説明

サイディング材

【課題】サイディング材の裏側に廻り込んだ雨水を、サイディング材の折れ部に形成された水抜き孔から確実且つ速やかに排出できるようにする。
【解決手段】サイディング材1を移動させながら進退移動する穿孔刃23をサイディング材1に貫通させて水抜き孔を形成する。サイディング材1の孔形成面部に穿孔刃23を押し入れることにより形成される水抜き孔は、穿孔刃の両側に沿って裏面側へ折り返し部が突出し、両折り返し部に挟まれた孔の周縁部は平坦な形状となり、この平坦な部分を通して雨水が孔内に確実に流入し排水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁に取り付けて装飾壁面を構成するサイディング材にかかり、表面に建物の屋外側へ突き出る折れ部を有し、この折れ部に水抜き用の孔が形成された構造のものに関する。
【背景技術】
【0002】
図7(A)に示されるように、横張りサイディング材70のスタータ部分は、建物の壁面に接続する上方へ折れた連結片部71と、連結片部71から屋外側へ突き出た折れ部72により略L字形に屈曲した形状を呈し、この折れ部72には、建物の外壁にサイディング材70を取り付けたときに、サイディング材の裏側に廻り込んだ雨水を排出するための水抜き孔73が所定のピッチで複数形成してある(例えば特許文献1参照)。
このような水抜き孔73は、エアーパンチを用い、圧縮空気で打ち抜いたり、穴あけドリルを用いたりして形成されるが、穴あけドリルを用いた加工はインライン対応が困難なため、サイディング材の生産工程は、エアーパンチによる穴あけ工程をサイディング材成形工程に連結し、同じライン内で穴加工がされるように設けることが多い。
【0003】
【特許文献1】実公平4−33321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイディング材70をエアーパンチで打ち抜いた場合、図7(B)に示されるように、水抜き孔73の周囲にサイディング材70の裏面側に一様に盛り上がった円形の稜部73aができ、この稜部73aが折れ部72の裏面側に溜まった雨水の排水の障害となることがあった。すなわち、稜部73aは3mm程度の直径で一様な高さに形成されるため、稜部73a内で雨水がその表面張力によって水抜き孔73を塞ぎ、水抜き73から雨水を流出させなくしたり、或いは雨水が稜部73aでせき止められて水抜き孔73に流れ込まなくしたりして、サイディング材70の裏面側に溜まった雨水が排水されないことがあった。
また、エアーパンチと穴あけドリルの何れを用いても、穴加工の際に抜きカスや切削カス生じ、穴加工後は、生じたカスをサイディング材表面から吹き飛ばしたり取り除いたりする処理が必要であった。
【0005】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、サイディング材に形成された水抜き孔を通して、サイディング材の裏側に廻り込んだ雨水を確実且つ速やかに排出することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明は、建物の屋外側へ突き出る折れ部を表面に有し、当該折れ部に水抜き孔が形成されたサイディング材において、前記水抜き孔は、サイディング材の孔形成面部にその表面側から裏面側へ穿孔刃を押し入れ貫通させることにより、孔形成面部をその中央から穿孔刃の両側に沿って裏面側へ折り返して孔の周辺に一対の折り返し部を形成してなるとともに、両折り返し部に挟まれた孔の周縁部は平坦に形成されてなることを特徴とする。
【0007】
これによれば、サイディング材に形成された水抜き孔は、その裏面側で前記従来例の如き孔の周縁全体が盛り上がった形状ではなく、当該孔を挟んだ対向部位に折り返し部がそれぞれ立ち上がり、両折り返し部の間の孔の周縁部分は平坦に設けてある。つまり、水抜き孔の裏面側の周縁は、折り返し部と平坦な部分が互いに対向した凹凸形状となっている。従って、雨水が水抜き孔に流れ込む際に、凸部である折り返し部に雨水が接するため表面張力が起こり難く、また、折り返し部の両側が平坦な部分なので雨水がせき止められるようなことはなく、水抜き孔の平坦な部分から雨水はスムーズに孔内に流れ込み、排出される。また、水抜き孔は、サイディング材の孔形成面部に穿孔刃を押し入れて形成されるので切削カスがでず、切削カスを除去する処理工程も不要である。
【0008】
本発明のサイディング材は、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂を主材料として形成することができる。また、表面を塩化ビニル樹脂で被覆した鋼材その他の不銹鋼材を用いて形成してもよい。
なお、本発明でいう孔周縁の平坦な部分には、両折り返し部に挟まれた部分に僅かにバリができる場合も含まれる。すなわち、サイディング材として用いる樹脂の柔らかさや穿孔刃の使用頻度などによっては、両折り返し部に挟まれた部分が完全な面一とはならず、バリが若干できる場合もある。この場合でも、穿孔刃を押し入れて穿孔刃の両側に沿って折り返し部を形成するため、平坦な部分にできるバリは僅かなものに過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態のサイディング材の外観図、図2はサイディング材に形成される水抜き孔の外観と断面を示した図、図3は水抜き孔を形成する加工手段の概略構成を示した図、図4は図3の加工手段の断面図、図5は穿孔刃の拡大外観図、図6は他の加工手段の概略構成を示した図である。
【0010】
図1に示されるように、この形態のサイディング材1は、建物の壁面に複数枚を上下に継ぎ合わせて取り付けられる横張りタイプのものであり、その上部と下部に建物壁面に取り付けられる連結面部11と連結片部12をそれぞれ設け、連結片部12の下端部に前方へ屈曲して屋外側へ突き出た折れ部13を設けるとともに、連結面部11と折れ部13の間に前方へ隆起した部分と後方へ凹んだ部分を交互に配した壁面部14を連ね、さらに折れ部13の面内に所定のピッチで複数の水抜き孔15を設けて形成してある。
【0011】
詳しくは、水抜き孔15は、図2に示されるように、その周縁の両側に孔形成面部15aをサイディング材表面1A側から裏面1B側へ折り返してなる折り返し部15b、15bが突出し、両折り返し部の両側部分は、裏面1B側へ突き出た部分のない平坦部15c、15cとして穿孔してある。なお、雨水を排出させ易くするため、水抜き孔15は、その孔径(D)を1mm以上とし、折り返し部15b、15bの立ち上がり高さ(H)も1mm以上に設けることが好ましい。
【0012】
このような水抜き孔15は、サイディング材1を横方向へ移動させながら、水抜き孔15を穿孔する刃を折れ部13に対して垂直に進退し得るように配置し、移動する折れ部13への穿孔刃の押し入れと引き抜きを連続して行うことにより形成される。
【0013】
図3及び図4は、水抜き孔15を形成する加工手段の一例を示している。
この加工手段2は、サイディング材1を載せることができるスペースを上面に有するガイドテーブル21に、外周面に穿孔刃23を一体に固着した適宜な径の円板22を回転自在に取り付けて構成してある。
【0014】
詳しくは、円板22は、その中心をガイドテーブル21の上面に突出させた軸部21aで正逆何れの方向にも回転し得るように支持されており、その外周面の一箇所に穿孔刃23を一体に固着してある。穿孔刃23は、図5に示されるように、鋭角に尖った鋼製の刃であり、先端部を円板22の外周面から適宜な幅突出させて取り付けてある。横幅が500〜5000mm程度のサイディング材1の場合、円板22は直径が50〜200mm程度のものが用いられ、その外周面に、2〜5mm程度の厚み(d)の穿孔刃23を、当該外周面から先端が5〜15mm程度の幅(h)で突出するように取り付けることができる。なお、穿孔刃23は、先端部分が20〜45°の角度(θ)で鋭角に尖った形状のものが好適である。
【0015】
また、図4に示されるように、ガイドテーブル21上には、サイディング材1を押さえる押さえ板24が取り付けてある。この押さえ板24は、表面1A側を下向きにしてガイドテーブル21上に載せたサイディング材1に対して、その裏面1B側の壁面部14をガイドする下面部24aと、裏面1B側の折れ部13をガイドする側面部24bとを有し、それぞれガイドテーブル21の上面と円板22の外周面との間にサイディング材1が進入しスライド移動し得る幅の隙間を開けてガイドテーブル21に一体に取り付けてある。また、前記側面部24bには、サイディング材1を貫通した穿孔刃23が進入する溝部24cを設けてある。
【0016】
このように構成された加工手段2は、サイディング材1の成形工程に連結して設置される。
成形工程から送り出されるサイディング材1は、その裏面B側を上向きにしてガイドテーブル21の上面に載り、押さえ板24で押さえられながらガイドテーブル21上を移動する(図3中、矢符X方向)。これに伴い、押さえ板24の側面部24bと円板22の外周面とでサイディング材1の折れ部13を挟み込み、円板22の外周面が折れ部13に圧接することにより、円板22が回転する。
すると、円板22と一体に回転する穿孔刃23が、スライド移動する折れ部13の表面に押し入って同部を貫通し、続けて円板22が所定角度回転するのに伴って穿孔刃23が折れ部13から抜かれ、この穿孔刃23が折れ部13に刺し込まれ、続いて引き抜かれる一連の過程で、前述した形状の水抜き孔15が折れ部13に形成される。すなわち、折れ部13の孔形成面部15a内に穿孔刃3が押し入り貫通することにより、水抜き孔15の周縁両側に立ち上がった折り返し部15b、15bが形成され、穿孔刃23がサイディング材1の移動方向と同方向に移動しながら押し入るため、水抜き孔15の周縁の内、折り返し部15b、15bの両側の部分は平坦部15c、15cとなる。
以降、サイディング材1の送り出しに伴い円板22が回転し、穿孔刃23が折れ部13の表裏を進退することで、折れ部13に一定のピッチで水抜き孔15が連続して形成される。
【0017】
なお、加工手段2は、図6に示されるように、サイディング材1の移動領域の側方に、穿孔刃23を支持してサイディング材1の移動方向(矢符X方向)と直交する方向(矢符Y方向)へ穿孔刃23を進退移動させる支持機構25を配し、サイディング材1を移動させながら、支持機構25で穿孔刃23を進退させ、穿孔刃23が折れ部13の表裏を貫通することにより水抜き孔15が形成されるように構成してもよい。
【0018】
本形態によれば、サイディング材1に形成された水抜き孔15は、当該孔の両側の対向部位に折り返し部15b、15bがそれぞれ立ち上がり、両折り返し部15b、15bの間の周縁部分は平坦部15c、15cとなっているので、雨水が水抜き孔15に流れ込む際に、折り返し部15b、15bにより雨水に表面張力が起こり難くなり、また、平坦部15c、15cによって雨水がせき止められるようなことはなく、サイディング材1の裏側に廻り込んだ雨水を水抜き孔15からスムーズに排出することができる。また、水抜き孔15は、サイディング材1の孔形成面部15aに穿孔刃23を押し入れて形成されるので切削カスがでず、切削カスを除去する処理工程も不要である。
【0019】
なお、図示したサイディング材と水抜き孔の加工手段の形態は一例であり、本発明は図示した形態に限定されず、他の適宜な形態に構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のサイディング材の外観図である。
【図2】図1のサイディング材に形成される水抜き孔の外観図と断面図である。
【図3】水抜き孔を形成する加工手段の概略構成を示した図である。
【図4】図3の加工手段の断面図である。
【図5】図3の加工手段に用いる穿孔刃の拡大外観図である。
【図6】他の加工手段の概略構成を示した図である。
【図7】(A)は水抜き孔を有する従来のサイディング材のスタータ部の外観図、(B)はスタータ部に形成された水抜き孔の外観図と断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 サイディング材、11 連結面部、12 連結片部、13 折れ部、14 壁面部、15 水抜き孔、15a 孔形成面部、15b 折り返し部、15c 平坦部、2 加工手段、21 ガイドテーブル、22 円板、23 穿孔刃、24 押さえ板、25 支持機構





【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋外側へ突き出る折れ部を表面に有し、当該折れ部に水抜き孔が形成されたサイディング材において、
前記水抜き孔は、サイディング材の孔形成面部にその表面側から裏面側へ穿孔刃を押し入れ貫通させることにより、孔形成面部をその中央から穿孔刃の両側に沿って裏面側へ折り返して孔の周辺に一対の折り返し部を形成してなるとともに、両折り返し部に挟まれた孔の周縁部は平坦に形成されてなることを特徴とするサイディング材。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−97249(P2006−97249A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281577(P2004−281577)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】