説明

ゴルフクラブ

【課題】、打点がばらついても安定した飛距離が得られやすく、トウ・ヒール方向に長い形状のフェース部を効率よく撓ませて反発性を高めることのできるゴルフクラブを提供すること。
【解決手段】シャフト6の一端に、基準水平面Bに対して規定のライ角αを設定して固着され、ゴルフボールの打球面を形成するフェース部12とこのフェース部12の上方でトップエッジ12aを介して隣接するクラウン部16とを有する中空構造のクラブヘッド10を備えたゴルフクラブ8であって、トップエッジ12aをヒール側よりもトウ側で基準水平面Bに対して上方に傾斜させて配置し、フェース部12の裏面に、トウ・ヒール方向の中央部を通り、トップ・ソール方向の中央部を基準水平面Bに沿って延びるリブ32を形成したゴルフクラブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、特に、中空構造のクラブヘッドを備えるゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴルフボールの打点位置は、スイートスポットが位置するフェース部の中央位置を中心として、トウ側に離隔するにつれてクラウン側に偏り、ヒール側に離隔するにつれてソール側に偏るように、長軸が傾斜した楕円状に分布することが知られている。このため、打点位置がばらついても、スイートスポットで打球したときの最大飛距離との差を小さく保つゴルフクラブが開発されている。
【0003】
このようなゴルフクラブには、フェース部に、曲げ剛性を他の領域よりも大きく形成した楕円状の領域を、その長軸がシャフト軸に対して10°〜60°となる範囲に形成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このクラブヘッドによると、フェース部のトウ側ではクラウン側に近接する高位置からヒール側ではソール側に近接する低位置にかけて、曲げ剛性が小さく、大きな反発力を形成する領域が打点位置のバラツキに対応して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−358225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フェース部はトウ側とヒール側とを結ぶトウ・ヒール方向がトップ側とソール側とを結ぶトップ・ソール方向よりも長い形状を有するため、曲げ剛性の大きい領域がその長軸を傾斜させた楕円状に形成されることにより、長軸の傾斜角度に係わらず、トップ・ソール方向の撓みが抑制され、反発性が低下することになる。特に、トップ・ソール方向の長さが短い領域では、反発性の低下する割合が大きい。
【0007】
本発明は、このような事情に基いてなされたもので、打点がばらついても安定した飛距離が得られやすく、トウ・ヒール方向に長い形状のフェース部を効率よく撓ませて反発性を高めることのできるゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によると、シャフトの一端に、基準水平面に対して規定のライ角を設定して固着され、ゴルフボールの打球面を形成するフェース部とこのフェース部の上方でトップエッジを介して隣接するクラウン部とを有する中空構造のクラブヘッドを備えたゴルフクラブであって、前記トップエッジをヒール側よりもトウ側で基準水平面に対して上方に傾斜させて配置し、フェース部の裏面に、トウ・ヒール方向の中央部を通り、トップ・ソール方向の中央部を基準水平面に沿って延びるリブを形成したゴルフクラブが提供される。
【0009】
前記フェース部は、トップエッジに沿ってトウ・ヒール方向に延びる溝状に形成した複数のスコアラインを打球面側に有することが好ましい。
【0010】
また、前記リブの端部から前記リブより剛性の低い補助リブがトウ側上方およびヒール側下方に延設してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフクラブによると、打球時に、フェース部の裏面に形成したリブが基準水平面に対して平行に配置されやすく、フェース部の変形はこのトウ・ヒール方向に延びるリブの作用が影響し易く、トップ・ソール方向の変形が抑制されない。また、トップエッジがヒール側よりもトウ側で上方に傾斜することにより、トウ側のトップエッジとリブとの間の広い範囲に、剛性の低く領域を形成し、ヒール側でリブよりも下側にも、剛性の低い領域を広い範囲に形成することができる。これにより、打点がばらついても飛距離の低下が少なく、安定した飛距離を得ることができる。
【0012】
スコアラインをトップエッジに沿ってトウ・ヒール方向に延びる溝状に形成する場合には、スコアラインがリブに対して交差する方向に延び、スコアラインを形成した部位に応力が集中しにくく、強度が向上し、これにより、フェース部を薄肉構造として反発性を向上させることができる。
【0013】
トウ・ヒール方向に延びるリブよりも剛性の低い補助リブを設けることにより、剛性の低い領域の反発性を抑制し、リブのトウ側及びヒール側における打点位置の上下のばらつきによる飛距離の差を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態によるゴルフクラブのクラブヘッドをフェース側から見た正面図。
【図2】図1に示すゴルフクラブのクラブヘッドの平面図。
【図3】図2のクラブヘッドのトップ側から見た平面図。
【図4】図2のIV−Iv線に沿う断面図。
【図5】他の実施形態によるクラブヘッドの図2と同様な正面図。
【図6】更に他の実施形態によるクラブヘッドの図2と同様な正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図4は本発明の実施形態によるゴルフクラブ8を示す。図中、同様な部位には同様な符号を付してある。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のゴルフクラブ8は、例えば繊維強化樹脂あるいは金属材料で管状構造に形成したシャフト6の先端に、例えばボールを置く地面等の基準水平面Bに対して規定のライ角αおよびロフト角β(図3)を設定してクラブヘッド10を取付け、基端には天然ゴムあるいは合成ゴム等の柔軟性や軟質材料で形成したグリップ4を取付けてある。ここに、ライ角αは、後述するソール部あるいは基準水平面Bに対するシャフトの軸線6aの取付角度であり、ロフト角βは、基準水平面Bに直交する垂直面Vとフェース部12の前面との間の角度である。シャフトの軸線6aにクラブヘッド10の重心Gから下ろした垂線の長さが重心距離gとなる。
【0017】
図1から図4に示すように、本実施形態のクラブヘッド10は、前部に配置したフェース部12に打球面14を形成した中空構造を有し、その全体を金属で形成してある。フェース部12には、上方のトップエッジ12a及び下方のリーディングエッジ12bを介してそれぞれクラウン部16及びソール部18が隣接し、これらのクラウン部16及びソール部18はそれぞれバック側に向けて後方に延びる。これらのクラウン部16とソール部18との間には、フェース部12のトウ側サイドライン12cおよびヒール側サイドライン12dからそれぞれトウ側サイド部20およびヒール側サイド部22がクラウン部の16の周縁部に沿って湾曲しつつバック側に延び、バック部24(図3)に連続する。
【0018】
このように、クラブヘッド10は、実質的にフェース部12とクラウン部16とソール部18とトウ側及びヒール側サイド部20,22と、後部のバック部24とで外殻を形成し、内部に区画した内部空間Nをこの外殻構造体で閉じたウッドタイプに形成してある。
【0019】
このようなクラブヘッド10は、例えば容積がドライバーの場合には380〜460cc、フェアーウェイウッド(ユーティリティウッド)の場合には80〜230cc程度であり、また、その重量は180〜260g程度である。そして、基準水平面Bから垂直方向におけるクラウン部の高さは、バック側で、ドライバーが15〜40mm、フェアーウェイウッドが6〜20mm、トウ側及びヒール側で、ドライバーが25〜60mm、フェアーウェイウッドが10〜30mmである。また、フェース部12は、高さがドライバーの場合は40〜60mm、フェアーウェイウッドの場合は26〜40mm程度に形成され、トウ側とヒール側とを結ぶトウ・ヒール方向に沿う寸法が60〜120mm程度に形成される。
【0020】
また、ライ角αは50〜65度、ロフト角βは8〜30度程度に形成される。
【0021】
本実施形態では、クラウン部16のヒール側からシャフト止着部としてホーゼル部26が突出し、ソケット28を介してホーゼル部26内にシャフト6の先端部を差し込み、接着剤等でソケット28と共にホーゼル部26の内孔部に固着することで、シャフト6をクラブヘッド10に止着することができる。なお、ホーゼル部26をクラウン部16から突出させさせることなく、ソケット28と共にシャフト6の先端部を内孔部で固着したものであってもよい。
【0022】
クラブヘッド10のトウ側サイド部20およびヒール側サイド部22は、フェース部12側でクラウン・ソール方向すなわち基準水平面Bにソール部18を接地したときの上下方向に大きな寸法を有し、次第にその上下方向寸法を減少しつつバック部24に移行する。このサイド部20,22は、上下方向に湾曲しつつクラウン部16の周部に沿ってフェース部12からバック部24まで連続して延びる滑らかな湾曲面を形成する。なお、連続して延びるとは、目視して認識できる程度の稜線部または角部が存在しない状態をいう。
【0023】
このサイド部20,22とクラウン部16との間に形成される上側の稜線部21は、トウ側サイドライン12cからバック部24を介してヒール側に延び、ヒール側サイド部22でホーゼル部26の表面に移行する(図4参照)。また、サイド部20,22とソール部18との間に形成される下側の稜線部23は、トウ側およびヒール側でリーディングエッジ12bに連続し、または、リーディングエッジ12bにごく近接した位置(例えばリーディングエッジ12bを含む湾曲面内)でフェース部12に吸収される。
【0024】
なお、フェース部12とクラウン部16との間のトップエッジ(フェース面の上端)12aは、その間の稜線部で特定することができるが、フェース部12の大部分を形成する面部の曲率半径より小さくなる部位で特定してもよい。リーディングエッジ(フェース面の下端)12bおよびサイドライン12c,12dについても同様である。また、サイド部20,22の上下に形成される稜線部21,23についても、同様に、サイド部20,22およびバック部24を形成する面部の曲率半径より小さくなる部位で特定することができる。
【0025】
このような中空構造を有するクラブヘッド10は、フェース部12の中央部を外方に僅かに膨出させ、バルジ(フェース部側から正視したときの左右方向であるトウ・ヒール方向)およびロール(フェース部側から正視したときの上下方向であるトップ・ソール方向)の双方の曲面を組合せた湾曲面状に形成してあり、この前面がゴルフボールを打つ打球面14を形成する。この打球面14には、略水平方向の浅い凹溝で形成したスコアライン30をトウ・ヒール方向に延設してあり、図2に示すように、この打球面のセンター位置Cに近接する位置に、クラブヘッド10の重心G(図7)を通り、フェース部12の打球面14に垂直に延ばした点であるスイートスポットSが位置する。
【0026】
図2に示すように、フェース部12のセンター位置Cは、トップエッジ12aとリーディングエッジ12bとの間で、トップ・ソール方向に延びる基準水平面Bに垂直な縦線分L1と、トウ側及びヒール側のサイドライン12c,12d間で、トウ・ヒール方向に延びる基準水平面Bに平行な横線分L2とを互いに2等分する位置に配置してある。本実施形態では、縦線分L1上にスイートスポットSが配置され、センター位置Cは、スイートスポットS及び重心Gよりも低い位置すなわち基準水平面Bにより近接して位置する。
【0027】
このフェース部12の上方でクラウン部26との境界を形成するトップエッジ12aは、ヒール側よりもトウ側で基準水平面Bに対して上方位置に配置してある。
【0028】
図2に示すように、トップエッジ12aは、縦線分L1のトウ側で、ヒール側よりも基準水平面Bに対して高位置に配置し、全体的に、基準水平面Bに対してトウ側がヒール側よりも上方に傾斜する状態に形成してある。具体的には、トップエッジ12aとトウ側のサイドライン12cとの交点P1と、トップエッジ12aとヒール側のサイドライン12dとの交点P2とを想像線で示す傾斜線分Qで結んだときに、この傾斜線分は基準水平面B又はセンター位置Cを通る横線分L2に対して、好ましくは2°〜5°の範囲で傾斜する。この傾斜角度が2°より小さい場合は、トップエッジ12aのトウ側が下方に向きやすく、アドレス時等の、ヘッド上方視において、トップエッジが左を向いた状態に見えやすく、5°より大きい場合は、ヘッド上方視において、トップエッジが右を向いた状態に見えやすくなる。したがって、この傾斜角度が2°〜5°の範囲にない場合は、フェースを打球方向に合わせ難くなる。
【0029】
また、図3に示すように、本実施形態のゴルフクラブ8は、スライスボールを打ちやすい初心者にも真直ぐな方向に打球し易くするため、クラブヘッド10をフックフェースとして形成してあり、フェース部12は、そのフェース方向Fが、打球方向に向かって目標とする打球方向Dよりも左方向(右打ちの場合)を向いている。すなわち、打球面14のセンター位置Cにおけるトウ・ヒール方向の接線Tは、シャフト6の軸線6aに対して、ヒール側よりもトウ側が次第に離隔する方向に向く。接線Tに垂直なフェース方向Fは、目標とする打球方向Dに対して、僅かなフェース角(図3の平面視で接線Tがシャフト6の軸線6aとの間に形成する角度)だけゴルファー側にオフセットした方向を向く。
【0030】
一方、上述のように、フェース部12のトップエッジ12aは基準水平面Bに対して、ヒール側よりもトウ側で上方に傾斜させて形成してあり、クラウン部26側から見た状態では、中央部が盛上るクラウン部26の外形形状に応じて、トップエッジ12aのトウ側がヒール側よりもバック部24側に配置される。このため、傾斜線分Qは、打球面14のセンター位置Cにおけるトウ・ヒール方向の接線Tに対して、トウ側がヒール側よりもバック側に傾斜する状態に配置される。
【0031】
特に、本実施形態では、図2に示すように、スコアライン30を傾斜線分Qと平行になるように形成してあり、トップエッジ12aに近接する部位におけるスコアライン30は、傾斜線分Qに沿って配置されるため、トップエッジ12aと共に打球方向Dに合わせる際の目印にすることができる。
【0032】
したがって、このクラブヘッド10は、フックフェースに形成した場合でも、ソール部18を基準水平面Bに接地させてアドレスしたときに、図3に示すように、トップエッジ12aがシャフト6の軸線6aとほぼ平行に配置されることになり、目標とする打球方向Dに向けてゴルフクラブを構えることが容易となる。このため、初心者であっても、真直ぐな打球が打ちやすいゴルフクラブを形成することができる。
【0033】
更に、本実施形態では、全体の容積又は形状を大きく変更することなく、真直ぐな打球を打ちやすいクラブヘッド10を形成するため、フェース部12のトウ側及びヒール側の上記交点P1及びP2の近部における特にトップ・ソール方向の湾曲を、縦線分L1とトップエッジ12a及びリーディングエッジ12bとの交点P3及びP4の近部におけるトップ・ソール方向の湾曲よりも大きな曲率半径で形成してある。
【0034】
具体的には、トップエッジ12の交点P1に近接するトウ側の曲率半径を80〜150mm程度、交点P2に近接するヒール側の曲率半径を150〜300mm程度に形成することが好ましい。また、縦線分L1とのトップエッジ12aとの交点P3に近接する中央部の曲率半径を250〜400mm_程度、縦線分L1とリーディングエッジ12bとの交点P4に近接する部位の曲率半径を60〜150mm程度に形成することが好ましい。なお、明らかなように、ソール部18側では、トウ側及びヒール側のいずれもトップエッジ12a側よりも、大きな曲率半径で湾曲する。
【0035】
このようにフェース部12のトウ側及びヒール側の湾曲を中央部における湾曲よりも大きくすることにより、縦線分L1が配置される中央部におけるトップ側及びソール側の空気抵抗を大きく、トウ側及びヒール側の交点P1,P2に近接した部位の空気抵抗が小さくなり、スイング時におけるクラブヘッド10のコントロールがし易くなる。
【0036】
更に、クラブヘッド10の内側では、フェース部12の裏面に、トウ・ヒール方向の中央部を通り、トップ・ソール方向の中央部を基準水平面Bに沿って延びるリブ32を形成してある。
【0037】
本実施形態のリブ32は、ソール部18を基準水平面Bに接地させてアドレスしたときに、基準水平面Bと平行に配置されている。ここに、平行とは、完全に平行な場合に限らず、±2°の範囲で傾斜した場合も含む。基準水平面Bに対する角度が2°よりも大きい角度で上方に傾斜する場合は、フェースのトウ側の上側、ヒール側の下側が狭くなり、反発性が抑制され過ぎることになり、2°よりも大きい角度で下方に傾斜する場合は反発性が高くなることから、打球面の肉厚を厚くしなければならなくなり、重量化するためである。リブ32が基準水平面Bに平行に配置されることにより、上述の傾斜線分Qに対しても、上述のように2°〜5°の範囲で傾斜あるいは交差することになる。
【0038】
図2及び図4に示すように、リブ32は、センター位置Cを中心としてトウ側及びヒール側に等しい距離にわたって延設した直線状に形成してある。このリブ32は、フェース部12の裏面から内部空間N内に突出した厚肉部32aを有し、この厚肉部の頂部からフェース部12の裏面まで傾斜面32bが延び、フェース部12の裏面に台形状の断面形状を形成している。この傾斜面32bは厚肉部32aの全周にわたって形成される。
【0039】
このようなリブ32は、フェース部12あるいは打球面14の肉厚の最も薄い最薄部が1.6〜2.2mmのときに、フェース強度を確保するために、フェース部12の裏面から突出する高さhを最薄部の1.1〜2.5倍程度に形成することが好ましい。また、トウ・ヒール方向に沿う長さXは、15〜35mm又は水平線分L2に対して0.15〜0.44程度の割合となるように形成し、トップ・ソール方向に沿う幅Wを4〜12mm程度又は縦線分L1に対して0.07〜0.39程度の割合に形成することが好ましい。長さXがこれよりも長いと重くとなり、短い場合はCT値を抑えられないことになるからである。また、幅Wがこれよりも広い場合は重くなり、狭い場合にはCT値を抑えられなくなるからである。
【0040】
なお、平均的な厚さとは、リブ32を含まない3点以上の測定点で測定した場合の平均的な厚さをいう。後述する補助リブを設けた場合も、同様に補助リブを除いた部位で測定する。
【0041】
このようなリブ32は、インパクト時すなわちボールを打球したときに、基準水平面Bと平行な状態となり易く、トウ・ヒール方向に長い剛性軸として作用する。したがって、トップ・ソール方向の変形を阻害せず、トウ・ヒール方向に長い形状のフェース部12を効率よく撓ませることができる。また、トップエッジ12aがヒール側よりもトウ側で上方に傾斜することにより、トウ側のトップエッジ12aとリブ32との間の広い範囲に、剛性の低く領域を形成し、ヒール側ではリブ32よりも下側にも、剛性の低い領域を広い範囲に形成することができる。これにより、打点がばらついても飛距離の低下が少なく、安定した飛距離を得ることができる。
【0042】
特に、スイートスポットSの近部では、リブ32が反発性を抑制し、その周部の反発性を増大することから、広い範囲にわたってCT値あるいは反発性の安定化をバランスよく達成することができる。なお、CT値は、フェース部の反発特性に関するルール適合判定のための基準であり、「ペンデュラムテスト」の衝突時接触時間から求めたヘッド特性時間(Characteristic Time)をいう。明らかなように、反発性の安定化は、このルールに適合した範囲内で行われる。
【0043】
更に、リブ32に対し、トップエッジ12aがヒール側よりもトウ側で上方に傾斜することにより、トウ側のトップエッジ12aとリブ32との間の広い範囲に、剛性の低く領域を形成することができる。また、ヒール側でも、リブ32が直線状に延設されていることにより、このリブ32の下側すなわちソール部18側にも、剛性の低い領域を広い範囲にわたって形成することができる。これにより、フェース部12の打球面14の全体で打点がばらついても飛距離の低下が少なく、安定した飛距離を得ることができる。
【0044】
図5は、他の実施形態によるクラブヘッド10Aを示す。なお、以下に説明する実施形態又は変形例は、基本的には上述の実施形態と同様であるため、同様な部位には同様な符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図15に示すクラブヘッド10Aは、リブ32のトウ側端部から補助リブ34,36をそれぞれ上方及び下方に傾斜させて延設し、ヒール側端部から補助リブ38,40をそれぞれ上方及び下方に傾斜させて延設し、全体としてH字状のリブを形成したものである。
【0046】
補助リブ34,36,38,40はいずれも中央のリブ32よりも曲げ剛性を小さく形成してある。また、補助リブ間では、トウ側上方の補助リブ34はトウ側下方の補助リブ36よりも大きな曲げ剛性を有し、ヒール側下方の補助リブ40はヒール側上方の補助リブ38よりも大きな曲げ剛性を有する。これにより、リブ32の上方領域及び下方領域の反発性の差を小さくすることができる。
【0047】
なお、各補助リブ34,36,38,40は、リブ32と同様に頂部から傾斜面が延びる台形状の断面形状に形成してもよく、このような傾斜面の無い矩形の断面形状に形成してもよい。また、1本の突条形状に限らず、複数本の突条で形成してもよく、中間部に間隙を形成した不連続形状に形成してもよい。
【0048】
図6は、フェース部12の打球面すなわち表面側に、それぞれトウ・ヒール方向に差し渡した状態にスコアライン30を形成したクラブヘッド10Bを示す。
【0049】
スコアライン30は、それぞれフェース部12の表面側の全体にわたって傾斜線分Qと平行に延びており、各スコアラインは、例えば深さが約0.5mm以下、幅が0.9mm以下の凹溝で形成してある。
【0050】
スコアライン30が、中央のリブ32の縁部と重なり、あるいは、この近部に延設された場合であっても、リブ32がスコアライン30に対して非平行すなわち交差する方向に配置されるため、スコアライン30の部位でフェース部12の強度が低下することはない。したがって、スコアライン30が打球面14に凹設した溝状に形成した場合であっても、打球面側のスコアライン30を形成した部位に応力が集中しにくい。これにより、フェース部12の強度が向上し、フェース部を薄肉で高反発に形成し、全体の反発性を向上させることができる。
【0051】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、上述の説明は例示であり、種々の変更又は変形が可能なことは明らかである。例えば、リブ32及び補助リブ34,36,38,40をプレス加工により、フェース部12と同じ材料で裏面に一体に形成してもよく、又は、フェース部12の裏面に、これと別体に形成した素材を溶接等で一体化することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
6…シャフト、10…クラブヘッド、12…フェース部、12a…トップエッジ、16…クラウン部、18…ソール部、20,22…サイド部、24…バック部、B…基準水平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの一端に、基準水平面に対して規定のライ角を設定して固着され、ゴルフボールの打球面を形成するフェース部とこのフェース部の上方でトップエッジを介して隣接するクラウン部とを有する中空構造のクラブヘッドを備えたゴルフクラブであって、
前記トップエッジをヒール側よりもトウ側で基準水平面に対して上方に傾斜させて配置し、フェース部の裏面に、トウ・ヒール方向の中央部を通り、トップ・ソール方向の中央部を基準水平面に沿って延びるリブを形成したことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
前記フェース部は、トップエッジに沿ってトウ・ヒール方向に延びる溝状に形成した複数のスコアラインを打球面側に有する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記リブの端部から前記リブより剛性の低い補助リブがトウ側上方およびヒール側下方に延びる請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−120636(P2012−120636A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272673(P2010−272673)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】