説明

ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ

【課題】氷雪路面でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)及び雨天路面上におけるタイヤの制動・駆動性能(WET性能)の低下を抑え、耐摩耗性を維持し、特に乾燥路面上でのタイヤの制動・駆動性能(DRY性能)に優れた性能を有するゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッドに用いた上記性能が高度にバランスした空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】独立気泡を有し、かつ(A)アミン系官能基変性ポリブタジエンゴムを30〜70質量%と天然ゴムとを含むゴム成分と、その100質量部に対し、(B)下記一般式(I)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(I)
で表される化合物0.3〜7質量部含むと共に、(C)補強性充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷雪路面でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)及び雨天路面上におけるタイヤの制動・駆動性能(WET性能)の低下を抑え、耐摩耗性を維持し、特に乾燥路面上でのタイヤの制動・駆動性能(DRY性能)に優れた性能を有するゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッドに用いた上記性能が高度にバランスした空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪路面上でのタイヤの制動・駆動性能(以下、氷上性能という。)を向上させるため、特にタイヤのトレッドについての研究が盛んに行われている。氷雪路面においては氷雪路面とタイヤとの摩擦熱等により水膜が発生し易く、その水膜はタイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低下させる。このため、タイヤにおける氷上性能を向上させるためには、タイヤのトレッドの水膜除去能やエッヂ効果及びスパイク効果を改良することが必要である。
タイヤのトレッドに水膜除去能を持たせるには、タイヤの路面にミクロな排水溝(深さ、幅共に100μm程度)を多数設け、このミクロな排水溝により水膜を排除し、タイヤの氷雪路面上での摩擦係数を大きくする。しかし、この場合、タイヤの使用初期における氷上性能を向上させることはできるものの、タイヤの摩耗に伴い、徐々に氷上性能が低下してしまうという問題がある。そこで、タイヤが摩耗しても氷上性能が低下しないようにするため、ミクロな水膜除去効果を狙ってトレッド内に気泡を形成しておくことが考えられ、この気泡には球状のものに加えて有機繊維樹脂による筒状のものが考えられている。
また、上記の有機繊維についても微粒子を含有させ、より引っ掻き効果を加味させることにより氷雪路面上での摩擦係数を更に大きくすることが提案されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2を参照)。
【0003】
上記有機繊維樹脂による筒状発泡や該筒状発泡に微粒子を含有させた長尺発泡体をゴム組成物中に含有させることによって、排水効果と引っ掻き効果の向上により氷上
性能は大幅に改善されてきているが、耐摩耗性の観点から見ると未発泡のゴムに対して劣るということはどうしても免れることのできない大きな問題である。
近年、親水性の無機充填剤を加えることで氷上性能及びWET性能が向上することがわかってきたが、しかしこの手法においても耐摩耗性は低下する傾向にあり、問題点の完全な解決には至っていいない。
【0004】
また、トレッドに用いられるゴム成分としては、ガラス転移温度が−60℃以下の天然ゴムや高シスポリブタジエン等が用いられる。特に、高シスポリブタジエンはガラス転移温度が低く、ゴム成分中の高シスポリブタジエンの比率を増やすことによって氷上性能は向上するが、それに伴ってDRY性能が低下する。氷上性能の向上を図ると、トレッドのブロック剛性が低下しDRY性能・WET性能(乾路面上・雨天路面上におけるタイヤの制動・駆動性能)が低下してしまう傾向にあるという問題がある。
【0005】
また、トレッドに用いられる充填剤成分としては、カーボン及びシリカが主に用いられ、上記WET性能の改良が可能な充填剤としてシリカが用いられている。しかしながら、シリカと高シスポリブタジエンを混合した場合、作業性が悪く、カーボンブラックのように組成物の力学的性能を高めことは難しいという問題がある。
シリカ配合ゴムの低燃費性を損なわずに操縦安定性を向上させる方法として、樹脂を添加する方法が知られているが(例えば特許文献3、特許文献4参照)、これらの樹脂とゴムとの相溶性は不十分であり、加硫ゴムの表面荒れが生じる等の問題を有している。
【0006】
さらに、上記ゴム成分とカーボンブラック、シリカ等の充填材と高シスポリブタジエン等のポリマー成分との補強性及びポリマー成分中への充填材の分散性などの上記欠点を克服すべく、共役ジエン系重合体と、分子内に窒素原子を有する特定の官能基含有化合物(変性剤)とを反応させ、カーボンブラックが分散し易い共役ジエン系重合体を得る製造方法(特許文献5参照)、リチウムアミド開始剤を用いて重合末端にアミノ基が導入された重合体(例えば、特許文献6参照)などが提案されており、シリカ配合については、アミノ基が導入されたジエン系ゴム(例えば、特許文献7参照)などが提案されている。
これらの方法で得られた重合体は、カーボンブラック配合・シリカ配合のそれぞれの配合において、種々の物性の改良をある程度までは達成できるものの、上記文献では、主に重合体にアミノ基を導入する方法については詳細に述べられており、重合体そのものの構造と各性能の関係については、一般的な事項以上には言及されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−201371号公報
【特許文献2】特開2001−233993号公報
【特許文献3】特開2000−80205号公報
【特許文献4】特開2000−290433号公報
【特許文献5】特開2001−139634号公報
【特許文献6】特開平7−53616号公報
【特許文献7】特開平9−71687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下で、氷雪路面でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)及び雨天路面上におけるタイヤの制動・駆動性能(WET性能)の低下を抑え、耐摩耗性を維持し、特に乾燥路面上でのタイヤの制動・駆動性能(DRY性能)に優れた性能を有するゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッドに用いた上記性能が高度にバランスした空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、独立気泡を有し、特定のアミン系官能基変性ポリブタジエンゴムを特定量含むゴムゴム成分に対して、特定構造を有する、多価アルコールのマレイン酸又はフマル酸エステルを、それぞれ所定の割合で配合してなるゴム組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は
(1) 独立気泡を有し、かつ(A)アミン系官能基変性ポリブタジエンゴムを30〜70質量%と天然ゴムとを含むゴム成分と、その100質量部に対し、(B)下記一般式(I)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(I)
[式中、Aは−R1O−、−(R2O)s−、−CH2CH(OH)CH2O−又は−(R3OOC−R4−COO−)t3O−で示される基であり、R1は炭素数2〜36の二価の炭化水素基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基、sは平均付加モル数で1〜60の数、R3は炭素数2〜18の二価の炭化水素基又は−(R5O)u5−(ただし、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、uは平均付加モル数で1〜30の数を示す。)、R4は炭素数2〜18の二価の炭化水素基、tは平均値で1〜30の数である。]で表される化合物0.3〜7質量部含むと共に、(C)補強性充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物、
(2) 変性ポリブタジエンゴムが、アミン系官能基としてプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を有する上記(1)のゴム組成物、
(3)変性ポリブタジエンゴムが、さらに、ヒドロカルビルオキシシラン基を有する上記(1)又は(2)のゴム組成物、
(4) 変性ポリブタジエンゴムが、プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する上記(3)のゴム組成物、
(5) 同一の重合末端に、プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する上記(4)のゴム組成物、
(6) プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基が、−NH2、−NHRa、−NL12及び−NRb3(ただし、Ra及びRbは、それぞれ炭化水素基を示し、L1、L2及びL3は、それぞれ水素原子又は解離し得る保護基を示す。)の中から選ばれる少なくとも一種の基である上記(2)〜(5)いずれかのゴム組成物、
(7) 変性ポリブタジエンゴムが、共役ジエン重合体の重合活性末端に、分子内に保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する化合物を反応させ、変性してなるものである上記(3)〜(6)いずれかのゴム組成物、
(8) 分子内に保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する化合物が、保護化第一アミノ基を有する2官能性ケイ素化合物である上記(7)のゴム組成物、
(9) 前記2官能性ケイ素原子を含む化合物が、一般式(II)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R6、R7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R8〜R9は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R11は炭素数1〜12のアルキレン基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)で表されるケイ素化合物、一般式(III)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R12〜R16は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R17は炭素数1〜12のアルキレン基を示す。)で表されるケイ素化合物及び、一般式(IV)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R6、R7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R8〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R11は炭素数1〜12のアルキレン基、R18は炭素数1〜12のアルキレン基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)で表されるケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種である上記(8)に記載のゴム組成物、
(10) 一般式(II)におけるAがハロゲン原子、炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基又はヒドロキシ基である上記(9)のゴム組成物、
(11) 変性ポリブタジエンゴム重合体の重合活性末端に、分子内に保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する化合物を反応させ、変性させたのち、周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で、前記化合物が関与する縮合反応を施したものである上記(1)〜(10)いずれかのゴム組成物、
(12) 前記縮合促進剤が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、又はアルミニウム(Al)の化合物からなり、前記縮合促進剤を構成する化合物は、前記元素のアルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩である上記(11)のゴム組成物、
(13) 前記縮合促進剤が、チタンの化合物からなるチタン系縮合促進剤である上記(12)のゴム組成物、
(14) チタン系縮合促進剤が、チタンのアルコキシド、カルボン酸塩及びアセチルアセトナート錯塩の中から選ばれる少なくとも一種である上記(13)のゴム組成物。
(15) (A)ゴム成分が、変性ポリブタジエンゴムを30〜70質量%と、天然ゴム70〜30質量%とからなる上記(1)〜(14)いずれかのゴム組成物、
(16) (B)成分の一般式(I)で表される化合物が、ポリエチレングリコールジマレエート又はジフマレートである上記(1)〜(15)いずれかのゴム組成物、
【0016】
(17) 前記(C)補強性充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカからなる上記(1)〜(16)いずれかのゴム組成物、
(18) 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを5〜95質量部及びシリカを5〜95質量部含む上記(17)のゴム組成物、
(19) 前記(B)補強性充填剤であるシリカの総量に対して、シランカップリング剤を4〜15質量%の割合で含む上記(1)〜(18)いずれかゴム組成物、
(20) 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(D)微粒子含有有機繊維を0.02〜20質量部含む上記(1)〜(19)いずれかのゴム組成物、
(21) 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(E)微粒子非含有有機繊維を含む上記(1)〜(20)いずれかゴム組成物、
(22) 前記(D)微粒子含有有機繊維及び前記(E)微粒子非含有有機繊維の合計量として前記(A)ゴム成分の100質量部に対して、1〜20質量部含む上記(21)のゴム組成物、
(23) 前記(D)微粒子含有有機繊維と(E)微粒子非含有有機繊維の割合[(D)微粒子含有有機繊維/(E)微粒子非含有有機繊維]が、質量比で98/2〜2/98である上記(21)又は(22)のゴム組成物、
(24) 前記(D)微粒子含有有機繊維が、該有機繊維を構成する素材100質量部に対して、該微粒子を5〜90質量部含有する上記(1)〜(23)いずれかのゴム組成物、
(25) 前記(D)微粒子含有有機繊維が、微粒子としてモース硬度が2以上であり、粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmであり、平均粒子径が10〜30μmであるものを含む上記(1)〜(24)いずれかのゴム組成物、
(26) 前記(D)微粒子含有有機繊維及び(E)微粒子非含有有機繊維に使用される繊維が、径0.01〜0.1mm、及び長さ0.5〜20mmである上記(1)〜(25)いずれかのゴム組成物、
(27) 前記(D)微粒子含有有機繊維の微粒子が、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上のものである上記(1)〜(26)いずれかのゴム組成物、
(28) 前記(D)微粒子含有有機繊維の微粒子が、アスペクト比1.1以上で、かつ角部が存在している上記(1)〜(27)いずれかのゴム組成物、
(29) 前記(D)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される上記(1)〜(28)いずれかのゴム組成物、
(30) 前記(D)微粒子含有有機繊維及び(E)微粒子非含有有機繊維を構成する素材がポリエチレン及び/又はポリプロピレンからなる結晶性高分子であり、かつ融点が190℃以下である上記(1)〜(29)いずれかのゴム組成物、
(31) 請求項1〜30いずれかに記載のゴム組成物をトレッド部の路面と実質的に接する面に用いたことを特徴とするタイヤ、及び
(32) 前記実質的に路面と接する部分のトレッドゴム層の発泡率が3〜50%である上記(31)のタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、氷雪路面でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)及び雨天路面上におけるタイヤの制動・駆動性能(WET性能)の低下を抑え、耐摩耗性を維持し、特に乾燥路面上でのタイヤの制動・駆動性能(DRY性能)に優れた性能を有するゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッドに用いた上記諸性能が高度にバランスした空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。
【図2】図2は(a)及び(b)は本発明に係るタイヤのトレッド部の周方向及び幅方向に沿う各断面概略図である。
【図3】図3は、微粒子含有有機繊維を一定の方向に配向させる原理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の変性ポリブタジエンゴムについて説明する。
[変性ポリブタジエンゴム]
本発明の変性ポリブタジエンゴム(以下、変性BRと称することがある。)は、アミン系官能基で変性されていることを要する。
本発明の変性BRにおいて、アミン系官能基が導入される重合体の位置については特に制限はなく、重合末端であってもよく、ポリマー鎖の側鎖であってもよいが、アミン系官能基の導入しやすさや、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良し得るなどの観点から、重合末端であることが好ましい。
アミン系官能基としては、プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を挙げることができる。また、当該変性BRにおいては、前記プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基と共に、さらにヒドロカルビルオキシシラン基を、重合体中に有するものが好ましい。
これらの官能基は、前記理由により、重合末端に導入されていることが好ましく、特に同一の重合末端に導入されていることが好ましい。
前記のプロトン性アミノ基、保護化アミノ基及びヒドロカルビルオキシシラン基、並びにベースのBR(以下、BR又は未変性BRと称する。)の変性に用いられるこれらの官能基を有する化合物(以下、変性剤と称することがある。)などについては、後で詳述する。
本発明の変性BRの製造方法としては、活性末端を有するBRを得たのち、その活性末端に、変性剤を反応させて、変性BRを製造する方法を採用することができる。
【0020】
本発明においては、活性末端を有するBRは、1,3−ブタジエンを単独重合して得られるものであり、その製造方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
前記活性末端を有するBRは少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で1,4−ブタジエンをアニオン重合させる反応が挙げられる。
【0021】
上述のアニオン重合の開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位であるBR重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位であるBRが得られる。
【0022】
上述のアニオン重合の開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位であるBR重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位であるBRが得られる。
【0023】
前記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物等が挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0024】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0025】
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によってBRを製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、1、4−ブタジエンを、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有するBRが得られる。
【0026】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0027】
また、所望により用いられるランダマイザーとはBRのミクロ構造、例えば1,2結合量や分布等を制御することができる。
このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、オキソラニルプロパンオリゴマー類[特に2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパンを含む物等]、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタン等のエーテル類及び三級アミン類等を挙げることができる。また、カリウムtert−アミレート、カリウムtert−ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウムtert−アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。
【0028】
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0029】
(BRの変性)
本発明においては、このようにして得られた活性末端を有するBRの該活性末端に、所定の変性剤を反応させて、重合末端にアミン系官能基、例えばプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を、好ましくはプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを導入する。より好ましくは同一の重合末端に前記のプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを導入する。
前記プロトン性アミノ基及び/又は保護化ミノ基としては、例えば−NH2、−NHRa、−NL12及び−NRb3(ただし、Ra及びRbは、それぞれ炭化水素基を示し、L1、L2及びL3は、それぞれ水素原子又は解離し得る保護基を示す。)の中から選ばれる少なくとも一種の基を挙げることができる。
前記のRa、Rbで示される炭化水素基としては、各種のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができる。L1、L2、L3としては、容易に解離し得る保護基であればよく、特に制限はなく、後述で説明するような基を挙げることができる。
【0030】
<変性剤>
本発明においては、変性BRとして、同一の重合末端にプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有するものが好ましく、したがって変性剤としては、同一分子内に保護化第一アミノ基を有する2官能性ケイ素化合物を用いることが好ましい。
同一分子内に保護化第一アミノ基を有する2官能性ケイ素化合物としては、例えば一般式(II)、一般式(III)及び一般式(IV)で示される化合物を挙げることができる。
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、R6、R7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R8〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R11は炭素数1〜12のアルキレン基、Aは反応性基、好ましくはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基、fは1〜10の整数を示す。)
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、R12〜R13は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R17は炭素数1〜12のアルキレン基を示す。)
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、R6、R7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R8〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R10は炭素数1〜12のアルキレン基、R18は炭素数1〜12のアルキレン基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)
【0037】
上記式(II)〜(IV)において、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種オクチル基,各種デシル基,各種ドデシル基,各種テトラデシル基,各種ヘキサデシル基,各種オクタデシル基,各種イコシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基等が好ましく、エチル基、メチル基、tert−ブチル基がより好ましい。
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアリーレンアルキレン基等が挙げられる。
上記炭素数1〜12アルキレン基は、直鎖状、分枝状のいずれであってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、プロピレン基、イソブチレン基、2-メチルトリメチレン基、イソペンチレン基、イソへキシレン基、イソオクチレン基、2-エチルへキシレン基、イソデシレン基などの分枝状のアルキレン基が挙げられる。
炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えばフェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基、等が挙げられ、炭素数7〜12のアリーレンアルキレン基としては、例えばフェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、キシリレン基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にトリメチレン基が好ましい。
【0038】
Aの反応性基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のヒドロカルビロキシ基又はヒドロキシ基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、中でも塩素が好ましい。
炭素数1〜20のヒドロカルビロキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基などを挙げることができる。
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基,n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基,sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ヘキソキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、各種ドデシロキシ基,各種テトラデシロキシ基、各種ヘキサデシロキシ基、各種オクタデシロキシ基、各種イコシロキシ基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーロキシ基としては、例えばフェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基、ナフチルメトキシ基等が挙げられる。これらの中で炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にエトキシ基が好ましい。
また、あらかじめ加水分解により得られた珪素原子に結合するヒドロキシ基は、アルコキシ基に比べ、補強性充填材、特にシリカと反応する場合、シリカとの反応性はより高くなり、ゴム組成物中のシリカの分散性が向上し、且つゴム組成物の低発熱性が向上するという大きな効果を奏する。更に、加水分解によりヒドロキシ基を生成する特性基がアルコキシ基である場合は揮発性有機化合物(VOC、特にアルコール)を発生するが、ヒドロキシ基は発生しないので、作業環境上好ましい。
その他の反応性基としては、カルボニル基、酸無水物残基、各ジヒドロイミダゾリニル基、N−メチルピロリドニル基、イソシアネート基等を含有する基が挙げられる。
また、式(I)のR3,R4およびR5の2つが結合してそれらが結合している珪素原子と一緒になって、4〜7員環を形成してもよく、同様に式(II)のR9,R10およびR11の2つが結合してそれらが結合している珪素原子と一緒になって、4〜7員環を形成してもよい。この4〜7員環としては炭素数4〜7のメチレン基を有するものを挙げることができる。
【0039】
保護された第一アミノ基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を少なくとも有する2官能性ケイ素原子を含む化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、および1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどを挙げることができる。
また、前記Aがハロゲン原子である化合物として例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルエトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルエトキシクロロシランなどが挙げられる。
好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
これらの変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
上記の変性反応においては、使用する重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0040】
上記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・BRである。同含有量は、さらに好ましくは1〜100mmol/kg・BRであり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・BRである。ここで、BRとは、製造時または製造後、添加される老化防止剤などの添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を上記範囲にすることによって、充填材の分散性に優れ、加硫後の破壊特性、摩耗特性、低発熱性が改良される。
なお、上記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法などが挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
また、変性剤は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0041】
<縮合促進剤>
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化第一アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
【0042】
具体的な縮合促進剤としては、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンオリゴマー、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、ビス(オレート)ビス(2−エチルヘキサノエート)チタン、チタンジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリブトキシステアレート、チタントリプロポキシステアレート、チタントリプロポキシアセチルアセトネート、チタンジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリプロポキシ(エチルアセトアセテート)、チタンプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタントリブトキシアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリブトキシエチルアセトアセテート、チタンブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタンオキサイド、ビス(ラウレート)チタンオキサイド、ビス(ナフテート)チタンオキサイド、ビス(ステアレート)チタンオキサイド、ビス(オレエート)チタンオキサイド、ビス(リノレート)チタンオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタン、テトラキス(ラウレート)チタン、テトラキス(ナフテート)チタン、テトラキス(ステアレート)チタン、テトラキス(オレエート)チタン、テトラキス(リノレート)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタンテトラ(ラクテート)などが挙げられる。中でも、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)が好ましい。
【0043】
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキソキシ)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
【0044】
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキソキシ)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
【0045】
上述の縮合促進剤の内、チタン系縮合促進剤が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、又はチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
【0046】
本発明における縮合反応は、上述の縮合促進剤と、水蒸気又は水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。
また、縮合反応を水溶液中で行ってもよく、縮合反応温度は85〜180℃が好ましく、さらに好ましくは100〜170℃、特に好ましくは110〜150℃である。
縮合反応時の温度を前記範囲にすることによって、縮合反応を効率よく進行完結することができ、得られる変性共役ジエン系重合体の経時変化によるポリマーの老化反応等による品質の低下等を抑えることができる。
【0047】
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行っても良い。
本発明の変性共役ジエン系重合体の変性剤由来の第一アミノ基は、上述のように脱保護処理を行うことによって生成する。上述したスチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理以外の脱保護処理の好適な具体例を以下に詳述する。
すなわち、第一アミノ基上の保護基を加水分解することによって遊離した第一アミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、第一アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、該縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーまでのいずれかの段階において必要に応じて変性剤由来の保護された第一アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
【0048】
本発明において得られる変性BRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは50〜90である。ムーニー粘度の値を上記範囲にすることによって、混練り作業性および加硫後の機械的特性のすぐれたゴム組成物を得ることができる。
本発明における変性BRは、重合体中にプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基、好ましくはこれらのアミン系官能基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有し、前記のプロトン性アミノ基や保護化アミノ基の解離基は、カーボンブラックやシリカに対して良好な相互作用を有しており、充填材の分散性が向上すると共に、優れた破壊特性有することができる。一方、ヒドロカルビルオキシシラン基は、特にシリカに対して優れた相互作用を有している。当該変性BRを含むゴム組成物は、独立発泡を有するトレッドに用いた場合、ゴムが従来対比硬くなることによってその弱点であるDRY操縦安定性を向上させると共に、耐摩耗性を維持し、低転がり抵抗性のタイヤを得ることができる。
【0049】
次に本発明のゴム組成物について説明する。
[ゴム組成物]
上記のゴム組成物は、独立気泡を有し、かつ(A)アミン系官能基変性ポリブタジエンゴムを30〜70質量%と天然ゴムとを含むゴム成分と、その100質量部に対し、後述する(B)下記一般式(I)で表される化合物を0.3〜7質量部含無と共に、(C)補強性充填剤を含むことが必要である。上記独立気泡を有するゴム組成物は、路面と実質接する発泡層を有するトレッドゴムとして好ましく用いられる。前記発泡ゴム層は、その発泡率が3〜50%の範囲、より好ましくは15〜40%である。
前記発泡率を上記範囲にすることによって、耐摩耗性及びDRY性能を維持しトレッドにおける凹部の体積を確保することにより、優れた氷上性能を確保することができる。
【0050】
((A)ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、当該変性BRを30〜70質量%含むことを要する。ゴム成分中の該変性BRの好ましい含有量は40〜60質量%である。さらに、ゴム成分として、天然ゴムを含むことが必要である。天然ゴムの好ましい含有量は、70〜30質量%、より好ましくは60〜40質量%である。ゴム成分中の変性BR及び天然ゴムの量を上記範囲にすることによって、所望の物性を有するゴム組成物を得ることが出来る。
また、天然ゴムを配合することによって組成物の機械的特性を改良すると共に、組成物の混練り作業性を改善する。
さらに、本発明におけるゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ゴム成分として合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンーα−オレフィン共重合ゴム、エチレンーα−オレフィンージエン共重合ゴム、アクリロニトリルーブタジエン共重合ゴム、クロロブレンゴム、ハロゲン化プチルゴムおよびこれらの混合物などを加えることができる。また、その一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
【0051】
((B)成分)
本発明のゴム組成物においては、(B)成分として、一般式(I)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(I)
で表される化合物、すなわち多価アルコールのマレイン酸又はフマル酸エステルが用いられる。
一般式(I)において、Aは−R1O−、−(R2O)s−、−CH2CH(OH)CH2O−又は−(R3OOC−R4−COO−)t3O−で示される基である。ここで、R1は炭素数2〜36の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、炭素数2〜36のアルキレン基若しくはアルケニレン基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。またR2は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、さらに好ましくは4〜30の数である。R3は炭素数2〜18の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、炭素数2〜18のアルキレン基若しくはアルケニレン基、炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基又は−(R5O)u5−である(R5は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である)。R4は炭素数2〜18の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、炭素数2〜18のアルキレン基若しくはアルケニレン基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
【0052】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4−ブタンジオールジマレエート,1,6−ヘキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート、1,6−ヘキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート、PEG200ジマレエート,PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここでPEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコールを示す)、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジペートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。
これらの中で、性能及び経済性の面で、ポリエチレングリコールジマレエート又はジフマレートが好ましく、特にポリエチレングリコールジマレエートが好ましい。
当該(B)成分の分子量は250以上であることが好ましく、さらには250〜5000の範囲であること、特には250〜3000の範囲であることが好ましい。この範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。
本発明においては、当該(B)成分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、(A)成分であるゴム成分100質量部に対して、0.3〜7質量部の範囲で選定される。当該(B)成分の配合量が上記範囲にあれば、得られるタイヤは転がり抵抗性能を保持すると共に、組成物が硬くなることによってドライ操縦安定性を向上させることができる。この効果は前述の変性ポリブタジエンゴムと組み合わせることによってその効果は向上する。当該(B)成分の好ましい配合量は0.5〜5質量部である。
【0053】
((C)充填材)
本発明のゴム組成物においては、さらに(C)成分の補強性充填剤含有することが必要である。補強性の充填剤としては、通常カーボンブラックやシリカ等が挙げられる。前記カーボンブラックは、そのゴム層の力学的性能を高め、加工性等を改善させるものである限り、I2吸着量、CTAB比表面積、N2吸着量、DBP吸着量等の範囲を適宜選択した公知のカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの種類としては、例えば、SAF、ISAF−LS、HAF、HAF−HS等の公知のものを適宜選択して使用することができる。耐摩耗性を考慮すると、微粒子径のISAFやSAFが好ましい。
上記ゴム層においてカーボンブラックの含有量は(A)ゴム成分100質量部に対して5〜95質量部、好ましくは10〜60質量部である。
カーボンブラックの含まれる量を上記範囲にすることにより耐摩耗性を維持し、優れたWET性能を得ることができる。
【0054】
また、上記発泡ゴム層において、シリカは、狭義の二酸化珪素のみを示すものではなく、ケイ酸系充填剤を意味し、具体的には、無水ケイ酸の他に、含水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩を含む。
上記ゴム層においてシリカの含有量は(A)ゴム成分の100質量部に対して5〜95質量部、好ましくは15〜80質量部である。シリカの含有量を上記範囲とすることにより、優れた氷上性能およびWET性能を得ることができる。
尚、カーボンブラック及びシリカを合わせた合計の配合量は(A)成分100質量部に対して、40〜80質量部、また、カーボンブラックとシリカの混合比[カーボンブラック]/[シリカ]は質量比で0.04〜6.0であることが好ましい。
特に、WET性能を重視した場合にはシリカの配合比率を増すことが好ましい。
【0055】
また、本発明において、(D)成分の補強性充填剤としてシリカを用いる場合補強性、分散性をさらに向上させる観点からシランカップリング剤を配合時に添加することが好ましい。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらの中でも、補強性改善効果の観点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドが好ましい。これらシランカップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
本発明において、該シランカップリング剤の配合量は、前記シリカの総量に対して、4〜15質量%の割合で添加することが好ましい。
【0056】
(その他の添加剤)
本発明のゴム組成物において、さらに(D)成分として有機繊維に微粒子を含有した微粒子含有有機繊維を含有することが好ましい。
上記(D)成分を上記ゴムの発泡層に含ませて用いると、タイヤ面における除水及び摩擦の増大に効果を発揮し、氷上性能を高める。また、後述するように(D)成分に使用する微粒子に比較的硬度がある材料を使用した場合、含有させる有機繊維径との関係などから押出時に加硫ゴム及び成形物の表面に影響を与え、また、そのような原因と共に工場での作業性の低下を招く。そこで、(D)成分と一緒に(E)成分として微粒子を含有しない微粒子非含有有機繊維を所定の割合で上記ゴム層に含ませることが好ましい。
このような割合としては、(E)成分の微粒子非含有有機繊維/(D)成分の微粒子含有有機繊維の含まれる割合は、質量比で98/2〜2/98の範囲、特に、9/5〜5/95の範囲にすることが好ましい。その中で(D)成分の量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0.02〜20質量部含むことが好ましい。より好ましくは0.1〜15質量部である。
【0057】
また、本発明においては、上記ゴム層に上記(D)成分及び(E)成分の合計量が上記(A)ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部、特に好ましくは1.5〜15質量部であることが望ましい。
これらの合計量を上記範囲にすることによって押出し作業性を改良して肌荒れをなくし、繊維を配合する効果が充分得られ、タイヤのトレッドにあっては、クラックの発生を抑えエッヂ効果あるいはスパイク効果、それに対応する氷上性能の十分な向上が認められる。
【0058】
上記(D)成分及び(E)成分に使用される有機繊維としては、必ずしもその材質、形状、径、長さ等が一致した同じものを同時に使用することはなく、互いに異なった有機繊維を使用しても良いが、共に以下の性質を有する範囲の有機繊維を使用することが望ましい。
(D)成分及び(E)成分に使用される有機繊維の材質は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。しかしながら、上述したように、(A)ゴム成分との関係から加硫時に加硫最高温度に達するまでの間に、(A)ゴム成分のゴムマトリックスの粘度よりも低くなる粘度特性を有する繊維を構成する樹脂を用いることが本発明においては好ましい。即ち、上記有機繊維を構成する樹脂としては、ゴム組成物が加硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有していることが好ましい。
【0059】
このような熱特性を上記有機繊維を構成する樹脂を有していると、ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴム中に、ミクロな排水溝として機能し得る上述の長尺状気泡を容易に形成することができる。
尚、加硫最高温度とは、ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。加硫最高温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。また、ゴムマトリックスの粘度は、流動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。また、上記有機繊維を構成する樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。
従って、本発明で選択される好ましい樹脂は、例えば、その融点が上記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子樹脂などが特に好適に挙げられる。
【0060】
上記結晶性高分子では、その融点と、ゴム組成物の加硫最高温度との差が大きくなる程、ゴム組成物の加硫中に速やかに溶融するため、高分子の粘度がゴムマトリックスの粘度よりも低くなる時期が早くなる。このため、高分子が溶融すると、そのゴム組成物に配合した発泡剤から発生したガスなどのゴム組成物に存在するガスは、ゴムマトリックスよりも低粘度である高分子の内部に集まる。その結果、加硫ゴム中には、ゴムマトリックスとの間に微粒子を含有する樹脂層を有する独立気泡、即ち、上記樹脂により被覆されたカプセル状の長尺状気泡が潰れのない状態で効率良く形成される。
【0061】
路面と実質接する発泡層を有するタイヤトレッドゴムにおいては、このカプセル状の長尺状気泡はトレッドの表面に現れ、表面の摩耗により生じた溝が上記ミクロな排水溝として機能し、水膜排除効果と共に、エッヂ効果及びスパイク効果も十分に発揮する。
これに対して、有機繊維を構成する樹脂の融点が、ゴム組成物の加硫最高温度に近い場合、加硫初期に速やかに溶融せず、加硫末期に溶融する。加硫末期では、ゴム組成物中に存在するガスの一部は加硫したゴムマトリックス中に取り込まれてしまい、溶融した樹脂の内部には集まらない。その結果、上記ミクロな排水溝として効果的機能する長尺状気泡が、効率良く形成されず、また、有機繊維の樹脂融点が低過ぎる場合、有機繊維をゴム組成物中に配合し混練りする際に有機繊維同士の融着が発生し、有機繊維の分散不良が生じる。これもまた、ミクロな排水溝して機能し得る長尺状気泡が効率良く形成されない。したがって、有機繊維の樹脂の融点は、加硫前の各工程における温度では溶融軟化せず、加硫工程中にゴムマトリックスと樹脂との粘度とが逆転するような範囲で選択するのが好ましい。
【0062】
有機繊維を構成する樹脂の融点の上限としては、特に制限はないものの上記の点を考慮して選択するのが好ましく、上記ゴムマトリックスの加硫最高温度よりも低く、10℃以上低いのがより好ましく、20℃以上低いのが特に好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度がこの190℃を超えて設定されている場合には、上記樹脂の融点としては、190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
なお、上記樹脂の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を上記融点とすることができる。
【0063】
以上のことから有機繊維を構成する樹脂は、結晶性高分子及び/又は非結晶性高分子から形成されていても良い。但し、上述したように本発明においては、相転移があるために粘度変化がある温度で急激に起こり、粘度制御が容易な点で結晶性高分子を多く含む有機素材から形成されていることが好ましく、結晶性高分子のみから形成されるのがより好ましい。
このような結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらの樹脂に添加剤を加えたものも使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が比較的低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
尚、非結晶性高分子の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、本発明において使用される(D)成分及び(E)成分の有機繊維としては、その繊維長が、0.5〜20mmの範囲、特に、1〜10mmの範囲にある短繊維であることが好ましい。
上記発泡ゴム層を形成する際の加硫ゴム中に、このような長さで有機繊維が存在すれば、エッヂ効果及びスパイク効果が有効に作用すると共に、後述の発泡剤等を含めるとミクロな排水溝として効率良く機能し得る長尺状気泡を十分に形成することも可能となる。上記有機繊維長が0.5mm未満では、上記効果を十分に発揮できない。
また、上記有機繊維長が20mmを超えると、有機繊維同士が絡まり、その分散性が低下する傾向にある。
また、上記有機繊維において、その繊維の径が0.01〜0.1mmの範囲、特に、0.015〜0.09mmの範囲が好ましい。上記有機繊維は、その径が0.01mm未満では切断が生じ易いため、上記エッヂ効果或いはスパイク効果を十分に発揮できない。また、上記の径が0.1mmを超える場合には、加工性に問題が生じてくる。
【0065】
本発明に用いられる(D)成分において、上記有機繊維に含有される微粒子としては、無機微粒子及び有機微粒子が挙げられる。具体的には、無機微粒子としては、ガラス微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、アルミナ微粒子、鉄微粒子、などが挙げられる。前記有機微粒子としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂微粒子、エポキシ樹脂微粒子、などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、氷上での引っ掻き効果に優れる点で、無機微粒子が好ましい。
【0066】
本発明に使用される微粒子はそのモース硬度が硬度2より、特に硬度5より高いものが好ましい。その微粒子のモース硬度が氷の硬度(1〜2)以上、即ち、2以上であると、一層の引っ掻き効果を上記発泡ゴム層の表面部でトレッドとして発揮させることができる。このため、得られるタイヤは氷雪路面との間の摩擦係数が大きく、氷上性能(氷雪路面でのタイヤの面制動・駆動性能)に優れている。
このような硬度の高い微粒子としては、例えば、石膏、方解石、蛍石、正長石、石英、金剛石等が挙げられるが、好ましくは、モース硬度5以上のシリカガラス(硬度6.5)、石英(硬度7.0)、溶融アルミナ(硬度9.0)等を挙げることができる。中でもシリカガラス、アルミナ(酸化アルミニウム)等が安価で容易に使用することができる。
また、上記微粒子はその粒径分布の頻度数の80質量%以上、好ましく90質量%以上が10〜50μmの範囲にあることが好ましく、また、その平均粒径が10〜30μmの範囲であることが好ましい。
また、上記微粒子はその粒径分布の頻度数の80質量%以上、好ましく90質量%以上が10〜50μmの範囲にあることが好ましく、また、その平均粒径が10〜30μmの範囲であることが好ましい。
上記頻度数における粒径が10μmを下回ってくると、(D)成分を製造する際に、粒子同士が凝集し易くなるものが見られ、その分散性が低下する傾向にある。また、このような繊維を用いたタイヤにあっては、十分な引き掻き効果、或いはエッヂ効果、スパイク効果を発揮することができない。一方、上記粒径が50μmを超えると、(D)成分の製造時に繊維切れ等の問題が頻発し、所望する(D)成分が効率良く得られない。
【0067】
上記微粒子は、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。
上記微粒子のピーク値での頻度数が20質量%以上であれば、微粒子の粒度分布曲線がシャープとなり、粒径が均一となる。このため、上記(D)成分の紡糸に際して切れなどが発生し難い良好な繊維が得られると共に、かかる繊維をタイヤに使用した場合には氷上性能性が安定してくる。また、上述した上記範囲内の粒径の大きさでは、その粒径が大きいほどタイヤの氷上性能が向上する。
尚、ここで、頻度数とは全体の粒子質量に対する粒度分布(粒度分布曲線)における粒子粒径を2μmの刻み幅で区分したときのその区分幅での存在粒子の質量率をいい、ピーク値での頻度数とは、粒度分布曲線における上記刻み幅に最大ピーク値を含んでいる区分幅における頻度数を言う。
【0068】
さらに上記微粒子は、そのアスペクト比が1.1以上であることが好ましく、且つ角部が存在していることが好ましい。より好ましくはアスペクト比が1.2以上、更に好ましくは1.3以上である。ここで。角部が存在するとは、表面の全てが球面或いは滑らかなカーブ面でないことを意味する。
本発明の微粒子には最初から角部を有する微粒子も使用できるが、微粒子が球形状であっても粉砕することにより、微粒子表面に角部を存在させて使用することができると共に、より多くの角部を存在させることができる。
【0069】
微粒子の形状はその微粒子群を電子顕微鏡で観察することにより確認が可能であり、球状でないことを確認するものである。また粒子の長軸と短軸の比率をあらわすアスペクト比が1.1以上であれば、粒子表面に形成される角部の存在が十分に角張ることができる。このため、このような微粒子を含む(D)微粒子含有有機繊維を使用したタイヤ等にあっては、引っ掻き効果、或いはエッヂ効果、及びスパイク効果を十分に高めることができる。
上記微粒子成分は、上記(D)微粒子含有有機繊維の該有機繊維を構成する素材100質量部に対して5〜90質量部、特に、7〜50質量部の範囲で含有されることが好ましい。
【0070】
上記微粒子の量を上記範囲にすることによって、ゴム組成物のゴム製品における引っ掻き効果、タイヤのトレッドにあってはエッヂ効果及びスパイク効果が十分に生じ、(D)成分の製造時に繊維切れ等の問題の発生が少ない、(D)成分が効率良く得られる。
本発明においては、加流後に気泡を形成させるために、上記発泡ゴム層の成形前の加硫ゴム中に発泡剤を配合する。発泡剤及び上記繊維を用いることにより、加硫ゴム或いはトレッドとなる上記発泡ゴム層は、長尺状気泡を有してミクロな排水溝を形成して水膜除去能が付与される。
【0071】
(発泡剤及び発泡助剤)
上記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0072】
これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記発泡剤の作用により、得られた上記加硫ゴムは発泡率に富む発泡ゴムとなる。
【0073】
本発明においては、効率的な発泡を行う観点から、その他の成分として発泡助剤を用い、上記発泡剤と併用するのが好ましい。上記発泡助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製造に使用する助剤等が挙げられる。これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記発泡剤の含有量としては、目的に応じて適宜決定すればよいが、一般にはゴム成分100質量部に対して1〜10質量部程度が好ましい。上記発泡剤はゴムマトリックス中に配合しても良く、また各有機繊維中に配合しても良い。
【0074】
(その他の配合剤)
本発明に使用するその他の成分としては、本発明の効果を害しない範囲で用いることができ、例えば、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、加硫促進助剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の硫化防止剤、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤、カーボンブラックやシリカ等の無機充填剤等の他に、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などを目的に応じて適宜選択して使用することができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
[タイヤ]
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態、及び実施例を詳細に説明する。
図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。図2は(a)及び(b)は本発明に係るタイヤのトレッド部の周方向及び幅方向に沿う各断面概略図である。図3は、微粒子含有有機繊維を一定の方向に配向させる原理を説明する説明図である。
【0076】
本発明に係るタイヤは、路面と実質接する面に発泡ゴム層が設けられるタイヤ、具体的には、図1〜図3に示すように、タイヤトレッドの少なくとも路面と実質接する面に、独立気泡を含有する発泡ゴム層を設けた空気入りタイヤからなる。
例えば、図1に示すように、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、キャップ部6とベース部7の二層から成るトレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
【0077】
上記トレッド5の表面部は、本発明に係るゴム組成物を加硫させて形成した発泡ゴム層である。タイヤ4は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、未加硫のトレッドが加硫されてなる本発明の発泡ゴム層で形成されたキャップトレッド6を有するタイヤ4が得られる。
【0078】
本発明に係るタイヤの発泡ゴム層を形成するには、上記で詳述したゴム組成物を、以下の条件、手法にて混練り、熱入れ、押出等を行なう。
混練は、混練装置への投入体積、ローター回転速度、混練温度、混練時間等の混練装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混練装置としては、市販品を好適に使用することができる。
熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用することができる。尚、熱入れ又は押出温度は、発泡剤が存在する場合はその発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。押出温度は、90〜110℃程度が望ましい
【0079】
本発明において、押出等により上述の有機繊維は押出方向に配向させることが好ましく、このような配向を効果的に行うには、限られた温度範囲の中でゴム組成物の流動性を制御し、具体的にはゴム組成物中に、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル等の可塑剤、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム等の液状ポリマーなどの加工性改良剤を適宜添加してゴム組成物の粘度を変化させ、その流動性を高める。
【0080】
本発明において有機繊維を含める場合、トレッドの発泡ゴム層を製造するには、(D)微粒子含有有機繊維及び(E)微粒子非含有有機繊維を、トレッドにおける接地面に平行な方向に配向、即ち、タイヤの周方向に配向させることが良い。タイヤの走行方向の排水性を高めることができ、氷上性能を効果的に向上させることができる。
上記発泡ゴム層において各有機繊維を揃わせて配向する方法としては、例えば、図3に示すように、微粒子含有有機繊維15を含むゴム組成物16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出すことにより、微粒子含有有機繊維15等を一定の方向に配向させればよい。なお、この場合、押し出される前のゴム組成物16中の微粒子含有有機繊維15等は、口金17へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(矢印P方向)に沿って徐々に揃うようになり、口金17から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(矢印A方向)にほぼ完全に配向させることができる。この場合における微粒子含有有機繊維15等のゴム組成物16中での配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、加硫前のゴム組成物16の粘度等によって変化させる。
【0081】
本発明において、加硫の条件等については特に制限はなく、ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができるが、本発明のようにトレッドとしての発泡ゴム層を製造する場合にはモールド加硫が良い。加硫の温度としては、上述したように加硫中の上記ゴム組成物の加硫最高温度が上記有機繊維を構成する樹脂の融点以上になるように選択されることが好ましい。加硫最高温度が樹脂の融点未満であると、上述したように繊維が溶融せず、発泡により生じたガスを樹脂中に取り込むことができない。発泡ゴム層に長尺状気泡を効率良く形成できない。加硫装置は、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。
【0082】
本発明のタイヤのトレッド(発泡ゴム層)においては、トレッド表面に生じた長尺状気泡の凹部は方向性を持たせてある。このため、効率的な排水を行う排水路として機能する。なお、該凹部は上記保護層、特に微粒子を存在させた保護層を有するため、該凹部は、耐剥離性、水路形状保持性、水路エッヂ部摩耗性、荷重入力時の水路保持性等に優れる。更に本発明のタイヤにおいては、長尺状気泡が発泡層全体に存在するため、使用初期から末期まで上記凹部による諸機能が発揮され、上記氷上性能に優れる。
【0083】
本発明において、発泡ゴム層に形成される長尺状気泡の平均径(μm)は、10〜500μm程度であるのが好ましい。上記平均径が10μm未満であると、ゴム表面に形成されるミクロの排水溝の水排除性能が低下することがあり、上記平均径が500μmを越えると、ゴムの耐カット性、ブロック欠けが悪化し、また、乾燥路面での耐摩耗性が悪化することがある。
【0084】
本発明に係るタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物に好適に適用できる。氷雪路面上でのスリップを抑えることが必要な構造物に好適に使用でき、タイヤのトレッドは、上記氷上でのスリップを抑えることが必要な限り、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中実タイヤ、等に使用できる。また、タイヤが空気入りタイヤである場合、内部に充填する気体としては空気のほかに窒素等の不活性ガスを用いることができる。
尚、上記実施形態においては二層構造を持つトレッドを例にして説明したが、トレッドの構造は特に制限はなく一層構造でも良い。更にタイヤ半径方向に分割された多層構造、タイヤ周方向或いはトレッド幅方向に分割された構造でも良く、トレッドの表面層の少なくとも一部が本発明のゴム組成物により構成されていることが好ましい。
【実施例】
【0085】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、重合体の物性及び諸特性は、下記の方法に従って測定した。
《未変性又は変性BRの物性》
<ミクロ構造の分析法>
赤外法(モレロ法)により、ビニル結合含有量(%)を測定した。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定>
GPC[東ソー製、HLC−8020]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL[東ソー製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
<ムーニー粘度(ML1+4,100℃)の測定>
JIS K6300に従って、Lロ一夕一、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で求めた。
【0086】
<第一アミノ基含有量(mmol/kg)の測定>
先ず、重合体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール中で沈殿させることにより重合体に結合していないアミノ基含有化合物をゴムから分離した後、乾燥した。本処理を施した重合体を試料として、JIS K7237に記載された「全アミン価試験方法」により全アミノ基含有量を定量した。続けて、前記処理を施した重合体を試料として「アセチルアセトンブロックド法」により第二アミノ基及び第三アミノ基の含有量を定量した。試料を溶解させる溶媒には、o−ニトロトルエンを使用、アセチルアセトンを添加し、過塩素酢酸溶液で電位差滴定を行った。全アミノ基含有量から第二アミノ基及び第三アミノ基の含有量を引いて第一アミノ基含有量(mmol)を求め、分析に使用したポリマー質量で割ることにより重合体に結合した第一アミノ基含有量(mmol/kg)を求めた。
【0087】
[タイヤ性能評価]
<氷上性能>
前記試験用のタイヤ(タイヤサイズ185/70R15)を国産1600CCクラスの乗用車に4本を装着し、氷温−1℃の氷上制動性能確認した。比較例1のタイヤをコントロールタイヤとして、氷上性能=(コントロールタイヤの制動距離/その他の例の制動距離)×100とした。数値の大きい方が氷上性能が優れていることを示す。評価結果を第1表に示す。
【0088】
<DRY操安性(乾燥路面での操縦安定性)>
乾燥路面での操縦安定性をテストドライバーによるフィーリングにより5点法により評価した。数値が大きくなるほど旋回安定性に優れていることを示す。
<耐摩耗性能>
実車にて舗装路面を1万km走行後、残溝を測定し、トレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離を相対比較し、比較例1を100(8000km/mmに相当)として指数表示した。指数が大きい程、耐摩耗性が良好なことを示す。評価結果を第1表に示す。
【0089】
製造例1 第一アミン変性ポリブタジエンゴム
<変性剤の合成>
合成例1:N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの合成
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラスフラスコ中のジクロロメタン溶媒400ml中にアミノシラン部位として36gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(Gelest社製)を加えた後、さらに保護部位として塩化トリメチルシラン(Aldrich社製)48ml、トリエチルアミン53mlを溶液中に加え、17時間室温下で攪拌し、その後反応溶液をエバポレーターにかけることにより溶媒を取り除き、反応混合物を得、さらに得られた反応混合物を665Pa条件下で減圧蒸留することにより、130〜135℃留分としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを40g得た。
【0090】
<第一アミン変性ブタジエンゴムの合成>
(1)ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.0285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、ポリブタジエンを得た。得られたポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150、000、Mw/Mnは1.1であった。
(2)一級アミン変性ポリブタジエンの製造
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、第一アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。最後に反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第一アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、一級アミン変性ポリブタジエンを得た。得られた変性ポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及び第一アミノ基含有量を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150、000、Mw/Mnは1、2、第一アミノ基含有量は4.0mmol/kgであった。
【0091】
実施例1〜6及び比較例1〜6
第1表に示す各配合内容に基づいて常法により、各実施例及び比較例のゴム組成物を製造した。
各ゴム組成物の加硫時における加硫温度は、ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定しながら行った。加硫最高温度に達するまでに、各有機繊維樹脂の融点を超え、上記ゴム組成物の加硫時において、上記樹脂粘度はゴムマトリックス粘度より低くなった。なお、各有機繊維樹脂の上記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧力の変化を測定)したところ、6であった。一方、上記ゴム組成物の上記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、11であった。
得られた各ゴム組成物をトレッド(発泡ゴム層)に用い常法によって試験用の乗用車用ラジアルタイヤ、タイヤサイズ185/70R15を製造した。
【0092】
【表1】

*1.シス−1,4−ポリブタジエンゴム:(商品名;UBEPOL 150L:宇 部興産社製)
*2.変性ポリブタジエンゴム:第一アミン変性ポリブタジエンゴムの合成で得られた ものを使用した
*3.カーボンブラック:[N134(N2SA:146m2/g)]:旭カーボン社製)
*4.シリカ:(Nipsil AQ:東・ソーシリカ社製)
*5.シランカップリング剤:「Si69」デグッサ社製
*6.PEGM:両末端カルボン酸型の平均重合度4.5のポリエチレングリコール/ マレイン酸ポリエステル(ポリエステル部分の重合度5)花王社製
*7.有機繊維:繊維を構成する樹脂(ポリエチレン融点132℃)、繊維平均直径3 2μm、繊維平均長さ2mm
*8.微粒子含有有機繊維:繊維を構成する樹脂(ポリエチレン融点132℃)、微粒 子含有量15質量部、微粒子平均粒径20μm、繊維平均直径32μm、繊維平均 長さ2mm
*9.BOLAX TZ:四ホウ酸ナトリウム・10水和物
*10.スーパーオイル Y22:新日本石油工業株式会社製
*11.発泡剤:(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)
*12.老化防止剤:(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
*13.加硫促進剤:(N−シクロヘキシル−2−スルフェンアミド)
*14.加硫促進剤:(ジベンゾチアジルジスルフィド)
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、氷雪路面でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)及び雨天路面上におけるタイヤの制動・駆動性能(WET性能)の低下を抑え、耐摩耗性を維持し、特に乾燥路面上でのタイヤの制動・駆動性能(DRY性能)に優れた性能を有するゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッドに用いた上記性能が高度にバランスした空気入りタイヤを提供することができる。特に乗用車用タイヤに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 一対のビード部
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
6 キャップ部
6A 加硫ゴム
7 ベース部
12 長尺状気泡
13 凹部
14 保護層
15 微粒子含有有機繊維
16 ゴム組成物
17 口金
18 球状気泡
19 球状気泡の凹部
20 微粒子
P 押出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡を有し、かつ(A)アミン系官能基変性ポリブタジエンゴムを30〜70質量%と天然ゴムとを含むゴム成分と、その100質量部に対し、(B)下記一般式(I)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(I)
[式中、Aは−R1O−、−(R2O)s−、−CH2CH(OH)CH2O−又は−(R3OOC−R4−COO−)t3O−で示される基であり、R1は炭素数2〜36の二価の炭化水素基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基、sは平均付加モル数で1〜60の数、R3は炭素数2〜18の二価の炭化水素基又は−(R5O)u5−(ただし、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、uは平均付加モル数で1〜30の数を示す。)、R4は炭素数2〜18の二価の炭化水素基、tは平均値で1〜30の数である。]で表される化合物0.3〜7質量部含むと共に、(C)補強性充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
変性ポリブタジエンゴムが、アミン系官能基としてプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を有する請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
変性ポリブタジエンゴムが、さらに、ヒドロカルビルオキシシラン基を有する請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
変性ポリブタジエンゴムが、プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
同一の重合末端に、プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基が、−NH2、−NHRa、−NL12及び−NRb3(ただし、Ra及びRbは、それぞれ炭化水素基を示し、L1、L2及びL3は、それぞれ水素原子又は解離し得る保護基を示す。)の中から選ばれる少なくとも一種の基である請求項2〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
変性ポリブタジエンゴムが、共役ジエン重合体の重合活性末端に、分子内に保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する化合物を反応させ、変性してなるものである請求項3〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
分子内に保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する化合物が、保護化第一アミノ基を有する2官能性ケイ素化合物である請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記2官能性ケイ素原子を含む化合物が、一般式(II)
【化1】

(式中、R6、R7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R8〜R9は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R11は炭素数1〜12のアルキレン基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)で表されるケイ素化合物、一般式(III)
【化2】

(式中、R12〜R16は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R17は炭素数1〜12のアルキレン基を示す。)で表されるケイ素化合物及び、一般式(IV)
【化3】

(式中、R6、R7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R8〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R11は炭素数1〜12のアルキレン基、R18は炭素数1〜12のアルキレン基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)で表されるケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
一般式(II)におけるAがハロゲン原子、炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基又はヒドロキシ基である請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
変性ポリブタジエンゴム重合体の重合活性末端に、分子内に保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有する化合物を反応させ、変性させたのち、周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で、前記化合物が関与する縮合反応を施したものである請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記縮合促進剤が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、又はアルミニウム(Al)の化合物からなり、前記縮合促進剤を構成する化合物は、前記元素のアルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩である請求項11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記縮合促進剤が、チタンの化合物からなるチタン系縮合促進剤である請求項12に記載のゴム組成物。
【請求項14】
チタン系縮合促進剤が、チタンのアルコキシド、カルボン酸塩及びアセチルアセトナート錯塩の中から選ばれる少なくとも一種である請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
(A)ゴム成分が、変性ポリブタジエンゴムを30〜70質量%と、天然ゴム70〜30質量%とからなる請求項1〜14のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項16】
(B)成分の一般式(I)で表される化合物が、ポリエチレングリコールジマレエート又はジフマレートである請求項1〜15のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記(C)補強性充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカからなる請求項1〜16のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記(A)ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを5〜95質量部及びシリカを5〜95質量部含む請求項17に記載のゴム組成物。
【請求項19】
前記(B)補強性充填剤シリカの総量に対して、シランカップリング剤を4〜15質量%の割合で含む請求項1〜18のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項20】
前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(D)微粒子含有有機繊維を0.02〜20質量部含む請求項1〜19のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項21】
前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(E)微粒子非含有有機繊維を含む請求項1〜20のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項22】
前記(D)微粒子含有有機繊維及び前記(E)微粒子非含有有機繊維の合計量として前記(A)ゴム成分の100質量部に対して、1〜20質量部含む請求項21に記載のゴム組成物。
【請求項23】
前記(D)微粒子含有有機繊維と(E)微粒子非含有有機繊維の割合[(D)微粒子含有有機繊維/(E)微粒子非含有有機繊維]が、質量比で98/2〜2/98である請求項21又は22に記載のゴム組成物。
【請求項24】
前記(D)微粒子含有有機繊維が、該有機繊維を構成する素材100質量部に対して、該微粒子を5〜90質量部含有する請求項1〜23のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項25】
前記(D)微粒子含有有機繊維が、微粒子としてモース硬度が2以上であり、粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmであり、平均粒子径が10〜30μmであるものを含む請求項1〜24のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項26】
前記(D)微粒子含有有機繊維及び(E)微粒子非含有有機繊維に使用される繊維が、径0.01〜0.1mm、及び長さ0.5〜20mmである請求項1〜25のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項27】
前記(D)微粒子含有有機繊維の微粒子が、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上のものである請求項1〜26のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項28】
前記(D)微粒子含有有機繊維の微粒子が、アスペクト比1.1以上で、かつ角部が存在している請求項1〜27のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項29】
前記(D)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される請求項1〜28のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項30】
前記(D)微粒子含有有機繊維及び(E)微粒子非含有有機繊維を構成する素材がポリエチレン及び/又はポリプロピレンからなる結晶性高分子であり、かつ融点が190℃以下である請求項1〜29のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項31】
請求項1〜30いずれかに記載のゴム組成物をトレッド部の路面と実質的に接する面に用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項32】
前記実質的に路面と接する部分のトレッドゴム層の発泡率が3〜50%である請求項31に記載のタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−254852(P2010−254852A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108146(P2009−108146)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】