説明

ゴルフクラブ

【課題】フェース部に対する打球位置が上下にぶれても安定した飛距離が得られる中空構造のヘッドを備えたゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブは、フェース部7aに開口8aを形成し、開口にフェース部材8を接合した中空構造のヘッド7を有する。開口8a、及び開口8aに接合されるフェース部材8は、フェース部7aを規定する周縁部よりも内側に位置しており、開口に接合されたフェース部材8は、フェース部7aのフェースセンターCを通り、かつヘッドを所定のライ角通りに設置する基準水平面Pと平行な水平方向の長さが、フェースセンターCを通る垂直方向の長さよりも長く、かつ、垂直方向長さが、フェースセンターCを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、詳細には、中空構造のヘッドを有するゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空構造のヘッドを備えたゴルフクラブ(ウッド型ゴルフクラブ)は、打球が成されるフェース部(フェース面)を十分に撓ませ、飛距離及び打感の向上を図ることが試みられている。例えば、特許文献1には、ヘッド本体のフェース開口部(フェース部に形成された開口部)にフェース部材を接合したゴルフクラブが開示されており、前記フェース部材のトウ・ヒール方向の幅をトップ・ソール方向の長さよりも長く形成し、これをフェース開口部に閉塞するように接合することで、フェース部材の反発性能を十分に発揮して飛距離の向上を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−82752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示されているように、フェース部に、トウ・ヒール方向に長いフェース部材を接合することによって反発性の向上は期待できるが、通常、ヘッドのフェース部は、正面視した際、トップ側が広くソール側が狭い形状(台形状)に形成されている。すなわち、このようなフェース部の形状では、上記した形状のフェース部材を接合しても、トップ側の領域が撓み易くソール側の領域が撓み難くなっていることから、打点がばらつくとフェース部材を十分に撓ませることができず、特に、ソール側で打球した際に飛距離の向上が図れなくなってしまう。
【0005】
また、上記した特許文献1には、フェース部材の図心をフェース面上のヘッド重心位置(スイートスポット)に一致させてフェース部材を十分に撓ませようとする構成も開示されているが、通常、中空構造のヘッドでは、スイートスポットは、フェース面の上方に位置し易く、スイートスポットとフェース部材の図心を一致させようとすると、フェース部材の接合部が上側に位置し、打点に近づいてしまい、下側での打球時の飛距離の低下が大きくなり過ぎて、打点がばらつき易い使用者にとっては安定した飛距離が望めなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、フェース部に対する打球位置が上下にぶれても安定した飛距離が得られる中空構造のヘッドを備えたゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、ヘッド本体のフェース部に開口を形成し、前記開口にフェース部材を接合した中空構造のヘッドを有するゴルフクラブであって、前記開口、及び開口に接合されるフェース部材は、前記フェース部を規定する周縁部よりも内側に位置しており、前記開口に接合されたフェース部材は、前記フェース部のフェースセンターを通り、かつヘッドを所定のライ角通りに設置する基準水平面と平行な水平方向の長さが、フェースセンターを通る垂直方向の長さよりも長く、かつ、垂直方向長さが、フェースセンターを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるように形成されたことを特徴とする。
【0008】
上述した構成では、フェース部に、フェース部を規定する周縁部よりも内側に開口を形成し、この開口にフェース部材を接合している。この場合、開口に接合されたフェース部材は、フェース部のフェースセンターを通り、かつヘッドを所定のライ角通りに設置する基準水平面と平行な水平方向の長さが、フェースセンターを通る垂直方向の長さよりも長く、かつ、垂直方向長さが、フェースセンターを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるように形成されるため、開口に接合されて撓みが生じ易いフェース部材は、フェースセンターから接合部分となる縁部までの距離が急変することはない。すなわち、トップ側が広くソール側が狭い形状(台形状)に形成されたフェース部であっても、その開口に接合されるフェース部材は、フェース部の中央が撓み易いとともに、その上下方向も撓み易くなり、これにより上下方向に打点がばらついても安定した飛距離が得られ易くなる。
【0009】
この場合、前記開口、及び開口に接合されるフェース部材は、前記フェースセンターから水平方向及び垂直方向に、それぞれ長軸及び短軸を有する楕円形状に形成しておいても良い。このような楕円形状は、垂直方向長さが、フェースセンターを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに次第に短くなることから、フェースセンターから縁部までの距離が急変することなく、撓み性の向上が図れる。
【0010】
また、前記ヘッドの重心からフェース部に下した垂線とフェース部との交点、いわゆるスイートスポットが、フェースセンターよりも上方となるように設定しておくことが好ましい。
【0011】
さらに、ヘッドのフェース部の裏面には、前記開口とフェース部材の接合部に沿ってリブを形成しておいても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フェース部に対する打球位置が上下にぶれても安定した飛距離が得られる中空構造のヘッドを備えたゴルフクラブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るゴルフクラブの第1の実施形態を示した正面図。
【図2】ヘッド部分の正面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図(縦断面図)。
【図4】図3の部分拡大図。
【図5】フェース部分の裏面図(ヘッド内部からフェース部を見た図)。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図であり、ヘッド部分の正面図。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す図であり、ヘッド部分の正面図。
【図8】本発明の第4の実施形態を示す図であり、ヘッド部分の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るゴルフクラブの実施形態について説明する。
図1から図5は、本発明に係るゴルフクラブの第1の実施形態を示す図であり、図1は正面図、図2はヘッド部分の正面図、図3は図2のA−A線に沿った断面図、図4は図3の部分拡大図、そして、図5はフェース部分の裏面図である。
【0015】
本実施形態に係るゴルフクラブ1は、金属やFRPで構成されたシャフト5の先端に、基準水平面Pに対して規定のライ角α、及びロフト角βに設定された中空構造のヘッド7を止着して構成されている。この場合、ヘッド7を構成するヘッド本体7Aは、打球が成されるフェース部7aと、フェース部7aの上縁から後方に延出するクラウン部7bと、フェース部7aの下縁から後方に延出するソール部7cと、前記クラウン部7b及びソール部7cの縁部を繋ぐサイド部7dと、このサイド部7dの後方側に位置するバック部7eとを備えている。なお、前記サイド部7dは、バック部7eを経由するトウ部7f及びヒール部7gを備えている。
【0016】
前記ヘッド本体7Aは、例えば、チタン合金(Ti-6Al-4V,Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al)、アルミ系合金、或いは、マグネシウム合金等を鋳造することで一体形成することができ、そのフェース部7aを規定する周縁部よりも内側に所定形状の開口8aを形成しておき、開口8aにフェース部材8を嵌合してその周囲を接合している。
【0017】
この場合、ヘッド本体7Aについては、それを構成する各部材(フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部;外殻体)を個別に形成しておき、夫々を溶着、接着等によって固定したものであっても良いし、複数の部材、或いは各部材の部分的な構成要素を鋳造等で一体形成しておき、それらを溶着、接着等によって固定したものであっても良い。
また、前記フェース部材8は、例えば、チタン、チタン合金(Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al,Ti-6Al-4V,SP700,Ti-15V-6Cr-4Al,Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-30Nb-10Ta-5Zr等)を、プレス加工、CNC加工或いは鍛造等することで板状に一体形成されており、例えば、レーザ溶接等の溶接、ろう付け、接着等によって、開口8aに対して接合されている。
【0018】
前記ヘッド本体7Aには、前記シャフト5の先端を止着するホーゼル部9が一体形成されている。前記シャフト5は、ホーゼル部9に形成されるソケット9aのシャフト挿入孔(図示せず)を介して先端部を嵌合し前記ホーゼル部に止着されている。
【0019】
前記フェース部7aは、実際に打球が成される部分であり、図2に示すように、正面から見た状態で上下を規定するトップ側エッジ7P、ソール側エッジ7Q、トウ側エッジ7R、及びヒール側エッジ7Sによって囲まれた領域として定義される(これらのエッジは、打球面の周囲において、バック側に屈曲される稜線となっている)。なお、図2では、各エッジは、屈曲して示されているが、これらのエッジ(稜線)が、図4に示すように湾曲状に形成されている場合は、その湾曲頂部Tによって規定される。前記フェース部7aには、別途、スコアライン7Lを形成しておいても良いし、前記フェース部7aが明確になるように、色彩などによって色分けしても良い。
【0020】
前記フェース部7aには、例えば、クラウン・ソール方向(以下、上下方向と称することもある)に沿って湾曲するロールが形成されると共に、トウ・ヒール方向(以下、左右方向と称することもある)に沿って湾曲するバルジが形成されており、両方の湾曲部の頂部領域には、フェース部7aの中央(フェースセンター)Cが存在している。
【0021】
ここで、フェース部7aのフェースセンターCの位置の特定方法について説明する。
まず、ヘッドを基準水平面Pに対して規定のライ角でセットして(図2参照)、上記したように定義されるトウ側エッジ7R、及びヒール側エッジ7Sによってフェース部を把握した際の、トウ・ヒール方向において最大となる幅(最大幅W)を特定する。そして、特定された最大幅Wの中間点において、基準水平面Pに対して垂線L1を引き、前記トップ側エッジ7P、及びソール側エッジ7Qと交差する点を、それぞれ7P´,7Q´とする。この両点を結ぶ線分7P´,7Q´の中点がフェースセンターCとなる。
【0022】
また、本実施形態では、ゴルフクラブ1を基準水平面Pに対して規定のライ角で構えた状態において、フェース部7aを正面視すると、トップ側(クラウン側)のトウ・ヒール方向の長さがソール側のトウ・ヒール方向の長さより長くなるフェース部形状を備えており、両サイドがソール側に向かって幅が狭くなる形状(クラウン側両サイドから、ソール側中央に向かって幅が狭くなる略三角形状)に形成されている。
【0023】
上記したように構成されるフェース部7aには、その周縁部、すなわちフェース部を規定するトップ側エッジ7P、ソール側エッジ7Q、トウ側エッジ7R、及びヒール側エッジ7Sよりも内側に前記開口8aが形成されており、この開口8aの形状に合致したフェース部材8が接合されている。
このように接合されるフェース部材8は、特に、その周囲の接合部から内側が撓み易い領域となる。すなわち、フェース部7aは、打球した際、フェース部材8より径方向外方(周辺領域)も撓むことができるが、この周辺領域は、フェース部材8aが接合されたことによって、フェース部材8が接合されていないときの撓み量(フェース部そのものが板状の打球面となっているときの撓み量)よりも小さくなる。このため、上記したフェース部7aの形状(略三角形状)によれば、トップ側が撓み易くソール側が撓み難くなっている(上下方向において、撓み量の差が大きい)ものの、周縁部よりも内側に開口8aを形成してフェース部材8を接合することによって、そのフェース部材8については、上下方向において撓み量の差を小さくすることができる。
【0024】
そして、前記フェース部7aに形成される開口8a(そこに接合されるフェース部材8)は、上記したように定義されるフェースセンターCを通り、かつヘッドを規定のライ角通りに設置する基準水平面Pと平行となる水平方向の長さ(水平線P1部分における長さ)W1が、フェースセンターCを通る垂直方向の長さHよりも長く(W1>H)、かつ、垂直方向長さについては、フェースセンターCを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるように形成されている。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、開口8a、及び開口8aに接合されるフェース部材8は、フェースセンターCから水平方向及び垂直方向に、それぞれ長軸及び短軸を有する楕円形状(略楕円形状を含む)に形成されており、フェースセンターCを通るトップ・ソール方向の開口が最も広くなるように形成されている。
【0026】
上記したような楕円形状は、垂直方向長さを考慮すると、フェースセンターCを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるような形状(トウ側及びヒール側に移行するに従って垂直方向長さが滑らかに減少する形状)となっている。ここで「急変することがない」とは、フェースセンターCを通る垂線L1との交点8P,8Qと、フェースセンターCを通る水平線P1との交点8R,8Sとを結んだ際(結んだ線を点線LDで示す)、その開口8aが点線LDよりも内側に入り込まないことを意味する。すなわち、開口8aの輪郭が点線LDよりも内側となるように形成されてしまうと、垂線L1を中心としてトウ側、ヒール側に移行する際、フェースセンターCから周縁部までの距離が急激に変わってしまい、フェース部材として、十分な撓み量を確保することができず、飛距離の向上が図れなくなってしまうことによる。
【0027】
本発明では、上記したように形成される開口8a、及びそこに接合されるフェース部材8の輪郭が、点線LDよりも外側にあり、かつフェースセンターCを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って垂直方向長さが短くなるように形成されていれば良い。この場合、開口8a(フェース部材8)を、略三角形状(略台形状も含む)のフェース部形状に対応させて、各エッジから均等な距離となるように略三角形状に形成すると、そこに接合されるフェース部材は、トップ側が撓み易くソール側が撓み難くなって(上下方向において、撓み量の差が大きい)、飛距離がばらつき易くなってしまう。このため、本実施形態の楕円形状のように、フェースセンターCを通るトップ・ソール方向の開口を最も広くしつつ(点8P,8Qをトップ・ソール方向で最大開口とする)、最大開口位置から、トウ側、及びソール側に移行するに従って、垂直方向長さが短くなるように形成しておくのが好ましい。
【0028】
特に、トップ側では、その開口がトウ・ヒール方向にワイドにならないように、トップ側エッジ7Pとトウ側エッジ7Rの交点M、及び、トップ側エッジ7Pとヒール側エッジ7Sの交点(本実施形態のようにトップ側エッジ7Pの端部が膨らむ形状であれば、そのトップ側エッジ7Pの延長線とヒール側エッジ7Sの交点)Nから、所定の範囲内には、開口8aが形成されていないことが好ましい。具体的には、前記交点M(交点N)とフェースセンターCとの間の距離を100%とした場合、各交点M,Nから25%以内好ましくは30%以内の範囲では、開口8aが存在しないように形成することで、上下方向において、効果的に撓み量の差を小さくすることが可能となる。なお、本実施形態のように、大きく屈曲することなく、滑らかに減少する楕円形状となっていれば、フェース部材の撓みの急変部がなく、撓み量を大きく規制することのない形状となる。
【0029】
上記した構成のヘッド本体7Aを有するゴルフクラブによれば、フェース部7aに形成された開口8aに接合されるフェース部材8が撓み易くなり、かつ、上記のように撓みが生じ易いフェース部材8は、フェースセンターCからフェース部材の周縁部までの距離が急変することがないため、図2に示すように、トップ側が広くソール側が狭い形状に形成されたフェース部7aであっても、開口8aに接合されるフェース部材8のフェース部の中央が撓み易くなり、また、その上下方向でも撓み易いことから、上下方向に打点がばらついても、安定した飛距離が得られ易くなる。
【0030】
また、本実施形態のように、開口8a及びフェース部材8を、フェースセンターCを通る水平線P1を長軸とした楕円形状にすることで、フェース部材8のフェースセンターCを撓ませ易くすることができ、飛距離の向上を図ることが可能となる。
【0031】
また、上記したように形成される開口8a(フェース部材8)については、フェース部7aを規定する周縁部(各エッジ7P,7Q,7R,7S)よりも内側に位置していれば良いが、効果的な撓み状態が得られるように、各エッジ7P,7Q,7R,7Sから2mm以上離れるように形成することが望ましい。また、フェース部材8におけるフェースセンターCを通る垂線L1との交点8P,8Q、フェースセンターCを通る水平線P1との交点8R,8Sでは、各エッジ7P〜7Sに対して、略同じ距離だけ(±4%以内の範囲)離間するように形成しておくことが好ましい。このように形成することで、フェース部7aの外周延に対して略同じ幅だけ離間してフェース部材が接合されるため、撓みバランスを向上することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、図3から図5に示すように、開口8aとフェース部材8の接合部に沿ってリブ20を形成している。本実施形態のリブ20は、上記したように形成される開口8aに沿って分断されることなく連続形成されており、このようなリブ20を形成することで、その部分における剛性を高めることができるため、フェース部材8のみを撓ませ易くすることが可能となる。すなわち、フェース部7aの形状に影響を受けることなく、フェース部材8のみが効果的に撓むため、打点がばらついても安定した飛距離が得られるようになる。
【0033】
上記したリブ20については、図4に示すように、開口8aとフェース部材8を接合するのに用いられる溶接ビードで構成することが可能である。このような溶接ビードでリブ20を形成することで、両者の接合強度の向上が図れると同時に、別途、リブを形成する構造(例えば、フェース部の裏面の開口8aに沿ってリブを形成したり、フェース部材8の裏面の周縁部に沿ってリブを形成する構造)と比較すると、重量余力が生じて設計の自由度を向上することが可能となる。
【0034】
なお、前記リブの大きさについては、その高さh及び幅wが小さいと、剛性が急変し難くなってフェース部材8のみの撓み量が小さくなり、かつ、接合強度も低下してしまう。また、あまり大きくし過ぎると、フェース部側が重くなってしまい、重量バランスが低下する傾向となってしまうことから、その高さhについては、0.3〜1.0mm、幅wについては2.0〜7.0mmあれば良い。なお、そのような大きさのリブについては、必ずしも全溶接長さの全てに亘って形成する必要がなく、少なくとも全溶接長さの70%以上、上記した大きさのリブが形成されていれば良い。
【0035】
また、上記した構成において、フェース部材8の撓み量が大きくなってしまう場合(例えば、フェース部材を薄肉厚化して撓み量が大きくなってしまう場合など)、必要に応じてフェース部材8に、厚肉部30を形成しておいても良い(図3参照)。すなわち、フェース部材8については、その形状に応じて、適宜、厚肉部を形成するなど、その肉厚については種々、変形することが可能である。
【0036】
また、上記したヘッド本体7Aでは、ヘッドの重心からフェース部7aに下した垂線とフェース部との交点(スイートスポットS)が、フェースセンターCよりも上方となるように設定しておくことが好ましい。
【0037】
このように設定することで、フェースセンターCより下側の反発を、スイートスポットSでの反発と比較した際、その差を小さくすることができ、安定した飛距離が得られ易くなる。なお、スイートスポットSの位置については、ヘッド本体7Aを構成する外殻体の肉厚を変えたり、バランス部材を取着する等によって変更することが可能である。
【0038】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
上述した実施形態では、フェース部7aに形成される開口8a(フェース部材8)を楕円形状としたが、水平方向の長さが、フェースセンターCを通る垂直方向の長さよりも長く、かつ、垂直方向長さが、フェースセンターCを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるように形成されるのであれば、適宜、変形することが可能である。
【0039】
例えば、図6に示す第2実施形態では、トップ側における開口形状(トップ側の開口縁部8f)を略水平方向となるように直線状とし、その両端部をソール側に移行するように湾曲させている。この場合、トップ側の開口縁部8fの直線状部の長さW2は、フェースセンターCを含むトップ・ソール方向の上下高さHの60%〜120%程度にすることで、フェース部材としての撓みバランスを向上することが可能となる。また、本実施形態においても、前記実施形態と同様、各交点M,Nから25%以内好ましくは30%以内の範囲では、開口8aが存在しないように形成しており、上下方向で、撓み量の差が大きくならないように形成されている。
【0040】
また、図7に示す第3実施形態では、上記したトップ側の開口縁部8fを直線状にしつつトップエッジ7Pに沿うようにし、かつ、ソール側の開口縁部8gを、ソールエッジ7Qに沿うように形成したものである。なお、トップ側の開口縁部8fの直線状部の長さW2については、上記した実施形態と同様、フェースセンターCを含むトップ・ソール方向の上下高さHの60%〜120%程度に設定されている。
【0041】
このように構成することで、トップ側及びソール側の撓みを規制し難くして、フェース部材を高反発化することが可能となる。また、本実施形態においても、各交点M,Nから25%以内好ましくは30%以内の範囲では、開口8aが存在しないように形成しており、上下方向で、撓み量の差が大きくならないように形成されている。
【0042】
上記したフェース部7aに形成される開口8a(フェース部材8)については、フェース部の形状に応じて変形することも可能である。
例えば、図8に示す第3実施形態では、トップ側エッジ7Pが、トウ方向に向けて次第に上昇するようにフェース部7aを形成している。具体的に、トップ側エッジ7Pとトウ側エッジ7Rの交点Mと、トップ側エッジ7Pとヒール側エッジ7Sの交点Nとを結んだ直線P2は、基準水平面Pに対して2°〜5°上昇するように形成されている。
【0043】
このようなフェース部7aの形状において、第1実施形態のような楕円形状の開口8aを形成するのであれば、トウ・ヒール方向で最大開口となる長軸方向P1´については、前記直線P2と略平行となるように形成しても良い。
このような構成によれば、上記した実施形態と同様な作用効果が得られるとともに、シャフト5が軟らかい(しならせて飛距離の向上を図る)場合や、ヘッドスピードが速いプレーヤの場合、ヘッドがトウダウンし易いものの、そのようなトウダウンが生じても、フェース部材の撓みバランスを向上することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
開口8aに接合されるフェース部材8については、トウ・ヒール方向に長く、その高さがトウ側、及びヒール側に移行するに連れて急変することなく短くなるように形成されたものであれば良く、例えば、円形状に近いような楕円形状であっても良い。また、フェース部材の裏面に厚肉部を形成する場合、その厚肉部の形状については、略H状にする等、特に限定されることはない。また、フェース部材8には、必要に応じて付加的な構造物、例えば、リブ、溝部、凹所、突起等を一体形成したり、これらを接着や溶着等によって付加しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 ゴルフクラブ
5 シャフト
7 ヘッド
7A ヘッド本体
7a フェース部
8a 開口
8 フェース部材
C フェースセンター
P 基準水平面
S スイートスポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体のフェース部に開口を形成し、前記開口にフェース部材を接合した中空構造のヘッドを有するゴルフクラブであって、
前記開口、及び開口に接合されるフェース部材は、前記フェース部を規定する周縁部よりも内側に位置しており、
前記開口に接合されたフェース部材は、前記フェース部のフェースセンターを通り、かつヘッドを所定のライ角通りに設置する基準水平面と平行な水平方向の長さが、フェースセンターを通る垂直方向の長さよりも長く、かつ、垂直方向長さが、フェースセンターを中心として、トウ側及びヒール側に移行するに従って急変することなく、短くなるように形成されたことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
前記開口、及び開口に接合されるフェース部材は、前記フェースセンターから水平方向及び垂直方向に、それぞれ長軸及び短軸を有する楕円形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記ヘッドの重心からフェース部に下した垂線とフェース部との交点が、前記フェースセンターよりも上方となるように設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記開口とフェース部材の接合部に沿ってリブを形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147825(P2012−147825A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6683(P2011−6683)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】