさに成形されたゴム組成物片であっても適用できるものと考えられる。また、粘度が低く超臨界流体の含浸が容易なゴム組成物や、架橋の進行が遅いゴム組成物であれば、3mm角以上の大きさに成形したものであっても適用できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るゴムの発泡成形体の製造方法に用いられる設備の構成の例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0087】
1 本発明の実施に適用される設備
2 成形用金型
3 高圧容器
4 ゴム組成物片
21 キャビティ
22 流体給排経路
31 流体給排経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細粒化された未加硫ゴム組成物を金型内に充填する工程と、該金型内に充填した未加硫ゴム組成物を架橋温度領域に加熱する工程と、該金型内に超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を加圧注入し、前記未加硫ゴム組成物に含浸させる工程と、該金型内を減圧して前記未加硫ゴムを発泡させる工程と、前記未加硫ゴムを架橋させる工程とを含むことを特徴とするゴム発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記未加硫ゴム組成物の粒径は1mm以下であって、該未加硫ゴム組成物に超臨界状態あるいは亜臨界状態にある流体を含浸させる時間を、該未加硫ゴム組成物の架橋の進行が90%を超えない時間とすることを特徴とする請求項1に記載のゴム発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたゴム発泡成形体の製造方法により、内部が均一な発泡セルサイズに形成されてなることを特徴とするゴム発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−88434(P2006−88434A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275038(P2004−275038)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】