説明

ゴム補強用繊維の表面処理方法

【課題】接着処理工程上でのガムアップ現象を防止し製造工程通過性に優れながら、高温で長時間さらされた後の接着性にも優れたゴム補強用繊維の表面処理方法を提供すること。
【解決手段】繊維表面を、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)及びブロックドポリイソシアネート化合物を含有する接着処理液によって処理する方法において、該接着処理液が接着処理液中のラテックス成分に対し0.1〜3.0重量%のノニオン系界面活性剤を含有するゴム補強用繊維の表面処理方法。さらには、ノニオン系界面活性剤がエーテル型非イオン系界面活性剤であることや、繊維があらかじめエポキシ処理されたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用繊維の表面処理方法に関し、さらに詳しくはゴム繊維複合体の製造に好適に用いられるゴム補強用繊維の表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維は、高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有しており、これを活かしたタイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用繊維として使用されている。しかし、これら繊維はその表面が比較的不活性であることが多く、そのままではゴムや樹脂等のマトリックスとの接着性が不十分であり、繊維の物理的特性を十分に発揮することはできていない。
【0003】
このため、繊維の表面を種々の薬品で処理する化学処理法、例えば、脂肪族エポキシ化合物や、エチレン尿素、ブロックドイソシアネート化合物等の反応性の強い化学薬品で処理して接着性を付与した後に、ブロックドイソシアネート化合物分散体などを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)で処理する、いわゆる2浴処理方法が提案され実用化されている(例えば、特許文献1など)。
【0004】
しかしこのブロックドイソシアネート化合物などの分散体をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)に添加する場合、RFLエマルジョンの安定性が低下し、処理工程にてガムアップ現象が発生しやすいという問題があった。このガムアップ現象とは、特に処理液の付着量を調整するために用いられるスクイズローラーや、熱処理ゾーンのローラー上に発生しやすく、処理液の成分が塊上にロール等に付着する現象であるが、一旦ガムアップが発生すると清掃のために生産設備を休止しなければならなかった。作業が煩雑になるばかりでなく、得られるゴム補強用繊維の品質が安定せず、接着性や外観品位も低下するという問題があったのである。
【0005】
そしてこのガムアップ現象を低減させる目的で、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)、ブロックイソシアネート化合物及びアニオン系界面活性剤を含む処理剤での処理方法(特許文献2)などが提案されているが、高温耐熱接着性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−73994号公報
【特許文献2】特開平8−60555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、接着処理工程上でのガムアップ現象を防止し製造工程通過性に優れながら、高温で長時間さらされた後の接着性にも優れたゴム補強用繊維の表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴム補強用繊維の表面処理方法は、繊維表面を、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)及びブロックドポリイソシアネート化合物を含有する接着処理液によって処理するゴム補強用繊維の表面処理方法において、該接着処理液が接着処理液中のラテックス成分に対し0.1〜3.0重量%のノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする。
さらには、ノニオン系界面活性剤がエーテル型非イオン系界面活性剤であることや、繊維があらかじめエポキシ処理されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、接着処理工程上でのガムアップ現象を防止し製造工程通過性に優れながら、高温で長時間さらされた後の接着性にも優れたゴム補強用繊維の表面処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に使用される繊維としては特に制限はないが、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維などの合成繊維に特に好ましく用いられる。特に本発明はポリエステル繊維に対して有効である。ここでポリエステル繊維としては、テレフタル酸、または、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたはテトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維が好ましく用いられる。繊維のデニール、フィラメント数、断面形状、繊維物性、微細構造や、ポリマー性状(末端カルボキシル基濃度、分子量等)、ポリマー中の添加剤の有無等には、特に限定を受けるものではない。
【0011】
本発明の処理に供される繊維の形態としては、ヤーン、コード、不織布、織編物等種々の繊維集合形態が含まれるが、特には撚糸を行ったコードであることが、その繊維の持つ強度をより有効に発揮するためには好ましい。
【0012】
また本発明で用いられるゴム補強用の繊維は、あらかじめエポキシ処理されたものであることが好ましい。エポキシ処理は紡糸油剤等とともに繊維の製造工程にて付与しても良いが、エポキシ化合物を含有する前処理液にて第1浴処理し、次いで第2浴目で接着処理するいわゆる2浴処理方法であることが好ましい。さらにはこの前処理液にはエポキシ化合物に加えて、イソシアネート化合物及び/またはゴムラテックスを含有することが好ましい。
【0013】
繊維の前処理に好ましく用いられるエポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を該化合物1kg当り2g当量以上含有する化合物が好ましい。具体的には、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ピス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸または過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、即ち3,4−エポキシシクロヘキサンエポキシド、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3、4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジベートなどを挙げることができる。これらのうち、特に多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、すなわち多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現するので好ましい。
【0014】
同じく好ましくは前処理液に用いられるイソシアネート化合物は、特にはイソシアネート基がブロックされたブロックドポリイソシアネート化合物であることが好ましい。このブロックドポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加化合物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生じるものである。
【0015】
より具体的に述べると、ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。特にトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネートが優れた性能を発現するので好ましい。
【0016】
ブロックドポリイソシアネート化合物のブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類,フタル酸イミド類、カプロラクタム,バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類及び酸性亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0017】
さらに第一浴処理用の前処理液には、上記のポリエポキシド化合物および/またはブロックドイソシアネート化合物に加えて、ゴムラテックスを含有させることが好ましい。ゴムラテックスの存在により、被着体であるゴムとの共加硫がおこり、例えばこのことは、剥離テスト時に高いゴム付きが実現されることからも確認される。
【0018】
好ましく用いられるゴムラテックスとしては、例えば天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン系ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス等があり、これらを単独または併用して使用する。なかでも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを単独使用または併用使用するのが好ましい。併用使用の場合には、ポリ塩化ビニルラテックスも含めた全ラテックス重量の1/3量以上使用した場合に特に優れた性能を示す。
【0019】
このような上記前処理液は、各成分を、通常乳化液、水分散液、あるいは水溶液として組成物に配合される。乳化液または水分散液にするには、例えばその化合物を、そのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解した後、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩等を用いて乳化または分散させればよい。
【0020】
本発明における前処理液のマトリックス成分を水分散物として用いる際の分散剤、すなわち界面活性剤の適当な量は、前処理液の全固型分に対し、0〜15wt%、好ましくは10wt%以下であり、上記範囲を超えると接着性が低下する傾向にある。水溶性シリコーンなどの表面張力低下剤の添加も有効であり、これらの添加により加工時の濡れ性が向上するため、特に低濃度で処理した場合の性能が向上する。
【0021】
また、かかる前処理液を繊維に付着せしめるには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、または、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、該ポリエステル繊維に対する固形分付着量は、0.1〜3重量%の範囲が好ましい。繊維に対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
【0022】
そして本発明のゴム補強用繊維の表面処理方法は、上記のようなエポキシ処理された、あるいは未処理の繊維の繊維表面を、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)及びブロックドポリイソシアネート化合物を含有する接着処理液によって処理する方法において、その接着処理液が接着処理液中のラテックス成分に対し0.1〜3.0重量%のノニオン系界面活性剤を含有することを必須とする表面処理方法である。
【0023】
この本発明で用いられる接着剤であるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)は、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.8〜1:5の範囲にあるものが好ましく使用され、より好ましくは、1:1〜1:4の範囲で用いられる。ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより接着性が低下するおそれがあり、また、ホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に処理後の繊維が著しく硬くなり、強力及び疲労性が低下する問題が出てくるので好ましくない。
【0024】
またこの接着剤中のレゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:3〜1:20の範囲にあるものが好ましく使用され、特に、1:5〜1:15の範囲にあるものが好ましく使用される。ゴムラテックスの比率が少なすぎると処理されたポリエステル繊維が硬くなって耐疲労性が低下しやすくなり、また、被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがあり、逆に、ゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として充分な強度を得ることが出来ないため、満足な接着力やゴム付着率が得られないおそれがあるだけで無く、処理コードの粘着性が著しく高くなりディップ処理工程の汚れや、製品製造工程での汚れの原因となり、好ましくない。
【0025】
また本発明で用いられる接着処理液には、上記のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤に加えて、架橋剤としてブロックドポリイソシアネート化合物を併用することを必須とする。そしてその他の架橋剤を併用してもよく、アミン、エチレン尿素などが例示されるが、処理剤の経時安定性、前処理剤との相互作用などを踏まえ、ブロックドポリイソシアネート化合物のみを用いることが好ましい。
【0026】
この接着処理液中のブロックドポリイソシアネート化合物の添加率は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)に対して0.5〜40重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲であるものが好ましい。添加量を増やすことにより通常は接着力が向上するが、逆に添加量が多すぎると接着剤のゴムに対する相容性が低下し、ゴムとの接着力が低下すると共に、処理後の繊維が著しく硬くなり、強力及び疲労性が低下する傾向にある。
【0027】
本発明のゴム補強用繊維の表面処理方法においては、上記の接着処理液が接着処理液中に含まれるラテックス成分に対し0.1〜3.0重量%のノニオン系界面活性剤を含有することが必要である。さらには0.5〜2.0重量%の範囲のノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。また、このノニオン系界面活性剤はレゾルシン・ホルマリン・ラテックスを調液した後に、0.1〜3.0重量%、特には0.5〜2.0重量%のノニオン系界面活性剤を別添加したものであることが好ましい。このように別にノニオン系界面活性剤を後添加することにより、接着処理液の安定性や耐スカム性をより高めることが可能となる。ノニオン系界面活性剤の量が少なすぎるとガムアップ防止効果が見られず、逆に多すぎると接着性能が低下する。
【0028】
本発明にて好ましく用いられるノニオン系界面活性剤を例示すると、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなどを挙げることができる。またノニオン系界面活性剤がエーテル型非イオン系界面活性剤であることが好ましい。さらに中でも本発明に好適に用いられるノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレン付加物であることが好ましく、ポリオキシエチレン付加数としては5〜30?であることが好ましい。特にはポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
【0029】
本発明のゴム補強用繊維の表面処理方法においては、ノニオン系界面活性剤がラテックスなどの乳化物の表面に固着し保護コロイドとなり、乳化物表面を工程通過の際に保護する層が形成されているものと推定される。そしてノニオン系界面活性剤による保護層により外部からの強い力が加わった際にも乳化物同士の融合が防止され、工程通過中にかかる外力によってもスカムが発生しないのであると考えられる。界面活性剤としては、ノニオン系以外にもアニオンやカチオンの界面活性剤が存在する。しかしアニオンでは、表面電荷の反発による乳化安定化こそ期待されるものの、保護コロイドほどの保護効果を得ることはできない。またカチオンでは、乳化物として一般にアニオンの電荷を有しているラテックスの表面電荷を打ち消し、逆に安定性は著しく減少する。
【0030】
接着処理液の総固形分濃度としては、1〜30重量%の範囲にあるものが好ましい。接着処理液の総固形分濃度が、前記の範囲よりも低い場合には、接着剤表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下する傾向にあり、逆に、総固形分濃度が前記の範囲よりも高い場合には、処理剤の粘度が高くなるため、固形分付着量が多くなりすぎ、ディップ処理工程や製品の製造工程において汚れの原因になるだけでなく、処理コードが硬くなり、耐疲労性が低下する傾向にある。
【0031】
この接着処理液を繊維に付着させるためには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、または、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、繊維に対する接着処理液に由来する接着剤の固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0重量%の範囲にあるものがよい。繊維に対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
【0032】
本発明の表面処理方法は、ゴム補強用繊維をこのような接着剤にて処理し、加熱するものである。加熱条件としては50℃以上で、繊維の融点より10℃以上低い温度の範囲で乾燥・熱処理することが好ましい。より好ましくは、220〜270℃の温度範囲で、0.5〜5分間、さらに好ましくは、1〜3分間乾燥・熱処理する。この乾燥・熱処理温度が低すぎるとゴム類との接着が不十分となる傾向にあり、また、乾燥・熱処理温度が高すぎると繊維が溶融、融着するなどにより、強度低下を起こす傾向にある。
【0033】
このような本発明の表面処理方法にて製造されるゴム補強用繊維は、接着処理工程上でのガムアップ現象を防止し製造工程通過性に優れながら、高温で長時間さらされた後の接着性にも優れたゴム補強用繊維となる。そして耐熱性や安定性に優れるため、タイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用繊維として、特に高温状態でも高い性能を維持し、好ましく用いられるものとなる。
【実施例】
【0034】
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明する。なお各種特性は下記の方法により測定した。
【0035】
(1) コード剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。ゴムシート表層近くに5本のコードを埋め、150℃の温度で、30分間、50kg/cmのプレス圧力で加硫し(初期値)、または180℃の温度で、60分間、50kg/cmのプレス圧力で加硫し(耐熱値)、次いで両端のコードを残し3本のコードをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度で剥離するのに要した力をN/3本で示したものである。
【0036】
(2) コード引抜接着力
処理コードとゴムとの剪断接着力を示すものである。
コードをゴムブロック中に埋め込み、150℃の温度で、30分間加硫し(初期値)、または180℃の温度で、60分間加硫し(耐熱値)、次いでコードをゴムブロックから200mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力をN/cmで表示したものである。
【0037】
(3) エマルジョン安定性
エマルジョン安定性の評価にはマーロン試験機(熊谷理機株式会社製)を使用した。ライナーはNBRゴムシート(厚さ2mm、ゴム強度80°)を用いた。処理液75g、荷重5kg/cm2、回転数1000rpmで5分間の試験をした後に発生した凝集物の量の固形分に対する割合を測定した。
【0038】
[実施例1]
エポキシ化合物(ソルビトールポリグリシジルエーテル)3gに、界面活性剤(ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩30%水溶液)2.5gを加えさらに水734gと攪拌しながら均一に溶解した。次いでブロックドイソシアネート(ε−カプロラクタムブロックドイソシアネートの25重量%水乳化物、S−3、明成化学工業株式会社製)48gを加えてさらに攪拌し、ゴムラテックス(ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーの41重量%水乳化物、ニッポール2518FS、日本ゼオン株式会社製)212.5gを加え均一に混合した。この得られた配合液(前処理液)を第1処理剤(処理液(1))とする。
【0039】
一方、10%苛性ソーダ水溶液4.4g、28%アンモニア水溶液12.8gを水314.6gに加え、よく攪拌して得られた水溶液中に、酸性触媒にて反応せしめたレゾルシン・ホルマリン初期縮合物(65%水溶液、スミカノール700S、住友化学株式会社製)17.7gを添加して十分に攪拌し分散させた。次にVpSBRゴムラテックス(ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー水乳化物、Pyratex、日本エイアンドエル株式会社製)263g及びSBRゴムラテックス(スチレン・ブタジエンコポリマー41重量%水乳化物、ニッポールLX−112、日本ゼオン株式会社製)112.8gを水343.7gで希釈した。この希釈液の中に上記レゾルシン・ホルマリン初期縮合分散液をゆっくりかき混ぜながら加えていき、さらにホルマリン(37%水溶液)15.3gを添加して均一に混合する。次にこの混合液中にブロックイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネートメチルエチルケトオキシムブロック33%水分散物、エラストロンBN−69、第一工業株式会社製)75gにノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン(19モル付加)ラウリルエーテル、エマルゲン147、花王株式会社製)を、2種のゴムラテックスの固形分合計に対して0.1重量%加えて混合し、得られた接着処理液を第2処理剤(処理液(2))とする。
【0040】
固有粘度が0.95のポリエチレンテレフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に40T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて40T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントのコードを得た。
【0041】
該コードをコンビュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の処理液(1)に浸漬した後、130℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、処理液(2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行った。得られたタイヤコードには、処理剤の固形分として、処理液(1)由来の剤が1.4重量%、処理液(2)由来の剤が2.5重量%付着していた。得られた処理コードを、天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴム中に埋め込み、加硫後に前記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2〜4、比較例1〜3]
実施例1で調液した第2処理剤(処理液(2))のノニオン系界面活性剤を表記載の添加量に変更したこと以外は、実施例1と同様に処理を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0043】
[比較例4]
実施例1で調液した第2処理剤(処理液(2))のノニオン系界面活性剤を、アニオン界面活性剤(ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩30%水溶液、ネオコールSW−30、第一工業製薬株式会社製)に変更し、2種のゴムラテックスの固形分合計に対して0.06重量%となるように添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様に処理を行った。接着力測定のうち、耐熱値が劣ったものとなった。評価結果を表1に併せて示す。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面を、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)及びブロックドポリイソシアネート化合物を含有する接着処理液によって処理するゴム補強用繊維の表面処理方法において、該接着処理液が接着処理液中のラテックス成分に対し0.1〜3.0重量%のノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とするゴム補強用繊維の表面処理方法。
【請求項2】
ノニオン系界面活性剤がエーテル型非イオン系界面活性剤である請求項1記載のゴム補強用繊維の表面処理方法。
【請求項3】
繊維があらかじめエポキシ処理されたものである請求項1または2記載のゴム補強用繊維の表面処理方法。

【公開番号】特開2012−154004(P2012−154004A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15316(P2011−15316)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】