説明

サイクルスリップ検出装置及びサイクルスリップ検出方法

【課題】サイクルスリップの検出ならびにサイクルスリップが発生している人工衛星の特定を効率的且つ確実に行うことが可能なサイクルスリップ検出装置及びサイクルスリップ検出方法を提供する。
【解決手段】人工衛星2aと人工衛星2bのそれぞれにおけるキャリア位相加速度と加速度平均値との差分と、これらの差分の差である人工衛星差分差とを求める演算部と8と、この人工衛星差分差と所定の閾値とを比較し、人工衛星差分差が閾値より大である場合に人工衛星2a及び2bのそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較し、差分が前記の閾値より大である人工衛星にサイクルスリップが発生していると判定する判定部9とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)において発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置及びサイクルスリップ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSは、複数個の人工衛星と、これらの人工衛星からデータ受信する受信機とからなり、この受信機を車両、船舶、航空機といった移動体に搭載することにより、正確な位置、速度等を測定することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】日本測地学会「新訂版 GPS−人工衛星による精密測位システム」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のGPSには、以下の解決すべき課題が存在する。
受信機が人工衛星からデータを受信し、測位を行うためには、人工衛星から発せられた搬送波を受信し、これによりデータの送信元である人工衛星の位置を把握し続ける必要がある。
【0004】
通常、人工衛星の追尾を行うに際の不確定性は一定であるが、例えば受信機と人工衛星との間に樹木や建築物等の遮蔽物が存在する場合、搬送波の受信が中断され、受信が再開された際には、上記の不確定性の値が変化してしまう。このような現象はサイクルスリップと呼ばれ、正確な測位を行うことの阻害要因となっている。
【0005】
上記のサイクルスリップの値は、L1信号(周波数:1575.42Mhz、波長:約19cm)の場合、約19cmである。
【0006】
上記の人工衛星は、高度約20000kmの軌道上を周回しており、人工衛星と受信機との距離の変化は、上記のサイクルスリップの値より大であり、また、信号ノイズやマルチパス等の影響により、約19cmの位相変化を受信機により観測されたキャリア位相そのものから検出することは困難である。
【0007】
なお、上記のサイクルスリップの検出方法としては、2個の人工衛星の位相データを異なる時刻で2回収集し、3重差をとる方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、2個の人工衛星のどちらでサイクルスリップが発生しているかを特定することができない。
【0008】
このような事情に鑑み本発明は、サイクルスリップの検出ならびにサイクルスリップが発生している人工衛星の特定を効率的且つ確実に行うことが可能なサイクルスリップ検出装置及びサイクルスリップ検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第1の演算手段と、観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第2の演算手段と、第1の演算手段により求められた観測対象である人工衛星における差分と第2の演算手段により求められた別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算手段と、人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、人工衛星間差分差が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星と別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定手段とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、観測対象である人工衛星の軌道に関する情報であるエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第1の演算手段と、観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第2の演算手段と、第1の演算手段により求められた観測対象である人工衛星における差分と第2の演算手段により求められた別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算手段と、人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、人工衛星間差分差が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星と別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定手段とを有することを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、差分が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、第2の比較手段により求められた差分が閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定手段とを有することを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、観測対象である人工衛星のエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、差分が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、第2の比較手段により求められた差分が閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定手段とを有することを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第1の演算工程と、観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第2の演算工程と、第1の演算工程において求められた観測対象である人工衛星における差分と第2の演算工程において求められた別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算工程と、人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、人工衛星間差分差が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星と別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定工程とを有することを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、観測対象である人工衛星の軌道に関する情報であるエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第1の演算工程と、観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求める第2の演算工程と、第1の演算工程において求められた観測対象である人工衛星における差分と第2の演算工程において求められた別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算工程と、人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、人工衛星間差分差が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星と別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定工程とを有することを要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、差分が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、擬似距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、第2の比較工程において求められた差分が閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定工程とを有することを要旨とする。
【0016】
請求項8に記載の本発明は、複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、観測対象である人工衛星のエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、差分が閾値より大である場合に観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて人工衛星までの距離を算出し、距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を求め、差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、第2の比較工程において求められた差分が閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サイクルスリップの検出ならびにサイクルスリップが発生している人工衛星の特定を効率的且つ確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を提示しつつ本発明のサイクルスリップ検出装置及びサイクルスリップ検出方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施例(実施例1)に係るGPS(全地球測位システム)1の構成図である。
このGPS1は、複数個の人工衛星2(本図では、2aから2dの5個を図示)と、人工衛星2から送信されたデータ3(3aから3d)を受信するサイクルスリップ検出装置4とからなる。
【0020】
サイクルスリップ検出装置4は、人工衛星2から擬似距離情報、キャリア位相情報等を受信し、これらの情報に基づいてサイクルスリップを検出するものであり、アンテナ部5と、受信部6と、記憶部7と、演算部8と、判定部9と、入出力部10とからなる。
【0021】
受信部6は、人工衛星2からアンテナ部5を介して上記の各種情報を受信する。
【0022】
演算部8は、受信部6により受信された情報に基づいてサイクルスリップが発生しているか否かを判定するための判断材料となる数値を演算する。
【0023】
演算処理を行う。
【0024】
記憶部7は、判定部9による判定に必要な閾値等を記憶する。
【0025】
判定部9は、演算部8の演算結果に基づいてサイクルスリップが発生しているか否かを判定する。
【0026】
なお、上記の記憶部7に記憶される数式、演算部8及び9の処理の詳細については後述する。
【0027】
入出力部10は、ユーザによる入力信号(処理開始の指示信号等)の受付、また、ユーザへの演算結果や判定結果等の出力を行う。
【0028】
次に、上記のサイクルスリップ検出装置4によるサイクルスリップ検出の原理について説明する。
上記の擬似距離Rsi及びキャリア位相φsiは以下の式で表される。
【0029】
【数1】

【0030】
なお、上記の式におけるRisは観測地点iで観測した人工衛星s(例えば、2a)の擬似距離[m]、φisは観測地点iで観測したキャリア位相[cycle](全体にλを掛けて単位をmとした場合も同じ原理となる)、ρisは人工衛星sとサイクルスリップ検出装置4の真の距離(幾何学的距離)、N isは整数不確定値(アンビギュイティ)、dep isはエフェメリス誤差、dti:サイクルスリップ検出装置4のクロックオフセット、dtは人工衛星sのクロックオフセット、dtrpisは観測地点iで観測した人工衛星sの対流圏遅延量[m]、dionisは観測地点iで観測した人工衛星sの電離層遅延量[m]、dMisは観測地点iで観測した人工衛星sのマルチパス[cycle]、ερはコードレンジ雑音等の誤差[m]、εφはキャリア位相雑音等の誤差[cycle]を指す。
【0031】
なお、データ収集時間間隔が1秒程度であれば、対流圏遅延量及び電離層遅延量の変化は無視できるものと考えられる。
【0032】
また、本発明のサイクルスリップ検出装置4においては、サイクルスリップを検出するにあたって、「擬似距離最小二乗法」、「エフェメリスに基づく方法」を用いる。以下、これらの詳細について説明する。
【0033】
「方式1:擬似距離最小二乗法を用いる場合」
上記の擬似距離を最小二乗法程式で近似した値は、以下の式で表される。
【0034】
【数2】

【0035】
また、上記の(3)式をサイクル単位に変換し(2)式より引くと以下の式のようになる。
【0036】
【数3】

【0037】
なお、この(4)式の左辺δ( )は、最小二乗法により近似した値と真値との誤差(モデル誤差)を示している。
【0038】
また、(4)式の近接データ間の差分(速度)は、(5’)式に示すようにサイクルスリップがなければ、整数不確定値は変化がないため差分はゼロになる。2個の収集サンプル間でサイクルスリップが発生した場合、整数不確定値が変化する。この際の整数変化値をns1とすると以下の(5)式のようになる。
【0039】
【数4】

【0040】
ここで、各文字にある・は、速度を表している。人工衛星2までの距離ρの速度は、±1km/s程度にまでなる。
【0041】
この場合には、擬似距離の2次方程式最小二乗近似式で近似した距離ρを引いているため、距離ρの速度は本来の速度よりも遅くなる。
【0042】
また、人工衛星時刻は、人工衛星2が原子時計を搭載しているため、10-11〜10-12 s/s程度の変化をし、1秒間で0.03〜0.0003m/sで変化する。さらに、原子時計の加速度変化はゼロである。
【0043】
一方、サイクルスリップ検出装置4の受信部6に設けられた内部クロックは、10-6s/s程度の変化をするため、1秒間あたり3km/sで変化する。この内部クロックには、加速度成分も存在するため、この場合も、擬似距離の2次最小二乗近似で近似した値を引いているため、変化量は本来よりも少なくなる。
【0044】
また、マルチパスの速度変化に関しては、観測地点から見た人工衛星2の動きはゆっくりしたものであり、仰角が1度変化するのには数分以上を要し、1秒間での変化量は無視できるものである。
【0045】
このため、人工衛星、反射物、サイクルスリップ検出装置4の幾何学的関係は、1秒間では変化がないものとみなすことができ、幾何学的関係が変化しないため、マルチパスの速度成分はゼロとみなせる。
【0046】
いずれにしても、キャリア位相速度は、内部クロックの変化などがあるため、±数百m/sの値を取る可能性があるため、整数値変化を見つけることは困難である。
【0047】
このため、本発明においては、整数値変化を明確にするため、以下の式に示すようにキャリア位相速度の差分(加速度)を求める。
【0048】
【数5】

【0049】
なお、上記の式におけるkは、データ収集の順番を示す。
【0050】
(6)式に示すように、サイクルスリップが発生している場合には、整数値変化が現れる。また、人工衛星時刻の加速度成分は、原子時計を使っているためゼロとみなせる。
【0051】
また、人工衛星の距離の加速度は、0.019/s2を超えない(GPS Standard Positioning Service performance, 2001)とされており、サイクルスリップ検出装置側のノイズは、1cm/s2以下(例0.0075m/s2)である。
【0052】
一方、サイクルスリップ検出装置4のクロックの加速度は、使用しているクロック(TCXO,OCXO、Rb,Cs)により異なる。RbやCsを使った場合、クロックの加速度はゼロとみなせる。TCXOを使った場合、加速度は、1×10-6m/s2程度で変化する。1分間では、0.0006m/s2の変化となり、ほぼ一定とみなせる。OCXOについては、TCXOよりも温度特性・短期安定度が良好であるため、1分間で一定とみなせる。
【0053】
以上のことから、(6)式及び(6’)式から過去数分間(例1分間)の加速度平均値を引くと次のようになる。なお過去数分間の平均は[aφ]1で表す。
【0054】
【数6】

【0055】
サイクルスリップが発生している場合は、(7)式に示すように整数倍の変化が出る。しかしながら、この際、サイクルスリップ検出装置の内部クロックが大きく変動している、あるいはクロックノイズをサイクルスリップと判定してしまう可能性がある。これを防止するため、人工衛星sとは別の人工衛星u(例えば、2b)との差を取ることにより、上記の結果がクロックノイズによるものであるのか、人工衛星sに発生した固有のサイクルスリップ現象であるのかを判別することができる。
【0056】
また、この際、人工衛星間の減算は、上記の(2)式あるいは(4)式の段階で行っても同じ結果となる。
【0057】
また、サイクルスリップが発生しているか否かの判定は、ある閾値(例、0.75)を使用し、この閾値よりも大である場合にはサイクルスリップが発生していると判断する。
【0058】
なお、これにあたっては下記の(8)式を用いる。
【0059】
この式を用いることによりサイクルスリップが発生したと判断された場合、人工衛星sと人工衛星uに対応する(7)式の値をチェックし、サイクルスリップがどちら発生したかを判定する。
【0060】
また、サイクルスリップが発生した場合に、サイクルスリップ検出装置4側の追尾が途絶え、データ3が定期的に出力されてこなくなる場合があり、キャリア位相データの収集時刻間隔が、設定した時刻間隔値よりも大である場合にサイクルスリップが発生したと判定する。
【0061】
【数7】

【0062】
「方式2:エフェメリス基づく人工衛星位置と精密測量観測点位置を用いる場合」
この方法においては、エフェメリスより人工衛星位置Xsと精密測量観測点位置X0を算出する。なお、これらの値で距離を表すと以下の式のようになる。
【0063】
【数8】

【0064】
また、上記の(9)式をサイクル単位に変換し(2)式より引くと以下の式のようになる。
【0065】
【数9】

【0066】
上記の(10)式の近接データ間の差分(速度)は、サイクルスリップが発生していなければ整数不確定値は変化がないため差分はゼロになる。例えば、2個の収集サンプル間でサイクルスリップが発生した場合、整数不確定値が変化する。この際の整数変化値をns1とすると以下の(11)式のようになる。
【0067】
【数10】

【0068】
ここで、各文字にある・は、速度を表している。人工衛星時刻は、人工衛星2が原子時計を搭載しているため、10-11〜10-12s/s程度の変化をし、1秒間で0.03〜0.0003m/sで変化する。さらに、原子時計の加速度変化はゼロである。
【0069】
一方、サイクルスリップ検出装置の内部クロックは、10-6s/s程度の変化をするため、1秒間あたり3km/sで変化する。この内部クロックには、加速度成分も存在するため、この場合も、擬似距離の2次最小二乗近似で近似した値を引いているため、変化量は本来よりも少なくなる。
【0070】
また、マルチパスの速度変化に関しては、観測地点から見た人工衛星2の動きはゆっくりしたものであり、仰角が1度変化するのには数分以上を要し、1秒間での変化量は無視できるものである。
【0071】
このため、人工衛星、反射物、サイクルスリップ検出装置4の幾何学的関係は、1秒間では変化がないものとみなすことができ、幾何学的関係が変化しないため、マルチパスの速度成分はゼロとみなせる。
【0072】
いずれにしても、キャリア位相速度は、内部クロックの変化などがあるため、±数百m/sの値を取る可能性があるため、整数値変化を見つけることは困難である。
【0073】
このため、本発明においては、整数値変化を明確にするため、以下の式に示すようにキャリア位相速度の差分(加速度)を求める。
【0074】
【数11】

【0075】
なお、上記の式におけるkは、データ収集の順番を示す。
【0076】
(6)式に示すように、サイクルスリップが発生している場合には、整数値変化が現れる。また、人工衛星時刻の加速度成分は、原子時計を使っているためゼロとみなせる。
【0077】
また、人工衛星の距離の加速度は、0.019/s2を超えない(GPS Standard Positioning Service performance, 2001)とされており、サイクルスリップ検出装置側のノイズは、1cm/s2以下(例0.0075m/s2)である。
【0078】
一方、サイクルスリップ検出装置4のクロックの加速度は、使用しているクロック(TCXO,OCXO、Rb,Cs)により異なる。RbやCsを使った場合、クロックの加速度はゼロとみなせる。TCXOを使った場合、加速度は、1×10-6m/s2程度で変化する。1分間では、0.0006m/s2の変化となり、ほぼ一定とみなせる。OCXOについては、TCXOよりも温度特性・短期安定度が良好であるため、1分間で一定とみなせる。
【0079】
以上のことから、(12)式及び(12’)式から過去数分間(例1分間)の加速度平均値を引くと次のようになる。なお過去数分間の平均は[aφ]1で表す。
【0080】
【数12】

【0081】
サイクルスリップが発生している場合は、(13)式に示すように整数倍の変化が出る。しかしながら、この際、サイクルスリップ検出装置の内部クロックが大きく変動している、あるいはクロックノイズをサイクルスリップと判定してしまう可能性がある。これを防止するため、人工衛星sとは別の人工衛星u(例えば、2b)との差を取ることにより、上記の結果がクロックノイズによるものであるのか、人工衛星sに発生した固有のサイクルスリップ現象であるのかを判別することができる。
【0082】
また、この際、人工衛星間の減算は、上記の(2)式あるいは(4)式の段階で行っても同じ結果となる。
【0083】
また、サイクルスリップが発生しているか否かの判定は、ある閾値(例、0.75)を使用し、この閾値よりも大である場合にはサイクルスリップが発生していると判断する。
【0084】
なお、これにあたっては下記の(14)式を用いる。
【0085】
この式を用いることによりサイクルスリップが発生したと判断された場合、人工衛星sと人工衛星uに対応する(14)式の値をチェックし、サイクルスリップがどちら発生したかを判定する。
【0086】
また、サイクルスリップが発生した場合に、サイクルスリップ検出装置4側の追尾が途絶え、データ3が定期的に出力されてこなくなる場合があり、キャリア位相データの収集時刻間隔が、設定した時刻間隔値よりも大である場合にサイクルスリップが発生したと判定する。
【0087】
【数13】

【0088】
なお、擬似距離やエフェメリス等は受信部6により所定の時間間隔をもって定期的に出力され、観測時刻も同時に記録される。
【0089】
次に、図2を参照しつつ、上記のサイクルスリップ検出装置4によるサイクルスリップ検知処理の詳細について説明する。
前記のとおり、人工衛星2aとアンテナ部5の間に遮蔽物等が存在する場合、受信部6が人工衛星2aから送信されるデータを定期的に受信できなくなる場合がある。
【0090】
したがって、演算部8は、観測対象となる人工衛星(例えば、2a)のキャリア位相の最新の観測時刻とその前の観測時刻(直近観測時刻)との差(観測間隔)を求め、判定部9は、所定の時間間隔値を記憶部7より読みだし、これと前記の観測間隔とを比較し(S11)、観測間隔が所定の時間間隔値より大である場合(S11:YES)、サイクルスリップが発生していると判定する(S20a)。
【0091】
一方、観測間隔が所定の時間間隔値より大でない場合(S11:NO)、演算部8は、受信部6により出力された人工衛星2aの擬似距離(過去数回の観測分、本実施例では3回分)をn次の方程式(本実施例では2次方程式)により最小二乗近似曲線を算出し(S12)、これにより人工衛星2aの次の観測時刻(未来時刻)における擬似距離を推定すし(S13)、これに基づいて未来時刻におけるキャリア位相速度及び加速度を推定する(S14)。
【0092】
また、人工衛星2aの加速度は常に算出されており、演算部8は、上記の加速度の推定値を算出すると、この値と過去の一定期間内における加速度との平均値を算出する(S15)。
【0093】
未来時刻における加速度が推定され、当該時刻となると、演算部8は、キャリア位相加速度の実測値(観測値)と上記の平均値との差分を算出する(S16)。
【0094】
次に、演算部8は、他の人工衛星(例えば2b)に関しても上記のS12からS16と同様の処理を行い、人工衛星2bにおけるキャリア位相加速度の実測値と平均値との差分を算出し(S17)、判定部9は、人工衛星2aにおける差分と人工衛星2bにおける差分との差(なお、以降の説明においては、これを“人工衛星間差分差”と呼称する)を算出し(S17)、所定の閾値を記憶部7から読み出し、この閾値と人工衛星間差分差とを比較し(S18)、人工衛星間差分差が閾値より大でない場合(S18:NO)は、これが受信部6の内部クロックの変位によるものと判断し、サイクルスリップは発生していないと判定する(S20b)。
【0095】
一方、人工衛星間差分差が閾値より大である場合(S18:YES)、人工衛星2a(S人工衛星)と2b(U人工衛星)のそれぞれにおける差分(キャリア位相加速度の観測値と平均値との差分)と閾値とを比較し(S19)、人工衛星2aの差分が閾値より大である場合(S19:S人工衛星)は、この人工衛星2aにおいてサイクルスリップが発生していると判定し、また、人工衛星2bの差分が閾値より大である場合(S19:U人工衛星)は、この人工衛星2bにおいてサイクルスリップが発生していると判定する。このように本実施例においてはサイクルスリップが発生した人工衛星を確実に特定できる。
【実施例2】
【0096】
図3は、本発明の第2の実施例(実施例2)に係るサイクルスリップ検出装置4の処理動作を示す図である。
上記の実施例1(図1)においては、擬似距離に基づいて加速度平均値を算出する場合を示したが、これには前記のとおりエフェメリスを用いることもできる。以下、その詳細について説明する。
【0097】
S21において上記の観測間隔が時間間隔値より大であると、演算部8は、記憶部7から数式を読み出し、人工衛星2aのエフェメリスに基づいてこの人工衛星2aの位置が算出し(S22)、この人工衛星の位置と観測点(サイクルスリップ検出装置4の位置)との距離を算出する(S24)。
【0098】
次に、前記の距離に基づいて人工衛星2aの次の観測時刻(未来時刻)におけるキャリア位相速度及び加速度を推定する(S24)。
【0099】
なお、以降のS25からS30までの処理は、実施例1のS15からS20までの処理と同様であるため説明は省略する。
【実施例3】
【0100】
図4は、本発明の第3の実施例(実施例3)に係るサイクルスリップ検出装置4の処理動作を示す図である。
上記の実施例1(図2)においては、加速度平均値の差分を算出した後に、人工衛星間差分差を算出し、これに基づいてサイクルスリップが発生しているか否かの判定を行っていたが、本実施例においては、キャリア位相角度と加速度平均値との差分に基づいて判定を行う。以下、その詳細について説明する。なお、本図(図4)のS41からS46までの処理は、実施例1のS11からS16までの処理と同様であるため説明は省略する。
【0101】
S46おいてキャリア位相加速度の実測値と加速度平均値との差分が計算されると、判定部9は、記憶部7から所定の閾値を読み出し、この閾値と前記の差分とを比較し(S47)、差分が閾値より大でない場合(S47:NO)は、サイクルスリップが判定していないと判定する(S59b)。
【0102】
一方、上記の差分が閾値より大である場合、他の人工衛星(例えば、2b)に関してもS42からS46と同様の処理を行い、判定部9は、他の人工衛星におけるキャリア位相の差分と前記の閾値とを比較し(S48)、差分が閾値より大でない場合(S48:NO)は、これが受信部6の内部クロックの変位によるものと判断し、サイクルスリップは発生していないと判定する(S49b)。
【0103】
一方、上記の差分が閾値より大である場合(S48:YES)は、サイクルスリップが発生していると判定する(S6a)。
【実施例4】
【0104】
図5は、本発明の第4の実施例(実施例4)に係るサイクルスリップ検出装置4の処理動作を示す図である。
上記の実施例3(図4)においては、擬似距離に基づいて加速度平均値を算出し、キャリア位相角度と加速度平均値との差分に基づいて判定を行う場合を示したが、この方法は、本図(図5)に示すように、エフェメリスに基づいて加速度平均値を算出する場合にも適用できる。
【0105】
なお、本図のS51からS56までの処理は、実施例2(図3)のS21からS26までの処理と同様であり、S57からS59までの処理は、実施例3のS47からS49までの処理と同様であるため説明は省略する。
【0106】
以上のとおり本発明によれば、三重差をとるなどの方法を用いずとも、最小約19cmのサイクルスリップを効率的且つ確実に検出可能となり、キャリア位相を用いた精密な測量を継続的に行うことが可能となる。
【0107】
また、サイクルスリップを検出することにより、サイクルスリップにより好ましくない影響を与えられたデータの排除・修正を行うことが可能となり、測位の信頼性と精度を向上させることが可能となる。
【0108】
なお、上記のようなサイクルスリップ検出装置を用いるサイクルスリップ検出方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施例1に係る全地球測位システムの構成を示す図である。
【図2】図1のサイクルスリップ検出装置の処理動作を示す図である。
【図3】本発明の実施例2に係るサイクルスリップ検出装置の処理動作を示す図である。
【図4】本発明の実施例3に係るサイクルスリップ検出装置の処理動作を示す図である。
【図5】本発明の実施例4に係るサイクルスリップ検出装置の処理動作を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1…全地球測位システム、2…人工衛星、3…データ、4…サイクルスリップ検出装置、5…アンテナ部、6…受信部、7…記憶部、8…演算部、9…判定部、10…入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、
観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第1の演算手段と、
前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第2の演算手段と、
前記第1の演算手段により求められた前記観測対象である人工衛星における差分と前記第2の演算手段により求められた前記別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算手段と、
前記人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、
前記人工衛星間差分差が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星と前記別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、前記別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定手段と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出装置。
【請求項2】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、
観測対象である人工衛星の軌道に関する情報であるエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第1の演算手段と、
前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第2の演算手段と、
前記第1の演算手段により求められた前記観測対象である人工衛星における差分と前記第2の演算手段により求められた前記別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算手段と、
前記人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、
前記人工衛星間差分差が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星と前記別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、前記別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定手段と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出装置。
【請求項3】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、
観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、
差分が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記第2の比較手段により求められた差分が前記閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定手段と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出装置。
【請求項4】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出装置であって、
観測対象である人工衛星のエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第1の比較手段と、
差分が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記第2の比較手段により求められた差分が前記閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定手段と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出装置。
【請求項5】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、
観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第1の演算工程と、
前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第2の演算工程と、
前記第1の演算工程において求められた前記観測対象である人工衛星における差分と前記第2の演算工程において求められた前記別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算工程と、
前記人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、
前記人工衛星間差分差が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星と前記別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、
前記観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、前記別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定工程と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出方法。
【請求項6】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、
観測対象である人工衛星の軌道に関する情報であるエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第1の演算工程と、
前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求める第2の演算工程と、
前記第1の演算工程において求められた前記観測対象である人工衛星における差分と前記第2の演算工程において求められた前記別の人工衛星における差分との差である人工衛星間差分差を求める第3の演算工程と、
前記人工衛星間差分差と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、
前記人工衛星間差分差が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星と前記別の人工衛星のそれぞれにおける差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、
前記観測対象である人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該観測対象である人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定し、前記別の人工衛星における差分が所定の閾値より大である場合に該別の人工衛星においてサイクルスリップが発生していると判定する判定工程と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出方法。
【請求項7】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、
観測対象である人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、
差分が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星の過去における擬似距離をn次の方程式により最小二乗近似し、これにより未来時刻における擬似距離を推定し、該擬似距離に基づいて前記未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、
前記第2の比較工程において求められた差分が前記閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定工程と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出方法。
【請求項8】
複数個の人工衛星を含む全地球測位システムにおいて発生するサイクルスリップを検出するためのサイクルスリップ検出方法であって、
観測対象である人工衛星のエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第1の比較工程と、
差分が前記閾値より大である場合に前記観測対象である人工衛星とは別の人工衛星のエフェメリスに基づいて該人工衛星までの距離を算出し、該距離に基づいて未来時刻におけるキャリア位相加速度を推定し、該キャリア位相加速度の所定の時間範囲内における平均値を算出し、前記時刻におけるキャリア位相加速度の実測値と前記平均値との差分を求め、該差分と所定の閾値とを比較する第2の比較工程と、
前記第2の比較工程において求められた差分が前記閾値以下である場合にサイクルスリップが発生していると判定する判定工程と
を有することを特徴とするサイクルスリップ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−220512(P2006−220512A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33572(P2005−33572)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】