説明

ゴルフボール

【解決手段】本発明は、(A)ビニル含量0〜2%及びシス1,4−結合含量80%以上有し、かつ活性末端を有するポリブタジエンであって、その活性末端が少なくとも1種のアルコキシシラン化合物で変性され、ムーニー粘度が40以上である変性ポリブタジエンをゴム成分全量の1〜30質量%、(B)上記(A)ゴム成分以外のムーニー粘度が50未満のジエン系ゴムをゴム成分全量の70質量%以上、かつ(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(D)無機充填剤、及び(E)有機過酸化物を必須成分として配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素とするゴルフボールを提供する。
【効果】本発明によれば、製造作業性に優れ、かつ反発性及び耐久性を向上させたゴム組成物をゴルフボールの構成要素として使用することにより、その反発性、飛距離、耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の加熱成形物を構成要素とするゴルフボールであり、更に詳述すると、製造作業性に優れ、耐久性、反発性が良好なゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、希土類元素系触媒で重合されたポリブタジエンを使用したゴム組成物を用いたゴルフボールが多数開示されている。例えば、米国特許第6695716号明細書、同第6712715号明細書、同第6786836号明細書、同第6921345号明細書、同第6634961号明細書及び同第6602941号明細書(特許文献1〜6)に記載されたものが挙げられる。しかしながら、このようなゴルフボールは、反発性能に関して更に改善の余地が残されている。また、製造作業性の面でも充分な性能が得られていない。
【0003】
また、米国特許第6642314号明細書(特許文献7)には、ゴルフボール用ゴム組成物としてアルコキシシリル基を持つ化合物で変性されたポリブタジエンを使用することが記載されている。また、特開2007−222196号公報(特許文献8)には、上記特許文献7の変性ポリブタジエンに対し更に縮合反応させて得られたポリブタジエンが開示されている。しかし、上記の先行技術については、どちらも生産作業性及び得られるゴルフボールの耐久性と反発性については未だ改善の余地がある。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6695716号明細書
【特許文献2】米国特許第6712715号明細書
【特許文献3】米国特許第6786836号明細書
【特許文献4】米国特許第6921345号明細書
【特許文献5】米国特許第6634961号明細書
【特許文献6】米国特許第6602941号明細書
【特許文献7】米国特許第6642314号明細書
【特許文献8】特開2007−222196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴルフボールの製造作業性に優れ、反発性及び耐久性に優れるゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)ビニル含量0〜2%及びシス1,4−結合含量80%以上有し、かつ活性末端を有するポリブタジエンであって、その活性末端が少なくとも1種のアルコキシシラン化合物で変性され、ムーニー粘度が40以上である変性ポリブタジエン、(B)上記(A)ゴム成分以外のムーニー粘度が50未満のジエン系ゴム、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(D)無機充填剤、及び(E)有機過酸化物の(A)〜(E)成分を必須成分として配合したゴム組成物の加熱成形物をゴルフボールの構成要素として使用することにより、製造作業性に優れると共に、高い反発性、飛距離を増大させ、更には、耐久性を向上させたゴルフボールを得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
[1]下記(A)〜(E)成分、
(A)ビニル含量0〜2%及びシス1,4−結合含量80%以上有し、かつ活性末端を有するポリブタジエンであって、その活性末端が少なくとも1種のアルコキシシラン化合物で変性され、ムーニー粘度が40以上である変性ポリブタジエンをゴム成分全量の1〜30質量%、
(B)上記(A)ゴム成分以外のムーニー粘度が50未満のジエン系ゴムをゴム成分全量の70質量%以上、かつ
上記(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、
(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩10〜50質量部、
(D)無機充填剤5〜80質量部、及び
(E)有機過酸化物0.1〜10質量部
を必須成分として配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素とすることを特徴とするゴルフボール。
[2]上記アルコキシシラン化合物が、エポキシ基を分子内に有するものである[1]記載のゴルフボール。
[3]上記変性反応を行う工程中及び/又は終了後に、縮合促進剤として有機スズ化合物及び/又は有機チタン化合物を加えるものである[1]又は[2]記載のゴルフボール。
[4](A)成分のポリブタジエンゴムが、希土類元素を含む触媒系によって重合された[1]、[2]又は[3]記載のゴルフボール。
[5]上記縮合促進剤が、スズのカルボン酸塩及び/又はチタンアルコキシドである[3]記載のゴルフボール。
[6]上記ゴム組成物に更に有機硫黄化合物が含まれる[1]〜[5]のいずれか1項記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造作業性に優れ、かつ反発性及び耐久性を向上させたゴム組成物をゴルフボールの構成要素として使用することにより、そのゴルフボールの反発性、飛距離、更には耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明においては、ゴム成分として(A)ビニル含量が0〜2%で、かつシス1,4−結合含量が80%以上の、活性末端を有するポリブタジエンであり、その活性末端が1種以上のアルコキシシラン化合物で変性され、ムーニー粘度が40以上である変性ポリブタジエンをゴム成分の全量の1〜30質量%、(B)上記(A)ゴム成分以外のムーニー粘度が50未満のジエン系ゴムをゴム成分の全量70質量%以上とを含有する。上記アルコキシシラン化合物は分子内にエポキシ基を有することができる。また、変性反応を行う工程中及び/又は終了後に、縮合促進剤として有機スズ化合物及び/又は有機チタン化合物を加えることができる。
【0010】
上記縮合促進剤は、通常ポリブタジエンの活性末端にアルコキシシラン化合物を添加し、変性反応させた後、縮合反応前に加えるものであるが、アルコキシシラン化合物の添加前(変性反応前)に加えたのち、アルコキシシラン化合物を添加して変性反応後、縮合反応を行ってもよい。
【0011】
変性反応を行う前のポリブタジエンを重合する際の触媒としては、特に限定されるものではないが、重合触媒としては下記(X)、(Y)、(Z)の各成分から選ばれる少なくとも1種の化合物を組み合わせてなるものが好ましい。
【0012】
(X)成分としては、周期律表の原子番号57〜71のランタン系列希土類元素化合物またはこれらの化合物とルイス塩基との反応から得られる化合物である。ランタン系列希土類元素化合物は、ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド、リン酸塩または亜リン酸塩等を挙げることができる。ルイス塩基は、上記希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えばアセチルアセトン、ケトンアルコールなどを挙げることができる。
【0013】
(Y)成分としては、アルモキサンおよび/またはAlR123(式中、R1,R2,R3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜10の炭化水素残基を表す)に対応する有機アルミニウム化合物であり、複数種を同時に使用することができる。
【0014】
上記アルモキサンは、下記式(I)または式(II) で示される構造を有する化合物を好適に使用できる。この場合、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体でもよい。
【0015】
【化1】

(式中、R4は、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、nは2以上の整数である。)
【0016】
(Z)成分としては、ハロゲン含有化合物であり、一般式AlXn3-n(ここで、Xはハロゲンを示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3を示す)で示されるアルミニウムハライド、Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3などのストロンチウムハライド、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、三塩化スズ、三塩化リン、四塩化チタン、トリメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、などが好ましく用いられる。
【0017】
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、シス1,4−結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
【0018】
希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよく、重合温度は好ましくは−30℃以上、より好ましくは0℃以上、上限として好ましくは+200℃以下、より好ましくは+150℃以下とすることができる。重合溶媒としては、不活性な有機溶媒であり、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの炭素数6〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテンなどのモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0019】
また、重合反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。なお、重合溶媒を用いる場合、この溶媒中のモノマー濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは7〜35質量%である。また、重合体を製造するために、および活性末端を有する重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガスなどの失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。
【0020】
本発明においては、ビニル含量0〜2%で、かつシス1,4−結合含量80%以上のポリブタジエンに対して、その活性末端に少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を変性反応させる。アルコキシシラン化合物としては分子内にエポキシ基を有するものが好ましく用いられる。なお、上記アルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよく、該アルコキシシラン化合物と部分縮合物の混合物であってもよい。ここで、部分縮合物とは、アルコキシシラン化合物のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。上記の変性反応においては、使用する重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0021】
上記アルコキシシラン化合物は、特に限定されないが、分子内に1種以上のエポキシ基を有するものが好ましく、具体的には、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランなどを挙げることができ。これらの中では、特に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0022】
上記アルコキシシラン化合物は、上記(X)成分に対して、モル比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、最も好ましくは1以上であり、上限としては、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは100以下、特に好ましくは50以下使用するものである。上記アルコキシシラン化合物の使用量が少なすぎると、変性反応の進行が十分でなく、充填剤が十分に分散されず、ゴルフボールとしての反発性が劣る場合がある。一方、使用量が多過ぎると、得られる変性ポリブタジエンのムーニー粘度が高くなりすぎる場合があり、本発明の効果が得られない場合がある。なお、上記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一度に添加する方法、分けて添加する方法、又は、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一度に添加する方法が好ましい。
【0023】
上記変性反応は、溶液中(重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液でもよい)で行うことが好ましい。変性反応については、バッチ式反応器、多段連続式反応器及びインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよく、特に制限されない。また、上記変性反応は、重合反応終了後、溶媒除去処理、水処理、熱処理等、重合体単離に必要な諸操作を行う前に実施する必要がある。
【0024】
変性反応は、ブタジエンの重合温度を用いることができ、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、上限として好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。温度が低いと重合体の粘度が上昇する場合があり、温度が高くなると重合体の活性末端が失活し易くなる場合がある。また、変性反応時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは15分以上、上限として好ましくは5時間以下、より好ましくは1時間以下である。
【0025】
本発明においては、公知の老化防止剤や反応停止剤を、所望により、重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後の工程において添加することができる。
【0026】
本発明では、上記変性反応に加えて更にアルコキシシラン化合物を添加することができる。このアルコキシシラン化合物としては、組成物をゴルフボールとした際の反発性の点から、官能基を有するアルコキシシラン化合物(以下、「官能基導入剤」という。)が好ましい。添加は、上記した重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後の工程であり、縮合反応開始前に添加することが好ましい。縮合反応開始後に添加した場合、官能基導入剤が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。官能基導入剤の添加時期としては、好ましくは変性反応開始後の5分以上、より好ましくは15分以上であり、上限として好ましくは変性反応開始後の5時間以下、より好ましくは1時間以下が好ましい。
【0027】
上記官能基導入剤は、活性末端との直接反応は実質的に起こらず、反応系に未反応として残存するため、縮合反応の工程において、活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物残基との縮合反応に消費される。上記官能基導入剤としては、アミノ基、イミノ基、およびメルカプト基から選ばれた少なくとも1種の官能基を含有するアルコキシシラン化合物が好ましい。なお、官能基導入剤として用いられるアルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよく、該アルコキシシラン化合物と部分縮合物の混合物であってもよい。
【0028】
本発明における変性方法においては、官能基導入剤として、官能基含有アルコキシシラン化合物を用いる場合、活性末端を有する重合体と、反応系に加えられた実質上化学量論的量のアルコキシシラン化合物とが反応して、実質的に該末端の全てにアルコキシシリル基が導入され(変性反応)、更にアルコキシシラン化合物を添加することにより、該活性末端の当量より多くのアルコキシシラン化合物残基が導入される。
【0029】
アルコキシシリル基同士の縮合反応は、(残存または新たに加えられた)遊離アルコキシシランと重合体末端のアルコキシシリル基の間で起こること、また場合によっては重合体末端のアルコキシシリル基同士で起こることが好ましく、遊離アルコキシシラン同士の反応は不必要である。したがって、アルコキシシラン化合物を新たに加える場合は、そのアルコキシシリル基の加水分解性が、重合体末端のアルコキシシリル基の加水分解性を超えないようにすることが効率の点から好ましい。例えば、重合体の活性末端との反応に用いられるアルコキシシラン化合物には加水分解性の大きなトリメトキシシリル基含有化合物を用い、新たに添加するアルコキシシラン化合物にはこれより加水分解性の劣るアルコキシシリル基(例えば、トリエトキシシリル基)を含有する化合物を用いる組み合わせが、好適である。
【0030】
官能基導入剤として用いられる上記官能基含有アルコキシシラン化合物は、上記(X)成分に対してモル比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、最も好ましくは1以上、上限として好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは100以下、特に好ましくは50以下で使用するものである。使用量が少なすぎると、変性反応の進行が十分でなく、充填剤の分散性が充分に改良されず、組成物をゴルフボールとした際の反発性が劣る場合がある。一方、使用量が多過ぎると得られる変性ポリブタジエンのムーニー粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0031】
本発明においては、上記した変性剤として用いる上記アルコキシシラン化合物(及び官能基導入剤として用いられることのある官能基含有アルコキシシラン化合物)の縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。ここで用いる縮合促進剤は、上記変性反応前に添加することもできるが、変性反応後、及び縮合反応開始前に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端にアルコキシシリル基が導入されない場合がある。また、縮合反応開始後に添加した場合、縮合促進剤が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。縮合促進剤の添加時期としては、好ましくは変性反応開始5分後、より好ましくは15分後、上限として好ましくは5時間前、より好ましくは変性反応開始1時間前である。
【0032】
上記縮合促進剤としては、有機スズ化合物及び/又は有機チタン化合物が好ましい。具体的には、スズのカルボン酸塩及び/又はチタンアルコキシドであることが特に好ましい。
【0033】
縮合促進剤としてのチタンアルコキシドは具体的には、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラn−プロポキシチタニウム、テトラi−プロポキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラsec−ブトキシチタニウム、テトラtert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
【0034】
また、縮合促進剤としてのスズのカルボン酸塩として具体的にはビス(n−オクタノエート)スズ、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ラウレート)スズ、ビス(ナフトエネート)スズ、ビス(ステアレート)スズ、ビス(オレエート)スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジn−オクタノエート、ジブチルスズジ2−エチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジブチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジn−オクチルスズジアセテート、ジn−オクチルスズジn−オクタノエート、ジn−オクチルスズジ2−エチルヘキサノエート、ジn−オクチルスズジラウレート、ジn−オクチルスズマレート、ジn−オクチルスズビス(ベンジルマレート)、ジn−オクチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)等が挙げられる。
【0035】
この縮合促進剤の使用量としては、上記化合物のモル数が、反応系内に存在するアルコキシシリル基総量に対するモル比として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、上限として、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。0.1未満では、縮合反応が十分に進行しない場合がある。一方、20を超えて使用しても、縮合促進剤としての効果はそれ以上得られない場合がある。
【0036】
上記縮合反応は水溶液中で行い、縮合反応は、好ましくは85℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、上限として、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは150℃以下で行うことが推奨される。なお、水溶液のpHは、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、上限として、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。縮合反応時の温度が85℃未満の場合は、縮合反応の進行が遅く、縮合反応を完結することができず、得られる変性ポリブタジエンに経時変化が発生する場合がある。一方、180℃を超えると、ポリマーの老化反応が進行し物性を低下させる場合がある。
【0037】
また、縮合反応時の水溶液のpHが9未満の場合、縮合反応の進行が遅く、縮合反応を完結することができず、得られる変性ポリブタジエンに経時変化が発生する場合がある。一方、縮合反応時の水溶液のpHが14を超える場合、単離後の変性ポリブタジエン中に多量のアルカリ由来成分が残留し、その除去が困難となる場合がある。
【0038】
なお、縮合反応は、好ましくは5分以上、より好ましくは15分以上、上限として、好ましくは10時間以内、より好ましくは5時間程度以内である。5分未満では、縮合反応が完結しない場合があり、一方、10時間を超えても効果がない場合がある。
【0039】
また、縮合反応時の反応系の圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、上限として好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
【0040】
縮合反応は、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよく特に制限はない。また、この縮合反応と溶媒除去を同時に行っても良い。
【0041】
上記のように縮合反応した後、従来公知の後処理を行い、目的の変性ポリブタジエンを得ることができる。
【0042】
本発明における変性ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、40以上であることが必要である。下限として、好ましくは43以上、より好ましくは45以上、更に好ましくは50以上である。一方、上限としては、特に制限はないが、好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。ムーニー粘度が低くなると組成物をゴルフボールとした際の反発性及び耐久性が劣る傾向にあり、一方、高くなるとゴルフボールの製造作業性が劣る場合がある。なお、ムーニー粘度はASTM D−1646−96に準じて測定されるML1+4(100℃)値のことである。
【0043】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分として、上記(A)成分である変性ポリブタジエンを1質量%以上含むものであり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限として、30質量%以下含むものであり、好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。この量が30質量%を超えると、作業性が悪くなり、また、ゴルフボールの耐久性、反発性に劣る。一方、1質量%未満では、所望の物性を有するゴム組成物が得られにくく、本発明の目的が達せられない場合がある。
【0044】
この変性ポリブタジエンは1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、この変性ポリブタジエンと併用される他のゴム成分(B)としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどのジエン系ゴムが挙げられる。このジエン系ゴムは1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。これらの中では、シス1,4−ポリブタジエンが好ましく、重合触媒としては特に限定されないがVIII属触媒系や前記した希土類触媒系を用いて重合したものが好ましく用いられる。市販品としてはJSR社製の商品名「BR51」や「BR01」等を挙げることができる。
【0046】
(B)成分のムーニー粘度は、上限として50未満であることが必要であり、好ましくは49未満、より好ましくは45未満、更に好ましくは40未満である。また、その下限値は、特に制限はないが、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。(B)成分のムーニー粘度が上記の範囲を超えると、製造作業性が悪くなる場合がある。逆に、上記のムーニー粘度が低すぎると、反発が低下する場合がある。
【0047】
また、(B)成分の配合割合は、ゴム成分全量の70質量%以上、好ましくは75質量%以上である。
【0048】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分100質量部に対して、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩10〜50質量部、(D)無機充填剤5〜80質量部、及び(E)有機過酸化物0.1〜10質量部を含有する。
【0049】
本発明のゴム組成物に配合される(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の1価または2価の金属塩が挙げられ、具体的には下記の化合物を1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(i)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、ソルビン酸、チグリン酸、ケイヒ酸、およびアコニット酸
(ii)アクリル酸Zn、ジアクリル酸Zn、メタクリル酸Zn、ジメタクリル酸Zn、イタコン酸Zn、アクリル酸Mg、ジアクリル酸Mg、メタクリル酸Mg、ジメタクリル酸Mg、イタコン酸Mg等の上記(i)の不飽和酸のZn、Mg、Ca、Ba、およびNaの各塩
【0050】
また、上記(C)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩は、そのままで基材ゴムなどと混合する通常の方法以外に、あらかじめ酸化亜鉛などの金属酸化物を練り混んだゴム組成物中にアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を添加し練り混んでゴム組成物中でα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と金属酸化物とを反応させて、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩としたものであってもよい。また架橋剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記(C)成分の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは15質量部以上、上限として50質量部以下、好ましくは40質量部以下である。10質量部未満では、ゴルフボールとしての反発弾性が低下してしまう、一方、50質量部を超えると、硬くなりすぎて耐久性が悪くなる。
【0052】
(D)無機充填剤の配合は、架橋ゴムを補強して強度を向上させる役割があり、その配合量によりゴルフボールの重さを適宜調整することができる。この無機充填剤としては、具体的に、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、硫酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどを挙げることができる。なかでも、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカの使用が好ましい。これらの無機充填剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。無機充填剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、上限として、80質量部以下、好ましくは70質量部以下である。5質量部未満では得られるソリッドゴルフボールが軽くなりすぎ、一方、80質量部を超えると得られるソリッドゴルフボールが重くなりすぎる。
【0053】
(E)有機過酸化物は、ゴム成分及び架橋剤の架橋反応、グラフト反応、重合反応等の開始剤としての役割を担う。この有機過酸化物の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼンなどを挙げることができる。有機過酸化物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上であり、一方、上限として10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。0.1質量部未満では、柔らなくなりすぎて反発弾性が低下し、一方、10質量部を超えると、硬くなりすぎて耐久性が悪くなる。
【0054】
本発明においては反発性を更に向上させるために有機硫黄化合物を配合することが好ましく、具体的には、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0055】
上記有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、上限として5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下配合する。配合量が多すぎると硬さが軟らかくなり過ぎてしまい、少な過ぎると反発性の向上が見込めない。
【0056】
本発明のゴム組成物には、上記成分の他に、所望により、ステアリン酸等の滑剤、酸化防止剤などを配合してもよい。
【0057】
本発明におけるゴム組成物の加熱成形物は、上述したゴム組成物を、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって得ることができる。加硫条件としては、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施する条件が挙げられる。
【0058】
なお、本発明におけるゴム組成物の加熱成形物について、加熱成形物表面のJIS−C硬度から加熱成形物中心のJIS−C硬度を引いた硬度差としては、15以上、好ましくは16以上、より好ましくは17以上、更に好ましくは18以上であり、上限として50以下、好ましくは40以下であることが推奨される。このように硬度を調整することが、軟らかい打感と良好な反発性、耐久性を兼ね備えたゴルフボールを実現する観点から好適である。
【0059】
また、本発明におけるゴム組成物の加熱成形物について、後述するいずれのゴルフボールに適用される場合であっても、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時のたわみ量が、2.0mm以上、好ましくは2.5mm以上、更に好ましくは2.8mm以上、上限としては6.0mm以下、好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下、最も好ましくは4.5mm以下であることが推奨される。変形量が少なすぎると打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合があり、一方、軟らかすぎると打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0060】
本発明のゴルフボールは、前記加熱成形物を構成要素として具備するもので、ボールの態様は特に制限されるものではなく、前記加熱成形物がゴルフボールに直接適用されるワンピースゴルフボール、加熱成形物をソリッドコアとしかつその表面にカバーが形成されたツーピースソリッドゴルフボール、加熱成形物をソリッドコアとしかつその外側に2層以上のカバーが形成されたスリーピース以上のマルチピースソリッドゴルフボール、前記加熱成形物がセンターコアとして適用された糸巻きゴルフボール、前記加熱成形物がソリッドコアを包囲する中間層や最外層として適用されたマルチピースゴルフボール等の種々の態様を採ることができるが、特に、ソリッドコアとして使用するツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールとすることが、加熱成形物の特性を有効に活かすことができるため好適である。
【0061】
本発明において、前記加熱成形物をソリッドコアとする場合、ソリッドコアの直径としては30.0mm以上、好ましくは32.0mm以上、更に好ましくは35.0mm以上、最も好ましくは37.0mm以上、上限として41.0mm以下、好ましくは40.5mm以下、更に好ましくは40.0mm以下、最も好ましくは39.5mm以下とすることが推奨される。
【0062】
特に、ツーピースソリッドゴルフボールのソリッドコアの直径としては37.0mm以上、好ましくは37.5mm以上、更に好ましくは38.0mm以上、最も好ましくは38.5mm以上、上限として41.0mm以下、好ましくは40.5mm以下、更に好ましくは40.0mm以下とすることが推奨される。
【0063】
また、スリーピースソリッドゴルフボールのソリッドコアの直径としては30.0mm以上、好ましくは32.0mm以上、更に好ましくは34.0mm以上、最も好ましくは35.0mm以上、上限として40.0mm以下、好ましくは39.5mm以下、更に好ましくは39.0mm以下とすることが推奨される。
【0064】
前記ソリッドコアの比重としては0.9以上、好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上、上限として1.4以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
【0065】
本発明における加熱成形物をコアとしてツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールを形成する場合、公知のカバー材、中間層材を使用することができ、これらカバー材、乃至中間層材として具体的には、例えば熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー又はこれらの混合物等を挙げることができる。特に、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、アイオノマー樹脂を好適に使用することができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。また、本発明における加熱成形物を、ソリッドコアを包囲する中間層や最外層としてゴルフボールを形成する場合、公知のコア材、中間層材、カバー材を用いることができる。
【0066】
前記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298、同T7295、同T7890、同TR3080、同T8295、同T8290(DIC・バイエルポリマー社製)等のジイソシアネートが脂肪族又は芳香族であるもの等が挙げられる。一方、アイオノマー樹脂の市販品としてはサーリン6320、同8120(米国デュポン社製)、ハイミラン1706、同1605、同1855、同1601、同1557(三井・デュポンポリケミカル社製)等を例示できる。
【0067】
更に、前記カバー材に対しては、任意成分として前記以外の熱可塑性エラストマー等のポリマーを配合することができる。任意成分のポリマーとして具体的には、例えばポリアミド系エラストマー、スチレン系ブロックエラストマー、水添ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体等が挙げられる。
【0068】
なお、前記ツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールは公知の方法で製造することができる。ツーピースやマルチピースソリッドゴルフボールとする場合には、前記加熱成形物をソリッドコアとして所定の射出成形用金型内に配備し、ツーピースソリッドゴルフボールの場合には前記カバー材を、マルチピースソリッドゴルフボールの場合には、順に前記中間層材、カバー材を所定の方法に従って射出する公知の方法を好適に採用できる。場合によっては、前記カバー材を加圧成形によって製造することもできる。
【0069】
前記マルチピースソリッドゴルフボールの中間層の厚さとしては0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、上限として3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、最も好ましくは1.6mm以下であることが推奨される。
【0070】
一方、カバーの厚さとしては、ツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールのいずれであっても0.7mm以上、好ましくは1.0mm以上、上限として3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、最も好ましくは1.6mm以下であることが推奨される。
【0071】
本発明のゴルフボールは、ディンプルが形成されており、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重さ45.93g以下に形成することができる。直径の上限としては好ましくは44.0mm以下、更に好ましくは43.5mm以下、最も好ましくは43.0mm以下であり、重さの下限としては好ましくは44.5g以上、特に好ましくは45.0g以上、更に好ましくは45.1g以上、最も好ましくは45.2g以上である。
【実施例】
【0072】
以下、合成例、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0073】
合成例1(変性重合体(i)の製造)
5Lのオートクレーブを窒素置換した後、窒素雰囲気下、シクロヘキサン2.22kgと1,3−ブタジエン280gを入れた。これらに、予め触媒成分としてバーサチック酸ネオジム(0.081mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(以下「MAO」と言う。)(1.68mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(以下「DIBAH」と言う。)(4.67mmol)及びジエチルアルミニウムクロリド(0.168mmol)のトルエン溶液と1,3−ブタジエン(4.20mmol)とを50℃で30分間反応熟成させた触媒を入れ、80℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
【0074】
更に、重合体溶液を温度60℃に保ち、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下「GPMOS」と言う。)(3mmol)のトルエン溶液を添加し、30分間反応させた。続いて、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ(以下「EHASn」と言う。)(13mmol)のトルエン溶液を添加し、30分間混合させた。その後、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、変性重合体溶液2.5kgを得た。
【0075】
次に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lに上記変性重合体溶液を添加し、110℃で2時間、脱溶媒とともに縮合反応を行い、110℃のロールで乾燥して、変性重合体を得た。変性重合体のムーニー粘度は「55」,シス1,4−結合含量は92.0%、1,2−ビニル含量は1.0%であった。
【0076】
合成例2(変性重合体(ii)の製造)
合成例1で、GPMOSを2.5mmolとし、EHASnをテトライソプロピルチタネート(以下「IPOTi」と言う。)(13mmol)に代えた以外は、合成例1と同様の仕込み組成、重合方法にて変性重合体を得た。変性重合体のムーニー粘度は「32」,シス1,4−結合含量は92.0%、1,2−ビニル含量1.0%であった。
【0077】
上記合成例で合成した変性重合体(i)(ii)を用い以下の実施例,比較例のゴルフボール用コアを作成した。これを表1に示す。
【0078】
〔実施例1〜3,比較例1〜3〕
下記の表1に示す配合にて各原料をニーダーにて混練してゴム組成物を調製し、球状金型内で170℃×20分間の加硫を行うことにより、37.7mmφで重さ32gの球状成型物を得た。得られた成型物の物性を評価した。その結果を下記表1に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
BR51
JSR社製 ポリブタジエン(Nd系触媒にて重合)、ムーニー粘度「38」
Neocis BR60
Polymeri社製 ポリブタジエン(Nd系触媒にて重合)、ムーニー粘度「57」
ZDA
日本触媒社製のジアクリル酸亜鉛 商品名「ZN−DA85S」
ZnO
堺化学社製の3種酸化亜鉛
老化防止剤
商品名「ノクラックNS−6」 大内新興化学工業社製
PO−D
日本油脂社製のジクミルパーオキサイド 商品名「パークミルD」
ZnPCTP
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
【0081】
押し出し作業性
東洋精機製作所製の「ラボプラストミル50C150」にゴム押出試験機を装着し、以下の条件でゴムを押し出したときのゴム表面状態を観察した。
(条件)口金径 10mmφ
回転数設定 60rpm
温度設定 80℃
(評価)
◎: 表面が滑らかで、作業性に優れる。
○: 表面が、ややささくれ立つが、押し出し作業可能
×: 表面のささくれが大きく、押し出し作業困難
【0082】
荷重変形量
初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時の球状成型物のたわみ量(mm)。
【0083】
反発指数
公認機関USGAと同タイプの初速度計にて初速度を測定し、比較例1の値を「100」にしたときの比の値を表した。
【0084】
耐久指数
米国AUTOMATED DESIGN CORPORATION製のADC BALL COR DURABILITY TESTERにより球状成型物の耐久性を評価した。この試験機は、球状成型物を空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。球状成型物が割れるまでに要した発射回数の平均値を耐久性とした。金属板への入射速度は30m/sであった。この場合、比較例1の値を「100」にしたときの比の値を表した。
【0085】
上記表1の結果から、比較例1の反発性及び耐久性を基準とした場合、この比較例を境にして、実施例1〜3の全ては、比較例1より反発性及び耐久性に優れており、かつゴムの押し出し作業性に優れている。一方、比較例2は、比較例1より押し出し作業性及び耐久性に優れているものの、反発性が見られず、比較例1と同等である。比較例3は、比較例1より反発性及び耐久性に優れているものの、実施例に比べて、ゴム表面がささくれ立ち、押し出し作業に劣っていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)成分、
(A)ビニル含量0〜2%及びシス1,4−結合含量80%以上有し、かつ活性末端を有するポリブタジエンであって、その活性末端が少なくとも1種のアルコキシシラン化合物で変性され、ムーニー粘度が40以上である変性ポリブタジエンをゴム成分全量の1〜30質量%、
(B)上記(A)ゴム成分以外のムーニー粘度が50未満のジエン系ゴムをゴム成分全量の70質量%以上、かつ
上記(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、
(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩10〜50質量部、
(D)無機充填剤5〜80質量部、及び
(E)有機過酸化物0.1〜10質量部
を必須成分として配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素とすることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記アルコキシシラン化合物が、エポキシ基を分子内に有するものである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記変性反応を行う工程中及び/又は終了後に、縮合促進剤として有機スズ化合物及び/又は有機チタン化合物を加えるものである請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
(A)成分のポリブタジエンゴムが、希土類元素を含む触媒系によって重合された請求項1、2又は3記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記縮合促進剤が、スズのカルボン酸塩及び/又はチタンアルコキシドである請求項3記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記ゴム組成物に更に有機硫黄化合物が含まれる請求項1〜5のいずれか1項記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2009−119254(P2009−119254A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276559(P2008−276559)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】