説明

サカナ受精卵の凍結保存液およびその調整方法

【課題】種の保存の必要性ならびにクロマグロ等の養殖及び稚魚放流のため、魚類受精卵の生細胞、酵素の長期凍結を可能とする保存剤の提供。
【解決手段】10%のポリエチレングリコ−ル、1モルのマンニト−ルの有効成分ならびにpH7.9のリン酸緩衝液からなる凍結保存液を使用し、−85℃、1〜3ヶ月凍結後、解凍した受精卵は20〜30%が孵化した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[産業上の利用分野]
本発明は魚類、の受精卵の生細胞、酵素を凍結状態または低温で長期間保存に必要な生細胞および酵素の保存に関するものである。
【0002】
[従来の技術]
特公昭60−29471号、特開平5−38284号等今日まで多くの研究が行われているが、サカナ等の受精卵の凍結保存によるところの孵化は皆無である
【0003】
[発明が解決しようとする課題]
魚類などの、受精卵の凍結保存の目的は、種の保存の必要性ならびにクロマグロ等の養殖及び稚魚放流にある。
【0004】
[課題を解決するための手段]
1〜2日のサカナ受精卵を容器に入れ、凍結保存液を注入し、氷蔵庫に低温保管する。その後ドライアイス入りエチルアルコ−ル液で急速凍結し、氷点下85℃の冷凍庫にて保管する。
[解凍方法]
解凍は28〜30℃の温度とする。
【0005】
[作用]
サカナの受精卵はそのままだと5〜10時間で劣化する。
凍結保存液の作用は不明なことが多いが保存液の有効成分であるポリエチレングリコ−ル6000(PEG6000)は生細胞のタンパク質を保護する作用がある。
PEG(ポリエチレングリコ−ル)は高分子をもつけれども、この分子のもつ多くの酸素原子および水酸基が水分子と水素結合する。
一方のタンパク質の分子表面の解離基や極性基に静電的相互作用(イオン水和)あるいは水素結合によって多くの水分子を取り込でいる。PEGは自由水と結合するとともにタンパク質の分子表面に結合している水分子(結合水)を奪いPEG分子中の酸素原子あるいは水酸基がタンパク質の分子表面の解離基あるいは極性基と静電的相互作用あるいは水素結合し、PEGとタンパク質は複合体を形成する。
保存液中のPEGの作用はタンパク質表面の結合水を奪うことに効用があり、結合水がPEGへとり込まれることになる。
凍結作用の負荷であるタンパク質表面の結合水はPEGの効用でとり込まれ、生細胞中のタンパク質表面の結合水を結果的に保護することになる。
よって凍結作用によるところの結合水の挙動によるタンパク質の変性などは防止される。
【0006】
[実施例]
1〜2日のサカナ受精卵を2ml容器に入れ、凍結保存液を注入し、氷蔵庫にて低温保管する。
ドライアイス入りエチルアルコ−ル液で急速凍結し、氷点下85℃にて1〜3ケ月冷凍庫に保管した。
解凍は28〜30℃の飽和硫酸アンモニウム海水で行いポリエチレングリコ−ルを除去し、その後孵化させた。
【0007】
[発明の効果]
サカナの凍結受精卵が20〜30%の割合で孵化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコ−ル、マンニト−ルの有効成分ならびにリン酸緩衝液の緩衝作用による魚受精卵の生細胞および酵素の保存剤
【請求項2】
10%(W/V)ポリエチレングコ−ル、
1モル(分子量W/V)マンニト−ル
pH7.9リン酸緩衝液
に調整されたことを有効とする請求項1記載の魚受精卵の生細胞および酵素の保存剤
【請求項3】
サカナ受精卵の生細胞および酵素の凍結保存、低温保存を有効とする請求項1、請求項2記載の生細胞および酵素の保存剤

【公開番号】特開2006−296403(P2006−296403A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153068(P2005−153068)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(505182476)
【Fターム(参考)】