説明

ゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法

【課題】 シミュレーションにより、ゴルフクラブヘッドの構造を変更した場合の打音の変化を予測し、打音が良好なゴルフクラブヘッドを効率良く設計することができるゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法を提供する。
【解決手段】 ゴルフクラブの設計システムは、ゴルフクラブヘッドの数値解析可能なゴルフクラブヘッド解析モデルを作成し、ゴルフクラブヘッドから所定の距離離れた応答点に相当する位置に数値解析可能な数値解析モデルを作成する解析モデル作成部と、ゴルフクラブヘッド解析モデルのフェース面に加振力を仮想的に加えて数値解析モデルの周波数応答関数を求め、周波数応答関数とゴルフボール打撃時にゴルフクラブヘッドに加わる加振力とを用いて数値解析モデルにおけるゴルフボール打撃時の音圧の時間波形データを求める解析部と、この音圧の時間波形データを用いてゴルフボール打撃時の打音を評価する評価部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーションにより得られたゴルフクラブヘッドの打音を用いるゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法に関し、特に、シミュレーションにより、ゴルフクラブヘッドの構造を変更した場合の打音の変化を予測するゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフボールをより遠くに飛ばすことのできるゴルフクラブヘッド、スイートスポットが大きく安定したゴルフクラブヘッドが種々提供されている。このようなゴルフクラブヘッドは、例えば、フェース部、ソール部、クラウン部等の構造を変えている。このことから、フェース面、すなわち、打撃面への打撃の際に発生する打音がそれぞれ大きく異なる。このため、実際にはゴルフボールを遠くに飛ばすことができるにもかかわらず、打音自体が鈍い音を発して、飛距離の出ないゴルフクラブとしての印象をゴルファに与えたり、不快なイメージを与える場合も多い。このような背景から、ゴルフクラブによるゴルフボールの打撃時の打音を調整することが望まれている。
ゴルフボールの打撃時の打音を調整するためには、ゴルフクラブの打音のもつ特徴がどのようになるか調整すればよいかの指針が必要である。
【0003】
ところで、望まれた打音を発するゴルフクラブヘッドを製造するためには、ゴルフクラブヘッドを実際に設計し、試作した後に、試打を行い、打音を確かめる必要がある。望まれた打音が得られるまで、設計、試作のサイクルを繰り返し行う。しかしながら、このようなゴルフクラブヘッドの設計方法は、効率が悪く、開発期間および開発コストが増大する傾向がある。そこで、打音に優れたゴルフクラブヘッドを効率良く製造するためのゴルフクラブの設計方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1においては、先ずゴルフクラブヘッドの一次設計が行われる(ステップS1)。そして、一次設計されたゴルフクラブヘッドをコンピュータで、解析アプリケーションソフトを用いてモード解析を行う(ステップS2)。これにより、ゴルフクラブヘッドを実際に試作する前に、ゴルフクラブヘッドについて振動特性を把握することができる([0021])。
次に、一次設計されたヘッドを実際に試作し、その打球音を採取、評価する(ステップS3〜S5)。
ゴルフクラブヘッドの打球音の測定は、試作されたゴルフクラブヘッドにシャフトを装着してゴルフクラブを試作し、このゴルフクラブを用いて、実際のゴルフボールを打撃する打撃テストを行う。そして、打撃時の音をマイクロフォンにて採取する([0023])。なお、マイクロフォンは、アドレスしたゴルファの耳の高さでかつゴルフボールと耳との間の水平距離を、ゴルフボールからテストゴルファと反対側に隔てた位置に設置される([0027])。
打球音の評価(ステップS5)は、例えば、記録した打球音を、アンプを介してヘッドフォン又はスピーカにて再生し、これを評価者の耳で聞いて行う。評価の基準としては、「音の高さ」、「残響長さ」、「音の強さ」、「好み」等である([0032])。
【0005】
一次設計されたゴルフクラブヘッドの打球音の評価結果において、好ましくないこと等が判明した場合(ステップS6でN)、この打球音と振動特性とに基づいて、打球音を向上させる改良点を特定する(ステップS7)。改良点を特定するためには、先ず打球音から改善したい音の周波数帯を特定し、この音の発生要因となる部位をモード解析により得られた振動特性から推定する([0031])。
そして、ヘッド改良点を特定して、この改良点を適用してゴルフクラブヘッドの二次設計が行われる(ステップS8)。二次設計されたゴルフクラブヘッドを試作する前に、この二次設計のゴルフクラブヘッドについて、コンピュータ上でモード解析を行い振動特性を取得する処理が行われる(ステップS9)。
改善前後の振動特性を比較して打球音の向上効果を確認する(ステップS10)。二次設計のゴルフクラブヘッドにおいて改善効果が認められた場合(ステップS11でY)、ステップS3に戻り、二次設計のゴルフクラブヘッドの試作、打球音の採取、評価(ステップS3〜5)を行う。
【0006】
そして、二次設計のゴルフクラブヘッドの打球音が満足のゆくものであれば(ステップS6でY)、二次設計のゴルフクラブヘッドの設計案で打球音が良好なゴルフクラブヘッドを製造することができる。なお、この二次設計のゴルフクラブヘッドでも満足のゆく打球音が得られなかった場合には、再び、上述のステップS7以降を繰り返し、三次設計などが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−6763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1においては、モード解析を行い、ゴルフクラブヘッドについて振動特性を把握し、改善前後の振動特性を比較して打球音の向上効果を確認している。特許文献1においては、打球音が良好なゴルフクラブヘッドを得るためには、ゴルフクラブヘッドを試作する必要があり、更には、打球音を得るために、試打する必要もある。このように、特許文献1においても、効率の改善の程度が低く、開発期間および開発コストを短縮することができないという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、シミュレーションにより、ゴルフクラブヘッドの構造を変更した場合の打音の変化を予測し、打音が良好なゴルフクラブヘッドを効率良く設計することができるゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ゴルフクラブヘッドについて数値解析可能なゴルフクラブヘッド解析モデルを作成するとともに、前記ゴルフクラブヘッドから所定の距離離れた応答点に相当する位置に数値解析可能な数値解析モデルを作成する解析モデル作成部と、前記ゴルフクラブヘッド解析モデルのフェース面に所定の加振力を仮想的に加えて前記応答点の数値解析モデルの周波数応答関数を求めるとともに、前記周波数応答関数とゴルフボール打撃時に前記ゴルフクラブヘッドに加わる加振力とを用いて、前記応答点の数値解析モデルにおける前記ゴルフボール打撃時の音圧の時間波形データを求める解析部と、前記音圧の時間波形データを用いて、前記ゴルフボール打撃時の打音を評価する評価部とを有することを特徴とするゴルフクラブの設計システムを提供するものである。
【0011】
この場合、前記応答点は、前記ゴルフボールを打撃するゴルファの耳の高さに相当する位置であることが好ましい。
また、前記評価部は、前記ゴルフボール打撃時の打音の大きさを表す音圧パラメータと、前記打音の減衰の度合を表す残響パラメータと、前記打音の周波数特性を表す高低パラメータとを評価パラメータとして算出することが好ましい。
前記解析部は、例えば、前記周波数応答関数を、音場解析を用いて算出する。
【0012】
また、本発明は、ゴルフクラブヘッドについて数値解析可能なゴルフクラブヘッド解析モデルを作成し、前記ゴルフクラブヘッドから所定の距離離れた応答点に相当する位置に数値解析可能な数値解析モデルを作成する工程と、前記ゴルフクラブヘッド解析モデルのフェース面に所定の加振力を仮想的に加えて前記応答点の数値解析モデルの周波数応答関数を求める工程と、前記周波数応答関数とゴルフボール打撃時に前記ゴルフクラブヘッドに加わる加振力とを用いて、前記応答点の数値解析モデルにおける前記ゴルフボール打撃時の音圧の時間波形データを求める工程と、前記音圧の時間波形データを用いて、前記ゴルフボール打撃時の打音を評価する工程とを有することを特徴とするゴルフクラブの設計方法を提供するものである。
【0013】
この場合、前記応答点は、前記ゴルフボールを打撃するゴルファの耳の高さに相当する位置であることが好ましい。
また、前記打音を評価する工程は、前記ゴルフボール打撃時の打音の大きさを表す音圧パラメータと、前記打音の減衰の度合を表す残響パラメータと、前記打音の周波数特性を表す高低パラメータとを評価パラメータとして算出することが好ましい。
前記周波数応答関数は、例えば、音場解析を用いて算出される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シミュレーションにより、ゴルフクラブヘッドの構造を変更した場合の打音の変化を予測し、打音が良好なゴルフクラブヘッドを効率良く設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のゴルフクラブの設計システムを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態のゴルフクラブの設計方法を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、本発明の実施形態のゴルフクラブの設計システムに用いられる第1のゴルフクラブヘッドモデルを示す模式的斜視図であり、(b)は、第1のゴルフクラブヘッドモデルの大きさを示す模式的斜視図であり、(c)は、第1のゴルフクラブヘッドモデルの大きさを示す切断面図であり、(d)は、本発明の実施形態のゴルフクラブの設計システムに用いられる第2のゴルフクラブヘッドモデルを示す模式的斜視図である。
【図4】本発明の実施形態のゴルフクラブの設計方法に用いられる解析モデルを示す模式的斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、解析モデルから求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルの伝達関数と、図10(a)に示す測定装置で求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルの伝達関数を示すグラフである。
【図6】(a)、(b)は、解析モデルから求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルの打音を示すグラフであり、(c)、(d)は、図10(b)に示す測定装置で求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルの打音を示すグラフである。
【図7】(a)は、図10(b)に示す測定装置で求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルおよび第2のゴルフクラブヘッドモデルの音圧パラメータ、ならびに解析モデルから求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルおよび第2のゴルフクラブヘッドモデルの音圧パラメータを示すグラフであり、(b)は、図10(b)に示す測定装置で求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルおよび第2のゴルフクラブヘッドモデルの残響パラメータ、ならびに解析モデルから求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルおよび第2のゴルフクラブヘッドモデルの残響パラメータを示すグラフであり、(c)は、図10(b)に示す測定装置で求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルおよび第2のゴルフクラブヘッドモデルの高低パラメータ、ならびに解析モデルから求められた第1のゴルフクラブヘッドモデルおよび第2のゴルフクラブヘッドモデルの高低パラメータを示すグラフである。
【図8】(a)〜(c)は、解析モデルから求められた第2のゴルフクラブヘッドモデルの伝達関数と、図10(a)に示す測定装置で求められた第2のゴルフクラブヘッドモデルの伝達関数を示すグラフである。
【図9】(a)、(b)は、解析モデルから求められた第2のゴルフクラブヘッドモデルの打音を示すグラフであり、(c)、(d)は、図10(b)に示す測定装置で求められた第2のゴルフクラブヘッドモデルの打音を示すグラフである。
【図10】(a)は、各応答点に相当する位置における伝達関数の測定に用いられる測定装置を示す模式図であり、(b)は、各応答点に相当する位置における打音の測定に用いられる測定装置を示す模式図である。
【図11】加振力の測定に用いられる測定装置を示す模式図である。
【図12】縦軸に出力値をとり、横軸に時間をとって、加えた加振力の時間波形と、逆算して求めた加振力の時間波形とを示すグラフである。
【図13】加振力の測定に用いられる落下試験装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態のゴルフクラブの設計システムを示す模式図である。図2は、本発明の実施形態のゴルフクラブの設計方法を示すフローチャートである。
【0017】
図1に示す実施形態のゴルフクラブの設計システム10(以下、設計システム10という)は、シミュレーションにより、ゴルフクラブヘッドの構造を変更した場合の打音の変化を予測し、打音が良好なゴルフクラブヘッドを効率良く設計するものである。この設計システム10では、ゴルフクラブヘッドの解析モデルを用いて、例えば、ゴルファの耳の位置を応答点として、周波数応答解析を行う。この周波数応答解析結果と、ゴルフクラブヘッドに加える打撃力を用いて、例えば、ゴルファの耳の位置(応答点)における複素スペクトルを求め、この複素スペクトルを逆FFT(高速フーリエ変換)することにより、応答点の時間波形を求める。さらに、時間波形を用いて、打音の評価パラメータを算出し、打音を評価することにより、ゴルフクラブの設計を行うものである。なお、時間波形を、WAVEファイル等の音声データに変換することにより、ゴルファ、設計者等が聞くことができる、シミュレーションによるゴルファの耳の位置(応答点)での打音を得ることができる。なお、応答点は、1つに限定されるものではなく、複数でもよい。
【0018】
設計システム10は、処理装置12と、操作部14と、モニタ16とを有する。操作部14は、一般的にPCに用いられるキーボード、マウス等である。また、モニタ16は、処理装置12で算出された各種の解析結果、解析モデル、応答点の時間波形、打音の評価パラメータ等が表示されるものである。モニタ16には、一般的にパーソナルコンピュータに利用されているものが種々利用可能である。
【0019】
処理装置12は、解析モデル作成部20と、解析部22と、打音の評価パラメータ算出部24と、メモリ26と、CPU28とを備える。CPU28により、解析モデル作成部20、解析部22および打音の評価パラメータ算出部24が制御されるとともに、解析モデル作成部20、解析部22および打音の評価パラメータ算出部24とメモリ26との間のデータの移動も制御されて、メモリ26にデータが記憶される。メモリ26には、ゴルフクラブヘッドモデルの3次元CADデータが記憶されている。
【0020】
解析モデル作成部20は、3次元CADデータで表されたゴルフクラブヘッドモデルを、後述する数値解析(シミュレーション)による音場解析のために、有限要素解析等の数値解析が可能なメッシュデータに変換し、メッシュモデル(ゴルフクラブヘッド解析モデル)を作成するものである。また、ゴルフクラブヘッド以外にも、ゴルフクラブヘッドから所定の距離離れた位置、例えば、ゴルファの耳の位置に設定される応答点に相当する領域を有限要素解析等の数値解析が可能なメッシュデータに変換し、観測用メッシュのメッシュモデル(数値解析モデル)を作成するものである。このゴルフクラブヘッドモデルのメッシュモデルおよび応答点に相当する領域のメッシュモデルにより、後述する数値解析(シミュレーション)に用いられる解析モデルが構成される。これらのメッシュモデルの作成には、有限要素法等の数値解析(シミュレーション)に用いられる公知の方法を用いることができる。
解析モデル作成部20を、例えば、ソフトウェアで代替させて、CPU28でソフトウェア実効させることもできる。この場合、ソフトウェアとしては、例えば、MSC社製のPatranを用いることができる。
【0021】
本実施形態では、ゴルフクラブヘッドモデルとしては、例えば、図3(a)〜(c)に示す第1のゴルフクラブヘッドモデル30および図3(d)に示す第2のゴルフクラブヘッドモデル30aが用いられる。
図3(a)に示す第1のゴルフクラブヘッドモデル30は、フェース部とソール部とに着目してゴルフクラブヘッドをモデル化したものである。第1のゴルフクラブヘッドモデル30は、フェース部に相当するフェース部分32と、ソール部に相当するソール部分34と、ホーゼル部に相当するホーゼル部分38とを有する。フェース部分32の表面32aがフェース面に相当する。
第1のゴルフクラブヘッドモデル30には、フェース部分32の両側には、それぞれ裏面32bからソール部分34に達する略三角形状のリブ36が設けられている。一方のリブ36にホーゼル部分38が設けられている。このホーゼル部分38には、ゴルフクラブシャフトを取り付けるための取付穴39が形成されている。
第1のゴルフクラブヘッドモデル30の大きさは、例えば、図3(b)、(c)に示す大きさである。
【0022】
また、図3(d)に示す第2のゴルフクラブヘッドモデル30aは、第1のゴルフクラブヘッドモデル30に比して、ソール部分34に、フェース部分32の横方向に伸びたリブ35が2つ設けられている点が異なり、それ以外は構成および大きさが第1のゴルフクラブヘッドモデル30と同じである。なお、リブ35は、断面が四角形であり、高さが5.5mmで、幅が3.0mmである。
第1のゴルフクラブヘッドモデル30および第2のゴルフクラブヘッドモデル30aは、いずれも3次元CADデータで表されるものであり、メモリ26に記憶されている。第1のゴルフクラブヘッドモデル30および第2のゴルフクラブヘッドモデル30aは、3次元CADデータで表されるものであるため、工作機械を用いて金属材料を加工して容易に実物を作製することができる。
【0023】
解析部22は、数値解析(シミュレーション)による音場解析、および数値解析(シミュレーション)による打音の作成を行うものである。音場解析には、仮想的に、ゴルフクラブヘッドモデルのフェース面の中心に、所定の加振力を、例えば、正弦波状に加えて加振したときの周波数応答解析を行うとともに、ゴルフクラブヘッドから離れた位置、例えば、ゴルファの耳の位置に相当する位置に設けた観測用メッシュでの応答を数値解析によって求めるものである。すなわち、観測用メッシュでの周波数応答関数を求める。この音場解析では、ゴルフクラブヘッドの周囲の流体は、例えば、空気とする。ゴルフクラブヘッドの材質としては、例えば、6−4チタン(Ti−6Al−4V)の材料特性の情報を用いる。また、解析する周波数域を2kHz〜10kHzとして、例えば、3Hz毎,50Hz毎に解析を行う。
なお、ゴルフクラブシャフトは、打音に対する影響が小さいことが知られているため、解析モデルにおいては、ゴルフクラブシャフトの固定条件は特に定めなくてもよい。また、応答点は、1つでも、複数でもよい。
【0024】
解析部22は、算出した応答点の伝達関数(周波数応答関数)を、例えば、メモリ26に記憶させる。
解析部22においては、仮想的に、ゴルフクラブヘッドモデルのフェース面の中心に加振力のスペクトルを加えた際の、応答点の複素スペクトルを計算する。解析部22において、この応答点の複素スペクトルに対して逆FFTをすることにより、数値解析(シミュレーション)による応答点での音圧レベルの時間波形データ、すなわち、音圧波形データを得る。この得られた音圧レベルの時間波形を、例えば、メモリ26に記憶させる。
【0025】
ここで、周波数応答関数(伝達関数)は、入力のフーリエスペクトルと出力のフーリエスペクトルとの比で表されるものである。入力のフーリエスペクトルは、フェース面の加振力信号のフーリエスペクトル(複素スペクトル(スペクトルの虚部と実部))のことである。出力のフーリエスペクトルは、応答点、すなわち、観測メッシュにおける音圧信号のフーリエスペクトルのことである。ここで、周波数応答関数をGとするとき、この周波数応答関数Gは、下記数式1により表される。
【0026】
G=X(f)/Fa(f) (1)
【0027】
なお、上記数式1において、Fa(f)は、フェース面の加振力信号の複素フーリエスペクトルであり、X(f)は、観測メッシュにおける音圧信号の複素フーリエスペクトルである。上述のように、解析部22で計算された周波数応答関数(伝達関数)と、ゴルフボール打撃時に発生する加振力の加振力信号の複素フーリエスペクトルとを用いることにより、観測メッシュにおける音圧信号の複素フーリエスペクトルを求めることができる。この観測メッシュにおける音圧信号の複素フーリエスペクトルについて、逆FFTをし、逆フーリエ変換データを得る。これにより、ゴルフボール打撃時に発生する打音の時間波形データを得ることができる。
【0028】
また、解析部22においては、打音の時間波形データを、音声ファイルデータ、例えば、WAVEファイルに変換し、ゴルファ、設計者等が聞くことが可能な打音を作成することができる。
解析部22は、上述のように、数値解析(シミュレーション)による音場解析および打音の作成を行うものであり、音場解析ソフトと、FFTアナライザの機能を兼ね備えるものである。このため、解析部22は、音場解析ソフトとFFTアナライザで代替することができる。音場解析ソフトには、例えば、日本イーエスアイ株式会社製、VA One(商品名)を用いることができる。
【0029】
打音の評価パラメータ算出部24は、解析部22で得られた音圧レベルの時間波形データを用いて、例えば、打音の大きさを表す音圧パラメータと、打音の減衰の度合を表す残響パラメータと、打音の周波数特性を表す高低パラメータとを、評価用パラメータとして算出するものである。音圧パラメータ、残響パラメータ、および高低パラメータの算出には、例えば、特開2008−132262号公報に開示された方法が用いられる。
【0030】
音圧パラメータとしては、ISO532B規格に規定されるラウドネス(単位;sone)を対数表示した、公知のラウドネスレベル(単位;phon)の値を用いる。具体的には、打音の評価に用いる音圧波形データ全体(16384個)でFFTによる周波数解析を行なってスペクトル波形を求め、ISO532B規格におけるラウドネス曲線を適用することで、音圧波形のラウドネス(単位;sone)を求め、このラウドネスを対数表示したラウドネスレベル(単位;phon)の値を求める。この求められた音圧パラメータの値は、処理装置12のメモリ26に記憶される。
【0031】
残響パラメータとしては、音圧波形データを、時間軸上で一番最初のサンプルデータ(始点データ)を基準番号とし、この番号から所定のサンプル数、例えば、サンプル数100で音圧波形が順次区切られたブロック群αを作成する。そして、ブロック群αのブロックA毎に音圧波形のレベルの二乗和を求め、各ブロック毎にこの二乗和の対数値(以降、ブロック値とする)を求める。そして、ブロック群αの各ブロックから、ブロック値が最大となる最大音圧ブロックを、起点ブロックとして抽出する。そして、この最大音圧ブロックのブロック値から所定値(本実施形態では30dB)だけ低い値を終点ブロック値として設定し、起点ブロック以降の複数のブロックにおいて、ブロック値が最初に終点ブロック値以下となる終点ブロックを抽出する。そして、これら起点ブロックと終点ブロックそれぞれの、時間軸上で最前のサンプルデータ間での時間幅を残響パラメータとする。
【0032】
詳述すると、44.1kHzのサンプリング周波数でサンプリングされた音圧波形の信号をy(i)(i=1〜16384の自然数)とすると、下記式2に従ってサンプル数100毎に区分けしたブロック数A毎に、相対音圧レベルの値E(k)(Kは1〜16285)を計算し、例えば、16285個のE(k)を求め、この中で最大となるE(k)を最大音圧ブロックとして抽出する。処理装置12では、この求められた残響パラメータの値は、処理装置12のメモリ26に記憶される。
【0033】
【数1】

【0034】
高低パラメータとしては、得られた音圧波形のデータについて、時間軸上で最前部分の所定個数のサンプル(本実施形態では、1500個)を除いた音圧波形データのうち、最前部分の所定数のデータ(本実施形態では、8192データ)について周波数解析を行なって、スペクトル波形を求める。そして、このスペクトル波形のスペクトル値を重み付け係数として用いた、低周波成分を除いた所定の周波数範囲(本実施形態では、1kHz〜20kHz)における、振動波形のエネルギー加重平均周波数を高低パラメータとする。この求められた高低パラメータの値は、処理装置12のメモリ26に記憶される。
【0035】
上述のエネルギー加重平均周波数は下記式3に従って求める。式3において、fは周波数、Lはスペクトル波形における周波数fにおけるスペクトル値から求めた、周波数fにおける振動波形の音圧レベル(dB値)であり、式3に従って、低周波成分を除いた所定の周波数範囲(1kHz〜20kHz)においてエネルギー加重平均周波数を求める。このようなエネルギー加重平均周波数は、打撃後一定の時間を経た振動波形データを用いて求めるので、パラメータとしての精度、さらには再現性が悪化するといった問題は解消する。また、例えば、周波数が1kHz未満の低周波成分を除いた周波数範囲でエネルギー加重平均周波数を求めるので、振動波形について周波数解析を行なった際に発生するDC(直流)成分の影響を除くことができ、パラメータとしての精度、さらには再現性が悪化するといった問題をさらに解消している。
【0036】
【数2】

【0037】
次に、ゴルフクラブの設計方法について説明する。
本実施形態のゴルフクラブの設計方法においては、まず、3次元CADデータで表される第1のゴルフクラブヘッドモデル30に対して音場解析ができるように、第1のゴルフクラブヘッドモデル30の3次元CADデータをメモリ26から解析モデル作成部20に呼び出し、解析モデル作成部20で、第1のゴルフクラブヘッドモデル30を有限要素解析等の数値解析が可能なメッシュデータに変換し、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のメッシュモデル(ゴルフクラブヘッド解析モデル)を作成する(ステップS10)。さらに、応答点を含む領域も有限要素解析が可能なメッシュデータに変換し、観測用メッシュのメッシュモデル(数値解析モデル)を作成する(ステップS10)。応答点は、例えば、フェース面を基準として所定の距離をあけて、ゴルファの耳の位置を含む3点設定される。これにより、例えば、図4に示す解析モデル40が得られ、モニタ16に表示される。
図4に示す解析モデル40は、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のメッシュモデル42に対して、第1の観測用メッシュのメッシュモデル44、第2の観測用メッシュのメッシュモデル46、第3の観測用メッシュのメッシュモデル48がフェース面を基準として所定の距離をあけて、仮想的に配置されたものである。
【0038】
また、解析モデル40において、第1のゴルフクラブヘッドモデル30および第2のゴルフクラブヘッドモデル30aの材料特性は、下記表1に示す材料特性を有する6−4チタン(Ti−6Al−4V)とし、ゴルフクラブヘッドの周囲の流体は、下記表2に示す特性の空気である。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
次に、解析部22で、解析モデル40に対して音場解析を行い、各応答点に相当するメッシュモデル44〜48の周波数応答関数(伝達関数)を算出する(ステップS12)。
なお、周波数応答関数(伝達関数)の算出には、例えば、メッシュモデル42のフェース面の中心に相当する位置に、加振力を1N、正弦波状に加えたときのメッシュモデル44〜48での周波数応答解析を、解析する周波数域を2kHz〜10kHzとして、例えば、3Hz毎に行う。
第1のゴルフクラブヘッドモデル30の周波数応答解析の結果(周波数応答関数(伝達関数))を図5(a)〜(c)に示す。また、図5(a)〜(c)には、比較のために、第1のゴルフクラブヘッドモデル30を実際に作製し、後述する図10(a)に示す測定装置100aを用いて、各応答点に相当する位置における周波数応答関数(伝達関数)を求めた結果も示す。なお、図5(a)〜(c)に示すβは数値解析(シミュレーション)によって得られた周波数応答関数(伝達関数)であり、γは実際に作製したものについて、後述する図10(a)に示す測定装置100aを用いて得られた周波数応答関数(伝達関数)である。第1のゴルフクラブヘッドモデル30は、6−4チタン(Ti−6Al−4V)で作製した。
【0042】
次に、解析モデル40において、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のメッシュモデル42のフェース面の中心位置に加振力のスペクトルを加えたときの各応答点における複素スペクトル(打音スペクトル(スペクトルの虚部と実部))を、解析部22で計算し、各応答点における複素スペクトルをメモリ26に記憶させる。
次に、各応答点における複素スペクトルに対して逆FFTをする。これにより、各応答点における音圧波形データ(音圧レベルの時間波形データ)が得られる(ステップS14)。各応答点における音圧波形データは、シミュレーションにより作成された打音を示すものである。各応答点における音圧波形データをメモリ26に記憶させる。
【0043】
第1のゴルフクラブヘッドモデル30に関して、図6(a)に第1の観測用メッシュのメッシュモデル44の位置のシミュレーションにより作成された打音の時間波形を示し、図6(b)に第2の観測用メッシュのメッシュモデル46の位置のシミュレーションにより作成された打音の時間波形を示す。また、比較のために、第1のゴルフクラブヘッドモデル30に関して、図6(c)に第1の観測用メッシュのメッシュモデル44と同じ位置で測定した打音の時間波形を示し、図6(d)に第2の観測用メッシュのメッシュモデル46と同じ位置で測定した打音の時間波形を示す。なお、図6(c)、(d)に示す打音の時間波形は、後述する図10(b)に示す測定装置100bを用いて測定されたものである。
【0044】
次に、解析部22において、各応答点における音圧レベルの時間波形データを、音声データ、例えば、WAVEファイルに変換する。そして、各応答点におけるWAVEファイルをメモリ26に記憶させる。このように音声データに変換することにより、ゴルファ、設計者等がシミュレーションにより作成された各応答点での打音を聞くことができる。
【0045】
次に、各応答点における音圧レベルの時間波形をメモリ26から打音の評価パラメータ算出部24に呼び出す。次に、各応答点における音圧レベルの時間波形を用いて、打音の評価パラメータ算出部24で、音圧パラメータ、残響パラメータおよび高低パラメータを算出させる(ステップS16)。音圧パラメータ、残響パラメータおよび高低パラメータの結果をメモリ26に記憶させる。
図7(a)に音圧パラメータの結果を、図7(b)に残響パラメータの結果を、図7(c)に高低パラメータの結果を示す。
図7(a)〜(c)に示すように、試作することなく、シミュレーションにより作成した打音を用いて打音を評価することができる。
【0046】
なお、図7(a)〜(c)において、Pは、第1の観測用メッシュのメッシュモデル44の位置での結果を示すものであり、Pは、第2の観測用メッシュのメッシュモデル46の位置での結果を示すものであり、Pは、第3の観測用メッシュのメッシュモデル48の位置での結果を示すものである。なお、図7(a)〜(c)には、比較のために、図7(a)に第1のゴルフクラブヘッドモデル30を実際に作製して得られた音圧パラメータの結果を、図7(b)に残響パラメータの結果を、図7(c)に高低パラメータの結果も示す。図7(a)〜(c)において、Dは、第1の観測用メッシュのメッシュモデル44に相当する位置での結果を示すものであり、Dは、第2の観測用メッシュのメッシュモデル46に相当する位置での結果を示すものであり、Dは、第3の観測用メッシュのメッシュモデル48に相当する位置での結果を示すものである。図7(a)〜(c)に示すD〜Dは、後述する図10(b)に示す測定装置100bを用いて得られたものである。
【0047】
次に、第1のゴルフクラブヘッドモデル30に対して、構造を変更した第2のゴルフクラブヘッド30aについて、第1のゴルフクラブヘッドモデル30と同様にして打音を評価する。
この場合、解析モデル作成部20にて、第2のゴルフクラブヘッドモデル30aをメッシュデータに変換するとともに、応答点についても第1の観測用メッシュ〜第3の観測用メッシュのメッシュモデル44〜48を作成して解析モデルを作成する(ステップS10)。次いで、解析部22で解析モデルに対して音場解析を行い、各応答点に相当するメッシュモデルの周波数応答関数(伝達関数)を算出する(ステップS12)。この結果を図8(a)〜(c)に示す。
また、図8(a)〜(c)には、比較のために、第2のゴルフクラブヘッドモデル30aを実際に作製し、後述する図10(a)に示す測定装置100aを用いて、各応答点に相当する位置における周波数応答関数(伝達関数)を求めた結果も示す。なお、図8(a)〜(c)に示すβは数値解析(シミュレーション)によって得られた周波数応答関数(伝達関数)であり、γは実際に作製したものについて、後述する図10(a)に示す測定装置100aを用いて得られた周波数応答関数(伝達関数)である。第2のゴルフクラブヘッドモデル30aは、6−4チタン(Ti−6Al−4V)で作製した。
【0048】
次に、解析モデル40において、第2のゴルフクラブヘッドモデル30aのメッシュモデルのフェース面の中心位置に加振力のスペクトルを加えたときの各応答点における複素スペクトル(打音スペクトル(スペクトルの虚部と実部))を、解析部22で計算し、各応答点における複素スペクトルをメモリ26に記憶させる。
次に、各応答点における複素スペクトルに対して逆FFTをする。これにより、各応答点における音圧波形データが得られる(ステップS14)。各応答点における音圧波形データをメモリ26に記憶させる。また、各応答点における音圧波形データを、図9(a)、(b)に示す。なお、図9(a)に第1の観測用メッシュのメッシュモデル44の位置のシミュレーションにより作成された打音の時間波形を示し、図9(b)に第2の観測用メッシュのメッシュモデル46の位置のシミュレーションにより作成された打音の時間波形を示す。また、比較のために、図9(c)に第1の観測用メッシュのメッシュモデル44と同じ位置で測定した打音の時間波形を示し、図9(d)に第2の観測用メッシュのメッシュモデル46と同じ位置で測定した打音の時間波形を示す。なお、図9(c)、(d)に示す打音の時間波形は、後述する図10(b)に示す測定装置100bを用いて測定されたものである。
【0049】
次に、解析部22において、各応答点における音圧レベルの時間波形データを、音声データ、例えば、WAVEファイルに変換する。そして、各応答点におけるWAVEファイルをメモリ26に記憶させる。このように音声データに変換することにより、ゴルファ、設計者等がシミュレーションにより作成された各応答点での打音を聞くことができる。
【0050】
次に、各応答点における音圧レベルの時間波形データをメモリ26から打音の評価パラメータ算出部24に呼び出す。次に、各応答点における音圧レベルの時間波形を用いて、打音の評価パラメータ算出部24で、音圧パラメータ、残響パラメータおよび高低パラメータを算出させる(ステップS16)。音圧パラメータ、残響パラメータおよび高低パラメータの結果をメモリ26に記憶させる。
図7(a)に音圧パラメータの結果を、図7(b)に残響パラメータの結果を、図7(c)に高低パラメータの結果を示す。図7(a)〜(c)に示すように、第2のゴルフクラブヘッドモデル30aにおいても、試作することなく、シミュレーションにより作成した打音を用いて打音を評価することができる。
【0051】
図7(a)〜(c)に示すように、第1のゴルフクラブヘッドモデル30と、第2のゴルフクラブヘッドモデル30aとでは、音圧パラメータ、残響パラメータおよび高低パラメータの結果が異なる。この相違は、ソール部分にリブを設けたことによるものである。しかも、リブを設けたことによる各評価パラメータの違いは、試作した第1のゴルフクラブヘッドモデル30、第2のゴルフクラブヘッドモデル30aと比較した場合でも同様の傾向が得られる。
本実施形態のように、打音をシミュレーションで作成した場合でも、ゴルフクラブヘッドの構造の違いに基づく、音圧パラメータ、残響パラメータおよび高低パラメータの変化を再現することができる。このため、ゴルフクラブヘッドを設計する際に、ゴルフクラブヘッドの構成に基づく打音の変化を試作することなく、シミュレーションによって知ることができる。打音に関しては、音が高く、かつ残響が大きい方が好まれることが官能検査からわかっている。このため、構造変更の際に、構造変更前に比して、音が高く、かつ残響が大きくなっているかによって、リブなどの部材の配置の適否を確認することができる。
【0052】
以下に、各応答点に相当する位置における伝達関数の測定に用いられる測定装置100aおよび各応答点に相当する位置における打音の測定に用いられる測定装置100bについて説明する。
図10(a)に示す測定装置100aは、第1のマイク102a〜第3のマイク102cと、FFTアナライザ104と、PC106と、モニタ108と、第1のゴルフクラブヘッドモデル30に所定の加振力を加えるインパルスハンマ122とを有する。
【0053】
第1のマイク102a〜第3のマイク102cは、インパスルハンマ122により第1のゴルフクラブヘッドモデル30を打撃した際に発生した打音を測定するものであり、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のフェース部分32の表面32aから所定の間隔をあけて配置されている。第1のマイク102a〜第3のマイク102cは、第1の観測用メッシュのメッシュモデル44、第2の観測用メッシュのメッシュモデル46、第3の観測用メッシュのメッシュモデル48に対応する位置に設けられている。第1のマイク102a〜第3のマイク102cの打音の出力信号がFFTアナライザ104に出力される。
【0054】
インパルスハンマ122は、構造物の固有振動数測定やモーダル解析を行うための力センサを内蔵した加振ハンマである。このインパルスハンマ122で、例えば、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のフェース部分32の表面32aを打撃した場合、内蔵されている力センサから加振力信号がFFTアナライザ104に出力される。このインパルスハンマ122により、第1のゴルフクラブヘッドモデル30に既知の加振力を付与することができる。
【0055】
FFTアナライザ104は、第1のマイク102a〜第3のマイク102cで測定された打音の音圧信号を時系列で取り込み、デジタル信号に変換して、打音の音圧信号の時系列データ(打音の時間波形データ)を得るとともに、インパルスハンマ122から出力される加振力信号を時系列で取り込み、デジタル信号に変換して、インパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)を得る。
さらに、FFTアナライザ104は、第1のマイク102a〜第3のマイク102cによる打音の音圧信号の時系列データ(打音の時間波形データ)、およびインパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)に基づいて、周波数応答関数を求める機能を有する。その他、FFTアナライザ104は、一般的なFFTアナライザが備える機能を有する。
FFTアナライザ104に取得された打音の音圧信号の時系列データ、インパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)およびFFTアナライザ104で求められた周波数応答関数(伝達関数)の結果はPC106に出力される。
【0056】
PC106は、処理装置であって、一般的なパーソナルコンピュータと同様の構成を有するものであり、CPU(図示せず)、メモリ(図示せず)を備え、キーボード、マウスなどのコンピュータの入力に用いられる入力部(図示せず)と、入力部からの入力情報およびCPUで情報処理された情報を表示するLCDなどのモニタ108とを有する。
測定装置100aでは、インパルスハンマ122で、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のフェース部分32の表面32aが打撃された際に生じる打音が第1のマイク102a〜第3のマイク102cで測定されて、FFTアナライザ104では、打音の時間波形データが得られるとともに、インパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)も得られる。更に、FFTアナライザ104では、これらに基づいて周波数応答関数(伝達関数)fが求められる。
【0057】
図10(b)に示す測定装置100bは、インパルスハンマ122に代えて、筒110が設けられている以外は、図10(a)に示す測定装置100aと同様の構成である。
筒110は、ゴルフボール112が通過できる内径を有するものである。この筒110は、その開口110aを第1のゴルフクラブヘッドモデル30に向け、かつ筒110の軸線が水平面に対して垂直に設けられている。
この筒110の上方の開口110bからゴルフボール112が落下されて、筒110の内部を通り、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のフェース部分32の表面32aに衝突する。このゴルフボール112の落下により生じる打音が第1のマイク102a〜第3のマイク102cで測定される。
【0058】
測定装置100bでは、ゴルフボール112が落下されて、筒110の内部を通り、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のフェース部分32の表面32aに衝突した際に生じる打音が第1のマイク102a〜第3のマイク102cで測定されて、FFTアナライザ104により、打音の時間波形データが得られるとともに、周波数応答関数(伝達関数)fが求められる。
【0059】
また、打音を得るために、解析モデル40のメッシュモデル42に加える加振力は、実際の打音に近づけるためには、ゴルファのスイングによって生じる加振力であることが好ましい。さらには、特願2009−204505号に示すように、具体的には、以下に示すようにして測定した加振力を利用することもできる。
【0060】
図11に示すゴルフクラブヘッド130にゴルフボール等によって加えられる加振力を測定する測定装置120を用いる。
図11に示す測定装置120は、所定の加振力をゴルフクラブヘッド130に加えるインパルスハンマ122と、FFTアナライザ124と、加速度センサ126と、アンプ128と、コンピュータ(以下、PCという)129とを有する。
加速度センサ126はアンプ128を介してFFTアナライザ124に接続されており、インパルスハンマ122はFFTアナライザ124に接続されている。
【0061】
インパルスハンマ122は、上述の測定装置100aと同じものであるため、その詳細な説明は省略する。このインパルスハンマ122で、例えば、ゴルフクラブヘッド130のフェース面132を打撃した場合、内蔵されている力センサから加振力信号がFFTアナライザ124に出力される。このインパルスハンマ122により、ゴルフクラブヘッド130に既知の加振力を付与することができる。
【0062】
加速度センサ126は、ゴルフクラブヘッド130のフェース面132に加振力が印加された場合におけるゴルフクラブヘッド130に生じる加速度を測定するものである。
この加速度センサ126は、例えば、ゴルフクラブヘッド130のホーゼル部134の下方に取り付けられる。この加速度センサ126が取り付けられる位置を取付位置dという。
加速度センサ126には、例えば、軽量加速度ピックアップが用いられる。なお、加速度ピックアップは超軽量のものが好ましい。例えば、質量が0.6gのものを用いるとよい。これは、質量が大きいとフェース面132の振動に対する影響が大きくなるためである。
【0063】
アンプ128は、加速度センサ126に接続されている。このアンプ128には、加速度センサ126で得られた加速度信号が、例えば、電荷の形態で入力される。アンプ128は、その電荷の形態で入力された加速度信号を電圧に変換し、増幅してFFTアナライザ124に加速度信号として出力する。
【0064】
FFTアナライザ124は、アンプ128から電圧の形態で出力される加速度センサ126による加速度信号およびインパルスハンマ122から出力される加振力信号を時系列で取り込み、更には後述のように周波数応答関数を求めるものである。
【0065】
FFTアナライザ124においては、例えば、加速度センサ126による加速度信号、およびインパルスハンマ122の加振力信号について、それぞれ打撃してから、例えば、20マイクロ秒のサンプリング周期(0.35秒/16384)で0.35秒間(サンプリング時間)取り込む。なお、取り込みの際、サンプリング周波数は48kHzであり、取込みデータ数は16384である。
FFTアナライザ124により、加速度センサ126による加速度の時系列データ(時間波形)が取得されるとともに、インパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)が取得される。
【0066】
また、FFTアナライザ124は、加速度センサ126による加速度の時系列データ(時間波形)、およびインパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)についてFFTを行う機能を有する。
さらに、FFTアナライザ124は、加速度センサ126による加速度の時系列データ(時間波形)、およびインパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)に基づいて、周波数応答関数を求める機能を有する。その他、FFTアナライザ124は、一般的なFFTアナライザが備える機能を有する。
【0067】
FFTアナライザ124に取得された加速度センサ126による加速度の時系列データ(時間波形)およびインパルスハンマ122による加振力の時系列データ(時間波形)はPC129に出力される。
また、FFTアナライザ124でなされたFFTの結果、および求められた周波数応答関数についてもPC129に出力される。
【0068】
なお、FFTアナライザ124による加速度信号、および加振力信号についてのサンプリング周期は、20マイクロ秒に限定されるものではなく、要求される振動の測定精度に応じて適宜変更可能である。さらには、FFTアナライザ124による加速度信号、および加振力信号についての取り込み時間(サンプリング時間)も、0.35秒に限定されるものではなく、ゴルフクラブヘッド130の特性、要求される測定精度に応じて適宜変更可能である。
【0069】
PC129およびモニタ129aは、上述の図10(a)に示す測定装置100aのPC106とモニタ108と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
PC129は、FFTアナライザ124からの加速度センサ126による加速度信号の時系列データ(時間波形)、インパルスハンマ122の加振力信号の時系列データ(時間波形)が入力されて、例えば、メモリ、ハードディスク(図示せず)等に記憶されるとともに、モニタ129aに、グラフ、数値等の形態で表示させる機能を有する。
【0070】
次に、ゴルフクラブヘッド130の加振力の測定方法について説明する。ゴルフクラブヘッド130の取付位置dに、加速度センサ126が取り付けられている。
まず、ゴルフクラブヘッド130のフェース面132の中心点Pにインパルスハンマ122で打撃する。この打撃時に、インパルスハンマ122から加振力信号がFFTアナライザ124に出力される。この打撃によりゴルフクラブヘッド130に生じた加速度(第1の応答信号)が加速度センサ126で測定されて、その加速度の加速度信号がFFTアナライザ124にアンプ128を介して出力される。
【0071】
FFTアナライザ124において、加速度センサ126による加速度信号、およびインパルスハンマ122の加振力信号について、例えば、20マイクロ秒のサンプリング周期(0.35秒/16384)で0.35秒間(サンプリング時間)取り込み、ゴルフクラブヘッドの加速度の時系列データ、およびインパルスハンマ122による加振力の時系列データが取得される。
【0072】
次に、加速度の時系列データおよびインパルスハンマ122による加振力の時系列データに基づいて、FFTアナライザ124において中心点Pにおける周波数応答関数が計算される。
これらのゴルフクラブヘッドの加速度の時系列データ、およびインパルスハンマ122による加振力の時系列データならび周波数応答関数はPC129に出力され、PC129のメモリ、ハードディスク等に記憶される。
【0073】
周波数応答関数は、入力のフーリエスペクトルと出力のフーリエスペクトルとの比で表されるものである。入力のフーリエスペクトルは、インパルスハンマ122の加振力信号のフーリエスペクトルのことである。出力のフーリエスペクトルは、ゴルフクラブヘッドの加速度信号のフーリエスペクトルのことである。ここで、周波数応答関数をHとするとき、この周波数応答関数Hは、下記数式4により表される。
【0074】
H=A(f)/F(f) (4)
【0075】
なお、上記数式4において、F(f)は、インパルスハンマ122の加振力信号の複素フーリエスペクトルであり、A(f)は、ゴルフクラブヘッドの加速度の複素フーリエスペクトルである。
また、ゴルフボール112を、例えば、フェース面132の中心点Pに衝突させたときに発生する加振力の加振力信号の複素フーリエスペクトルをF1(f)とし、ゴルフボール112を、例えば、フェース面132の中心点Pに衝突させたときにゴルフクラブヘッド130に発生する加速度の加速度信号の複素フーリエスペクトルをA1(f)とするとき、この加振力信号の複素フーリエスペクトルF1(f)は、下記数式5により求めることができる。
【0076】
F1(f)=A1(f)/H (5)
【0077】
周波数応答関数Hを求める場合、まず、FFTアナライザ124により、ゴルフクラブヘッドの加速度の時系列データおよびインパルスハンマ122による加振力の時系列データについて、FFT(高速フーリエ変換)がなされる。これにより、ゴルフクラブヘッドの加速度についての複素フーリエスペクトル、すなわち、A(f)が得られる。更には、インパルスハンマ122による加振力についての複素フーリエスペクトル、すなわち、F(f)が得られる。
【0078】
次に、FFTアナライザ124により、加速度の複素フーリエスペクトルA(f)および加振力の複素フーリエスペクトルF(f)を用いて周波数応答関数Hが計算される。これにより、周波数応答関数Hが得られ、周波数応答関数HがPC129に出力されて記憶される。
次に、周波数応答関数Hを測定したのと同じゴルフクラブヘッド130に対して、例えば、インパルスハンマ122で打撃を加えた中心点Pに、所定の速度でゴルフボール112を衝突させる。このとき、加速センサ126でゴルフクラブヘッド130に生じた加速度が測定され、アンプ128を介してFFTアナライザ124に出力される。このFFTアナライザ124では、ゴルフクラブヘッド130の加速度の時系列データが取得される。
【0079】
次に、FFTアナライザ124により、このゴルフクラブヘッド130の加速度の時系列データが高速フーリエ変換され、ゴルフクラブヘッド130の加速度のフーリエ変換データを得る。これにより、ゴルフボール112を衝突させたときにゴルフクラブヘッド130に発生した加速度の複素フーリエスペクトルA1(f)を得る。
次に、PC129で記憶しておいた周波数応答関数H、加速度の複素フーリエスペクトルA1(f)をFFTアナライザ124に出力し、このFFTアナライザ124において、上記数式2を用いて、ゴルフボール112を衝突させたときにゴルフクラブヘッド130に発生した加振力の複素フーリエスペクトルF1(f)を求める。
【0080】
次に、FFTアナライザ124により、求めた加振力の複素フーリエスペクトルF1(f)について、逆FFT(逆高速フーリエ変換)がされて、逆フーリエ変換データを得る。これにより、ゴルフボール112の衝突時における加振力の時系列データが得られる。
FFTアナライザ124において、この逆フーリエ変換で得られた加振力の時系列データにおける最大の加振力の値が抽出される。この加振力の最大値を、ゴルフボール112がフェース面に衝突したときの加振力F1として、FFTアナライザ124からPC129に出力し、PC129で記憶される。このようにして、ゴルフボール112を衝突させたときにゴルフクラブヘッド130に発生した加振力を求めることができる。
【0081】
なお、本実施形態において、インパルスハンマ122による加振力を、数式3を用いて、得られた加速度信号と周波数応答関数とに基づいて、加振力の複素フーリエスペクトルF(f)を求めた。この複素フーリエスペクトルF(f)について逆FFT変換をして、加振力信号の時系列データを求めた。
この結果、図12に示すグラフ140のように、計算で求めたインパルスハンマ122の加振信号の時系列データを示す曲線142と、インパルスハンマ122による加振信号の時系列データを示す曲線144とでは、ピーク値が略一致した。このように、インパルスハンマ122を用いて、加振力が分かるようにして、周波数応答関数を予め求めておけば、ゴルフボール112を衝突させたときのような加振力印加時の加速度の時系列データから、加振力を求めることができる。
【0082】
次に、上述の加振力の測定方法により得られた加振力について検証する。
図13は、加振力の測定に用いられる落下試験装置を示す模式図である。
図13に示す落下試験装置(以下、単に試験装置という)150は、ロードセル152と、筒110と、アンプ128aと、FFTアナライザ124と、PC129と、モニタ129aとを有する。
ロードセル152は、ゴルフボール112による加振力を測定するものであり、水平面Bに載置されている。このロードセル152は、アンプ128aに接続されている。このアンプ128aにより、加振力に応じてロードセル152で発生した出力信号が所定倍に増幅される。この増幅された出力信号がFFTアナライザ124に出力される。
【0083】
なお、FFTアナライザ124、PC129およびモニタ129aは、図11に示す測定装置120のFFTアナライザ124、PC129およびモニタ129aと同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0084】
筒110は、図10(b)に示す測定装置100bの筒110と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。筒110は、その開口110aをロードセル152に向け、かつ筒110の軸線が水平面Bに対して垂直に設けられている。
この筒110の上方の開口110bからゴルフボール112が落下されて、筒110の内部を通り、ロードセル152に衝突する。このゴルフボール112の落下によりロードセル152に生じる加振力が測定される。
【0085】
また、この試験装置150において、ロードセル152に代えて、図3(a)〜(c)に示す第1のゴルフクラブヘッドモデル30を用いた。この第1のゴルフクラブヘッドモデル30に対して加わる加振力を測定する。
フェース部分32の裏面32bに加速度センサ126aを取り付けることができる。このため、フェース部分32の表面32aにおける中心点にゴルフボール112を衝突させた場合、その中心点における加振力を測定することができる。これにより、ロードセル152にゴルフボール112を衝突させたときと同じ条件で、第1のゴルフクラブヘッドモデル30に対して、加振力を加えるとともに、その加振力を測定することができる。
【0086】
また、加速度センサ126aは、図11に示す測定装置120で用いられた加速度センサ126と同じである。このため、その詳細な説明は省略する。加速度センサ126aは、アンプ128aに接続されて、FFTアナライザ124に加速度信号が入力される。
【0087】
図13に示す試験装置150において、ロードセル152に対して、ボール1〜ボール3の3種類のゴルフボールを用いて落下試験を行った。このときの加振力をそれぞれ測定した。
また、図13に示す試験装置150において、ロードセル152にかえて、第1のゴルフクラブヘッドモデル30を配置した。このとき、第1のゴルフクラブヘッドモデル30のフェース部分32の表面32aの高さを、ロードセル152でゴルフボールが衝突する部分と同じ高さにする。ロードセル152と同様に、ボール1〜ボール3の3種類のゴルフボールを用いて落下試験を行った。このときの加振力をそれぞれ測定した。
落下試験における試験条件は、ロードセルと、第1のゴルフクラブヘッドモデル30とでは同じであり、ゴルフボールの衝突時におけるゴルフボールと加振部分との接触時間も同程度である。
【0088】
なお、加振力の測定方法は、ロードセルおよび加速度センサと、FFTアナライザを用いた公知の測定方法であるため、その詳細な説明は省略する。測定した加振力の測定結果を下記表1に示す。
【0089】
下記表3においては、ボール1で得られた第1のゴルフクラブヘッドモデル30の加振力を基準として正規化している。また、ロードセルの欄において、括弧内に示す数値は、ロードセルを用いた落下試験において、ボール1で得られたロードセルの加振力を基準として正規化したものである。
【0090】
【表3】

【0091】
上記表3に示すように、ボールの種類による加振力の違いは、ロードセルと、第1のゴルフクラブヘッドモデル30とでは一致している。また、ロードセルと、第1のゴルフクラブヘッドモデル30とでは、同じゴルフボールを使用しても加振力が異なる。これは、ゴルフクラブヘッドのような薄肉中空構造物と水平面Bに直置きしたロードセルとにおいて、衝突する部分の剛性の違いの影響を受けている。上述のように、試験条件は、ロードセルと第1のゴルフクラブヘッドモデル30ともに同じである。これらのことから、第1のゴルフクラブヘッドモデル30について得られた加振力の値は、精度が高い値といえる。
【0092】
このように、周波数応答関数を予め求めておけば、ゴルフボールを衝突させたときの加振力を高い精度で求めることができる。これにより、例えば、ゴルフクラブヘッドについてFEM解析を行う場合には、実際に作用する加振力を用いることができるため、解析精度を高くすることができる。
【0093】
また、本実施形態においては、周波数応答関数Hを上記数式4のように規定したが、これに限定されるものではない。例えば、下記数式6で表される周波数応答関数H1を用いてもよい。この周波数応答関数H1は、周波数応答関数Hの逆数である。
この場合、ゴルフボール112を衝突させたときにゴルフクラブヘッド130に発生する加振力信号の複素フーリエスペクトルF1(f)は、下記数式7により求めることができる。この周波数応答関数H1を用いる場合でも、ゴルフクラブヘッド130について、周波数応答関数H1を予め求めておけば、上述のように、ゴルフボール112を衝突させたときの加振力を正確に求めることができる。このように、実際に作用する加振力を得ることができるため、数値解析を行う場合、解析精度を高くできる。
【0094】
H1=F(f)/A(f) (6)
【0095】
F1(f)=H1×A(f) (7)
【0096】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のゴルフクラブの設計システムおよびゴルフクラブの設計方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0097】
10 ゴルフクラブの設計システム(設計システム)
12 処理装置
14 操作部
16 モニタ
20 解析モデル作成部
22 解析部
24 打音の評価パラメータ算出部
26 メモリ
28 CPU
30 第1のゴルフクラブヘッドモデル
30a 第2のゴルフクラブヘッドモデル
40 解析モデル
42 メッシュモデル
44 第1の観測用メッシュのメッシュモデル
46 第2の観測用メッシュのメッシュモデル
48 第3の観測用メッシュのメッシュモデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドについて数値解析可能なゴルフクラブヘッド解析モデルを作成するとともに、前記ゴルフクラブヘッドから所定の距離離れた応答点に相当する位置に数値解析可能な数値解析モデルを作成する解析モデル作成部と、
前記ゴルフクラブヘッド解析モデルのフェース面に所定の加振力を仮想的に加えて前記応答点の数値解析モデルの周波数応答関数を求めるとともに、前記周波数応答関数とゴルフボール打撃時に前記ゴルフクラブヘッドに加わる加振力とを用いて、前記応答点の数値解析モデルにおける前記ゴルフボール打撃時の音圧の時間波形データを求める解析部と、
前記音圧の時間波形データを用いて、前記ゴルフボール打撃時の打音を評価する評価部とを有することを特徴とするゴルフクラブの設計システム。
【請求項2】
前記応答点は、前記ゴルフボールを打撃するゴルファの耳の高さに相当する位置である請求項1に記載のゴルフクラブの設計システム。
【請求項3】
前記評価部は、前記ゴルフボール打撃時の打音の大きさを表す音圧パラメータと、前記打音の減衰の度合を表す残響パラメータと、前記打音の周波数特性を表す高低パラメータとを評価パラメータとして算出する請求項1または2に記載のゴルフクラブの設計システム。
【請求項4】
ゴルフクラブヘッドについて数値解析可能なゴルフクラブヘッド解析モデルを作成し、前記ゴルフクラブヘッドから所定の距離離れた応答点に相当する位置に数値解析可能な数値解析モデルを作成する工程と、
前記ゴルフクラブヘッド解析モデルのフェース面に所定の加振力を仮想的に加えて前記応答点の数値解析モデルの周波数応答関数を求める工程と、
前記周波数応答関数とゴルフボール打撃時に前記ゴルフクラブヘッドに加わる加振力とを用いて、前記応答点の数値解析モデルにおける前記ゴルフボール打撃時の音圧の時間波形データを求める工程と、
前記音圧の時間波形データを用いて、前記ゴルフボール打撃時の打音を評価する工程とを有することを特徴とするゴルフクラブの設計方法。
【請求項5】
前記応答点は、前記ゴルフボールを打撃するゴルファの耳の高さに相当する位置である請求項4に記載のゴルフクラブの設計方法。
【請求項6】
前記打音を評価する工程は、前記ゴルフボール打撃時の打音の大きさを表す音圧パラメータと、前記打音の減衰の度合を表す残響パラメータと、前記打音の周波数特性を表す高低パラメータとを評価パラメータとして算出する請求項4または5に記載のゴルフクラブの設計方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate