説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】 フェース部の軽量化及びフェース部の強度を維持するとともに、フェースセンターの反発性をルール適合範囲内に抑えた上で、フェースセンターから外れてボールを打った場合の反発性能を、フェースセンターで打った場合と同等の反発性能に近づける。
【解決手段】 ゴルフクラブヘッドのフェース部材11aは、その内側に配置された第1および第2の主要リブ12,13を含んでなる。そして、前記第1の主要リブ12はクラウン側からソール側に延びており、前記第2の主要リブ13はホゼル側からソールのトウ側に延びている。これら第1および第2の主要リブは交差部15において交差している。加えて、リブ12の交差部15からソール側にかけて第1の溝50が設けられており、リブ13の交差部15からトウ側にかけて第2の溝51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関し、詳しくは、フェース部の裏面に肉厚の改良を施したゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近のウッドクラブのヘッドは、金属材料で少なくともフェース部分を形成したものが大半を占める。フェース部分の肉厚は、ボールとの衝撃に耐え得る強度を保つために肉厚を厚くする必要がある。ヘッドの大型化が進んでいるが、ルール上460cm3+許容誤差10cm3の体積より小さくしなければならないとされることから、ドライバーのヘッドは上限にきわめて近い460cm3の大型ヘッドが大半を占めるに至っている。
【0003】
このようにヘッドが大型化するとフェース部分の重量が重くなることから、フェース部分の軽量化を図るとともに、フェース部分の強度も維持するため、フェース部分の肉厚を薄くする一方で、フェース部分の裏面にリブを設けることが行われている。例えば、特許文献1には、フェース中央部からフェース周縁部に向かって延びる6本のリブを設けることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、フェース部分の裏面の中央部にX字状にリブを設けると、フェース部分の反発性能は、フェースセンターでボールを打った場合に比べて、フェースセンターを外れてソール側またはクラウン側でボールを打った場合、大きく低下するという問題を解決するため、このリブにより区分されたフェース裏面の4つの分割面の肉厚を、トウ側およびヒール側よりもソール側およびクラウン側の方を薄くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−141806号公報
【特許文献2】特開2008−36050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ヘッドの反発係数を顕著に高めた高反発ヘッドが多数、開発されてきた。しかしながら、ヘッドの反発係数が0.830以上の高反発ヘッドについては、2008年から競技では使用できないことになった。よって、現在、フェース部分のセンターにおける反発係数を抑えたゴルフクラブヘッドが開発されているが、フェース部分のセンターの反発係数を抑えると、センター以外のフェース面の反発性能が、特に、クラウン側に比べてソール側の方が低いということがわかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、フェース部の軽量化及びフェース部の強度を維持するとともに、フェースセンターの反発性をルール適合範囲内に抑えた上で、フェースセンターから外れてボールを打った場合でも、フェースセンターで打った場合とほぼ同等の反発性能を発揮することができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るゴルフクラブヘッドは、内部が中空の構造を有しており、打球面を有するフェース部と、このフェース部の内側に配置された第1および第2の主要リブとを含んでなる。そして、前記第1の主要リブはクラウン側からソール側に延びており、前記第2の主要リブはホゼル側からソールのトウ側に延びている。これら第1および第2の主要リブは交差部において交差している。加えて、前記第1及び第2の主要リブは、クラウン側よりもソール側の方の剛性が小さい。
【0009】
ゴルフクラブヘッドの別の形態によれば、前記第1の主要リブの前記交差部からソール側にかけて第1の溝が設けられており、この第1の溝の深さが前記第1の主要リブの最大の高さの4分の3以下である。さらに、前記第2の主要リブの前記交差部からトウ側にかけて第2の溝が設けられており、この第2の溝の深さが前記第2の主要リブの最大の高さの4分の3以下である。
【0010】
ゴルフクラブヘッドの別の形態によれば、前記第1及び第2の主要リブの高さが0.5mm〜1.5mmである。
【0011】
ゴルフクラブヘッドの別の形態によれば、前記第1及び第2の主要リブの高さは、クラウン側よりもソール側の方が低い。
【0012】
ゴルフクラブヘッドの別の形態によれば、前記第1及び第2の主要リブの幅が8mm〜14mmである。
【0013】
ゴルフクラブヘッドの別の形態によれば、前記フェース部の内側に配置され、前記交差部からフェース部の端部方向へ延びている補強リブをさらに含んでいる。前記補強リブは、その高さが前記交差部から前記端部方向に向かって漸減するとともに、前記フェース部の端部の途中まで形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、内部が中空の構造を有しており、打球面を有するフェース部と、このフェース部の内側に配置された第1および第2の主要リブとを含んでなる。そして、前記第1の主要リブはクラウン側からソール側に延びており、前記第2の主要リブはホゼル側からソールのトウ側に延びている。これら第1および第2の主要リブは交差部において交差している。また、前記第1及び第2の主要リブは、クラウン側よりもソール側の方の剛性が小さい。このようなゴルフクラブヘッドの構造によれば、フェース部の軽量化及びフェース部の強度を維持できるとともに、フェースセンターの反発性をルール適合範囲内に抑えることができる。加えて、フェースセンターから外れてボールを打った場合の反発性能が、フェースセンターで打った場合と同等の反発性能に近づく。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施の形態を示す正面図である。(B)本発明に係るゴルフクラブヘッドの別の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1(A)のII−II線におけるゴルフクラブヘッドの模式的な断面図である。
【図3】図1(A)に示すゴルフクラブヘッドを構成するフェース部材を示す裏面図である。
【図4】図3のIV−IV線におけるフェース部材の模式的な断面図である。
【図5】図3のV−V線におけるフェース部材の模式的な断面図である。
【図6】図1(A)のフェース部材においてリブの角度を示す正面図である。
【図7】リブに設けた溝の別の実施の形態を示す断面図である。
【図8】リブに設けた溝の別の実施の形態を示す断面図である。
【図9】リブに設けた溝の別の実施の形態を示す断面図である。
【図10】リブに設けた溝の別の実施の形態を示す断面図である。
【図11】本発明に係るゴルフクラブヘッドの別の実施の形態を示す正面図である。
【図12】実施例のシミュレーションにおける打点の位置を示す正面図である。
【図13】比較例としたリブの模式的な断面図である。
【図14】実施例1−1のCT値の分布図である。
【図15】実施例1−2のCT値の分布図である。
【図16】比較例1のCT値の分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施の形態について説明する。
【0017】
図1(A)及び図2に示すように、ゴルフクラブヘッド1は、フェース部10の一部をなすフェース部材11aと本体部材20とで主に構成されている。本体部材20は、フェース部10の一部、ソール部21、クラウン部22、トウ23からバックフェース(図示省略)を通ってヒール24まで延びるサイド部、及びホゼル部25を備え、一体的に形成されている。このフェース部材11aと本体部分20は溶接により接合され、これによってヘッド内部が中空構造になっている。
【0018】
フェース部材11aは、少なくともフェース部10のスイートエリアを含むことが好ましい。フェース部材11aの幅は、フェース部10の幅の約55%以上が好ましく、約60%以上がより好ましい。また、フェース部材11aの幅は、フェース部10の幅の約90%以下が好ましく、約85%以下がより好ましい。フェース部材11aの高さは、フェース部10の高さの約50%以上が好ましく、約55%以上がより好ましい。また、フェース部材11aの高さは、フェース部10の高さの約90%以下が好ましく、約85%以下がより好ましい。フェース部材11aのトウ側およびヒール側の外縁は、後述する第1の主要リブ12の中心軸31と実質的に平行であることが好ましい。本体部材20は、フェース部のトウ側部分26とヒール側部分27を備えることが好ましい。
【0019】
図1(A)には、フェース部材11aの中空構造側の面、すなわち裏面に表われる構成を破線で示した。フェース部材11aの裏面には、フェース部材11aの肉厚を部分的に厚くしたリブが形成されている。
【0020】
なお、フェース部材はフェース部10の一部をU字型に切り取った開口部に係合するフェース部材11aに限られず、図1(B)に示すように、フェース部10の全体をフェース部材11bとすることもできる。そして、後述する主要リブ12,13をフェース部10の全体にわたって設けることができる。この場合、主要リブ12がフェース部10のソール側の外周付近まで延びている。主要リブ13は、フェース部10のホゼル側の外周付近からトウ側の外周付近まで延びている。このように、主要リブ12及び主要リブ13がフェース部の外周端部までは延びていないため、フェース部の開口部を形成するクラウン前端部やソール前端部に対してフェース部材を容易に当接することができる。次に、図1(A)のフェース部材11aの裏面について説明する。
【0021】
図3に示すように、フェース部材11aの裏側の実質的に平らな面には、ソール側からクラウン側に延びる第1の主要リブ12と、ホゼル側からソールのトウ側に延びる第2の主要リブ13が形成されている。第1及び第2の主要リブ12、13は、フェース部10のスイートエリアに配置された平面円形の交差部15で交わっている。このように第1及び第2の主要リブ12、13がフェース部10の中心部分で交わることで、フェース部10の中心部分での反発性能を抑制することができる。
【0022】
第1の主要リブ12においては、交差部15から見てソール側に、このリブ12の長手方向に沿って第1の溝50が設けられている。また、第2の主要リブ13においては、交差部15から見てソール側に、このリブ13の長手方向に沿って第2の溝51が設けられている。このような第1の溝50及び第2の溝51を設けることによって、リブ12及び13のソール側の剛性を小さくして、フェース部のソール側の反発性能をクラウン側の反発性能と同等程度にまで上げることができる。
【0023】
フェース部材11aの裏面は、第1及び第2の主要リブ12、13により、トウ−クラウン区域16、トウ−ソール区域17、ヒール−クラウン区域18、ヒール−ソール区域19の4つの区域に区分されている。フェース部材11aの肉厚は、第1の主要リブ12を境に異なるように形成されている。すなわち、ヒール−クラウン区域18とヒール−ソール区域19の肉厚よりも、トウ−クラウン区域16とトウ−ソール区域17の肉厚の方が薄く形成されている。このように、フェース部材11aの肉厚をヒール側よりトウ側で薄くすることで、トウ側の反発性能が高まり、このトウ側の反発性能がヒール側の反発性能に近づく。
【0024】
また、フェース部材11aの裏面には、トウ−クラウン区域16からヒール−ソール区域19に延びる補強リブ14が形成されている。補強リブ14は、交差部15で第1及び第2の主要リブ12、13と交差している。なお、補強リブ14は、フェース部の端部の途中までしか形成されていない。補強リブ14は、トウ−クラウン区域16およびヒール−ソール区域19の反発性能がルール適用範囲を超えて高い場合に形成することで、これら区域の反発性能を抑えることができる。
【0025】
補強リブ14においては、交差部15から見てソール側に、このリブ14の長手方向に沿って第3の溝52が設けることができる。補強リブ14にも溝52を設けることにより、補強リブ14の剛性を小さくして、フェース部の反発性能を調整することができる。フェース部材11a裏面の各部について、更に詳細に説明する。
【0026】
図4に示すように、第1の主要リブ12は、略台形状の上底の中央付近に第1の溝50を設けた構成となっている。第1の溝50の断面は長方形状である。第1の主要リブ12の高さは、平面状のトウ−ソール区域17およびヒール−ソール区域19に向かって徐々に低くなるよう形成することができる。また、図4に示すように、トウ−ソール区域17の肉厚は、ヒール−ソール区域19の肉厚よりも小さく形成されている。これにより、フェース部のソール側において、ヒール側よりもトウ側の反発係数を高めることができる。なお、この断面図は、本発明の構成を容易に理解できるように意図したものであって、縮尺通りに描いたものではない。また、第1の主要リブ12は、交差部15からフェース部材11aの外縁に向かっては、等しい高さとなるように形成されている。第2の主要リブ13の高さも、第1の主要リブ12と同様の構成になっている。
【0027】
第1の主要リブ12の高さは、隣接する区域のうち厚い方の区域19の肉厚との差の最も大きな部分Tをいう。このTは、約0.5mm以上とすることが好ましく、約0.7mm以上とすることがより好ましい。また、このTは、約1.5mm以下とすることが好ましく、約1.2mm以下とすることがより好ましい。そして、第1の溝50の深さTがTよりも小さいことが好ましく、TがTの4分の3以下であることがより好ましい。第2の主要リブ13は第1の主要リブ12と同様の高さであり、第2の溝51の深さは第1の溝50と同様の深さである。第1及び第2の主要リブ12、13は、フェース部材11aの端部またはその近傍まで形成されていることが好ましい。また、第1及び第2の主要リブ12、13は、それぞれ実質的に均等な幅で形成されている。第1及び第2の主要リブ12、13の幅は、フェース裏面と接する部分において、約8mm以上が好ましく、約9mm以上がより好ましい。また、第1及び第2の主要リブ12、13の幅は、約14mm以下が好ましく、約13mm以下がより好ましい。
【0028】
なお、これまでに第1の溝50の形状について述べたが、第2の溝51、第3の溝52の形状も同様である。
【0029】
補強リブ14も、主要リブと同様に、中心の高さが最も高く、平面状のトウ−クラウン区域16又はヒール−ソール区域19に向かって高さが低くなるよう形成されている。一方、補強リブ14の高さは、図5に示すように、交差部15からフェース部材11aの外縁に向かって、漸減するように形成されている。なお、この断面図も、縮尺通りに描いたものではない。また、補強リブ14の幅も、交差部15からフェース部材11aの外縁に向かって、徐々に細くなるように形成されている。このように補強リブ14を中心側から外縁に向かって薄く且つ細くすることで、急激な剛性の変化を抑えることができる。
【0030】
補強リブ14の交差部15からの長さは、フェース部材11aの外縁までの約45%以上が好ましく、約50%以上がより好ましい。また、約90%以下が好ましく、約85%以下がより好ましい。トウ側とヒール側の長さは同じでも異なってもよい。補強リブ14の高さは、最も高い部分が第1及び第2の主要リブ12、13の最も高い部分と同じ高さにすることが好ましいが、第1及び第2の主要リブ12、13よりも低くすることもできる。低くする場合、その差は、約0.1mm以上が好ましく、約0.5mm以下が好ましい。また、補強リブ14の幅は、最も太い部分で、約2mm以上が好ましく、約3mm以上がより好ましい。また、補強リブ14の幅は、約12mm以下が好ましく、約10mm以下がより好ましい。
【0031】
第1の主要リブ12は、クラウン側ではトウ側に、ソール側ではヒール側に傾けることが好ましい。このように第1の主要リブ12を傾けることで、アマチュアゴルファの打点が集中するトウ上側−ヒール下側方向での反発性能を最大限に引き出すことができる。具体的には、図6に示すように、ゴルフクラブヘッド1を通常のアドレスポジションに置いたときのグランドライン(G.L)30に対する第1の主要リブ12の中心線31の傾きθaを、約90°以下とすることが好ましく、約85°以下とすることがより好ましい。また、リブの傾きθaを、約25°以上にすることが好ましく、約30°以上とすることがより好ましい。
【0032】
第2の主要リブ13は、トウ側ではソール側に、ヒール側ではクラウン側、すなわちホゼル側に傾けることが好ましい。このように第2の主要リブ13を傾けることで、トウの上方向での反発性能を最大減に引き出すことができる。具体的には、グランドライン30に対する第2の主要リブ13の中心線32の傾きθbを、約5°以上にすることが好ましく、約10°以上とすることがより好ましい。また、リブの傾きθbを、約80°以下とすることが好ましく、約70°以下とすることがより好ましい。補強リブ14は、その中心軸33が、第1及び第2の主要リブ12、13の両中心軸31、32がなす角を二等分することが好ましい。
【0033】
第1の主要リブ12を中心軸31に沿って直線ではなく、S字状またはZ字状に滑らかに湾曲させるとともに、第2の主要リブ13も中心軸32に沿って直線ではなく、S字状またはZ字状に滑らかに湾曲させることで、トウ−クラウン区域16とヒール−ソール区域19の両方の区域の面積を広くすることができる。補強リブ14は中心軸33に沿って直線状とすることが好ましい。
【0034】
トウ−クラウン区域16、トウ−ソール区域17、ヒール−クラウン区域18、及びヒール−ソール区域19は、それぞれ実質的に均一な肉厚を有している。トウ側とヒール側の反発係数を均等にするため、トウ−クラウン区域16の肉厚は、ヒール−ソール区域19の肉厚よりも薄くすることができる。また、トウ−ソール区域17の肉厚は、ヒール−クラウン区域18の肉厚よりも薄くすることができる。これら肉厚の差は、少なくとも約0.05mm以上がより好ましく、約0.1mm以上がさらに好ましい。一方、これら肉厚の差が大き過ぎると、均等の反発性能が得られないため、約0.5mm以下が好ましく、約0.4mm以下がより好ましい。
【0035】
トウ−クラウン区域16の肉厚とトウ−ソール区域17の肉厚は、同じであっても異なってもよいが、好ましくは、クラウン側とソール側の反発係数をより均等にするため、トウ−クラウン区域16よりもトウ−ソール区域17の肉厚を薄くすることが好ましい。これら肉厚の差は、約0.05mm以上が好ましく、約0.1mm以上がより好ましい。一方、これら肉厚の差が大き過ぎると、均等の反発性能が得られないため、約0.5mm以下が好ましく、約0.4mm以下がより好ましい。
【0036】
ヒール−クラウン区域18の肉厚とヒール−ソール区域19の肉厚は、同じであっても異なってもよい。ヒール−クラウン区域18とヒール−ソール区域19との肉厚を異なるようにする場合、肉厚の差は約0.05mm以上が好ましく、約0.5mm以下が好ましい。
【0037】
交差部15は、フェース部10のスイートスポット、すなわち、フェース面上に投影されるゴルフクラブヘッドの重心位置を含む。また、この交差部15は、第1及び第2の主要リブ12、13の中心軸の交点を含む。この主要リブの交点とスイートスポットとは、同一であってもよいし、異なってもよい。また、この主要リブ12、13の交点は、フェース部10の表面に形成されたスコアライン上、又は図1に示すように、トウ側とヒール側に部分的に形成されたスコアライン28の延長線上に存在しないように配置する。
【0038】
交差部15の高さは、第1及び第2の主要リブ12、13の最も高い部分と同じ高さとすることが好ましいが、より高くすることもできる。交差部15を主要リブよりも高くする場合、その高さの差は約0.1mm以上が好ましく、約0.5mm以下が好ましい。また、交差部15の表面は、曲面状とすることが好ましく、図5に示すように、交差部15の側断面は、略半円または略半楕円の形状を有している。平面円形の交差部15の半径は、最も広い部分において、約5mm以上が好ましく、約12mm以下が好ましい。なお、交差部15は、このような円形に限定されず、楕円形、長方形や菱形などの四角形、五角形や六角形などの多角形にしてもよい。
【0039】
トウ−クラウン区域16、トウ−ソール区域17、ヒール−クラウン区域18、ヒール−ソール区域19の各肉厚は、それぞれ他の区域の肉厚に対して上述した差が存在するものの、おおむね、約1.0mm以上が好ましく、約1.5mm以上がより好ましい。また、各区域の肉厚は、約3.0mm以下が好ましく、約2.5mm以下がより好ましい。
【0040】
フェース部材11は、鍛造、鋳造いずれの方法でも形成可能である。また、フェース部材11の材料としては、チタンまたはチタン合金やステンレス鋼などを用いることができる。ゴルフクラブヘッド1の体積は、約100cc以上が好ましく、約150cc以上がより好ましい。一方、ゴルフクラブヘッド1の体積は、約500cc以下が好ましく、約460cc以下がより好ましい。また、ゴルフクラブヘッド1の重量は、約170g以上が好ましく、約175g以上がより好ましい。一方、ゴルフクラブヘッド1の重量は、約250g以下が好ましく、約245g以下がより好ましい。
【0041】
図7〜図10は、第1の溝50の他の形態を断面図により示している。図7においては、第1の溝50の断面は、上底が下底よりも長い逆台形状である。図8においては、第1の溝50の断面はU字形状である。図9においては、第1の溝50の断面は逆三角形状である。図10においては、第1の溝50の断面は、実質的に半円形状である。また、図4、図7、図8においては、最大の高さTを有するリブの頂面は一定の面積を有しているものの、図9及び図10においては、最大の高さTを有するリブの頂面は一定の面積を有しておらず、面積がほぼゼロとなっている。
【0042】
また、図8及び図10に示したように、リブ12の頂面からヒール−ソール区域19及びトウ−ソール区域17に向かうにつれてリブの高さは減少していくが、リブ12がこれら区域19及び17に接する部分は、曲線状に形成され、これら区域19及び17と滑らかに接している。
【0043】
また、上述した実施の形態では、図1〜図6に示すように、補強リブ14を設けたが、図11に示すように、本願発明は、補強リブを設けなくてもよい。補強リブがない場合、隣接する第1及び第2の主要リブ12、13の接合部分は、滑らかな湾曲状となるようにすることが好ましい。
【0044】
さらに別の実施の形態では、リブに溝を設ける代わりに、リブの高さをその位置によって変えてもよい。すなわち、第1及び第2の主要リブ12,13の高さは、クラウン側よりもソール側の方を低くする。主要リブ12,13において、交差部15から見てソール側の最大の高さをクラウン側の最大の高さの約30〜80%とすることが好ましい。また、補強リブ14の高さも、クラウン側よりもソール側の方を低くすることができる。補強リブ14においては、交差部15から見てソール側の最大の高さをクラウン側の最大の高さの約30〜80%とすることが好ましい。
【実施例】
【0045】
[実施例1−1,1−2と比較例1]
本発明のフェース部材を作製し、その反発係数(COR:coefficient of restitution)について評価した。本実施例では、COR値を実際に測定する代わりに、特性時間(CT:Characteristic Time)を測定した。CT値は、全米ゴルフ協会(USGA)と英国ゴルフ協会(R&A)が採用したフェースのスプリング効果を簡易的で且つ精度高く測定することができる定量的な値であって、R&Aルールズ・リミテッドが承認したポータブル・ペンデュラム・マシン(携帯用振り子式測定器)で測定することができる。一般的に、フェースがよく撓む方がエネルギーの損失が少なく、ボールの初速が高いことから、CT値は、その撓みをボールとフェースの接触時間で表現したものである。現在、ルール上、その最上限を257(規定239+許容誤差18)μ秒と定めている。
【0046】
図3に示した構造であって、リブの高さTを0.8mmとし、溝50〜52の深さを0.6mmとした実施例を実施例1−1とした。また、溝50〜52の深さを0.4mmとした実施例を実施例1−2とした。一方、比較として、リブに溝を設けなかった比較例1も作製した。比較例1における第1の主要リブ12の断面図を図12に示す。第2の主要リブ13、補強リブ14も図12と同様の断面形状とした。実施例1−1及び1−2、比較例1のいずれも、第1の主要リブ12及び第2の主要リブ13の高さは0.8mmとし、交差部15の高さは1.2mmとした。また、図5に示したような補強リブ14を設けた。さらに、トウ−クラウン区域16、トウ−ソール区域17、ヒール−クラウン区域18、ヒール−ソール区域19の4つの区域の肉厚をいずれも2.4mmとした。
【0047】
なお、共通するフェース部材の条件としては、フェース部材の幅を75mm、高さを43mmとし、第1及び第2の主要リブは図1と同様に傾け、補強リブの長さは、トウ側に27mm、ヒール側に25mmとした。第1及び第2の主要リブの幅は9.5mm、補強リブの幅は7.1mmとした。また、共通するゴルフクラブヘッドの条件としては、フェース部材の材料はチタン合金(Ti−6Al−4V)であり、ヘッド体積を460ccとし、ヘッド重量を190gとした。クラウン部の肉厚を0.7mm、ソール部とサイド部の肉厚を0.9mmとした。
【0048】
実施例1−1,1−2および比較例1について、ボールの打点におけるCT値を測定した。ボールの打点は、図13に示すように、垂直方向および水平方向に異なる15の打点について調べた。中央の打点40cは、スウィートスポットでの打球を想定しており、フェース部材の交差部内とした。それ以外の14の打点は、スウィートスポットを外した打球を想定した。中央の打点40cからトウ側およびヒール側にそれぞれ10mm離れた位置を、打点40b、40dとし、さらにトウ側およびヒール側にそれぞれ10mm離れた位置を、打点40a、40eとした。また、これら、5つの打点40a〜40eのクラウン側およびソール側にそれぞれ10mm離れた位置を、40aH〜40eHおよび40aL〜40eLとした。
【0049】
以上のような15の打点のうち、打点40bH及び40dLは第1の主要リブ12上に位置しており、打点40dH及び40bLは第2の主要リブ13上に位置している。
【0050】
以上の条件で、実施例1−1,1−2、比較例1の各打点におけるCT値を測定した。その結果を表1〜表3に示す。表1〜表3は、実施例1−1,1−2、比較例1のそれぞれについて、中央の打点40cのCT値に対するその他の打点のCT値のパーセンテージを示している。また、これらの結果に基づいて、コンピュータによりシミュレーションしたフェース部材におけるCT値の分布図を図14〜図16に示す。表1〜表6、図14〜図16を通して、中央の打点40cの位置を0mmとし、ヒール側及びクラウン側に向かう距離をプラスで、トウ側及びソール側に向かう距離をマイナスで表した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
図14に示すように、深さが0.6mmの溝をリブに設けたフェース部材(実施例1−1)のCT値は、図16に示したリブに溝を設けなかったフェース部材(比較例1)と比較すると、ソール側のCT値が上昇しており、打点40cのCT値に近いCT値を有するフェース部面積が大きくなっている。また、図15に示すように、深さが0.4mmの溝をリブに設けたフェース部材(実施例1−2)のCT値は、実施例1−1よりもCT値が上昇しており、CT値の分布が均一となっている。
【0055】
[実施例2−1,2−2,2―3と比較例2]
実施例2−1では、交差部15の高さを1.2mmとし、第1の主要リブ12及び第2の主要リブ13のクラウン側の最大の高さを1.0mmとした。一方で、第1の主要リブ12及び第2の主要リブ13のソール側の最大の高さを0.7mmとした。補強リブ14については、クラウン側の最大の高さを1.1mmとし、ソール側の最大の高さを1.0mmとした。4つの区域16〜19の肉厚をいずれも2.4mmとした。
【0056】
実施例2−2では、トウ−クラウン区域16の肉厚を2.4mmとし、トウ−ソール区域17の肉厚を1.9mmとした。そして、ヒール−クラウン区域18の肉厚を2.3mmとし、ヒール−ソール区域19の肉厚を2.4mmとした。その他は実施例2−1と同様とした。
【0057】
実施例2−3では、補強リブ14を設けず、第1の主要リブ12及び第2の主要リブ13、第1の溝50及び第2の溝51を実施例2−1と同様とした。また、4つの区域16〜19の肉厚は実施例2−2と同様とした。
【0058】
比較例2では、第1の主要リブ12、第2の主要リブ13、補強リブ14の最大の高さを1.2mmとした。4つの区域16〜19の肉厚については、いずれも2.4mmとした。いずれのリブにも溝は設けなかった。
【0059】
以上の条件で、実施例2−1〜2−3、比較例2について、図12の各打点におけるCT値を測定した。その結果を表4〜表7に示す。表4〜表7は、実施例2−1〜2−3、比較例2において、中央の打点40cのCT値を100%としたときに、その他の打点のCT値の割合を示している。表4〜表7についても、中央の打点40cの位置を0mmとし、ヒール側及びクラウン側に向かう距離をプラスで、トウ側及びソール側に向かう距離をマイナスで表した。
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
表4〜表7からわかるように、実施例2−1〜2−3のCT値は比較例2のCT値と比べて上昇し、分布がより均一になっている。特に、実施例2−1〜2−3におけるリブ上の4つの打点40bH、40dH、40bL、40dLのCT値が比較例2のCT値を比べて上昇している。
【符号の説明】
【0065】
1 ゴルフクラブヘッド
10 フェース部
11 フェース部材
12 第1の主要リブ
13 第2の主要リブ
14 補強リブ
15 交差部
16 トウ−クラウン区域
17 トウ−ソール区域、
18 ヒール−クラウン区域
19 ヒール−ソール区域
20 ヘッド本体
21 ソール部
22 クラウン部
23 トウ
24 ヒール
25 ホゼル部
26 フェース部トウ側部分
27 フェース部ヒール側部分
28 スコアライン
30 グランドライン(G.L)
31 第1の主要リブの中心軸
32 第2の主要リブの中心軸
33 補強リブの中心軸
40 打点
50 第1の溝
51 第2の溝
52 第3の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空の構造を有するゴルフクラブヘッドであって、
打球面を有するフェース部と、このフェース部の内側に配置された第1および第2の主要リブとを含んでなり、前記第1の主要リブはクラウン側からソール側に延びており、前記第2の主要リブはホゼル側からソールのトウ側に延びており、これら第1および第2の主要リブは交差部において交差しており、
前記第1及び第2の主要リブは、クラウン側よりもソール側の方の剛性が小さい構造を有している、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1の主要リブの前記交差部からソール側にかけて第1の溝が設けられており、この第1の溝の深さが前記第1の主要リブの最大の高さの4分の3以下であり、
前記第2の主要リブの前記交差部からトウ側にかけて第2の溝が設けられており、この第2の溝の深さが前記第2の主要リブの最大の高さの4分の3以下である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1及び第2の主要リブの高さが0.5mm〜1.5mmである、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1及び第2の主要リブの高さは、クラウン側よりもソール側の方が低い、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第1及び第2の主要リブの幅が8mm〜14mmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース部の内側に配置され、前記交差部からフェース部の端部方向へ延びている補強リブをさらに含んでおり、
前記補強リブは、その高さが前記交差部から前記端部方向に向かって漸減するとともに、前記フェース部の端部の途中まで形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−61037(P2012−61037A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205523(P2010−205523)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】