説明

サクションヒータおよびヒータ付きタンク

【課題】C重油などの常温で高粘度ないし固形物の流体を、効率的に加熱することができ、溶解の始めの崩落からヒータを保護することができ、焼き付きが生じにくく、出口近辺で再固形化しにくいサクションヒータを提供する。
【解決手段】タンク内に突出するように配置される細長い電熱式のヒータ12を保護パイプ11で囲む二重構造とし、保護パイプ11の先端をヒータ12の先端より突出させ、保護パイプ11の下面を開放し、保護パイプ11の基端にヒータ保持部材13を固着し、保護パイプ11の基端から先端側にいくらか寄った位置に、取り付け用の第2フランジ16を設け、第2フランジと基端との間で上面側に加熱により流動化した流体を吐出する吐出管17を接続するソケット18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C重油などの常温で高粘度ないし固形物となる流体を収容するタンクに設けられるサクションヒータおよびそのサクションヒータを用いたヒータ付きタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来のC重油などの常温で高粘度ないし固定物となる流体を収容するタンクの一例を示している。このようなタンクは、重油を燃料とする舶用ディーゼルエンジンや舶用タービンのセットリングタンク、潤滑油のセットリングタンクあるいは屋内タンク貯蔵所の貯蔵タンクとして用いられる。図5のタンク100では、常温では固化している低質油を60〜80℃まで加熱して流動化させるため、タンク100の側壁の下部に電熱ヒータ101を設け、その下方の吐出口102にポンプPと連結されたサクション用の配管103を連結している。なお、図5の符号104はドレンコック、105は戻り管、106は通気管である。
【0003】
このようなタンク100では、電熱のヒータ101でタンク内の低質油の全体を加熱して流動性を高め、下方の吐出口102から吐出することができる。しかし溶解の始めにはヒータ近辺が先に流動化して空洞ができ、空洞の上部の固形物が自重を支えきれずに崩れ落ち、そのときの衝撃でヒータが破損することがある。また、固形状態の低質油の重量がヒータに加わることにより、ヒータ101が変形することがある。さらに溶かし始めは対流が少ないため、低質油がヒータ101に焼き付き、加熱の妨げになることがある。また、一旦流動状態となった低質油が吐出口102近辺で再度固形化することもある。そのため、吐出口102近辺にヒータを別途設ける場合もある。
【0004】
特許文献1には、図6に示すような、タンク内を固形アスファルトを投入する区域110と、吐出口111の近傍の区域112とを区画壁113で仕切り、吐出口111の近傍にヒータ114を設けたアスファルト溶解装置115が開示されている。なお、タンクの底面全体に別個の底部ヒータ116を設け、区画壁113の下部では投入側と吐出側とを連通させている。このものは固形アスファルトが投入されても区画壁113によって遮られ、固形アスファルトは吐出口の近傍のヒータ114に直接当たらないので、ヒータ114の破損を防止することができるとされている。しかしこの装置を低質油のタンクに用いる場合は、一旦運転を停止して再稼働するときに前述の溶解始めの崩落の問題があり、出口近辺で再度固形化する問題も解消されない。
【0005】
特許文献2には、上方から蓄熱槽の内部に突出する加熱器と、その加熱器を取り囲むジャケットないし管路とを備え、ジャケットないし管路内に、熱媒体である油を上方から下方に向かって流すようにした蓄熱式熱供給装置が開示されている。このものは油を加熱器に沿って流動させながら加熱するので効率が高い。したがって低質油のタンクにも、このような流動加熱方法を採用することが望まれる。
【特許文献1】特開2004−27577号公報
【特許文献2】特開2006−266605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はC重油などの低質油など、常温で高粘度ないし固形物となる流体を、効率的に加熱することができ、しかも溶解の始めの崩落からヒータを保護することができ、出口近辺で再固形化せず、対流が少ない溶かし始めでも焼き付きが生じにくいサクションヒータを提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサクションヒータ(請求項1)は、常温で高粘度ないし固形物になる流体を収容するタンク内に突出するように配置される細長いヒータと、そのヒータを囲むように前記タンクの壁に取り付けられる保護パイプとからなり、その保護パイプの先端がヒータの先端と同位置またはそれより突出した位置にあり、保護パイプの少なくとも先端側の下面が開放され、基端ないしその近辺に、前記流体の出口側の配管に接続される配管接続部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
このようなサクションヒータにおいては、前記保護パイプの基端から先端側にいくらか寄った位置に、タンクへの取り付け用のフランジが設けられており、保護パイプの基端に、ヒータ保持部材が液密状態で固着されており、前記配管接続部が保護パイプのフランジと基端との間に設けられているものが好ましい(請求項2)。
【0009】
本発明のヒータ付きタンク(請求項3)は、常温で高粘度ないし固形物になる流体を収容するためのタンクと、そのタンクの側壁下部に、タンク内に突出するように設けられる前記いずれかのサクションヒータとを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のサクションヒータ(請求項1)は、ヒータが保護パイプによって囲まれるので、固形状態の流体が崩れ落ちても保護パイプによって支持される。そのためヒータは破損しない。また、ヒータは主として保護パイプ内の流体を加熱し、加熱により流動化した流体はヒータによってさらに加熱されながらヒータに沿って先端から基端に向かって流れる。そのため、流体を効率的に加熱することができる。さらに保護パイプは、タンク内から外部に流出する出口案内管を兼ねているので、ヒータで加熱されて充分に流動化した流体はそのまま流れ出ていく。そのため、溶かし始めでもヒータに焼き付くことがなく、再固形化のおそれもない。
【0011】
このようなサクションヒータにおいて、前記保護パイプの基端から先端側にいくらか寄った位置に、タンクへの取り付け用のフランジが設けられており、保護パイプの基端に、ヒータ保持部材が液密状態で固着されており、前記配管接続部が保護パイプのフランジと基端との間で上面側に設けられている場合(請求項2)は、タンクに形成する孔が一個所でよい。また、市販のヒータとヒータ保持部材がユニットになっているヒータユニットを使用しやすい。さらにヒータが保護パイプに対してしっかりと固定される。
【0012】
本発明のヒータ付きタンクは、前述のサクションヒータを備えているので、ヒータが破損しにくく、吐出する流体を効率的に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに図面を参照しながら本発明のサクションヒータおよびヒータ付きタンクの実施の形態を説明する。図1は本発明のサクションヒータの一実施形態を示す一部切り欠き側面図、図2はそのサクションヒータの要部底面図、図3は図1のIII-III線断面図、図4はそのサクションヒータの使用状態を示す配管系統図である。
【0014】
図1に示すサクションヒータ10は、サクション管を兼ねる保護パイプ11と、その保護パイプの内部に収容されるヒータ12と、保護パイプ11の基端に取り付けられ、ヒータ12の基部を保持するヒータ保持部材13とを備えている。
【0015】
保護パイプ11の基端には、ヒータ保持部材13を取り付けるための第1フランジ15が設けられ、基端からいくらか先端側に寄った位置には、タンクへの取り付け用の第2フランジ16が設けられている。この保護パイプ11では、第1フランジ15と第2フランジ16の間の上面側に、加熱によって充分に流動化した流体を吐出する配管(吐出管)17を接続するための小径筒状のソケット(配管接続部)18が突出している。さらにそのソケット18と第2フランジ16との間に、温度センサ19を取り付けるための小径のソケット20が突出している。吐出管17を接続するソケット18を上側に設けているのは、エア抜きし易いようにするためである。
【0016】
保護パイプ11の先端は全体が壁体21によって閉じられている(図3参照)。ただし、壁体21に、固形物を吸い込まずに流体のみを吸い込む複数個の連通孔21aを形成してもよい。その場合、壁体21をパンチングメタルで構成するのが好ましい。また、たとえば上部だけを塞ぐなど、一部を塞ぐようにしてもよく、全体を開放してもよい。さらにこの保護パイプ11では、先端からいくらか基端側に寄った位置から第2フランジ16のいくらか手前まで、すなわちタンク内に入る部分の全体の下面に、略矩形状の開口22が形成されている(図2、図3参照)。この下面の開口22は流体の吸い込み口となる。下面の開口22は保護パイプ11の先端側だけに設けてもよい。保護パイプ11の先端に壁21を設けずに開放している場合は、先端の開口も吸い込み口となる。先端の開口は加熱途中で崩れ落ちた固形物で塞がれるおそれがあるが、下面の開口22はそのおそれが少ない。さらに下面の開口22は保護パイプ11内に吸い込んだ比較的小さい固形物を逃がす作用も奏する。保護パイプ11の材質は流体の種類によって適切なものが選択されるが、たとえば鋼、ステンレス鋼など、強度が高く、流体によって浸食されないものを選択する。
【0017】
ヒータ12は、たとえばU字状に折り曲げた金属管と、その金属管内に収容したニクロム線など、従来公知の電熱式のヒータを使用することができる。金属管の材質は、流体の種類によって選択する。この実施形態では、縦向きに配置される第1ヒータ12aと、この第1ヒータ12aより短く横向きに配置される第2ヒータ12bとを組み合わせている(図3参照)。ヒータ12の本数は1本でもよく、3本あるいは4本以上でもよい。ヒータ12全体の発熱量は、周囲の温度や流体の流動性が増加して圧送し易くなる温度に応じて選択する。温度センサや粘度センサの出力に応じて発熱量を制御するのが好ましい。
【0018】
ヒータ12とヒータ保持部材13とは、一体となったヒータユニットとして市販されているものを採用することができる。この実施形態では、ヒータ保持部材13はケース23と、そのケース内に収容される接続端子と、ケース23の一端を閉じるカバー24とから構成されている。ケース23は、円板状のベース25と、円筒状の側壁26とからなる。ベース25には前述のヒータ12の基部が固定されており、ベース25の周縁近辺には、保護パイプ11の第1フランジ15とボルトナット結合するボルト穴が設けられている。第1フランジ15とベース25との間にはシートパッキン27が介在される。側壁26には、配線用ソケット28が突出している。
【0019】
上記のように構成されるサクションヒータ10は、たとえば図4に示すセットリングタンク30の側壁の下側に取り付けられる。下側に取り付けるのは、C重油などの低質油(流体)のヘッド(水頭)をその吐出に利用するため、および液面が下がったときにサクションヒータが露出しないようにするためである。セットリングタンク30は略直方体状であり、その側壁の中央からいくらか下方に取り付けパイプ31が突出している。取り付けパイプ31にはフランジ32が設けられている。セットリングタンク30の下端にはドレンコック33が設けられ、上面には戻り配管34が連結されている。符号35は通気管である。
【0020】
図1に示すように、サクションヒータ10は、その取り付けパイプ31に保護パイプ11を挿入し、第2フランジ16を取り付けパイプ31のフランジ32に取り付けることにより、セットリングタンク30に取り付けることができる。第2フランジ16は、シートパッキンを介して取り付けパイプのフランジ16に取り付けて、ボルトで締結する。保護パイプ11には吐出管17が連結されている。図4の符号Ptは測温抵抗体である。
【0021】
図4に示すように、吐出管17はポンプPを介してモータMで駆動される切り換えバルブVに連結されている。ポンプPとしてはギヤポンプなどが採用される。切り換えバルブVの一方の出口は、ディーゼルエンジンなどの低質油を使用する設備に連結されている。切り換えバルブVの他方の出口は、高粘度流体を使用する設備が稼働していないとき、あるいは稼働の準備のために、再びセットリングタンク30に戻される。
【0022】
このようなヒータ付きのセットリングタンク30では、低質油が固形化している状態で運転を開始すると、まず保護パイプ11内の低質油が加熱される。そしてある程度、保護パイプ11内の低質油が流動化すると、他の部位が固形状態であっても、ポンプPを稼働して吐出管17から低質油を吐出していくことができる。そして保護パイプ11の周囲の低質油が流出して空洞化しても、その上部の固形状態の低質油の重量を保護パイプ11が支持する。そのため、ヒータ12が破損することはない。
【0023】
また、保護パイプ11内の低質油は流れているので滞留しない。そのため、他の部分では流動性が低くても、ヒータ12に低質油が焼き付くことがない。さらに流動化した低質油はそのまま配管17によって流れ出ていくので、再固形化することがない。また、低質油はヒータ12に沿って強制的に流されながら加熱されるので、加熱の効率が高い。
【0024】
図4の前記実施形態ではサクションヒータ10は水平方向に配置されているが、垂直方向など、他の向きに取り付けることもできる。また、サクションヒータ10が採用されるタンクとしては、船舶用の燃料のためのセットリングタンクのほか、燃料油や潤滑油の貯蔵タンク、ディーゼルエンジンの下部に設ける使用済みの潤滑油を受けるサンプタンクなど、種々のタンクがあげられる。
【0025】
前記実施形態ではヒータとして電熱ヒータを採用しているが、高温蒸気などの熱媒体を通すパイプを用いることもできる。また、ヒータ12とヒータ保持部材13を一体化したヒータユニットと保護パイプ11とを組み合わせたものをタンクに取り付けているが、保護パイプ11をあらかじめタンクに溶接などで取り付けておき、その保護パイプ11にヒータユニットを取り付けるようにしてもよい。その場合は取り付けパイプ(図1の符号31参照)を省略できる。
【0026】
さらに前記実施形態ではヒータ保持部材13を保護パイプ11の基端に固定し、それより先端側に配管接続部(ソケット18)設けているが、逆に保護パイプ11の基端に配管接続部を設け、それより先端側にヒータ保持部材13を設けることもできる。ただし電熱ヒータを用いる場合は、一般的には配管作業が配線作業より前に行われるため、保護パイプ11の基端にヒータ保持部材13を固定する方が楽である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のサクションヒータの一実施形態を示す一部切り欠き側面図である。
【図2】そのサクションヒータの要部底面図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】そのサクションヒータの使用状態を示す配管系統図である。
【図5】従来のサクションヒータを備えたタンクの一例を示す配管系統図である。
【図6】従来のヒータ付きタンクの他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0028】
10 サクションヒータ
11 保護パイプ
12、12a、12b ヒータ
13 ヒータ保持部材
15 第1フランジ
16 第2フランジ
17 吐出管
18 ソケット
19 温度センサ
20 小径のソケット
21 開口(先端)
22 開口(下面)
23 ケース
24 カバー
25 ベース
26 側壁
27 シートパッキン
28 配線用ソケット
30 セットリングタンク
31 取り付けパイプ
32 フランジ
33 ドレンコック
34 戻り配管
35 通気管
Pt 測温抵抗体
P ポンプ
M モータ
V 切り換えバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で高粘度ないし固形物になる流体を収容するタンク内に突出するように配置される細長いヒータと、
そのヒータを囲むように前記タンクの壁に取り付けられる保護パイプとからなり、
その保護パイプの先端がヒータの先端と同位置ないしそれより突出した位置にあり、
保護パイプの少なくとも先端側の下面が開放され、
基端ないしその近辺に、前記流体の出口側の配管に接続される配管接続部が設けられているサクションヒータ。
【請求項2】
前記保護パイプの基端から先端側にいくらか寄った位置に、タンクへの取り付け用のフランジが設けられており、
保護パイプの基端に、ヒータ保持部材が液密状態で固着されており、
前記配管接続部が保護パイプのフランジと基端との間に設けられている請求項1記載のサクションヒータ。
【請求項3】
常温で高粘度ないし固形物になる流体を収容するためのタンクと、そのタンクの側壁下部に、タンク内に突出するように設けられる請求項1または2記載のサクションヒータとを備えているヒータ付きタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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