説明

ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】低コストで、十分な補強性、低燃費性、剛性、耐高シビアリティ摩耗性を有するタイヤを得ることができるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を5〜75質量部および石油系樹脂を2〜8質量部配合したゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いたベーストレッドおよび/またはクリンチを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年タイヤへの要求性能が高まる中、コストの低減も要求されている。コストを低減させる方法としては、炭酸カルシウムなどの無機充填剤を配合することなどが考えられる。しかし、炭酸カルシウムの補強性はカーボンブラックに比べて劣ることから、ゴムの破壊強度が損なわれてしまう。また、炭酸カルシウムは比重が2.7と大きいため、タイヤ全体の重量が増加し、車両の燃費が悪化することも懸念される。
【0003】
一方、リムとのチェーファリング部分であるクリンチ部は、重荷重および非常に強い熱履歴を受けるタイヤコンポーネントである。そのため、重荷重に耐えうる高強度、高耐摩耗性を有するゴム組成物をクリンチ部に用いる必要がある。
【0004】
特許文献1には、タイヤのコストを低減させる手段として、瀝青炭粉砕物または瀝青炭粉砕物と炭酸カルシウムを配合する方法が開示されている。しかし、補強性や剛性に関しては更なる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−153060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低コストで、十分な補強性、低燃費性、剛性、耐高シビアリティ摩耗性を有するタイヤを得ることができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ジエン系ゴム100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を5〜75質量部および石油系樹脂を2〜8質量部配合したゴム組成物である。
【0008】
本発明のゴム組成物は、前記瀝青炭粉砕物は平均粒径が0.1mm以下であり、比重が1.4以下であることが好ましい。
【0009】
本発明は、前記ゴム組成物を用いたベーストレッドを有する空気入りタイヤである。
本発明は、前記ゴム組成物を用いたクリンチを有する空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストで、十分な補強性、低燃費性、剛性、耐高シビアリティ摩耗性を有するタイヤを得ることができるゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るタイヤの断面図の右半分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ゴム組成物>
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム、瀝青炭粉砕物および石油系樹脂を含む。
【0013】
<ジエン系ゴム>
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上を含むゴム成分が好適である。
【0014】
<瀝青炭粉砕物>
本発明のゴム組成物中に含有される瀝青炭(bitumious coal)は、石炭一般を含む。このような瀝青炭は、粉砕物としてゴム組成物に含有される。
【0015】
瀝青炭粉砕物は、カーボンを含んでおり、ジエン系ゴム成分とのなじみが良好であるので、ジエン系ゴムを補強できる。また、瀝青炭粉砕物は、オイル分を含んでいるためジエン系ゴム中への分散性が良好であり、強度の低下の原因となる凝集塊を生じにくい。また、瀝青炭粉砕物は安価に入手可能である。
【0016】
瀝青炭粉砕物はジエン系ゴム100質量部に対して5〜75質量部、好ましくは、10〜60質量部、さらに好ましくは20〜40質量部配合されている。瀝青炭粉砕物の配合量が5質量部未満であると、コストメリットが少ない。一方、瀝青炭粉砕物の配合量が75質量部を超えると、破断強度や破断伸びが低下し、ベーストレッド部に用いたときにカットチップ性能を向上させることができない。また複素弾性率も低下し、クリンチに用いたときに必要な剛性を得ることができない。
【0017】
瀝青炭粉砕物の平均粒径は、0.1mm以下であり、好ましくは0.05mm以下である。平均粒径を0.1mm以下とすることによって、ゴム組成物中に良好に分散できるので、得られるゴム組成物の強度を向上できる。
【0018】
瀝青炭粉砕物の比重は1.4以下が好ましく、さらに好ましくは1.1以下である。比重を1.4以下とすることによって、ゴム組成物全体の比重を減少でき、ゴム組成物を用いてなるタイヤを装着した車体の燃費を十分に低減することができる。
【0019】
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物は、補強用充填剤を含有することが好ましい。補強用充填剤としては、従来タイヤ用ゴム組成物において慣用されているものの中から任意に選択して用いることができるが、主としてカーボンブラックが好ましい。
【0020】
カーボンブラックは、特に限定されず、汎用ゴム一般に用いられるものを使用できる。カーボンブラックは、たとえばHAF、ISAF、SAFなどのチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、またはサーマルブラックなどを用いることができる。
【0021】
カーボンブラックは、たとえば窒素吸着比表面積が50〜200m2/g、24M4 DBP吸油量が50〜130ml/100g、CTAB吸着比表面積が50〜170m2/gとなるような凝集サイズ、および多孔性を有することが特に好ましい。この場合、ゴム組成物は硬くなり過ぎないとともに、十分な耐摩耗性を得ることができる。また、比重が1.5〜1.9のものを用いることが好ましい。
【0022】
カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して10〜150質量部が好ましく、15〜100質量部であることがより好ましい。カーボンブラックの配合量を10質量部以上とすることによって、耐摩耗性を向上でき、150質量部以下とすることによって、発熱の増加を抑制できる。
【0023】
<石油系樹脂>
本発明のゴム組成物中に含有される石油系樹脂は、特に制限されるわけではないが、脂肪族系石油樹脂、クマロン樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂などを用いることができる。中でも、脂環族系石油樹脂が好ましい。石油系樹脂を配合することで、耐カットチップ性能が向上するため、タイヤの耐久性を向上させることができる。
【0024】
石油系樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して2〜8質量部であり、3〜8質量部が好ましい。石油系樹脂の配合量が1質量部未満であると、破断強度が低下し、ベーストレッド部に用いたときにカットチップ性能を向上させることができない。またクリンチ部に用いたときに剛性を向上させることができない。一方、石油系樹脂の配合量が8質量部を超えると、転がり抵抗が悪化し、タイヤの発熱が大きくなる。またクリンチ部に用いたときに耐高シビアリティー摩耗性が悪化する。
【0025】
<軟化剤>
本発明では練り加工性を一層向上させるために軟化剤を併用しても良い。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、等が挙げられる。
【0026】
<老化防止剤>
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを適宜選択して使用することが可能である。
【0027】
<加硫助剤>
加硫助剤としては、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華)などを使用することができる。
【0028】
<加硫剤>
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用できる。有機過酸化物としては、たとえばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。
【0029】
<加硫促進剤>
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。
【0030】
<その他の配合剤>
本発明のゴム組成物には、上記の他に、シリカなどの補強剤、可塑剤、発泡剤、スコーチ防止剤、および加工助剤などの通常のゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
【0031】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物は、一般的に使用される公知の方法を用いて製造でき、上記配合量のゴム組成物の混合物をバンバリーミキサーやオープンロール等のゴム混練装置を用いて混練し、たとえば140〜150℃で25〜35分間加硫する方法等を用いることができる。
【0032】
<タイヤの構造>
本発明のタイヤの構造は、たとえば図1のタイヤ断面の右上半分に例示されるものである。タイヤ1は、トレッド部7を構成するキャップトレッドゴム7aとベーストレッドゴム7b、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部を構成するサイドウォールゴム8と、各サイドウォール部の内方端に位置するクリンチ部を構成するクリンチゴム3およびリム上部に位置するチェーファーを構成するチェーファーゴム2とを備える。またクリンチ部、チェーファー間にはカーカス5が架け渡されるとともに、このカーカス5のタイヤ半径方向外側にブレーカー部を構成するブレーカーゴム9が配される。該カーカス5は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て、ビードコア6と、該ビードコア6の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス4との廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返され、折返し部によって係止される。ブレーカー部は、ブレーカーコードを配列した2枚以上のブレーカープライからなり、各ブレーカーコードがブレーカープライ間で交差するよう向きを違えて重置している。
【0033】
本発明のタイヤは、ベーストレッドゴム7bおよび/またはクリンチゴム3に瀝青炭粉砕物と石油系樹脂を配合したゴム組成物を用いて得られる。すなわち、本発明のタイヤは、このようなベーストレッドおよび/またはクリンチを備える限り、従来公知のいかなる構造を有するタイヤをも含むものである。
【0034】
<タイヤの製造方法>
本発明に係るゴム組成物が用いられたタイヤは、ゴム組成物の配合成分を、たとえばバンバリーミキサーやニーダー等により130℃以上160℃以下で混練して、ゴム組成物の未架橋物を調製し、該未架橋物をタイヤのベーストレッド部および/またはクリンチ部に適用して加硫成形することによって形成されることができる。
【実施例】
【0035】
<ゴム組成物の作製>
表1に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、バンバリーを用い約150℃で5分間混練し、さらに硫黄および加硫促進剤を加え、2軸オープンロールを用い約80℃で5分間練り込んで未加硫ゴム組成物を得た。該未加硫ゴム組成物を用いてゴムシートを作製し、150℃、35分、25kgf(245.16625N)の条件で加硫を行なって加硫ゴム組成物を作製した。得られた加硫ゴム組成物について、以下の測定を行った。
【0036】
[実施例1、比較例1〜5]
実施例1および比較例1〜5の加硫ゴム組成物について、ベーストレッドへの適用可能性を評価するため、以下の測定を行った。なお、比較例5は従来例である。
【0037】
<コスト>
各材料単価に各材料の使用質量を掛けて配合コストを算出する方法でコストの評価を行ない、比較例5を100として指数表示した。数値が小さい程コスト低減効果が良好である。
【0038】
<比重>
比較例5の加硫ゴム組成物の比重を100としてその指標を示し、指標が小さいほど比重が軽いため、燃費性能が優れていることを示す。
【0039】
<破断強度、破断伸び>
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張特性の求め方」に準じて、前記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型ゴム試験片を用いて評価を行なった。各配合の加硫ゴム組成物について、破断強度TB(MPa)および破断伸びEB(%)をそれぞれ測定し、比較例5を100として各配合について下記計算式を用いて指数表示した。破断強度指数および破断伸び指数のいずれも、数値が大きいほど強度が優れていることを示している。
【0040】
(破断強度指数)=(各配合の破断強度)/(比較例5の破断強度)×100
(破断伸び指数)=(各配合の破断伸び)/(比較例5の破断伸び)×100
<転がり抵抗>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%の条件下で、各加硫ゴム組成物のtanδを測定した。比較例5のtanδを100として、各配合の加硫ゴム組成物について下記計算式を用いて指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性であることを示している。
【0041】
(転がり抵抗指数)=(比較例5のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2、比較例6〜10]
実施例2および比較例6〜10の加硫ゴム組成物について、クリンチへの適用可能性を評価するため、以下の測定を行った。なお、比較例10は従来例である。
【0043】
<コスト>
材料単価に各材料の使用質量を掛けて配合コストを算出する方法でコストの評価を行ない、比較例10を100として指数表示した。数値が小さい程コスト低減効果が良好である。
【0044】
<比重>
比較例10の加硫ゴム組成物の比重を100としてその指標を示し、指標が小さいほど比重が軽いため、燃費性能が優れていることを示す。
【0045】
<粘弾性試験>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%の条件下で、各加硫ゴム組成物の複素弾性率E*およびtanδを測定した。比較例10のE*およびtanδを100として、各配合の加硫ゴム組成物について下記計算式を用いて指数表示した。複素弾性率指数が大きいほど剛性が高く、tanδ指数が大きいほど発熱が大きいことを示している。
【0046】
(複素弾性率指数)=(各配合の複素弾性率)/(比較例10の複素弾性率)×100
(tanδ指数)=(各配合のtanδ)/(比較例10のtanδ)×100
<破断強度>
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張特性の求め方」に準じて、前記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型ゴム試験片を用いて評価を行なった。各配合の加硫ゴム組成物について、破断強度TB(MPa)を測定し、比較例10を100として各配合について下記計算式を用いて指数表示した。数値が大きいほど強度が優れていることを示している。
【0047】
(破断強度指数)=(各配合の破断強度)/(比較例10の破断強度)×100
<耐高シビアリティ摩耗性>
ピコ摩耗試験機を用いてASTM D228に準拠して測定した。測定値は比較例10の摩耗量を100として各配合について下記計算式を用いて指数表示した。数字が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示している。
【0048】
(耐高シビアリティ摩耗性指数)=(比較例10の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
SBR:住友化学(株)製のSBR1502
NR:タイ製のRSS#3
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR−150B
カーボンブラック(1):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351(窒素吸着比表面積:64m2/g、24M4 DBP吸油量:102ml/100g)
カーボンブラック(2):三菱化学(株)製のN330(窒素吸着比表面積:78m2/g、24M4 DBP吸油量:85ml/100g、CTAB吸着比表面積:78m2/g)
瀝青炭粉砕物:コールフィラー製のオースチンブラック325(炭素含量:77%、平均粒径:5μm、比重:1.31)
プロセスオイル:ジャパンエナジー製のプロセスNC300S
石油系樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(化学名:脂肪族系C5炭化水素樹脂)
ワックス:(株)日本精蝋製のオゾエース−0355
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<評価結果>
実施例1は、SBR100質量部に対して瀝青炭粉砕物を40質量部および石油系樹脂を3質量部含むゴム組成物である。比較例5(従来例)に比べて転がり抵抗を低減させつつ、コストを低減させることができ、ベーストレッドへの適用に適している。
【0052】
比較例1は、SBR100質量部に対して瀝青炭粉砕物を4質量部および石油系樹脂を3質量部含むゴム組成物である。瀝青炭粉砕物の含有量が少なく、比較例5(従来例)に比べてコストメリットが小さい。
【0053】
比較例2は、SBR100質量部に対して瀝青炭粉砕物を80質量部および石油系樹脂を3質量部含むゴム組成物である。瀝青炭粉砕物の含有量が多く、比較例5(従来例)に比べて破断強度が大幅に低下し、カットチップ性能が悪化する。
【0054】
比較例3は、SBR100質量部に対して瀝青炭粉砕物を40質量部および石油系樹脂を1質量部含むゴム組成物である。石油系樹脂の含有量が少なく、比較例5(従来例)に比べて破断強度が低下し、カットチップ性能が悪化する。
【0055】
比較例4は、SBR100質量部に対して瀝青炭粉砕物を40質量部および石油系樹脂を10質量部含むゴム組成物である。石油系樹脂の含有量が多く、比較例5(従来例)に比べて転がり抵抗が悪化する。
【0056】
実施例2は、NR40質量部およびBR60質量部からなるゴム成分100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を40質量部および石油系樹脂を3質量部含むゴム組成物である。比較例10(従来例)に比べて破壊強度や耐高シビアリティ摩耗性を損なうことなく、コストを低減させることができ、クリンチへの適用に適している。
【0057】
比較例6は、NR40質量部およびBR60質量部からなるゴム成分100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を4質量部および石油系樹脂を3質量部含むゴム組成物である。瀝青炭粉砕物の含有量が少なく、比較例10(従来例)に比べてコストメリットが小さい。
【0058】
比較例7は、NR40質量部およびBR60質量部からなるゴム成分100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を80質量部および石油系樹脂を3質量部含むゴム組成物である。瀝青炭粉砕物の含有量が多く、比較例10に比べて複素弾性率や破壊強度が大幅に低下し、必要な剛性が得られない。
【0059】
比較例8は、NR40質量部およびBR60質量部からなるゴム成分100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を40質量部および石油系樹脂を1質量部含むゴム組成物である。石油系樹脂の含有量が少なく、比較例10(従来例)に比べて破断強度が低下し、剛性を向上させることができない。
【0060】
比較例9は、NR40質量部およびBR60質量部からなるゴム成分100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を40質量部および石油系樹脂を10質量部含むゴム組成物である。石油系樹脂の含有量が多く、比較例10(従来例)に比べて。tanδ値が上がり、発熱が大きくなり、また耐高シビアリティ摩耗性が悪化する。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 タイヤ、2 チェーファーゴム、3 クリンチゴム、4 ビードエーペックス、5 カーカス、6 ビードコア、7 トレッド部、7a キャップトレッドゴム、7b ベーストレッドゴム、8 サイドウォール部、9 ブレーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対して、瀝青炭粉砕物を5〜75質量部および石油系樹脂を2〜8質量部配合したゴム組成物。
【請求項2】
前記瀝青炭粉砕物は平均粒径が0.1mm以下であり、比重が1.4以下である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のゴム組成物を用いたベーストレッドを有する空気入りタイヤ。
【請求項4】
請求項1または2記載のゴム組成物を用いたクリンチを有する空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−159375(P2010−159375A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3935(P2009−3935)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】