説明

ゴム組成物

【課題】 車のガラス用ワイパーブレードであって、ガラスの油膜・汚れの除去性能に優れた、ゴム組成物からなるワイパーブレードを提供する。
【解決手段】 不飽和結合を有するゴム100質量部、カーボンブラック50〜100質量部、酸化セリウム1〜20質量部およびアナターゼ型酸化チタン1〜20質量部を含むゴム組成物から得られたワイパーブレード成形体のガラス面と接触する面に酸化セリウムおよびアナターゼ型酸化チタンを露出させることで、ガラス面の油膜や汚れの除去性能に優れるワイパーブレードを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、その成形体および自動車用ワイパーブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にゴム成形体はその弾性を利用してシール部材や防振部材、自動車用ウェザーストリップやワイパーブレードに広く使用されている。ワイパーブレードには天然ゴムをはじめとしてクロロプレンゴム、EPDMゴム等の各種合成ゴムが使用されているが、ワイパーブレードは水滴や埃を拭き取ることは出来てもガラス面の油膜を除去することは困難であり、油膜除去剤を使用してガラス面を清掃しなければならないという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決する手段として、ワイパー本体より油膜除去剤を噴出させる方法(例えば特許文献1参照)が提案されているが、特殊な装置を設置しなくてはならない。また、特殊な繊維を利用した不織布ワイパー(例えば特許文献2参照)が提案されているが、自動車ガラス用には一般的ではない。一方、ゴムに電気石及び架橋剤を混練してワイパーブレードを製造する方法(例えば特許文献3参照)が提案されているが、特殊な原料を使用するためコストが高くなる難点があった。
【特許文献1】実用新案公開平06−42479号公報(第2頁:請求項1〜3)
【特許文献2】特開平6−14860号公報(第2頁:請求項1〜2)
【特許文献3】特開平10−16721号公報(第2頁:請求項1〜7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ガラス面の油膜や汚れの除去効果に優れる自動車用ワイパーブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、不飽和結合を有するゴムを100質量部、カーボンブラックを50〜100質量部、酸化セリウムを1〜20質量部およびアナターゼ型酸化チタンを1〜20質量部を含むゴム組成物と、そのゴム組成物から得られた成形体である。
また、本発明は、その成形体が自動車用ワイパーブレードであって、特にガラス面に接触するワイパーブレード成形体の一部又は全部の面に、酸化セリウムおよびアナターゼ型酸化チタンを露出させてなる自動車用ワイパーブレードである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゴム組成物を用いたワイパーブレードは、従来のゴム組成物を用いた場合に比べ、油膜や汚れの除去効果に大幅に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に使用するゴムは、不飽和結合を有するゴムである。不飽和結合を有するゴムは、例えば、天然ゴム、アクリロニトリル―ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン―ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。また、これにより、成形体を加硫して強度を向上でき、またハロゲン化処理で成形体表面を容易に硬化できる。
【0008】
ゴム組成物は、強度を向上させるために補強性充填剤としてカーボンブラックをゴム100質量部に対して50〜100質量部含む。カーボンブラックの配合量が70〜90質量部であるとより好ましい。カーボンブラックの配合量が50質量部未満では補強性が不十分であり、100質量部を超えると成形性が低下し作業性が劣る場合がある。
【0009】
ゴム組成物は、酸化セリウムをゴム100質量部に対して1〜20質量部含む。酸化セリウムの配合量がゴム100質量部に対して2〜10質量部であるとより好ましい。酸化セリウムの配合量が1質量部未満では油膜や汚れの除去効果が小さく、20質量部を超えると得られるワイパーブレードの強度が低下する場合がある。
【0010】
ゴム組成物は、アナターゼ型酸化チタンをゴム100質量部に対して1〜20質量部含む。アナターゼ型酸化チタンの配合量がゴム100質量部に対して2〜10質量部であるとより好ましい。アナターゼ型酸化チタンの配合量の合計が1質量部未満では油膜や汚れの除去効果が小さく、20質量部を超えると得られるワイパーブレード強度が低下する場合がある。
【0011】
酸化セリウムはガラス研磨剤として知られており、研磨剤用途には単独で使用されている。一方、アナターゼ型酸化チタンは、光(太陽光や蛍光灯の紫外線)を受けると非常に強い酸化力をもつ電荷が生じ、そこに油膜や汚れが接触するとそれらを水と二酸化炭素に分解する能力を有している。
効果を高めるために、ガラス面に接触する成形体の少なくとも一部または全部の面に、酸化セリウムおよびアナターゼ型酸化チタンを露出させることが好ましい。具体的には、ワイパーブレード成形体の一部を、例えば、断裁処理してゴム内層を露出させることで酸化セリウムおよびアナターゼ型酸化チタンを露出させることができる。この処理によりワイパーブレード成形体がガラスと接触する部位に、酸化セリウムおよびアナターゼ型酸化チタンを露出させ、油膜や汚れを除去する効果が発現される。
【0012】
更に本発明では、その効果を阻害しない範囲で、通常のゴム組成物に使用される無機充填剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤等を併用してもよい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ルチル型酸化チタン、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカ、ベントナイト、活性白土、ガラス繊維、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、炭素繊維等があり、これらは単体だけでなく2種以上を混合して使用しても良い。また、無機充填剤の粒径は、ゴムへの分散性の観点から、1〜50μmが好ましい。成形性の調整に有効な軟化剤や可塑剤の例としては、パラフィン系やナフテン系等のプロセスオイル、流動パラフィン、その他のパラフィン類、ワックス類、フタル酸系やアジピン酸系、セバシン酸系、リン酸系のエステル系可塑剤類、ステアリン酸やそのエステル類、アルキルスルホン酸エステル類などがあげられる。
【0013】
本発明のゴム組成物は、加硫することによりゴム強度を向上させることができる。加硫剤としては、例えば、硫黄、ポリスルフィド、塩化硫黄等の含硫黄化合物からなる硫黄系や、p−キノンジオキシム、p−p’−ジベンゾイルキノンオキシム等のオキシム系、t−ハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系が挙げられる。加硫剤は複数種のものを組み合わせて使用してもよい。これら加硫剤の使用量は、ゴム100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部が好ましい。加硫剤が0.1質量部未満では加硫が充分でなく、10質量部を超えると加硫剤がブルームしやすくなる傾向がある。
【0014】
加硫処理の促進を目的に加硫促進剤を使用してもよい。加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系や、
2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾールジスルフィド等のチアゾール系、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系、n−ブチルアルデヒドアニリン等のアルデヒドアミン系、N−シクロヘキシルー2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン等のグアニジン系、ジエチルチオユリア、トリメチルチオユリア等のチオユリア系、亜鉛華などの化合物が挙げられる。加硫促進剤はこれらの単体だけでなく、2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。これら加硫促進剤の使用量は、ゴム100質量部に対し0.1〜10質量部で、特に0.2〜5質量部が好ましい。
加硫促進剤が0.1質量部未満では加硫促進効果が少なく、10質量部を超えると加硫速度を調整しにくくなると共に加硫促進剤がブルームしやすくなる傾向がある。
【0015】
ゴム組成物は、上記各成分を、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等公知の混練装置を用いて混練することにより得ることができ、これを例えば、プレス成形や押出成形等の従来公知の成形方法により成形してワイパーブレード等の成形体を得ることが出来る。
【0016】
本発明のゴム組成物からなる成形体は、その表面がハロゲン化処理されたものであることが好ましい。このハロゲン化処理によりゴム表面は樹脂化して硬度が増し滑り性、耐摩耗性が向上する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部及び%は質量基準に基づく。
【0018】
本実施例において使用した材料は、それぞれ以下に示したものである。
(1) ゴム成分:天然ゴム、EPDM(DSMジャパン(株)製、「ケルタン6640B」)、CR(電気化学工業(株)製「S−40V」)
(2)カーボンブラック:旭カーボン(株)製「旭#60」
(3)酸化セリウム:ケメット・ジャパン(株)製「K101」
(4)アナターゼ型酸化チタン:石原産業(株)製「ST−41」
(5)ルチル型酸化チタン:堺化学工業(株)製「R−820」
(6)加硫剤:粉末硫黄(細井化学工業(株)製)
(7)加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(大内新興(株)製、「ノクセラーCZ」
【0019】
本発明は、各特性を以下に記載した方法で評価し、表1で示した。
油膜除去性:25℃の粘度が1,000mm/sのシリコーンオイルをしみ込ませたウェスで自動車の前面ガラスを拭いた後、別なウェスで拭き取り、ガラス表面に油膜を生成させた。次に、下記の方法で成形したワイパーブレードを実車のワイパーに取り付け、晴天の日中にワイパーを5千回作動後にガラス表面に実車のウィンドーウォッシャー液を噴霧し、ワイパーを1回作動させてガラス表面の油膜の状況を観察した。油膜が短時間で完全に除去されたものを○、若干の拭きむらが残ったものを△、大きく拭きむらが残ったものを×とした。
引張応力:JIS3号ダンベルにて速度500mm/分で引張り、最大応力を求めた。
【0020】
「実施例1」
表1の実施例1の配合に示した成分を、容量3リットルのニーダーミキサーを用いて120℃で5分間混練し取り出した。得られた混錬物を180℃にてプレス成形機で厚み5mm、縦100mm、横100mmのゴム板を作製し、更にそのゴム板から打ち抜き刃で打ち抜いてJIS3号ダンベルを作製した。また同じ温度条件で実車用ワイパーブレード成形体も成形した。更にこのワイパーブレード成形体を、ハロゲン化処理を実施し、その後ガラス面と接触する部位を断裁し、ゴム組成物の内層が表面に現れたワイパーブレードを得た。これらについて、上記のとおりの評価を行い、表1に示した。
なお、ワイパーブレード成形体のハロゲン化処理は、次亜塩素酸ソーダを水で希釈した塩素濃度が0.3%の塩素水に、ワイパー成形体を20℃で15分間浸漬させ、その後乾燥することで行った。
【0021】
「実施例2〜3」及び「比較例1〜5」
表1に示した実施例2〜3及び表2に示した比較例1〜5の配合処方にて、実施例1と同様の方法でダンベルとワイパーブレードを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果は、表1及び表2にまとめた。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和結合を有するゴム100質量部、カーボンブラック50〜100質量部、酸化セリウム1〜15質量部およびアナターゼ型酸化チタン1〜15質量部を含むゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物からなる成形体。
【請求項3】
成形体が自動車用ワイパーブレードである請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
ガラス面に接触する成形体の面の少なくとも一部また全部に、酸化セリウムおよびアナターゼ型酸化チタンを露出させてなることを特徴とする請求項3記載の自動車用ワイパーブレード。


【公開番号】特開2007−191599(P2007−191599A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11878(P2006−11878)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(591129771)シー・アール・ケイ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】