説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】打点がばらついても飛距離の均一化を実現することが可能なゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】中空のゴルフクラブヘッド1Aは、上面のクラウン部20Aに、打球面のフェース部10側から当該フェース部10側と対向するバック部60側へ向けて延設された複数の厚肉部21a〜21fが形成されており、複数の厚肉部21a〜21fの剛性は、シャフトが取り付けられるヒール部40側から当該ヒール部40側と対向するトゥ部50側にいくに従って高くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブにおいて、ドライバー等のウッドは、中空のヘッドを有している。特許文献1には、クラウン部の後部のうちトゥ−ヒール方向の中央部付近に厚肉部を設けることによって、打点がばらつき易いアマチュアゴルファーが使用しても、平均して飛距離を増大させることが可能なゴルフクラブヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−93268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ゴルフクラブには、飛距離を増大させることに加えて、飛距離の均一化を実現することが望まれている。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みて創案されたものであり、打点がばらついても飛距離の均一化を実現することが可能なゴルフクラブヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、中空のゴルフクラブヘッドであって、上面のクラウン部に、打球面のフェース側から当該フェース側と対向するバック側へ向けて延設された複数の厚肉部が形成されており、前記複数の厚肉部の剛性は、シャフトが取り付けられるヒール側から当該ヒール側と対向するトゥ側にいくに従って高くなるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
ユーザがヘッドを備えたゴルフクラブをスイングしてヘッドのヒール側打球領域で打球した場合には、ヒール側打球領域のクラウン部は比較的低剛性であるため、ヘッドは、当該ヘッドがシャフト軸を中心に打球方向に回動してフェース部が立つことを制御する、すなわち、フェース部のロフト角が小さくなってボールの打ち出し角度が低くなることを抑制することができ、センター打球領域で打球した場合に近い打ち出し角度を実現することができる。
【0008】
一方、ユーザがヘッドを備えたゴルフクラブをスイングしてヘッドのトゥ側打球領域で打球した場合には、トゥ側打球領域のクラウン部は比較的高剛性であるため、ヘッドは、クラウン部の撓みを制御する、すなわち、フェース部のロフト角が大きくなってボールの打ち出し角度が高くなることを抑制することができ、センター打球領域で打球した場合に近い打ち出し角度を実現することができる。
【0009】
前記複数の厚肉部の幅は、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って大きくなるように構成されている構成であってもよい。
【0010】
前記複数の厚肉部の厚みは、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って大きくなるように構成されている構成であってもよい。
【0011】
前記クラウン部のバック側端部には、ヒール側からトゥ側まで延設されたバック側厚肉部が形成されており、前記バック側厚肉部のフェース側端部は、ヒール側からトゥ側にいくに従ってフェースに近づくように構成されており、前記バック側厚肉部は、前記複数の厚肉部と連結されている構成であってもよい。
【0012】
隣接する前記厚肉部の間にそれぞれ形成された複数の薄肉部の幅は、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って小さくなるように構成されていてもよい。
【0013】
隣接する前記厚肉部の間にそれぞれ形成された複数の薄肉部の厚みは、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って大きくなるように構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明は、中空のゴルフクラブヘッドであって、上面のクラウン部の剛性は、シャフトが取り付けられるヒール側から当該ヒール側と対向するトゥ側にいくに従って高くなるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
ユーザがヘッドを備えたゴルフクラブをスイングしてヘッドのヒール側打球領域で打球した場合には、ヒール側打球領域は比較的低剛性であるため、ヘッドは、当該ヘッドがシャフト軸を中心に打球方向に回動してフェース部が立つことを制御する、すなわち、フェース部のロフト角が小さくなってボールの打ち出し角度が低くなることを抑制することができ、センター打球領域で打球した場合に近い打ち出し角度を実現することができる。
【0016】
一方、ユーザがヘッドを備えたゴルフクラブをスイングしてヘッドのトゥ側打球領域で打球した場合には、トゥ側打球領域は比較的高剛性であるため、ヘッドは、クラウン部の撓みを制御する、すなわち、フェース部のロフト角が大きくなってボールの打ち出し角度が高くなることを抑制することができ、センター打球領域で打球した場合に近い打ち出し角度を実現することができる。
【0017】
前記クラウン部のフェース側端部には、ヒール側からトゥ側まで延設されたフェース側厚肉部が形成されている構成であってもよい。
【0018】
かかる構成によると、打球時におけるクラウン部の撓みが局所的になることを抑制し、安定した打球方向性を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0020】
また、本発明によれば、複数の薄肉部を備えることによって、クラウン部の軽量化を図り、当該ヘッドの設計自由度を高めることができる。さらに、本発明によれば、クラウン部の軽量化を図ることができるので、重心を低くし、打球時におけるボールの打ち出し角度を全体的に高くし、飛距離の向上を実現することができる。
【0021】
また、本発明によれば、バック側厚肉部を備えることによって、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0022】
また、本発明によれば、打球時におけるクラウン部の撓みが局所的になることを抑制し、安定した打球方向性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX1矢視断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX2矢視断面図である。
【図3】本発明の第三の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX3矢視断面図である。
【図4】本発明の第四の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX4矢視断面図である。
【図5】本発明の第五の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX5矢視断面図である。
【図6】本発明の第六の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX6矢視断面図である。
【図7】本発明の第七の実施形態に係るゴルフクラブを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX7矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、本発明のゴルフクラブヘッドを右利き用のウッドに適用した場合を例にとり、添付図面を参照して説明する。
【0025】
<第一の実施形態>
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係るゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」と記載する)1Aは、金属製で中空形状を呈しており、ショット時にボールと衝突する前部のフェース部10と、上に凸の形状を呈する上部のクラウン部20Aと、クラウン部20Aと対向する下部のソール部30と、基端側(シャフト側)の側部のヒール部40と、ヒール部40と対向する先端側の側部のトゥ部50と、フェース部10と対向する後部のバック部60と、フェース部10、クラウン部20A及びヒール部40によって形成されるスペースに設けられる上部のネック部70と、を備える。
【0026】
かかるヘッド1Aは、フェース部10と、クラウン部20Aと、一体成形されたソール部30、ヒール部40、トゥ部50及びバック部60と、ネック部70と、を溶接することによって形成される。また、ネック部70には、孔部71が形成されている。かかる孔部71には、シャフト(図示せず)が取り付けられる。
【0027】
ここで、フェース部10の打球面のフェース部センター11を含む図1における例えば左右10mmずつの合計20mmの範囲が、センター打球領域12であり、センター打球領域12の右側(ヒール部40側)の例えば20mmの範囲が、ヒール側打球領域12であり、センター打球領域12の左側(トゥ部50側)の例えば20mmの範囲が、トゥ側打球領域12である。これらセンター打球領域12、ヒール側打球領域12及びトゥ側打球領域12が、有効打球領域12を構成している。
【0028】
また、フェース部10の打球面の有効打球領域12を含んで左右にさらに広い領域が、スコアラインが形成されたスコアライン形成領域13である。
【0029】
クラウン部20Aは、同一の金属材料によって一体的に構成された板状部材であり、複数の厚肉部21(本実施形態では、互いに平行な、前後方向に延びる6条の厚肉部21a〜21f)と、複数の薄肉部22(本実施形態では、互いに平行な、前後方向に延びる7条の薄肉部22a〜22g)と、フェース側厚肉部23と、溶接代24と、を備える。
【0030】
複数の厚肉部21a〜21fは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、フェース部10側からバック部60へと延設されたリブ状厚肉部である。複数の厚肉部21a〜21fは、クラウン部20Aの下面側(ヘッド1Aの中空側)に突出するように形成されている。これら複数の厚肉部21a〜21fは、同一の厚みに形成されている。また、厚肉部21dは、ヘッド1Aのヘッド幅(フェース部10とバック部60との距離)が最大となる位置に設けられている。
【0031】
複数の厚肉部21b〜21fは、少なくとも、クラウン部20Aの最高点14を中心にフェース部10側およびバック部60側へ同じ長さだけ延設されていればよく、ヘッド1Aのヘッド幅が90〜110mmの場合には、複数の厚肉部21b〜21fは、少なくとも50〜80mmの長さを呈するように構成されていればよい。かかる構成によると、フェース部10−バック部60方向の端部への応力集中を低減し、クラウン部20Aを効率的に撓ませることができる。また、クラウン部20Aの強度が向上するので、クラウン部20Aの薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0032】
複数の薄肉部22a〜22gは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、複数の厚肉部21及び溶接代24の間に延設されている。これら複数の薄肉部22a〜22gは、同一の厚みに形成されており、複数の厚肉部21a〜21fよりも薄い。
【0033】
フェース側厚肉部23は、クラウン部20Aのフェース部10側端部に、フェース部10及びネック部70に沿うように延設されている。フェース側厚肉部23は、クラウン部20Aの下面側(ヘッド1Aの中空側)に突出するように形成されている。フェース側厚肉部23のフェース部10側先端は、フェース部10及びネック部70に対する溶接代を兼ねている。このフェース側厚肉部23は、複数の厚肉部21a〜21fよりも厚く形成されている。
【0034】
溶接代24は、クラウン部20Aのヒール部40、バック部60及びトゥ部50側端部に、ヒール部40、バック部60及びトゥ部50に沿うように延設されている。この溶接代24は、1〜5mmの幅を呈し、複数の厚肉部21a〜21fと同一の厚みに形成されている。
【0035】
複数の厚肉部21及び複数の薄肉部22は、ヒール部40側からトゥ部50側へ、薄肉部22a、厚肉部21a、薄肉部22b、厚肉部21b、薄肉部22c、厚肉部21c、薄肉部22d、厚肉部21d、薄肉部22e、厚肉部21e、薄肉部22f、厚肉部21f、薄肉部22gの順に設けられている。厚肉部21aの幅t(ヒール部40−トゥ部50方向の長さ)、薄肉部22bの幅T、厚肉部21bの幅t、薄肉部22cの幅T、厚肉部21cの幅t、薄肉部22dの幅T、厚肉部21dの幅t、薄肉部22eの幅T、厚肉部21eの幅t、薄肉部22fの幅T、厚肉部21fの幅tは、2:8:3:7:4:6:6:6:7:5:9となるように設定されている。
【0036】
ここで、各厚肉部21(21a〜21f)の幅t及び各薄肉部22(22b〜22f)の幅Tは、以下の関係を満たすように設定されている。
n+1>t(ただし、互いに隣接する一組の幅が等しい場合も含む)
n+1<T(ただし、互いに隣接する一組の幅が等しい場合も含む)
フェース部センター11よりもヒール部40側において
<T かつ t<Tn+1
フェース部センター11よりもトゥ部50側において
≧T かつ t≧Tn+1
【0037】
複数の厚肉部21の剛性は、幅が大きい(広い)ほど強くなる。すなわち、複数の厚肉部21a〜21fの幅は、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従って大きくなるので、複数の厚肉部21a〜21fの剛性は、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従って大きくなる。かかる構成により、ヘッド1Aのクラウン部20Aの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0038】
また、複数の薄肉部22の幅は、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従って小さく(狭く)なるので、ヘッド1Aの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0039】
ユーザがヘッド1Aを備えたゴルフクラブをスイングしてヘッド1Aのヒール側打球領域12で打球した場合には、ヒール側打球領域12のクラウン部20Aは比較的低剛性であるため、ヘッド1Aは、打球時に当該ヘッド1Aがシャフト軸を中心に打球方向に回動してフェース部10が立つことを制御する、すなわち、フェース部10のロフト角が小さくなってボールの打ち出し角度が低くなることを抑制することができ、センター打球領域12で打球した場合に近い打ち出し角度を実現することができる。
【0040】
一方、ユーザがヘッド1Aを備えたゴルフクラブをスイングしてヘッド1Aのトゥ側打球領域12で打球した場合には、トゥ側打球領域12のクラウン部20Aは比較的高剛性であるため、ヘッド1Aは、打球時にクラウン部20Aの撓みを制御する、すなわち、フェース部10のロフト角が大きくなってボールの打ち出し角度が高くなることを抑制することができ、センター打球領域12で打球した場合に近い打ち出し角度を実現することができる。
【0041】
本発明の第一の実施形態に係るヘッド1Aは、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0042】
また、本発明の第一の実施形態に係るヘッド1Aは、フェース部10に沿って形成されたフェース側厚肉部23を備えているので、打球時におけるクラウン部20Aの撓みが局所的になることを抑制し、安定した打球方向性を実現することができる。
【0043】
また、本発明の第一の実施形態に係るヘッド1Aは、複数の薄肉部22a〜22gを備えているので、クラウン部22Aの軽量化を図り、当該ヘッド1Aの設計自由度を高めることができる。さらに、本発明の第一の実施形態に係るヘッド1Aは、クラウン部22Aの軽量化を図ることができるので、重心を低くし、打球時におけるボールの打ち出し角度を全体的に高くし、飛距離の向上を実現することができる。
【0044】
また、本発明の第一の実施形態に係るヘッド1Aは、重心がトゥ部50側に配置されるので、慣性モーメントが大きくなり、ヘッド1Aの挙動が安定し、安定した打球方向性を実現することができる。
【0045】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係るヘッドについて、図2を参照し、第一の実施形態に係るヘッド1Aとの相違点を中心に説明する。
【0046】
図2に示すように、本発明の第二の実施形態に係るヘッド1Bは、クラウン部20Aに代えてクラウン部20Bを備えており、クラウン部20Bは、バック側厚肉部25Bをさらに備える。バック側厚肉部25Bは、クラウン部20Bのバック部60側端部に、バック部60に沿うように延設されている。バック側厚肉部25Bは、クラウン部20Bの下面側(ヘッド1Bの中空側)に突出するように形成されている。このバック側厚肉部25Bは、複数の厚肉部21a〜21fと同一の厚みに形成されている。バック側厚肉部25Bのフェース部10側端部は、フェース部10と略平行に形成されており、複数の厚肉部21b〜21fの長さは、略同一であり、ヘッド幅の50〜70%となっている。
【0047】
本発明の第二の実施形態に係るヘッド1Bは、バック側厚肉部25Bを備えていることにより、クラウン部20Bが撓む長さを短くすることができるので、打球時のクラウン部20Bの撓みのエネルギー伝達ロスを低減し、クラウン部20Bを効率的に撓ませることができる。
【0048】
<第三の実施形態>
続いて、本発明の第三の実施形態に係るヘッドについて、図3を参照し、第一の実施形態に係るヘッド1Aとの相違点を中心に説明する。
【0049】
図3に示すように、本発明の第三の実施形態に係るヘッド1Cは、クラウン部20Aに代えてクラウン部20Cを備えており、クラウン部20Cは、複数の厚肉部21a〜21eと、複数の薄肉部22a〜22fと、を備える。
【0050】
複数の厚肉部21a〜21eは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、同一の厚みに形成されているとともに同一の幅に形成されている。厚肉部21bは、ヒール側打球領域12の中心を含むように配置されており、厚肉部21cは、センター打球領域12の中心を含むように配置されており、厚肉部21dは、トゥ側打球領域12の中心を含むように配置されている。
【0051】
複数の薄肉部22a〜22fは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、同一の厚みに形成されているとともに、複数の薄肉部22b〜22eは、同一の幅に形成されている。
【0052】
クラウン部20Cは、バック側厚肉部25Cをさらに備える。バック側厚肉部25Cは、クラウン部20Cのバック部60側端部に、バック部60に沿うように延設されている。バック側厚肉部25Cは、クラウン部20Cの下面側(ヘッド1Cの中空側)に突出するように形成されている。このバック側厚肉部25Cは、複数の厚肉部21a〜21eと同一の厚みに形成されている。バック側厚肉部25Cのフェース部10側端部は、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従いフェース部10に近づくように形成されており、複数の厚肉部21b〜21eの長さは、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い短くなるように形成されている。かかる構成により、ヘッド1Cのクラウン部20Cの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0053】
本発明の第三の実施形態に係るヘッド1Cは、バック側厚肉部25Cを備えていることにより、第一の実施形態に係るヘッド1Aと同様、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0054】
<第四の実施形態>
続いて、本発明の第四の実施形態に係るヘッドについて、図4を参照し、第一の実施形態に係るヘッド1Aとの相違点を中心に説明する。
【0055】
図4に示すように、本発明の第四の実施形態に係るヘッド1Dは、クラウン部20Aに代えてクラウン部20Dを備えており、クラウン部20Dは、複数の厚肉部21a〜21eと、複数の薄肉部22a〜22fと、を備える。
【0056】
複数の厚肉部21a〜21eは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、同一の幅に形成されている。厚肉部21bは、ヒール側打球領域12の中心を含むように配置されており、厚肉部21cは、センター打球領域12の中心を含むように配置されており、厚肉部21dは、トゥ側打球領域12の中心を含むように配置されている。複数の厚肉部21a〜21eの厚みは、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い大きくなるように形成されている。かかる構成により、ヘッド1Dのクラウン部20Dの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0057】
複数の薄肉部22a〜22fは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、同一の厚みに形成されているとともに、複数の薄肉部22b〜22eは、同一の幅に形成されている。
【0058】
本発明の第四の実施形態に係るヘッド1Dは、複数の厚肉部21a〜21eを備えていることにより、第一の実施形態に係るヘッド1Aと同様、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0059】
<第五の実施形態>
続いて、本発明の第五の実施形態に係るヘッドについて、図5を参照し、第一の実施形態に係るヘッド1Aとの相違点を中心に説明する。
【0060】
図5に示すように、本発明の第五の実施形態に係るヘッド1Eは、クラウン部20Aに代えてクラウン部20Eを備えており、クラウン部20Eは、複数の厚肉部21a〜21eと、複数の薄肉部22a〜22fと、を備える。
【0061】
複数の厚肉部21a〜21eは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、同一の幅に形成されている。厚肉部21bは、ヒール側打球領域12の中心を含むように配置されており、厚肉部21cは、センター打球領域12の中心を含むように配置されており、厚肉部21dは、トゥ側打球領域12の中心を含むように配置されている。複数の厚肉部21a〜21eは、クラウン部20Eの薄肉部22a〜22fを構成する平板状部材に、互いに異なる材料から形成されて剛性の異なる複数の細板状部材を溶接等によって固定することによって実現されており、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い剛性が大きくなるように形成されている。かかる構成により、ヘッド1Eのクラウン部20Eの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0062】
複数の薄肉部22a〜22fは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、同一の厚みに形成されているとともに、複数の薄肉部22b〜22eは、同一の幅に形成されている。
【0063】
本発明の第五の実施形態に係るヘッド1Eは、複数の厚肉部21a〜21eを備えていることにより、第一の実施形態に係るヘッド1Aと同様、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0064】
<第六の実施形態>
続いて、本発明の第六の実施形態に係るヘッドについて、図6を参照し、第一の実施形態に係るヘッド1Aとの相違点を中心に説明する。
【0065】
図6に示すように、本発明の第六の実施形態に係るヘッド1Fは、クラウン部20Aに代えてクラウン部20Fを備えており、クラウン部20Fは、複数の厚肉部21a〜21f及び複数の薄肉部22a〜22gに代えて、複数の領域26a〜26eを備える。
【0066】
複数の領域26a〜26eは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、複数の領域26a〜26eの厚みは、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い大きくなるように形成されている。領域26bは、ヒール側打球領域12の中心を含むように配置されており、領域26cは、センター打球領域12の中心を含むように配置されており、領域26dは、トゥ側打球領域12の中心を含むように配置されている。かかる構成により、ヘッド1Fのクラウン部20Fの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0067】
なお、フェース側厚肉部23は、複数の領域26a〜26eのうち最も厚い領域26eよりも厚く、溶接代24は、領域26eと同一の厚みに形成されている。なお、溶接代24は、複数の領域26a〜26eよりも若干(例えば、0.2[mm])厚い段状に形成されていてもよい。
【0068】
本発明の第六の実施形態に係るヘッド1Fは、複数の領域26a〜26eを備えていることにより、第一の実施形態に係るヘッド1Aと同様、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【0069】
<第七の実施形態>
続いて、本発明の第七の実施形態に係るヘッドについて、図7を参照し、第一の実施形態に係るヘッド1Aとの相違点を中心に説明する。
【0070】
図7に示すように、本発明の第七の実施形態に係るヘッド1Gは、クラウン部20Aに代えてクラウン部20Gを備えており、クラウン部20Gは、複数の厚肉部21a〜21f及び複数の薄肉部22a〜22gに代えて、複数の領域27a〜27cを備える。
【0071】
複数の領域27a〜27cは、ヒール部40側からトゥ部50側へと順に配置されており、複数の領域27a〜27cの剛性は、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い大きくなるように形成されている。領域27aは、ヒール側打球領域12の中心を含むように配置されており、領域27bは、センター打球領域12の中心を含むように配置されており、領域27cは、トゥ側打球領域12の中心を含むように配置されている。かかる構成により、ヘッド1Gのクラウン部20Gの剛性は、ヒール部40側で比較的小さく、トゥ部50側で比較的大きくなる。
【0072】
本実施形態において、フェース側厚肉部23、領域27b及び溶接代24の領域27bに隣接する部分は、例えばTi−15V−3Cr−3Sn−3Alによって一体に形成されて96〜105[GPa]の弾性率を呈し、領域27a及び溶接代24の領域27aに隣接する部分は、例えばTi−15Mo−5Zr−4V−4Alによって一体に形成されて88〜93[GPa]の弾性率を呈し、領域27c及び溶接代24の領域27cに隣接する部分は、例えばTi−6Al−4Vによって一体に形成されて105〜115[GPa]の弾性率を呈し、これら3個のパーツを溶接等によって固定することによってクラウン部20Gが製造されている。
【0073】
なお、本実施形態では、複数の領域27a〜27cは、同一の厚みに形成されているが、複数の領域27a〜27cの厚みを異ならせることによって複数の領域27a〜27cの剛性を好適な値に設定する構成であってもよい。また、複数の領域27a〜27cを同一の金属材料によって形成し、それぞれに異なる条件の熱処理を施すことによって、複数の領域27a〜27cの剛性を前記したように設定する構成であってもよい。
【0074】
本発明の第七の実施形態に係るヘッド1Gは、複数の領域27a〜27cを備えていることにより、第一の実施形態に係るヘッド1Aと同様、打球位置のばらつきによってボールの打ち出し角度が低くなったり高くなったりすることを抑制することができるので、飛距離の均一化を実現することができる。
【実施例】
【0075】
続いて、本発明の実施例について説明する。
<実施例>
実施例に係るヘッドとして、第一の実施形態に係るヘッド1Aを作成した。クラウン部20Aの材料として、Ti−Fe−Oを採用し、フェース部10等その他の部分の材料として、Ti−6Al−4V、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−Fe−O−Si等のチタン合金から適宜選択した。クラウン部20Aは、厚肉部21a〜21fの厚みを0.65[mm]、薄肉部22a〜22gの厚みを0.35[mm]、フェース側厚肉部23の厚みを0.85[mm]とした。実施例に係るヘッド1Aの容積は460[cc]であり、重量は196[g]である。
【0076】
<比較例1>
比較例1に係るヘッドとして、実施例に係るヘッド1Aの厚肉部21a〜21f及び薄肉部22a〜22gの厚みを0.65[mm]と一定にしたものを作成した。比較例1に係るヘッドの容積は460[cc]である。
<比較例2>
比較例2に係るヘッドとして、実施例に係るヘッド1Aのリブ状の厚肉部をフェース部センターに幅10[mm]、厚み0.65[mm]で1個のみ形成したものを作成した。
比較例2に係るヘッドの容積は460[cc]である。
【0077】
<試打評価>
これら実施例、比較例1、比較例2に係るヘッドに繊維強化樹脂製のシャフト及びグリップを取り付け、ヘッドスピード47.7[m/s]でロボットによる試打を行った。打点位置は、フェース部センター、トゥ側打点(フェース部センターからトゥ部側20[mm])、ヒール側打点(フェースセンターからヒール部側20[mm])とし、それぞれの打ち出し角度、スピン量及び飛距離を計測した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、実施例に係るヘッド1Aは、比較例1,2に係るヘッドと比べて、打点のずれに伴う打ち出し角度のばらつきを抑えることによって飛距離のばらつきを抑制し(飛距離の均一化)、さらには、飛距離の向上を実現することができた。
【0080】
なお、クラウン部20Aは、厚肉部21a〜21fの厚みを0.55〜1.5[mm]、薄肉部22a〜22gの厚みを0.3〜0.7[mm]、フェース側厚肉部23の厚みを0.7〜1.5[mm]の範囲に設定することができる。また、フェース側厚肉部23の厚みを100としたとき、厚肉部21a〜21fの厚みを90〜95、薄肉部22a〜22gの厚みを30〜60に設定することが望ましい。さらに、クラウン部20Aの材料としてTi−Fe−O以外のチタン合金を採用することも可能である。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、第一乃至第五の実施形態に係るヘッド1A〜1Eにおいて、複数の薄肉部22a〜22gの厚みが、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い大きくなるように形成されている構成であってもよい。また、第六の実施形態に係るヘッド1Fにおいて、クラウン部20Fの厚みは、ヒール部40側からトゥ部50側にいくに従い連続的に大きくなるように形成されている構成であってもよい。また、本発明は、容積250[cc]以上のドライバーのヘッドだけでなく、容積250[cc]未満のフェアウェイウッド、ユーティリティのヘッドにも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1A〜1G ゴルフクラブヘッド
20A〜20G クラウン部
21a〜21f 厚肉部
22a〜22g 薄肉部
23 フェース側厚肉部
25B,25C バック側厚肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のゴルフクラブヘッドであって、
上面のクラウン部に、打球面のフェース側から当該フェース側と対向するバック側へ向けて延設された複数の厚肉部が形成されており、
前記複数の厚肉部の剛性は、シャフトが取り付けられるヒール側から当該ヒール側と対向するトゥ側にいくに従って高くなるように構成されている
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記複数の厚肉部の幅は、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って大きくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記複数の厚肉部の厚みは、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って大きくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記クラウン部のバック側端部には、ヒール側からトゥ側まで延設されたバック側厚肉部が形成されており、
前記バック側厚肉部のフェース側端部は、ヒール側からトゥ側にいくに従ってフェースに近づくように構成されており、
前記バック側厚肉部は、前記複数の厚肉部と連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
隣接する前記厚肉部の間にそれぞれ形成された複数の薄肉部の幅は、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って小さくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
隣接する前記厚肉部の間にそれぞれ形成された複数の薄肉部の厚みは、前記ヒール側から前記トゥ側にいくに従って大きくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項の記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
中空のゴルフクラブヘッドであって、
上面のクラウン部の剛性は、シャフトが取り付けられるヒール側から当該ヒール側と対向するトゥ側にいくに従って高くなるように構成されている
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記クラウン部のフェース側端部には、ヒール側からトゥ側まで延設されたフェース側厚肉部が形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−45234(P2012−45234A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191404(P2010−191404)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】