説明

ゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物

本発明は、(1)ジエン系ゴム、(2)シリカおよび(3)数平均分子量10000〜100000の範囲のエポキシ化液状ジエン系ゴムを含有してなるゴム組成物であって、ジエン系ゴム(1)100質量部に対してシリカ(2)を0.1〜150質量部、かつ、ジエン系ゴム(1)100質量部に対してエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)を0.1〜30質量部含有することを特徴とするゴム組成物、係るゴム組成物と架橋剤を含有することを特徴とする架橋性ゴム組成物、および該架橋性ゴム組成物を架橋してなる架橋物である。本発明で得られるゴム組成物は、ジエン系ゴムにシリカを添加し混合を行った場合のシリカ分散性が改良され、加工性および架橋後における力学物性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、タイヤ用途、工業部材用途などに好適に用いることのできるゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物に関する。
【背景技術】
ゴム材料の分野においては、その使用目的に応じ、引張強さ、耐摩耗性、引裂強さ等の力学物性の向上、耐熱性、耐油性等の各種物性を付与するため、ゴムにシリカを混合し、さらに架橋剤を添加して架橋を施し、架橋されたゴム組成物(架橋物)として使用することが一般的に行われている。
また、自動車タイヤのトレッド部分に使用する架橋性ゴム組成物においては、近年の自動車の低燃費化に対応すべく、転がり抵抗を小さくするため、シリカを配合した架橋性ゴム組成物を使用することが多くなってきている。
シリカとゴム、特にジエン系ゴムを混合する場合、シリカはジエン系ゴムとの混和性に乏しいため、単純にジエン系ゴムにシリカを添加し、混合を行うと、組成物全体の粘度が上昇し加工性が悪化することが一般的に知られている。かかる現象を改善する手法としては、シリカとジエン系ゴムの混合時に、オイル等の可塑剤を添加し、組成物全体の粘度を低下させて加工性を改善する方法が提案されている。しかし、この方法では、可塑剤は架橋には何ら寄与しないので、最終的に得られる架橋されたゴム組成物(架橋物)の引張特性、屈曲特性などの力学物性の低下を避け難いという問題があった。
一方、かかる力学物性の低下の問題を改善し、かつ、シリカの分散性を改良する手法として、シリカとジエン系ゴムの混合の際に、末端に官能基を有する液状ポリイソプレンゴムを添加して混合することによって、シリカの分散性を改良した加工性に優れたゴム組成物が開示されている(特開平7−292159号公報参照)。さらに、オレフィン性不飽和結合を含むゴムに、特定の分子量を有する液状エポキシ化ブタジエンポリマーが表面に予備分散されたシリカを配合したことを特徴とするゴム組成物が開示されている(特開2001−261897号公報参照)。
特開平7−292159号公報のゴム組成物の加工性は若干改善されるものの、得られる架橋されたゴム組成物(架橋物)の力学物性の改善を十分に行うことはできない。また、特開2001−261897号公報のゴム組成物においても、最終生成物たる架橋されたゴム組成物(架橋物)の力学物性の改善はなお不十分である。
しかして、本発明の目的は、ジエン系ゴムにシリカを添加し混合を行った場合のシリカ分散性が改良され、加工性および架橋後における力学物性に優れるゴム組成物を提供することにある。
【発明の開示】
本発明によれば、上記の目的は、
〔1〕(1)ジエン系ゴム、(2)シリカおよび(3)数平均分子量10000〜100000の範囲のエポキシ化液状ジエン系ゴムを含有してなるゴム組成物であって、ジエン系ゴム(1)100質量部に対してシリカ(2)を0.1〜150質量部、かつ、ジエン系ゴム(1)100質量部に対してエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)を0.1〜30質量部含有することを特徴とするゴム組成物;
〔2〕前記〔1〕記載のゴム組成物と架橋剤を含有することを特徴とする架橋性ゴム組成物;および
〔3〕前記〔2〕記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなる架橋物;
を提供することにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書におけるジエン系ゴム(1)は、主にブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物を構成成分とする、ゴム状性質を有する重合体を意味する。ジエン系ゴム(1)としては、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。また、ジエン系ゴム(1)として、上記したゴムを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本明細書中におけるシリカ(2)としては、従来よりゴム用補強剤として使用されているものを特に制限なく使用でき、例えば乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。シリカ(2)の比表面積には特に制限はないが、通常、40〜600m/gの範囲、好ましくは70〜300m/gの範囲のものを用いることができる。なお、シリカ(2)として、上記したシリカを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書中におけるエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)は、例えば液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状スチレン−ブタジエンランダム共重合体、液状スチレン−ブタジエンブロック共重合体、液状ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、液状ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、液状スチレン−ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、液状スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体などの液状ジエン系ゴムが分子内に有する炭素−炭素二重結合部分をエポキシ化して得られる数平均分子量10000〜100000の範囲の重合体、より好ましくは数平均分子量15000〜70000の範囲の重合体を意味する。エポキシ化液状ジエン系ゴム(3)の数平均分子量が10000よりも低い場合は、本発明の、架橋性ゴム組成物を架橋してなる架橋物の力学物性の低下が大きく、一方数平均分子量が100000よりも大きくなると、本発明のゴム組成物および架橋性ゴム組成物を調製する際の加工性が悪化する。
なお、本明細書における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
エポキシ化液状ジエン系ゴム(3)は、上記した液状ジエン系ゴムの1種類をエポキシ化したものを単独で用いてもよいし、また、2種以上の液状ジエン系ゴムをエポキシ化したものを混合してエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)として用いてもよい。これらの中でも、本発明のゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物の特性を充分に発揮できる観点からは、エポキシ化液状ジエン系ゴム(3)としてエポキシ化液状ポリイソプレンを用いるのが好ましい。
かかるエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)の原料となる液状ジエン系ゴムの製造方法は特に限定されず、例えばアニオン重合法を採用することができ、その場合、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの重合反応に不活性な溶媒中で、金属ナトリウム、金属リチウムなどのアルカリ金属;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物などを開始剤として用いて、通常、重合温度−100〜100℃の範囲、重合時間0.01〜200時間の範囲で重合させる方法で行うことができる。
次いで、得られた液状ジエン系ゴムが分子内に有する炭素−炭素二重結合部分をエポキシ化してエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)を得る。エポキシ化する方法は特に限定されず、例えば(i)過酢酸などの過酸で処理する方法(特開平8−134135号公報参照)、(ii)モリブデン錯体とt−ブチルヒドロペルオキシドで処理する方法(ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティ、ケミカル・コミュニケーションズ(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.),1686頁(1989年)参照)、(iii)タングステン酸触媒と過酸化水素で処理する方法(ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、C(J.Polym.Sci.,C,)28巻,285頁(1990年)参照)、(iv)タングステン酸アンモニウムまたはリンタングステン酸から選ばれるタングステン化合物、第4級アンモニウム塩、リン酸及び過酸化水素水溶液で処理する方法(特開2002−249516号公報参照)などが挙げられる。
また、エポキシ化される部位は特に限定されず、ジエン系ゴムの分子鎖中にランダムにエポキシ基が導入されてもよく、また特定の部位、例えばイソプレンに由来する炭素−炭素二重結合部分を選択的にエポキシ化することもできる。例えば液状ブタジエン−イソプレンジブロック共重合体のポリイソプレンブロックを選択的にエポキシ化した場合は、末端ブロック部分がエポキシ化されたエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)を得ることができる。
エポキシ化液状ジエン系ゴム(3)のエポキシ基含有量に、厳密な意味での制限はないが、本発明のゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物における特性を十分に発揮させる観点からは、通常、0.1〜15meq/gの範囲であるのが好ましく、0.3〜10meq/gの範囲であるのがより好ましい。
なお、本発明のゴム組成物には、添加剤として、ゴム組成物にシリカを配合させる際に通常使用されているシランカップリング剤を加えてもよい。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
また、本発明の特性を損なわない範囲で、ゴム組成物を補強する目的で通常添加される補強剤として、例えばファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラック;ポリアミド繊維などの有機繊維などを、本発明のゴム組成物にさらに添加することができる。加えて、本発明のゴム組成物には、その特性を損なわない範囲で、オイル等の可塑剤、老化防止剤、充填剤などの各種配合剤をさらに配合することもできる。
本発明のゴム組成物は、一般的にゴム組成物の製造方法として用いられる方法を適用することにより製造できる。例えば、ジエン系ゴム(1)、シリカ(2)、エポキシ化液状ジエン系ゴム(3)および必要に応じて他の添加剤の所定量をブラベンダー、バンバリーミキサー、ロール混練機などを用いて混合することで得られる。
次に、本発明の架橋性ゴム組成物について説明する。かかる架橋性ゴム組成物に含有させる架橋剤は、ゴムの架橋に通常用いられているものを特に制限なく使用することができ、例えば硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどの硫黄架橋剤;シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物架橋剤などが挙げられる。
本発明の架橋性ゴム組成物には、必要に応じて、架橋促進剤や架橋助剤を配合してもよい。かかる架橋促進剤や架橋助剤は特に限定されず、用いる架橋剤に応じて適宜選択して使用することができる。架橋促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系促進剤;ジフェニルグァニジン、ジオルトトリルグァニジンなどのグァニジン系促進剤;n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合品、ブチルアルデヒド−モノブチルアミン縮合品などのアルデヒド−アミン系促進剤;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド−アンモニア系促進剤;チオカルバニリドなどのチオ尿素系促進剤などが挙げられる。これらの架橋促進剤を配合する場合は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、架橋助剤としては酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩;ジn−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのアミン類;エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。これらの架橋助剤を配合する場合は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の架橋性ゴム組成物は、一般的にゴム組成物の製造方法として用いられる方法を適用することにより製造できる。例えば、ジエン系ゴム(1)、シリカ(2)、エポキシ化液状ジエン系ゴム(3)の所定量に対して架橋剤、また必要に応じて架橋促進剤、架橋助剤などを添加し、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ロール混練機などを用いて混合することで得られる。
また、上記で得られた架橋性ゴム組成物を、例えばプレス成形機でプレスすることにより架橋したり、型架橋することによって、架橋物を得ることができる。
本発明によれば、ジエン系ゴムにシリカを添加し混合を行った場合のシリカ分散性が改良され、加工性および架橋後における力学物性に優れるゴム組成物を得ることができる。
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
参考例1
〈1〉窒素置換を行った容量5リットルのオートクレーブ中に、ヘキサン2000gおよびn−ブチルリチウム2.5gを仕込んだ後、50℃まで昇温し、イソプレン650gを添加して3時間重合を行なった。重合反応液の一部をサンプリングし、GPC分析したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)=27000、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量の比(Mw/Mn)=1.16の液状ポリイソプレンが生成していた。
〈2〉上記〈1〉で得られた重合反応溶液300gを水洗した後、容量1リットルのオートクレーブ中に仕込み、リンタングステン酸0.16g、リン酸0.15g、35質量%過酸化水素水溶液13g、水90gおよびトリオクチルメチルアンモニウムクロライド0.26gを添加し、80℃で3時間反応させた。得られた反応液をメタノール中に注いで重合体を再沈させて濾別し、80℃で7時間真空乾燥することにより70gのエポキシ化液状ポリイソプレンを得た。得られたエポキシ化液状ポリイソプレンをGPCで分析したところMn=28000、Mw/Mn=1.16であった。また、得られたエポキシ化液状ポリイソプレン約0.5gを精秤してテトラヒドロフラン(THF)10mlに25℃で溶解させ、この溶液に0.2N塩酸THF溶液を10ml加えて30分撹拌し、エポキシ化液状ポリイソプレン中のエポキシ基と反応させた後、過剰分の塩酸を0.1N水酸化カリウムエタノール溶液で滴定することによりエポキシ価を測定したところ、1.5meq/gであった。
【実施例1】
〈1〉スチレンブタジエンゴム(SBR;商品名「JSR1502」、ジェイ・エス・アール(株)製)、シリカ(商品名「ニプシールVN−3」、日本シリカ工業社製)、参考例1の方法で得られたエポキシ化液状ポリイソプレン、アロマ系オイル(商品名「アロマオイルX−140」、ジャパンエナジー社製)、ジエチレングリコール、亜鉛華、ステアリン酸および老化防止剤[商品名「ノクラック 6C」(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン)、大内新興社製]を、表1に示す配合量比で、バンバリーミキサーを80℃に設定し、5分30秒混練した。次いで、得られた混練物に、硫黄、架橋促進剤[商品名「ノクセラー CZ」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド)、大内新興社製]、架橋助剤としてジシクロヘキシルアミンを表1に示す配合量比でオープンロールを使用し、55℃に設定して混合して架橋性ゴム組成物を得た。得られた架橋性ゴム組成物について、JIS K 6300に準拠して100℃でのムーニー粘度を測定し、ML1+4の値で加工性を評価した。この値が低いほど加工性が良好である。
〈2〉上記〈1〉で得られた架橋性ゴム組成物を、160℃で15分プレスすることで架橋し、引張試験用の厚さ2mmの架橋されたゴム組成物(架橋物)のシートを得た。
得られた架橋物シートの硬度をJIS K 6250に準拠してタイプAのデュロメータで測定した。一方、得られた架橋物シートからダンベル状3号形試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251に準拠して引張試験を行って、300%モジュラス、破断強度および破断伸びを測定した。結果を表1に示す。
〈3〉上記〈1〉で得られた架橋性ゴム組成物を160℃、30分の条件で型架橋し、JIS K 6260に準拠して屈曲試験用試験片を作製した。試験片中央のくぼみ部分に2mmの切れ込みを入れて、JIS K 6260に準拠して屈曲亀裂成長試験を行い、長さ8mmまで亀裂が成長するまでの屈曲回数をサンプル数3の平均値で評価した。結果を表1に示す。
比較例1
エポキシ化液状ポリイソプレンを添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、架橋物を得た。得られた架橋物の硬度、引張試験、屈曲亀裂成長試験の結果を表1に示す。

表1より、実施例1で得られた架橋性ゴム組成物のムーニー粘度は比較例1で得られた架橋性ゴム組成物のムーニー粘度より低下しており、加工性が向上していることが分かる。
また、実施例1で得られた架橋性ゴム組成物の架橋物は、比較例1で得られた架橋性ゴム組成物の架橋物と比べ、破断強度、破断伸びおよび硬度はほぼ同等であるが、300%モジュラスおよび屈曲亀裂成長試験において顕著に優れていることが分かる。
【実施例2〜3】
〈1〉スチレンブタジエンゴム(SBR;商品名「JSR1502」、ジェイ・エス・アール(株)製)、シリカ(商品名「ニプシールVN−3」、日本シリカ工業社製)、参考例1の方法で得られたエポキシ化液状ポリイソプレン、ナフテン系オイル(商品名「Sunthene4240」、Sunoco,Inc製)および老化防止剤[商品名「ノクラック 6C」(N−フェニル−N’−1,8−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン)、大内新興社製]を、表2に示す配合量比でオープンロールを90℃に設定し、32分混練した。次いで、得られた混練物に、亜鉛華、ステアリン酸、硫黄、架橋促進剤[商品名「ノクセラーCZ」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド)、大内新興社製]、架橋助剤としてジシクロヘキシルアミンを表2に示す配合量比でオープンロールを60℃に設定し、10分混合して、架橋性ゴム組成物を得た。得られた架橋性ゴム組成物について、JIS K 6300に準拠して100℃でのムーニー粘度を測定し、ML1+4の値で加工性を評価した。この値が低いほど加工性が良好である。
〈2〉上記〈1〉で得られた架橋性ゴム組成物を、160℃で15分プレスすることで架橋し、厚さ2mmの架橋されたゴム組成物(架橋物)のシートを得た。得られた架橋物シートの硬度をJIS K 6250に準拠してタイプAのデュロメータで測定した。一方、得られた架橋物シートからダンベル状3号形試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251に準拠して引張試験を行って、300%モジュラス、破断強度および破断伸びを測定した。また、該架橋物シートからJIS K 6252に準拠して切込みなし無しアングル型試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6252に準拠して引裂き試験を行って、引裂き強度を測定した。結果を表2に示す。
〈3〉なお、上記〈1〉においてSBR、シリカ、エポキシ化液状ポリイソプレン、ナフテン系オイルおよび老化防止剤をオープンロールで32分混練し、得られた混練物に硫黄等の架橋剤および添加剤を添加せず、係る混練物を70℃で15分プレスして、厚さ1mmの未架橋物シートを得た。この未架橋物シートから直径8mmの円形試験片を打ち抜き、動的粘弾性測定(測定機種:レオメトリック サイエンティフィック社製ARES、測定条件:50℃、10Hz)によりひずみ(strain)強さに対する弾性率(G’)を測定した。結果を図1に示す。
比較例2
エポキシ化液状ポリイソプレンを添加しなかった以外は実施例2〜3と同様の操作を行い、架橋性ゴム組成物、架橋物シートおよび未架橋物シートを得た。得られた架橋性ゴム組成物の100℃でのムーニー粘度、架橋物シートの硬度、引張試験、引裂き試験の結果を表2に示す。また、未架橋物シートを用いた動的粘弾性の測定結果を図1に示す。
比較例3〜4
実施例2〜3において、エポキシ化液状ポリイソプレンの代わりに、参考例1の〈1〉で合成した液状ポリイソプレンを表2に示す配合量比で使用した以外は実施例2〜3と同様の操作を行い、架橋性ゴム組成物、架橋物シートおよび未架橋物シートを得た。得られた架橋性ゴム組成物の100℃でのムーニー粘度、架橋物シートの硬度、引張試験、引裂き試験の結果を表2に示す。また、未架橋物シートを用いた動的粘弾性の測定結果を図1に示す。

表2より、実施例2〜3および比較例3〜4で得られた架橋性ゴム組成物のムーニー粘度は比較例2で得られた架橋性ゴム組成物のムーニー粘度より低下しており、加工性が向上していることが分かる。
また、実施例2〜3で得られた架橋性ゴム組成物の架橋物は、比較例3〜4で得られた架橋性ゴム組成物の架橋物と比べ、300%モジュラス、引裂き強度が良好であることが分かる。液状ポリイソプレンの配合量を増やすと比較例3〜4に示すように300%モジュラス、引裂き強度が低下する傾向にあるが、エポキシ化液状ポリイソプレンを配合した本発明の架橋性ゴム組成物は300%モジュラス、引裂き試験において優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例2〜3および比較例2〜4において得られた未架橋物の動的粘弾性を測定して、50℃における弾性率(G’)のひずみ(strain)依存性を示したグラフである。
一般に、シリカを添加したゴム組成物中でのシリカの分散状態が悪い場合には、シリカ間の相互作用によりシリカが凝集構造を形成する。高ひずみ条件下ではこの凝集構造が破壊されるためG’の低下が起こる。一方、シリカを添加したゴム組成物中でのシリカの分散状態が良好な場合には、シリカの凝集構造が少ないため、高ひずみ条件下でもG’の低下が小さくなる。このため、各実施例および比較例における未架橋物の状態でのG’のひずみ依存性を測定することでシリカの分散状態の指標とすることができる。
図1より、実施例2〜3で得られた未架橋物シートは比較例2および比較例4の未架橋シートに比べ高ひずみ条件下のG’の低下が小さく、シリカの分散性が改良されていることが分かる。
なお、比較例3のG’曲線は実施例2のG’曲線とほぼ同等であるが、上記したように比較例3では架橋物での300%モジュラスが低下する。
【産業上の利用可能性】
本発明のゴム組成物は加工性に優れ、かつ、架橋剤を加えて架橋性ゴム組成物とした場合、力学物性が向上した架橋物を得ることができるので、タイヤ用途、工業用ベルト、工業用ゴムホースなどの工業用部材用途などに好適に使用することができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ジエン系ゴム、(2)シリカおよび(3)数平均分子量10000〜100000の範囲のエポキシ化液状ジエン系ゴムを含有してなるゴム組成物であって、ジエン系ゴム(1)100質量部に対してシリカ(2)を0.1〜150質量部、かつ、ジエン系ゴム(1)100質量部に対してエポキシ化液状ジエン系ゴム(3)を0.1〜30質量部含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載のゴム組成物と架橋剤を含有することを特徴とする架橋性ゴム組成物。
【請求項3】
請求の範囲第2項記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなる架橋物。

【国際公開番号】WO2004/072173
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504956(P2005−504956)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001317
【国際出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】