サイロ用擁壁、サイロ用擁壁の製造方法、及びサイロ用擁壁に用いられる製品ブロック
【課題】サイロを大型化させることができる新たなサイロ用擁壁を提供する。
【解決手段】間口方向及び奥行き方向に、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロック6…を配列する。複数の製品ブロックに鋼棒7を貫通させ、圧縮力がかかるように複数の製品ブロック6…を間口方向及び/又は奥行き方向にナット20で締め付けて複数の製品ブロック6…を一体化させる。
【解決手段】間口方向及び奥行き方向に、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロック6…を配列する。複数の製品ブロックに鋼棒7を貫通させ、圧縮力がかかるように複数の製品ブロック6…を間口方向及び/又は奥行き方向にナット20で締め付けて複数の製品ブロック6…を一体化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、牧草・トウモロコシ等の飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁に関する。
【背景技術】
【0002】
牧草・トウモロコシ等の飼料を醗酵させた上で牛等に食べさせると栄養価値が高くなることが経験的にわかっている。北海道の酪農家はサイロに牧草等を貯蔵し、転圧して牧草等を醗酵させた後、牛等の餌にしている。
【0003】
図12はサイロの一種である従来のサイロ用擁壁を示す。整地された畑には擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロック1…が並べられる。隣接する製品ブロック1…を整列させることができるように、製品ブロック1,1間には図13に示すように接続プレート2があてられ、ボルトで締め付けられている。向かい合う擁壁間には土間コンクリート3が打設される。これらのサイロ用擁壁は農家毎に構築され、そのサイズは大きいものでも間口が7〜8m程度、奥行きが20〜30m程度に設定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年農業全体が変わりはじめている。各農家が牧草を刈り取る機械を保有し、また牧草を貯蔵するサイロを保有していたのでは、機械あるいはサイロの償却が重荷になって経営を圧迫する。このため機械、あるいはサイロを数十の農家で共同化し、サイロの大きさも例えば間口が数十m、奥行きも50m程度の大型にすることが望まれている。
【0005】
サイロを大型にするために、製品ブロック1…をたくさん並べることが考えられる。しかし製品ブロック1…を単に並べただけでは、製品ブロック1…の重量、擁壁間に入れられる牧草の重量等に起因して、地盤が不等沈下し、並べられた複数の製品ブロック1…が波打つおそれがある。
【0006】
サイロが地盤の悪い畑に設置されることが多いこと、またサイロに盛られている飼料から擁壁に加わる荷重はいつも一定ではなく、飼料が盛られているときは荷重が大きく、飼料を取り出したときは荷重がなくなることも地盤が不等沈下を起こす原因となる。
【0007】
地盤の不等沈下により、隣接する製品ブロックの連結部分(接続プレートをあててボルトを締め付けた部分)で、強度が足りなくてコンクリートがせん断破壊したり、ボルトが取れたりしてしまうという問題が生じる。
【0008】
そこで本発明は、サイロを大型化させることができる新たなサイロ用擁壁、サイロ用擁壁の製造方法、及びサイロ用擁壁に用いられる製品ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
上記課題を解決するために本発明者は、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックを配列し、配列した複数の製品ブロックを擁壁の長さ方向に締めつけて一体化させた。
【0011】
すなわち本発明は、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁であって、間口方向及び/又は奥行き方向に配列され、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックと、圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向及び/又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば地盤の弱いところでも大きなサイズのサイロ用擁壁を構築することができる。
【0013】
前記締め付け手段は、間口方向及び/又は奥行き方向に伸び、複数の製品ブロックを貫通する鋼棒と、該鋼棒の両端に螺合し、複数の製品ブロックを締め付けるためのナットとを有してもよい。
【0014】
平面でみた状態において、前記サイロ用擁壁の少なくとも一部をコの字形状に形成できるように、前記複数の製品ブロックは間口方向及び奥行き方向に配列されてもよい。
【0015】
このようにすれば、コの字形状で長さが間口方向及び奥行き方向に長いサイロを構築することができる。
【0016】
前記複数の製品ブロックそれぞれには位置決め凹部が形成され、隣接する前記製品ブロックを整列させることができるように、前記位置決め凹部には位置決めピンが嵌められてもよい。
【0017】
前記複数の製品ブロックは、前記サイロ用擁壁の平面図のコーナ部分に配列される平面図がL字形状の擁壁を有するL型交差ブロック、及び前記サイロ用擁壁の平面図のT字形に交差する部分に配列される平面図がT字形状の擁壁を有するT型交差ブロックを含み、前記L型交差ブロック及び前記T型交差ブロックでは、間口方向に伸びる前記鋼棒の高さと、奥行き方向に伸びる前記鋼棒の高さが異なっていてもよい。
【0018】
この発明によれば、間口方向及び奥行き方向のいずれでも製品ブロックを締め付けることができる。
【0019】
また本発明は、擁壁の長さ方向に複数配列されることによって、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロックであって、前記複数の製品ブロックを擁壁の長さ方向に締め付けて一体化させることができるように、製品ブロックには擁壁の長さ方向に伸びる貫通穴が形成されていることを特徴とする製品ブロックとしてもよい。
【0020】
さらに本発明は、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁の製造方法であって、間口方向又は奥行き方向にサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックを配列する工程と、圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け工程と、を備えることを特徴とするサイロ用擁壁の製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮力がかかるように複数の製品ブロックを間口方向又は奥行き方向に締め付けて複数の製品ブロックを一体化させたので、地盤の弱いところでも大きなサイズのサイロ用擁壁を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下添付図面に基づいて本発明の一実施形態におけるサイロ用擁壁を説明する。
【0023】
図1はサイロ用擁壁の平面図を示す。サイロ用擁壁は数十軒の農家が共同で利用できるように、間口Xが例えば12m程度、奥行きYが例えば50mの長大なコの字形状に形成されたものを複数組合わせて構成される。擁壁の垂直方向の高さは例えば2.7mに設定される。このようなサイロ用擁壁には刈られた牧草等の飼料がトラックで運ばれてくる。サイロ用擁壁に積み込まれた飼料は重機等で転圧され、醗酵した飼料は牛等の餌として再びサイロから運び出される。
【0024】
図2はサイロ用擁壁の基礎図を示す。まず畑等の土を掘削し、砂質土4等で置きかえる。次に擁壁の下部に砂利5を敷き、均しコンクリート8を打設する。均しコンクリート8の上にサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロック6…を並べる。対向する擁壁と擁壁の間には砂利9が敷かれ、土間コンクリート10が打設される。
【0025】
図3は製品ブロック6…の配列を示す。A,B,C,D,E,F,B1,B2,Hと符号が附されている製品ブロック6…が間口方向及び奥行き方向に並べられる。ここで単に製品ブロックを並べただけでは製品ブロック6…が波打つおそれがある。このため製品ブロック6…の中に例えば直径13mm程度のPC鋼からなる鋼棒7…を貫通させ、この鋼棒7…の両端に螺合させたナットで圧縮力がかかるように複数の製品ブロックを間口方向及び奥行き方向に締め付けている。鋼棒7…は例えば垂直の壁に2本、水平の壁に2本、合計4本設けられる。圧縮力が加わるので、製品ブロック6…の圧縮強度は通常の21N/mm2のものよりも大きい35N/mm2のものを用いるのが望ましい。
【0026】
ところで例えば奥行きが50mもあるものを1本の鋼棒で締め付けることは不可能である。このため奥行き方向では、製品ブロックAが4個並んだ5個目に仲介役の製品ブロックBが配置される。製品ブロックBには継手用開口8…が空けられ、この継手用開口8…内に鋼棒7…を連結するための継手が収納される。間口方向でも同様に製品ブロックDが3個並んだ4個目に仲介役の製品ブロックEが配置され、この製品ブロックEにも継手用開口9…が空けられると共に鋼棒を連結するための継手が収納される。なお、もちろん製品ブロックの形状、個数、鋼棒の本数、材質等は種々設計変更可能である。
【0027】
図4は基本ブロックとしての製品ブロックAを示す。製品ブロックAは断面逆T字形に形成されていて、垂直の壁11に2本、水平の壁12に2本、合計4本の鋼棒7…が貫通する貫通穴13…が形成される。他の製品ブロックとの接触面15,15には、位置決め凹部14…が例えば3箇所形成される。隣接する製品ブロックの位置決め凹部14,14には、図6に示すようにテーパが付けられた位置決めピン17が嵌められる。接触面15、15にはまた、シール材18が巻かれ、牧草を乳酸醗酵させたときの水分が外側に染み出すのが防止されている。牧草を乳酸醗酵させたときの水分はpH3ぐらいの酸性を呈する。コンクリートは酸に弱いので、コンクリートの配合にも通常のポルトランドセメントではなく、耐酸性能を有するセメント及び混和材を用いることが望ましい。
【0028】
図5は仲介ブロックとしての製品ブロックBを示す。製品ブロックBも製品ブロックAと同様に、垂直の壁に2本、水平の壁に2本、合計4本の鋼棒7…が貫通する貫通穴13…が形成され、他の製品ブロックとの接触面15,15には、位置決め凹部14…が例えば3箇所形成される。この製品ブロックBでは製品ブロックAと異なり、貫通穴13の途中に継手用開口8が空けられる。
【0029】
図7は継手用開口8での連結を示す。継手用開口8内では鋼棒7の一端に螺合されたナット20で複数の製品ブロック6…が締め付けられると共に、軸線方向に隣接する鋼棒7,7が継手19によって連結されている。
【0030】
図3に示される間口方向に並べられる製品ブロックD及び仲介ブロックとしての製品ブロックEは、鋼棒が貫通する貫通穴の高さが相違する他はそれぞれ製品ブロックA及びBと同様な構成なので、その説明は省略する。
【0031】
図8はサイロ用擁壁の平面図のコーナ部分に配列されるL型交差ブロックとしての製品ブロックHを示す。この製品ブロックHは平面図がL字形状の擁壁を有する。図中(D)に示すように、コーナ部分は間口方向及び奥行き方向の端になるので、鋼棒7を締め付けるためのプレート21及びナット20が取り付けられる。また製品ブロックHには、垂直の壁11に間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成され、水平の壁12にも間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成される。そしてそれぞれ垂直及び水平の壁11,12において、間口方向に伸びる貫通穴13a,13aの高さと奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bの高さが異なっている。これにより鋼棒7,7が交差して当たるのが防止されている。
【0032】
図9は、サイロ用擁壁の平面図のT字形に交差する部分に配列されるT型交差ブロックとしての製品ブロックFを示す。この製品ブロックFは平面図がT字形状の擁壁を有する。製品ブロックFには、垂直の壁11に間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成され、水平の壁12にも間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成される。そしてそれぞれ垂直及び水平の壁11,12において、間口方向に伸びる貫通穴13a,13aの高さと奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bの高さが異なっている。これにより鋼棒7,7が交差して当たるのが防止されている。
【0033】
図10及び図11はそれぞれ製品ブロックB2及びB1を示す。この図に示されるように出入り口に近い製品ブロックの垂直の壁11にはテーパがつけられていても良い。
【0034】
図3における製品ブロックCは、寸法調整のために製品ブロックAよりも擁壁の長さ方向の寸法が小さい他は製品ブロックAと同一の構成なのでその説明を省略する。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、複数のブロックを一体化させる締め付け手段として、鋼棒の代わりにワイヤーを用いても良い。またサイロの間口寸法、及び奥行き寸法は様々に設定されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態におけるサイロ用擁壁の平面図。
【図2】サイロ用擁壁の基礎図。
【図3】製品ブロックの配列を示す図(図中(A)は平面図、(B)及び(C)は側面図)。
【図4】製品ブロックAを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)は側面図)。
【図5】製品ブロックBを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)は側面図)。
【図6】製品ブロックの位置決め部を示す断面図。
【図7】継手用開口での連結を示す図。
【図8】製品ブロックHを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)はB−B線断面図、(D)はD部詳細図)。
【図9】製品ブロックFを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)はB−B線断面図)。
【図10】製品ブロックB2を示す側面図。
【図11】製品ブロックB1を示す側面図。
【図12】従来のサイロ用擁壁を示す斜視図。
【図13】従来のサイロ用擁壁の接続部を示す断面図。
【符号の説明】
【0037】
6…製品ブロック
7…鋼棒
8…継手用開口
13,13a,13b…貫通穴
14…位置決め凹部
17…位置決めピン
19…継手
20…ナット
製品ブロックA…基本ブロック
製品ブロックB…仲介ブロック
製品ブロックH…L字交差ブロック
製品ブロックF…T字交差ブロック
【技術分野】
【0001】
この発明は、牧草・トウモロコシ等の飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁に関する。
【背景技術】
【0002】
牧草・トウモロコシ等の飼料を醗酵させた上で牛等に食べさせると栄養価値が高くなることが経験的にわかっている。北海道の酪農家はサイロに牧草等を貯蔵し、転圧して牧草等を醗酵させた後、牛等の餌にしている。
【0003】
図12はサイロの一種である従来のサイロ用擁壁を示す。整地された畑には擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロック1…が並べられる。隣接する製品ブロック1…を整列させることができるように、製品ブロック1,1間には図13に示すように接続プレート2があてられ、ボルトで締め付けられている。向かい合う擁壁間には土間コンクリート3が打設される。これらのサイロ用擁壁は農家毎に構築され、そのサイズは大きいものでも間口が7〜8m程度、奥行きが20〜30m程度に設定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年農業全体が変わりはじめている。各農家が牧草を刈り取る機械を保有し、また牧草を貯蔵するサイロを保有していたのでは、機械あるいはサイロの償却が重荷になって経営を圧迫する。このため機械、あるいはサイロを数十の農家で共同化し、サイロの大きさも例えば間口が数十m、奥行きも50m程度の大型にすることが望まれている。
【0005】
サイロを大型にするために、製品ブロック1…をたくさん並べることが考えられる。しかし製品ブロック1…を単に並べただけでは、製品ブロック1…の重量、擁壁間に入れられる牧草の重量等に起因して、地盤が不等沈下し、並べられた複数の製品ブロック1…が波打つおそれがある。
【0006】
サイロが地盤の悪い畑に設置されることが多いこと、またサイロに盛られている飼料から擁壁に加わる荷重はいつも一定ではなく、飼料が盛られているときは荷重が大きく、飼料を取り出したときは荷重がなくなることも地盤が不等沈下を起こす原因となる。
【0007】
地盤の不等沈下により、隣接する製品ブロックの連結部分(接続プレートをあててボルトを締め付けた部分)で、強度が足りなくてコンクリートがせん断破壊したり、ボルトが取れたりしてしまうという問題が生じる。
【0008】
そこで本発明は、サイロを大型化させることができる新たなサイロ用擁壁、サイロ用擁壁の製造方法、及びサイロ用擁壁に用いられる製品ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
上記課題を解決するために本発明者は、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックを配列し、配列した複数の製品ブロックを擁壁の長さ方向に締めつけて一体化させた。
【0011】
すなわち本発明は、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁であって、間口方向及び/又は奥行き方向に配列され、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックと、圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向及び/又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば地盤の弱いところでも大きなサイズのサイロ用擁壁を構築することができる。
【0013】
前記締め付け手段は、間口方向及び/又は奥行き方向に伸び、複数の製品ブロックを貫通する鋼棒と、該鋼棒の両端に螺合し、複数の製品ブロックを締め付けるためのナットとを有してもよい。
【0014】
平面でみた状態において、前記サイロ用擁壁の少なくとも一部をコの字形状に形成できるように、前記複数の製品ブロックは間口方向及び奥行き方向に配列されてもよい。
【0015】
このようにすれば、コの字形状で長さが間口方向及び奥行き方向に長いサイロを構築することができる。
【0016】
前記複数の製品ブロックそれぞれには位置決め凹部が形成され、隣接する前記製品ブロックを整列させることができるように、前記位置決め凹部には位置決めピンが嵌められてもよい。
【0017】
前記複数の製品ブロックは、前記サイロ用擁壁の平面図のコーナ部分に配列される平面図がL字形状の擁壁を有するL型交差ブロック、及び前記サイロ用擁壁の平面図のT字形に交差する部分に配列される平面図がT字形状の擁壁を有するT型交差ブロックを含み、前記L型交差ブロック及び前記T型交差ブロックでは、間口方向に伸びる前記鋼棒の高さと、奥行き方向に伸びる前記鋼棒の高さが異なっていてもよい。
【0018】
この発明によれば、間口方向及び奥行き方向のいずれでも製品ブロックを締め付けることができる。
【0019】
また本発明は、擁壁の長さ方向に複数配列されることによって、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロックであって、前記複数の製品ブロックを擁壁の長さ方向に締め付けて一体化させることができるように、製品ブロックには擁壁の長さ方向に伸びる貫通穴が形成されていることを特徴とする製品ブロックとしてもよい。
【0020】
さらに本発明は、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁の製造方法であって、間口方向又は奥行き方向にサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックを配列する工程と、圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け工程と、を備えることを特徴とするサイロ用擁壁の製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮力がかかるように複数の製品ブロックを間口方向又は奥行き方向に締め付けて複数の製品ブロックを一体化させたので、地盤の弱いところでも大きなサイズのサイロ用擁壁を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下添付図面に基づいて本発明の一実施形態におけるサイロ用擁壁を説明する。
【0023】
図1はサイロ用擁壁の平面図を示す。サイロ用擁壁は数十軒の農家が共同で利用できるように、間口Xが例えば12m程度、奥行きYが例えば50mの長大なコの字形状に形成されたものを複数組合わせて構成される。擁壁の垂直方向の高さは例えば2.7mに設定される。このようなサイロ用擁壁には刈られた牧草等の飼料がトラックで運ばれてくる。サイロ用擁壁に積み込まれた飼料は重機等で転圧され、醗酵した飼料は牛等の餌として再びサイロから運び出される。
【0024】
図2はサイロ用擁壁の基礎図を示す。まず畑等の土を掘削し、砂質土4等で置きかえる。次に擁壁の下部に砂利5を敷き、均しコンクリート8を打設する。均しコンクリート8の上にサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロック6…を並べる。対向する擁壁と擁壁の間には砂利9が敷かれ、土間コンクリート10が打設される。
【0025】
図3は製品ブロック6…の配列を示す。A,B,C,D,E,F,B1,B2,Hと符号が附されている製品ブロック6…が間口方向及び奥行き方向に並べられる。ここで単に製品ブロックを並べただけでは製品ブロック6…が波打つおそれがある。このため製品ブロック6…の中に例えば直径13mm程度のPC鋼からなる鋼棒7…を貫通させ、この鋼棒7…の両端に螺合させたナットで圧縮力がかかるように複数の製品ブロックを間口方向及び奥行き方向に締め付けている。鋼棒7…は例えば垂直の壁に2本、水平の壁に2本、合計4本設けられる。圧縮力が加わるので、製品ブロック6…の圧縮強度は通常の21N/mm2のものよりも大きい35N/mm2のものを用いるのが望ましい。
【0026】
ところで例えば奥行きが50mもあるものを1本の鋼棒で締め付けることは不可能である。このため奥行き方向では、製品ブロックAが4個並んだ5個目に仲介役の製品ブロックBが配置される。製品ブロックBには継手用開口8…が空けられ、この継手用開口8…内に鋼棒7…を連結するための継手が収納される。間口方向でも同様に製品ブロックDが3個並んだ4個目に仲介役の製品ブロックEが配置され、この製品ブロックEにも継手用開口9…が空けられると共に鋼棒を連結するための継手が収納される。なお、もちろん製品ブロックの形状、個数、鋼棒の本数、材質等は種々設計変更可能である。
【0027】
図4は基本ブロックとしての製品ブロックAを示す。製品ブロックAは断面逆T字形に形成されていて、垂直の壁11に2本、水平の壁12に2本、合計4本の鋼棒7…が貫通する貫通穴13…が形成される。他の製品ブロックとの接触面15,15には、位置決め凹部14…が例えば3箇所形成される。隣接する製品ブロックの位置決め凹部14,14には、図6に示すようにテーパが付けられた位置決めピン17が嵌められる。接触面15、15にはまた、シール材18が巻かれ、牧草を乳酸醗酵させたときの水分が外側に染み出すのが防止されている。牧草を乳酸醗酵させたときの水分はpH3ぐらいの酸性を呈する。コンクリートは酸に弱いので、コンクリートの配合にも通常のポルトランドセメントではなく、耐酸性能を有するセメント及び混和材を用いることが望ましい。
【0028】
図5は仲介ブロックとしての製品ブロックBを示す。製品ブロックBも製品ブロックAと同様に、垂直の壁に2本、水平の壁に2本、合計4本の鋼棒7…が貫通する貫通穴13…が形成され、他の製品ブロックとの接触面15,15には、位置決め凹部14…が例えば3箇所形成される。この製品ブロックBでは製品ブロックAと異なり、貫通穴13の途中に継手用開口8が空けられる。
【0029】
図7は継手用開口8での連結を示す。継手用開口8内では鋼棒7の一端に螺合されたナット20で複数の製品ブロック6…が締め付けられると共に、軸線方向に隣接する鋼棒7,7が継手19によって連結されている。
【0030】
図3に示される間口方向に並べられる製品ブロックD及び仲介ブロックとしての製品ブロックEは、鋼棒が貫通する貫通穴の高さが相違する他はそれぞれ製品ブロックA及びBと同様な構成なので、その説明は省略する。
【0031】
図8はサイロ用擁壁の平面図のコーナ部分に配列されるL型交差ブロックとしての製品ブロックHを示す。この製品ブロックHは平面図がL字形状の擁壁を有する。図中(D)に示すように、コーナ部分は間口方向及び奥行き方向の端になるので、鋼棒7を締め付けるためのプレート21及びナット20が取り付けられる。また製品ブロックHには、垂直の壁11に間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成され、水平の壁12にも間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成される。そしてそれぞれ垂直及び水平の壁11,12において、間口方向に伸びる貫通穴13a,13aの高さと奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bの高さが異なっている。これにより鋼棒7,7が交差して当たるのが防止されている。
【0032】
図9は、サイロ用擁壁の平面図のT字形に交差する部分に配列されるT型交差ブロックとしての製品ブロックFを示す。この製品ブロックFは平面図がT字形状の擁壁を有する。製品ブロックFには、垂直の壁11に間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成され、水平の壁12にも間口方向に伸びる貫通穴13a,13aが2本、奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bが2本形成される。そしてそれぞれ垂直及び水平の壁11,12において、間口方向に伸びる貫通穴13a,13aの高さと奥行き方向に伸びる貫通穴13b,13bの高さが異なっている。これにより鋼棒7,7が交差して当たるのが防止されている。
【0033】
図10及び図11はそれぞれ製品ブロックB2及びB1を示す。この図に示されるように出入り口に近い製品ブロックの垂直の壁11にはテーパがつけられていても良い。
【0034】
図3における製品ブロックCは、寸法調整のために製品ブロックAよりも擁壁の長さ方向の寸法が小さい他は製品ブロックAと同一の構成なのでその説明を省略する。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、複数のブロックを一体化させる締め付け手段として、鋼棒の代わりにワイヤーを用いても良い。またサイロの間口寸法、及び奥行き寸法は様々に設定されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態におけるサイロ用擁壁の平面図。
【図2】サイロ用擁壁の基礎図。
【図3】製品ブロックの配列を示す図(図中(A)は平面図、(B)及び(C)は側面図)。
【図4】製品ブロックAを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)は側面図)。
【図5】製品ブロックBを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)は側面図)。
【図6】製品ブロックの位置決め部を示す断面図。
【図7】継手用開口での連結を示す図。
【図8】製品ブロックHを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)はB−B線断面図、(D)はD部詳細図)。
【図9】製品ブロックFを示す図(図中(C)は平面図、(A)はA−A線断面図、(B)はB−B線断面図)。
【図10】製品ブロックB2を示す側面図。
【図11】製品ブロックB1を示す側面図。
【図12】従来のサイロ用擁壁を示す斜視図。
【図13】従来のサイロ用擁壁の接続部を示す断面図。
【符号の説明】
【0037】
6…製品ブロック
7…鋼棒
8…継手用開口
13,13a,13b…貫通穴
14…位置決め凹部
17…位置決めピン
19…継手
20…ナット
製品ブロックA…基本ブロック
製品ブロックB…仲介ブロック
製品ブロックH…L字交差ブロック
製品ブロックF…T字交差ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁であって、
間口方向及び/又は奥行き方向に配列され、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックと、
圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向及び/又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け手段と、を備えることを特徴とするサイロ用擁壁。
【請求項2】
前記締め付け手段は、
間口方向及び/又は奥行き方向に伸び、複数の製品ブロックを貫通する鋼棒と、
該鋼棒の両端に螺合し、複数の製品ブロックを締め付けるためのナットとを有することを特徴とする請求項1に記載のサイロ用擁壁。
【請求項3】
平面でみた状態において、前記サイロ用擁壁の少なくとも一部をコの字形状に形成できるように、前記複数の製品ブロックは間口方向及び奥行き方向に配列されることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイロ用擁壁。
【請求項4】
前記複数の製品ブロックそれぞれには位置決め凹部が形成され、
隣接する前記製品ブロックを整列させることができるように、前記位置決め凹部には位置決めピンが嵌められることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のサイロ用擁壁。
【請求項5】
前記複数の製品ブロックは、
前記サイロ用擁壁の平面図のコーナ部分に配列される平面図がL字形状の擁壁を有するL型交差ブロック、及び前記サイロ用擁壁の平面図のT字形に交差する部分に配列される平面図がT字形状の擁壁を有するT型交差ブロックを含み、
前記L型交差ブロック及び前記T型交差ブロックでは、間口方向に伸びる前記鋼棒の高さと、奥行き方向に伸びる前記鋼棒の高さが異なっていることを特徴とする請求項3または4に記載のサイロ用擁壁。
【請求項6】
擁壁の長さ方向に複数配列されることによって、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロックであって、
前記複数の製品ブロックを擁壁の長さ方向に締め付けて一体化させることができるように、製品ブロックには擁壁の長さ方向に伸びる貫通穴が形成されていることを特徴とする製品ブロック。
【請求項7】
飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁の製造方法であって、
間口方向及び/又は奥行き方向にサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックを配列する工程と、
圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向及び/又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け工程と、を備えることを特徴とするサイロ用擁壁の製造方法。
【請求項1】
飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁であって、
間口方向及び/又は奥行き方向に配列され、サイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックと、
圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向及び/又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け手段と、を備えることを特徴とするサイロ用擁壁。
【請求項2】
前記締め付け手段は、
間口方向及び/又は奥行き方向に伸び、複数の製品ブロックを貫通する鋼棒と、
該鋼棒の両端に螺合し、複数の製品ブロックを締め付けるためのナットとを有することを特徴とする請求項1に記載のサイロ用擁壁。
【請求項3】
平面でみた状態において、前記サイロ用擁壁の少なくとも一部をコの字形状に形成できるように、前記複数の製品ブロックは間口方向及び奥行き方向に配列されることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイロ用擁壁。
【請求項4】
前記複数の製品ブロックそれぞれには位置決め凹部が形成され、
隣接する前記製品ブロックを整列させることができるように、前記位置決め凹部には位置決めピンが嵌められることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のサイロ用擁壁。
【請求項5】
前記複数の製品ブロックは、
前記サイロ用擁壁の平面図のコーナ部分に配列される平面図がL字形状の擁壁を有するL型交差ブロック、及び前記サイロ用擁壁の平面図のT字形に交差する部分に配列される平面図がT字形状の擁壁を有するT型交差ブロックを含み、
前記L型交差ブロック及び前記T型交差ブロックでは、間口方向に伸びる前記鋼棒の高さと、奥行き方向に伸びる前記鋼棒の高さが異なっていることを特徴とする請求項3または4に記載のサイロ用擁壁。
【請求項6】
擁壁の長さ方向に複数配列されることによって、飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の製品ブロックであって、
前記複数の製品ブロックを擁壁の長さ方向に締め付けて一体化させることができるように、製品ブロックには擁壁の長さ方向に伸びる貫通穴が形成されていることを特徴とする製品ブロック。
【請求項7】
飼料が貯蔵されるサイロ用擁壁の製造方法であって、
間口方向及び/又は奥行き方向にサイロ用擁壁を構成するプレキャストコンクリート製の複数の製品ブロックを配列する工程と、
圧縮力がかかるように前記複数の製品ブロックを間口方向及び/又は奥行き方向に締め付けて前記複数の製品ブロックを一体化させる締め付け工程と、を備えることを特徴とするサイロ用擁壁の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−273429(P2006−273429A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194153(P2006−194153)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【分割の表示】特願2002−223558(P2002−223558)の分割
【原出願日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願人】(593141481)JFEプラント&サービス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【分割の表示】特願2002−223558(P2002−223558)の分割
【原出願日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願人】(593141481)JFEプラント&サービス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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