説明

ゴム組成物

【課題】 本発明は、アルキルフェノール樹脂を用いる樹脂架橋において、ハロゲン含有化合物、又は有機酸等の金属腐食の原因となる架橋促進剤を使用することなしに、通常の樹脂架橋温度条件での架橋速度が速くかつ架橋後に粘着性を有さないゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 ブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴム100重量部に対して、アルキルフェノール樹脂1〜30重量部及びモレキュラーシーブ1〜100重量部を含有しているゴム組成物により、ハロゲン含有化合物、又は有機酸等の金属腐食の原因となる架橋促進剤を使用することなしに、通常の樹脂架橋温度条件での架橋速度が速くかつ架橋後に粘着性を有さないゴム組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴムとアルキルフェノール樹脂とからなるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴムをアルキルフェノール樹脂を用いて樹脂架橋する際に、架橋促進剤として、例えば、塩化第一錫、塩化第二鉄や塩化鉛等の金属ハロゲン化物、クロロプレンゴム、塩素化パラフィン等の有機ハロゲン化物、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸等が使用されている。
【0003】
しかるに、このようにしてアルキルフェノール樹脂架橋されたゴム製品は、各種金属、金属部品と接触している部分において、金属の腐食を促進し、表面の外観の悪化、強度の低下、電気抵抗の増大等の問題を引き起こす場合がある。また、上記架橋促進剤を配合したゴム組成物を混練り加工する場合においても、ロール、金型等の腐食が問題となる場合がある。
【0004】
また、架橋促進剤を使用しない場合は、ブチルゴム及び又はEPDMを主成分とするゴムをアルキルフェノール樹脂を用いて樹脂架橋する際、高温で長時間架橋を行うか、もしくは二次架橋を行う必要があり、生産効率が非常に悪い。
【0005】
上記問題点を解決するために脱水剤を配合して樹脂架橋時間を短縮する方法(特許文献1)が開示されている。しかしながら、特許文献1の実施例に開示されている酸化カルシウムを配合した架橋ゴム組成物は著しい粘着性を有し、実使用に耐えられない。また適用可能な脱水剤として例示されている脱水剤の中のシリカゲルは、通常の樹脂架橋温度条件下における水の吸着能力が低いために期待する効果が得られない。
【0006】
【特許文献1】特許平6−172590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アルキルフェノール樹脂を用いる樹脂架橋において、ハロゲン含有化合物、又は有機酸等の金属腐食の原因となる架橋促進剤を使用することなしに、通常の樹脂架橋温度条件での架橋速度が速く、かつ、架橋後に粘着性を有さないゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは課題解決に向けて鋭意検討した結果、ブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴム100重量部に対して、アルキルフェノール樹脂1〜30重量部及びモレキュラーシーブ1〜100重量部を含有しているゴム組成物により、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の実施態様は、ブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴム100重量部に対して、アルキルフェノール樹脂1〜30重量部及びモレキュラーシーブ1〜100重量部含有していることを特徴とするゴム組成物である。
【0010】
本発明において用いられるブチルゴムの具体例としては、ポリサーブチル402(ポリサー社製)、ブチル268(日本ブチル社製)等が挙げられる。
本発明に用いられるEPDMの具体例としては、ESPRENE 505(住友化学社製)、EP33、EP43(JSR社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いられるアルキルフェノール樹脂としては、具体的には、炭素数1〜18のアルキル基を有するフェノール類とホルムアルデヒド類との縮合によって得られるレゾール型アルキルフェノール樹脂であり、ゴム100重量部に対して1〜30重量部、さらに好ましくは3〜20重量部配合される。配合量が1重量部より少なすぎると、ゴムの架橋が不十分となり、また配合量が30重量部より多すぎると過剰なアルキルフェノール樹脂によるゴム物性の低下が生じる。
【0012】
本発明において用いられるアルキルフェノール樹脂の原料となる炭素数1〜18のアルキル基を有するフェノール類としては、具体的にはたとえば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−iso−プロピルフェノール、3−iso−プロピルフェノール、4−iso−プロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−アミルフェノール、3−アミルフェノール、4−アミルフェノール、2−t−オクチルフェノール、3−t−オクチルフェノール、4−t−オクチルフェノール等を挙げることができる。これらのうちでも、特にp−クレゾール、4−t−ブチルフェノール、4−アミルフェノール、4−t−オクチルフェノールが好適に用いられる。このようなアルキルフェノール樹脂は、例えば、タッキロール201、タッキロール202(いずれも田岡化学工業社製)、ヒタノール2501Y(日立化成工業社製)等として市販されているものが用いられる。
【0013】
本発明において用いられるモレキュラーシーブの配合量は、使用されるアルキルフェノール樹脂の種類、架橋温度、また、目的とする架橋速度等により適宜調整されるが、ブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴム100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、3〜50部が更に好ましい範囲である。モレキュラーシーブの配合量が1重量部より少なすぎると期待する効果が得られない、また100重量部より多すぎると架橋ゴムの機械的物性の低下をきたす。
【0014】
本発明において用いられるモレキュラーシーブの種類について、特に制限はなく、例えば、3A、4A、5A、13X等孔径が異なるものであっても用いることができる。これらの内、3Aと4Aが架橋特性の点から好ましい。 また、モレキュラーシーブの形状に関しても特に制限はなく、ペレットであっても粒状であっても用いることができるが、ゴム組成物中でのモレキュラーシーブの分散性の点から、粉末状のものが好ましく、特に粒径500ミクロン以下の粉末状のものがより好ましい。
【0015】
本発明のゴム組成物には、必要に応じてブチルゴム、EPDM以外の合成ゴム、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等を配合することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物は、通常、ゴムに配合される充填剤、軟化剤(オイル等)、老化防止剤、粘着付与剤等を、必要に応じて配合可能である。これらは、ゴム物性の改良、加工性の改善、その他の目的で添加される。
【0017】
本発明のゴム組成物に使用される充填剤としては例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、タルク、酸化亜鉛、チタン白等を挙げることができる。
【0018】
本発明のゴム組成物に使用される軟化剤としては、脂肪酸類、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル、アロマチック系プロセスオイル、ワックス類等を挙げることができる。ここで、脂肪酸類としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等を挙げることができる。ナフテン系プロセスオイルとしては、例えば、コーモレックス2号、PW−90等を挙げることができる。パラフィン系プロセスオイルとしては、例えば、サンパー107、−115、−150等が挙げることができる。ワックス類としては、パラフィンワックス等を挙げることができる。
【0019】
本発明のゴム組成物において、特徴とするモレキュラーシーブの配合方法は、ゴム成分、アルキルフェノール樹脂、その他の配合剤と同時に混練してもよいし、予め特定の成分と混合又は混練してもよい。例えば、ゴム成分とモレキュラーシーブを予め混練してモレキュラーシーブの分散性を良くした後に、アルキルフェノール樹脂、他の配合剤との配合混練しても良い。
本発明のゴム組成物の配合混練は、ロール、ニーダ、バンバリー等の公知の混練設備を用いることが出来る。
本発明のゴム組成物の配合混練温度は、通常、0〜150℃の範囲である。温度が0℃より低すぎると均一混合が困難となる傾向があり、温度が150℃より高すぎると混練時に架橋反応が起こる場合がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、アルキルフェノール樹脂を用いる樹脂架橋において、ハロゲン含有化合物、又は有機酸等の金属腐食の原因となる架橋促進剤を使用することなしに、通常の樹脂架橋温度条件での架橋速度が速く、かつ、架橋後に粘着性を有さないゴム組成物を提供することができる。
【0021】
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
100重量部のポリサーブチル402(ポリサー社製:ブチルゴム)にタッキロール201(田岡化学工業社製:レソ゛-ル型アルキルフェノール・ホルムアルテ゛ヒト゛共縮合樹脂)を18重量部、HAFカーボンを50重量部、ステアリン酸を1重量部、亜鉛華を5重量部およびモレキュラーシーブ3A(ユニオン昭和社製:形状;粒状 粒子径 250ミクロン以下)10重量部を配合した組成物を6インチ・オープンロールを用いてロール温度20℃、20分間混練を行い、ゴム配合組成物Aを得た。
【実施例2】
【0023】
モレキュラーシーブ3A 10重量部をモレキュラーシーブ4A(ユニオン昭和社製:粒状 粒子径250ミクロン以下)10重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Bを得た。
【実施例3】
【0024】
モレキュラーシーブ3A 10重量部をモレキュラーシーブ4A(ユニオン昭和社製:形状;粒状 粒子径250ミクロン以下)50重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Cを得た。
【実施例4】
【0025】
モレキュラーシーブ3A 10重量部をモレキュラーシーブ5A(ユニオン昭和社製:形状;粒状 粒子径250ミクロン以下)10重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Dを得た。
【実施例5】
【0026】
モレキュラーシーブ3A 10重量部をモレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和社製:形状;粒状 粒子径250ミクロン以下)10重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Eを得た。
【実施例6】
【0027】
モレキュラーシーブ3A 10重量部をモレキュラーシーブ4A(キシダ化学社製:形状;ペレット 1/16)10重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Fを得た。
【実施例7】
【0028】
100重量部のEP33(JSR社製:EPDM)にタッキロール201を18重量部、SRFカーボンを50重量部、ステアリン酸を1重量部、亜鉛華を5重量部およびモレキュラーシーブ3A15重量部を配合した組成物を6インチ・オープンロールを用いてロール温度20℃、20分間混練を行い、ゴム配合組成物Gを得た
【0029】
(比較例1)
モレキュラーシーブ3A 10重量部をシリカゲル(キシダ化学社製:形状;粒状 粒子径60〜220ミクロン)10重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Hを得た
【0030】
(比較例2)
モレキュラーシーブ3A 10重量部を酸化カルシウム(キシダ化学社製:形状;粒状 粒子径60ミクロン以下)10重量部に代える以外は実施例1と同様の操作を行い、配合組成物Iを得た
【0031】
(比較例3)
モレキュラーシーブ3A 10重量部を用いない以外は実施例1と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Jを得た
【0032】
(比較例4)
モレキュラーシーブ3A 15重量部を用いない以外は実施例7と同様の操作を行い、ゴム配合組成物Kを得た
【0033】
(ゴム配合組成物についての評価)
A〜Iのゴム配合組成物について、架橋特性、圧縮永久ひずみ、剥離性および引張り物性について、下記に示す方法で測定し、その結果を表1〜3に記載した。
【0034】
「架橋特性試験」
(株)東洋精機製作所製ロータレスレオメータを用い、180℃×60分間における架橋曲線から、求めた。

T(10):加硫曲線から求められた、トルクの最大値と最小値との差の
10%に達するまでの時間(分)
T(90):加硫曲線から求められた、トルクの最大値と最小値との差の
90%に達するまでの時間(分)
ML :加硫曲線から求められた、トルクの最小値(kg・cm)
MH :加硫曲線から求められた、トルクの最大値(kg・cm)

【0035】
「圧縮永久ひずみ」
JIS K6262準拠、圧縮下における加熱時間は105℃×72時間とした。
試験片の作成は180℃×60分で架橋を行った。
【0036】
「引張り試験」
JIS K6251に準拠し、ダンベル状3号形試験片を用い、破断点強度(MPa)を測定した。
試験片の作成は180℃×60分で架橋を行った。
【0037】
「離型性評価」
180℃、60分、プレス圧力 0.64MPa、成型シート寸法 150mm×150mm、厚み 1mm (2枚取り)で配合物のプレス架橋を行い、金型からの離型性を以下の基準で評価した。
×:離型不可能
○:離型容易
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム及び/又はEPDMからなるゴム100重量部に対して、アルキルフェノール樹脂1〜30重量部及びモレキュラーシーブ1〜100重量部を含有している事を特徴とするゴム組成物。

【公開番号】特開2007−238673(P2007−238673A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59909(P2006−59909)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】