サイドスタンドの位置検出装置
【課題】磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供する。
【解決手段】サイドスタンドの位置検出装置7は、磁石71と、磁石71と対向する位置に配置されるホールIC72と、サイドスタンドの回動動作に伴って回動する遮磁板73とを備える。サイドスタンドと連動して回動する回動軸6に固定された回転部材5に、遮磁板73を取り付け、回転部材5を上ケース3と下ケース4とで挟持する。遮磁板73は、突出部73cを有する。そして、遮磁板73の突出部73cは、サイドスタンドが起立位置にある場合に、磁石71とホールIC72との間の所定領域に位置し、サイドスタンドが収納位置にある場合に、所定領域から退避した領域に位置する。
【解決手段】サイドスタンドの位置検出装置7は、磁石71と、磁石71と対向する位置に配置されるホールIC72と、サイドスタンドの回動動作に伴って回動する遮磁板73とを備える。サイドスタンドと連動して回動する回動軸6に固定された回転部材5に、遮磁板73を取り付け、回転部材5を上ケース3と下ケース4とで挟持する。遮磁板73は、突出部73cを有する。そして、遮磁板73の突出部73cは、サイドスタンドが起立位置にある場合に、磁石71とホールIC72との間の所定領域に位置し、サイドスタンドが収納位置にある場合に、所定領域から退避した領域に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車に回動可能に設けられたサイドスタンドの位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二輪車のサイドスタンドは、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車のブラケットに取り付けられている。サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行してしまうと、サイドスタンドは二輪車の走行の妨げとなり、最悪の場合は二輪車の転倒の原因となってしまう。そこで、サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行しないようにするために、サイドスタンドの位置を検出し、その検出結果に応じて走行の許可・禁止の制御を行う装置が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、コイルと、コイルのインダクタンスの変化に基づいてスタンドの向きを検出する検出回路とを備えたロータリセンサが開示されている。
このロータリセンサでは、ロータがスタンドとともに回動することにより、ロータとコイルとの距離が変化する。これによって、コイルのインダクタンスが変化する。そして、二輪車では、コイルのインダクタンスの変化に基づいて、スタンドが起立状態か否かを判定する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたロータリセンサでは、スタンドが静止しているときは、コイルのインダクタンスが変化しないため、スタンドが起立状態か否かを常時検出することが出来ない。
【0005】
また、特許文献2には、磁石板と、磁石板と対向する位置に配置されるホールICとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がサイドスタンドとともに回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。これによって、ホールICの出力信号のオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、ホールICの出力信号のオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がホールICに対して相対的に回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。そのため、磁石板の磁力のばらつきに起因して、ホールICの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生しやすい。すなわち、磁石板の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生しやすい。なお、上記した磁力のばらつきには、磁石板の作製時に発生するばらつきや、温度に起因して発生するばらつきが含まれる。
【0007】
さらに、特許文献3には、磁石面を有する回転部材と、磁石面と対向する位置に配置されるリードスイッチとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、回転部材がサイドスタンドとともに回動することにより、リードスイッチと対向する磁石面の極性が切り替えられる。これによって、リードスイッチのオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、リードスイッチのオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0008】
しかしながら、上記特許文献3のサイドスタンドの位置検出装置においても、特許文献2と同様の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−163093号公報
【特許文献2】特開2008−130314号公報
【特許文献3】特開2004−355903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のサイドスタンドの位置検出装置は、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材とを備える。そして、上ケースと下ケースとから成る固定部材の内部に、磁石と、磁気センサと、可動部材を配置している。また、上ケースと下ケースとの間に挟持され、かつ、サイドスタンドの回動動作に連動して回動する回動軸に連結された回転部材に、可動部材を取り付けている。可動部材は、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置することにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽し、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、所定領域から退避した領域に位置する。
【0012】
このように構成することによって、サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材が所定領域に位置するか否かにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽するか否かが切り替えられる。したがって、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石の磁力にばらつきがある場合にも、磁気センサの出力信号が切り替わる際のサイドスタンドの検出位置にばらつきが発生するのを抑制し、検出誤差を小さくすることができる。
【0013】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、回転部材と上ケースとの間隙、および、回転部材と下ケースとの間隙にパッキンを設けてもよい。
【0014】
このように構成することによって、上下のケースと回転部材との間に生じた間隙に沿って、ケース内部の空間に水や塵などが入ることを防止することが出来る。これにより、磁石や可動部材が濡れたり錆びたりして、磁力特性が変化してしまうことを回避することが出来る。また、パッキンは、オイルシールとは異なり、回動軸の軸方向の厚みが薄く、組込みが容易であるため、サイドスタンドの位置検出装置の薄型化や、組立工数削減に伴うコスト削減を図ることが出来る。
【0015】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、回転部材の上ケース側と下ケース側に、互いに対向する溝部を設けるとともに、パッキンをこれらの溝部にそれぞれ配置してもよい。
【0016】
このように構成することによって、サイドスタンドと連動して回転部材が回転しても、回転部材の径方向における当該パッキンのずれを抑えることが出来るため、防水や防塵の機能をより高めることが出来る。また、回転部材の表面や裏面にパッキンを配置する場合に比べて、回動軸の軸方向における、装置の更なる薄型化を図ることが出来る。また、溝部を互いに対向しないように設ける場合と比べて、回転部材の径方向における、装置の薄型化も図ることが出来る。
【0017】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、磁気センサの出力信号に基づいてサイドスタンドの位置を判定する判定回路をさらに備えるようにしてもよい。
【0018】
この場合、判定回路は、サイドスタンドの位置の判定結果を外部へ出力するための出力回路を含んでいてもよい。
【0019】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、可動部材は、回転部材に取り付けられる円板部と、円板部の外周に、円板部の径方向に突出するように形成された突出部とを有し、可動部材の突出部は、サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置が設けられたサイドスタンド装置を示した平面図である。
【図2】図1のサイドスタンド装置のA−A’断面図である。
【図3】図1のサイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置に位置する状態を示した平面図である。
【図4】図3のサイドスタンド装置のB−B’断面図である。
【図5】図1のサイドスタンド装置の要部分解斜視図である。
【図6】図5の上下を逆にした場合の要部分解斜視図である。
【図7】回転部材に遮磁板を取り付けた状態を示した斜視図である。
【図8】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図9】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図10】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図11】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図12】磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化を示したグラフである。
【図13】ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
まず、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7およびサイドスタンド装置100の構成について説明する。尚、図1〜図6の内、図1および図3以外の図中においては、後述する車体フレームF,サイドスタンドS,ワイヤハーネス76の図示を省略している。
【0024】
サイドスタンド装置100は、図1や図3に示すように、自動二輪車の車体フレームFに取り付けられている。このサイドスタンド装置100は、サイドスタンドSと、保持部材1と、固定部材2と、回動軸6と、サイドスタンドの位置検出装置7(図5参照)とを備えている。
【0025】
サイドスタンドSは、保持部材1に保持されている。この保持部材1は、サイドスタンドSと連動して回動する回動軸6を介して、固定部材2に回動自在に取り付けられている。固定部材2は、車体フレームFに固定されている。
【0026】
保持部材1の表面1a(サイドスタンドS側の面)には、図5に示すように、U字状の壁部10が形成されている。また、保持部材1の裏面1b(固定部材2側の面)には、図6に示すように、円筒状の大径の凸部11と、この凸部11に連続する円筒状の小径の凸部13とが設けられている。
【0027】
凸部11の内部には、図2に示すように、凹部12が形成されている。また、凸部13の中心部には、凹部12と連通する貫通孔14が設けられている。この貫通孔14には、回動軸6が嵌入されている。
【0028】
固定部材2は、上ケース3と下ケース4から成る上下一対のケースである(図5参照)。保持部材1と上ケース3との間隙は、パッキン86により封止されている(図2参照)。
【0029】
図5に示すように、上ケース3の表面3a(保持部材1側の面)には、円形の凹部31が形成されている。この凹部31の中心部には、貫通孔32が設けられている。また、図6に示すように、上ケース3の裏面3b(下ケース4側の面)には、貫通孔32を囲む円筒状の凸部35と、この凸部35を囲む溝部33と、この溝部33を囲む溝部34とが形成されている。
【0030】
溝部33の溝幅(貫通孔32の径方向の幅)は、溝部34の溝幅よりも大きくなっている。また、溝部33の一部には、矩形状の凹部36が形成されている。
【0031】
溝部34には、上ケース3と下ケース4との間隙を封止するOリング87が嵌入されている(図2参照)。
【0032】
図2や図5に示すように、下ケース4の表面4a(上ケース3側の面)には、第1収容部41と、円形の凹部42が形成されている。
【0033】
第1収容部41は、下ケース4の表面4aに対して略鉛直上方向(上ケース3側の方向)に延びる支持部43によって、当該表面4a上に支持されている。この第1収容部41には、磁石71が収容されている。また、固定部材2の内部において、第1収容部41は、上ケース3の凹部36内に収められている(図2参照)。
【0034】
図2や図6に示すように、下ケース4の裏面4bには、円筒状の凸部49が設けられている。この凸部49の内側は、前述の凹部42(図5参照)となっている。また、凹部42の中心部には、貫通孔44が設けられている。この貫通孔44の孔径と、上ケース3の貫通孔32の孔径は、略同一である(図2参照)。
【0035】
さらに、図5に示すように、凹部42の底面には、貫通孔44を囲む円筒状の凸部46と、この凸部46を囲む溝部45とが形成されている。凸部46と、上ケース3の凸部35とは、径方向の幅が略同一である(図2参照)。
【0036】
図6に示すように、下ケース4の裏面4bには、第2収容部47が設けられている。この第2収容部47には、後述するプリント基板75が収容されている。第2収容部47は、蓋部48(図2参照)によって密閉される。
【0037】
また、第2収容部47は、凸部49の外側面に隣接しており、当該凸部49の径方向に対して接線方向に延びている(図6参照)。表面4a側の第1収容部41(図5参照)は、第2収容部47の一部と対応する位置にある(図2参照)。
【0038】
固定部材2の内部、つまり、上ケース3と下ケース4との間には、回動軸6を保持するとともに、当該回動軸6とともに回転する回転部材5が設けられている(図2参照)。回転部材5の中心部には、貫通孔51が設けられている。この貫通孔51の孔径は、保持部材1に設けられている貫通孔14の孔径と略同一である。
【0039】
図5に示すように、回転部材5の表側(上ケース3側)には、貫通孔51を囲む円筒状の凸部53と、この凸部53を囲む溝部52と、この溝部52を囲む円筒状の凸部54とが形成されている。凸部54は、回転部材5の外縁部を構成する。この凸部54の上端面には、後述する遮磁板73を取り付けるための突起部55が4つ形成されている。
【0040】
図6に示すように、回転部材5の裏側(下ケース4側)には、貫通孔51を囲む円筒状の凸部57と、この凸部57を囲む溝部56と、この溝部56を囲む円筒状の凸部58とが形成されている。なお、表側の凸部53と裏側の凸部57、および、表側の凸部54と裏側の凸部58は、それぞれ連続している(図2参照)。また、表側の溝部52と、裏側の溝部56は、互いに対向している。
【0041】
以上の構成から成る回転部材5において、溝部52と溝部56の溝幅(貫通孔51の径方向の幅)は、略同一である。凸部53と、凸部57の大きさも略同一であり、また、凸部54と、凸部58の大きさも略同一である。
【0042】
このように、回転部材5では、表側と裏側の両面に、溝部52,56が互いに対向して形成されている。このため、貫通孔51を挟んだ回転部材5の左右の断面は、略H字状になっている(図2参照)。
【0043】
上記構造の回転部材5は、図2に示すように、溝部52と上ケース3の凸部35とを嵌合させるとともに、溝部56と下ケース4の凸部46とを嵌合させることにより、固定部材2の内部に収容されている。また、本実施形態のサイドスタンド装置100では、上ケース3と回転部材5との間隙を封止するために、溝部52と凸部35との間にパッキン81が設けられている。同様に、回転部材5と下ケース4との間隙を封止するために、溝部56と凸部46との間にパッキン82が設けられている。なお、図2および図4における破線矢印Lは、後述する水や塵などの浸入経路を表している。
【0044】
回動軸6は、円筒状に形成されており、外径の長さが異なる円筒部61、62を有する。詳しくは、円筒部61の外径は、円筒部62の外径よりも短く、保持部材1の貫通孔14の孔径や、回転部材5の貫通孔51の孔径よりも僅かに短い。円筒部62の外径は、貫通孔14の孔径や貫通孔51の孔径よりも長く、下ケース4の貫通孔44の孔径よりも若干長い。
【0045】
この回動軸6は、図2に示すように、保持部材1の貫通孔14および回転部材5の貫通孔51に嵌入されている。これにより、保持部材1および回転部材5は、回動軸6に連結され、回動軸6とともに回動可能な状態で固定部材2に取り付けられている。また、回動軸6と下ケース4との間隙は、パッキン88により封止されている。
【0046】
本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7(図5参照)は、固定部材2の内部に設けられており、磁石71と、ホールIC72と、遮磁板73と、判定回路74とを含んでいる。なお、ホールIC72は、本発明の「磁気センサ」の一例であり、遮磁板73は、本発明の「可動部材」の一例である。
【0047】
磁石71は、前述したように、下ケース4の第1収容部41に収容されている。ホールIC72は、磁石71と対向する位置に配置されるように、プリント基板75に取り付けられている。このホールIC72は、検出される磁界T(図8(b),図9(b)参照)の強度に応じてL(Low)レベルまたはH(High)レベルの信号を判定回路74に出力する。
【0048】
遮磁板73は、鉄などの強磁性体からなる。この遮磁板73は、図5に示すように、取付孔73aが形成された円板部73bと、円板部73bの外周に、円板部73bの径方向に突出するように形成された突出部73cとを有する。
【0049】
取付孔73aの孔径は、回転部材5の貫通孔51の外径よりも長く、凸部54の内径と略同一の長さとなっている。また、取付孔73aには、凸部54の突起部55に対応する切欠部73dが4つ形成されている。
【0050】
切欠部73dは、突起部55よりも僅かに大きい形状となっている。そして、図7に示すように、回転部材5の突起部55に、取付孔73aの切欠部73dが嵌め込まれることにより、遮磁板73は、回転部材5とともに回動可能な状態で、当該回転部材5に取り付けられている。よって、遮磁板73は、回転部材5に嵌入されている回動軸6とともに回動可能となっている。
【0051】
判定回路74(図5参照)は、プリント基板75に形成されている。この判定回路74は、ホールIC72の出力信号に基づいてサイドスタンドSの位置を判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。なお、判定結果は、判定回路74に含まれる出力回路77から、プリント基板75に接続されるワイヤハーネス76(図1参照)を介して、自動二輪車の制御部に出力される。
【0052】
ホールIC72や判定回路74を有するプリント基板75は、前述したように、下ケース4の第2収容部47に収納されており、蓋部48によって密閉されている(図2参照)。また、ワイヤハーネス76の一部は、第2収容部47に形成された開口部(図示省略)より外部に露出している(図1参照)。
【0053】
サイドスタンド装置100では、サイドスタンドSが起立位置(図1参照)と収納位置(図3参照)との間において回動可能に設けられている。ここで、起立位置とは、サイドスタンドSが自動二輪車に対して下方を向くような位置であり、自動二輪車の駐車時に、サイドスタンドSが地面と接触することにより、自動二輪車が倒れないように支持する位置である。また、収納位置とは、サイドスタンドSが自動二輪車に対して後方を向くような位置であり、自動二輪車の走行時に、サイドスタンドSが地面と接触しないように、起立位置から退避した位置である。なお、サイドスタンドSは、付勢部材(図示省略)により起立位置側または収納位置側に付勢されており、起立位置または収納位置に位置する。
【0054】
次に、図1〜図11を参照して、本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7およびサイドスタンド装置100の動作について説明する。
【0055】
(起立位置)
まず、図1および図8(a)に示すように、サイドスタンドSが起立位置にある場合には、図8(a),(b)に示すように、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに位置している(図2の状態)。ここで、所定領域Rは、磁石71とホールIC72との間で発生する磁界T(図8(b)参照)によって形成される領域である。図8(a)の状態では、所定領域Rにおいて、遮磁板73の突出部73cにより、磁石71による磁界TからホールIC72が遮蔽されている。これにより、ホールIC72は、判定回路74(図5参照)にLレベルの信号を出力している。
【0056】
このとき、判定回路74は、ホールIC72からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンドSが起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を、出力回路77から自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。そして、自動二輪車では、サイドスタンドSが起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。なお、起立位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約15度前方(図8(a)の矢印C方向)に傾斜した位置である。
【0057】
(起立位置→収納位置)
次に、図8(a)に示した起立位置から、サイドスタンドSがA方向に回動した場合には、保持部材1、回動軸6、および遮磁板73もサイドスタンドSの回動動作に伴ってA方向に回動する。そして、サイドスタンドSが収納位置まで回動する過程において、図9(a),(b)に示すように、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rから退避する。このため、遮磁板73の突出部73cが所定領域R以外の領域に位置することにより、遮磁板73の突出部73cによる遮蔽状態が解除され、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が大きくなる。
【0058】
そして、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が所定の値よりも大きくなった場合には、ホールIC72から出力される信号がLレベルからHレベルに切り替えられる。このとき、判定回路74(図5参照)は、ホールIC72からHレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンドSが収納位置にあると判定するとともに、その判定結果を、出力回路77から自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。なお、この出力信号がLレベルからHレベルに切り替えられる位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約60度後方(図9(a)の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0059】
その後、図3および図10に示すように、サイドスタンドSが収納位置まで回動する(図4の状態)。このとき、自動二輪車では、サイドスタンドSが収納位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が可能となり、走行可能な状態になる。なお、収納位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約90度後方(図9(a)の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0060】
(収納位置→起立位置)
次に、図10に示した収納位置から、サイドスタンドSがB方向に回動した場合には、保持部材1、回動軸6、および遮磁板73もサイドスタンドSの回動動作に伴ってB方向に回動する。そして、サイドスタンドSが起立位置まで回動する過程において、図11に示すように、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに進入する。このため、遮磁板73の突出部73cにより、磁石71による磁界TからホールIC72が遮蔽され、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が小さくなる(図8(b)参照)。
【0061】
そして、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が所定の値よりも小さくなった場合には、ホールIC72から出力される信号がHレベルからLレベルに切り替えられる。なお、この所定の値は、ホールIC72の特性のヒステリシスに起因して、信号がLレベルからHレベルに切り替えられる際の所定の値とは異なる。したがって、この出力信号がHレベルからLレベルに切り替えられる位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約30度後方(図11の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0062】
このとき、判定回路74(図5参照)は、ホールIC72からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンドSが起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を、出力回路77から自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。その後、図1および図8(a)に示すように、サイドスタンドSが起立位置まで回動する。このとき、自動二輪車では、サイドスタンドSが起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。
【0063】
本実施形態では、上記のように、サイドスタンドSの回動動作に伴って回動する遮磁板73の突出部73cが、磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに位置するか否かにより、磁石71による磁界TからホールIC72を遮蔽するか否かを切り替えるようにしている。このため、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石71の磁力にばらつきがある場合にも、ホールIC72の出力信号が切り替わる際のサイドスタンドSの検出位置(検出角度)にばらつきが発生するのを抑制することができる。すなわち、サイドスタンドSの位置の検出誤差を小さくすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、サイドスタンドSが起立位置にあるときに、磁石71とホールIC72との間に遮磁板73の突出部73cが介在しており、ホールIC72が「Lレベル」の信号を出力する。このため、サイドスタンドSが振動することに起因して、磁石71とホールIC72との距離が離れた場合にも、ホールIC72が引き続き「Lレベル」の信号を出力する。したがって、振動に起因してサイドスタンドSの位置が収納位置であると誤判定されることがない。これによって、サイドスタンドSが起立した状態で自動二輪車が走行可能になるのを防止し、安全を確保することができる。なお、本実施形態では、サイドスタンドSが収納位置にあるときに、振動に起因して、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が低下することにより、ホールIC72がLレベルの信号を出力した場合には、判定回路74がノイズとして除去すればよい。
【0065】
また、本実施形態では、遮磁板73の突出部73cの位置および円周方向における長さを調整することにより、容易に、ホールIC72の出力信号が切り替わる際のサイドスタンドSの位置(検出角度)を調整することができる。したがって、検出角度の異なる種々の二輪車に本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7を容易に適用することができる。
【0066】
次に、上記した本実施形態の効果を確認するために行った比較実験について説明する。この実験では、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化と、ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化とを測定した。これらの測定は、それぞれ、磁力の異なる3つの磁石を用いて、3つの磁石毎に測定した。そして、それらの測定結果を図12および図13に示した。なお、このホールICの出力信号がHレベルからLレベルに切り替わる磁束密度Brpは4mTである。
【0067】
磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合(本発明)には、図12に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E1が約1mmであった。一方、ホールICに対して磁石が移動する場合(比較例)には、図13に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E2が約2mmであった。
【0068】
したがって、磁石の磁力にばらつきがある場合において、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合には、ホールICに対して磁石が移動する場合に比べて、ホールICの出力信号が切り替わる際の移動量にばらつきが発生するのを抑制できることが判明した。
【0069】
また、本実施形態では、図2および図4に示したように、回転部材5に互いに対向する溝部52,56を設けて、回転部材5の左右の断面が略H字状となるようにしている。そして、回転部材5の表側の溝部52に上ケース3の凸部35を嵌合させ、裏側の溝部56に下ケース4の凸部46を嵌合させた構造としている。このような嵌合構造により、上ケース3と下ケース4とで構成される固定部材2の上下方向(回動軸6の軸方向)の厚みを薄くすることができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、回転部材5の各溝部52,56にそれぞれパッキン81,82を設けて、上ケース3と回転部材5との間隙、および、回転部材5と下ケース4との間隙を封止している。このため、例えば、保持部材1や回転部材5の回動に伴ってパッキン86やパッキン88が損耗等したときに、水や塵などが、図2および図4の破線矢印Lに沿って、保持部材1と上ケース3との間隙や、回動軸6と下ケース4との間隙に浸入した場合でも、パッキン81,82によって、ケース内部の空間への浸入を防止することが出来る。
【0071】
これにより、磁石71や遮磁板73が濡れたり錆びたりして、磁力特性が変化してしまうことを回避することが出来る。特に、溝部52,56にパッキン81,82を配置することで、サイドスタンドSと連動して回転部材5が回転しても、回転部材5の径方向における当該パッキンのずれを抑えることが出来る。したがって、防水や防塵の機能をより高めることが出来る。
【0072】
また、パッキン81,82は、オイルシールとは異なり、回動軸6の軸方向の厚みが薄く、組込みが容易であるため、サイドスタンドの位置検出装置7の薄型化や、組立工数削減に伴うコスト削減を図ることが出来る。
【0073】
さらに、回転部材5の表面や裏面にパッキン81,82を配置する場合と比べて、回動軸6の軸方向における、装置の更なる薄型化を図ることが出来る。また、溝部52,56を互いに対向しないように設ける場合と比べて、回転部材5の径方向における、装置の薄型化を図ることが出来る。
【0074】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに位置し、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが所定領域Rから退避した領域に位置する例を示した。しかし、これに限らず、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが所定領域Rに位置し、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが所定領域Rから退避した領域に位置するようにしてもよい。すなわち、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、磁石71による磁界TからホールIC72が遮蔽され、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、遮蔽状態が解除されるようにしてもよいし、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、ホールIC72が遮蔽され、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、遮蔽状態が解除されるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、判定回路74がサイドスタンドの位置検出装置7に設けられる例を示したが、これに限らず、判定回路が自動二輪車の制御部に設けられていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、磁気センサの一例としてホールIC72を示したが、これに限らず、磁気抵抗素子やリードスイッチなどのその他の磁気センサを用いてもよい。
【0077】
また、パッキン81,82の形状、材質等は、特定のものに限定されない。例えば、パッキン81,82の形状は、円形ではなく多角形にしてもよい。また、パッキン81,82の表面に、用途に応じて、凹凸等の加工を施してもよい。さらに、パッキン81,82の材質は、ゴムやエラストマー等の弾性体や、樹脂、金属など多様な材質から選択することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
2 固定部材
3 上ケース
4 下ケース
5 回転部材
52,56 溝部
6 回動軸
7 サイドスタンドの位置検出装置
71 磁石
72 ホールIC(磁気センサ)
73 遮磁板(可動部材)
73b 円板部
73c 突出部
74 判定回路
77 出力回路
81,82 パッキン
S サイドスタンド
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車に回動可能に設けられたサイドスタンドの位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二輪車のサイドスタンドは、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車のブラケットに取り付けられている。サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行してしまうと、サイドスタンドは二輪車の走行の妨げとなり、最悪の場合は二輪車の転倒の原因となってしまう。そこで、サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行しないようにするために、サイドスタンドの位置を検出し、その検出結果に応じて走行の許可・禁止の制御を行う装置が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、コイルと、コイルのインダクタンスの変化に基づいてスタンドの向きを検出する検出回路とを備えたロータリセンサが開示されている。
このロータリセンサでは、ロータがスタンドとともに回動することにより、ロータとコイルとの距離が変化する。これによって、コイルのインダクタンスが変化する。そして、二輪車では、コイルのインダクタンスの変化に基づいて、スタンドが起立状態か否かを判定する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたロータリセンサでは、スタンドが静止しているときは、コイルのインダクタンスが変化しないため、スタンドが起立状態か否かを常時検出することが出来ない。
【0005】
また、特許文献2には、磁石板と、磁石板と対向する位置に配置されるホールICとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がサイドスタンドとともに回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。これによって、ホールICの出力信号のオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、ホールICの出力信号のオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がホールICに対して相対的に回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。そのため、磁石板の磁力のばらつきに起因して、ホールICの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生しやすい。すなわち、磁石板の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生しやすい。なお、上記した磁力のばらつきには、磁石板の作製時に発生するばらつきや、温度に起因して発生するばらつきが含まれる。
【0007】
さらに、特許文献3には、磁石面を有する回転部材と、磁石面と対向する位置に配置されるリードスイッチとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、回転部材がサイドスタンドとともに回動することにより、リードスイッチと対向する磁石面の極性が切り替えられる。これによって、リードスイッチのオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、リードスイッチのオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0008】
しかしながら、上記特許文献3のサイドスタンドの位置検出装置においても、特許文献2と同様の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−163093号公報
【特許文献2】特開2008−130314号公報
【特許文献3】特開2004−355903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のサイドスタンドの位置検出装置は、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材とを備える。そして、上ケースと下ケースとから成る固定部材の内部に、磁石と、磁気センサと、可動部材を配置している。また、上ケースと下ケースとの間に挟持され、かつ、サイドスタンドの回動動作に連動して回動する回動軸に連結された回転部材に、可動部材を取り付けている。可動部材は、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置することにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽し、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、所定領域から退避した領域に位置する。
【0012】
このように構成することによって、サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材が所定領域に位置するか否かにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽するか否かが切り替えられる。したがって、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石の磁力にばらつきがある場合にも、磁気センサの出力信号が切り替わる際のサイドスタンドの検出位置にばらつきが発生するのを抑制し、検出誤差を小さくすることができる。
【0013】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、回転部材と上ケースとの間隙、および、回転部材と下ケースとの間隙にパッキンを設けてもよい。
【0014】
このように構成することによって、上下のケースと回転部材との間に生じた間隙に沿って、ケース内部の空間に水や塵などが入ることを防止することが出来る。これにより、磁石や可動部材が濡れたり錆びたりして、磁力特性が変化してしまうことを回避することが出来る。また、パッキンは、オイルシールとは異なり、回動軸の軸方向の厚みが薄く、組込みが容易であるため、サイドスタンドの位置検出装置の薄型化や、組立工数削減に伴うコスト削減を図ることが出来る。
【0015】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、回転部材の上ケース側と下ケース側に、互いに対向する溝部を設けるとともに、パッキンをこれらの溝部にそれぞれ配置してもよい。
【0016】
このように構成することによって、サイドスタンドと連動して回転部材が回転しても、回転部材の径方向における当該パッキンのずれを抑えることが出来るため、防水や防塵の機能をより高めることが出来る。また、回転部材の表面や裏面にパッキンを配置する場合に比べて、回動軸の軸方向における、装置の更なる薄型化を図ることが出来る。また、溝部を互いに対向しないように設ける場合と比べて、回転部材の径方向における、装置の薄型化も図ることが出来る。
【0017】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、磁気センサの出力信号に基づいてサイドスタンドの位置を判定する判定回路をさらに備えるようにしてもよい。
【0018】
この場合、判定回路は、サイドスタンドの位置の判定結果を外部へ出力するための出力回路を含んでいてもよい。
【0019】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、可動部材は、回転部材に取り付けられる円板部と、円板部の外周に、円板部の径方向に突出するように形成された突出部とを有し、可動部材の突出部は、サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置が設けられたサイドスタンド装置を示した平面図である。
【図2】図1のサイドスタンド装置のA−A’断面図である。
【図3】図1のサイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置に位置する状態を示した平面図である。
【図4】図3のサイドスタンド装置のB−B’断面図である。
【図5】図1のサイドスタンド装置の要部分解斜視図である。
【図6】図5の上下を逆にした場合の要部分解斜視図である。
【図7】回転部材に遮磁板を取り付けた状態を示した斜視図である。
【図8】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図9】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図10】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図11】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図12】磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化を示したグラフである。
【図13】ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
まず、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7およびサイドスタンド装置100の構成について説明する。尚、図1〜図6の内、図1および図3以外の図中においては、後述する車体フレームF,サイドスタンドS,ワイヤハーネス76の図示を省略している。
【0024】
サイドスタンド装置100は、図1や図3に示すように、自動二輪車の車体フレームFに取り付けられている。このサイドスタンド装置100は、サイドスタンドSと、保持部材1と、固定部材2と、回動軸6と、サイドスタンドの位置検出装置7(図5参照)とを備えている。
【0025】
サイドスタンドSは、保持部材1に保持されている。この保持部材1は、サイドスタンドSと連動して回動する回動軸6を介して、固定部材2に回動自在に取り付けられている。固定部材2は、車体フレームFに固定されている。
【0026】
保持部材1の表面1a(サイドスタンドS側の面)には、図5に示すように、U字状の壁部10が形成されている。また、保持部材1の裏面1b(固定部材2側の面)には、図6に示すように、円筒状の大径の凸部11と、この凸部11に連続する円筒状の小径の凸部13とが設けられている。
【0027】
凸部11の内部には、図2に示すように、凹部12が形成されている。また、凸部13の中心部には、凹部12と連通する貫通孔14が設けられている。この貫通孔14には、回動軸6が嵌入されている。
【0028】
固定部材2は、上ケース3と下ケース4から成る上下一対のケースである(図5参照)。保持部材1と上ケース3との間隙は、パッキン86により封止されている(図2参照)。
【0029】
図5に示すように、上ケース3の表面3a(保持部材1側の面)には、円形の凹部31が形成されている。この凹部31の中心部には、貫通孔32が設けられている。また、図6に示すように、上ケース3の裏面3b(下ケース4側の面)には、貫通孔32を囲む円筒状の凸部35と、この凸部35を囲む溝部33と、この溝部33を囲む溝部34とが形成されている。
【0030】
溝部33の溝幅(貫通孔32の径方向の幅)は、溝部34の溝幅よりも大きくなっている。また、溝部33の一部には、矩形状の凹部36が形成されている。
【0031】
溝部34には、上ケース3と下ケース4との間隙を封止するOリング87が嵌入されている(図2参照)。
【0032】
図2や図5に示すように、下ケース4の表面4a(上ケース3側の面)には、第1収容部41と、円形の凹部42が形成されている。
【0033】
第1収容部41は、下ケース4の表面4aに対して略鉛直上方向(上ケース3側の方向)に延びる支持部43によって、当該表面4a上に支持されている。この第1収容部41には、磁石71が収容されている。また、固定部材2の内部において、第1収容部41は、上ケース3の凹部36内に収められている(図2参照)。
【0034】
図2や図6に示すように、下ケース4の裏面4bには、円筒状の凸部49が設けられている。この凸部49の内側は、前述の凹部42(図5参照)となっている。また、凹部42の中心部には、貫通孔44が設けられている。この貫通孔44の孔径と、上ケース3の貫通孔32の孔径は、略同一である(図2参照)。
【0035】
さらに、図5に示すように、凹部42の底面には、貫通孔44を囲む円筒状の凸部46と、この凸部46を囲む溝部45とが形成されている。凸部46と、上ケース3の凸部35とは、径方向の幅が略同一である(図2参照)。
【0036】
図6に示すように、下ケース4の裏面4bには、第2収容部47が設けられている。この第2収容部47には、後述するプリント基板75が収容されている。第2収容部47は、蓋部48(図2参照)によって密閉される。
【0037】
また、第2収容部47は、凸部49の外側面に隣接しており、当該凸部49の径方向に対して接線方向に延びている(図6参照)。表面4a側の第1収容部41(図5参照)は、第2収容部47の一部と対応する位置にある(図2参照)。
【0038】
固定部材2の内部、つまり、上ケース3と下ケース4との間には、回動軸6を保持するとともに、当該回動軸6とともに回転する回転部材5が設けられている(図2参照)。回転部材5の中心部には、貫通孔51が設けられている。この貫通孔51の孔径は、保持部材1に設けられている貫通孔14の孔径と略同一である。
【0039】
図5に示すように、回転部材5の表側(上ケース3側)には、貫通孔51を囲む円筒状の凸部53と、この凸部53を囲む溝部52と、この溝部52を囲む円筒状の凸部54とが形成されている。凸部54は、回転部材5の外縁部を構成する。この凸部54の上端面には、後述する遮磁板73を取り付けるための突起部55が4つ形成されている。
【0040】
図6に示すように、回転部材5の裏側(下ケース4側)には、貫通孔51を囲む円筒状の凸部57と、この凸部57を囲む溝部56と、この溝部56を囲む円筒状の凸部58とが形成されている。なお、表側の凸部53と裏側の凸部57、および、表側の凸部54と裏側の凸部58は、それぞれ連続している(図2参照)。また、表側の溝部52と、裏側の溝部56は、互いに対向している。
【0041】
以上の構成から成る回転部材5において、溝部52と溝部56の溝幅(貫通孔51の径方向の幅)は、略同一である。凸部53と、凸部57の大きさも略同一であり、また、凸部54と、凸部58の大きさも略同一である。
【0042】
このように、回転部材5では、表側と裏側の両面に、溝部52,56が互いに対向して形成されている。このため、貫通孔51を挟んだ回転部材5の左右の断面は、略H字状になっている(図2参照)。
【0043】
上記構造の回転部材5は、図2に示すように、溝部52と上ケース3の凸部35とを嵌合させるとともに、溝部56と下ケース4の凸部46とを嵌合させることにより、固定部材2の内部に収容されている。また、本実施形態のサイドスタンド装置100では、上ケース3と回転部材5との間隙を封止するために、溝部52と凸部35との間にパッキン81が設けられている。同様に、回転部材5と下ケース4との間隙を封止するために、溝部56と凸部46との間にパッキン82が設けられている。なお、図2および図4における破線矢印Lは、後述する水や塵などの浸入経路を表している。
【0044】
回動軸6は、円筒状に形成されており、外径の長さが異なる円筒部61、62を有する。詳しくは、円筒部61の外径は、円筒部62の外径よりも短く、保持部材1の貫通孔14の孔径や、回転部材5の貫通孔51の孔径よりも僅かに短い。円筒部62の外径は、貫通孔14の孔径や貫通孔51の孔径よりも長く、下ケース4の貫通孔44の孔径よりも若干長い。
【0045】
この回動軸6は、図2に示すように、保持部材1の貫通孔14および回転部材5の貫通孔51に嵌入されている。これにより、保持部材1および回転部材5は、回動軸6に連結され、回動軸6とともに回動可能な状態で固定部材2に取り付けられている。また、回動軸6と下ケース4との間隙は、パッキン88により封止されている。
【0046】
本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7(図5参照)は、固定部材2の内部に設けられており、磁石71と、ホールIC72と、遮磁板73と、判定回路74とを含んでいる。なお、ホールIC72は、本発明の「磁気センサ」の一例であり、遮磁板73は、本発明の「可動部材」の一例である。
【0047】
磁石71は、前述したように、下ケース4の第1収容部41に収容されている。ホールIC72は、磁石71と対向する位置に配置されるように、プリント基板75に取り付けられている。このホールIC72は、検出される磁界T(図8(b),図9(b)参照)の強度に応じてL(Low)レベルまたはH(High)レベルの信号を判定回路74に出力する。
【0048】
遮磁板73は、鉄などの強磁性体からなる。この遮磁板73は、図5に示すように、取付孔73aが形成された円板部73bと、円板部73bの外周に、円板部73bの径方向に突出するように形成された突出部73cとを有する。
【0049】
取付孔73aの孔径は、回転部材5の貫通孔51の外径よりも長く、凸部54の内径と略同一の長さとなっている。また、取付孔73aには、凸部54の突起部55に対応する切欠部73dが4つ形成されている。
【0050】
切欠部73dは、突起部55よりも僅かに大きい形状となっている。そして、図7に示すように、回転部材5の突起部55に、取付孔73aの切欠部73dが嵌め込まれることにより、遮磁板73は、回転部材5とともに回動可能な状態で、当該回転部材5に取り付けられている。よって、遮磁板73は、回転部材5に嵌入されている回動軸6とともに回動可能となっている。
【0051】
判定回路74(図5参照)は、プリント基板75に形成されている。この判定回路74は、ホールIC72の出力信号に基づいてサイドスタンドSの位置を判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。なお、判定結果は、判定回路74に含まれる出力回路77から、プリント基板75に接続されるワイヤハーネス76(図1参照)を介して、自動二輪車の制御部に出力される。
【0052】
ホールIC72や判定回路74を有するプリント基板75は、前述したように、下ケース4の第2収容部47に収納されており、蓋部48によって密閉されている(図2参照)。また、ワイヤハーネス76の一部は、第2収容部47に形成された開口部(図示省略)より外部に露出している(図1参照)。
【0053】
サイドスタンド装置100では、サイドスタンドSが起立位置(図1参照)と収納位置(図3参照)との間において回動可能に設けられている。ここで、起立位置とは、サイドスタンドSが自動二輪車に対して下方を向くような位置であり、自動二輪車の駐車時に、サイドスタンドSが地面と接触することにより、自動二輪車が倒れないように支持する位置である。また、収納位置とは、サイドスタンドSが自動二輪車に対して後方を向くような位置であり、自動二輪車の走行時に、サイドスタンドSが地面と接触しないように、起立位置から退避した位置である。なお、サイドスタンドSは、付勢部材(図示省略)により起立位置側または収納位置側に付勢されており、起立位置または収納位置に位置する。
【0054】
次に、図1〜図11を参照して、本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7およびサイドスタンド装置100の動作について説明する。
【0055】
(起立位置)
まず、図1および図8(a)に示すように、サイドスタンドSが起立位置にある場合には、図8(a),(b)に示すように、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに位置している(図2の状態)。ここで、所定領域Rは、磁石71とホールIC72との間で発生する磁界T(図8(b)参照)によって形成される領域である。図8(a)の状態では、所定領域Rにおいて、遮磁板73の突出部73cにより、磁石71による磁界TからホールIC72が遮蔽されている。これにより、ホールIC72は、判定回路74(図5参照)にLレベルの信号を出力している。
【0056】
このとき、判定回路74は、ホールIC72からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンドSが起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を、出力回路77から自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。そして、自動二輪車では、サイドスタンドSが起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。なお、起立位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約15度前方(図8(a)の矢印C方向)に傾斜した位置である。
【0057】
(起立位置→収納位置)
次に、図8(a)に示した起立位置から、サイドスタンドSがA方向に回動した場合には、保持部材1、回動軸6、および遮磁板73もサイドスタンドSの回動動作に伴ってA方向に回動する。そして、サイドスタンドSが収納位置まで回動する過程において、図9(a),(b)に示すように、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rから退避する。このため、遮磁板73の突出部73cが所定領域R以外の領域に位置することにより、遮磁板73の突出部73cによる遮蔽状態が解除され、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が大きくなる。
【0058】
そして、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が所定の値よりも大きくなった場合には、ホールIC72から出力される信号がLレベルからHレベルに切り替えられる。このとき、判定回路74(図5参照)は、ホールIC72からHレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンドSが収納位置にあると判定するとともに、その判定結果を、出力回路77から自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。なお、この出力信号がLレベルからHレベルに切り替えられる位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約60度後方(図9(a)の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0059】
その後、図3および図10に示すように、サイドスタンドSが収納位置まで回動する(図4の状態)。このとき、自動二輪車では、サイドスタンドSが収納位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が可能となり、走行可能な状態になる。なお、収納位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約90度後方(図9(a)の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0060】
(収納位置→起立位置)
次に、図10に示した収納位置から、サイドスタンドSがB方向に回動した場合には、保持部材1、回動軸6、および遮磁板73もサイドスタンドSの回動動作に伴ってB方向に回動する。そして、サイドスタンドSが起立位置まで回動する過程において、図11に示すように、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに進入する。このため、遮磁板73の突出部73cにより、磁石71による磁界TからホールIC72が遮蔽され、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が小さくなる(図8(b)参照)。
【0061】
そして、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が所定の値よりも小さくなった場合には、ホールIC72から出力される信号がHレベルからLレベルに切り替えられる。なお、この所定の値は、ホールIC72の特性のヒステリシスに起因して、信号がLレベルからHレベルに切り替えられる際の所定の値とは異なる。したがって、この出力信号がHレベルからLレベルに切り替えられる位置は、たとえば、回動軸6を中心にして鉛直方向に対して約30度後方(図11の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0062】
このとき、判定回路74(図5参照)は、ホールIC72からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンドSが起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を、出力回路77から自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。その後、図1および図8(a)に示すように、サイドスタンドSが起立位置まで回動する。このとき、自動二輪車では、サイドスタンドSが起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。
【0063】
本実施形態では、上記のように、サイドスタンドSの回動動作に伴って回動する遮磁板73の突出部73cが、磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに位置するか否かにより、磁石71による磁界TからホールIC72を遮蔽するか否かを切り替えるようにしている。このため、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石71の磁力にばらつきがある場合にも、ホールIC72の出力信号が切り替わる際のサイドスタンドSの検出位置(検出角度)にばらつきが発生するのを抑制することができる。すなわち、サイドスタンドSの位置の検出誤差を小さくすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、サイドスタンドSが起立位置にあるときに、磁石71とホールIC72との間に遮磁板73の突出部73cが介在しており、ホールIC72が「Lレベル」の信号を出力する。このため、サイドスタンドSが振動することに起因して、磁石71とホールIC72との距離が離れた場合にも、ホールIC72が引き続き「Lレベル」の信号を出力する。したがって、振動に起因してサイドスタンドSの位置が収納位置であると誤判定されることがない。これによって、サイドスタンドSが起立した状態で自動二輪車が走行可能になるのを防止し、安全を確保することができる。なお、本実施形態では、サイドスタンドSが収納位置にあるときに、振動に起因して、ホールIC72により検出される磁界Tの強度が低下することにより、ホールIC72がLレベルの信号を出力した場合には、判定回路74がノイズとして除去すればよい。
【0065】
また、本実施形態では、遮磁板73の突出部73cの位置および円周方向における長さを調整することにより、容易に、ホールIC72の出力信号が切り替わる際のサイドスタンドSの位置(検出角度)を調整することができる。したがって、検出角度の異なる種々の二輪車に本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置7を容易に適用することができる。
【0066】
次に、上記した本実施形態の効果を確認するために行った比較実験について説明する。この実験では、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化と、ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化とを測定した。これらの測定は、それぞれ、磁力の異なる3つの磁石を用いて、3つの磁石毎に測定した。そして、それらの測定結果を図12および図13に示した。なお、このホールICの出力信号がHレベルからLレベルに切り替わる磁束密度Brpは4mTである。
【0067】
磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合(本発明)には、図12に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E1が約1mmであった。一方、ホールICに対して磁石が移動する場合(比較例)には、図13に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E2が約2mmであった。
【0068】
したがって、磁石の磁力にばらつきがある場合において、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合には、ホールICに対して磁石が移動する場合に比べて、ホールICの出力信号が切り替わる際の移動量にばらつきが発生するのを抑制できることが判明した。
【0069】
また、本実施形態では、図2および図4に示したように、回転部材5に互いに対向する溝部52,56を設けて、回転部材5の左右の断面が略H字状となるようにしている。そして、回転部材5の表側の溝部52に上ケース3の凸部35を嵌合させ、裏側の溝部56に下ケース4の凸部46を嵌合させた構造としている。このような嵌合構造により、上ケース3と下ケース4とで構成される固定部材2の上下方向(回動軸6の軸方向)の厚みを薄くすることができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、回転部材5の各溝部52,56にそれぞれパッキン81,82を設けて、上ケース3と回転部材5との間隙、および、回転部材5と下ケース4との間隙を封止している。このため、例えば、保持部材1や回転部材5の回動に伴ってパッキン86やパッキン88が損耗等したときに、水や塵などが、図2および図4の破線矢印Lに沿って、保持部材1と上ケース3との間隙や、回動軸6と下ケース4との間隙に浸入した場合でも、パッキン81,82によって、ケース内部の空間への浸入を防止することが出来る。
【0071】
これにより、磁石71や遮磁板73が濡れたり錆びたりして、磁力特性が変化してしまうことを回避することが出来る。特に、溝部52,56にパッキン81,82を配置することで、サイドスタンドSと連動して回転部材5が回転しても、回転部材5の径方向における当該パッキンのずれを抑えることが出来る。したがって、防水や防塵の機能をより高めることが出来る。
【0072】
また、パッキン81,82は、オイルシールとは異なり、回動軸6の軸方向の厚みが薄く、組込みが容易であるため、サイドスタンドの位置検出装置7の薄型化や、組立工数削減に伴うコスト削減を図ることが出来る。
【0073】
さらに、回転部材5の表面や裏面にパッキン81,82を配置する場合と比べて、回動軸6の軸方向における、装置の更なる薄型化を図ることが出来る。また、溝部52,56を互いに対向しないように設ける場合と比べて、回転部材5の径方向における、装置の薄型化を図ることが出来る。
【0074】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが磁石71とホールIC72との間の所定領域Rに位置し、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが所定領域Rから退避した領域に位置する例を示した。しかし、これに限らず、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが所定領域Rに位置し、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、遮磁板73の突出部73cが所定領域Rから退避した領域に位置するようにしてもよい。すなわち、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、磁石71による磁界TからホールIC72が遮蔽され、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、遮蔽状態が解除されるようにしてもよいし、サイドスタンドSが収納位置にある場合に、ホールIC72が遮蔽され、サイドスタンドSが起立位置にある場合に、遮蔽状態が解除されるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、判定回路74がサイドスタンドの位置検出装置7に設けられる例を示したが、これに限らず、判定回路が自動二輪車の制御部に設けられていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、磁気センサの一例としてホールIC72を示したが、これに限らず、磁気抵抗素子やリードスイッチなどのその他の磁気センサを用いてもよい。
【0077】
また、パッキン81,82の形状、材質等は、特定のものに限定されない。例えば、パッキン81,82の形状は、円形ではなく多角形にしてもよい。また、パッキン81,82の表面に、用途に応じて、凹凸等の加工を施してもよい。さらに、パッキン81,82の材質は、ゴムやエラストマー等の弾性体や、樹脂、金属など多様な材質から選択することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
2 固定部材
3 上ケース
4 下ケース
5 回転部材
52,56 溝部
6 回動軸
7 サイドスタンドの位置検出装置
71 磁石
72 ホールIC(磁気センサ)
73 遮磁板(可動部材)
73b 円板部
73c 突出部
74 判定回路
77 出力回路
81,82 パッキン
S サイドスタンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材と、を備え、
上ケースと下ケースとから成る固定部材の内部に、前記磁石と、前記磁気センサと、前記可動部材を配置し、
前記上ケースと前記下ケースとの間に挟持され、かつ、前記サイドスタンドの回動動作に連動して回動する回動軸に連結された回転部材に、前記可動部材を取り付け、
前記可動部材は、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記磁石と前記磁気センサとの間の所定領域に位置することにより、前記磁石による磁界から前記磁気センサを遮蔽し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記所定領域から退避した領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記回転部材と前記上ケースとの間隙、および、前記回転部材と前記下ケースとの間隙にパッキンを設けた、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記回転部材の前記上ケース側と前記下ケース側に、互いに対向する溝部を設けるとともに、
前記パッキンを前記溝部にそれぞれ配置した、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記磁気センサの出力信号に基づいて前記サイドスタンドの位置を判定する判定回路をさらに備える、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記判定回路は、前記サイドスタンドの位置の判定結果を外部へ出力するための出力回路を含む、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記可動部材は、前記回転部材に取り付けられる円板部と、前記円板部の外周に、前記円板部の径方向に突出するように形成された突出部とを有し、
前記可動部材の突出部は、前記サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、前記所定領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項1】
起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材と、を備え、
上ケースと下ケースとから成る固定部材の内部に、前記磁石と、前記磁気センサと、前記可動部材を配置し、
前記上ケースと前記下ケースとの間に挟持され、かつ、前記サイドスタンドの回動動作に連動して回動する回動軸に連結された回転部材に、前記可動部材を取り付け、
前記可動部材は、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記磁石と前記磁気センサとの間の所定領域に位置することにより、前記磁石による磁界から前記磁気センサを遮蔽し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記所定領域から退避した領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記回転部材と前記上ケースとの間隙、および、前記回転部材と前記下ケースとの間隙にパッキンを設けた、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記回転部材の前記上ケース側と前記下ケース側に、互いに対向する溝部を設けるとともに、
前記パッキンを前記溝部にそれぞれ配置した、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記磁気センサの出力信号に基づいて前記サイドスタンドの位置を判定する判定回路をさらに備える、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記判定回路は、前記サイドスタンドの位置の判定結果を外部へ出力するための出力回路を含む、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記可動部材は、前記回転部材に取り付けられる円板部と、前記円板部の外周に、前記円板部の径方向に突出するように形成された突出部とを有し、
前記可動部材の突出部は、前記サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、前記所定領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−166702(P2012−166702A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29638(P2011−29638)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
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