説明

ゴルフクラブ

【課題】ヘッドに対するシャフトの円周上の向きを変化させることなく、しかも容易にかつ強固に、ユーザー自身が任意の角度に調角可能な構造のゴルフクラブを提供する。
【解決手段】プラグ部材を固定したシャフトの先端部をホーゼル部のシャフト差込み孔に上方から差し込み、調角部材を下方から差し込み、固定ボルトを調角部材のボルト挿入孔から挿入してプラグ部材の雌ネジ部にねじ込む。シャフト差込み孔に差し込まれたプラグ部材の下端部外周面とこれに対応するシャフト差込み孔の内周面との間には径方向間隙が設定されるので、この径方向間隙の円周上一部に、調角部材に設けた円周上一部のスペーサ部を挿入する。そしてスペーサ部を円周上何れの位置で径方向間隙に挿入するかによってシャフトに対するヘッド本体の固定角度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調角可能、すなわちシャフトの中心軸線に対するヘッドの固定角度を調整可能なゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている調角可能なゴルフクラブについては、全てヘッドから一旦シャフトを抜き取り、さらにシャフトを回転させて調角を行なうため、調角後には調角前と比較してシャフトが所定角度回転した状態でヘッドに固定されることになる。しかしながらシャフトは、ヘッドに対する固定の向きによって微妙に打球時のシャフト振動数が異なるものである。したがって従来技術によると調角を行なうことによってシャフト振動数が変化するため、打球時のシャフトフィーリングが変わってしまうことになる。下記表1にシャフト回転位置による振動数の変化を記載する。
【0003】
【表1】

【0004】
また、従来技術では上記したように調角後には調角前と比較してシャフトが回転した状態でヘッドに固定されるため、グリップについても同心円形状のグリップしか使用することができず、バックラインをもつ円周上の方向性を備えるグリップを使用することができない。したがってグリップをしっかりと握ることが難しく、またグリップのデザインについても制約を受けるものとなっている。
【0005】
また、従来技術ではシャフトを挿入するパーツの端面内径部に十分な面取り加工を施せないため、シャフト折損の可能性が大きくなっている(特許文献1参照)。
【0006】
また従来、シャフトの円周上の向きを変えずにしかも容易に調角可能なゴルフクラブも提案されているが、その方法は、複数の調角パーツを準備し、選択したパーツをシャフトに接着し直すものであって、必ずしも容易に調角可能であるとは言えない(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−050676号公報
【特許文献2】特開2006−042951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、ヘッドに対するシャフトの円周上の向きを変えることなく、しかも容易にかつ強固に、ユーザー自身が任意の角度に調角可能な構造を有するゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるゴルフクラブは、ヘッド本体に一体または別体で備えられるとともに貫通孔状のシャフト差込み孔を設けたホーゼル部と、シャフトの先端部に固定されるとともに前記シャフト差込み孔に差し込まれる有底筒状のプラグ部材と、前記シャフト差込み孔にその下端開口から挿入され、上方へ抜けることがないよう抜け止め係合部を設けた調角部材と、前記調角部材に設けたボルト挿入孔から挿入され、前記プラグ部材の端面部に設けた雌ネジ部にねじ込まれることにより前記調角部材およびプラグ部材を前記ホーゼル部に対し着脱自在に固定する固定ボルトとを有し、前記シャフト差込み孔の上端開口周縁部とこれに対応する前記プラグ部材の外周部に球面軸受構造が設けられ、かつ前記ホーゼル部に対し前記プラグ部材を回り止めする回り止め構造が設けられ、前記シャフト差込み孔に差し込まれた前記プラグ部材の下端部外周面とこれに対応する前記シャフト差込み孔の内周面との間に径方向間隙が設定され、円周上一部で前記径方向間隙に挿入されることにより前記プラグ部材の下端部を前記シャフト差込み孔内で径方向何れかの方向へ片寄った状態で位置決めするスペーサ部が前記調角部材に設けられ、前記スペーサ部が円周上何れの位置で前記径方向間隙に挿入されるかによって前記シャフトに対する前記ヘッド本体の固定角度が調整可能とされていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2によるゴルフクラブは、上記した請求項1記載のゴルフクラブにおいて、前記球面軸受構造は、前記シャフト差込み孔の上端開口周縁部に設けられた環状の凹面状球面部と、前記プラグ部材の外周部に環状段差部を設けることによりこの段差部に設けられた環状の凸面状球面部との組み合わせよりなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3によるゴルフクラブは、上記した請求項1記載のゴルフクラブにおいて、前記回り止め構造は、前記シャフト差込み孔の上端開口周縁部に設けられた円周上一部の凹部と、前記プラグ部材の外周部に環状段差部を設けることによりこの段差部に設けられた円周上一部の凸部との組み合わせよりなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4によるゴルフクラブは、上記した請求項1ないし3の何れかに記載のゴルフクラブにおいて、前記シャフト差込み孔がその上端から下端へかけての方向で内径寸法を徐々に拡大するテーパー面状に形成されること、および/または前記プラグ部材がその上端から下端へかけての方向で外径寸法を徐々に縮小するテーパー面状に形成されることにより、前記シャフト差込み孔に差し込まれた前記プラグ部材の下端部外周面とこれに対応する前記シャフト差込み孔の内周面との間に径方向間隙が設定されることを特徴とする。
【0013】
更にまた、本発明の請求項5によるゴルフクラブは、上記した請求項1ないし4の何れかに記載のゴルフクラブにおいて、前記調角部材は、前記シャフト差込み孔にその下端開口から挿入される円盤状本体を有し、前記円盤状本体の外周面に鍔状ないし段差状を呈する前記抜け止め係合部が設けられ、前記円盤状本体の一端面における外周縁部に沿って円周上一部の前記スペーサ部が軸方向一方へ向けて一体成形され、前記スペーサ部はこれを軸方向一方から見て円弧形に成形され、更に、前記円盤状本体の外径寸法から前記スペーサ部の径方向厚み寸法を差し引いた分の長さを直径とする円形状の中心位置に前記ボルト挿入孔が設けられていることを特徴とする。
【0014】
上記構成を有する本発明のゴルフクラブにおいては、貫通孔状のシャフト差込み孔を設けたホーゼル部がヘッド本体に一体または別体で備えられ、有底筒状のプラグ部材がシャフトの先端部に固定される。プラグ部材はシャフトとともにシャフト差込み孔にその上端開口から差し込まれ、一方、シャフト差込み孔の下端開口には調角部材が差し込まれる。調角部材は上方へ抜けることがないように抜け止め係合部を備えている。
【0015】
シャフト差込み孔に差し込まれたプラグ部材は、その被差込み部の上端部で球面軸受構造によってシャフト差込み孔の上端開口周縁部に保持され、一方、その被差込み部の下端部外周面とこれに対応するシャフト差込み孔の内周面との間には径方向間隙が設定される。したがってプラグ部材はシャフトとともに球面軸受構造を中心として径方向間隙の範囲内でホーゼル部に対し揺動可能とされる。
【0016】
また、調角部材には、円周上一部で径方向間隙に挿入されるスペーサ部が設けられているので、このスペーサ部を円周上一部で径方向間隙に挿入することによりプラグ部材の下端部をシャフト差込み孔内で径方向何れかの方向へ片寄った状態で位置決めし、このときスペーサ部が円周上何れの位置で径方向間隙に挿入されるかによってシャフトに対するヘッド本体の固定角度が調整可能とされている。
【0017】
例えば、スペーサ部がプラグ部材のヘッドトウ側で径方向間隙に挿入される場合は、プラグ部材の下端部がシャフト差込み孔内でヘッドヒール側へ片寄ることになるので、ヘッドライ角α(図1)が最大値となる。また反対に、スペーサ部がプラグ部材のヘッドヒール側で径方向間隙に挿入される場合は、プラグ部材の下端部がシャフト差込み孔内でヘッドトウ側へ片寄ることになるので、ヘッドライ角αが最小値となる。
【0018】
また、スペーサ部がプラグ部材のバックフェース側で径方向間隙に挿入される場合は、プラグ部材の下端部がシャフト差込み孔内でフェース側へ片寄ることになるので、ヘッドフェース角β(図6)がスライス側に最大値となる。また反対に、スペーサ部がプラグ部材のフェース側で径方向間隙に挿入される場合は、プラグ部材の下端部がシャフト差込み孔内でバックフェース側へ片寄ることになるので、ヘッドフェース角βがフック側に最大値となる。
【0019】
また、スペーサ部は円周上360度のエンドレスな範囲で何処でも挿入可能であるので、上記4箇所の調角位置のうち2箇所の調角位置の中間位置(斜めの位置)で径方向間隙に挿入される場合には、当該2箇所の調角位置による調角が複合的に行なわれる。
【0020】
次いで、好みの調角位置が決まったら、固定ボルトが、調角部材に設けたボルト挿入孔から挿入され、プラグ部材の端面部に設けた雌ネジ部にねじ込まれることにより調角部材およびプラグ部材がホーゼル部に固定され、プラグ部材は予めシャフトに固定されているので、シャフトもホーゼル部に固定される。固定ボルトによる固定は、固定ボルトを締め付けたり緩めたりすることで着脱自在であるので、何度でも再調整が可能である。
【0021】
尚、上記構成において、ホーゼル部に設けられたシャフト差込み孔の上端開口周縁部とこれに対応するプラグ部材の外周部には回り止め構造が設けられているので、プラグ部材およびこれを固定したシャフトは調角時、揺動しても回転はせず、ヘッドに対するシャフトの円周上の向きは全く変化しない。したがって調角後もシャフト振動数は変化せず、バックラインをもつ円周上の方向性を備えるグリップを使用することも可能となる。
【0022】
上記球面軸受構造の具体例としては、シャフト差込み孔の上端開口周縁部に設けられた環状の凹面状球面部と、プラグ部材の外周部に環状の段差部を設けることによりこの段差部に設けられた環状の凸面状球面部との組み合わせを挙げることができ、この組み合わせ構造によれば、シャフト差込み孔の上端開口周縁部とプラグ部材外周の環状の段差部との同心度が常に確保され、ホーゼル部に対しプラグ部材およびシャフトが円滑に揺動する(請求項2)。
【0023】
上記回り止め構造の具体例としては、シャフト差込み孔の上端開口周縁部に設けられた円周上一部の凹部と、プラグ部材の外周部に環状の段差部を設けることによりこの段差部に設けられた円周上一部の凸部との組み合わせを挙げることができ、この組み合わせ構造によれば、ホーゼル部とプラグ部材およびシャフトとが確実に回り止めされる(請求項3)。
【0024】
また、上記構成においては、シャフト差込み孔に差し込まれるプラグ部材の被差込み部のうち、その上端部に差込み孔内周面との間の径方向間隙は殆ど設定されず、その下端部のみに差込み孔内周面との間の径方向間隙が設定されることになるが、これは、シャフト差込み孔がその上端から下端へかけての方向で内径寸法を徐々に拡大するテーパー面状に形成されること、および/またはプラグ部材がその上端から下端へかけての方向で外径寸法を徐々に縮小するテーパー面状に形成されることにより実現され、製造時にこれらテーパーの角度を何度に設定するかによって、調角範囲の大小を調整することも可能とされる(請求項4)。
【0025】
調角部材の具体例としては、シャフト差込み孔にその下端開口から挿入される円盤状本体を有し、この円盤状本体の外周面に鍔状ないし段差状を呈する抜け止め係合部が設けられ、円盤状本体の一端面における外周縁部に沿って円周上一部のスペーサ部が軸方向一方へ向けて一体成形され、スペーサ部はこれを軸方向一方から見て円弧形に成形されるものを挙げることができ、この形状ないし構造によれば、スペーサ部が円盤状本体に一体化されることから円盤状本体を回転させればスペーサ部も回転し、よって調角作業が容易化される(請求項5)。
【0026】
但し、スペーサ部が円盤状本体の一端面における外周縁部に沿って円周上一部に設けられて、プラグ部材の外周面とシャフト差込み孔の内周面との間の径方向間隙の円周上一部に挿入されると、円盤状本体とプラグ部材の端面部とが互いに偏心することになるので、両者の各中心位置にボルト挿入孔および雌ネジ部を設けたのでは、これらが互いに偏心してしまって固定ボルトをねじ込めないことが懸念される。そこで本発明では、円盤状本体の外径寸法からスペーサ部の径方向厚み寸法を差し引いた分の長さを直径とする円形状の中心位置にボルト挿入孔が設けられることにし、これにより調角位置の如何にかかわらず何時でもボルト挿入孔と雌ネジ部との位置を合致させて固定ボルトをねじ込めるようにした。円形状は円弧形のスペーサの内側の面に内接しかつその180度対称位置で円盤状本体の外周面に内接する円のことを云い、この円自体が円盤状本体に対し偏心した位置に設定されることになる(請求項5)。
【発明の効果】
【0027】
上記構成を有する本発明によれば、ヘッドに対するシャフトの円周上の向きを変化させることなく、しかも容易にかつ強固に、ユーザー自身が任意の角度に調角可能な構造のゴルフクラブを提供することができる。ヘッドに対するシャフトの円周上の向きは変化せず、よって調角後もシャフト振動数は変化せず、バックラインをもつ円周上の方向性を備えるグリップを使用することもできる。調角は固定ボルトを緩めて調角部材を回転させることによって行なわれるので、シャフトを取り外す必要がない。固定は固定ボルトの締め付けによって行なわれるので、極めて強固で再調整も容易である。また調角は円周上360度のエンドレスな無段階調整であるので、ユーザーが好みに応じて微妙な調整を行なうことができる。
【0028】
請求項2の構成によれば、シャフト差込み孔の上端開口周縁部とプラグ部材外周の環状の段差部との同心度が常に確保され、ホーゼル部に対しプラグ部材およびシャフトが円滑に揺動する。請求項3の構成によれば、ホーゼル部とプラグ部材およびシャフトとが確実に回り止めされる。請求項4の構成によれば、製造時にこれらテーパーの角度を何度に設定するかによって調角範囲の大小を調整することも可能とされる。請求項5の構成によれば、円盤状本体を回転させればスペーサ部も回転することから調角作業が容易化され、固定ボルトによるねじ込み作業が円滑化される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例に係るゴルフクラブの縦断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】同ゴルフクラブを分解した状態の要部縦断面図
【図4】調角部材の平面図
【図5】調角部材を180度回転させた状態の要部縦断面図
【図6】調角部材を右90度回転させた状態の説明図であって、(A)はヘッドの平面図、(B)はこのときのスペーサ部の配置を示す概略横断面図
【図7】調角部材を左90度回転させた状態の説明図であって、(A)はヘッドの平面図、(B)はこのときのスペーサ部の配置を示す概略横断面図
【図8】本発明の他の実施例に係るゴルフクラブの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0031】
(1)本発明は、上記課題を解決するため、ヘッド本体のヒール側に位置するホーゼル上端が開口し且つソール側まで貫通しているパーツ挿入穴を有するゴルフクラブヘッドと、前記挿入穴に挿入される、テーパー穴を有し且つ上端部内径側に球面形状面取りを施し、更にヘッド回転防止凹形状を配置したホーゼルパーツ部と、これにシャフトと共に挿入され、且つこのシャフトの先端部に接着される、底面にネジ穴を備え、ホーゼルパーツ部上端の球面状面取り部に擦り合わさる部分を球面加工し、且つヘッド回転防止凸部を有し、更には、この上端内径部にシャフト折損防止の為のテーパー加工を施したプラグ部と、テーパー穴を有したホーゼルパーツに挿入されたプラグ部との間に挿入する、底面の中心より任意の角度(1度から3度、好ましくは1度から2度)のセンターをずらして開口した、固定用ボルトを通すための貫通穴を有した調角ユニットと、前記ネジ穴を備えたシャフト先端部に装着されたプラグ部にネジ結合するボルトと、を含むことを特徴とする。
(2)これにより、グリップが装着されたシャフトを抜き差し及び回転させることなく、調角ユニット部を回転させることにより、ユーザーが任意の調角位置を選択することができる。
(3)更に、前記ホーゼルパーツ部について、このパーツの機能をヘッド本体のホーゼル穴部に直接採用、すなわち、このパーツの構造をヘッド成型時に一体成型する事も可能であるため、ホーゼルパーツ部の重量を軽量化でき、ヘッドの低重心化を可能とすることを特徴とする。尚、前記ゴルフクラブには、ウッド(ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ)などに限らず、前記調角パーツが適用可能なアイアン、パターも含まれる。
(4)前記ホーゼルパーツ部とシャフトが装着されたプラグ部の接触面、すなわち、擦り合わせ面においては、隙間、段差がなく、密着に優れた球面形状の擦り合わせ面を有し、且つヘッド回転防止のための凸凹形状についても独自の形状を有し、結合ボルトで、一定のトルクで締め付けを行なうことにより、強固に固定されることも含まれる。
【0032】
上記(1)〜(4)の構成によれば、以下の作用効果が発揮される。
【0033】
(5)本発明の調角パーツにより、シャフトの振動数を一定に保ちながら調角可能となる。
(6)シャフトを一定方向に保てるため、シャフトデザインを自由に選択できる。
(7)シャフトを一定方向に保てるため、グリップのデザインの選択の自由度、バックライン等の機能性のあるグリップが装着可能である。
(8)ヘッドとシャフトが簡単に脱着出来る構造であるため、シャフトの種類も自由に選択可能である。
(9)角度調整位置については、製造側が指定した調角位置ではなく、ユーザーが、自由に、任意の調角位置を選択することが可能である。
(10)プラグの、シャフト接合部に面取り加工が可能なため、シャフト折損を大幅に削減させることが可能である。
(11)これらの調角パーツのうち、ホーゼルパーツ部について、その構造を直接ヘッド本体に一体構造として成型可能であるため、ホーゼルパーツ部の重量分が軽量化になり、その軽量化分の重量をヘッド本体に振り分けられるため、ヘッドの更なる低重心化が可能となる。
【実施例】
【0034】
つぎに、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。図1は本発明の実施例に係るゴルフクラブの縦断面図であって、その要部拡大図が図2に示されている。また図3は、当該ゴルフクラブを分解した状態の縦断面図である。
【0035】
当該実施例に係るゴルフクラブは、ゴルフクラブヘッド(単にヘッドとも称する)1、シャフト5およびグリップ6を有するとともにホーゼルジョイントシステム構造8を有し、このホーゼルジョイントシステム構造8が、ヘッド1におけるヘッド本体2に一体で備えられるとともに貫通孔状のシャフト差込み孔4を設けたホーゼル部3と、シャフト5の先端部に固定されるとともにシャフト差込み孔4に差し込まれる有底筒状のプラグ部材(プラグ部とも称する)9と、シャフト差込み孔4にその下端開口から挿入され、上方へ抜けることがないよう抜け止め係合部10bを設けた調角部材(調角ユニットとも称する)10と、調角部材10に設けたボルト挿入孔10dから挿入され、プラグ部材9の端面部9dに設けた雌ネジ部9eにねじ込まれることにより調角部材10およびプラグ部材9をホーゼル部3に対し着脱自在に固定する固定ボルト11とを有している。
【0036】
ヘッド1は、例えばチタン合金を精密鋳造した中空体よりなり、フェース、クラウン、ソール、ヒールおよびバックフェースを備えるヘッド本体2を有し、更に上記ホーゼル部3を一体に有している。
【0037】
ホーゼル部3に設けられたシャフト差込み孔4は、上記したように貫通孔状であって、その内周面がその上端から下端へかけての方向で内径寸法が徐々に拡大するテーパー面状に形成されている。尚、図示はしないが、ホーゼル部3に設けた貫通孔の内周面に別体のスリーブ(ホーゼルパーツ部とも称する)を固着してその内周空間を同じく貫通孔状のシャフト差込み孔4として利用しても良く、この場合にはスリーブの内周面が上記したテーパー面状に形成される。またこの場合スリーブは、例えばチタン合金またはアルミニウム合金の鋳造材または鍛造材を機械加工したものとするのが好適である。
【0038】
シャフト5の先端に固定されるプラグ部材9は、上記したように有底筒状であって、例えば接着などの手段によってシャフト5の先端に差し込み固定されている。またこのプラグ部材9は例えばチタン合金またはアルミニウム合金の鋳造材または鍛造材を機械加工したものよりなり、その円筒部の外周面に環状の段差部9aを有し、この段差部9aを境としてその下側に、シャフト差込み孔4に差し込まれる比較的小径の被差込み部9bが設けられるとともに、その上側に、シャフト差込み孔4に差し込まれることなくホーゼル部3の上方に配置される比較的大径のホーゼル延長部9cが設けられている。
【0039】
上記段差部9aは、シャフト差込み孔4の上端開口周縁部すなわちホーゼル部3の上端部に突き当てられて保持されるものであって、ここに球面軸受構造13が設けられ、またホーゼル部3に対してプラグ部材9を回り止めするための回り止め構造14が設けられている。球面軸受構造13は、シャフト差込み孔4の上端開口周縁部に設けられた環状の凹面状球面部3fと、段差部9aに設けられた環状の凸面状球面部9fとの組み合わせよりなり、両球面部3f,9fが滑動することによって軸受機能が発揮される。一方、回り止め構造14は、シャフト差込み孔4の上端開口周縁部に設けられた円周上一部の凹部3gと、段差部9aに設けられた円周上一部の凸部9gとの組み合わせよりなり、凹部3gと凸部9gが円周方向に係合することによって回り止め機能が発揮される。凹部3gと凸部9gの組み合わせは円周上複数(例えば4等配状)設けるのが好適であるが、いくつ設けるにしても上記両球面部3f,9fによる軸受機能を阻害しない形状(例えば、両球面部3f,9fが滑動するのに伴って凹部3gおよび凸部9gも互いに同方向に滑動可能な断面円弧状の形状など)とされている。尚、シャフト差込み孔4の上端開口周縁部には先に凹面状球面部3fが設けられているので、凹部3gはこの凹面状球面部3fの表面上に設けられ、あるいは図示するように凹面状球面部3fからシャフト差込み孔4の内周面へかけての部位に設けられる。また同様に、段差部9aには先に凸面状球面部9fが設けられているので、凸部9gはこの凸面状球面部9fの表面上に設けられ、あるいは図示するように凸面状球面部9fからホーゼル延長部9cの外周面へかけての部位に設けられる。
【0040】
プラグ部材9における被差込み部9bは、その外周面を軸方向ストレートな円筒面状に形成され、その外径寸法をシャフト差込み孔4の上端部の内径寸法(すなわちシャフト差込み孔4の最小内径寸法)と略同じに設定されている。一方、上記したようにシャフト差込み孔4はその内周面がその上端から下端へかけて漸次拡径するテーパー面状に形成されている。したがって被差込み部9bの上端部外周には殆ど隙間が生じないが、被差込み部9bの下端部外周にはシャフト差込み孔4の内周面との間に径方向間隙15が形成されている。したがってプラグ部材9は、上記球面軸受構造13を揺動の中心として、この径方向間隙15の範囲内でホーゼル部3に対し揺動することが可能とされている。
【0041】
また、プラグ部材9は上記したように有底筒状であるので、その下端に端面部9dを有し、この端面部9dの中心位置に雌ネジ部(雌ネジ孔)9eが設けられている。
【0042】
調角部材10は、例えばチタン合金またはアルミニウム合金材を機械加工したものであって、シャフト差込み孔4にその下端開口から挿入される円盤状本体10aを有し、この円盤状本体10aの外周面に、鍔状ないし段差状を呈する環状の抜け止め係合部10bが設けられている。この抜け止め係合部10bは、シャフト差込み孔4の下端開口周縁部に対し軸方向に係合し、当該調角部材10が上方へ抜けてしまうのを防止する。
【0043】
また、円盤状本体10aの上端面には、その外周縁部に沿って円周上一部のスペーサ部10cが上方へ向けて一体成形されている。図4はこの調角部材10の平面図を示すもので、この図4に示されるように、スペーサ部10cはこれを軸方向一方から見て円弧形ないし略円弧形に成形されて円筒の円周上一部の形状をなし、これが円周上一部で上記径方向間隙15に挿入されることによりプラグ部材9の下端部をシャフト差込み孔4内で径方向何れかの方向へ片寄った状態で位置決めする機能を発揮する。したがってスペーサ部10cの径方向厚み寸法tは、シャフト差込み孔4の下端部近傍の内径寸法をd1、プラグ部材9の被差込み部9bの外径寸法をd2として、t≒d1−d2とされるのを原則とする。
【0044】
尚、上記したようにシャフト差込み孔4の内周面は下端へ向けて漸次拡径するテーパー面状とされているので、これ対応してスペーサ部10cの厚み寸法は先端へ向けて漸次薄くするのが一層好ましい。また、シャフト差込み孔4の内周面に接するスペーサ部10cの外周面を該内周面に対応してテーパー面状とし、プラグ部材9の被差込み部9bの外周面に接するスペーサ部10cの内周面を該外周面に対応して軸方向ストレートな円筒面状とするのが一層好ましい。また、シャフト差込み孔4内でプラグ部材9の被差込み部9bの下端部を径方向一方へ片寄せたとき、径方向間隙15はその径方向最大幅が2倍となってその軸直角断面形状が円周方向両端へ向けてそれぞれ漸次幅狭となる三日月形状を呈することになるので、これに対応してスペーサ部10cの厚み寸法を図4に示すように円周方向両端へ向けてそれぞれ漸次薄くするのが一層好ましい。これらは何れも組立て後の隙間を極力なくし、よってがたつきを抑制してプラグ部材9をホーゼル部3にしっかりと連結するのに有効である。また、図4においてスペーサ部10cの円周方向設定角度(円弧の角度)は略180度とされ、この角度は大きいほうが連結が安定するが、機能的には180度より小さくても十分である。
【0045】
また、円盤状本体10aには、固定ボルト11の雄ネジ部を差し通すためのボルト挿入孔10dが設けられている。このボルト挿入孔10dの内径寸法は固定ボルト11の頭部の外径寸法よりも小さく設定されている。またボルト挿入孔10dは図4に示すように、円盤状本体10aの外径寸法d3からスペーサ部10cの径方向厚み寸法tを差し引いた分の長さd4を直径とする円形状10eの中心位置に設けられている。この円形状10eは図上点線で示すように、円弧形のスペーサ部10cの内周面に内接しかつその180度対称位置で円盤状本体10aの外周面に内接する円のことを云い、すなわちこの円形状10eとしてはプラグ部材9の端面部9dが想定されている。
【0046】
上記構成のゴルフクラブは、その組み立てに際し、プラグ部材9を固定したシャフト5の先端部をホーゼル部3のシャフト差込み孔4に上方から差し込み、一方、調角部材10をシャフト差込み孔4に下方から差し込み、固定ボルト11を調角部材10のボルト挿入孔10dから挿入してプラグ部材9の雌ネジ部9eにねじ込むものであって、以下のようにしてシャフト5の中心軸線に対するヘッド1の固定角度が調整されることになる。
【0047】
(1)すなわち、プラグ部材9を固定したグリップ6装着済みのシャフト5を、そのシャフト性能が最も発揮される位置を正面にして、ホーゼル部3のシャフト差込み孔4に上方から差し込む。次に、調角部材10をシャフト差込み孔4に下方から差し込み、このとき円周上一部のスペーサ部10cが例えば図1および図2に示すように、ヘッドトウ側に位置するように装着する。次に、固定ボルト11を調角部材10のボルト挿入孔10dから挿入してプラグ部材9の雌ネジ部9eにねじ込み、プラグ部材9および調角部材10を指定のトルクで締め付ける。上記手順で調角した場合、ライ角αはアップライト最大値となる。
【0048】
(2)つぎに、上記ライ角αをフラットに調角する方法を示す。先ず、固定ボルト11をシャフト5が回転しない程度に緩め、図5に示すように調角部材10をヒール側に180度回転させ、再度固定ボルト11を指定トルクで締め付ける。上記方法で調角した場合、ライ角αは最小値(フラット)となる。
【0049】
(3)つぎに、フェース角βをスライス側に調角する方法を示す。先ず、固定ボルト11をシャフト5が回転しない程度に緩め、図6に示すように調角部材10を図1および図2の位置から右回りに90度回転させ、再度固定ボルト11を指定トルクで締め付ける。上記方法で調角した場合、フェース角βがスライス側最大値となる。
【0050】
(4)つぎに、上記フェース角βをフック側に調角する方法を示す。先ず、固定ボルト11をシャフト5が回転しない程度に緩め、図7に示すように調角部材10を図1および図2の位置から左回りに90度回転させ、再度固定ボルト11を指定トルクで締め付ける。上記方法で調角した場合、フェース角βがフック側最大値となる。
【0051】
上記の調角方法で調角した場合のライ角、ロフト角、フェース角の関係を表2に示す。
【0052】
【表2】

注1)ライ角最大値を基準(0°)とし、調角部材10を上部クラウン側から見た場合、時計回転方向に回転させた場合の例。
注2)シャフト差込み孔4の内径部テーパー角が、1.0°の例。
注3)フェース角βは、シャフト中心軸線に直交する方向に対するフェース面2aのなす角度。スライスフェースは+表示、フックフェースは−表示。
注4)この角度調整例に使用したヘッド1は、ウッド型ユーティリティヘッド(ロフト角20度)の例を示す。
【0053】
この表2は、代表的な調角位置4箇所について例を示したが、調角部材は0度の位置から360度回転し、無段階的に調角することができるので、ユーザーは任意の位置での角度調整が可能である。
【0054】
更には、この調角対応ゴルフクラブにおいては、固定ボルト11を完全に緩めることで、簡単にシャフト5の脱着が可能であるため、異なるシャフト5の種類についても選択可能である。
【0055】
本発明のゴルフクラブにはウッド(ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ)に限らず、アイアン、パターなども含まれる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記説明した実施形態以外にも、その目的の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更することが可能である。例えば図8に示すようにホーゼル部3をヘッド本体2と一体構造とせず、独立させても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 ヘッド
2 ヘッド本体
2a フェース
3 ホーゼル部
3f 凹面状球面部
3g 凹部
4 シャフト差込み孔
5 シャフト
6 グリップ
8 ホーゼルジョイントシステム構造
9 プラグ部材
9a 段差部
9b 被差込み部
9c ホーゼル延長部
9d 端面部
9e 雌ネジ部
9f 凸面状球面部
9g 凸部
10 調角部材
10a 円盤状本体
10b 抜け止め係合部
10c スペーサ部
10d ボルト挿入孔
10e 円形状
11 固定ボルト
13 球面軸受構造
14 回り止め構造
15 径方向間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体に一体または別体で備えられるとともに貫通孔状のシャフト差込み孔を設けたホーゼル部と、シャフトの先端部に固定されるとともに前記シャフト差込み孔に差し込まれる有底筒状のプラグ部材と、前記シャフト差込み孔にその下端開口から挿入され、上方へ抜けることがないよう抜け止め係合部を設けた調角部材と、前記調角部材に設けたボルト挿入孔から挿入され、前記プラグ部材の端面部に設けた雌ネジ部にねじ込まれることにより前記調角部材およびプラグ部材を前記ホーゼル部に対し着脱自在に固定する固定ボルトとを有し、
前記シャフト差込み孔の上端開口周縁部とこれに対応する前記プラグ部材の外周部に球面軸受構造が設けられ、かつ前記ホーゼル部に対し前記プラグ部材を回り止めする回り止め構造が設けられ、
前記シャフト差込み孔に差し込まれた前記プラグ部材の下端部外周面とこれに対応する前記シャフト差込み孔の内周面との間に径方向間隙が設定され、
円周上一部で前記径方向間隙に挿入されることにより前記プラグ部材の下端部を前記シャフト差込み孔内で径方向何れかの方向へ片寄った状態で位置決めするスペーサ部が前記調角部材に設けられ、
前記スペーサ部が円周上何れの位置で前記径方向間隙に挿入されるかによって前記シャフトに対する前記ヘッド本体の固定角度が調整可能とされていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフクラブにおいて、
前記球面軸受構造は、前記シャフト差込み孔の上端開口周縁部に設けられた環状の凹面状球面部と、前記プラグ部材の外周部に環状段差部を設けることによりこの段差部に設けられた環状の凸面状球面部との組み合わせよりなることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項1記載のゴルフクラブにおいて、
前記回り止め構造は、前記シャフト差込み孔の上端開口周縁部に設けられた円周上一部の凹部と、前記プラグ部材の外周部に環状段差部を設けることによりこの段差部に設けられた円周上一部の凸部との組み合わせよりなることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載のゴルフクラブにおいて、
前記シャフト差込み孔がその上端から下端へかけての方向で内径寸法を徐々に拡大するテーパー面状に形成されること、および/または前記プラグ部材がその上端から下端へかけての方向で外径寸法を徐々に縮小するテーパー面状に形成されることにより、前記シャフト差込み孔に差し込まれた前記プラグ部材の下端部外周面とこれに対応する前記シャフト差込み孔の内周面との間に径方向間隙が設定されることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載のゴルフクラブにおいて、
前記調角部材は、前記シャフト差込み孔にその下端開口から挿入される円盤状本体を有し、前記円盤状本体の外周面に鍔状ないし段差状を呈する前記抜け止め係合部が設けられ、前記円盤状本体の一端面における外周縁部に沿って円周上一部の前記スペーサ部が軸方向一方へ向けて一体成形され、前記スペーサ部はこれを軸方向一方から見て円弧形に成形され、
更に、前記円盤状本体の外径寸法から前記スペーサ部の径方向厚み寸法を差し引いた分の長さを直径とする円形状の中心位置に前記ボルト挿入孔が設けられていることを特徴とするゴルフクラブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−87801(P2011−87801A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244403(P2009−244403)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【特許番号】特許第4671447号(P4671447)
【特許公報発行日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(393003686)株式会社本間ゴルフ (4)
【Fターム(参考)】