説明

ゴム組成物及びそれを用いたゴム部品

【課題】オイルシールなどの密封用ゴム部品に用いられるゴム組成物において、低摩擦で、かつ耐摩耗性及び被着体との接着性に優れたゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明のゴム組成物では、フッ素ゴムなどのベースゴム100重量部に対し、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体を3〜100重量部含有させる。このゴム組成物は、フッ素樹脂粉体の含有によって低摩擦となり、ここで特に本発明ではプラズマ照射処理によってフッ素樹脂粉体の表面が活性化するため、フッ素樹脂粉体とベースゴムとの結合力が増加して耐摩耗性が向上するとともに、金属などの被着物との接着性も良好なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関し、特に、オイルシールやガスケットなどの密封用ゴム部品に好適に用いられるゴム組成物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
密封装置として例えばオイルシールは、動作軸に摺接するゴム製のリップを備えて構成されている。従来このようなオイルシールにおいては、リップと動作軸との摺接部における摩擦を低減し、トルクを低く抑えるために、例えば下記の特許文献1に開示されるように、リップの表面に樹脂によるコーティング層を形成したものがある。
【0003】
しかしながら、このようなコーティング層を形成した密封装置では、コーティング層の素材自体に伸びがないため、ゴムの変形に対する追従性に劣り、コーティング層に亀裂が入りやすいという欠点を有していた。
【0004】
そこで、ゴムそのものを低摩擦化することが考えられるが、そのための技術としては、例えば下記の特許文献2に開示される如く、ゴム組成物にフッ素樹脂の粉体を含有させることによって低摩擦化を図るようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−217746号公報
【特許文献2】特開平09−086687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献2の技術では、フッ素樹脂粉体の表面が不活性なためにゴムマトリクスとの結合力に欠けるので、大量に添加すると強度低下をもたらし、耐摩耗性が劣化するという不具合があった。またフッ素樹脂粉体の表面が不活性なために、大量に添加すると金属などの被着体との結合を阻害し接着性が劣化するという不具合があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、低摩擦化を可能とするゴム組成物において、耐摩耗性及び被着体との接着性に優れたゴム組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明の請求項1に記載の発明は、オイルシールなどの密封用ゴム部品に用いられるゴム組成物において、ゴム100重量部に対し、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体を3〜100重量部含有せしめてなるものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、前記ゴムが、フッ素ゴムまたはNBRもしくは水素化NBRであることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のゴム組成物を用いて成型されたゴム部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴム組成物は、ゴムにフッ素樹脂粉体を含有させることで低摩擦化が可能となり、ここで特に本発明ではプラズマ照射処理によってフッ素樹脂粉体の表面が活性化するため、フッ素樹脂粉体とゴムとの結合力が増加して耐摩耗性が向上するとともに、金属などの被着物との接着性も良好なものとなる。そして、このゴム組成物を用いてゴム部品を成型することにより、低摩擦で、かつ耐摩耗性及び被着体との接着性に優れた高品質のゴム部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用される往復動軸用オイルシールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されるゴム部品の一例として、車輌の懸架用のショックアブソーバ等に装着される往復動軸用オイルシールを示す。
【0014】
この往復動軸用オイルシール1は、ゴム組成物からなる弾性材料3に断面略L字形の補強用の金具4を内設してシール本体2が構成され、このシール本体2の内周部には弾性材料3からなるシールリップ6及びダストリップ9が形成されている。
【0015】
そして、このシール本体2の外周部の装着部分5をハウジング(図示せず)の内周面や溝等に嵌合させるとともに、シール本体2の内周部のシールリップ6をその外周側に装着したスプリング7による緊迫力によって往復動軸であるシャフト8に密着するように摺接させることで作動油の漏洩防止を図り、さらにダストリップ9をシャフト8に密着するように摺接させて防塵を図る構造となっている。
【0016】
このようなオイルシール1に用いられる弾性材料3としては、シャフト8に対し低摩擦で、かつ耐摩耗性に優れ、さらには被着体である金具4との接着性にも優れたゴム組成物が求められる。本発明はこれに好適なゴム組成物として、フッ素ゴムなどのベースゴムに、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体を含有させてなるものである。
【0017】
フッ素樹脂粉体としては、フッ素を含有するモノマーを重合または他の適当なモノマーと共重合させたものであれば特に制限はない。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系(THV)、ポリビニリデンフルオライド系(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン系(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン系(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン系(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系(PFA)などの従来公知の種々のフッ素樹脂が例示される。中でも、PTFEは、表面エネルギーが低く接着性に乏しいため、本発明が特に有用で、ゴムへの分散性を考慮して、PTFEを粉砕して調整した紛状潤滑剤を使用するとよい。PTFEの紛状潤滑剤としては、ユノンP−300,P−310(日本バルカー工業株式会社製商品名)、ホスタフロンVP9202,VP9205(ヘキスト(Hoechst AG:独)社製商品名)、ルブロンL−5(ダイキン工業株式会社製商品名)、TLP−10F,TLP−10F−1(三井・デュポン フロロケミカル株式会社製商品名)、L−170(ICI(英)社製商品名)などが例示される。
【0018】
そして本発明は、このフッ素樹脂粉体の表面にプラズマを照射することにより活性点を導入し、表面を疎水性から親水性にしたものである。このフッ素樹脂粉体へのプラズマ照射は低圧の雰囲気ガスの中で実施され、ここで用いる雰囲気ガスに特に制限はなく、通常、プラズマ照射に使用されるアルゴン、水蒸気、窒素、酸素、水素、空気、アンモニア、ヘリウム、CF、ならびにこれらの二種以上の混合ガスを使用できるが、プラズマ照射処理によるフッ素樹脂粉体の表面改質効率向上の観点からは、アルゴンもしくはヘリウム、窒素などの不活性ガスが好ましい。
【0019】
プラズマ照射の際の電源出力周波数についても特に制限はないが、プラズマ照射処理によるフッ素樹脂を主成分とする基体表面のエッチング効率の向上の観点からは、50W〜1000Wであるのが好ましい。即ち、当該電源出力周波数が50W未満であると、充分な接着力を得ることができない(プラズマ照射処理による表面改質が不充分である)傾向にあるため好ましくない。また当該電源出力周波数が1000Wを超えると、特殊で高価なプラズマ照射装置を用いる必要があり、コストが高くなる傾向にあるため好ましくない。
【0020】
プラズマ照射処理の時間は、圧力、雰囲気ガス、温度、さらには電源出力周波数によって様々であり、特に制限はされないが、上述した被着体との接着性及び生産効率を考慮すると、5分間〜60分間の照射を行うことが好ましい。即ち、上記照射時間が5分間未満であると、充分な接着力を得ることができない傾向にあり、また60分間を超えると、生産の効率が低下するので好ましくない。
【0021】
またプラズマ照射の電源のプラズマ励起電界周波数には特に制限はなく、直流、50Hzなどの定周波交流、1kHz〜100kHz程度の交流、13.56MHzなどのラジオ波、2.45GHzなどのマイクロ波などが利用できるが、好ましくは20〜50kHzの交流もしくは13.56MHzなどのラジオ波である。
【0022】
このようなプラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量は、フッ素ゴム100重量部に対して3〜100重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲が適当である。この場合、プラズマ処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量が3重量部より少ないと添加による低摩擦化の効果が殆ど認められず、100重量部を越えるとゴム物性が大幅に低下するので好ましくない。
【0023】
ベースゴムに用いられるフッ素ゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えばフッ化ビニリデン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル系、パーフロロエーテル系、フルオロシリコーン系等が挙げられる。
【0024】
フッ化ビニリデン系としては、二元系(フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体)や三元系(フッ化ビニリデン、六フッ化プロピレン、四フッ化エチレンの三元共重合体)などが挙げられ、これらのフッ素ゴムとしてはダイニオンの商品名で知られる住友3M株式会社製のFC−2120、FC−2121、FC−2122、FC−2123、FC−2144、FC−2145、FC−2152、FC−2170、FC−2174、FC−2176、FC−2177、FC−2178、FC−2180、FC−2181、FC−2211、FC−2230、FC−2250、FC−2260、FC−3009、FLS−2530、FLS−2650、FLS−2690、FT−2320、FT−2350、FT−2430、FT−2481、FX−6792、FX−9038、FX−9143等や、バイトンの商品名で知られるデュポンエラストマー株式会社製のA、A−35、A−100、A−200、A−201C、A−202C、A−203C、A−401C、A−402C、A−500、A−HV、B、B−401、B−50、B−600、B−70N、B−910、E−430、E−45、E−60、E−60C、GF等や、ダイエルの商品名で知られるダイキン工業株式会社製のG−201、G−501、G−601、G−602、G−603、G−621、G−701、G−702、G−704、G−751、G−755、G−763、G−801、G−901、G−902、G−912等や、テクノフロンの商品名で知られるソルベイソレクシス社(Solvay Solexis:イタリア)製のTN、TN50、TN80、N215、N535、N605K、N935、FOR421、FOR423、FOR531、FOR532、FOR70、FOR45、FOR70BI、FOR65BI、FOR45BI、FOR45Cl、FOR45C2、FOR60K、FOR60Kl、FOR800HE、FOR50E、FORLHF、FORTF、FORTF50、FOR9350、FOR9352、FOR9550、FORTHF等が例示される。
【0025】
テトラフルオロエチレン−プロピレン系としては、アフラスの商品名で知られる旭硝子株式会社製の100H、100S、150E、150L、150P、200等が例示される。
【0026】
テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル系としては、バイトンGLT、バイトンGFLT(以上、デュポンエラストマー株式会社製商品名)が例示される。
【0027】
パーフロロエーテル系としては、SIFELの商品名で知られる信越化学工業株式会社製の200、210、400等が例示される。
【0028】
フルオロシリコーン系としては、LS−63U、LS422U(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名)やFE251U、FE261U、FE271U、FE351U、FE371U(以上、信越化学工業株式会社製商品名)が例示される。
【0029】
フッ素ゴムの加硫剤としては、従来公知の加硫剤が適用でき、ポリオール加硫系、アミン加硫系、パーオキサイド加硫系などが例示される。
【0030】
ポリオール加硫のフッ素ゴムとしては、予め加硫剤を内添したタイプ、例えば、ダイニオンFC−2120、FC−2121、FC−2122、FC−2123、FC−2144、FC−2152、FC−2170、FC−2174、FC−2176、FC−2177、FC−2181、FC−3009、FT−2320、FT−2350、FX−9143(以上、住友3M株式会社製商品名)、バイトンE−60C(デュポンエラストマー株式会社製商品名)、ダイエルG−602、G−603、G−607、G−621、G−655、G−701、G−702、G−704、G−751、G−755、G−763(以上、ダイキン工業株式会社製商品名)、テクノフロンFOR70、FOR70BI、FOR45、FOR45BI、FOR65BI、FOR45Cl、FOR60K、FOR50E、FORLHF、FORTF、FORTHF(以上、ソルベイソレクシス社製商品名:イタリア)などでは加硫剤や加硫促進剤を特に添加する必要はないが、加硫剤および加硫促進剤を添加していない生ゴムタイプのフッ素ゴム、例えば、ダイニオンFC−2145、FC−2178、FC−2230、FT−2430、FT−2481(以上、住友3M株式会社製商品名)、バイトンB、B−70、E−45、E−60(以上、デュポンエラストマー株式会社製商品名)、ダイエルG−201、501、801(以上、ダイキン工業株式会社製商品名)、テクノフロンNH、NM、NMB、NML、NMLB、TN、TN50、TH(以上、ソルベイソレクシス社製商品名:イタリア)、FR−5311、FR−5311L、FR−5312、FR−5312N、FR−5313、FR−5520、FRX−5020、FRX−5420、FRX−5720、FRX−5850(以上、旭化成工業株式会社製商品名)ではハイドロキノンやビスフェノールのような加硫剤を添加する必要がある。このポリオール加硫剤は通常は貯蔵安定性や分散性を考慮して含有量が50%程度のフッ素ゴムマスターバッチであり、キュラティブ#30(デュポンエラストマー株式会社製商品名)、加硫剤V−5(ダイキン工業株式会社製商品名)、テクノフロンMl(ソルベイソレクシス社製商品名:イタリア)、AC−30(旭化成工業株式会社製商品名)が例示され、4級フォスフォニウム塩例えば、フォスフォニウムクロライドのような加硫促進剤と併用使用される。この加硫促進剤も通常は含有量が25%程度のフッ素ゴムマスターバッチとなっており、キュラティブ#20(デュポンエラストマー株式会社製商品名)、テクノフロンM2(ソルベイソレクシス社製商品名:イタリア)、AC−20(旭化成工業株式会社製商品名)が例示され、これらの加硫剤が0.2〜6重量部、加硫促進剤が0.5〜4.5重量部の範囲で添加される。
【0031】
さらに、ポリオール加硫の場合には加硫の際に生じる酸性物質を中和するための受酸剤と水酸化カルシウムを添加する必要がある。受酸剤としてはキョーワマグ150(協和化学工業株式会社製商品名)やスターマグ−H(神島化学工業株式会社製商品名)やMagliteD(シー.ピー.ホール(C.P.Hall)社製商品名:米国)のような高活性酸化マグネシウム、キョーワマグ30(協和化学工業株式会社製商品名)やスターマグ−L(神島化学工業株式会社製商品名)やMagliteA(シー.ピー.ホー社製商品名:米国)のような低活性酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛−二塩基性亜リン酸鉛などが例示され、フッ素ゴム100重量部に対して3〜30重量部の範囲で添加される。
【0032】
また、水酸化カルシウムは加硫をよりタイトにするために添加されるポリオール加硫系では必須成分で、カルビット(近江化学工業株式会社製商品名)やRhenofit CF(レイン・ケミー(RHEIN−CHEMIE)社製商品名)などが例示され、通常フッ素ゴム100重量部に対して2〜8重量部の範囲で添加される。
【0033】
アミン加硫系は、加硫剤を含まない生ゴムタイプのフッ素ゴム、例えば、ダイニオンFC−2145、FC−2178、FC−2230、FC−2430、FC−2481(以上、住友3M株式会社製商品名)、テクノフロンN、T、TN、TN50(以上、ソルベイソレクシス社製商品名:イタリア)、バイトンA、A−35、A−HV、B、B−50(以上、デュポンエラストマー株式会社製商品名)ダイエルG−201、G−501(以上、ダイキン工業株式会社製商品名)100重量部に対しアミン加硫剤1.5〜5重量部と必要に応じて受酸剤3〜25重量部にて構成される。アミン加硫剤としては、Diak No.1(デュポンエラストマー株式会社製商品名)や加硫剤V−1(ダイキン工業株式会社製商品名)やケミノックスAC−6(株式会社NOK製商品名)等のヘキサメチレンジアミンカルバメート、Diak No.3(デュポンエラストマー株式会社製商品名)や加硫剤V−3(ダイキン工業株式会社製商品名)等のN,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、Diak No.4(デュポンエラストマー株式会社製商品名)や加硫剤V−4(ダイキン工業株式会社製商品名)やケミノックスAC−9(株式会社NOK製商品名)等の4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどが例示される。また、受酸剤としてはポリオール加硫系と同様に高活性酸化マグネシウム、低活性酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどが例示される。
【0034】
パーオキサイド加硫系は、加硫剤の添加されていない生ゴムタイプのフッ素ゴム、例えばダイエルG−801、G−901、G−902、G−912(以上、ダイキン工業株式会社製商品名)、フローレルFC−2260、FC−2690、FLS−2650(以上、住友3M株式会社製商品名)、バイトンGF、GFLT、GLT(以上、デュポンエラストマー株式会社製商品名)100重量部に対してジ−t−ブチルパーオキシアルカンのような過酸化物0.5〜6重量部程度とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)のような共架橋剤2〜8重量部程度との組み合わせで構成される。この加硫系は熱により過酸化物が分解し、生成したメチルラジカルがタイクと反応し、これがフッ素ゴムポリマー中のハロゲンを引き抜き架橋点を形成するものである。
【0035】
フッ素ゴムなどに使用される過酸化物としてはパーオキシケタールやジアルキルパーオキサイドが適用でき、パーオキシケタールとしてはパーヘキサ3Mやその含有量40%品のパーヘキサ3M−40(日本油脂株式会社製商品名)のようなl,l−(ビスt−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、パーヘキサVやその含有量40%品のパーヘキサV−40(日本油脂株式会社製商品名)のようなn−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレートが例示され、ジアルキルパーオキサイドとしてはパークミルDやその含有量40%品のパークミルD−40(日本油脂株式会社製商品名)のようなジクミルパーオキサイド、パーブチルPやその含有量40%品のペロキシモンF−40(日本油脂株式会社製商品名)のようなα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、パーヘキサ2.5Bやその含有量40%品のパーヘキサ2.5B−40(日本油脂株式会社製商品名)のような2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが例示される。
【0036】
さらにベースゴムとしては、フッ素ゴムの他にNBRを好適に用いることができる。NBRはアクリロニトリルとブタジエンとの共重合体であり、カルボキシル基含有NBRや水素化NBRや部分架橋型NBRを含む。
【0037】
NBRの具体的なグレードとしては、ニポール DN003,DN009,1041,1041L,1031,1001,DN101,DN101L,DN103,DN115,1042,1042AL,1052J,1032,DN200,DN201,DN201,DN202,DN202H,DN206,DN207,DN212,DN215,DN219,DN223,DN225,1043,DN300,DN302,DN302H,DN306,DN315,DN401,DN401L,DN401LL,DN402,DN406,DN407,1072J,DN631,DN1201,DN1201L,DN224,DN1105,DN1205,DN1305,1203JNS,DN502SCR,DN508SCR,PB5501NF,PB5501LN,PB5502NF,VN1000(以上、日本ゼオン株式会社製商品名)、JSR N215L、N222L、N222SH、N220S、N220SH、N224SH,N235S,N230SV,N230SL,N230S,N230SH,N232S,N232SH,N238H,N231L,N231H,N237,N237H,N239SV,N236H,N241,N241H,N240S,N242S,N251H,N250S,N260S,N520,N530,N640H,N640,N202S,N201,N210S,N211SL,PN20HA,PN30A(以上、JSR株式会社製商品名)などが例示される。
【0038】
水素化NBRとしては、Zetpol 1010,1020,2000,2010,2020,2020L,3110,3120,3310,4310,4320(以上、日本ゼオン株式会社製商品名)、Therban A3406,A3407,A3607,A3907,A4307,A4309,B3627,B3629,C3446,C3467,C4367,C4369,LT2007,LT2057,LT2157(以上、LANXESS社(ドイツ)製商品名)などが例示される。
【0039】
このようなNBRをベースゴムに用いる場合、ニトリル量の調整などでニトリル量の異なるNBRをブレンドしてもよいし、あるいは、耐熱性、耐薬品性、耐候性などの向上目的で、水素化NBRやカルボキシル基含有NBRなどをブレンドしてもよい。
【0040】
さらにベースゴムとしては、フッ素ゴムやNBRの他に、アクリルゴムやシリコーンゴムを用いることもできる。
【0041】
さらにオイルシール用のゴム組成物においては、ベースゴム100重量部に対し、1〜30重量部の範囲で補強性充填剤としてカーボンブラックを添加する。
カーボンブラックとしては、旭#90(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN110,N134(以上、昭和キャボット株式会社製商品名),シースト9(東海カーボン株式会社製商品名),ダイヤブラック−A(三菱化学製商品名)などのSAFカーボン(平均粒径18〜22μm)、シースト9H(東海カーボン株式会社製商品名)などのSAF−HSカーボン(平均粒径20μm前後)、旭#80(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN220(昭和キャボット株式会社製商品名),シースト6(東海カーボン株式会社製商品名),ダイヤブラック I,N220M(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのISAFカーボン(平均粒径19〜29μm)、旭#75(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN339(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストKH(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックN339(三菱化学株式会社製商品名)などのN−339カーボン(平均粒径24μm前後)、旭#80L(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN219(昭和キャボット株式会社製商品名),シースト600(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックLI(三菱化学株式会社製商品名)などのISAF−LSカーボン(平均粒径21〜24μm)、旭#78(旭カーボン株式会社製商品名),シースト5H(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラック II(三菱化学株式会社製商品名)などのI−ISAF−HSカーボン(平均粒径21〜31μm)、旭#70(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN330(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストS(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラック−H(三菱化学株式会社製商品名)などのHAFカーボン(平均粒径26〜30μm)、旭#70H(旭カーボン株式会社製商品名),シースト3H(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラック−SH(三菱化学株式会社製商品名)などのHAF−HSカーボン(平均粒径22〜30μm)、旭#70IH(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN351(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストNH(東海カーボン株式会社製商品名)などのN−351カーボン(平均粒径29μm前後)、旭70L(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN326(昭和キャボット製商品名),シースト300(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックLH(三菱化学株式会社製商品名)などのHAF−LSカーボン(平均粒径25〜29μm)、旭70IN(旭カーボン株式会社製商品名),シーストN(東海カーボン製商品名)などのLI−HAFカーボン(平均粒径29μm前後)、旭60H(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックMAF(昭和キャボット株式会社製商品名),シースト116(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックN550M,SF,M(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのMAFカーボン(平均粒径30〜35μm)、旭#60,#60U(以上、旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN550(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストSO,FM(以上、東海カーボン株式会社製商品名),ダイヤブラック−E,EY(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのFEFカーボン(平均粒径40〜52μm)、旭#50,#50U,#51(以上、旭カーボン株式会社製商品名),シーストS(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックR(三菱化学株式会社製商品名)などのSRFカーボン(平均粒径58〜94μm)、旭#35(旭カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックN760M,LR(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのSRF−LMカーボン、旭#55(旭カーボン株式会社製商品名),シーストV(東海カーボン株式会社製商品名)などのGPFカーボン(49〜84μm)が例示される。また、5重量部以下の少量のカーボンブラックを顔料目的に使用して黒色にフッ素ゴム組成物を着色してもよい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明のより具体的な実施例を表1に示すが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0043】
〔フッ素樹脂粉体のプラズマ処理〕
プラズマ発生装置(独 Diener electronic社製・Pico−UHP型)を使用した粉体状材料処理装置にフッ素樹脂粉体を投入し、下記条件にてフッ素樹脂粉体にプラズマ照射処理を施した。フッ素樹脂粉体としては、ユノンP−310(日本バルカー工業株式会社製商品名)からなるフッ素樹脂粉体を用いた。照射条件は圧力:0.3mbr、雰囲気ガス:アルゴン、温度:60℃、電源出力:200W、照射時間:30分間、プラズマ励起電界周波数:13.56MHzである。
【実施例1】
【0044】
ベースゴムとしてフッ素ゴム(ダイニオン2177:住友3M株式会社製商品名)を100重量部、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体(ユノンP−310)を10重量部、MTカーボン(サーマックスN990:カンカーブ社製商品名)を25重量部、さらに受酸剤としての高活性酸化マグネシウム(キョーワマグ150:協和化学工業株式会社製商品名)を3重量部、水酸化カルシウム(カルビット:近江化学工業株式会社製商品名)を6重量部の割合で混合し、本発明によるゴム組成物を作成した。
そして、このゴム組成物を用いて図1の如き往復動軸用オイルシール(内径31.5mm)及び接着性試験用のテストピース(2mm厚)を成型した。ここでゴムが接着する被着体としてはパーカー処理を施したSPCC材を用い、接着剤にはシラン系接着剤であるケムロック607(ロード・ファー・イースト社製商品名)を用いた。加硫は、170℃で10分間の加硫の後、200℃で24時間の二次加硫を行った。
【実施例2】
【0045】
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を20重量部に変更した。
【実施例3】
【0046】
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を30重量部に変更した。
【実施例4】
【0047】
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を40重量部に変更した。
【実施例5】
【0048】
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を50重量部に変更した。
【実施例6】
【0049】
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を100重量部に変更した。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を0とした。
【0051】
〔比較例2〕
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を0とし、プラズマ照射処理を施していない未処理のフッ素樹脂粉体を10重量部添加した。
【0052】
〔比較例3〕
実施例1の材料中、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体の添加量を0とし、プラズマ照射処理を施していない未処理のフッ素樹脂粉体を50重量部添加した。
【0053】
〔特性試験内容〕
前記各実施例および比較例のゴム組成物により成型した内径31.5mmのオイルシールを、鋼の表面にハードクロムメッキを施した外径33mmのシャフト(往復動軸)に外嵌させた状態で、0.1mm/secの速度により±5mmの幅で摺動させ、その摺動抵抗を摩擦値として測定した。次に往復動距離=10mm、往復動頻度=8回/秒、加振波形=サイン波、ショックアブソーバの反力=98N(ショックアブソーバの伸び切り位置より2mm圧縮した状態)及び作動時間48時間の条件下で乾燥摩擦試験を行い、オイルシールのリップの摩耗量を締め代(1.5mm)の変化量で測定した。
さらに接着性試験として、前記各実施例および比較例のゴム組成物を金属製の被着体(SPCC材)と接着して成型したテストピースを、JIS K 6854に準拠した180度剥離強さ試験法により、プラーヤーで強制的にゴムを被着体から剥離し、被着体上のゴムの残存率を確認して評価を行った。
その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
〔結果〕
表1に示す評価結果から明らかなように、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体を添加した実施例1〜6は、摩擦の値が90N以下、リップの摩耗量が0.3μm以下で、かつ接着性も90%以上と良好な値を示し、全てが実用に耐え得るレベルであったのに対し、フッ素樹脂粉体を添加しない比較例1は、リップの摩耗量と接着性は良好であったものの、摩擦の値が実施例と比べ2倍以上大きく、実用には耐え得ない結果となった。また、未処理のフッ素樹脂粉体を添加した比較例2〜3では、摩擦の値は実施例とほぼ同じレベルであったが、リップの摩耗量が0.5μm以上と大きく、かつ接着性も50%以下と実施例に比べて大幅な低下をもたらすため、実用には到底供し得ないことがわかった。
【0056】
以上の結果から、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体を添加してなる本発明のゴム組成物によれば、シャフトに対し低摩擦で、かつリップの耐摩耗性及び被着体である金具との接着性に優れた高品質の往復動軸用オイルシールを得られることが確認された。
【0057】
以上、本発明の実施の形態ついて説明したが、本発明は例示した往復動軸用オイルシールに限ることなく、他にも回転軸用オイルシールやガスケット等、各種の密封用ゴム部品に幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 オイルシール
3 弾性材料(ゴム)
4 金具(被着体)
6 シールリップ
8 シャフト(往復動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム100重量部に対して、プラズマ照射処理を施したフッ素樹脂粉体を3〜100重量部含有せしめてなるゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴムが、フッ素ゴムまたはNBRもしくは水素化NBRである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のゴム組成物を用いて成型されたゴム部品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236396(P2011−236396A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122044(P2010−122044)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】