説明

ゴム組成物

【課題】多量の磁性粉を含有させて磁力特性を高めつつ、かつ加工性、耐熱性及び接着性に優れたゴム組成物を提案する。
【解決手段】固形NBR及び水素添加NBRからなる固形ポリマー成分を75〜95重量部と、液状NBRからなる液状ポリマー成分を5〜25重量部とをブレンドしてなるゴム主材100重量部に対して、磁性粉を800〜1500重量部含有してなり、特に、前記固形ポリマー成分は、ニトリル含量が36重量%以上の固形NBRと、ニトリル含量が25〜44重量%でかつ水素添加率75〜95%の水素添加NBRとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の技術に関し、より詳細には、ジエン系ゴムであるNBRからなるゴム主材と磁性粉を含む磁性ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ABS(Antilock Brake System)センサ、クランク角センサ及びその他回転部分の速度や角度を検出するためのセンサ部位には、磁気エンコーダが用いられており、かかる磁気エンコーダにはゴム組成物としてのセンサ用ゴム磁石が用いられている。かかるゴム組成物としては、耐油性、耐用材性、耐寒性、加工性などの点でアクリロニトリルとブタジエンとの共重合体であるNBRがゴム主材として優れており、センサ用ゴム磁石として多く用いられているところである。
【0003】
特に、センサ用ゴム磁石に用いられるゴム組成物では、所定の磁力を有することが重要な特性となり、その磁力特性はゴム組成物中の磁性粉の含有率に大きく影響される。つまり、磁性粉の含有率の高いものほど磁力特性が優れるため、ゴム組成物中により多くの磁性粉を含有させる必要がある。しかし、その一方で、一般的に磁性粉の含有率が高くなるに従って、ゴム組成物の粘度が高くなり、ゴム組成物の粘度上昇による加工性の悪化や、成形物の硬度が上昇してゴム磁石としての柔軟性が失われるなどの問題がある。さらには、このように高い磁力特性を有することに加えて、その使用目的や用途に鑑みて、耐熱性及び接着性がより向上されることが希求されている。
【0004】
かかる観点から、従来のゴム組成物としては、例えば、特許文献1では、実用域の磁気特性を付与し、かつエンコーダとして使用されるために必要とされる耐熱性、耐水性及び耐油性を有する目的で、所定の水素添加率(ヨウ素価)の水素添加NBRに対し、所定量のストロンチウムフェライト、シランカップリング剤及び滑剤を混合してなるエンコーダ用磁性ゴム組成物が提案されている。また、特許文献2では、磁性粉本来の高い磁力を保持しながら、かつゴム本来の物性を損なうことなくゴム組成物の粘度を低く抑え、加工性を改良し、耐熱性及び成形物の柔軟性を保つために、所定の固形NBRと液状NBRとをブレンドしたゴム主材を配合したゴム組成物が提案されている。
【0005】
確かに、上述した特許文献1及び特許文献2にて開示されるゴム組成物では、磁性粉を含有した磁性ゴム組成物として、所定量の磁性粉を含有させた場合であれば、ゴム主材に水素添加NBRを用いることでその耐熱性を向上させ、また、ゴム主材に固形NBRと液状NBRをブレンドすることで加工性や成形物の柔軟性を向上させることが期待できる。しかしながら、これらの従来のゴム組成物では、磁性粉の含有率をより高めて磁力特性を向上させるためには、かかるゴム主材や配合剤をそのまま用いただけでは、磁気特性の悪化や、加工性や接着性の低減を抑制することが困難であった。
【0006】
このように、従来のゴム組成物では、多量の磁性粉を含有させる場合に、加工性、耐熱性及び接着性の点で技術的な課題があり、改善の余地を残したものとなっていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3584446号公報
【特許文献2】特許第3982252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、ゴム組成物に関し、前記従来の課題を解決するもので、多量の磁性粉を含有させて磁力特性を高めつつ、かつ加工性、耐熱性及び接着性に優れたゴム組成物を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、磁性粉と耐油性のゴム主材とを含むゴム組成物として、ゴム主材に、固形ポリマー成分としての固形NBRと水素添加NBRを、液状ポリマー成分として液状NBRをブレンドすることで、多量の磁性粉を含有させて磁力特性を高めつつ、かつ加工性、耐熱性及び接着性に優れた従来にない磁性ゴム組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至ったのである。
【0010】
すなわち、請求項1においては、固形NBR及び水素添加NBRからなる固形ポリマー成分を75〜95重量部と、液状NBRからなる液状ポリマー成分を5〜25重量部とをブレンドしてなるゴム主材100重量部に対して、磁性粉を800〜1500重量部含有してなるものである。
【0011】
請求項2においては、前記固形ポリマー成分は、ニトリル含量が36重量%以上の固形NBRと、ニトリル含量が25〜44重量%でかつ水素添加率75〜95%の水素添加NBRとからなるものである。
【0012】
請求項3においては、前記固形ポリマー成分は、固形NBRを40〜45重量部と、水素添加NBRを40〜45重量部とからなるものである。
【0013】
請求項4においては、含硫黄有機化合物の中から選ばれる少なくとも一種、及び有機過酸化物化合物の中から選ばれる少なくとも一種をそれぞれ併用してなる可塑剤を含有してなるものである。
【0014】
請求項5においては、芳香族第2級アミン系化合物の中から選ばれる少なくとも一種、及びベンゾイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも一種をそれぞれ併用してなる老化防止剤を含有してなるものである。
【0015】
請求項6においては、前記請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いてなるセンサ用ゴム磁石である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、固形NBR、水素添加NBR及び液状NBRをブレンドしたゴム主材とすることで、多量の磁性粉を含有させて磁力特性を高めつつ、かつ加工性、耐熱性及び接着性を改善することができ、センサ用ゴム磁石などの多様な用途に最適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
1.ゴム主材
本発明のゴム組成物では、ゴム主材に、ポリマー成分としてNBRが選択され、その形状に応じて固形ポリマー成分及び液状ポリマー成分がブレンドされてなるものであって、特に、固形ポリマー成分としての固形NBR及び水素添加NBRが、液状ポリマー成分として液状NBRがそれぞれブレンドされて用いられることを特徴としている。
【0019】
ここで、「固形ポリマー成分」とは、加硫成形前のゴム組成物中でシート状、ベール状、粉末状などの固形状又は固形分を含む形状のポリマー成分(NBR)のことをいい、一方で、「液状ポリマー成分」とは、固形ポリマー成分と異なり、加硫成形前のゴム組成物中で液状のポリマー成分のことをいう。
【0020】
また、本発明では、「固形NBR」とは、水素添加NBR以外の固形状又は固形分を含む形状のNBRのこといい、「水素添加NBR」とは、NBR中の不飽和結合が(一部)水素化された改質NBRのことをいう。つまり、本発明において単に固形NBRといった場合には、この水素添加NBRを含まないNBRのことを意味している。また、「液状NBR」とは、固形NBR以外の室温で流動性を有する液状のNBRのことをいう。
【0021】
固形NBRは、通常、中ニトリル(ニトリル含量25〜30%)や中高ニトリル(同31〜35%)など様々なニトリル含量のものが用いられるが、本発明では、特に、ニトリル含量が36%以上の高ニトリルが用いられる。中でも、耐油性及び耐熱性の観点から、好ましくはニトリル含量が40〜50%、より好ましくはニトリル含量が43〜48%のものが用いられる。
【0022】
水素添加NBRは、一般的に、ポリマー主鎖中の不飽和結合の残存量として水素添加率(%)(又はヨウ素価)の指標で特定され、この水素添加率が高くなるほど、耐熱性や耐候性などの改良効果が高くなる。本発明の水素添加NBRは、ニトリル含量が25〜44重量%でかつ水素添加率75〜95%のものが用いられ、好ましくはニトリル含量が30〜40重量%でかつ水素添加率80〜90%のものが用いられる。
【0023】
液状NBRは、固形ポリマー成分と同一の加硫剤で共架橋でき、かつB型粘度(70℃)で4〜8Pa・sのものが用いられる。これは、B型粘度がこれ以下のものを用いると加硫物の強度が低下し、一方、B型粘度がこれ以上のものを用いると可塑性が劣化するからである。ゴム主材に液状NBRをブレンドすることで、ゴム組成物の粘度を容易に調整することができ加工性を向上できる。
【0024】
固形ポリマー成分(固形NBR+水素添加NBR)と液状ポリマー成分(液状NBR)との配合割合は、固形ポリマー成分が75〜95重量部に対して液状ポリマー成分が5〜25重量部の割合で混合され、好ましくは固形ポリマー成分が80〜90重量部に対して液状ポリマー成分が10〜20重量部の割合で混合される。液状ポリマー成分が25重量部より多い割合で用いられると接着性が悪くなり、一方、5重量部以下で用いられると固形ポリマー成分と反応し得る液状ポリマー成分の添加効果が低くなるからである。
【0025】
なお、固形ポリマー成分として固形NBRと水素添加NBRとの配合割合は、耐熱性及び接着性の観点から適宜調製することができ、好ましくは固形NBRを40〜45重量部と水素添加NBRを40〜45重量部とがブレンドされる。水素添加NBRの配合割合が少なすぎる(固形NBRが多過ぎる)と耐熱性が低減するので好ましくなく、また逆に水素添加NBRの配合割合が多過ぎる(固形NBRが少な過ぎる)と接着性が低減するので好ましくない。
【0026】
2.磁性粉
本発明のゴム組成物では、ゴム主材に対して磁性粉が混練されて用いられる。磁性粉としては、フェライト系磁性粉、希土類磁性粉、γ酸化鉄粉、二酸化クロム、コバルト−クロム合金粉などが挙げられる。フェライト系磁性粉としては、フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライトなどが挙げられる。希土類磁性粉に用いられる希土類元素としては、サマリウム、ネオジムなどが挙げられる。これらの中で、磁力が大きい点および低コストである点でフェライトやストロンチウムフェライトが好ましく用いられる。
【0027】
磁性粉の配合量は、ゴム主材100重量部に対して800〜1500重量部、好ましくは900〜1200重量部の割合で用いられる。本発明は、磁性粉を多量に配合できることができることを特徴とするものであるが、1500重量部より多い割合で用いられると成形物の柔軟性が悪化するからである。
【0028】
3.その他のゴム配合剤
本発明のゴム組成物には、上述したゴム主材及び磁性粉に加えて、老化防止剤、加硫剤、補強剤や充填剤、各種オイル、滑剤など、センサ用ゴム磁石に一般に用いられる各種ゴム配合剤が配合される。これらのゴム配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる
【0029】
特に、本発明のゴム組成物では、その他のゴム配合剤として、老化防止剤の一成分として芳香族第2級アミン系化合物と、ベンゾイミダゾール系化合物とを併用することで、特異な併用効果が発現される。つまり、本発明の老化防止剤は、芳香族第2級アミン系化合物及びベンゾイミダゾール系化合物の中からそれぞれ選ばれる少なくとも一種が組み合わされて(併用されて)用いられる。
【0030】
芳香族第2級アミン系化合物としては、N−フェニル−α−ナフチルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、p,p’−ジメトキシジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ(β−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソブロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等の一般式で表わされる化合物が挙げられる。これらの化合物は、少なくとも一種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0031】
ベンゾイミダゾール系化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールなどの化合物が挙げられる。これらの化合物は、少なくとも一種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0032】
本発明の老化防止剤としては、芳香族第2級アミン系化合物の中から選ばれる少なくとも一種、及びベンゾイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも一種がそれぞれ併用される。特に、芳香族第2級アミン化合物として4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンと、イミダゾール系化合物として2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩の組み合わせが好ましく用いられる。
【0033】
老化防止剤の配合量は、ゴム主材100重量部に対して4.5〜18重量部の割合で用いられ、好ましくは5.0〜12重量部、より好ましくは5.2〜8.0重量部の割合で用いられる。老化防止剤の含有量が4.5重量部より少ないと、耐熱老化性が低減し、一方で18重量部より多いとブルームが発生して接着性が低減してしまうからである。
【0034】
老化防止剤における芳香族第2級アミン系化合物及びベンゾイミダゾール系化合物の配合割合は、特に限定されないが、芳香族第2級アミン系化合物の配合割合が少なすぎると老化防止効果が低減するので好ましくなく、また逆に多過ぎるとベンゾイミダゾール系化合物との併用効果が発現されないので好ましくない。
【0035】
また、本発明のゴム組成物では、その他のゴム配合剤として、含有機硫黄化合物の中から選ばれる少なくとも一種の加硫剤が含有されてなり、特に、加硫剤としては、好ましくは有機含硫黄化合物と硫黄とが併用されて用いられる。
【0036】
含有機硫黄化合物としては、4,4’−ジチオジモルフォリン、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジチオジカプロラクタムなどが挙げられる。好ましくは4,4’−ジチオジモルフォリン又はジチオジカプロラクタムが用いられる。これらの化合物は、一種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0037】
硫黄は、通常のゴム加硫用に使用されている任意の硫黄とすることができ、その形態としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、脱酸硫黄、分散性硫黄などが挙げられる。これらは、少なくとも一種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
含硫黄有機化合物の配合量は、ゴム主材100重量部に対して0.7〜2.6重量部の割合で用いられ、好ましくは1.0〜2.0重量部、より好ましくは、1.3〜1.7重量部の割合で用いられる。加硫剤の配合量の含有量が0.7重量部より少ないと、耐熱老化性が低減し、一方で2.6重量部より多いと加硫が遅くなって生産性(加工性)が低減するとともに、接着性が低減してしまうからである。
【0039】
また、含硫黄有機化合物の中から選ばれる少なくとも一種に加えて硫黄が併用される場合には、硫黄の配合量は、ゴム主材100重量部に対して0.3〜0.6重量部となる割合で用いられ、好ましくは0.3〜0.5重量部の割合で用いられる。かかる場合において、酸化剤における含硫黄有機化合物及び硫黄の配合割合は、特に限定されず、硫黄は含硫黄有機化合物に対して所定の割合で配合される。含硫黄有機化合物の配合割合が少なすぎると耐熱性が低減するので好ましくなく、また逆に多過ぎると加工性が低減するので好ましくない。
【0040】
なお、本発明の加硫剤としては、その他の加硫剤や加硫促進剤、さらには必要に応じて従来公知の加硫助剤などが併用されてもよい。その他の加硫剤としては、例えば、セレン、テルル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛などの無機化合物や、ジチオカルバミン酸塩、オキシム系、ジニトロソ化合物、ポリアミン、有機過酸化物などの各種有機化合物などが挙げられる。また、加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバメート系、グアニジン系、チオ尿素系、ジチオホスフェート系、キサンテート系などが挙げられる。
【0041】
通常、水素添加NBRの加硫には有機過酸化物を用いて行われることが多いため、本発明のゴム組成物のゴム主材に水素添加NBRが用いられることから、上述したその他の加硫剤の内、特に有機過酸化物が好ましく用いられる。
【0042】
本発明のセンサ用ゴム磁石は、上述したゴム組成物を用いて公知の方法で成形することができる。通常、上述したゴム組成物は密閉式混練機やオープンロール等を用いて混練され、所定温度(約150〜250℃)にて、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等によって架橋成形される。かかる場合には、磁場中で架橋成形をすることでより残留磁束密度を高めることもできる。また、一旦架橋成形された成形物を、所定温度にて再架橋してもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例により制限されるものではない。
【0044】
<使用原料>
次の表1に示すゴム配合剤を使用した。
【0045】
【表1】

【0046】
<耐熱性評価試験及び評価方法>
表1に示したゴム主材、磁性粉、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、滑剤などを、表2に示す割合でそれぞれ配合し(実施例1、2、比較例1〜4)、加硫プレス機にて160℃で12分間加硫成形を行って各試料(成形物)を得た。次に、各試料(成形物)を、厚み1.0(mm)×幅10.0(mm)×長さ100.0(mm)に裁断し、130℃の雰囲気下に100時間暴露させて劣化させた。これを試料毎に10個のサンプルを調製し、各々について180°曲げ試験を行った。評価は、10個のサンプルにおいて亀裂又は割れ等が発生したサンプル数が0〜3個の場合を「○」、3〜7個の場合を「△」、8〜10個の場合を「×」とする3点方式で行った。
【0047】
<接着性評価試験及び評価方法>
表1に示したゴム主材、磁性粉、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、滑剤などを、表2に示す割合でそれぞれ配合し(実施例1、2、比較例1〜4)、加硫プレス機にて160℃で12分間加硫成形を行って各試料(成形物)を得た。次に、JIS K 6256(加硫ゴムの接着試験方法)の90°剥離試験に準じた各試料(成形物)の試験片を負極に、白金を正極にそれぞれ装着して、水温30℃±5℃で濃度5%のNaCl水溶液中で2Aの定常電流を印加し(電圧最大16V)、24時間後のゴム残率(剥離率)に基づいて接着性を評価した。評価は、接着界面での剥離はなくゴム部で破断している場合を「○」、接着界面での剥離があり接着界面又は金属面が露出している場合を「×」とする2点方式で行った。
【0048】
<加工性評価試験及び評価方法>
表1に示したゴム主材、磁性粉、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、滑剤などを、表2に示す割合でそれぞれ配合し(実施例1、2、比較例1〜4)、8インチロール機で混練(50℃、12/10rpm)する際の混練性、及びプレス加硫機でシート状(3.0mm)に加硫成形する際の成形性を評価した。評価は、混練が良好でかつシート成形が容易である場合を「○」、混練に時間がかかりかつシート成形に支障がある場合を「×」とする2点方式で行った。
【0049】
以上の測定結果は、用いたゴム配合剤の種類と共に次の表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2は、ゴム主材の配合量及び種類を変えて耐熱性評価試験、接着性評価試験及び加工性評価試験を行った結果である。この結果から、所定の固形NBR、水素添加NBR及び液状ポリマーをブレンドしたゴム主材を用いたゴム組成物(実施例1、2)が、水素添加NBR単体のゴム組成物(比較例1)、固形NBR単体のゴム組成物(比較例2)、水素添加NBR及び液状NBRをブレンドしたゴム組成物(比較例3)と比較して、多量の磁性粉を含有させつつも、加工性が良好で、かつ耐熱性及び接着性が改善された。また、ゴム主材の各成分の配合量を変えたゴム組成物(比較例4)と比較して、その配合量をコントロールすることで、加工性が良好で、かつ耐熱性及び接着性を改善することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形NBR及び水素添加NBRからなる固形ポリマー成分を75〜95重量部と、液状NBRからなる液状ポリマー成分を5〜25重量部とをブレンドしてなるゴム主材100重量部に対して、磁性粉を800〜1500重量部含有してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記固形ポリマー成分は、ニトリル含量が36重量%以上の固形NBRと、ニトリル含量が25〜44重量%でかつ水素添加率75〜95%の水素添加NBRとからなることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記固形ポリマー成分は、固形NBRを40〜45重量部と、水素添加NBRを40〜45重量部とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
含硫黄有機化合物の中から選ばれる少なくとも一種、及び有機過酸化物化合物の中から選ばれる少なくとも一種をそれぞれ併用してなる可塑剤を含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
芳香族第2級アミン系化合物の中から選ばれる少なくとも一種、及びベンゾイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも一種をそれぞれ併用してなる老化防止剤を含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いてなるセンサ用ゴム磁石。

【公開番号】特開2011−79886(P2011−79886A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230951(P2009−230951)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】